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3 生活保護制度について(保護課、指導監査室)

(1) 生活保護制度の見直しについて

 ア  生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書について
 生活保護制度の在り方については、社会保障審議会福祉部会の下に設けられた生活保護制度の在り方に関する専門委員会において平成15年8月から御検討いただいていたが、平成16年12月15日にその報告書が取りまとめられたところである。
 厚生労働省としては、本報告書を踏まえ、具体的な見直しの内容を検討し、平成17年度から順次見直しを実施していくこととしている。
 平成17年度は、
(1)  母子加算支給対象世帯の子供の年齢要件の見直し等生活保護基準の見直し
(2)  自立支援プログラムの導入による自立・就労支援策の拡充
などを実施することとしている。

 イ  組織的な対応の確立について
 専門委員会の報告書においても指摘されているように、各実施機関の実施体制については、担当職員の配置数の不足や経験不足が見られるとともに、組織としての支援が十分でないために、担当職員の負担が過重となっている現状があることから、担当職員数の確保や質の向上に努めるとともに、組織的な対応により業務を実施する体制を確立していく必要がある。
 特に、自立支援プログラムの導入は、組織としてシステム的に業務を実施する体制の確立を目指すものでもあるので、各実施機関において積極的に取り組まれるよう必要な支援及び指導をお願いしたい。

 生活保護制度の在り方に関する専門委員会 報告書(抜粋)
第4  制度の実施体制について
(2) 組織的取組
 自立支援プログラムの策定により、自立・就労支援の方法や手段がマニュアル的に整理されるとともに、これに基づく支援や被保護者の取組の評価の実施、利用できる社会資源の拡大等により、担当職員個人の経験等に依存することなく、地方自治体が組織としてシステム的に被保護世帯の自立・就労支援に取り組むことが期待される。なお、地方自治体における自立支援プログラムの策定・実施には、当然のことながら、組織全体として取り組むことが必須であり、担当職員まかせであってはならないことを特に強調しておきたい。

 ウ  自立支援プログラムの導入について
 アの報告書を踏まえ、生活保護制度を経済的給付に加えて効果的な自立・就労支援策を実施する制度に転換し、平成17年度から自立支援プログラムを導入することとしている。
 自立支援プログラムとは、以下のようなシステムを言う。
 (1)  地方自治体が、地域の被保護世帯の抱える問題を把握した上で、自主性・独自性を生かして重層的かつ多様な支援メニューを整備し、被保護世帯の問題に応じた自立支援プログラムを策定
 (2)  被保護者は、それぞれの状況に応じたプログラムに参加するとともに、地方自治体はプログラムに沿った支援を実施
 (3)  地方自治体は被保護者の取組状況を定期的に評価し、必要に応じて参加すべきプログラムや支援内容の見直しを実施
プログラムの見直し等にかかわらず、取組状況が不十分な場合や、被保護者が合理的な理由なくプログラムへの参加自体を拒否している場合については文書による指導・指示を実施
それでもなお取組に全く改善が見られず、稼働能力の活用等保護の要件を満たしていないと判断される場合等については、保護の変更、停止又は廃止を考慮
 厚生労働省としては、
 (1)  自立支援プログラムに関する指針、評価・判断基準例等の提示
 (2)  セーフティネット支援対策等補助金による地方自治体の実施体制整備の支援
 (3)  労働行政等、関係機関との連携の確保・開拓
等により、地方自治体の取組を支援していくこととしている。各地方自治体におかれては、生活保護世帯の現状や地域の社会資源を踏まえ、セーフティネット支援対策等補助金の活用等により、生活保護受給者等の自立・就労を支援するための福祉事務所の実施体制及び多様かつ重層的な支援メニュー、各種サービスの整備を図り、自立支援プログラムの策定・実施を積極的に推進されたい。

 エ  福祉事務所とハローワークの連携等による就労支援事業
 平成17年度予算案(当省職業安定局及び職業能力開発局予算)において、自立支援プログラムの一環として、福祉事務所とハローワークの連携や無料の職業訓練の拡充による生活保護受給者に対する就労支援事業が盛り込まれているところである。
 当該就労支援事業の具体的な内容は以下のとおりである。
  (ア)  就労支援コーディネーターによる基本的な就労支援(新設)
 ハローワークに生活保護受給者のための就労支援コーディネーターを新設(全国で100名配置)し、福祉事務所担当者と共同で、面接などを通じ対象者の状況把握と生活保護受給者に適用する就労支援メニューの選定、誘導等を実施
 就労支援メニューの内容





 ハローワークにおける就職支援ナビゲーター等による支援
 ハローワークにおける公共職業訓練の受講のあっせん
 ハローワークにおける民間での教育訓練の受講勧奨
 (訓練費用は生業扶助を活用)
 トライアル雇用等一般雇用施策の活用

  (イ) 就労支援メニューの提供
(1)  就職支援ナビゲーター等による就職支援
 ハローワークにおいて、きめ細やかな就職支援を担当者制により一貫して実施する生活保護受給者のための就職支援ナビゲーターを配置する(全国で52名拡充)等により、支援を実施
(2)  生活保護受給者向けの公共職業訓練の実施
 生活保護受給者向けに、就職の準備段階としての基礎的知識・マナー等に関するプレ訓練と実際の就職に必要な具体的技能・知識を習得させるための職業訓練をセットにした「プレ訓練付き職業訓練」を、都道府県に委託して新規に実施する(訓練費用は無料)ことにより職業訓練受講機会を拡大(全国で1,500人分)するとともに、ハローワークにおいてその受講をあっせん
   なお、これらの事業については、下図のとおり、福祉事務所とハローワークとの連携を前提にしており、後日、事業の実施方法、留意点等について連絡するので、都道府県労働局及び都道府県職業能力開発主管部局との調整の上、生活保護受給者の就労支援に積極的に取り組まれたい。


雇用行政を通じた生活保護受給者の就労支援

雇用行政を通じた生活保護受給者の就労支援の図


(2)  三位一体の改革における生活保護費負担金の見直し
 三位一体の改革における生活保護費負担金の見直しについて、平成15年末の「生活保護費負担金の見直しについては、・・・地方団体関係者等と協議しつつ、検討を行い、その結果に基づいて平成17年度に実施する」との政府・与党合意を踏まえ、政府内及び地方団体関係者等と協議を行った。厚生労働省としては、生活保護制度を経済的給付に加えて自立・就労支援策を実施する制度に転換し、合わせて地方自治体の裁量の幅を拡大し、地方自治体に一層の役割・責任を担っていただくことに伴い、生活保護費負担金の見直しを提案したところであるが、平成16年11月に政府・与党の間で以下の合意がなされたところである。
 生活保護費及び児童扶養手当に関する地方団体関係者との協議機関の構成員や進め方については、関係省庁や地方団体と協議を行った上で速やかに決定し、できる限り早く検討を開始することとしたいと考えており、その状況については随時情報提供してまいりたい。

 三位一体の改革について(平成16年11月26日政府・与党合意)
 生活保護費負担金及び児童扶養手当の補助率の見直しについては、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、平成17年秋までに結論を得て、平成18年度から実施する。


(3) 平成17年度生活保護基準の改定
 ア  生活扶助基準の改定
 生活扶助基準については、一般国民の消費水準との均衡が図られるよう、政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸びを基礎とし、国民の消費動向や社会経済情勢を総合的に勘案して改定しているが、平成17年度においては、改定を据え置くこととしたものである。

標準3人世帯(33歳・29歳・4歳)の生活扶助基準額
  平成16年度 平成17年度
1級地−1 162,170円 162,170円
3級地−2 125,690円 125,690円

 イ  生活保護基準の見直しについて
 生活保護基準については、平成15年12月の生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ及び平成16年12月の生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書の内容を踏まえ、今後順次見直しを行っていくこととしているが、平成17年度における生活保護基準改正案の主な内容は以下のとおりである。(詳細については、昨年12月24日付事務連絡にて通知済である。)
 なお、今般の基準改正は内容が多岐にわたることから、多くの被保護世帯で最低生活費の算定見直しが必要になると思われるため、改正の趣旨や次年度の支給額の増減等については、各自治体の広報やお知らせなどを通じ、必ず事前に(告示改正前の時点で可)被保護世帯への説明が十分になされるよう、管内の福祉事務所に対して周知徹底されたい。

  (ア) 母子加算の見直し
(1)  基本的な考え方
 母子加算については、全国消費実態調査等による一般母子世帯の消費水準との比較検証を行った結果、母子加算を除いた生活扶助基準額が、一般勤労母子世帯における生活扶助相当支出額と概ね均衡していることから、必ずしも必要ないものと考えられるため、現行の一律・機械的な給付を見直し、ひとり親世帯の自立・就労に向けた給付とするよう、支給要件、支給金額等の見直しを順次行っていくこととしている。
(2)  平成17年度における取扱い
 平成17年度においては、母子加算の子ども(児童)の年齢要件について、
 ○  ひとり親世帯においては、子どもが大きくなるにつれ、養育に係る手間が減少し、また子どもが家事等を行うことが可能になることから、就労可能性や就労可能時間が拡大するとともに、勤労しつつ子育てをすることに伴う支出(外食費等)も減少し、世帯としての自立の可能性が増すこと
 ○  生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点から、高等学校の就学費用について、生業扶助として新たに給付すること
を併せて考慮したうえで、これまでの「18歳以下」から「15歳以下」へ引き下げることとしている。
 これにより、16〜18歳の子どものみを養育するひとり親世帯については、母子加算の支給対象外となるが、被保護母子世帯の生活水準が急激に低下することのないように配慮し、平成17年度から3年かけて段階的に廃止すること
としている。

在宅・1級地・児童1人の場合 [16〜18歳の子供のみを養育するひとり親]
23,260円(平成16年度)→15,510円(平成17年度)

 なお、15歳以下の子どもを養育するひとり親世帯(子どもを2人以上養育している場合で末子の年齢が15歳以下の場合も含む)に係る母子加算については、平成17年度はこれまで通り支給する取扱いとするが、平成18年度以降、自立支援プログラムの定着度合等を見据えつつ、支給要件、支給金額等を見直すこととしているので、ご承知願いたい。

  (イ)  高校就学費用の給付
 現在、一般世帯における高校進学率は97.3%(平成15年度)に達している状況であり、また、昨年3月の福岡市学資保険訴訟最高裁判決においては、「近時においては、ほとんどの者が高等学校に進学する状況であり、高等学校に進学することが自立のために有用であるとも考えられる(後略)」との判断がなされたところである。
 さらに、先般の生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書においても、
 「高校進学率の一般的な高まり、「貧困の再生産」の防止の観点から見れば、子どもを自立・就労させていくためには高校就学が有効な手段となっているものと考えられる。」としたうえで、「生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点から、高等学校への就学費用について、生活保護制度において対応することを検討すべきである。」とされたところでもある。
 こうしたことを総合的に勘案した上で、被保護世帯の自立支援という観点から、平成17年度から新たに高校就学費用を給付することとしており、具体的には、高校就学に伴い必要となる学用品費、交通費、授業料等を給付内容とし、その給付水準は公立高校における所要額を目安に設定することとしている。
 なお、義務教育である小・中学校の就学費用が教育扶助によって給付されるのとは異なり、高校就学費用は自立支援の観点から給付されるものであるため、生業扶助によって行うこととしたものである。また、授業料、入学金等に関しては、各自治体において実施される減免措置が講じられている場合、生活保護による給付は行わない取扱いとするのでご留意願いたい。

  (ウ)  多人数世帯の生活扶助基準額の適正化
 かねてより、生活扶助基準は一般低所得世帯の消費実態と比べて、世帯人員が多人数になるほど割高になるとの指摘がなされているが、これは世帯人員が増すにつれて第1類費の比重が高くなり、スケールメリット効果が薄れるため、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないことが原因である。
 このため、一般低所得世帯の消費実態、消費構造を踏まえ、世帯規模の経済性を反映した水準となるよう、多人数世帯(4人以上)について生活扶助基準額を引き下げることとしている。具体的には、
 (1)  第1類費について、4人以上世帯の第1類費の算定に際し次の逓減率を乗じて算定することとする。(3年計画で導入)
 4人世帯 0.95 (3年で5%引き下げ) [17年度:0.98]
 5人以上世帯 0.9 (3年で10%引き下げ) [17年度:0.96]
 (2)  また、第2類費について、4人以上世帯の基準額を引き下げる。
こととしている。

  (エ)  20歳未満の若年者の第1類費年齢区分の見直し
 20歳未満の若年者の第1類費年齢区分については、現行8区分に細分化されているが、これを、0〜2歳(乳幼児)、3〜5歳(幼児)、6〜11歳(小学生)、12歳〜19歳(中学生以上)の4区分に簡素化することとしている。
 また、見直し後の年齢区分ごとの第1類基準額については、直近の栄養所要量の年齢別格差を基に設定することとしており、平成16年度とは大きく異なることとなる年齢区分もあるのでご留意願いたい。
 なお、今回の見直しに伴い、一部の0歳児に適用されている人工栄養費については、これを廃止することとしている。

  (オ)  老齢加算の段階的廃止(2年目)
 老齢加算については、平成16年度から3年かけて段階的に廃止することとしているが、平成17年度は、70歳以上の第1類基準額と60歳代の第1類基準額との差額をもって、加算額を設定することとしている。
在宅・1級地・70歳以上の場合
 9,670円(平成16年度)→ 3,760円(平成17年度)

 ウ  その他の改定
 出産扶助(施設分娩)、生業扶助の技能修得費及び就職支度費については、それぞれの扶助の性格を踏まえ、費用の実態等を勘案し、所要の改定を図ることとしている。

(4) 生活保護の動向
 ア  近年の保護動向
 最近の保護動向は、被保護人員が最低であった平成7年度と比較すると、人員、世帯共に急激に増加している。

○平成7年度
 被保護人員  約88万2千人
 被保護世帯  約60万2千世帯
 保護率  7.0‰

○平成16年10月現在(速報値)
 被保護人員  約142万8千人
 被保護世帯  約100万2千世帯
 保護率  11.2‰

 イ  近年の保護動向の特徴
  (ア)  世帯類型別世帯数の状況
 (1)高齢化の進展を受けて高齢者世帯が増加している一方、近年の景気の影響を受けて、(2)稼働能力が有る者を多く含む母子世帯やその他世帯の伸びも顕著である。

世帯類型別被保護世帯数の推移
  平成7年度 構成割合(%) 平成16年10月 構成割合(%)
総数 600,980 100.0 1,000,369 100.0
高齢者世帯 254,292 42.3 467,022 46.7
母子世帯 52,373 8.7 87,980 8.8
傷病者・障害者世帯 252,688 42.0 350,796 35.1
その他世帯 41,627 6.9 94,571 9.5
資料: 福祉行政報告例(平成16年10月分は概数値)

  (イ)  世帯の状況
 世帯の単身化が進んでおり、現在被保護単身世帯の割合は、73.2%となっている。特に高齢者世帯においては9割弱を占めている。

資料: 福祉行政報告例

世帯類型別被保護単身世帯の割合
  総数 高齢者世帯 母子世帯 傷病・障害者世帯 その他世帯
世帯数 平成7年度 600,980 254,292 52,373 252,688 41,627
  単身 431,629 224,104 - 193,235 14,290
(71.8%) (88.1%)   (76.5%) (34.3%)
平成15年度 939,733 435,804 82,216 336,772 84,941
  単身 688,217 381,640 - 264,127 42,450
(73.2%) (87.6%)   (78.4%) (50.0%)

  (ウ)  生活保護の開始及び廃止状況
 近年、保護の開始世帯数が景気の影響等により急増している一方、廃止世帯数は微増に止まっている。このため、被保護人員、世帯共に増加している。

保護の開始、廃止世帯数の年次推移
保護の開始、廃止世帯数の年次推移の図

資料: 福祉行政報告例


保護開始理由別世帯数の年次推移

年度 総数 景気による影響と考えられるもの 社会保障給付金の減少・喪失 働いていた者の死亡・離別等 傷病等
5 (100.0%) (11.1%) (0.3%) (5.9%) (82.6%)
9,911 1,102 30 589 8,190
10 (100.0%) (21.8%) (1.0%) (5.2%) (72.0%)
13,685 2,982 134 709 9,860
15 (100.0%) (31.0%) (1.6%) (4.9%) (62.5%)
19,440 6,031 316 944 12,149

資料: 福祉行政報告例(各年9月)

 ウ  今後の保護動向
 最近の社会経済情勢をみると、人口の高齢化に伴い高齢者数が増加していることや、引き続き完全失業率が高い水準で推移していることから、今後とも被保護人員及び被保護世帯数は増加傾向が続くものと考えられる。
 しかしながら、完全失業率が平成15年平均で5.3%あったものが、平成16年10月には4.7%と改善の傾向がみられ、また、有効求人倍率も平成15年平均で0.64倍であったものが、平成16年10月には0.88倍に改善している。こうした雇用情勢の改善傾向等を受けて、被保護人員の増加の伸びは平成15年平均の8.2%から、昨年9〜10月には5%台後半に鈍化する傾向にある。

雇用関係指標及び被保護人員対前年同月比の推移

  完全失業者数 完全失業率 有効求人倍率 被保護人員対前年同月比(指数)
平成15年平均 千人
3,500

5.3

0.64
108.2
平成16年1月 3,230 5.0 0.77 107.7
平成16年2月 3,300 5.0 0.77 107.6
平成16年3月 3,330 4.7 0.77 107.6
平成16年4月 3,350 4.7 0.77 107.3
平成16年5月 3,190 4.6 0.80 106.8
平成16年6月 3,090 4.6 0.82 106.6
平成16年7月 3,180 4.9 0.83 106.2
平成16年8月 3,140 4.8 0.83 106.2
平成16年9月 3,090 4.6 0.84 105.9
平成16年10月 3,110 4.7 0.88 105.6

資料 :労働力調査(総務省)、職業安定業務統計、福祉行政報告例(速報値)
※完全失業率及び有効求人倍率の月別推移は季節調整値である。


 エ  積極的な保護動向の把握
 稼働能力のある者を多く含む母子世帯やその他世帯等が増加していることから、自立に向けた一層の取組が求められるところである。
 このため、各都道府県におかれては、管内各自治体の保護動向について、年齢階級や世帯類型等様々な角度から積極的に分析を行い、地域の特徴に即した保護の適切な運営が図られるようお願いしたい。

 オ  保護費負担金の確保
 保護費負担金の平成17年度予算(案)については、老齢加算や母子加算、多人数世帯の保護基準の見直し、医療扶助の適正化等に加え、自立支援プログラムの導入による生活保護受給者の自立・就労支援等、生活保護の適正実施に取り組むことを踏まえつつ、現下の雇用経済情勢や高齢化の進展等の影響を受け、被保護人員が増加していることを総合的に勘案し、対前年度1,826億円増の1兆8,933億円を計上しているところである。

(参考)平成17年度予算(案)の状況
  16'予算 17'予算(案) 増△減額
保護費負担金 1兆7,107億円 1兆8,933億円 1,826億円

(5)  生活保護の適切な運営
 生活保護は、国民生活の最後の拠り所となる制度であり、国民の理解と信頼を得られるよう、次の点に留意し、適切な保護の決定実施を行う体制が整備されるようお願いしたい。
 ア  保護の相談における窓口対応等について
 管内実施機関に対しては、以下の点に留意するほか、被保護者の処遇にあたって組織的な対応を行うとともに、各実施機関における課題に応じた業務運営がなされるよう、必要な助言や指導に努められたい。
  (ア)  保護の相談における窓口対応等
 生活困窮者の発見及び適切な保護を実施するために生活困窮者に関する情報が福祉事務所の窓口につながるよう、住民に対する生活保護制度の周知、保健福祉関係部局や社会保険・水道・住宅担当部局等の関係機関との連絡・連携を図るとともに、要保護者に対するきめ細かな面接相談、申請の意思のある方への申請手続の援助指導を行う。
  (イ)  ホームレスに対する保護の適用
 平成15年7月に策定された以下の指針等により、引き続き、地域の実情に応じた適切な保護が行われるよう実施機関への指導を行う。
 (1) 「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」(15.7.31厚生労働省・国土交通省告示)
 (2) 「ホームレスに対する生活保護の適用について」(15.7.31保護課長通知)
 また、社会福祉法に規定する第2種社会福祉事業の無料低額宿泊所に入居している被保護者については、ケースワーカーの的確な訪問調査活動の実施により、処遇状況を確認するとともに、居宅生活への移行や自立に向けた指導援助を行う。

 イ  医療扶助の適正運営
 被保護者の適切な処遇の確保並びに生活保護費の適正支出を図る上で、医療扶助の適正運営は重要な課題であることから、各都道府県市においては、下記の事項に留意の上、長期入院患者の退院促進や頻回受診者に対する適正受診指導など、医療扶助の適正化対策について、地域の実情に応じた積極的な取組をお願いしたい。
  (ア)  診療報酬請求書(レセプト)点検の徹底
 診療報酬請求書(レセプト)の点検は、医療扶助受給者の病状把握や医療扶助費の適正な支出を図るために必要不可欠なものであることから、全てのレセプトについて点検を行うとともに、適宜点検効果の検証を行い、効果が不十分と思われる場合は点検方法の見直しを行うなど、より効率的かつ効果的な点検を実施する。
 特に、内容点検をケースワーカーが実施している実施機関においては、セーフティネット支援対策等補助金の活用による外部委託や電算化等点検方法の見直しを検討する。
  (イ)  いわゆる社会的入院の解消
 いわゆる社会的入院患者に対しては、適切な受入先の確保を図るとともに、個々の退院阻害要因の解消や退院に向けた指導援助を行うための相談支援体制の充実を図る。

 ウ  介護扶助の適正運営
 介護扶助受給者は着実に増加している一方、指定介護機関による介護扶助にかかる報酬の不正請求など不適切な事例も見受けられることから、生活保護担当部局と介護保険担当部局等との連携体制の充実を図りつつ、指定介護機関に対して生活保護制度の周知を含めて指導を徹底するなど、介護扶助の適正実施に努められたい。
 なお、介護保険制度の見直しについては、平成17年10月又は平成18年4月からの施行が予定されており、それに伴い介護扶助においても必要な見直しを実施することとしている。その際には、制度の運用を担っている各都道府県・市からも意見を伺いたいと考えているので、制度改正の動向に留意願いたい。

(6)  保護施設の整備及び運営
 ア  保護施設の整備
 救護施設については、在宅での生活が困難な精神疾患による患者、重複障害者等の受入施設として需要が増大しており、特に、いわゆる社会的入院患者の解消という観点からも、退院患者の受入先としての役割に期待が寄せられている。
 また、近年の雇用・経済状況を反映し、特に都市部においてホームレスが増加し、その支援の一環として、更生施設や宿所提供施設においての対応が求められている。
 ついては、平成17年度の保護施設の整備に当たっては、地域における保護施設の必要性を的確に把握し、計画的整備に取り組まれたい。
 なお、平成17年度における保護施設の施設整備については、従前どおり社会福祉施設整備費補助(負担)金により実施することとしている。

 イ  保護施設の運営
  (ア)  入所者に対する居宅生活への移行支援等
 救護施設及び更生施設については、生活扶助を行う機能に加え、入所者の地域生活への移行の支援や居宅生活を送る被保護者に対する生活訓練の実施の場として活用されることが期待されている。
 このようなことから、保護施設通所事業や救護施設居宅生活訓練事業に積極的に取り組み、入所者の居宅生活への移行が促進されるよう、救護施設、更生施設及び実施機関への働きかけを行われたい。
 なお、平成17年度予算(案)において、居宅で生活する被保護者に対し、居宅生活の継続を支援する「救護施設居宅生活者ショートステイ事業」をセーフティネット支援対策等補助金のうち、自立支援プログラム策定実施推進事業の一事業として新たに加えることとしたので、当該事業についても積極的に取り組まれるよう、お願いしたい。

 救護施設居宅生活者ショートステイ事業
 一時的に精神状態が不安定になることのある居宅で生活する被保護者に対し、救護施設を短期間利用させることにより、精神状態を安定させ、もって当該者の居宅生活の継続を支援する。

  (イ)  保護施設への適切な入所
 保護施設については、常に入所者一人一人の状況把握に努め、居宅での保護や他法の専門的施設での受入が可能な者についてはこれを優先するなど、当該施設への入所が適切か否かを検討し、必要に応じ入所先の変更を行うなど、より適切な処遇が確保されるよう、管内福祉事務所を指導されたい。

(7)  生活保護及び保護施設の指導監査
 ア  生活保護法施行事務監査関係
 被保護世帯の増加にもかかわらず必要な現業員、査察指導員の確保がされず、また、査察指導員のケース審査と業務進行管理等査察指導機能が十分確立されていない等のために、保護の要件の確認、生活実態の把握、自立への支援等適切な保護の決定実施上の基本的事項に問題が認められる福祉事務所が少なからず見受けられる。
 こうした観点から、都道府県本庁の生活保護法施行事務監査においては、特に、必要な現業員の充足及び査察指導体制の充実・整備、不正受給防止等の観点からの関係先調査や課税調査等各種調査の徹底等について指導し、併せて管内福祉事務所ごとの課題に応じた具体的な助言・指導を行うようお願いしたい。
 また、福祉事務所長等幹部職員に対しては、常に管内の保護動向、福祉事務所全体の生活保護の運営状況、問題点を十分把握・分析の上、必要に応じて業務量の把握や業務分担の見直し、関係機関との連携確保、査察指導機能の強化、円滑な制度運営確保のための体制整備等に努めるよう指導し、組織的な運営管理の推進が図られるようお願いしたい。
 なお、昨年12月15日に社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会の報告書が取りまとめられ、その内容を踏まえ、保護の実施要領の改正が行われる予定であるが、生活保護法施行事務監査の実施要綱についてもこれに併せて改正することとなるので、留意願いたい。

 (参考)
  ・ 平成15年度不正受給(法第78条適用)
  件数 9,264件 金額 58億円
  ・ 会計検査院による平成15年度決算検査報告
  6都県10ケース 不当支出金額60百万円

 イ  保護施設監査関係
 保護施設においても、健全で安定した運営の下に、入所者個々の特性に合った適切な入所者処遇が確保されるためには、施設に対する都道府県、指定都市及び中核市の指導監査の果たす役割が改めて重要となっている。
 平成17年度の監査に当たっては、適切な入所者処遇の確保及び施設の適正な運営管理体制の確立とともに、施設の衛生管理や感染症予防にも重点を置き、適切な施設運営が図られるよう、引き続き厳正な指導監査の実施をお願いしたい。


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