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平成17年2月2日
照会先
医政局指導課 院内感染対策担当
電話 03-5253-1111(内線2771)

医療施設における院内感染の防止について



 最新の科学的根拠に基づいた院内感染防止に関する留意事項等を、平成15年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)による「国、自治体を含めた院内感染対策全体の制度設計に関する緊急特別研究」(主任研究者:小林 寛伊・NTT東日本関東病院名誉院長)の分担研究報告書『医療施設における院内感染(病院感染)の防止について』(PDF:77KB)を参考に取りまとめ、各都道府県・政令市・特別区あて通知しましたので、お知らせいたします。



医政指発第0201004号
平成17年2月1日



都道府県
政令市
特別区


衛生主管部(局)長 殿


厚生労働省医政局指導課長


医療施設における院内感染の防止について


 標記については、これまでも医療法(昭和23年法律第205号)第25条第1項の規定に基づく立入検査の機会等を通じて対応いただいているところであるが、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)及びノロウイルスをはじめとした各種の病原体に起因する院内感染が依然発生していることから、最新の科学的根拠に基づいた院内感染防止に関する留意事項等を、別記のごとく取りまとめるとともに、これらに関する医療法施行規則の一部を改正する省令(平成17年厚生労働省令第12号)を2月1日に公布し、同日より施行したところであるので、貴職におかれては、今後の院内感染防止対策の推進に当たって活用されるとともに、貴管下医療機関に対する周知方及び院内感染防止体制の徹底について指導方よろしくお願いする。
 また、別記の取りまとめに当たり、平成15年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)による「国、自治体を含めた院内感染対策全体の制度設計に関する緊急特別研究」(主任研究者:小林寛伊・NTT東日本関東病院名誉院長)の分担研究報告書「医療施設における院内感染(病院感染)の防止について」(別添(PDF:77KB))を参考としたので、併せて活用方お願いする。
 なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的助言であることを申し添える。
 おって、「医療施設における院内感染の防止について」(平成3年6月26日付け指発第46号厚生省健康政策局指導課長通知)は廃止する。



(別記)

院内感染防止に関する留意事項


 院内感染とは、(1)医療施設において患者が原疾患とは別に新たにり患した感染症、(2)医療従事者等が医療施設内において感染した感染症のことである。
 院内感染は、人から人へ直接、又は医療器具等を媒介して発生する。特に、免疫力の低下した患者、未熟児、老人等の易感染患者は、通常の病原微生物のみならず、感染力の弱い微生物によっても、院内感染を起こす可能性がある。
 このため、院内感染防止対策は、個々の医療従事者ごとに対策を行うのではなく、医療施設全体として対策に取り組むことが必要である。

(感染制御の組織化)

 病院長等の医療施設の管理者が積極的に感染制御に関わるとともに、診療部門、看護部門、薬剤部門、臨床検査部門、事務部門等の各部門を代表する職員により構成される「院内感染対策委員会」を設け、院内感染に関する技術的事項等を検討するとともに、全ての職員に対する組織的な対応方針の指示や教育等を行うこと。

 院内全体で活用できる総合的な院内感染対策マニュアルを整備し、また、必要に応じて、各部門ごとにそれぞれ特有の対策を盛り込んだマニュアルを整備すること。これらのマニュアルは、最新の科学的根拠や院内体制の実態に基づき適時見直しを行うこと。

 検体からの薬剤耐性菌の検出情報等、院内感染対策に重要な情報が、臨床検査部門から診療部門へ迅速に伝達されるよう、院内部門間の感染症情報の共有体制を確立すること。

(標準予防策と感染経路別予防策等)

 感染防止の基本として、例えば手袋・ガウン・マスク等の個人用防護具を、感染性物質に接する可能性に応じて適切に配備し、医療従事者にその使用法を正しく周知する等の標準的予防策を実施するとともに、必要に応じ、院内部門や、対象患者及び対象病原微生物等の特性に対応した感染経路別予防策(空気予防策、飛沫予防策、接触予防策)を実施することにより、易感染患者を防御する環境整備に努めること。

 近年の知見によると、集中治療室などの清潔領域への入室に際して、履物交換と個人用防護具着用を一律に常時実施することによる感染防止効果が認められないことから、院内感染防止を目的としては、必ずしも実施する必要はないこと。

(手洗い及び手指消毒)

 手洗い及び手指消毒のための設備・備品等を整備するとともに、患者処置の前後には必ず手指消毒を行うこと。

 手術時手洗い及び手指消毒の方法としては、持続殺菌効果のある速乾性擦式消毒薬(アルコール製剤等)による消毒又は手術時手洗い用の外用消毒薬(クロルヘキシジン・スクラブ製剤、ポビドンヨード・スクラブ製剤等)と流水による消毒を基本とし、流水を使用した手指消毒においても、アルコール製剤等による擦式消毒を併用することが望ましいこと。

(職業感染防止)

 注射針の使用の際、針刺しによる医療従事者等への感染を防止するため、使用済みの注射針に再びキャップするいわゆる「リキャップ」を原則として禁止し、注射針専用の廃棄容器等を適切に配置するとともに、診療の状況等必要に応じて、針刺しの防止に配慮した安全器材の活用を検討するなど、医療従事者等を対象とした適切な感染予防対策を講じること。

(環境整備と環境微生物調査)

 空調設備、給湯設備等、院内感染対策に有用な設備の適切な整備や、院内の清掃などを行い、院内の環境管理を適切に行うこと。

 環境整備の基本は清掃であるが、その際一律に広範囲の環境消毒を行わないこと。血液もしくは体液による汚染がある場合は、汚染局所の清拭除去及び消毒を基本とすること。

 ドアノブ、ベッド柵など、医療従事者や患者が頻繁に接触する箇所については、定期的に清拭し、必要に応じてアルコール消毒を行うこと。

 近年の知見によると、消毒薬の噴霧、散布、薫(くん)蒸や紫外線照射などは効果が不確実であるだけでなく、作業者への危険性もあることから、これらの方法については、単に病室等を無菌状態とすることを目的として漫然と実施しないこと。

 近年の知見によると、粘着マット及び薬液浸漬マットについては、感染防止効果が認められないことから、原則として、院内感染防止の目的としては、これらを使用しないこと。

 近年の知見によると、定期的な環境微生物検査は必ずしも施設の清潔度の指標とは相関しないことから、一律に実施するのではなく、例えば、院内感染経路を疫学的に把握する際に行う等、必要な場合に限定して実施すること。

(医療材料、医療機器等の洗浄、消毒、滅菌)

 医療材料、医療機器等を安全に管理し、適切な洗浄、消毒又は滅菌を行うとともに、消毒薬や滅菌用ガスが生体に有害な影響を与えないよう十分に配慮すること。

 使用済みの医療材料は、消毒、滅菌に先立ち、洗浄を十分行うことが必要であるが、その方法としては、現場での一次洗浄は極力行わずに、可能な限り中央部門で一括して十分な洗浄を行うこと。

(手術と感染防止)

 手術室は、空調設備により周辺の各室に対して陽圧を維持し、清浄な空気を供給するとともに、清掃が容易にできる構造とすること。

 手術室内を無菌状態とすることを目的とした、消毒薬を使用した床消毒については、日常的に行う必要はないこと。

 近年の知見によると、水道水と滅菌水による手洗いを比較した場合でも有意な手指の減菌効果の差が認められず、清潔な流水で十分であるとされていることから、必ずしも滅菌水を使用する必要はないこと。

(新生児集中治療部門での対応)

 保育器の日常的な消毒は必ずしも必要ではないが、消毒薬を使用した場合には、その残留毒性に十分注意を払うこと。

 新生児集中治療管理室においては、特に未熟児などの易感染状態の患児を取り扱うことが多いことから、カテーテル等の器材を介した院内感染防止に留意し、気道吸引や創傷処置においても適切な無菌操作に努めること。

(感染性廃棄物の処理)

 感染性廃棄物の処理については、『廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル』(平成16年3月16日環廃産発第040316001号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長通知による)に掲げられた基準を遵守し、適切な方法で取り扱うこと。

(その他)

 医療法(昭和23年法律第205号)及び感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)の規定を遵守し、感染症の発生に関して規定された届出を適切に行うことは当然であるが、その他の院内感染発生を疑う事例がある場合には、保健所等の行政機関に適時相談し、技術的支援を得るよう努めること。



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