3.児童虐待防止対策について
(1) | 児童虐待防止法及び児童福祉法の改正について 児童相談所の児童虐待に関する相談件数は、児童虐待防止法が施行される直前の2倍以上に増加しており、その内容も保護者の意に反して施設入所を家庭裁判所に申し立てる場合など、困難なケースが増えているところである。 また、虐待による死亡という不幸な事件が依然として発生している。特に、児童相談所等の関係機関が関わりながら未然防止ができなかった事例が出てきている。 このような状況を踏まえ、
各自治体においては、これらの法改正の趣旨も踏まえつつ、発生予防から自立支援に至るまでの総合的な支援を行い、虐待という重大な権利侵害から子どもを守り、子どもが心身ともに健全に成長できるよう、最大限、力を尽くしていただきたい。 |
(2) | 児童家庭相談体制の見直しについて
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(3) | 里親制度のさらなる充実について
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(4) | 児童福祉施設等におけるケアの充実について
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(5) | 要保護児童対策地域協議会について 虐待を受けている児童を始めとする要保護児童の早期発見や適切な保護を図るためには、関係機関が当該児童等に関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくことが重要である。 このため、児童福祉法改正法により、要保護児童等に関し、関係者間で情報の交換と支援の協議を行う機関として「要保護児童対策地域協議会」を法的に位置づけるとともに、その運営の中核となる調整機関を置くことや、地域協議会の構成員に守秘義務を課すこととされたところである。 平成16年6月現在、全国3,123市町村の39.8%にあたる1,243か所で児童虐待防止を目的とする市町村域でのネットワークが整備されているが、要保護児童対策地域協議会が法定化された趣旨や、参議院厚生労働委員会において、児童福祉法改正法案に対し「全市町村における要保護児童対策地域協議会の速やかな設置を目指す」との附帯決議がなされたことを踏まえ、市町村における地域協議会の設置促進と活動内容の充実に向けた取り組みを進めていくことが必要である。なお、昨年末に策定した「子ども・子育て応援プラン」においても、虐待防止ネットワークを平成21年度までに全市町村に設置することを目標としているところである。 特に、現在設置されている児童虐待防止ネットワークの活動上の困難点として、「効果的な運営方法が分からない」(35.2%)、「スーパーバイザーがいない」(33.8%)との点をあげるところが多いことから、市町村が設置主体となる要保護児童対策地域協議会については、児童相談所がその構成員として参画し、市町村の後方支援を行うことが期待されていると考えているので、御協力方よろしくお願いしたい。 |
(6) | 要保護児童に関する司法関与の強化について 児童福祉法改正法においては、児童虐待等の対応が困難な相談が増加する中で、児童相談所の体制強化だけでは全ての事例に適切に対応しきれない現状を踏まえ、
なお、司法関与の全体像については、関連資料を参照いただきたい。
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(7) | 育児支援家庭訪問事業について 新生児期及び乳児期への支援の重点化を図るための具体的な取り組みの一つとして、平成16年度に「育児支援家庭訪問事業」を創設し、養育支援が必要となりやすい状況にありながらも近隣から孤立し、社会的な支援が得られにくい状況にある家庭を積極的に把握し、(1)子育てOBやヘルパー等が訪問して育児・家事等の援助を行ったり、(2)保健師、助産師、保育士等の専門職が訪問して具体的な育児に関する技術支援を行うなど、養育者への支援や養育環境の改善に向けた取り組みを強化しているところである。 初年度においては本事業の実施が当初予定より進んでいない状況であるが、今回の児童福祉法の改正により、市町村が児童虐待を含む児童相談に関して一定の役割を担うこととされており、本事業は、市町村における児童虐待防止に関しての体制の確保を図るためには有効な手段となり得るものと考えていることから、管内の市町村に積極的に取り組むよう、必要な助言・指導をお願いしたい。 なお、昨年末に策定した「子ども・子育て応援プラン」において、全市町村での実施を目指すこととしたところであり、厚生労働省としても、本年度中に、改めて先行自治体の事例を紹介するなどにより、本事業の意義や今後の取り組み促進への理解を求めることとしている。 また、本事業は、平成17年度より、「次世代育成支援対策交付金(ソフト交付金)」に移行されることとなったのでご留意いただきたい。 |
(8) | 「子ども・子育て応援プラン」における要保護児童対策の推進について 児童虐待防止対策を始めとする要保護児童対策については、昨年6月に策定された「少子化社会対策大綱」において、「児童虐待という親子間の最も深刻な事象に対応できる社会を創り上げていくことが、すべての子どもと子育てを大切にする社会づくりにつながる」との認識に立ち、その充実を図ることとされたところである。 この少子化社会対策大綱を踏まえて策定した「子ども・子育て支援プラン」においても、同様の認識に立ち、
各自治体においても、要保護児童対策の推進がすべての子どもと子育てを大切にする社会づくりにつながるとの認識に立ち、要保護児童対策をより積極的に推進していただきたい。
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(9) | 子どもの虹情報研修センターについて 子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)は、児童虐待及び非行・暴力などの思春期問題に対応するため、第一線の専門的援助者の養成と高度専門情報の集約・発信拠点となるナショナルセンターとして、平成14年度に設立されたものである。 同センターは、これまで児童相談所、情緒障害児短期治療施設、児童養護施設、乳児院、市町村等の職員に対する虐待対応に関する研修を数多く実施してきたところである。 今後さらに、蓄積してきた情報や技術を活かして、時代のニーズに合った効果的な研修プログラムの開発や実施を行うとともに、センター内の図書室やホームページあるいは専門相談窓口等を通して、様々な児童虐待問題に関連する情報を全国に提供していくこととしている。 今回の児童福祉法の改正により、児童相談所長の研修の義務化や市町村における児童家庭相談業務が実施されることとされているが、これを踏まえた研修も実施する等、研修内容の充実を図る予定である。 各地方自治体におかれては、関係職員の当該各種研修への参加のための特段の配慮及び社会福祉法人等への受講の勧奨を引き続きお願いしたい。 (連絡先:〒245-0062 横浜市戸塚区汲沢町983番地 045-871-8011) |
(10) | 児童虐待による死亡事例の検証について 虐待により子どもが死亡するに至った事例については、従来から事例の検証と改善策の報告をお願いしているところであり、厚生労働省としてもこうした報告に基づき、昨年2月末に「児童虐待死亡事例の検証と今後の虐待防止対策について」をとりまとめたところである。 その後、先の通常国会で成立した改正児童虐待防止法により、国及び地方公共団体の責務として児童虐待の防止等のために必要な事項についての検証を行うことが明確にされたこと等を踏まえ、昨年10月に社会保障審議会児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」を設置し、全国の事例を専門的かつ多面的な角度から検証すべく審議を重ねているところである。 同専門委員会においては、今後、おおむね年2回程度を目途に報告をとりまとめることを目標に、要保護児童に関わる各方面の関係者に対し、活動の支援となるような有意義な情報提供をしていきたいと考えている。 これらの検証作業に当たっては、関係自治体の十分な検証結果が不可欠であることから、引き続き、児童虐待死亡事例の検証について充実に努めるとともに、同専門委員会の運営について特段のご協力をお願いしたい。 |