3.介護報酬改定について

 介護報酬の改定については、昨年12月13日に開催された第38回社会保障審議会介護給付費分科会において、「平成18年度介護報酬改定に関する審議報告」(別添)が取りまとめられたところであり、今月26日に予定されている第39回同分科会に、個別の介護報酬単位、基準の見直しについて諮問する予定で準備中である。



平成18年度介護報酬改定に関する審議報告

平成17年12月13日
社会保障審議会介護給付費分科会

 当分科会は、本年9月より11回にわたり、平成18年度に予定されている介護報酬の見直しについて検討を行ってきた。
 今回の介護報酬改定では、市町村における介護保険料の見直しと併せて通常3年に1回行われる改定に加え、本年6月に成立した「介護保険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う制度的な見直しへの対応、本年10月施行の介護報酬改定に関連する課題への対応、診療報酬との同時改定に伴う医療と介護の機能分担の明確化と連携の強化など、新たな状況への対応が求められる。
 当分科会においても、こうした状況を踏まえ、短期間に集中的な議論を行ってきたところであるが、これまでの議論に基づき、平成18年度介護報酬改定に関する基本的な考え方を以下のとおり取りまとめたので報告する。
 なお、今回の改定は制度改正に伴う新たなサービス内容も含まれていることから、実施後のデータ等を集積する仕組みを工夫し、事後の評価・分析ができるようにすることが必要である。


I.基本的な考え方

 ○ 平成18年度の介護報酬改定については、次のような基本的な視点に立った改定を行うことが必要である。

 (1)制度の持続可能性の確保、効率的かつ適正なサービス提供
 介護報酬の全体的な水準については、賃金・物価の動向等の昨今の経済動向、介護事業経営実態調査の結果、保険財政の状況、平成17年度介護報酬改定等を踏まえ、制度の持続可能性を高め、保険料の負担をできる限り抑制する方向で、適正な水準とすることが必要である。さらに、将来的には介護予防の推進等により、できる限り保険料水準の増大を抑えていくことが望まれる。
 また、限られた財源を有効に活用するため、現行の各サービスの介護報酬について、サービス提供の実態、サービスを利用する者や保険料を負担する者の視点も踏まえつつ、効率化・適正化の観点から見直しを行う。

 (2)中重度者への支援強化
 サービスの充実が求められている中重度者、とりわけ、在宅中重度者に対する介護サービスについて、医療との連携を含め、充実を図る。また、施設や居住系サービスにおける重度化対応やターミナルケアを含めた医療との連携の強化、機能分担の明確化を図る。
 さらに、難病やがん末期の患者の在宅介護ニーズへの対応など、専門的ケアの充実を図る。

 (3)介護予防、リハビリテーションの推進
 予防給付として提供される介護予防サービスについては、軽度者の状態を踏まえつつ、自立支援の観点に立った効果的・効率的なサービス提供体制を確保し、目標指向型のサービス提供を徹底する観点から、「介護予防ワーキングチーム中間報告」の方向を踏まえつつ、報酬・基準の設定を行う。
 また、リハビリテーションについては、在宅復帰・在宅生活支援の観点を重視した短期・集中的なサービス提供の評価、サービス提供過程(プロセス)重視の視点に立った評価の見直しを行う。

 (4)地域包括ケア、認知症ケアの確立
 今後重要性を増す認知症ケアの充実や、施設から在宅へという流れの中で、在宅生活の継続を支える環境づくりのため、地域包括支援センターを中心とした地域包括ケアのネットワークと連携を図りつつ、新たに創設される地域密着型サービスである小規模多機能型居宅介護や夜間対応型訪問介護等の推進、早めの住み替えに対応した居住系サービスの多様化などの見直しを行う。
 さらに、認知症ケアについては、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の質・機能の向上や認知症対応型デイサービス、若年認知症ケアなどの充実を図る。

 (5)サービスの質の向上
 サービスの質を確保するためには、利用者にとって自立支援のための最適なサービスの組合せを多職種協働で総合的に設計し、提供するケアマネジメントの仕組みが公正中立に機能することが最も重要である。ケアマネジメントがこうした本来の機能を果たし得るよう、多職種協働によるプロセス重視の視点に立った見直しを行う。
 また、研修体系の見直し等を行いつつ、サービス担当者の専門性の向上を図るとともに、施設等における利用者の生活・療養環境の改善を図る。
 さらに、利用者との十分な意思疎通に基づく適切なケアマネジメントの実施を前提としつつ、サービスの質、機能などに応じ、プロセス、成果を積極的に評価する。
 制度改正により新たに導入される情報公表の仕組み等も踏まえ、利用者の視点に立ったサービス情報の提供を推進するとともに、不適正な事業者を適切に排除する観点から、今回の制度改正における事業者規制の見直しも踏まえ、基準の明確化を行いつつ、指導・監査の徹底を図る。


II.各サービスの報酬・基準見直しの基本方向

 (1)介護予防サービス
 介護予防サービスについては、軽度者の状態を踏まえた自立支援の徹底と目標指向型のサービス提供を推進する観点から、ケアマネジメントの徹底を図りつつ、報酬・基準の設定を行う。
 通所系サービスについては、日常生活上の支援などの「共通的サービス」と、運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上の「選択的サービス」に分け、それぞれについて月単位の定額報酬とする。従来、加算として評価されてきた送迎や入浴については共通的サービス部分に包括する。また、目標の達成度に応じた事業者評価については、要介護度の維持・改善を指標として、試行的に導入する。
 訪問介護については、身体介護・生活援助の区分を一本化し、月単位の定額報酬とするとともに、通院等乗降介助については報酬上の評価は行わない。
 また、要支援者(要支援1・2)に係る支給限度額については、介護予防サービスの報酬設定を踏まえつつ、適正化の観点から設定する。

 (2)地域密着型サービス
 地域密着型サービスについては、住み慣れた自宅や地域での生活を継続できるようにするため、地域に開かれた良質なサービス提供を確保する観点から、また、小規模であるために高コスト、非効率なサービス提供とならないようにする観点から、報酬・基準の設定を行う。
 新たなサービス類型である小規模多機能型居宅介護については、施設サービスや居住系サービスの報酬水準、支給限度額や利用額の実績などを勘案しつつ、要介護度別・月単位の定額報酬を基本とした報酬を設定するとともに、良質かつ効率的なサービス提供を確保する観点から基準の設定を行う。
 同じく新たなサービス類型である夜間対応型訪問介護については、地域の実情に応じた事業実施が可能となるような報酬、基準の設定を行う。
 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)については質の向上を図りつつ、健康管理・医療連携体制の強化、空き居室を活用した短期利用の導入などの見直しを行う。認知症対応型通所介護については、質の確保に留意しつつ、グループホーム等の共用スペースの活用など利用形態の多様化を図る。
 地域密着型介護老人福祉施設や地域密着型特定施設については、人員や設備基準の緩和によって効率的な運営が行えるよう、基準の見直しを行う。

 (3)居宅介護支援・介護予防支援
 介護給付の居宅介護支援については、業務に要する手間・コストの適正な反映、プロセスに応じた評価、公正中立、サービスの質の向上の観点から見直しを行う。
 基本部分については、要介護者のサービス利用状況や業務の実態を適切に反映した報酬体系とする観点から要介護度別の設定とするとともに、初回時についての報酬上の評価を行う。その際、退院、退所時における医療機関・施設と在宅との連携をより評価する。
 また、ケアマネジメントの質を確保する観点から、サービス担当者会議の未実施や正当な理由のない特定事業所へのサービスの偏りについて減算を行うとともに、標準担当件数を一定程度超過する場合については逓減を行いつつ、ケアマネジャー1人当たりの標準担当件数を引き下げる。さらに、中重度者や支援困難ケースへの積極的な対応を行うほか、専門性の高い人材を確保し、質の高いケアマネジメントを実施している事業所については報酬上の評価を行う。
 予防給付の介護予防支援については、利用者の実態や給付管理業務の簡素化等を踏まえた報酬水準を設定する。

 (4)訪問系介護サービス
(訪問介護)
 介護給付の訪問介護については、予防給付と異なり、身体介護の割合が高いこと等を踏まえ、将来的な報酬体系の機能別再編を視野に入れつつ、当面は身体介護・生活援助の区分を維持し、生活援助の長時間利用について適正化を図るほか、短時間の食事の援助等サービス提供形態の弾力化を図る。
 また、人材の資質向上、サービス提供責任体制の確保の観点から、3級ヘルパーについては、地域における意義を理解しつつも、介護報酬上は減算率を拡大し、3年後には対象としないこととするとともに、サービス提供責任者については、介護福祉士又は1級ヘルパーとすることとし、現行の経過措置は3年後に廃止する。さらに、サービス提供の責任体制やヘルパーの活動環境・雇用環境の整備、介護福祉士の配置など質の高いサービス提供体制が整った事業所について報酬上の評価を行う。
 なお、報酬体系の機能別再編に向けて訪問介護の行為内容の調査研究を行い、次期改定までに結論を得る。

(訪問看護)
 訪問看護については、24時間対応体制の強化、在宅ターミナルケアへの対応、医療保険と介護保険の機能分担の明確化などの観点から、短時間訪問の評価や緊急時訪問看護加算、ターミナルケア加算、特別管理加算の見直し等を行う。

(訪問リハビリテーション)
 訪問リハビリテーションについては、在宅復帰・在宅生活支援の観点から短期・集中的なサービス提供を評価するため、利用期間に応じた評価とするなどの見直しを行う。また、言語聴覚士による言語聴覚療法や嚥下訓練について、報酬上の評価を行う。

(居宅療養管理指導)
 居宅療養管理指導については、医師・歯科医師によるサービス担当者会議への参加や文書での情報提供の徹底、管理栄養士による在宅の低栄養者への多職種協働を踏まえた栄養ケア・マネジメントの評価、歯科衛生士による口腔機能の維持・向上指導等の強化などについて報酬上の評価の見直しを行う。

 (5)通所系介護サービス
 介護給付の通所系サービスについては、予防給付と異なり、一定時間高齢者を預かり家族の負担の軽減を図る機能を有していること等を踏まえ、現行の時間単位の体系を維持する。
 共通的なサービスについては、軽度者と重度者の報酬水準のバランスを見直すとともに、規模に応じた報酬上の評価の見直しを行う。送迎加算は基本部分に包括化するとともに、入浴加算は一本化を図る。
 また、機能に応じた評価の見直しを推進する観点から、機能訓練・リハビリテーションについて、プロセスを重視した評価へと見直すとともに、栄養改善、口腔機能の向上、若年認知症ケア等への取組みについて報酬上の評価を行う。
 医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ在宅の中重度者の通所ニーズに対応する観点から、医療機関や訪問看護サービス等との連携体制を強化した通所サービスの提供について、報酬上の評価を行う。

 (6)短期入所系サービス
 短期入所系サービスについては、緊急ニーズに対応するための事業者間のネットワーク体制の構築や虐待ケースへの対応、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ在宅の中重度者等への対応の観点から、報酬上の評価の見直しを行う。

 (7)特定施設入居者生活介護
 特定施設入居者生活介護については、軽度者と重度者の報酬水準のバランスを見直すとともに、高齢者専用賃貸住宅のうち十分な居住水準等を満たすものへの適用、早めの住み替えに対応した外部サービス利用型のサービス形態の導入を行う。養護老人ホームについても外部サービス利用型の仕組みを活用できるようにする。

 (8)福祉用具貸与・販売
 要支援・要介護1といった軽度者に対する福祉用具の貸与については、要介護者等の自立支援に十分な効果を上げる観点から、現行の「福祉用具の選定の判断基準」を踏まえつつ、その状態像から見て利用が想定しにくい品目の範囲について十分な精査を行い、使用が想定しにくい品目については、一定の例外を除き保険給付の対象としないこととする。また、貸与の条件として、専門家を含めたサービス担当者会議の開催とその結果を踏まえたケアマネジャーによる理由附記・定期的な検証を義務づける。
 福祉用具販売については、事業者指定制度の導入に伴い、福祉用具専門相談員の配置や販売時におけるケアマネジャーの関与などに関する基準の設定を行う。
 なお、福祉用具貸与の価格については、同一用具に係る価格差などその実態について調査・研究を行うとともに、これを踏まえ、早急に報酬の在り方について見直しを行い、適正化を図る。

 (9)介護保険施設
 介護保険施設については、ユニット型個室等と多床室との報酬水準の見直しなど本年10月の介護報酬改定に関連した課題への対応、経営状況等を踏まえた見直しを行う。
 また、介護保険施設の将来像としては、医療保険との機能分担の明確化を図りつつ、「生活重視型の施設」又は「在宅復帰・在宅生活支援重視型施設」への集約を図る。こうした将来像を踏まえ、18年度改定においては、中重度者への重点化、在宅復帰支援機能の強化、ケアマネジメントの充実などサービスの質の向上、人材の専門性の確保、個別ケアの推進等の観点から見直しを行うとともに、サービスの質、機能に応じ、プロセスや成果に関する評価を積極的に導入する。

(介護老人福祉施設)
 介護老人福祉施設については、入所者の重度化等に伴う医療ニーズへの対応の観点から、夜間の看護体制の強化や看取りに関する体制の整備、本人や家族の意向を尊重した多職種協働のチームによるターミナルケアについて、報酬上の評価を行う。
 また、「計画的な定期利用」など施設の利用形態の多様化を図る。

(介護老人保健施設)
 介護老人保健施設については、在宅復帰支援機能の強化を図る観点から、在宅における受け入れ体制支援にも留意しつつ、「試行的退所」や地域の中で在宅復帰支援を行う小規模の老人保健施設について、報酬上の評価を行う。また、リハビリテーションについては、在宅復帰・在宅生活支援の観点からプロセス評価に重点を置いた再編を図るとともに、短期・集中型のリハビリテーションや認知症高齢者に対する早期リハビリテーションの評価を行う。

(介護療養型医療施設)
 介護療養型医療施設については、療養病床の在り方とこれに対する介護保険と医療保険の機能分担の明確化、さらに、介護保険施設の将来像を踏まえ、一定の期限を定めて、利用者の実態にも留意しつつ、「在宅復帰・在宅生活支援重視型の施設」や「生活重視型の施設」などへの移行等を図る。
 このため、生活環境や在宅支援機能を充実した体制について一定の期限を定めて報酬上の評価を行う。また、医療保険との機能分担を図る観点から重度療養管理加算についても見直しを行う。
 さらに、療養環境減算の減算率を拡大するとともに、一定の療養環境を満たさない施設については、施設の移行に関する計画を求めた上で、原則として1年後に現行の経過措置を廃止する。
 なお、当分科会としては、医療保険との機能分担も含めた療養病床全体の在り方について、厚生労働省としての基本的な考え方を早急に示すことを強く要請する。

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