2.介護保険制度改革について

(1)予防重視型システムへの転換

 ア 新予防給付
   先般の介護保険制度改正により新たに介護保険法に位置付けられた介護予防サービスの具体的な内容については、その報酬・基準において具体化することとなる。これらについては、現在、社会保障審議会介護給付費分科会において、軽度者の状態を踏まえた自立支援の徹底と目標指向型のサービス提供を推進する観点から、検討を行っているところであり、昨年末に同分科会において取りまとめられた「平成18年度介護報酬改定に関する審議報告」(55頁参照)を踏まえ、本年1月末に具体的な報酬・基準について、諮問を行うこととしているところである。当該諮問に対する社会保障審議会からの答申の後、当局においては、具体的な介護報酬告示や指定基準省令の制定作業に着手することとなるが、本年4月の施行に向け、できる限り速やかに作業を行うこととしており、2月中を目途に、介護報酬告示案、指定基準省令案及びこれらに関連する通知案について、各都道府県に対して提示することを予定しているところである。
 特に、各都道府県におかれては、短期間に介護予防サービス事業者の指定を行っていただくこととなるが、当局としても、各都道府県における指定事務に支障を来すことがなきよう、指定基準省令案の策定作業を急ぐとともに、できる限り指定事務が簡素化されるよう検討することとしており、本年4月の円滑な施行に向け、御協力をお願いいたしたい。

 イ 新たな要介護認定等の実施について(資料別添参照)
   介護保険制度の見直しに伴い、要介護認定(要支援認定を含む。以下同じ。)の手法についても、主に新予防給付の対象者を選定する観点から見直しが行われたところであるが、平成18年4月1日より新予防給付を実施する市町村にあっては、平成18年1月30日より新たな手法に基づく要介護認定を、現に受けている要介護認定の有効期間が平成18年3月末で満了する者の更新認定から逐次実施することとなる。
 要介護認定等の申請の受理から要介護認定結果等の通知までの具体的な運用方法については平成18年1月19日に都道府県及び指定都市要介護認定担当者打ち合わせ会を開催し、周知を図ったところであり、各都道府県においては管内市町村、関係団体等に対する周知並びに適切な指導を行い、要介護認定の円滑な実施に遺漏なきよう、特段のご配慮をお願いしたい。
 また、要介護認定にあたっては主治の医師の意見を求めることとされているが、より審査判定に資する被保険者の心身等の状況の意見の聴取が可能となるよう、主治医意見書の様式及びその記載の手引きを改正し、平成18年1月30日から適用することとしたところであり、各都道府県においては管内市町村、関係団体等に対する周知並びに適切な指導を行い、その運用に遺憾のないよう、特段のご配慮をお願いしたい。



要介護認定における新予防給付対象者の選定について


1.新予防給付対象者選定の考え方
 新予防給付対象者の選定は、要介護認定の枠組みの中で、現行の二次判定の過程にあたる介護の手間に係る審査に加え、高齢者の「状態の維持・改善可能性」の観点を踏まえた明確な基準に基づく審査・判定を通じて行う。

新予防給付対象者選定の考え方の図

 新予防給付の対象は、現行の「要支援者」の方々すべてに加え、「要介護1」に該当する者のうち、心身の状態が安定していない者や認知症等により新予防給付の利用に係る適切な理解が困難な者を除いた者が考えられる。

〔参考〕
〔保険給付と要介護状態区分のイメージ〕

保険給付と要介護状態区分のイメージ

新予防給付の適切な利用が見込まれない状態像は、以下のように考えられる。

(1)疾病や外傷等により、心身の状態が安定していない状態

 脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期で不安定な状態にあり、医療系サービス等の利用を優先すべきもの
 末期の悪性腫瘍や進行性疾患(神経難病等)により、急速に状態の不可逆的な悪化が見込まれるもの 等
  ※「新予防給付対象者の選定手法に係る中間取りまとめ(介護予防スクリーニング手法検討小委員会)」における例示

  これらの状態の判断は、運動器の機能向上のためのサービス等、個別サービスの利用の適格性に着目して行うのではなく、要介護状態が変動し易いため新予防給付そのものの利用が困難な事例が該当すると考えられる。

(2)認知機能や思考・感情等の障害により、十分な説明を行ってもなお、新予防給付の利用に係る適切な理解が困難である状態

 「認知症高齢者の日常生活自立度」が概ねII以上の者であって、一定の介護が必要な程度の認知症があるもの。
 その他の精神神経疾患の症状の程度や病態により、新予防給付の利用に係る適切な理解が困難であると認められるもの
  ※「新予防給付対象者の選定手法に係る中間取りまとめ(介護予防スクリーニング手法検討小委員会)」における例示



新たな要介護認定における審査及び判定の流れ

新たな要介護認定における審査及び判定の流れの図

新たな要介護認定における審査及び判定の流れの図



主治医意見書の見直しについて

 ○ 認定調査項目の見直しと同様に主治医意見書についても、生活機能低下の状況及び原因について医学的観点からの記載が可能となるよう、様式の見直しを行った。

 ○ 具体的な変更点は以下のとおり。

 主治医意見書の利用に係る同意

   ・ 主治医意見書を介護サービス計画に利用することについて、同意の主体を明確にするため、「主治医として」という表現を追加した。

 「1.傷病に関する意見」

   ・「(1)診断名」、現行の「(4)障害の直接の原因となっている傷病の経過及び投薬内容を含む治療内容」については、特定疾病や生活機能低下の原因となった傷病が記入可能となるよう、「障害」を「生活機能低下」と改めるとともに、生活機能低下の直接の原因となっている傷病名と最近(概ね6ヶ月以内)に介護に影響があったものが記載できるようにした。

   ・現行の「(2)症状としての安定性」については、特に「不安定」を選択した際に具体的な状況が明らかとなるよう、自由記載欄を追加した。

   ・現行の「(3)介護の必要の程度に関する予後の見通し」については、生活機能やサービスの提供状況を踏まえた判断が可能となるよう、項目を「4.生活機能とサービスに関する意見」に移動した。

 「2.特別な医療(過去14日間以内に受けた医療のすべてにチェック)」

   ・変更なし

 「3.心身の状態に関する意見」

   ・「(1)日常生活の自立度等について」の「障害老人の日常生活自立度」及び「痴呆性老人の日常生活自立度」の用語については「障害高齢者の日常生活自立度」及び「認知症高齢者の日常生活自立度」とした。

   ・認知症に係る項目については、理解及び記憶、問題行動等を認知症に係る一体的な症状としてとらえ、評価できるよう項目を「認知症の中核症状」、「周辺症状」、「その他の精神・神経症状」に変更した。また、認知症以外の疾患で同様の症状が見られた場合にも選択できるよう、記載を追加した。

   ・「(5)身体の状態」については、人体図を削除し、より簡潔に記載可能とした。

   ・生活機能との関連性が高いと専門家から指摘をうけている、下肢の運動機能、栄養状態について、より適切に評価できるよう、身体の状態についても体重の増減、関節の痛みの項目を追加した。

 「4.生活機能とサービスに関する意見」

   ・生活機能低下の状況及び原因に着目した記載が得られるよう、項目を「介護に関する意見」から「生活機能とサービスに関する意見」とした。

   ・生活機能と関連性が高いと専門家から指摘を受けている下肢の運動機能、栄養状態について評価可能となるよう、「(1)移動」、「(2)栄養・食生活」の項目を追加した。

   ・「(3)現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針」については、生活機能低下の要因として指摘されている事項を追加した。

   ・「(4)介護の必要の程度に関する予後の見通し」については、生活機能やサービスの提供状況を踏まえた判断が可能となるよう、項目を「4.生活機能とサービスに関する意見」に移動し、項目を「サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し」に変更した。

   ・「(6)サービス提供時における医学的観点からの留意事項」については、「運動」の項目を追加した。

 「5.特記すべき事項」

   ・要介護認定及び介護サービス計画作成時に必要な事項の記載を広く求めるため、項目を「特記すべき事項」とした。


改正後の図
改正後の図


現行の図
現行の図



(2)新たなサービス体系の確立

 ア 地域密着型サービスについて
  (ア)みなし指定に伴う都道府県から市町村への事務の引継ぎ
 地域密着型サービスの創設に伴い、平成18年4月1日に都道府県から指定を受けている事業所については、施行日にその所在地の市町村から(施行日前日に他市町村の被保険者が利用・入所している場合には、当該他市町村から)、以下の地域密着型サービスの事業所の指定を受けたものとみなすこととされている。
 認知症対応型共同生活介護

├ 政令で規定予定
 地域密着型特定施設入居者生活介護
 地域密着型介護老人福祉施設
 認知症対応型通所介護
 介護予防認知症対応型通所介護
 介護予防認知症対応型共同生活介護
 この「みなし指定」に係る事業所の指定情報等については、漏れのないよう都道府県から市町村に移管し、市町村における事務が円滑に進められるようお願いしたい。
 また、地域密着型サービスの事業者・施設に対する指導監査についても、市町村が行うこととなっているため、従来都道府県が行ってきた指導監査の方法やその蓄積してきた情報を市町村に引き継ぐ必要がある。
 具体的な指導監査の基準は、地域密着型サービスの人員、設備及び運営に関する基準省令等が固まった後にお示しすることとなるが、都道府県におかれては、市町村において指導監査が円滑に行われるよう、説明会を開催していただくようお願いしたい。

  (イ)地域密着型サービス事業所の新規指定
 都道府県におかれては、地域密着型サービスの指定基準及び介護報酬に関する議論を踏まえ、市町村において指定事務等が円滑に行われるよう、具体的な事務の進め方等についての助言をお願いしたい。

 なお、地域密着型サービスには、新しいサービス類型もあることから、指定基準等が示された以降に、その指定基準を満たすことができる事業所かどうか、ある程度慎重に検討することが必要であると考えており、指定が平成18年4月以降となっても差し支えない。

 イ 地域包括支援センターについて
  (ア)地域包括支援センター設置に向けた準備
 地域包括支援センターは、地域包括ケアを支える中核機関として、今般の改正介護保険法により新たに導入されたものであり、(1)総合相談支援・権利擁護、(2)包括的・継続的ケアマネジメント支援、(3)介護予防ケアマネジメントといった機能を一体的に担うとともに、どのようなサービスを利用すべきかわからない住民のニーズに適切に対応できる「ワンストップサービスの拠点」としての役割も求められている。
 地域包括支援センターの設置の準備については、国としては、これまでも全国介護保険担当課長会議等を通じて、その業務内容や設置の基準等の考え方を示すとともに、地域包括支援センターの具体的な業務について理解を深めていただくために、業務マニュアルの暫定版等について提示しているところである。また、昨年12月からは、地域包括支援センターの職員就任予定者を対象に、ブロック別の研修を実施しているところである。今後、残された課題についても、案の段階で提示することとするとともに、正式には、改正介護保険法に基づく政・省令として、2月中を目途に公布されるよう措置する予定であるので、引き続き、地域包括支援センターの円滑な設置に向け御協力をお願いしたい。
  (イ)運営に当たっての留意点
 地域包括支援センターの運営に当たっては、高齢者が住み慣れた地域で、尊厳あるその人らしい生活を継続できるようにすることを目指すという「地域包括ケア」の視点を、地域の様々な関係者が十分に理解し、共有することが必要不可欠である。その上で、高齢者の権利擁護のための取組の実施や、できる限り要介護にならないようにするための「介護予防サービス」の適切な確保、要介護状態になっても高齢者にニーズや状態の変化に応じて必要なサービスが切れ目なく提供される「包括的かつ継続的なサービス体制」の確立が不可欠である。
 そのため、地域包括支援センターは、配置される保健師等、社会福祉士等、主任介護支援専門員等によるチームアプローチを行い、地域の高齢者が抱える諸問題の解決を行うとともに、その解決を円滑に行うために、地域の利用者やサービス事業者、民生委員、地域の様々な取組を行う関係者や関係団体、地域住民など地域全体によるネットワークを構築することが重要な役割となる。今後の地域包括ケアの推進に当たっては、各地域の実情に応じて、さまざまな工夫を行い、多様な社会資源を活用した、個性豊かで活力ある地域社会の実現に資する取組を実施していただきたい。
  (ウ)指定介護予防支援事業者の指定準備
 地域包括支援センターは、指定介護予防支援事業者として、介護予防サービスのケアマネジメント業務も行うこととなる。その指定の基準等については、1月26日の社会保障審議会介護給付費分科会において諮問し、同分科会の答申を得た後、2月中を目途に公布される予定である。厚生労働省としても、市町村における指定事務に支障がないよう、可能な限り早急にその具体的な内容を提示することとするので、御協力方お願いしたい。

 ウ 居住系サービスの充実について
  (ア)背景
 今後、都市部を中心に一人暮らしの高齢者や高齢夫婦のみ世帯が増えていくこと等を背景として、介護や日常の安否確認等のケアサービスと住まいとをあわせて提供する、いわゆるケア付き高齢者住宅へのニーズが高まっていくものと考えられる。
 このため、高齢期の住み替えニーズに対応し、自宅や施設以外の多様な住まいの選択肢を用意する観点から、介護保険の対象となるケア付き高齢者住宅である特定施設の範囲の見直しや、早めの住み替えに対応するサービス提供形態の多様化について検討している。
 一方、入居者保護の観点から、有料老人ホームについて、定義の見直しや一時金保全措置、情報開示の義務化など制度的な見直しも併せて行うこととしている。
 これらのうち、特定施設の範囲の見直し、サービス提供形態の多様化の考え方について、以下にお示しする。

  (イ)特定施設の範囲の見直し
 介護保険の特定施設の範囲について、現行の有料老人ホーム及びケアハウスに加え、高齢者が安心して住み続けることができる高齢者向けの賃貸住宅まで適用することとしている。具体的には、国土交通省の「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者居住法)により都道府県知事に登録される、「高齢者専用賃貸住宅」のうち、一定の居住水準等を満たすものを対象とすることを検討している。
 高齢者専用賃貸住宅制度については、高齢者居住法施行規則改正により、平成17年12月1日に施行されたところであり、高齢者専用賃貸住宅に係る特定施設入居者生活介護の指定にあたっては、都道府県の住宅担当部局との連携を図ることとされたい。なお、高齢者専用賃貸住宅は、賃貸借契約を結ぶ住宅が対象であり、利用権契約となるものについては、対象とならないことに留意されたい。

  (ウ)早めの住み替えに対応した特定施設のサービス提供形態の多様化
 多様な「住まい」の普及の観点から、早めの住み替え型の住まいに関しても、より適切に対応できる外部サービスの活用を念頭においた、次のような新たな報酬・基準を、「外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護」として設定することを検討している。具体的には、「特定施設入居者生活介護」の新たな類型として、(1)生活相談や介護サービス計画の策定、安否確認の実施は特定施設の従事者が実施し、(2)介護サービスの提供については、当該特定施設が外部のサービス提供事業者と契約することにより利用者の状態に応じた柔軟なサービス提供を行うというサービス提供形態を可能とすることとしている。今後、その指定基準、報酬について具体的にお示しすることとしているので、円滑な施行に向けた準備等御協力を御願いしたい。

 <外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護のイメージ>

外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護のイメージ


 <報酬のイメージ>

報酬のイメージ

  (エ)特定施設の事業者指定の見直しについて
 今通常国会に提出を予定している、いわゆる三位一体関連法案においては、介護専用型以外の特定施設(混合型特定施設)についても、都道府県介護保険事業支援計画に定める必要利用定員総数を超える場合には指定しないことができることとされるともに、住所地特例の対象とされる予定である。
 こうした制度改正が行われた場合には、今後、高齢期の早めの住み替えニーズへの対応、自宅や施設以外の住まいの選択肢といった観点にも留意しながら、地域の実情やニーズを十分に把握した上での適切な制度運用をお願いしたい。

(3)第三期計画期間の第一号被保険者の保険料設定について

 ア.保険料設定の見直しについて
  (ア)現行第2段階の細分化について
 現行の保険料第2段階(市町村民税世帯非課税者)に属する者については、その負担能力に配慮することとし、下記に示す要件で細分化を行い、より負担能力の低い者にはより低い保険料率を設定した新しい段階(新第2段階)を設けることとする。
 【新第2段階の該当要件】
  ○市町村民税世帯非課税 かつ
  ○課税年金収入額+合計所得金額≦80万円/年を満たす者

  (イ)課税層の多段階化について
 現行の保険料段階については原則5段階とされており、保険者の判断により6段階設定とすることを可能としているところ。
 今回の見直しにおいては、保険者による課税層の多段階化を可能とし、被保険者の負担能力に応じたよりきめ細かな段階数及び保険料率の設定ができるものとする。

課税層の多段階化についての図

  (ウ)税制改正の影響及び介護保険における激変緩和措置について
 平成17年度税制改正(高齢者の非課税限度額の廃止)により影響を受ける者については、地方税法上、平成18年度から2年間の経過措置が設けられることを踏まえ、介護保険においても保険料及び利用料について激変緩和措置を講ずることとする。

   ※ 保険料基準額に乗じる割合の設定と保険料基準額の関係について
 各保険料段階の区分に属する者の定義は法令上一義的に定まる(課税層は保険者の判断により細分化が可能)が、各保険料段階に設定することとなる保険料基準額に乗じる割合(×0.5、0.75、1.0、1.25、1.5等)については、保険者の判断により標準割合から変動させることが可能である。
 その際、当該割合を標準割合よりも高く設定することは、保険料基準額の算定上、保険財政の支え手の力を増やすことを意味し、結果として保険料基準額を下げることとなるが、当該割合を標準割合より低く設定することは、保険財政の支え手の力を少なくすることを意味し、結果として保険料基準額を上げるという関係になっていることに十分留意されたい。

 イ.保険料設定に向けたスケジュール
  (ア)各保険者のスケジュール(例)
 平成18年2月
各保険者が介護保険条例案を議会へ提出
 平成18年3月
介護保険条例が議会において成立
 平成18年6月・7月頃
各保険者が被保険者の保険料額を確定・賦課

  (イ)保険料の状況の調査
 各保険者が議会へ提出した介護保険条例案における第3期計画期間の保険料基準額を調査し、平成18年3月頃に公表することを予定している。
 議会において成立した介護保険条例における第3期計画期間の保険料基準額を調査し、平成18年5月頃に公表することを予定している。

 ウ.保険料設定に関する留意事項
  ※平成17年12月6日付厚生労働省老健局介護保険課事務連絡にて各都道府県介護保険担当課・高齢者保健福祉担当課あてに発出し、管内市町村等に周知徹底を依頼している内容。
  (ア)介護給付費準備基金の取崩しについて
 介護給付費準備基金については、各保険者において最低限必要と認める額を除き、基本的には次期計画期間において歳入として繰り入れるべきものと考えており(注)、当該基金を有している保険者においては、第3期介護保険事業計画の策定に当たり、その適正な水準について検討し、当該水準を超える額の取崩しについて十分検討されたい。









(注) 介護保険制度は、計画期間内に必要となる保険料については各計画期間における保険料で賄うことを原則としており、保険料が不足する場合には財政安定化基金から貸付等を受けることができること、また、被保険者は死亡、転居等により保険料を納めた保険者の被保険者ではなくなる場合があること等から介護給付費準備基金については、基本的には次期計画期間において歳入として繰り入れるべきものと考えている。










  (イ)保険料率の変更等による保険料基準額の上昇について
 保険料の設定に当たり、課税層の保険料率を標準的な保険料率よりも低くすること等により、標準的な保険料率等により算定した保険料基準額よりも高い保険料基準額を設定している保険者も見られるところであるが、こうした保険料の設定は標準的な保険料の設定よりも低所得者にとって負担となることから、その適否について十分検討されたい。

  (ウ)保険者における第3期介護保険事業計画案の公表等に関する取扱いについて
 第3期介護保険事業計画案を公表し、住民の意見等を求める際には、被保険者等が介護保険財政の状況等について適切に理解・判断できるよう、保険料見込み額に財政安定化基金償還金や介護給付費準備基金繰入金が含まれる場合には、当該額相当分を内訳として示すことが適当と考えられるので、各保険者において適切に対応されたい。
 また、こうした取扱いは、第3期の保険料見込み額の比較の対象として第2期の保険料等を示す場合や確定した保険料の公表等の際にも適当と考えられるので、各保険者において適切に対応されたい。

(4)サービスの質の向上

 ア 介護サービス情報の公表制度の推進
   介護サービス情報の公表制度は、平成18年4月の介護保険法改正に伴い、すべての都道府県において、基本的に全ての指定事業所を対象として、年1回、介護サービス情報の報告の受理、調査及び情報の公表を行うこととなる。都道府県においては、指定情報公表センター及び指定調査機関の確保、調査員の養成研修等実施体制の整備、手数料に係る条例の制定等について、平成18年4月の円滑な制度の施行に向けて遺漏なきよう取り組んでいただきたい。
 また、介護サービス事業所は自ら介護サービス情報を作成し、都道府県等へ報告し、調査員の訪問調査を受けるとともに、当該調査及び情報の公表の事務の実施に必要な費用については、都道府県条例に基づく手数料の支払いが必要となる。このため、本制度の円滑な施行に向けて、本制度に関して、予め介護サービス事業所に対し充分に周知しておくことが極めて重要である。各都道府県においては、保険医療機関等のみなし指定事業所を含む介護サービス事業所に対する制度の普及・啓発に向けた取組みをお願いしたい。
 さらに、被保険者等に対する普及・啓発も極めて重要であるので、各都道府県においては、実際に介護サービス情報の公表が始まる時期を踏まえた適切な時期を判断し、積極的に組んでいただきたい。
 国においては、全都道府県における本制度の円滑な施行を支援するため、次の経費について、平成18年度予算(案)に盛り込んでいるところであるので了知されたい。
 (1)介護サービス情報の公表に係る調査及び公表に必要な経費の支援
 介護サービス情報の公表制度は都道府県の自治事務であり、都道府県は、本制度を円滑かつ継続的に運営するための費用を適切に確保する必要がある。当該費用については、介護サービス事業者から徴収する手数料を充てることが可能であるが、特に、制度施行当初に必要となる費用等について、都道府県一般財源において措置する費用を対象として国庫補助を行う。
 (2)介護サービス情報公表システムの追加サービス分のシステム導入支援
 平成19年度に新たに介護サービス情報の公表の対象とするサービスについて、インターネットにおいて情報を公表するシステムに追加するために必要な費用に対して国庫補助を行う。
 (3)普及・啓発に係る支援
 事業者及び利用者に対する介護サービス情報の公表制度に係る普及・啓発事業に対する国庫補助を行う。

   国庫補助予算額   2,763,184千円
   (事業費ベース   5,526,368千円)
   補助率   1/2

 イ 介護職員の質の向上
   介護は人が人に対して行うサービスであり、介護に携わる職員の専門性を高めることは、介護サービスの質の向上を図る上で大変重要である。
 このような観点から、現在、「介護サービス従事者の研修体系のあり方に関する研究会」(委員長:堀田力(財)さわやか福祉財団理事長)において、介護に携わる職員の研修体系について検討を行っているところであり、平成18年度においては、訪問介護等に従事できる者の養成研修として、新たに「介護職員基礎研修」を位置づける予定である。
 介護職員基礎研修の具体的なカリキュラム、実施体制等については、同研究会の昨年9月の第二次中間まとめ等を踏まえ現在検討しており、必要な省令・通知等についてできるだけ速やかにお示ししたいと考えている。本年4月以降の実施に向け配意願いたい。

 ウ 介護支援専門員の質の向上
  (ア)介護支援専門員の研修体系の見直し
 介護支援専門員の資質向上については、非常に重要であり、各都道府県における介護支援専門員の適切な養成(実務研修の実施)及び現に介護支援専門員として活動している者に対する十分な研修機会を確保(現任研修の実施)することが求められる。
 この度の制度改正に伴い、実務研修の充実や更新時研修、実務研修修了後一定期間実務に就かなかった者に対する研修、地域包括支援センター等に配置される主任介護支援専門員の養成研修の創設等介護支援専門員の研修体系を見直すこととしている。
 これらの各研修の具体的なカリキュラム、受講要件等については、今後お示しをする予定であり、各都道府県においては、介護支援専門員がこれらの研修を受講する機会が十分確保されるよう配意されたい。

  (イ)介護支援専門員の登録及び更新制度の導入について
 介護支援専門員の更新制度の導入、適切なケアマネジメントの確保等の観点から、資格管理を適切に行うため、介護支援専門員について更新制及び各都道府県間で情報の共有を行うため、「介護支援専門員名簿管理支援システム」を導入することとしている。都道府県におかれては、これに伴い、初期登録を行うため、既に介護支援専門員として登録されている者の現住所等の基本情報や現に介護支援専門員として事業所に就労している者の就労事業所情報を収集し、再度把握する必要がある。必要事項については、介護支援専門員本人から事前登録事項について提出していただき、その収集した事項について、既存情報との突合や必要事項の入力作業を行う必要がある。追って、必要な作業内容等について要領を早急にお示しする予定である。
 また、介護支援専門員については、更新制度の導入、居宅介護支援事業所等で従事する介護支援専門員の届出、介護支援専門員証の交付等大きく変更を予定しており、こうした新たな制度について居宅介護支援事業者、介護支援専門員等への周知をお願いしたい。

  (ウ)介護支援専門員実務研修受講試験
 介護支援専門員実務研修受講試験については、現行、試験問題の作成については、当省に試験委員会を設置して試験問題を作成し、都道府県又はその指定する者が試験を実施しているところである。
 しかし、施行後5年が経過し、介護支援専門員に求められる知識及び技術の水準が浸透し、国に代わって一定の能力を有する機関が試験問題を作成することができる環境が整ったと考えられることから、改正法の規定において、都道府県知事は、試験に係る事務のうち、(1)試験問題の作成及び合格基準の設定に関する事務について、国の登録を受けた試験問題作成機関(以下「登録試験問題作成機関」という。)に行わせることができる(第69条の11)こととし、(2)試験問題の作成及び合格基準の設定に関する事務以外の事務については、都道府県知事の指定する者に行わせることができる(第69条の27)こととしたところである。
 登録試験問題作成機関との委託手続等については、詳細を別途お示しすることとしているので、各都道府県におかれては、必要な準備をお願いしたい。

(5)都道府県、市町村等における介護保険関係システムの整備

 ア.都道府県、市町村等における介護保険関係システムの整備について
  ○ 介護保険制度においては、事務の効率化を図るため、制度施行時に国が様式や事務フローを提示した上で、指定事業者の管理、被保険者の管理、介護報酬の審査支払業務など、事務の電子化が図られているところである。

  ○ 今般、第162回通常国会において「介護保険法等の一部を改正する法律」が成立、公布され、平成18年4月1日施行(一部は平成17年10月1日、平成18年10月1日より施行)に向けて現在、関係政省令等の作成に取り組んでいるところである。

  ○ 介護保険制度改正に伴う介護保険関係システムについては、施行までの短期間で改正内容を反映させるための改修を行って頂いているところであり、都道府県、市町村等においては、介護保険関係機関等への周知、指導など、特段のご配慮を願いたい。

  ○ 市町村等(広域連合・一部事務組合含む)においては、引き続き平成18年度においても同様に改正に伴う部分について、保険者システムの改修を行い、改正後の制度運営を適正かつ円滑に実施する必要があり、平成18年度において以下の財政措置を行うこととしている。

  (ア)主な改修項目
【保険者(市町村)システム】
 ・ 特別徴収の見直し
 (1) 捕捉回数の複数回化
  年金保険者の特別徴収対象者の捕捉を年1回 → 年6回とする。
 (2) 仮徴収額(6月・8月)の設定の見直し
 ・ 税制改正に伴う保険料の激変緩和措置
 ・ 国保連審査支払データ授受のためのインタフェース
 ・ その他制度改正に伴い平成18年度中に行う介護保険関連システム改修
 ・ 上記システム改修を広域連合・一部事務組合等の保険者(以下「広域連合等」という。)が行う場合に、広域連合等と構成市町村との間で必要となるシステム改修

  (イ)システム改修予算の概要
(1) 保険者システムの改修
【2,832百万円】
(2) 審査支払システムの改修
【122百万円】

 (実施主体・負担割合)
  市町村・広域連合等 〔国 1/2 市町村等 1/2〕
  国民健康保険中央会 〔国 10/10(定額) 〕

 イ.広域連合支援経費について
   平成18年4月から、広域的な保険者運営を行う広域連合・一部事務組合等(以下「広域連合等」という。)が地域支援事業を円滑に実施することができるよう、平成18年度において以下の財政支援を行うこととしている。

  (ア)事業の概要
 広域連合等が地域支援事業を円滑に実施するため、広域連合等が把握している被保険者等に係る様々なデータを地域包括支援センターに提供するとともに、地域包括支援センターが地域支援事業により得た種々の情報(介護予防アセスメントデータ、相談記録等のデータ等)を広域連合等に送付して管理することができるよう、広域連合等と地域包括支援センター間の情報交換等を行うためのシステム構築に係る財政支援を行う。
 また、地域支援事業の実施にあたって必要な各種打合費、研修会費、広報啓発費 等についての財政支援も行う。

  (イ)予算の概要等
予算額(案)
 【533百万円】
負担割合
 [国 1/2 広域連合等 1/2]

(6)その他

 ア 介護療養型医療施設について(資料別添参照)
   介護療養型医療施設については、医療保険との機能分担も含めた療養病床全体の在り方について、厚生労働省としての将来的な方向について検討を行っているところである。



未定稿
療養病床の将来像について(案)

厚生労働省

 これまで高齢の長期入院患者に対するサービスにおいて一定の役割を果たしてきた療養病床(医療型25万床、介護型13万床)について、在宅・施設の介護基盤が充実する中で、患者の状態に即した機能分担を推進する観点から、医療提供体制及び医療保険・介護保険の両面にわたって一体的に見直し、平成23年度末までに体系的な再編を進める。このため、平成18年度の医療制度改革や介護報酬・診療報酬改定において、以下の基本的な考え方に基づき、将来的な方向を示すことを検討する。

 1 将来的な療養病床の位置付け

  ○ 将来的には(平成24年度以降)、療養病床は、「長期にわたり療養が必要な医療必要度の高い患者を受け入れる病床」との位置づけを明確化する。

  (1)医療法上の取り扱い(医療法施行規則の改正)
 ・ 療養病床については、医療必要度の高い患者を対象とする施設としての位置づけを明確にする観点から、「看護4:1以上・看護補助4:1以上」の配置(※)を要件とする。
  ※現行は、「看護6:1以上、看護補助6:1以上」の配置が要件。
 ・ 平成23年度末までは経過措置として現行の配置を維持。

  (2)介護保険・医療保険制度上の取り扱い(介護保険法等の改正)
(1)介護保険
 平成24年度以降は、介護報酬上の評価を廃止する。
 ただし、平成23年度末までは、経過措置として現行の療養病床を評価する。
(2)医療保険
 平成24年度以降は、診療報酬上は上記(1)の原則を満たす施設のみを評価する。
 ただし、平成23年度末までは、経過措置として現行の療養病床も評価する。

 2 平成18年度報酬改定等における対応

  ○ 上記1の将来的な方向を踏まえ、平成18年度の介護報酬・診療報酬の改定等において、以下の移行促進措置を講ずるものとする。

  (1)介護保険における対応(介護報酬改定、医療法施行規則の改正)
 ・ 現行の療養病床のほかに、将来的に老人保健施設や特定施設(有料老人ホーム、ケアハウス)への転換を念頭に置いた「医師等の配置が緩和された経過的類型」を、平成23年度末までの移行促進措置として新たに設け、介護報酬上の評価を行う。

  (2)医療保険における対応(診療報酬改定)
 ・ 療養病床の診療報酬上の評価として、医療必要度の高い患者について適切な評価を行う一方、医療必要度の低い患者については評価を適正化する。

  (3)転換の支援等
 ・ 療養病床について、老人保健施設や特定施設への転換等を進めるために、転換支援の助成を行うとともに、介護保険において平成23年度までの間に必要な受入が可能となるよう所要の措置を講じる。



〔別紙〕
医療法の配置標準等の見直しと保険の適用関係(案)

医療法の配置標準等の見直しと保険の適用関係(案)の図

[*]医療保険の適用は看護配置5:1、看護補助配置5:1以上の場合のみ



 イ 特定疾病の見直しについて(資料別添参照)
   現在、40歳以上65歳未満の者については、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(特定疾病)により介護が必要となった場合のみ、介護保険サービスが受けられるものとされているところであるが、介護保険制度の見直しに係る国会審議において、40歳以上のがん末期にある方々が介護保険サービスを受けられるようにするよう、求められたものである。
 このため、現行の枠組みの中で、がん末期の状態にある40歳以上の方々が、介護保険サービスを受けられるよう、「がん末期」を特定疾病に追加することとしたところである。
 また、この見直しに併せて、現行特定疾病のうち、疾病の医学的分類の変更や、名称の変更が行われたものについては、所要の技術的な見直しを行うことし、平成18年4月1日より要介護認定等の申請のあったものから適用することを予定していることから、各都道府県においては管内市町村、関係団体等に対する周知並びに適切な指導を行い、その運用に遺憾のないよう、特段のご配慮をお願いしたい。



「がん末期」を特定疾病に追加することについて


 I. 介護保険の特定疾病について
  ○40歳以上65歳未満の方々で介護保険制度の対象となるのは、
(1)介護等を要する期間が省令において定める期間(現行6ヶ月間)以上継続することが見込まれ、
(2)要介護状態等の原因が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病として政令に定める疾病(特定疾病)に該当する方々とされているところである。

  ○このうち、特定疾病については、制度発足時に、特定疾病の選定基準や範囲の規定方法、これらを踏まえた具体的な疾病等が医学的観点から検討され、現在、以下の15疾病が政令において定められているところである。

現行の特定疾病

(1)筋萎縮性側索硬化症
(2)後縦靭帯骨化症
(3)骨折を伴う骨粗鬆症
(4)シャイ・ドレーガー症候群
(5)初老期における認知症
(6)脊髄小脳変性症
(7)脊柱管狭窄症
(8)早老症
(9)糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
(10)脳血管疾患
(11)パーキンソン病
(12)閉塞性動脈硬化症
(13)慢性関節リウマチ
(14)慢性閉塞性肺疾患
(15)両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症


 II.「がん末期」の取扱いに関する法案審議等の概要
  ○一方、特定疾病における「がん末期」の取扱いについて、社会保障審議会介護保険部会報告書や先の通常国会において、以下のような議論等がなされている。

「『被保険者・受給者の範囲』の拡大に関する意見」
社会保障審議会介護保険部会(平成16年12月10日)

 
 2.本部会での検討結果
  (2)被保険者・受給者の対象年齢を引き下げるとした場合に制度設計上検討すべき事項について

 (施行方法・時期に関する論点)
  ・ また、制度の普遍化の具体化には時間を要するとしても、「制度の谷間」の問題については早急に対応を検討すべきであり、特に40歳以上の末期がんで介護を必要とする者については介護保険による給付を受けられるようにすべきであるという意見があった。

介護保険法一部改正法の法案審議における主な議論

(末期がん患者を介護保険の対象とする基本的考え方について)
 
 ○がんは我が国の死因の第一位となっており、多くのがん患者の方々が病院で最期を迎えている状況にあるが、こうした方々は適切な在宅医療と介護サービスがあれば、住み慣れた自宅で最期を迎えることが可能であり、現にそのような希望をお持ちの方々も少なくない状況である。
 ○一方で、介護保険制度施行後、在宅で最期を迎えるために必要な環境や体制が整いつつあるところであり、こうしたことについても考慮しつつ、ターミナルケアの充実という観点からも現行の介護保険制度の枠組みの中で可能な対応方策について、検討するものとしたところである。
 ○このため、40歳以上の末期がんを介護保険の対象に加えるに際しての課題等について、専門家からの御意見も十分にうかがってまいりたい。

(末期がんが特定疾病に定められていない理由について)
 
 ○40歳以上65歳未満の方々で現行の介護保険制度の対象となるのは、
(1)介護等を要する期間が省令において定める期間(現行6ヶ月間)以上継続することが見込まれ、
(2)要介護状態等の原因が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病として政令に定める疾病(特定疾病)に該当する方々とされているところ。
 ○がんについては、一般に6ヶ月以上介護等を要する期間が継続することが想定されないため、これまで特定疾病として定めていなかったものである。

(対象となる「がん」の種類について)
 
 ○具体的にどのがんが特定疾病となるのかについては、個々のがんについて、必要な科学的知見を集積した上で、これらを特定疾病の要件に照らした場合の該当性を見ることが必要であり、今後、個別のがんの発生状況等を把握した上で、専門家の意見も聴きつつ対応してまいりたい。

衆議院・参議院厚生労働委員会における確認質問に対する答弁

 
 問 特定疾病に末期がんを追加するに当たっては、小児がん以外は全て、対象に入れるべきではないか。
 答 専門家の御意見も踏まえつつ、御指摘の方向で検討してまいりたい。


 III.特定疾病における「がん末期」の取扱い等について
  ○国会等における議論を踏まえ、特定疾病に「がん末期」を追加することについて、がんやターミナルケアの専門家により構成される「特定疾病におけるがん末期の取扱いに関する研究班」(班長:垣添忠生国立がんセンター総長)において、主に以下の論点について検討を行っていただいたところ。

(1)論点1
全ての「がん」を1つの疾患として捉えることが可能か、また、その場合に「がん」は加齢に伴う疾患と言えるのか。
(2)論点2
特定疾病において「末期」を定義することが可能か。

  ○今般、当該研究班において、これらの論点に係る中間報告が以下のとおりまとめられたところであり、今後、当該報告を踏まえ、平成18年4月から施行することを念頭に、政省令改正等の所要の手続きを行うこととしている。

(論点1について)
 全ての「がん」を1つの疾患として捉えることは可能。また、その場合に、「がん」は加齢に伴う疾患と考えられる。

 ○小児がん、乳がん、卵巣がん等をも含む全ての「がん」については、以下の定義により、医学的に包括的な疾患概念として説明可能である。
(1)無制限の自律的な細胞増殖が見られること(自律的増殖性)
(2)浸潤性の増殖を認めること(浸潤性)
(3)転移すること(転移性)
(4)何らかの治療を行わなければ、(1)から(3)の結果として死に至ること(致死性)
 ○また、こういった包括的な疾患概念として「がん」を捉えた場合、罹患の状況や医学的な発症機序から「加齢に伴う疾患」と考えられる。

(論点2について)
 「末期」であるかどうかの判断は、臨床経過における医師の総合的な判断によることが適当である。

 ○「末期」の定義については、「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不能と考えられる状態と医師が総合的に判断した場合」とすることが適当である。
 ○なお、「末期」という言葉自体を忌避している患者やその家族、医療提供者等が少なくない現状においては、要介護認定の申請や審査判定、あるいは主治医意見書への記載といった運用面では必ずしも「末期」という記載を必須としないなど、柔軟な対応が行われるよう、留意すべきである。



別添1

特定疾病におけるがんの末期の取扱いに関する考え方について

特定疾病におけるがん末期の取扱いに関する研究班中間報告(抄)


1.はじめに

介護保険制度(以下「本制度」という。)においては、40歳以上65歳未満の方々については、加齢に伴う心身の変化に起因する、「特定疾病」により介護が必要となった場合に受給の対象となるが、ターミナルケアの充実の観点から、特に40歳以上のがんの末期にある方々については、「がんの末期」を新たに特定疾病に追加するなど、本制度を利用できるようにすべきであるとされたところである。

これを受けて、平成17年8月にがんやターミナルケアの専門家により「特定疾病におけるがん末期の取扱いに関する研究班(以下「本研究班」という。)」が組織され、「がんの末期」を特定疾病に追加する際の課題等について、3回の議論を行い、中間報告として取りまとめた。


2.「がんの末期」と特定疾病との関係及び本研究班における検討の手順

特定疾病の選定にあたっては、医学的にみて加齢との関係があると考えられる疾患であって、
1)6月間以上継続して要介護状態等となる割合が高いと考えられる疾病であること
2)罹患率や有病率等について加齢との関係が認められ、その医学的概念を明確に定義できるもの
のいずれの要件も満たすものについて、専門家による検討等を踏まえ、現在、15疾病が定められている。

「がん」全体については、介護等を要する期間が6月間以上継続するものではないとされたため、現在の特定疾病に含まれていないが、特に「がんの末期」に限定して考えれば、死亡という転帰をたどる結果として介護等を要する期間が継続しないものであり、死亡までの間は一貫して不可逆的な要介護状態の悪化を来たすものであることから、6月間以上介護等を要することを要件として選定された他の特定疾病と同様の取扱いとすることは可能であると考えられる。

このため、本研究班では特に後者の要件について検討し、更に特定疾病に位置付けることを想定した「がんの末期」に関する診断基準について、以下のとおり整理を行った。


3.「がん」の特定疾病としての該当性について

3−1.「がん」の包括的な疾病概念としての整理について

同一の疾病概念を共有する疾病群としての「がん」の定義としては、以下の特徴のいずれも満たすものが適当であると考えられる。
(1)無制限の自律的な細胞増殖が見られること(自律的増殖性)
(2)浸潤性の増殖を認めること(浸潤性)
(3)転移すること(転移性)
(4)何らかの治療を行わなければ、(1)から(3)の結果として死に至ること(致死性)

白血病のような非固形の悪性新生物についても上記の定義を満たすものと考えられる。

3−2.「がん」を加齢に伴う疾病として取扱うことについて

「がん」を明確な同一の疾病概念を共有する疾病群として捉えた場合、罹患率及び死亡率は加齢との関係が認められ、疫学的見地から「がん」と加齢との関係を示唆する文献も認められる。また、がんの発生機序を分子生物学的に考察した場合でも加齢とともにがんが発生し、進展する危険性は高まると言える。

こうした点を踏まえると、「がん」は心身の病的加齢現象との医学的関係が強いと考えられる疾病であって、罹患の状況等からも加齢に伴う疾病であると考えて矛盾はない。

なお、乳がん、子宮がんといった、生殖に直結した臓器のがんについては、罹患率は必ずしも年齢とともに高くなる傾向があるとは言えないものもあるが、これらのがんの発生機序はその他のがんと同様であり、これらの臓器の機能的な寿命が個体の寿命より短いことを考えると、これら臓器に発生するがんを臓器としての加齢に伴う組織学的変化によるものと捉えることができ、病的加齢現象と医学的関係があるものと考えられる。


4.特定疾病における「がんの末期」について

4−1.「末期」の定義について

今回の特定疾病における「がんの末期」の検討の背景となる基本的な考え方は、
(1)がんの末期にある方々が住み慣れた自宅で最期を迎えるに当たって、本制度によるサービスを利用でき、
(2)そういった方々が要支援状態又は要介護状態となった際に速やかに要介護認定を受けられるよう、
「がん」や「末期」についての定義や診断基準を設けるというものである。

「がんの末期」の方々の終末期ケアの実態等を踏まえると、特定疾病における「がんの末期」の定義は、「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不能と考えられる状態」と定義することが適当であると考えられる。

4−2.「がんの末期」の診断基準について

「がんの末期」の診断基準について、「治療に反応しない」、「進行性」といった点について何らかの客観的な要件を設ける必要性についても検討がなされたが、がんの種類や、その臨床経過によっても大きく異なることから、具体的な検査手技等は示さず、臨床経過の中で主治医が総合的に判断することと整理した方がより臨床現場に則した基準であると考えられる。

また、抗がん剤等の治療を受けている者の取扱いや、「治癒困難」と判断する際の目安について、診断基準や診断基準を補足するガイドライン等において示す必要があると考えられる。


5.まとめ

以上のような議論を踏まえ、介護保険における特定疾病としての「がんの末期」の定義及び診断基準については以下のとおりとすることが適当である。

【定義】
 以下の特徴をすべて満たす疾病である。

 (1)無制限の自律的な細胞増殖が見られること(自律増殖性)
 本来、生体内の細胞は、その細胞が構成する臓器の形態や機能を維持するため、生化学的、生理学的な影響を受けながら細胞分裂し、増殖するものであるが、がん細胞はそういった外界からの影響を受けず無制限かつ自律的に増殖する。
 (2)浸潤性の増殖を認めること(浸潤性)
 上記の自律的な増殖により形成される腫瘍が、原発の臓器にはじまり、やがて近隣組織にまで進展、進行する。
 (3)転移すること(転移性)
 さらに、播種性、血行性に遠隔臓器やリンパ行性にリンパ節等へ不連続に進展、進行する。
 (4)何らかの治療を行わなければ、(1)から(3)の結果として死に至ること(致死性)

【診断基準】
 以下のいずれかの方法により悪性新生物であると診断され、かつ、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態(注)にあるもの。

(1)組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されているもの
(2)組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されていない場合は、臨床的に腫瘍性病変があり、かつ、一定の時間的間隔を置いた同一の検査(画像診査など)等で進行性の性質を示すもの。

 注)ここでいう治癒困難な状態とは、概ね6月間程度で死が訪れると判断される場合を指す。なお、現に抗がん剤等による治療が行われている場合であっても、症状緩和等、直接治癒を目的としていない治療の場合は治癒困難な状態にあるものとする。



難病(特定疾患)の疾病区分の変更等に伴う
特定疾病の変更について


I.難病(特定疾患)の見直し等について

1.難病(特定疾患)の見直しについて

介護保険における特定疾病については、特定疾患治療研究事業における傷病区分を踏まえ規定しているところであるが、平成15年10月に、特定疾患治療研究事業の対象疾患の区分について以下のとおりの見直しが行われたところである。(別添参照)

 (1) 「シャイ・ドレーガー症候群」に、これまで脊髄小脳変性症の一病型に分類されていた「オリーブ橋小脳萎縮症」、これまでその臨床症状から「パーキンソン病」として取り扱われていた「線条体黒質変性症」を加え、これら3疾患を包含して「多系統萎縮症」とされた。

 (2) 「パーキンソン病」として総称されてきた、「パーキンソン病」、「進行性核上性麻痺」、「大脳皮質基底核変性症」という、3つの疾患群に係る包括的な疾患概念の呼称が「パーキンソン病関連疾患」とされた。

2.「関節リウマチ」の呼称変更について

「慢性関節リウマチ」の疾患名については、1957年の国際リウマチ学会総会で「rheumatoidarthritis」(RA)を自国語に翻訳して使用するとの決議を踏まえ、日本ではその和訳が「慢性関節リウマチ」とされてきたところであるが、

 (1)病態解明の進展と共に治療体系が変化し、早期発見・早期治療が重要とされる今日において「慢性関節リウマチ」という用語は適当ではないこと、
 (2)RAはすべてが「慢性」の経過をたどるとは言えないこと
などの理由から、2002年5月の日本リウマチ学会において、「慢性関節リウマチ」の呼称が「関節リウマチ」との呼称に変更されたところである。


II.特定疾病における取扱いについて

こうした難病の見直しによる「多系統萎縮症」、「パーキンソン病関連疾患」といった、新たな疾患区分について、特定疾病の要件に照らし合わせた場合の該当性についての検討を行うため、必要な医学的知見を収集していたところであるが、今般、難治性疾患克服研究事業(特定疾患調査研究分野)「特定疾患の疫学に関する研究班による報告」や、日本神経学会をはじめとする神経内科学の専門家によるヒアリングを踏まえ、特定疾患の区分の変更に併せた特定疾病の見直しを行うこととする。

また、現行の「慢性関節リウマチ」については、日本リウマチ学会における呼称の変更等を踏まえ、このたびの政令改正に併せ、名称の変更を行うこととする。

なお、上記の特定疾病の見直しについては、既に特定疾病の対象とされている疾病の区分又は名称の見直しに止まるものであり、本改正に伴い、特定疾病の対象範囲が拡大するものではない。



別添

現行の特定疾病のうち、傷病の医学的分類の変更や、
名称の変更が行われた疾病の取扱いについて

(1)傷病の医学的分類に変更がなされたもの

傷病の医学的分類に変更がなされたものの図

(2)名称の変更がなされたもの

名称の変更がなされたものの図

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