平成18年7月28日
医薬食品局審査管理課
化学物質安全対策室
江原(2426)、山本(2423)

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律第3条第1項の規定に違反する新規化学物質の輸入について


 中村科学器械工業株式会社は、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化審法」という。)第3条第1項第5号の規定に基づき受けた確認(少量新規確認)に係る数量を超えて、新規化学物質を輸入していたことが判明しました。
 このため、厚生労働省、経済産業省及び環境省(以下「3省」という。)は、本日付けで化審法第3条第4項の規定に基づき当該確認を取り消すとともに、同社及び本件に関与したチッソ株式会社に対し法令遵守の徹底及び再発防止に向けた対応について指導を行いました。

1.事実関係
中村科学器械工業株式会社は、液晶の原料として用いられる新規化学物質に関し、同社が受けた化審法第3条第1項第5号の規定に基づく確認(以下「少量新規確認」という。)に係る輸入可能数量(平成18年度、600kg)を超えて、平成18年4月から5月にかけて計1140kgを輸入していました。これは、同法第3条第1項の違反(製造等の届出に係る違反)に当たります。
当該輸入は、化審法第4条の2第4項の規定に基づきチッソ株式会社が当該物質に関して受けた確認(低生産量確認)に係る通知書を、中村科学器械工業株式会社が借り受けることにより行われていました。しかしながら、同法の確認に基づく新規化学物質の製造・輸入は、当該確認を受けた者に対してのみ認められるものであり、確認の通知書を他者との間で貸与・借用することは認められません。
上記の輸入可能数量を超えての輸入は、一連の輸入の審査窓口となった門司税関の指示により、中村科学器械工業株式会社が経済産業省に対し当該行為の妥当性について照会を行ったことから発覚しました。また、同社は、3省から「当該輸入には違法性がある」旨の指摘を受け、輸入の経緯等について3省の調査を受けていた最中であったにもかかわらず、同社の少量新規確認に係る輸入可能数量600kg分がなお利用可能であるとの誤った解釈により、平成18年6月、再度当該物質380kgを輸入しました(再度、同法第3条第1項の違反に該当)。
なお、上記化審法違反に該当する当該物質の一連の輸入については、全体数量として見ればチッソ株式会社が受けた低生産量確認に係る輸入可能数量の範囲内であり、環境を経由した人及び動植物への影響が生ずるおそれは無いものと考えられます。

2.本件に係る3省の対応
3省は、両社(中村科学器械工業株式会社及びチッソ株式会社)に対して化審法第32条第1項の規定に基づく報告を求めるなど、上記の事実関係等について確認しました。
中村科学器械工業株式会社に対しては、平成18年7月19日、行政手続法に基づく聴聞を行い、その結果を踏まえ本日付けで、化審法第3条第4項の規定に基づき当該物質に係る少量新規確認を取り消しました。さらに、3省は両社に対し、法令遵守の徹底及び再発防止のための化学物質管理体制の整備等を行うよう指導しました。



(参考)今回の違反事案に係る化審法関係規定の概要

 製造等の届出【第3条第1項】
新規化学物質を製造又は輸入しようとする者は、事前に国に届け出なければならない。ただし、試薬としての製造・輸入や、少量新規確認を受けた場合などいくつか例外(届出不要)あり。
届出があった場合、国において当該化学物質に係る審査を行う。その際、製造・輸入予定数量に応じた審査の特例(低生産量確認)あり。

少量新規確認 【第3条第1項第5号】
国内の一年間の製造・輸入予定数量が1トン以下であり、かつ既存の知見から有害性が認められない旨の確認を3大臣から受けた場合、あらかじめ確認を受けた数量の範囲に限って届出を行うことなく製造・輸入が可能。
3大臣は、少量新規確認を受けた者が確認を受けた数量を超えて製造・輸入を行っていると認める場合には、当該確認を取り消さなければならない。【第3条第4項第2号】
なお、この場合(確認数量を超えて製造・輸入を行った場合)には、そもそも第3条第1項の例外規定にない製造・輸入を行ったと解されるため、第3条第1項の違反となる。

低生産量確認 【第4条の2】
国内の一年間の製造・輸入予定数量が10トン以下の場合、届出事業者は審査の特例を申し出ることができる。
この場合、国による事前審査の結果、当該化学物質が難分解性であるものの、高蓄積性ではないとの判定・通知を受けた場合には、事後の監視(報告徴収及び立入検査)がなされることを前提に、人への長期毒性の疑い又は生態毒性の有無が明らかでない場合であっても、製造・輸入が可能となる。

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