II. 調査方法全般についての留意点

 認定調査及び認定調査員について

 認定調査は、市町村の職員や市町村の委託を受けた指定相談支援事業者等であって、都道府県が行う研修を修了した者(以下「認定調査員」という。)が実施します。
 認定調査の内容から、認定調査員は保健、医療、福祉に関しての専門的な知識を有している者がなることが望まれます。
 認定調査は、その調査結果が障害程度区分の基本的な資料となることから、全国一律の方法によって、公平公正で客観的かつ正確に行われる必要があります。
 認定調査は、調査対象者の心身の現状、すなわち障害の状況や介護等の手間を適正に評価し、必要に応じて、特記事項に調査対象者の状況をわかりやすく記載する必要があります。
 認定調査は、調査対象者1人につき原則として1回で実施します。このため、認定調査員は、認定調査の方法や判断基準等を十分理解した上で、面接技術等の向上に努めなければなりません。
 認定調査員は、自ら調査した結果について、市町村や市町村審査会(都道府県審査会を含む。以下同じ。)から要請があった場合には、再調査の実施や、照会に対する回答、市町村審査会への出席、審査対象者の状況等に関する意見等を求められることがあります。
 認定調査員は、過去にその職にあった者も含め、認定調査に関連して知り得た個人の秘密に関する守秘義務が課されています。このことは、市町村から認定調査の委託を受けた認定調査員も同様です。
 これに違反した場合は、公務員に課せられる罰則(★)が適用されることになります。


「守秘義務違反」については、地方公務員法で、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金に処すると規定されています。
(第34条第1項及び第60条第2号)

 調査の実施について

(1) 実施上の基本原則
 原則として、1名の調査対象者につき、1名の認定調査員が、1回で認定調査を実施します。
 認定調査の際に、急病等により調査対象者の状況が一時的に変化している場合等、適切な調査が行えないと判断したときは、その場では調査は行わず、状況が安定すると見込まれる時期に再度調査日を設定し、調査を行います。
 また、申請後に入院して、入院後間もないなど、調査対象者の心身の状態が安定するまでに相当期間の入院治療を要する場合は、一旦申請を取り下げ、状態が安定してから再度申請を行うよう説明します。
 認定調査をして、別の調査員による再調査が不可欠と判断したときは、別の調査員により再度認定調査を行います。その場合でも、認定調査票は一式のみとし、主に調査を行った者を筆頭として、「調査実施者欄」に記入します。

(2) 認定調査日時の調整

〈日時について〉
 認定調査員は、あらかじめ調査対象者や家族等の介護者と調査実施日時を調整した上で認定調査を実施します。
 サービス利用等に支障が生じることのないよう、認定調査はできるだけ速やかに行い、書類を作成します。
 家族等の介護者等がいる在宅の調査対象者については、介護者等が不在の日は避けるようにします。
〈実施場所について〉
 認定調査員は、事前に調査対象者や介護者等と調査実施場所を調整した上で認定調査を実施します。
 認定調査の実施場所については、日頃の状況を把握できる場所とします。
 申請書に記載された住所が、必ずしも調査対象者の生活の場とは限りません。記載された住所に居住していない場合がありますので、事前の確認が必要です。
 施設や病院等で認定調査を実施する場合は、調査対象者の居室や病室等、普段過ごしている場所を確認し、施設や病院等と調整した上でプライバシーに配慮して実施します。

(3) 調査の実施

〈携行物品〉
 認定調査員は、調査対象者を訪問する際には、身分を証する物(別添の参考様式)を携行し、訪問時に提示します。
 また、調査項目の「視力」を確認するための視力確認表を必ず持参します。

〈実施上の留意点〉
 認定調査の実施にあたり、調査目的の説明を必ず行います。
 調査当日の状況と調査対象者及び介護者等から聞き取りした日頃の状況を総合的に勘案して判断します。
 できるだけ調査対象者本人、介護者等双方から聞き取りを行うように努めます。独居者や施設入所者等についても、可能な限り家族や施設職員等、調査対象者の日頃の状況を把握している者に立ち会いを求め、できるだけ正確な調査を行うよう努めます。
 また、調査時の環境が日頃の環境と異なったり、調査対象者の緊張等により日頃の状況と異なっていると考えられる場合は、可能な限り家族や施設職員等、調査対象者の日頃の状況を把握している者から日頃の状況を聞くなどして判断します。
 日内変動や季節変動、気候の変化等により状況に変化がある場合や、できたりできなかったりする場合(パーキンソン病治療薬の長期内服におけるon−off現象等、薬効が安定しないことによる症状の変動を含む。)は、原則としてより頻回な状況に基づいて判断します。詳しくは、各項目の「着眼点」、「留意点」、「選択肢の判断基準」を参照してください。
 客観的に調査するために必要な場合には、調査対象者、介護者等から別々に聞き取る時間を設けるなどの工夫を行ってください。
 日常的に自助具、補装具等の器具・器械を使用している場合は、使用時の状況に基づいて判断します。
 調査対象者の心身の状況については、個別性があることから、例えば、視力障害、聴覚障害等や疾病の特性(スモンなど)等に配慮しつつ、判断基準に基づき認定調査を行ってください。
 知的障害者や精神障害者等における生活状況については、過去6ヶ月から1年程度の期間の変動も踏まえて判断します。
 特別なコニュニケーション手段を用いなければ調査が適切にできない場合(盲ろう重複障害者等)は、市町村の担当者等と相談し、適切な専門職員の同行を求める必要があります。

〈質問の仕方や順番〉
 声の聞こえやすさなどに配慮して、調査場所を工夫します。
 調査対象者がリラックスして回答できるよう、十分時間をかけます。落ち着いて質問をしていけば、60分程度で調査可能です。
 優しく問いかけるなど、相手に緊張感を与えないよう留意します。
 丁寧な言葉遣いに心がけ、専門用語や略語を使用しないようにします(じょくそう→床ずれ、えん下→飲み込みなど)。また、外来語や流行語を使用しない、ゆっくりと話す、などに気をつけます。
 調査対象者や介護者等が適切な回答ができるように、調査項目の内容をわかりやすく具体的に質問する工夫をします。
 調査項目の順番にこだわらず、調査対象者が答えやすい質問の導入や方法を工夫します。(例:調査する時点で、確実な歩行で調査場所に来た場合は、麻痺や関節の範囲、寝返りなどは省略してもかまいません。この場合は「できる」にチェックします。)
 会話のみならず、手話や筆談、直接触れる等の方法も必要に応じて用います。この際、調査対象者や介護者等に不愉快な思いを抱かせないように留意が必要です。
 調査対象者が正当な理由なしに、認定調査に応じない場合は、「申請却下」の処分となることがありえます。このため、調査対象者の状況を実際に確認できるよう面接方法を工夫してください。どうしても認定調査に応じない場合は、市町村の担当者に相談してください。
〈判断に迷うとき〉
 推測で記入せず、必ず「認定調査マニュアル」の内容を確認します。
 判断に迷う場合で危険がないと考えられれば、実際に行為を行ってもらっても差し支えありません。ただし、危険を伴うと考えられる場合は、決して無理に試みないでください。
 判断に迷う場合は、回数や頻度等の具体的な状況、判断の根拠について、「特記事項」に記載します。

(4) 調査結果の確認
 調査対象者や介護者等に、認定調査の結果で不明な点や判断に迷う点があれば再度確認します。
 それにより、調査内容の信頼性を確保するとともに、意思疎通がうまくいかなかったための誤りを修正することができます。
 なお、調査対象者や介護者等の訴えと調査員の判断が異なる場合には、最終的には認定調査員の判断によりますが、迷う場合は具体的な状況を「特記事項」に記入してください。
 特記事項を記入するときは、認定調査票と特記事項の記載内容に矛盾がないか確認し、審査判定に必要な情報を簡潔明瞭に記載するよう留意します。

 医師意見書との関係

 認定調査の調査項目と医師意見書の記載内容とでは判断根拠が異なるものもあるため、類似の設問であっても、両者の結果が一致しないこともありえます。

 調査結果の確定

 審査判定を適切かつ円滑に進めるために、市町村の担当者が事前に調査結果を確認し、明らかな誤りや不明な点が認められる場合は認定調査員に説明を求め、必要に応じて調査結果の変更や特記事項の加除修正を指示します。
 市町村審査会では、調査結果と医師意見書の内容を比較検討して、不整合がある場合(例えば、麻痺側が左右反対であるなど)に、一部修正や再調査等の実施について判断されます。

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