別添

熱中症による死亡災害発生状況

1 熱中症による死亡者数の推移(平成10〜19年分)

過去10年間(平成10年〜19年)での熱中症による死亡災害は186件であるが、この期間の推移をみると、平成11年からは毎年20名前後の死亡災害が発生しており、平成19年においても18件の死亡災害が発生している。

熱中症による死亡災害発生件数の推移(平成10〜19年分)

年(平成) 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年
発生件数 10 20 18 24 22 17 17 23 17 18 186
熱中症による死亡災害発生件数の推移(平成10〜19年分)

2 月別発生状況(平成17〜19年分)

過去3年間(平成17〜19年)の月別の死亡災害発生状況をみると、5月から9月にかけて発生しているが、例年7月と8月に集中して発生しており、平成19年においては8月に多発している。

高温環境下に作業者が順化していないことなどから熱中症が発生しており、発生が集中する時期はもちろん、その前後の時期においても熱中症の予防対策が求められる。

月別発生状況(平成17年〜19年分)

5月 6月 7月 8月 9月
平成17年 1 3 8 6 5 23
平成18年   1 8 8   17
平成19年   2 3 11 2 18
1 6 19 25 7 58
月別発生状況(平成17年〜19年分)

3 時間帯別発生状況(平成17〜19年分)

過去3年間の時間帯別の発生状況をみると、午後2時から午後4時台の間に多発している。 しかし、平成19年においては、午後5時台にも多発している。

熱中症の発生が多発している時間帯を重点に、熱中症の症状を呈している作業者がいないか十分確認することが求められる。

時間帯別発生状況(平成17年〜19年分)

時間帯 午前9時以前 午前10時台 午前11時台 午後0時台 午後1時台 午後2時台 午後3時台 午後4時台 午後5時台 午後6時以降
平成17年   2 2 3 1 3 3 5 1 3 23
平成18年     1 1 1 3 9 2     17
平成19年 1   2   1 2 3 4 3 2 18
1 2 5 4 3 8 15 11 4 5 58
時間帯別発生状況(平成17年〜19年分)

4 年代別発生状況(平成17〜19年分)

過去3年間の年代別の発生状況をみると、30代及び50代で42件と、この年代で全体の約7割を占めている。

しかし、30代及び50代以外の年代においても熱中症が発生しており、若年層から中高年齢層まで、あらゆる年代を対象に適切な熱中症の予防対策が求められる。

被災者の年代別発生状況(平成17年〜19年分)

年代 20代 30代 40代 50代 60代以上
平成17年 1 9 3 7 3 23
平成18年 4 4 2 7   17
平成19年 1 9 1 6 1 18
6 22 6 20 4 58
被災者の年代別発生状況(平成17年〜19年分)

5 業種別発生状況(平成17〜19年分)

過去3年間の業種別の発生状況をみると、建設業が圧倒的に多く全体の約6割を占めており、平成19年においても建設業で多発している。

また、警備業において発生している熱中症も建設現場において発生したものであるが、製造業等では屋内作業場所においても熱中症が発生しており、高温環境下での作業については、屋内及び屋外ともに適切な熱中症の予防対策が求められる。

業種別発生状況(平成17年〜19年分)

業種 建設業 運送業 警備業 製造業 林業 その他
平成17年 13 2   4   4 23
平成18年 14     1 1 1 17
平成19年 10 1 2 2   3 18
37 3 2 7 1 8 58
業種別発生状況(平成17年〜19年分)

6 作業日数別発生状況(平成17〜19年分)

作業日数別の発生状況をみると、ほとんどが作業開始初日から数日の間に発生しており、平成19年においても同じ傾向である。

高温環境下での作業については、その環境への作業者の順化に注意する必要があり、このため、作業開始初日から数日の間は特に、作業者の健康状態の確認等を確実に行うことが求められる。

作業日数別発生状況(平成17年〜19年分)

作業日数 初日 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 10日目以降
平成17年 4 7 4 3 2       1 2 23
平成18年 6 8               3 17
平成19年 3 5 3 2 1   1     3 18
13 20 7 5 3   1   1 8 58
作業日数別発生状況(平成17年〜19年分)

7 気温別発生状況(平成17〜19年分)

気温別の発生状況をみると、30度以上の高温環境下で発生しており平成19年においても同じ傾向である。

高温環境下での作業においては、作業場所に温度計及び湿度計を設置し、作業中の温湿度の変化に留意した適切な熱中症の予防対策が求められる。

気温別発生状況(平成17年〜19年分)

気温(℃) 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 その他
平成17年 2 1 1 2 2 4 4 4 2     1 23
平成18年   1   4 3 2 1 1 1 3 1   17
平成19年 2 1   1   2 6 1 1 2 1 1 18
4 3 1 7 5 8 11 6 4 5 2 2 58
気温別発生状況(平成17年〜19年分)

8 その他

(1)  救急措置等

熱中症と疑われる症状が現れていても、関係者の認識不足等から、症状が悪化してはじめて病院へ搬送する例が多く認められる。

あらかじめ、作業者全員に対し、救急措置を含む労働衛生教育を確実に実施し、熱中症と疑われる症状が認められた場合には、たとえ症状が軽いと思われても、直ちに医師に受診させることが大切である。

(2)  作業者の行動等の確認等

作業者の行動及び健康状態を把握していないこと等から、熱中症の発症に気付くのが遅れ、発見されたときにはすでに症状が悪化している例も認められる。

作業場所の巡視等を頻繁に行い、作業場所及び作業者の健康状態等を把握・確認しておくことが大切である。

(3)  休憩及びその設備の確保等

適切な休憩設備を確保していなかった例が認められる。

あらかじめ、日除けや通風をよくするための設備を設置し、涼しい場所に休憩場所を確保し、休憩時間を頻繁にとらせる等、作業場所及び作業者の健康状態等を考慮した作業を行わせることが大切である。

さらに、水分を補給しているものの塩分を補給していない例が多く認められることから、熱中症の予防には水分だけでなく塩分の補給も大切であることを作業者に教育しておく必要がある。


平成19年 熱中症死亡災害発生状況

番号 発生
業種 気温
(℃)
相対
湿度
(%)
年齢 発 生 状 況 主な発生原因
1 6 その他の事業 27℃ 46% 30歳代  牧草地における水分を補給しながらの測量作業中、被災者は測量地点に移動していたが、午後4時5分ころ、姿が見えなくなり、午後4時10分ころに牧草地の測定地点付近で倒れているところを発見された。
  人工呼吸、心臓マッサージが行われたが、同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
2 6 建設業 33℃ 39% 30歳代  住宅修繕工事現場における水分を補給しながらの点検等作業中、被災者は午後4時20分ころ、転倒した旨を家族に電話連絡したが、その後連絡不能となったことから、家族が被災者を探したところ、午後5時ころ現場付近で倒れていたところを発見された。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・作業場所の把握及び巡視に関すること
・労働衛生教育に関すること
3 7 建設業 28℃ 82% 30歳代  下水道工事現場における水分を補給しながらの片付け等作業中、被災者は重機の誘導を行っていたが、午後4時15分ころにふらつき始め、午後4時30分ころには倒れ込んだ。
  氷で身体を冷やしたものの、同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
4 7 建設業 33℃ 54% 30歳代  道路工事現場における水分及び塩分を補給しながらの舗装等作業中、被災者はスコップでアスファルトを均していたが、午後3時ころ、ふらついたことから日陰で休憩したものの、午後4時ころに意識を失って座り込んでいるところを通行人に発見された。
  搬送先の病院で3日後に死亡。
・休憩場所の確保に関すること
・作業場所の把握及び巡視に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
5 7 製造業 35℃ 36% 20歳代  温湿度計のない段ボール製造工場における水分及び塩分を補給しながらの片付け作業中、被災者は適度に休憩することなく段ボールの運搬を行っていたが、午後6時20分ころ、気分が悪くなったことから、通風及び冷房設備のある箇所で休憩したものの、午後6時25分ころ意識が薄らぎ、病院に搬送された。
  搬送先の病院で翌日死亡。
・温度計や湿度計等の設置に関すること
・作業休止時間や休憩に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
6 8 建設業 36℃ 50% 30歳代  ビル防水工事現場における水分を補給しながらの仕上げ作業中、被災者は屋上手すり壁のコーキングを行っていたが、午後2時10分ころ、高架水槽の日陰となる場所で休憩し、午後2時15分ころから、しゃがみ込んでいるところを発見され、その場で横にしたものの既に意識がなかった。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・休憩場所の確保に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
7 8 商業 60℃ 50歳代  機械室内における水分を補給しながらの害虫熱駆除システムの試運転中、被災者は熱風で約55度まで温度を上昇させた機械室の温度測定及び機器の点検作業を4時間ごとに行ったが、午後4時40分ころ体調不良となり食堂で休憩したものの、午後5時40分ころ、食堂付近の廊下で倒れているところを発見された。
  心臓マッサージが行われたものの、同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・作業場所の把握及び巡視に関すること
・労働衛生教育に関すること
8 8 建設業 34℃ 75% 50歳代  学校改築工事現場における水分を補給しながらの型枠解体作業中、被災者は型枠材の片付け作業を行ったが、午後5時30分ころの作業終了時に気分が悪くなり座り込んだため、休憩したものの、午後6時10分ころには嘔吐し始めた。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
9 8 製造業 27℃ 81% 50歳代  セメント製造工場の温湿度計及び冷房設備のない地下室において、被災者は水分を補給しながらベルトコンベヤーから漏れ落ちた約60度の水砕スラグをスコップでベルトコンベヤーに戻す作業を行っていたが、午後5時30分ころ姿が見えなくなり、午後5時55分ころ、コンベヤー付近で意識がなく、呼吸もしていない状態で倒れているところを発見された。
  同日搬送先の病院で死亡。
・適度な通風や冷房を行うための設備に関すること
・塩分の補給に関すること
・温度計や湿度計等の設置に関すること
・健康状態の確認に関すること
・作業場所の把握及び巡視に関すること
・労働衛生教育に関すること
10 8 運輸交通業 33℃ 51% 40歳代  温湿度計及び冷房設備のない倉庫内において、被災者は水分を補給しながら荷物の仕分けをし、午後2時50分から午後3時5分まで休憩室で休憩したが、休憩室を出てから姿が見えなくなり、午後4時20分ころ、トイレで意識がなく倒れているところを発見された。
  心臓マッサージが行われたものの、同日搬送先の病院で死亡。
・適度な通風や冷房を行うための設備に関すること
・塩分の補給に関すること
・温度計や湿度計等の設置に関すること
・健康状態の確認に関すること
・作業場所の把握及び巡視に関すること
・労働衛生教育に関すること
11 8 その他の事業 37℃ 51% 30歳代  午前11時30分から翌日午前4時まで営業しているラーメン店の温湿度計及びスポットクーラー等のない厨房における調理作業中、被災者は適度に休憩することなく水分及び塩分を補給しながら調理したものの、午前2時30分に足元がふらついたことから厨房裏口の通路で休憩したが、倒れているところを発見された。
  搬送先の病院で翌日死亡。
・適度な通風や冷房を行うための設備に関すること
・温度計や湿度計等の設置に関すること
・作業休止時間や休憩時間に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
12 8 建設業 36℃
51%
30歳代  屋外の鉄筋加工場において、被災者は水分を補給しながら鉄筋の結束、玉掛け作業等を行い、午後5時には作業を終了し帰宅したものの、作業翌日の午前6時30分ころ、倒れてけいれんしているところを家族に発見された。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・労働衛生教育に関すること
13 8 建設業 30℃ 47% 60歳代  共同住宅新築工事現場における水分を補給しながらの片付け作業中、被災者は廃材を貨物自動車に積込んでいたが、午前11時55分ころ、けいれんして倒れ、冷房の効いた場所に運ばれたものの、心肺停止となった。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
14 8 その他の事業(警備業) 33℃ 60% 50歳代  工事現場における水分を補給しながらの交通誘導中、被災者は適度に休憩することなく車輌や通行人の誘導を行っていたが、午後3時20分ころ倒れ、心臓マッサージが行われたものの、既に意識はなかった。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・作業休止時間や休憩時間に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
15 8 建設業 33℃ 57% 50歳代  共同住宅新築工事現場における水分を補給しながらの基礎ブロック破砕作業中、被災者は砂利等の運搬作業を行っていたが、午前11時ころ、ふらつき始めたことから休憩したものの呼吸困難となった。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
16 8 建設業 32℃ 65% 30歳代  建物解体工事における水分を補給しながらの片付け作業中、被災者は木屑等を集積していたが、午後3時25分ころ、体調不良となり、休憩したものの震えも出現したため、病院に搬送した。
  搬送先の病院で翌日死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
17 9 その他の事業
(警備業)
32℃ 66% 50歳代  工事現場におけるスポーツドリンクを摂取しながらの交通誘導中、被災者は適度に休憩することなく車輌や通行人の誘導を行っていたが、午後2時ころ、体調不良から誘導箇所付近の日陰で休憩したものの、立上ることができなくなり、意識ももうろうとしてきたことから、身体を冷やす等したが意識がなくなった。
  搬送先の病院で翌日死亡。
・休憩場所の確保に関すること
・作業休止時間や休憩時間に関すること
・健康状態の確認に関すること
・労働衛生教育に関すること
・救急措置に関すること
18 9 建設業 33℃ 45% 30歳代  家屋解体工事現場における溶断作業中、被災者は水分を補給しながら鉄骨等をガス溶断していたが、午後1時30分ころ、意識を失い倒れているところを発見された。
  同日搬送先の病院で死亡。
・塩分の補給に関すること
・健康状態の確認に関すること
・作業場所の把握及び巡視に関すること
・労働衛生教育に関すること

※ 死亡前日の午後5時時点のもの。


熱中症の都道府県別死亡者数(平成15年〜19年)

都道府県 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 都道府県別合計
北海道   1 1   2 4
青森            
岩手            
宮城            
秋田   1   1   2
山形            
福島            
茨城     1   1 2
栃木   1 1     2
群馬            
埼玉 2 2 1 1   6
千葉     1 1   2
東京 2 2 2   2 8
神奈川 2   1     3
新潟       2   2
富山         1 1
石川         1 1
福井   1       1
山梨            
長野            
岐阜 1         1
静岡   1 1     2
愛知   3 2   2 7
三重     1     1
滋賀 1         1
京都     2   1 3
大阪       2 1 3
兵庫 1 1 1 1 1 5
奈良 1   2     3
和歌山     1     1
鳥取            
島根       2   2
岡山 1     1   2
広島   1     1 2
山口 2 1     2 5
徳島     1     1
香川         1 1
愛媛            
高知       1   1
福岡 1   1 2 1 5
佐賀     1 1   2
長崎   1 1     2
熊本     1 1   2
大分            
宮崎 1         1
鹿児島 1 1     1 3
沖縄 1     1   2
合計 17 17 23 17 18 92

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