パートタイム労働法が変わります。

〜平成20年4月1日施行〜

少子高齢化、労働力人口減少社会で、パート労働者が能力を一層有効に発揮
することができる雇用環境を整備するため、パートタイム労働法が改正されました。

定義

「パート労働者」とは(第2条)

パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象である「短時間労働者(パート労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パート労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。

なお、パートタイム労働法の対象とならないフルタイムで働く方であって、「パート」などこれに類する名称で呼ばれている方についても、この法律の趣旨を踏まえた雇用管理を行うことが望まれます。

改正のポイント

雇い入れの際は、労働条件を文書などで明確に!
雇い入れ後も待遇について説明を!

(1) 一定の労働条件について明示が義務化されます。<改正法第6条>

労働基準法により労働条件の明示が文書の交付によって義務づけられている事項に加え、一定の事項※1 について、文書の交付等※2 による明示が義務化されます。
→違反の場合は過料(10万円)に処せられます。

※1 「一定の事項」は、 昇給、退職手当、賞与の有無 が、※2の「文書の交付等」は、文書のほか電子メールによる明示が予定されていますが、いずれも今後省令で定められます。

(2) 待遇の決定に当たって考慮した事項について説明することが義務化されます。<改正法第13条>

雇い入れ後、パート労働者から求められたとき、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務化されます。

説明義務が課せられる事項・・・労働条件の明示、就業規則の作成手続、待遇の差別的取扱い、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換を推進するための措置

パート労働者の待遇は働き方に応じて決定を!

考え方

パート労働者は、繁忙期に一時的に働く方から正社員と同様の仕事に従事し長期間働く方までその働き方はさまざまです。このため改正法では、パート労働者の待遇を正社員との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じるよう規定しています。具体的には、職務、人材活用の仕組み、契約期間3つの要件が正社員と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いをそれぞれ規定しています。

(1) 「正社員と同視すべきパート労働者」の待遇を差別的に取り扱うことが禁止されます。<改正法第8条>

正社員(通常の労働者)と同視すべきパート労働者(正社員と職務(仕事の内容や責任)が同じで、人材活用の仕組み(人事異動の有無や範囲)が全雇用期間を通じて同じ※1 で、かつ、契約期間が実質的に無期契約となっているパート労働者)のすべての待遇について、パート労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。

※1 「人材活用の仕組みが全雇用期間を通じて同じ」とは、パート労働者の職務が正社員と同一になってから、雇用関係が終了するまでの間の人事異動の有無や範囲が事業所の慣行などから判断して同一と見込まれる場合をいいます。

(2)(1)以外のパート労働者の 賃金、教育訓練、福利厚生 については・・・
【 賃 金 】<改正法第9条>

パート労働者の賃金を決定する際は、正社員との均衡を考慮し、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案する※2 ことが努力義務化されます。

さらに、正社員と職務と一定期間の人材活用の仕組みが同じ場合は、賃金を正社員と同一の方法で決定する※3 ことが努力義務化されます。

★ 対象となる賃金は、基本給、賞与、役付手当等が予定されていますが、今後省令で定められます。

※2「職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案する」とは・・・

★例えば、パート労働者の賃金を事業主の主観やパート労働者だからという理由で一律に決定するのではなく、職務の内容や経験に応じて賃金を決定することをいいます。

<見直し前>
時給は一律 ¥850
<見直し後>
職務内容と能力のレベルに応じて段階的に賃金を決定する。

※3「同一の方法で決定する」とは・・・

★例えば、正社員と同じ賃金表を適用する、正社員が職能給であればパート労働者も職能給にするなど給与制度をそろえ、同じ評価基準によって賃金を決定することをいいます。

【 教育訓練 】<改正法第10条>

正社員との均衡を考慮し、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等に応じてパート労働者の教育訓練を行うことが努力義務化されます。

さらに、正社員と職務が同じ場合は、正社員に行う職務の遂行に必要な教育訓練について、既に必要な能力を有している場合を除き職務が同じパート労働者にも行うことが義務化されます。

【 福利厚生 】<改正法第11条>

健康を保って働くための施設や業務を円滑に遂行するための福利厚生施設について、パート労働者に利用の機会を提供するよう配慮することが義務化されます。

★ 対象となる福利厚生施設は、 給食施設、休憩室、更衣室が予定されていますが、今後省令で定められます。

(1)と(2)をまとめると・・・・

【パート労働者の態様】
正社員と比較して、
賃   金 教育訓練 福利厚生
職務関連賃金
 ・基本給
 ・賞与
 ・役付手当等
左以外の賃金
 ・退職手当
 ・家族手当
 ・通勤手当等
職務遂行に必要な能力を付与するもの 左以外のもの(ステップアップを目的とするもの) 健康の保持又は業務の円滑な遂行に資する施設の利用 左以外のもの(慶弔休暇、社宅の貸与等)
職務(仕事の内容及び責任) 人材活用の仕組み(人事異動の有無及び範囲) 契約期間

[1] 正社員と同視すべきパート

同じ 全雇用期間を通じて同じ 無期or反復更新により無期と同じ

[2] 正社員と職務と人材活用の仕組みが同じパート

同じ 一定期間は同じ

[3] 正社員と職務が同じパート

同じ 異なる

[4] 正社員と職務も異なるパート

異なる 異なる

(講じる措置)
◎・・・パート労働者であることによる差別的取扱いの禁止
○・・・実施義務・配慮義務
□・・・同一の方法で決定する努力義務
△・・・職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案する努力義務

パート労働者から正社員へ転換するチャンスを!

正社員への転換を推進するための措置(以下の措置またはこれらに準じた措置)を講じることが義務化されます。<改正法第12条>

(講じる措置の例)
★ 正社員を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパート労働者に周知する。
★ 正社員のポストを社内公募する場合、既に雇っているパート労働者にも応募する機会を与える。
★ パート労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する。

パート労働者からの苦情の申し出に対応を!

(1)パート労働者から苦情の申し出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務化されます。<改正法第19条>

(2)紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言,指導,勧告、紛争調整委員会による調停が設けられます。<改正法第21、22条>

対象となる苦情・紛争・・・労働条件の明示、待遇に関する説明、待遇の差別的取扱い、職務遂行に必要な教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換を推進するための措置

  平成20年4月から改正パートタイム労働法が施行されますが、それまでの間に必要な省令、指針が、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会雇用均等分科会の審議を経て定められます。改正法に沿った雇用管理となるよう、いまいちど雇用管理のチェックをお願いします。
  なお、正社員、パート労働者にかかわらず、労働条件を事業主が合理的な理由なく一方的に不利益に変更することは許されません。労働条件を見直す際は、労働者とよく話し合ったうえですすめてください。

  パート労働者の雇用管理の改善のため、評価・資格制度や正社員への転換制度などを導入した場合の 事業主及び中小企業事業主団体向け助成金制度が設けられています。詳しくは、(財)21世紀職業財団へお問い合わせください。(http://www.jiwe.or.jp) また、母子家庭の母の常用雇用の促進を図るため、地方公共団体において、パート労働者等で雇用している母子家庭の母を常用雇用に転換した場合の事業主向け奨励金制度(制度概要は、https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/bosikatei/1.html)が設けられています。詳しくは、都道府県母子福祉行政主管課にお問い合わせください。

パートタイム労働法に関するお問い合わせは、各都道府県労働局雇用均等室

厚生労働省 ホームページ https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/index.html (平成19年7月発行)


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