また、人間は、生まれながらにして、または、人生途中にして、障害や疾病などの様々な原因によって、他からの支援や介護を必要とする状態になったり、自分だけのあるいは家族だけの力では生活できないことがあります。 |
【 |
他から支援や介護を必要とする状態 |
【 |
自分や家族だけの力で生活できない状態】 |
|
支援や介護が必要な状態になっても、
・ |
「可能な限り自分らしい生活を営みたい」 |
・ |
「自分の人生に主体的・積極的に関わり自分の人生を自分自身で創り上げていきたい」 |
・ |
「家族として、人間としての尊厳ある人生と生活を送ってもらいたい」 |
|
【 |
支援や介護が必要な状態になっても、意志や希望がある】 |
|
障害をもつ方々が住み慣れた地域で自立した生活を送ることは、ふつうのことです。しかし、自立した生活を送るためには、住み慣れた地域の様々なサービス資源や、保健・医療・福祉・教育・就労等をはじめとする様々な領域のサービスを上手に使ったり、地域の障害者に対する意識やかかわりを深めたり、また、地域(又は利用者・家族)が有している“強さ”や“力”を引き出していくことが必要となりますが、それは容易にできるものではありません。これらのことを、障害者のおかれている状況等を踏まえ、適切かつ総合的に課題調整する必要が生じてきます。その技法がケアマネジメントです。 |
|
ケアマネジメントの定義は多様ですが、「利用者が地域社会による見守りや支援を受けながら、地域での望ましい生活の維持継続を阻害するさまざまな複合的な生活課題(ニーズ)に対して、生活の目標を明らかにし、課題解決に至る道筋と方向を明らかにして、地域社会にある資源の活用・改善・開発をとおして、総合的かつ効率的に継続して利用者のニーズに基づく課題解決を図っていくプロセスと、それを支えるシステム」といえます。
それでは、なぜ、そのようなプロセスとシステムが必要なのでしょうか。 |
|
例えば、前述のような意志や希望を実現するために、「どこに相談したらいいだろうか?」というときに、市町村に行くことになりますが、相談支援事業には、次の種類があります。
|
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(2) |
都道府県知事が指定する相談支援事業者(以下「指定相談支援事業者」という。)による相談支援 |
|
指定相談事業者の中から、市町村が相談支援業務を委託する「委託相談支援事業者」が含めれます。 |
障害者自立支援法(以下「法」という。)では、指定相談事業者には相談支援専門員(ケアマネジメント従事者)を配置することとしました。
|
|
相談支援専門員は、ケアマネジメントのプロセスとシステムを活用して利用者のニーズに基づく課題解決を図っていくことになります。 |
【 |
相談支援事業者】 |
【 |
相談支援専門員(ケアマネジメント従事者)】 |
|
それは、利用者も「有する能力」に応じた日常生活を営むことを求めており、人間の尊厳を示す「自己決定」や「自立」という権利をもっているからです。「人間の尊厳」を実現していくためには、何が必要なのでしょうか。ケアマネジメントの目的は、「人間の尊厳」を守ることであり、「自己決定」「自立」を支えることです。「自己決定」と「自立」は、本人及び家族(介護者)の生活の質と深く結びつき、日常生活における「利用者の自立」と「家族の自立」を支援することによって具体的に現れます。
このために、法の中にケアマネジメントが位置づけられました。 |
【 |
ケアマネジメントの目的】
|
【 |
ケアマネジメントの意義】 |
|
法上は「自立」についての定義はしていません。しかし、
・ |
「可能な限り自分らしい生活を営みたい。」 |
・ |
「自分の人生に主体的・積極的に関わり自分の人生を自分自身で創り上げていきたい。」 |
・ |
「家族として、人間としての尊厳ある人生と生活を送ってもらいたい。」 |
などという意識が「自立」という価値観を見いだし、そのエ
ネルギーに対して「支援」していくこととしています。 |
|
つまり、「自立支援」という考え方がケアマネジメントを
法に位置づけた理念です。 |
|
|
|
ケアマネジメントを地域社会における支援システムとして考えると、そのキーパーソンは誰になるのでしょうか。それは相談支援専門員です。しかし、相談支援専門員が一人ですべてを背負うわけではありません。利用者が生活を営む上で、保健、医療、福祉、就労をはじめ、さまざまな領域に関わっていることは前述しましたが、ケアマネジメントは特定の「誰か」がすべてを担当するのではなく、その人に関わるさまざまな領域の専門職がチームとして対応していくことに意味があるのです。
このように、多分野・多職種の専門職による多様なサービスを一体的に、継続的に利用することができるようになることがチームケアといわれるもので、地域によるケアを実現していくためのシステムの重要な要といえるものです。
チームケアを実現するためには、チームによる利用者の生活の目標に対する取り組みが必要となります。これをチームアプローチといいます。
各種のサービスは、それぞれの専門職や利用者に関わる人によって担当されることになりますから、チームアプローチはサービス提供にあたっての前提となるものです。
また、サービス提供にあたっては、サービス事業者間の調整や協働を図ることなしには適切なサービスを提供することができませんから、同一職種だけでなく他の専門職やサービス提供事業者等のチームアプローチが不可欠となります。 |
★ |
相談支援専門員は、中立・公平な立場でケアマネジメントする位置づけとなっております。
法人等の所属長など、立場や権限を行使し、中立・公平を損ねることは決してあってはなりません。 |
|
保健・医療・福祉・教育・就労等のサービスは、これまで多様な問題に対応できるように専門分化がすすめられてきました。しかし、ケアマネジメントで実現しようとする一人ひとりの自立した生活は、多様な生活課題などを個々に把握して対応するのではなく、生活全体を総合的にとらえて対応することにより意味をなすので、総合調整が必要となってきました。これは、それぞれの専門性を決して否定するのではなく、それぞれの専門性を前提として、そこで明らかになった個々の課題の相関性や統一性などをもとにサービスの総合調整を行わなければならないということです。これがチームアプローチであり、ケアマネジメントする相談支援専門員は、それぞれの専門職が個々に把握した、複雑なサービスや地域の資源を、利用者の支援者としての位置づけで整理し、利用者に対する相談援助の窓口の一本化とサービスの複合化をすすめることができるようになるのです。
地域の中で、地域によるケアを実現していくことが大切です。相談支援専門員は自分自身の力を高める努力は当然行わなければなりませんが、自分一人ではケアマネジメントは展開できないということを強く認識しなければなりません。 |
・ |
生活の目標と生活支援の目標の共有化 |
・ |
複数の専門職のアセスメントの段階からの関わり |
(2) |
利用者と家族の「参加」 |
(3) |
多分野の専門職との協働 |
(4) |
サービス提供事業者や地域の機関との協働 |
(5) |
支給決定する市町村との協働 |
(6) |
相談支援専門員同士の協働と人脈との協働 |
|
介護保険法における介護支援専門員の制度化に伴い、給付管理を伴うケアマネジメントについて関心が広まるにつれて、多くの人にケアプランを作成することがケアマネジメントの目的のように受け取られてしまったことは否めません。
ケアマネジメントのプロセスでは、地域で日常生活を営む上で、多様で複合的なニーズと対応するニーズの継続的な連結が必要ですが、そのためのプラン作成は自立した生活を維持・継続するための手段です。
一般的なケアマネジメントのプロセスは、
・第1段階: |
「インテーク」 |
・第2段階: |
「アセスメント」 |
・第3段階: |
「ケアプラン」 |
・第4段階: |
「ケアプランの実施、サービス調整・仲介」 |
・第5段階: |
「モニタリング」・「再アセスメント」 |
・第6段階: |
「集結」 |
|
|
一般的にインテークは、利用者の依頼などに対して相談支援専門員が担当する内容(ケアマネジメントの対象者)かどうかを確認し、ケアマネジメントのプロセスをとおして生活機能における様々なニーズや課題・問題を整理し、生活の目標を明らかにしていくことを相互に確認することです。
利用者が自分の問題について、「話を聞いてもらいたい」という気持ちで接する初めての場面です。
(1) |
具体的に自分の問題を理解している人 |
(2) |
問題が漠然としていて、何から話したらいいのかわからない人 |
(3) |
問題の核心を隠し、周辺の問題や愚痴だけしか話さない人 |
など、相談の始まりは人それぞれです。 |
|
インテークは、利用者との人間関係を印象づける、重要なポイントになりますし、利用者は非常に緊張して相談に見えます。相談支援専門員は、これから長い付き合いの始まりですが、接し方は終始変わらない受容的言動と表情であることを基調とすることが望まれます。 |
利用者の希望やニーズを引き出すためには、利用者が話しやすい環境作りや、うまくまとめられない思いを言語化するお手伝いです。 |
インテークでは、次のことを確認しておくことが大切です。 |
|
|
相談は、こういうことですね。 |
|
秘密は守ります。 |
|
問題・課題分析と社会資源活用等 |
|
お任せより、エンパワーメント。 |
利用者が自立した日常生活を営むためには、様々なサービスを利用します。そのサービスを効果的・効率的に組み合わせ、調整するためには、アセスメントをとおして自立に向けての課題整理と利用者が自己決定するための情報整理を行います。 |
自己決定と信頼関係の構築。 |
アセスメントの基本的なねらい
(1) |
日常生活動作関連(ADL)のアセスメント |
(2) |
認知・意思関連のアセスメント |
(3) |
行動障害関連のアセスメント |
(4) |
手段的日常生活動作関連(IADL)のアセスメント |
(5) |
精神症状関連のアセスメント |
(6) |
残存能力の評価と可能性のアセスメント |
(7) |
介護環境のアセスメント |
(8) |
居住環境のアセスメント |
(9) |
利用者及び家族の健康(医療)の確認(主治医の把握) |
(10) |
既存サービスの状況(フォーマル・インフォーマル含む) |
以上は、自立支援のサービスを提供するためのケアプランを作成するために必要とされる情報収集と分析です。
これらのアセスメントをとおして、 |
★ |
障害者自立支援法では、アセス
メントを次の段階別に区分して
います。 |
(1) |
認定調査・概況調査 |
(2) |
サービス利用意向聴取 |
(3) |
課題分析(ニーズアセスメント) |
|
(8) |
利用者が望む自立した生活を阻害する要因を生活全般から明らかにする。 |
(9) |
自立に向けて利用者がどのような希望や意志をもっているかを明らかにする。 |
などにより、解決すべき課題を明らかにした内容をケアプランに反映していくことになります。
ケアマネジメントは、「アセスメントに始まりアセスメントに終わる」という、訪問した際に、何気ない会話から状況を伺い評価と分析を心がけることが大切です。
こうしたアセスメントにより、相談支援専門員は初めて利用者の実情に即したサービスを組むことが可能になるものであり、こうした利用者の実情をよく承知するためのアセスメントという手続きを疎かにすると、ケアマネジメントは利用者の立場に立つことはできません。
このため、相談支援専門員はケアマネジメントの作成に当たり、必ずアセスメントを行わなければならないことになります。
ただし、アセスメントは、利用者との関係を見極めながら、訪問などの機会ごとに蓄積や整理を繰り返していくものですので、初めのアセスメントで完全なものを求めるものではありません。
|
・ |
ICFの考え方等を用いることもひとつの要素です。 |
|
実際にケアプランの依頼を受け、アセスメントを実施する場合、相談支援専門員は、相談支援事業者の重要事項説明書において、事業者の内容を十分に説明し、説明した内容が了解されたことを証する署名や押印等をもらうこととなります。
|
|
ウ. |
第3段階:「ケアプラン:サービス調整・仲介」 |
アセスメントは、実際のサービスに結びつける情報収集と分析であり、その結果、利用者の生活の自立支援のために「ケアプラン」を作ることになります。このときは、支給決定内容を、利用者の受給者証から確認することとなります。
この場合、利用者のニーズに対するサービスに対して、利用者の指定する事業者があればよいですが、どこにどういう事業者があるのかわからないような場合は、事業者の条件等を聴取し、その条件に合う事業者情報等を提供し、その中から選んでいただくなどの権利擁護の視点から事業者等の仲介やサービスの調整を図ることとなります。
ここで、情報をつかんでおくべき事業者情報は
(1) |
重要事項説明書の内容 |
(2) |
契約書の内容 |
(3) |
運営規程の内容(職員配置、利用料など) |
(4) |
パンフレットを用意しておく(利用者への説明用) |
ケアプランは、相談支援専門員がキーパーソンとなって作成するものですが、その作成は利用者と相談支援専門員、その他の関係者(専門職やサービス提供事業者など)による協働作業によるものです。
ケアプランは相談支援専門員だけのものではなく、利用者や家族のものであり、サービス提供事業者も共通の自立支援の考えに沿った協働のプランへの関わりを持たなければならないからです。
利用者や家族にとっても相談支援専門員と共にプランを作ったということで満足度が高まり、プランの内容に沿って自律的にサービスを受けて生活していくことへの責任感も高まることになります。
ケアプランは、個々の利用者が有する原因、状態、問題や意欲に即した具体的なサービス計画であり、一人の利用者のために利用者や家族はもちろん、多様な専門職などが集まり、利用者のために、統一された共通の支援方針を合意し、樹立したものと考えるのが原則です。 |
|
この場合、サービス担当者会議を開催し、相談支援専門員がケアプランを作成した内容の確認と、利用者とサービス提供事業者が利用者のニーズや情報を共有し、相談支援専門員のケアマネジメントにおけるお互いの機能の意識や役割分担を図ることになります。(サービス担当者会議は相談支援専門員が調整を取り開催することになります。) |
・ |
利用者の生活している所で、本人を中心に行うことが原則です。 |
|
相談支援専門員は、「私は何をする人間なのか」ということを十分に説明する必要があります。つまり、相談支援専門員は、利用者の主体性を基調としたニーズを共に考え、様々なサービスや社会資源を上手く調整してケアプランに導いていく「支援者」であって、「全てお任せ」という依存型ケアプランを作成する人間ではないことを明確にすべきです。
そういう意味では、ケアマネジメントの目的やプロセスについてわかりやすく説明することが大切です。それは、利用者が参加しなければケアマネジメントは成立しないことと、利用者自身も目標に向かっていかなければならないという気づきを共有するためだからです。 |
|
ケアプランがサービス担当者会議で了承され、実施されることが確認された場合、契約を締結することになります。
ケアプランが終わったので、モニタリングまではホッと一息といきたいところですが、そうはいきません。
第2段階のアセスメントで、「ケアマネジメントはアセスメントに始まり、アセスメントで終わる」と言いましたとおり、ケアプランが実施されても、利用者を訪問し、サービスがサービス担当者会議で調整された内容どおりに行われているか、何か不都合はないか、またはサービスの内容で利用者から別のニーズや新たな課題等が生じていないか、検証を含めてアセスメントや再調整を図る必要があります。
次のチェックや対応が必要です。 |
|
(1) |
受給者証にサービス事業者との契約日の記載と押印がなされているか。 |
(2) |
利用者にサービス提供事業者が重要事項説明がなされているか、また、利用料等の確認 |
(3) |
利用者とサービス提供事業者との契約が締結されているかの確認 |
(4) |
サービス提供事業者が初めてサービスを提供するときに一緒に同行し、利用者の不安や緊張に対する精神的緩和剤の役割を図るなどの対応。 |
(5) |
利用者がサービスを利用している時の状況や表情などを見て、モニタリングに役立てる。 |
ケアプランの実施において、このような対応をすることにより、利用者は安心し、信頼関係が強まり、事業者との間にはよりよい緊張感と連携が深まることになります。
オ. |
第5段階:「モニタリング」・「再アセスメント」 |
モニタリングは、ケアプランが実情に即しているか、また自立支援を見通しながら現在をどうするかなどについて、ケアプランの問題点や環境、状況の変化をどのように把握するかという観点から、新たな課題を明確にし、次のケアプランに結びつけていくものです。ケアプランは明確な目標と達成時期の設定があります。絶えず、この検証を行うことになりますが、この達成の時期が到来したときは、計画された目標が達成されているか否かを評価し、達成されていない場合はその原因をケアマネジメントのプロセスにより課題分析していくことになります。
モニタリングの目標は |
|
(1) |
目標の達成度の確認
自立支援を基にした計画が、本人や家族を含めて、サービス提供事業者とともに、目標に向かって実行されているかなどを確認する。 |
(2) |
サービス内容の適否の確認
目標達成度から、サービス内容の適否を判断し、現状で進めていくか、別の工夫が必要であるかなどを、常に利用者と接しているサービス提供事業者などの意見を参考にしながらアセスメントする。 |
(3) |
新たな生活目標の確認
利用者や家族に新たな課題などが明らかになってきたら、次の段階に進むか、別の取り組みにより改善方法を再アセスメントしなければならない場合などがあり、新たな生活目標を確認する。 |
モニタリングには、利用者の状況により次の種類が想定されます。 |
|
(1) |
初動期モニタリング
利用者の状況が退院や退所又はサービス利用が初めてなどの理由により、プランの内容が変わりやすい場合などは、比較的早い時期に再アセスメントを行い、ケアマネジメントのプロセスを展開する必要があります。
この場合は、時宜に応じてサービス担当者会議などを開催するなどして、自立支援の共有性をその都度図る必要があります。 |
|
|
(2) |
継続的モニタリング
ケアプランは、目標と達成時期を設定していく必要があります。利用者の自立支援と質の高いサービスを継続的に確保し、高めていくためには、継続的なモニタリングが不可欠です。比較的安定した次期における、定期的な対応で行われているのが現状のようです。 |
モニタリングは、相談支援専門員一人で行うことはできません。利用者や家族と直接頻回に会ってサービスを提供しているサービス提供者や近隣の関係者は、利用者や家族から様々な相談や現実的な話を受けているかもしれません。その都度、相談支援専門員にはサービス提供者等から連絡や情報が不可欠であり、相談支援専門員は常にこのようなケアチームのネットワークからモニタリング情報を得ることができるよう連携を図る必要があります。
モニタリングは、利用者に直接訪問したりして面接することになりますので、不正請求の防止や管理にもつながります。
利用者がケアプランによるサービスを必要としなくなることによって終結します。この判断は、制度を利用している場合は、その制度の対象者から外れた場合が考えられます。しかし、この場合であっても、利用者に対する支援が終わったことで相談支援専門員の対象者でなくなったということではなく、地域における個人として、ケースワークの継続的関わりは続きます。利用者や家族及び地域がもつ「強さ」や他の専門職との連携を図っておき、新たなサービス開発や資源開拓を進める基礎を築いておくことが重要です。 |
|
|
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利用者が住み慣れた地域で自立した生活を継続するには、相談支援専門員が身近な地域に存在する社会資源を使ったり、構築する方がむしろ大きい役割としてあります。 |
|
地域には近隣などの様々な協力者や新たな協力を作り出してくれる機関があります。相談支援専門員は、全てを一人で全ての社会資源活用や構築を行うことはできませんが、様々な社会資源を担ってくれる関係機関や団体・個人がいますので、そういう方々に機能していただくためにも、地域の情報を多く持つことができるネットワークがあれば、ケアマネジメントの参考になります。《インフォーマルサービス》 |
→ |
社会福祉協議会、シルバー人材センター、NPO、登録ボランティア、近隣など |
|
社会資源におけるインフォーマルサービスを組み入れながら、更に、ケアマネジメントにおける相談支援専門員の重要な役割は、制度(フォーマルサービス)を十分に理解し、縦横無尽に使いこなせることが上げられます。しかし、制度を利用する場合、利用者負担が発生するなど、利用者が面倒な手続きをしなければならないことがあり、制度管理の知識と併せて様式を準備しておくことにより、申請代行などの便宜を供与できる役割もそなえていることから、制度上のネットワークシステムが社会資源としてあります。《フォーマルサービス》 |
|
ケアマネジメントの過程では、社会資源を把握している社会資源調査票や社会資源分類票などで整理しているものを活用すると、利用者のニーズに対応しやすいようです。
また、社会資源調査票等は、サービス提供事業者の概略が記載されていると便利です。
さらに、ケアマネジメントの段階において、次のような現実的問題が生じる場合があります。
(1) |
地域に社会資源が十分ない。 |
(2) |
既存の社会資源が利用者のニーズに合っていない。 |
(3) |
こういう社会資源があればよい。 |
このような問題が生じた場合
(1) |
現状の実態や分析をとおした資料の作成 |
(2) |
他の地域の社会資源の状況 |
(3) |
利用者のニーズ調査と既存の社会資源の現状 |
(4) |
相談支援専門員がケアマネジメントに取り入れたい社会資源 |
|
|
上記の運動を相談支援専門員同士や当事者団体との連携をとおして、当事者の代わりに発言するなど(アドボカシー)、市町村独自の制度や法の改正及び新たな社会資源の要望に向けて声を上げていくことにより、社会資源の開発にも視点を向けていくことが重要な仕事です。 |
・ |
様々な機関や団体等と連携をとっておくことが、問題意識の共有化につながります。 |
|
相談支援専門員の役割には、利用者の権利としての自己決定・自己実現(empowerment)を支える中立的介入・仲介(provid)と代弁(advocate)が基礎となります。
相談支援専門員は、ケアマネジメント過程において、利用者が自立した日常生活が送れる支援をするために、様々な社会資源や保健・医療・福祉サービスの調整を図ります。
そのときに、相談支援専門員は、本来の専門職としての基礎資格や職種があり、その上で制度上の相談支援専門員としての位置づけがあります。従って、それぞれの専門職としての倫理綱領などを遵守して行っていると思いますが、どの専門職においても共通して認識しているのは、「利用者の権利擁護」という倫理と基本姿勢です。
ケアマネジメント過程における基本倫理とは、概ね次のものが上げられます。
利用者が自分の生活をどのようにしたいのか、どういうことをしたいのか、将来の意思表示をするのは利用者本人であり、その実現のために努力するのは利用者本人であることを前提にしたケアマネジメントの基礎となっています。
利用者の主体性の尊重は、「自己決定の原則」として、ケアマネジメントの過程に具体的に現れてくるものであり、利用者と相談支援専門員、サービス提供事業者の対等性を意味するものです。
利用者が自立した日常生活を送る場合、家庭や地域で基本的な人権が侵害されないよう相談支援専門員は配慮する必要があります。
基本的人権が侵害される例として
1) |
言語に障害があり、自分の意見や意志の表現に難がある。 |
2) |
家族に遠慮して、家族の押しつけになっている。 |
3) |
預金通帳を家族が管理しており、自由にお金が使えない。 |
4) |
碁会所に行きたいが、障害者がそんな所に行って、みんなの迷惑になると決め込まれて、生き甲斐を消失している。など、周囲の理解不足な場合は、利用者の代弁者(advocate)として権利擁護の立場を守ることが大切です。 |
判断能力が不十分である場合や困難な場合は、成年後見制度や地域福祉権利擁護事業などの制度の活用を図ることも必要です。
個人情報の保護は、障害者の尊厳にかかわる大切な部分であり、利用者との信頼関係の要となるものです。この信頼関係が損なわれることにより、ケアマネジメントの展開にも影響が生じます。
相談支援専門員は、利用者のよりよいサービスを提供するために、専門職やサービス提供事業者同士の情報交換が必要であることについて理解を図り、理解を得られた場合は、絶えず、利用者には、どこで、どういう人に、どういう情報を提供してよいかなどについて、利用者の納得と了解を得て、利用者が自分の情報を誰がもっているかを知っておくようにしておく配慮も重要です。
(4) |
公平性(相談支援専門員の自己コントロールと自己評価) |
公平性は、ケアマネジメント過程における地域のフォーマルサービスをはじめとする様々な社会資源のサービス適性配分や利用者の個別性に配慮したサービス調整という点において大切な視点です。更に、相談支援専門員は価値観の異なる利用者や家族との相互関係においても、専門職の倫理観にのっとり、公平な支援関係を築く自覚が不可欠です。
そのためには、利用者や家族との感情的な問題に巻き込まれない自己コントロールや自己評価を繰り返し、適切なスーパービジョンに心がける必要があります。
(5) |
中立性(利用者・家族・事業者間等の利害関係からの中立) |
相談支援専門員における中立性は、利用者とサービス提供事業者においてもっとも重要な位置づけとなるものです。利用者の自立支援に対する希望に反して、相談支援専門員の所属する事業者や関係の深い事業者との利益が顕在化することがないように、常に利用者の権利を代弁する中立性と公益性を念頭におくことが大切です。この基礎的条件の基に、利用者が自立した日常生活が送れるようになるとともに、地域社会の社会資源の健全な有益性が育まれることになります。
相談支援専門員は、利用者の「障害」や「できないこと」など、「マイナス」の面にとらわれるのではなく、利用者が自己実現に向け、生活の目標を実現するために、ケアマネジメントを利用する意識を利用者自身がもち、相談支援専門員やサービス提供事業者が、利用者自身がもつ「プラス」の面を引き出すことが役割であることを倫理観の基底とすべきであると考えます。 |
|
相談支援専門員のケアマネジメント過程における基本姿勢を例示し、これから更なる自己の研鑽を図られることが望まれる。
|
|
自立支援は、ケアマネジメントの基本理念であります。それは、相談支援専門員が一人で頑張っても、利用者が自立に対する強い意志をもつことが大前提です。しかし、自立支援に対する考え方は、画一的なものではありませんから、利用者の性格や置かれている環境等を洞察し、利用者の権利と責任の下で自らの生活を方向付ける姿勢を持つべきです。
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|
家族は、利用者にとって最も影響力のある身近で主要な資源の一つです。ケアマネジメントに重要な要素でありますが、利用者と日々介護等で接している関係上、精神的にも身体的にも負担や感情が錯綜する家族に対し、家族の生活の質を改善するなどの家庭環境の改善、精神的な支援を検討する姿勢を持つべきです。
|
|
ケアマネジメントは、サービスが利用者の自立支援に適切であるか、こまめなアセスメントがあって、利用者の自己決定やサービス提供事業者の意思疎通が図られるという効率的・効果的支援に結びつく姿勢を持つべきです。
「 |
ケアマネジメントはアセスメントに始まりアセスメントに終わる」姿勢 |
|
|
利用者の自立を支援する必要なサービスは、ニーズに合う社会資源の存在が大きな位置を占めます。ケアマネジメント過程で、サービスの質や量を調整する場合に大きな影響を与えることになります。そのためには、常に資源を把握しておく工夫が重要です。
利用者が必要としているサービスが地域にない場合は、発掘したり開発し、行政との調整を図るなどの現状分析や利用ニーズを把握するなど、資源分析をしておく必要があります。更に関連する専門職とのチームとしての共通認識を図っておくことも重要です。
|
|
利用者の生活全体を支援するケアマネジメントは、複合的な課題解決に係わる多くの相談援助機関やサービス提供事業者等のチームアプローチが不可欠となります。
それぞれの専門職や事業者が個々バラバラに独自の判断で利用者に係わられれば、利用者の自立支援の総合性が失われます。
相談支援専門員は、それぞれの役割が自立支援に効果的に行われるよう、サービスの調整や総合調整を図るためのリーダーシップが求められます。
|
|
サービスを受ける利用者とサービスを提供する事業者との間には、少なからず力関係が生じることがあります。
利用者には、サービスを「受けている」という力関係。サービス提供事業者は、サービスを「提供する」という力関係。利用者は、言いにくいため不満をため込み、サービス提供事業者は気づかぬまま、ズルズルと関係が悪化し、利用者はサービスを断るようになります。
相談支援専門員は、相談支援が始まるときから、「様々な苦情があったら、些細なことでもお話ください。」という苦情受け付けを説明しておく必要があります。また、毎回のモニタリング時には、必ず苦情の受ける雰囲気を作る工夫が必要です。
相談支援専門員は、アセスメントやモニタリング時に利用者の心の内を聞き出す人間関係を構築しておくことが重要であり、話しやすい雰囲気を作るのも技術の一つであることを十分に認識する必要があります。
苦情を受けた場合は、苦情の相手先に伝える方法も十分に吟味して伝えうることが重要です。
1) |
支給決定した市町村に伝えるべき苦情か。 |
2) |
直接サービス提供事業者に伝えるべき苦情か。 |
3) |
チームアプローチの段階で伝えるべき苦情か。 |
など、様々な対応のタイミングや手段がありますので、対応が間違えば、大きな問題に発展しかねない場合がありますので、上司やスーパーバイザーの援助も活用しましょう。
|
|
常に記録(ケース記録)を付ける癖が重要です。記録はメモ書きしておき、長文にならず、要点をまとめて記入するコツが大切です。
記録は、サービス担当者会議や緊急時の本人を知る重要な資料となります。 |
|
障害福祉サービスは、「与えられるサービス」から「選ぶサービス」という社会環境が普通になりつつあります。つまり、サービスが「商品」という捉え方にかわり、サービスの市場競争原理が定着しつつあります。
商品(サービス)は売られ、消費者である利用者は、より良い商品(サービス)を選んで買うことになります。しかし、商品は市場(社会資源)に複数あるし、粗悪な商品はできれば買いたくないけれど、どの商品がどういう商品であるのか消費者はわからず、満足できない商品を購入することがあります。こういうときに、商品マネジメントしてくれる人が身近にいれば、様々な商品情報の提供を受けて、生活により合った商品を手に入ることになるわけです。
障害福祉サービスは、利用者が望む生活を選択により契約することになり、利用者に合ったサービスを契約する総合的な調整は相談支援専門員のケアマネジメントに大きく係わることになります。
利用者が間違った契約に陥らないよう、利用者の「生活設計図」を作りやすい視点に立ったサービス提供のケアマネジメントを基本とすべきです。 |
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サービス提供事業者の職員の対応に不満があったり、別のサービス提供事業者のサービス内容がサービス担当者会議の内容と異なる対応をしているなどに対して、利用者の自立支援と契約の観点から、苦情解決の規定があります。 |
|
社会福祉法や政省令等に苦情解決が規定されており、相談支援事業者やサービス提供事業者の運営規程においても規定することが義務づけられています。 |
|
事業者は、運営規程に基づき「苦情解決担当職員」を都道府県知事に届け出ることとなっており、苦情や意見を受けやすい環境作りを図る工夫づくりが求められます。 |
|
苦情は様々なところから出てきますが、法ではサービス提供事業者による対応を第一義として、次に市町村が対応し、市町村で解決できなかった場合は、都道府県の不服審査会が
対応することになっています。 |
|
介護保険制度の導入により、契約に基づく人権擁護思想の浸透に伴い、サービス提供事業者の第三者評価や市民団体によるオンブズマンが普及してきており、サービスの自己点検・自己評価などが、苦情解決の制度と対になって、重層的な展開が図られています。 |
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|
|
判断能力が十分にない利用者に対する「権利」の考え方は、権利が脅かされないように、判断しなくてもよい場面に逃げる方法をとってきました。
これからの「権利」に対する考え方は、「判断」を補うための支援をどうするかという背景が求められています。
例えば、「本人が一人暮らしで、無理だから施設に入所させたい」という考え方から、「本人が一人で暮らすためには、どういう社会資源やサービスを調整することにより自立した生活が営めるか」という自立支援の立場で考えて、ケアマネジメントしていくという「権利擁護」の思想性が重要です。
利用者が自立した日常生活を送るために、自立を補足するのに必要とされるサービスなどを活用していくということの上に「権利擁護」は成り立っています。
そのために、「契約」をして、自分の自立した生活を関係者と約束していくものです。 |
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「契約」は「約束」という性格をもつもので、利用者は相談支援専門員やサービス提供事業者等と約束したけれども、「自分も約束を果たしていきます。」という意味合いのある契約です。 |
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つまり、自立に向かって相手も自分も約束を果たす義務を負う(契約当事者)というのです。
相談支援専門員は、ケアマネジメント過程において、利用者の全ての生活権をトータルマネジメントすることになりますが、時として「私が全てをやってやるなければ」というパターナリズム(保護主義)に陥る危険性があります。
相談支援専門員は常に、「自分が利用者の立場であったら、どういう生活をしたいか」というアセスメント視点を自問自答し、利用者の権利擁護の視点を確認するという姿勢が必要です。 |
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