7.認知症対策の総合的な推進について

 認知症対策については、改正介護保険法において、地域密着型サービスの創設や地域包括支援センターを中核とした総合的なマネジメント体制の構築などにより、制度的な対応を図っていくこととしている。こうした制度的な対応以外に、早期の段階からの適切な診断と対応、認知症に関する正しい知識と理解に基づく本人や家族への支援など、地域単位での総合的かつ継続的な支援体制を確立していくことが必要である。
 平成18年度予算案においては、従来の認知症関連予算事業を再編して「認知症対策等総合支援事業」を創設し、主治医等を中心とした早期診断等の地域医療体制の充実、早期段階に対応したサービスの普及、地域における認知症の理解の普及や本人・家族等の支援ネットワークの構築支援、認知症介護の専門職員等に対する研修の充実等、認知症の各ステージに応じた対策を推進していくこととしている。
 その詳細については、今後の担当課長会議等でお示しすることとしているが、本事業の概要は次のとおりであるので、各都道府県・指定都市におかれては、本事業の実施に遺漏なきよう準備願いたい。

認知症対策等総合支援事業の創設
 平成18年度予算案 1,550百万円

(1)認知症地域医療支援事業

  認知症の早期段階における対応を進めていくためには、早期発見・早期診断が重要である。もとより、主治医(かかりつけ医)には、認知症の発症初期から終末期に至るまで、認知症高齢者の生活全般にわたる幅広い役割が期待されているが、特に早期段階における役割は重要である。
 このため、平成17年度から、主治医(かかりつけ医)への助言や地域における連携づくり等の支援、都道府県・指定都市単位で実施する主治医(かかりつけ医)を対象とした研修の企画立案等を行う「認知症サポート医(推進医師)」の養成研修事業を実施しているところである。
 平成18年度においては、本養成研修事業を更に推進するとともに、認知症サポート医(推進医師)のみならず、主治医(かかりつけ医)の認知症対応力(診断や相談等の対応)の向上を図る観点から、都道府県・指定都市において、医師会等と連携を図りながら、新たな研修事業を実施することとしている。
 かかりつけ医認知症対応力向上研修事業
 高齢者が日頃より受診する診療所等の主治医(かかりつけ医)に対し、適切な認知症診断の知識・技術や家族等からの相談への対応力などを習得するための研修を実施する。
 ・ 実施主体 都道府県・指定都市
 ・ 負担割合 国:1/2 都道府県・指定都市:1/2

(2)認知症早期サービス等推進事業

  認知症の早期段階における対応を進めていくためには、専門職による関与のみならず、地域における認知症予防や見守り・支援等の取組を進めていくことも重要である。
 このため、認知症予防に関する先駆的な取組み事例の情報収集・紹介や地域における認知症高齢者や家族の見守り・支援ネットワークの構築、さらに、改正介護保険法に基づく「地域密着型サービス」に関する知識や理解の促進を図るため、地域の関係者等に対する研修事業の実施等を内容とする「認知症早期サービス等推進事業」を実施することとしている。
 ・ 実施主体 都道府県・指定都市
 ・ 負担割合 国:1/2 都道府県・指定都市:1/2

(3)認知症理解普及促進事業

  認知症高齢者や家族等が、地域において安心して生活を営むことができるよう、認知症に対する理解の促進や認知症の各ステージに応じた様々な支援、さらに、地域全体で認知症高齢者や家族を支えるためのネットワークづくり等を推進するため、従来の「介護予防・地域支え合い事業」において実施してきた事業を再編し、新たに以下の事業を実施することとしている。
 ・ 実施主体 都道府県・指定都市
 ・ 負担割合 国:1/2 都道府県・指定都市:1/2

 認知症高齢者をかかえる家族に対する支援事業
 認知症高齢者や家族等が、認知症介護の経験を持つ地域の経験者等と電話相談や交流集会等を通じて交流する環境を整備することにより、認知症の知識・介護技術だけではなく、精神面も含めた支援を行う体制を構築する。
 認知症地域支援ネットワーク推進事業
 地域において認知症の理解を普及する取組や徘徊等に対応したネットワークづくりを推進することにより、地域全体で認知症高齢者等を支援する体制を推進する。

(4)認知症介護実践者等養成事業

  今後増加する認知症高齢者に対応するためには、改正介護保険法の目的に明記された「尊厳の保持」を基本理念として、サービス提供やケアの面において、認知症高齢者の特性を踏まえ、生活全般を視野に入れつつ、なじみの人間関係や居住空間といった「関係性」を重視した「認知症ケアモデル」を構築していくことが重要である。また、介護に携わる人材養成においても、こうした観点からの専門性の向上を図っていく必要がある。
 これまでも、認知症介護従事者やその指導者等に対する研修を実施してきたところであるが、新たに以下の事業を実施することとしている。
 ・ 実施主体 都道府県・指定都市
 ・ 負担割合 国:1/2 都道府県・指定都市:1/2

 小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修
 小規模多機能型サービス等における計画作成担当者(介護支援専門員)に必要な専門的な知識及び技術を修得させるための研修事業。
 認知症介護サービス事業開設者研修
 認知症高齢者に関連するサービス事業所(認知症高齢者グループホーム、小規模多機能型サービスなど)を開設する者に対して、認知症介護に関する知識を修得させることにより、介護サービス事業所全体の質の向上を図るための研修事業。

(5)身体拘束廃止推進事業

  介護保険施設等における身体拘束廃止の取組を推進するため、これまで、身体拘束廃止推進会議の設置や、施設長、看護職員、推進員等に対する研修事業を実施してきたところである。
 昨年末に公表した「介護保険施設における身体拘束状況調査」においても、施設長等が率先して研修事業等への取組みを行っている施設ほど拘束率が低い傾向にあるとの結果も出ていることから、今後ともこれらの事業を推進していくとともに、現場に根ざした、より具体的な取組を進めていく観点から、新たに以下の事業を実施することとしている。
 身体拘束廃止事例等報告検討会
 身体拘束廃止の取組が更に充実するよう、各都道府県内において、身体拘束廃止に向けた取組事例等に関する報告検討の場を設置し、情報提供・交換を行う取組の推進を図る。
 ・ 実施主体 都道府県
 ・ 負担割合 国:1/2 都道府県:1/2



認知症対策等総合支援事業の図

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