1. 食品に関する基準の策定について

(1) 残留農薬等対策について
(1)    ポジティブリスト制度の円滑な実施について
   食品中に残留する農薬等(農薬、飼料添加物及び動物用医薬品)については、食品衛生法第11条に基づく規格基準(残留基準)を設定し、その安全確保を図ってきたところであるが、残留基準が設定されていない農薬等に対しては基本的に規制ができないことなどから、残留農薬等に対する規制強化が求められていた。
   このため、平成15年5月の食品衛生法の一部改正において、残留基準が設定されていない農薬等が一定の量を超えて残留する食品の流通を原則禁止する、いわゆるポジティブリスト制度を導入することとし、平成17年11月29日に本制度に関する関係省令等を公布し、平成18年5月29日から施行された。残留基準が設定されている農薬等の数は、本制度の施行後に残留基準が設定されたものを含め、803品目となっている(平成18年12月末現在)。
   なお、本制度の導入に当たり、新たに基準を設定した農薬等については、今後5年間を目途に内閣府食品安全委員会に計画的に食品健康影響評価を依頼することとしており、これらの評価結果を踏まえ薬事・食品衛生審議会において、順次、残留基準の見直しを行っている。平成18年度は186農薬等について評価を依頼することとしている。
   今後も引き続き、意見交換会の開催等により、本制度の普及啓発に努めるとともに、分析法の開発を進め、本制度の適切かつ円滑な実施を推進していくこととしているので、ご理解とご協力をお願いする。

(2)    農薬等の一日摂取量調査等について
   国民が日常の食事を介してどの程度の農薬等を摂取しているかを把握するため、従来より、都道府県及び保健所設置市の御協力を得て、残留農薬等の一日摂取量調査(国民健康・栄養調査を基礎とするマーケット・バスケット調査方式)を実施してきたところである。
   この調査は、実際の食生活における農薬等の摂取量を把握するものであり、食品 の安全性を確保する上で重要である。平成16年度からは、ポジティブリスト制度 の導入に伴い新たに残留基準を設定した農薬等の評価に資するよう、品目を増やし て、広く調査を実施しているところである。
   調査には多くの自治体の御協力が不可欠であり、平成18年度は16の自治体に参画していただいたところであるが、平成19年度においては、より多く参画していただけるよう一層の御協力をお願いする。


(2) 食品添加物の衛生対策について
(1)    国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている添加物の指定について
   平成14年7月、諸外国で食塩に固結防止の目的で食品添加物として使用されるフェロシアン化物(当時、未指定添加物)が含まれた食品に対する食品衛生法上の対応を検討する中で、添加物の規制に関し、国際的に安全性評価が確立し、広く使用されているものについては、国際的な整合性を図る方向で、我が国の指定制度のあり方についても見直しを行ったところである。
   具体的には、(1)FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA:注)で一定の範囲内で安全性が確認されており、かつ、(2)米国及びEU諸国等で使用が広く認められていて、国際的に必要性が高いと考えられる添加物については、企業からの要請がなくとも、指定に向け、個別品目毎に安全性及び必要性を検討していくとの方針が、平成14年7月26日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において了承された。
   上記選定基準を満たすものについて調査したところ、香料を除き、46品目が挙げられ、これらにつき優先順位を付した上で情報収集等を行っている。情報収集の結果、食品添加物としての指定の可否を検討するために必要な資料が取り揃えられた品目については、順次、食品安全委員会に食品健康影響評価の依頼を行っているところであり、平成18年12月現在、46品目の内、33品目について指定に向けた手続を開始している状況となっている。今後とも、資料の収集を図り、食品安全委員会への評価依頼など諸手続を進めていくこととしている。
   上記46品目の内、食品安全委員会の食品健康影響評価の結果及び薬事・食品衛生審議会の答申を踏まえ、平成18年12月現在、7品目がわが国で食品添加物として指定されている。
   国際的に汎用される食品用途の香料については、平成15年11月、「国際的に汎用されている香料の安全性評価方法について」が取りまとめられ、これに基づいて、指定手続きを進めている。

(注):  【JECFA(FAO/WHO食品添加物専門家委員会:Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)】
食品添加物、農薬、残留動物用医薬品、汚染物質の1日許容摂取量/1日耐容 摂取量の検討等を行っている国際専門機関。

(2)    添加物の安全性確認について
   長い食経験等があり、安全性上問題があるとの情報もないこと等から、平成7年の食品衛生法改正時以降特例的に使用が認められている既存添加物については、速やかに安全性の確認を行うことが求められている。また、平成15年5月の同法改正において、安全性に問題があると判明した、又は既に使用実態のないことが判明した既存添加物については、既存添加物名簿からその名称を消除し、使用を禁止することができることとされたことから、これら既存添加物の安全性確認について、継続的に実施しているところである。今後は、遺伝子組換動物を用いた試験などバイオテクノロジーの進歩を踏まえた毒性試験を計画的に実施することとしている。
   また、平成17年2月には、使用実態のない既存添加物38品目を既存添加物名簿から消除する告示が適用となり、既存添加物名簿に収載されている品目数は450となった。なお、平成15年の調査においては販売等の実態があるが、その後流通実態等が確認できない47品目については、都道府県等を通じて調査を行ったところである。その結果を受け、流通実態の認められない品目について、平成18年9月12日に消除予定添加物名簿を公示し、現在訂正の申し出を受け付けている。今後申し出内容の確認等を行い消除の手続きを進めることとしているので、事業者への周知等、関係者の御協力をお願いする。

(3)    食品添加物の一日摂取量調査について
   食品添加物の安全性確保対策の一環として、従来から市販食品の分析による食品添加物一日摂取量実態調査(国民健康・栄養調査を基礎とするマーケット・バスケット調査方式)を実施してきたところであり、食品添加物の摂取量は、安全性の観点から問題ないことが報告されている。平成19年度においても調査を実施することとしているので、引き続き関係者の御協力をお願いする。

(4)    食品添加物公定書改正について
食品衛生法第21条に規定する食品添加物公定書については、食品添加物に関する製造・品質管理技術の進歩及び試験法の発達等に対応するため、従来から、おおむね5年ごとに見直しを行い、公定書の改正を実施しているところであり、現在の第7版食品添加物公定書は、平成11年度にまとめられている。公定書の改正に際しては、一般試験法や成分規格の見直し、既存添加物の規格の設定、記載方法の改良等について検討し、食品添加物に係る規格基準を収載した「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号。以下「告示」という。)の改正を併せて行ってきた。
   平成15年8月より学識経験者による検討会において検討を進め、平成17年8月に同検討会の報告書がとりまとめられた。この内容に基づき、厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会あてに諮問がなされ、平成18年12月の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において了承されたところである。今後、パブリックコメント及びWTO通報等の手続きの結果を踏まえて、告示の改正及び第8版食品添加物公定書の作成を行うこととしている。告示の改正及び新しい食品添加物公定書の作成に際しては、事業者及び関係機関に対する周知等につき、関係者の御協力をお願いする。


(3) 食品等の規格基準について
(1)    米等のカドミウムに関する規格基準について
食品中のカドミウムに関する国際基準値については、長年に渡りコーデックス委員会において検討が行われてきたが、昨年7月のコーデックス委員会総会(CAC)にて、最後まで検討が行われてきた精米について、0.4mg/kgの基準値案が最終採択された。
   厚生労働省としては、現在、食品安全委員会に食品健康影響評価依頼中の「食品からのカドミウム摂取の現状に係る安全性確保について」の評価結果に基づき、今後、必要なリスク管理のあり方について検討していくこととしている。
   なお、コーデックス委員会における、ここ1〜2年の検討結果は、次のとおりである。
   平成17年4月に開催されたコーデックス委員会の食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)では、平成17年2月に出されたJECFAでのカドミウムの暴露評価(0.4mg/kgと0.2mg/kgなどいずれの基準値案を設定したとしても食品からのカドミウム摂取量の違いはほとんどなく、人の健康にもほとんど影響を及ぼさない)に基づき、精米の基準値原案を0.4mg/kgとし、ステップ5として総会に諮ることが合意された。
   続く7月に開催されたCACにおいては、精米の基準値原案0.4mg/kgを支持すべきとの意見と支持できないとの意見に分かれたが、議論の結果、精米の基準値原案0.4mg/kgを原案どおり採択し、ステップ6に進めて平成18年4月のCCFACにおいて引き続き検討することとされた。
   平成18年4月のCCFACにおいては、特段の反対意見もなく、精米の基準値案を0.4mg/kgとしてCACに進めることが合意され、同年7月のCACにおいて、国際基準値として最終採択された。

【ステップ(コーデックス規格作成の手続き)について】
コーデックス規格(カドミウムの場合は最大基準値)の作成手続きは、以下に示す8つの段階から構成されている。
    
ステップ1    総会が規格作成を決定
ステップ2    事務局が規格原案の手配
ステップ3    提案された規格原案について各国のコメントを要請
ステップ4    部会が規格原案を検討
ステップ5    規格原案について各国のコメントを要請。そのコメントに基づき、総会が規格原案の採択を検討
ステップ6    規格案について各国のコメントを要請
ステップ7    部会が規格案を検討
ステップ8    規格案について各国のコメントを要請。そのコメントに基づき、総会が規格案を検討し、コーデックス規格として採択

(2)    水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項について
   近年、国際的にメチル水銀の胎児期暴露における影響について評価が行われ、暫定的耐容週間摂取量(PTWI)を見直すとともに、妊婦等に対し食事指導が行われている。
   我が国においても、平成15年6月に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会において検討がなされ、妊婦を対象にした注意事項等を公表したところである。
   その後、魚介類等の水銀濃度や摂食状況等の把握を厚生労働科学研究等により継続して行ってきたこと、国際専門家会議(JECFA)において、平成15年6月に従来のPTWI3.3μg/kg/週が1.6μg/kg/週に変更されたことなどを踏まえ、平成16年7月に食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し、平成17年8月2日に評価結果が示されたところである。厚生労働省としては、食品健康影響評価と並行して薬事・食品衛生審議会において注意事項の見直しを議論していただいていたところであり、これらの結果を踏まえ、平成17年11月2日、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について」を公表したところである。
ついては、本注意事項の趣旨を正確に御理解いただくとともに、消費者に対する正確な情報提供についてもよろしくお願いする。

(3)    器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤の規格基準の改正について
   器具・容器包装、おもちゃ、洗浄剤に係る規格基準については、平成13年度から平成15年度にかけて行われた厚生労働科学研究の結果を踏まえ、有害試薬を使わない試験法や高い分析精度を有する試験法について検討し、平成18年3月31日に規格基準告示の一部改正を行ったところである。
   ついては、事業者及び関係機関に対する周知等について御協力をお願いする。

(4) 食品の表示について
  ・    食品の表示に関するパンフレットの作成・配布について
   これまで、厚生労働省、農林水産省、公正取引委員会が協力して、各表示制度をわかりやすくまとめたパンフレットを作成し、配布しているところである。
   このほか、個別の食品表示制度に関するものとして、アレルギー物質を含む食品表示制度や、遺伝子組換え食品表示制度を紹介するパンフレットも作成し、配布している。
   食品等に係る表示の適正化を図るため、引き続き、関係業者等への周知徹底・指導方よろしくお願いする。


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