厚生労働省大臣官房地方課は、平成18年度に係る都道府県労働局における不正経理等の再発防止策の実施状況について、次のとおり評価を行ったところです。
また、当該評価結果については、外部の有識者が参画する地方支分部局法令遵守委員会の意見を頂き、その結果とともに、平成19年10月30日付けで都道府県労働局長あて通知したところです。
労働局における不正経理等の再発防止策の実施状況の評価について |
厚生労働省大臣官房地方課
平成19年3月15日付け地方課長通達「不正経理等の再発防止策の具体的な実施方法等について」の記の2の(3)に基づき、各労働局における不正経理等の再発防止策の実施状況について、下記のとおり総括的に評価する。
1 不正経理等の再発防止策の徹底について(定期的な内部点検を踏まえた評価)
定期的な内部点検として、不正経理等の再発防止策が徹底されていることを確認するため、「不正経理等再発防止チェックリスト」(以下「チェックリスト」という。)を用いて、平成18年度においては、3月末時点における各労働局の実施状況について点検と検証が実施され、各労働局長より報告されたところである。
各労働局長よりチェックリストの検証結果報告を受け、また、複数の労働局に訪問しヒアリングを実施したところ、各局を通じて、都道府県労働局不正経理等防止対策要綱(平成18年11月10日制定)に基づき、不正経理等の再発防止策の徹底について、総じて適正な取組みが行われているものと評価される。しかしながら、一部に次のような問題点が認められた。
(1) チェックリストの検証結果報告について
検証の結果、一部に次のような事例が認められた。
○ 公務員倫理や法令遵守に関する職員研修等に外部講師を活用した研修となっていないもの、また、公務員倫理や会計経理等に係る中央研修の内容等が、一部の部署でしか伝達されていないもの。
○ 予算執行職員の補助者の任命において、国に対する弁償責任を負うことを説明されていないもの。
○ 予算の計画的な執行について、年間事業計画に基づいた予算の執行計画が作成されていないもの、また、予算の執行状況を管理者が把握していないもの。
○ 物品の購入等について、その管理が不十分、また、物品管理簿への登記が遅れる、あるいは登記されていないもの。
○ 超過勤務に係る問題点が分析されておらず、一部の職員に超過勤務が集中する傾向があるもの、また、業務の繁閑を考慮した年間の執行計画が作成されていないもの。
○ 労働局総務課に対する内部監査について、総務課職員による監査となっているもの。
(2) 労働局に対するヒアリングの実施結果について
複数の労働局を訪問し、ヒアリングを実施したところ、次のような取組みが行われている事例が認められたが、これらは好事例と評価できる。
○ 不正経理等の再発防止策の徹底に当たり、局長、総務部長が署所を訪問し、幹部職員との意見交換、また、職員に対し具体的な指示を行っているもの。
○ 超過勤務が特に多い職員や業務の偏りの状況など改善すべき問題点の把握に当たり、随時、勤務時間管理員よりヒアリングを実施しているもの。
○ チェックリストによる自主点検について、平成18年度は局内のみの実施としたが、署所長に対しても自主点検の指示を行ったもの。
2 会計経理の適正化の状況について(内部監査及び会計監査指導に基づく評価)
労働局で実施した内部監査及び会計監査指導における一般経理等の監査実施結果をみると、会計経理の適正化に向けた取組みは、概して講じられているが、一部に次のような不適正な事案がみられたところであり、改善措置を講じる必要がある。
(1) 労働局で実施した内部監査の実施状況について
各労働局で実施された内部監査(平成18年度)に係る指摘事項等については、次のとおりである。
[1] 内部監査に係る指摘事項として、次のような事案が散見された。
○ 出勤簿、休暇簿、旅行命令簿等の不整合、印漏れ、また、不適切な表示等について
出勤簿等への記載または押印はその都度行うこととされているところであり、旅費等の適正な支給を確認するため監査を行っているところである。指摘された事案については、出勤簿等へその都度記載または押印を怠ったことによる事務処理の誤りにより不整合が生じたものである。その後、是正措置がとられたことを確認し、不適正な会計処理は認められなかった。
○ 超過勤務時間、登退庁簿及び機械警備記録との不整合について
指摘された事案は、超過勤務命令簿等への転記ミスなどによる事務処理の誤りにより不整合が生じたものであり、結果として、その一部に超過勤務手当が不適正に支給された事案が認められ、回収などの是正措置が講じられているところであるが、事務処理の見直し等の改善措置を講じる必要がある。
[2] なお、一部の局においては、内部監査の実施に関し、次のような問題点がみられた。
・ 内部監査実施要領に盛り込むべき事項が不十分であるにも拘わらず、要領の見直しがされていないもの。
・ 総務課に対する内部監査が総務課職員により行われているもの。
・ 監査結果が局長まで報告されていないもの。
・ 局内各課室に対する内部監査を実施していないもの。
(2) 会計監査指導の概況
平成18年度における会計監査指導は、全労働局において実施され、主に次のような事案が指摘された。指摘事項については、その後において是正措置がとられたことを確認しているところである。
○ 資金前渡官吏の小切手帳等の検査、確認が毎日行われていないもの。
○ 予定価格の積算に当たり、業者見積りにより積算が行われていたもの又は根拠が不明確なもの。
○ 物品管理簿等への記録がされていないもの。
○ 内部監査において、労働局に対し是正状況の報告がなされていないもの。
3 中央監察結果の概要に基づく評価について
都道府県労働局の管理事務及び企画調整事務に係る平成18年度の中央監察は、24労働局において実施され、問題点として、主に次のような事案が指摘された。指摘事項については、その後において是正措置がとられたことを確認しているところである。
○ 国家公務員倫理規程の改正内容の周知について、本省通達等を管理者等へ配布するのみであり、一般職員に対する十分な周知が行われているとはいえないもの。
○ 会計経理の内部監査について、[1]監査員に会計経理事務担当者以外の者が任命されていない、[1]各部署ごとの指摘事項等が文書で明確になっていないことから、局幹部がその内容を的確に把握できず、また署・所からの改善報告も求めていない、[3]全体の監査結果は取りまとめているが、これが会計担当者のみに伝えられているだけで、署・所の管理職には伝達されていないなど、その実施に適切を欠くもの。
○ 局総務課に係る内部監査について、同課の会計係が実施しているもの。
○ 超過勤務の縮減を図っているものの、依然として超過勤務が一部の職員に偏っている状況がみられるもの。
4 本省における評価について
上記1から3を踏まえ、本省においては、各労働局における不正経理等の再発防止策について、次のように総括的に評価するとともに、改善措置を講じるよう指示することとする。
(1) 総括的な評価について
[1] 上記1により、各労働局長からのチェックリストの検証結果報告並びにヒアリングを実施した結果によれば、総括的に不正経理等の再発防止策は励行されていると評価できるが、一部に、不正経理等の再発防止策の内容が十分に周知されていないなどの問題点等がみられた局においては、その改善措置を講じる必要があること。
[2] 上記2により、労働局で実施した内部監査及び会計監査指導の概要の結果によれば、事務処理の誤りにより一部に超過勤務手当が不適正に支給された事案が確認されたため、問題点等がみられた局においては、その改善措置を講じる必要があること。
[3] 上記3により、中央監察結果の概要においても、問題点等が指摘されていることから、その改善措置を講じる必要があること。
[4] 以上より、本省においては、各労働局に対し、不正経理等の再発防止策が励行されていることを総括的に評価するが、会計経理の適正化において、問題点等が一部みられたため、次の改善措置を含め、早急に再発防止策の徹底を講じること。
(2) 講じるべき改善措置について
問題点等がみられる局においては、次の措置を講じるとともに、引き続き、不正経理等防止対策要綱に基づき、再発防止策の徹底を講じていくこと。併せて、評価の過程で好事例と思われる取組みについて情報提供を行うので、各局の実情に合わせ取り入れていただきたい。
[1] 公務員倫理の徹底と綱紀保持について、単に、不正経理等再発防止対策の内容を署所等に文書による通知に止めることなく、[1]署所長会議等の場を通じた署所長、労働局課室長等に対する局長、総務部長等からの直接の指示、[2]前記会議等の場において、指示を受けた労働局課室長、署所長等からの部下職員への直接の指示、[3]職員研修等における局管理者からの直接の指示等、あらゆる機会を通じて、全職員に対し、不正経理等再発防止を十分に認識させること。
○ なお、好事例として、次のような取組みが行われていた。
・ 不正経理等の再発防止策の徹底に当たり、局長、総務部長が署所を訪問し、幹部職員との意見交換、また、職員に対し具体的な指示を行っているもの。
・ 人事院近畿事務局が実施した「JKET研修」を受講した職員が講師となり、新入職員を対象に公務員倫理の研修を実施、また、人事院に研修講師の依頼を行ったもの。
・ 参議院決算委員会(警告決議)の中継をビデオに録画し、署所長会議の場でそのビデオを視聴させるとともに、各署所へはCDに記録し配付するなど、労働局が置かれている厳しい状況を認識させているもの。
[2] 会計事務処理体制の確立について、予算執行職員の補助者の任命において、予算執行職員には特別の義務と責任が課されること、国に対する弁償責任を負うことを任命時に確実に説明すること。
○ なお、好事例として、次のような取組みが行われていた。
・ 局独自の会計事務必携等を作成し、適正な経理事務の実施に努めているもの。
[3] 予算の計画的な執行について、年間事業計画に基づいた予算の執行計画を作成するとともに、管理者は予算の執行状況について十分に把握すること。
○ なお、好事例として、次のような取組みが行われていた。
・ 予算の計画的な執行について、局独自の委員会等を設置し、効果的かつ効率的な予算管理に努めているもの。
・ 物品の購入、管理等について、局独自の要領に基づき適正に管理しているもの、また、年間備品整備計画に基づく優先順位を定め計画的に調達しているもの。
[4] 勤務時間管理及び超過勤務手当の支給の適正化について、平成19年3月30日付け事務連絡「超過勤務縮減対策に係る留意点について」に基づき、適正な勤務時間管理及び業務調整等による業務処理体制の確保等について、管理者をはじめとして職員へ周知するとともに、一層の超過勤務の縮減を図ること。
○ なお、好事例として、次のような取組みが行われていた。
・ 超過勤務が特に多い職員や業務の偏りの状況など改善すべき問題点の把握に当たり、随時、勤務時間管理員よりヒアリングを実施、また、超過勤務の多い職員に対しヒアリングを実施し健康確保や業務処理体制について配慮しているもの。
・ 局総務課において、毎月の超勤時間数及び執行額を所属毎に把握するとともに、所属毎の一人当たりの平均超勤時間数、また、年間の超過勤務手当に係る予算管理及び執行状況を適格に把握しているもの。
[5] 内部監査の徹底について、総務(会計)課に対する内部監査を当該課の職員以外の者が実施すること、また、指摘事項を含めた監査結果を全部署に周知することなどを含め、内部監査が十分に機能されるよう内部監査の実施方法等の見直しを行うこと。
また、平成19年5月9日付け事務連絡「労働局における効果的な内部監査の実施について」に基づき、他局の職員が参加する内部監査については、別の視点から監査を実施することにより、効果的かつ厳正な監査が期待できることなど、その趣旨・目的を認識のうえ実施すること。
地方支分部局法令遵守委員会における委員の指摘 |
平成18年度に係る労働局における不正経理等の再発防止策の実施状況については、上記のとおり本省地方課において、総括的に評価を行ったところである。
当該評価結果については、平成19年10月3日に外部の有識者が参画する「第3回地方支分部局法令遵守委員会」を開催し、委員会委員より、「全般的にはよく取り組んでいる」という評価とともに、下記のような改善点や今後の取り組みへのアドバイスをいただいたところである。
○ 今回の評価結果は細部に渡っており、これに満足することなく、きちんと地方にフィードバックすることが重要。また、ホームページに公表するなどオープンにしていくという姿勢が不正の防止に繋がる。
○ 細部まですべてをチェックして、不正がないことを立証することは困難であるが、責任の所在を明らかにし、ダブルチェックをかけるなど、仕組みとして不正経理が起こり得ないものを構築しておく必要がある。今、地方局も含めて担当されている幹部は適正な対応をとることが推測されるが、異動になると分からなくなる。今後は、永続的な再発防止策を詰めていくことが必要であること。
○ 研修については、費用をさらに要してでも、しつこく徹底して行うことが大切である。
○ 悪い情報がすぐに伝わる体制など、管理者へ情報の伝達が円滑に行われるようにすること。