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1 改正パートタイム労働指針のポイント

 パートタイム労働指針は、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保と雇用管理の改善に関して、事業主が講じなければならない措置をわかりやすく定めたものです。
 平成15年8月、パートタイム労働指針が改正され、パートタイム労働者と正社員との間の均衡を考慮した処遇の考え方が具体的に示されるとともに、事業主の方が講ずべき措置が追加されました。
 改正パートタイム労働指針のポイントは、次のとおりです。

 パートタイム労働者の雇用管理の改善などのための措置を講ずるに当たっての基本的な考え方は、パートタイム労働者について、労働者保護法令を守るとともに、就業の実態、正社員との均衡などを考慮して処遇するというものです。
 中でも正社員と職務が同じパートタイム労働者については、正社員との均衡を考慮するに当たっては、次の(1)、(2)のような考え方を踏まえてください。

 (指針第2)

 パートタイム労働者にも労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、雇用保険法などの労働者保護法令は適用されています。事業主は、パートタイム労働者についても、これらの労働者保護法令を守ってください。
 また、「就業の実態、正社員との均衡などを考慮して処遇」とは、パートタイム労働者の業務の内容、配置転換の有無、契約期間、勤続年数、経験、職業能力などを個別に判断するのでなく、これらの就業の実態を総合的に勘案し、パートタイム労働者と正社員とを比較したときのバランスを考慮して処遇することをいいます。中でも、正社員と職務が同じパートタイム労働者については、次の考え方を踏まえてください。

◆正社員と職務が同じパートタイム労働者についての「正社員との均衡」の考え方◆

(1)
人材活用の仕組みや運用などが正社員と実質的に異ならないパートタイム労働者
 パートタイム労働者と正社員との間の処遇の決定方法を合わせる(同一の処遇決定方式)などの措置を講じた上で、意欲、能力、経験、成果などに応じて処遇することにより、正社員との均衡の確保を図るように努める。
(2)
人材活用の仕組みや運用などが正社員と異なるパートタイム労働者
 パートタイム労働者の意欲、能力、経験、成果などに応じた処遇についての措置などを講ずることによって、正社員と処遇の均衡を図るように努める。

 ○ 「職務が同じ」かどうかは、まず「職務の範囲」を比較し、その場合、通常従事する作業が同じかどうかについて、個々の作業の幅や組合せについても比較して判断します。作業後の清掃など臨時的・付随的な作業に違いがあっても、同じ職務と考えられます。ただし、作業の幅や組合せが大きく異なる場合、例えば、正社員がパートタイム労働者の行う作業に加えて、生産計画の策定、顧客対応なども行うような場合には、職務そのものが違うと考えられます。
 個々の作業を比較するに当たっては、トラブル発生時や臨時・緊急時の対応、ノルマなどが同じように職務上の「責任」として含まれているか、与えられた権限の範囲についても考慮します。また、作業を行うに当たって必要最低限の能力や難易度、複雑度などの「職務レベル」、肉体的・精神的負担などの「労働の負荷」なども含めて判断します。

事例A・・・一部の職務内容が重なるが職務が違うと考えられる場合
パートタイム労働者の販売員Aと正社員の販売員Bでは、接客、レジ業務は同じように行っていますが、Bには在庫管理・発注の作業やクレーム処理対応がある場合、AとBで一部の職務が重なっていても、全体では職務が違うと考えられます。

事例B・・・同様の責任・権限をもち、職務が同じと考えられる場合
クレジット業X社では、カード会員申込者の審査業務において、パートタイム労働者に対しても職能資格制度を導入し、一定の資格等級に達したパートタイム労働者Aに関しては正社員と同様の責任・権限をもつ最終判断業務を任せています。Aについては、同資格の正社員と職務が同じと考えられます。 X社の職能資格制度の図

 ○ 「人材活用の仕組みや運用など」が実質的に異ならないかどうかは、人事異動の幅・頻度、役割の変化(責任・権限の重さの変化)など、労働者が時間的経過の中でどのような職務経験を積む仕組みがあるのかということと、その仕組みが実際に運用されているか実態をみて判断します。人事異動には転勤も入りますが、同じ事業所内の異動や異なる職種への異動も含まれ、その範囲を幅として比べます。頻度についても、回数だけを比べるのではなく、幅とも関連してみることが必要です。このような人材育成のあり方は、時間的経過の中で、労働者にどのような職務経験を積ませていく仕組みがあるかについて、制度化または慣行化され客観的に把握できるものによって、みていくこととなります。
 以上のようなことを例示として、総合的に「人材活用の仕組みや運用など」を判断していきますが、制度の有無だけで違っていると判断するのではなく、運用も含めて判断します。単に労働時間が短いだけでは、「人材活用の仕組みや運用など」が異なることにはなりません。

事例C・・・人材活用の仕組みや運用などの実態が異なると考えられる場合
Y社の経理部に配置されている正社員は、営業部や総務部から異動してきた者、他の支店から異動してきた者等、定期的な異動の中で複数の部署での勤務経験をもつ者が多いのですが、中には、経理部以外の勤務経験のない者もいます。経理部内のみの勤務経験の者についても、部内で異なるラインの仕事を経験しながら役割が変化し、社内横断的なプロジェクトのメンバーに入ったりしています。経理部のパートタイム労働者Aは、他の支店から経理部に初めて配属された正社員Bとほぼ同じ経理事務を担当していますが、Aの担当事務やラインが今まで変わることはありませんでした。

事例D・・・職務が同じで、人材活用の仕組みや運用などが異ならない状態と考えられる場合
電気機械メーカーZ工場で、溶接・組立・修理を行う現場の正社員は、生産体制の変化に伴って配置されるラインが変わる異動はありますが、他の工場への異動はありません。パートタイム労働者の中には配置されるラインが変わらない人もいますが、パートタイム労働者Aは、10年間勤務し所定労働時間が6時間と短いだけで、正社員と同じラインに配置され、生産体制の変化に伴って正社員と同じように溶接・組立・修理のラインへの配置換えもされてきました。新人が同じラインに配属されたときは、正社員と同じように指導もしています。

  ※ 比較に当たっての考え方
 パートタイム労働者と職務が同じ正社員の人材活用の仕組みや運用などの状態がいくつかある場合は、その中にパートタイム労働者と人材活用の仕組みや運用などが実質的に異ならないものがあるかを比較することになります。なお、育児・介護などの家族的責任を有する労働者については、その事情に配慮したために異動の幅や頻度が少ないことがありますが、そのような取扱いについては比較に当たって対象から除くことが望まれます。

 ○ 職務が正社員と同じで人材活用の仕組みや運用などが正社員と実質的に異ならないパートタイム労働者の場合、処遇の決定方法を合わせるなどの措置を講じた上で、意欲、能力、経験、成果などに応じて処遇することにより、正社員との均衡の確保を図るように努めてください。「処遇の決定方法を合わせるなど」とは、例えば、賃金については、正社員とパートタイム労働者で同じ体系の賃金表を適用する、支給基準、査定・考課基準、支払形態などを合わせること、またこれに相当するような取組が考えられます。処遇の決定方法が同じでも、査定や業績評価などを行うに当たって、意欲、能力、経験、成果などを勘案することにより、個々の労働者の賃金水準は違ってきます。

 ○ 職務が正社員と同じで人材活用の仕組みや運用などが正社員と異なるパートタイム労働者の場合、人材活用の仕組みや運用などについて正社員との違いの程度を踏まえつつ、パートタイム労働者の意欲、能力、経験、成果などに応じた処遇についての措置などを講ずることによって、正社員と処遇の均衡を図るように努めてください。

 パートタイム労働者から正社員へ転換するための条件の整備に努めてください。(指針第3の2(7))

 パートタイム労働者が正社員への転換を希望し、パートタイム労働者と事業主のニーズが合致する場合に、事業所の実情に即して正社員へ転換することが可能となるような条件の整備等に努めてください。

 ○ 「転換するための条件の整備」としては、パートタイム労働者から正社員へ転換する制度の導入のほかに、例えば、能力・経験に応じた職務ランクを設けて一定のランク以上のパートタイム労働者は正社員とする制度の導入、正社員への転換に向けた教育訓練・能力開発を行うこと、正社員への転換に関する情報提供などが考えられます。

 パートタイム労働者の職務の内容、意欲、能力、経験、成果などに応じた処遇についての措置を講ずるように努めてください。(指針第3の3)

 パートタイム労働者の賃金を単一の時給にするのではなく、職務の内容、意欲、能力、経験、成果などに応じて処遇するような措置を講ずるように努めてください。措置としては、例えば、これらを踏まえた賃金水準の見直し、昇給・昇格制度や成績による考課制度の整備、職務手当・役職手当・成果手当の支給などが考えられます。なお、意欲、能力、経験、成果などのうち、どの要素に基づいて判断するかは各企業の実情に応じて決められるべきものですが、総合的・客観的な判断がなされるべきものです。パートタイム労働者の処遇が意欲などを含めた総合的な評価の結果である場合も、評価の要素・基準などについて客観的な説明ができることが求められます。

 労使の話合いを促進する次の(1)〜(3)の措置を実施するように努めてください。 (指針第3の5)

(1)  パートタイム労働者から、雇い入れた後、本人の処遇について説明を求められたときは、説明するように努める。

 事業主は、雇い入れた後、パートタイム労働者から処遇について説明を求められたときは、誠意をもって求められた内容について説明するように努めてください。その際、パートタイム労働者と正社員の職務の内容、人材活用の仕組みや運用などとの関係についても説明することなどによって納得性を高めることが大切です。パートタイム労働者が処遇について説明を求めたことを理由として、そのパートタイム労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないことは当然のことです。

(2)  パートタイム労働者の雇用管理の改善などの措置を講じるときは、パートタイム労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努める。

 「意見を聴く機会を設けるための適当な方法」としては、例えば、職場での労使協議、職場懇談会、意見聴取、アンケートなどがあげられます。事業所の実情に応じて、パートタイム労働者の意見を聴くことができる方法を工夫するよう努めてください。

(3)  パートタイム労働者から処遇について苦情の申出を受けたときは、事業所内の苦情処理の仕組みを活用するなどして、自主的な解決を図るように努める。

 「苦情処理の仕組みを活用するなど」には、事業所内の苦情処理制度を活用するほか、人事担当者が窓口になって苦情に対応することも含まれます。また、短時間雇用管理者が選任されている事業所では、短時間雇用管理者を活用することも考えられます。苦情処理の仕組みなどについては、パートタイム労働者に周知を図ることが望まれます。



事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針

第1 趣旨
 この指針は、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第3条第1項の事業主が講ずべき適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善(以下「雇用管理の改善等」という。)のための措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものである。

2 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置を講ずるに当たっての基本的考え方
 事業主は、短時間労働者について、労働基準法(昭和22年法律第49号)、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等の労働者保護法令を遵守するとともに、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して処遇するべきである。中でも、その職務が通常の労働者と同じ短時間労働者について、通常の労働者との均衡を考慮するに当たっては、事業主は、次に掲げる考え方を踏まえるべきである。
 人事異動の幅及び頻度、役割の変化、人材育成の在り方その他の労働者の人材活用の仕組み、運用等(2において「人材活用の仕組み、運用等」という。)について、通常の労働者と実質的に異ならない状態にある短時間労働者については、当該短時間労働者と通常の労働者との間の処遇の決定の方法を合わせる等の措置を講じた上で、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することにより、通常の労働者との均衡の確保を図るように努めるものとすること。
 人材活用の仕組み、運用等について、通常の労働者と異なる状態にある短時間労働者については、その程度を踏まえつつ、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡を図るように努めるものとすること。

3 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置
 事業主は、第2の基本的考え方に立って、特に、次の点について適切な措置を講ずるべきである。
1 短時間労働者の適正な労働条件の確保
(1) 労働条件の明示
 事業主は、短時間労働者に係る労働契約の締結に際し、当該短時間労働者に対して、労働基準法の定めるところにより、次に掲げる労働条件に関する事項を明らかにした文書を交付するものとする。
(イ)  労働契約の期間
(ロ)  就業の場所及び従事すべき業務
(ハ)  始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
(ニ)  賃金(ロの(ロ)に定めるものを除く。以下この(ニ)において同じ。)の決定、計算及び支払の方法並びに賃金の締切り及び支払の時期
(ホ)  退職(解雇の事由を含む。)
 事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、次に掲げる労働条件に関する事項その他の労働条件に関する事項を明らかにした文書(雇入通知書)を交付するように努めるものとする。ただし、当該労働条件が、イにより交付する文書において、又は就業規則を交付することにより明らかにされている場合は、この限りでない。
(イ)  昇給
(ロ)  退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
(ハ)  所定労働日以外の日の労働の有無
(ニ)  所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
(ホ)  安全及び衛生
(ヘ)  教育訓練
(ト)  休職
(2) 就業規則の整備
 短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する事業主は、労働基準法の定めるところにより、短時間労働者に適用される就業規則を作成するものとする。
 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所に、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者(ハ及びニにおいて「過半数代表者」という。)の意見を聴くように努めるものとする。
 過半数代表者は、次のいずれにも該当する者とする。
(イ)  労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
(ロ)  就業規則の作成又は変更に係る意見を事業主から聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
 事業主は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにするものとする。
(3) 労働時間
 事業主は、短時間労働者の労働時間及び労働日を定め、又は変更するに当たっては、当該短時間労働者の事情を十分考慮するように努めるものとする。
 事業主は、短時間労働者について、できるだけ所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させないように努めるものとする。
(4) 年次有給休暇
 事業主は、短時間労働者に対して、労働基準法の定めるところにより、別表に定める日数の年次有給休暇を与えるものとする。
(5) 期間の定めのある労働契約
 事業主は、短時間労働者のうち期間の定めのある労働契約(以下この(5)において「有期労働契約」という。)を締結するものについては、労働基準法に基づき定められた有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。
 契約締結時の明示事項等
(イ)  事業主は、有期労働契約の締結に際し、短時間労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示するものとする。
(ロ)  (イ)の場合において、事業主が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、事業主は、短時間労働者に対して、当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示するものとする。
(ハ)  事業主は、有期労働契約の締結後に(イ)又は(ロ)に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した短時間労働者に対して、速やかにその内容を明示するものとする。
 雇止めの予告
 事業主は、有期労働契約(雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。ハの(ロ)において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をするものとする。
 雇止めの理由の明示
(イ)  ロの場合において、事業主は、短時間労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付するものとする。
(ロ)  有期労働契約が更新されなかった場合において、事業主は、短時間労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付するものとする。
 契約期間についての配慮
 事業主は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該短時間労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めるものとする。
(6) 解雇の予告
 事業主は、短時間労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法の定めるところにより、少なくとも30日前にその予告をするものとする。30日前に予告をしない事業主は、30日分以上の平均賃金を支払うものとする。
 イの予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができるものとする。
(7) 退職時等の証明
 事業主は、短時間労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、労働基準法の定めるところにより、遅滞なくこれを交付するものとする。
 事業主は、短時間労働者が、(6)の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、労働基準法の定めるところにより、遅滞なくこれを交付するものとする。
(8) 賃金、賞与及び退職金
 事業主は、短時間労働者の賃金、賞与及び退職金については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。
(9) 健康診断
 事業主は、短時間労働者に対し、労働安全衛生法の定めるところにより、次に掲げる健康診断を実施するものとする。
 常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
 深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
 一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
 その他必要な健康診断
(10 )妊娠中及び出産後における措置
 事業主は、妊娠中及び出産後1年以内の短時間労働者に対し、労働基準法及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。
 産前及び産後の休業の措置
 健康診査等を受けるために必要な時間の確保及び健康診査等に基づく医師等の指導事項を守ることができるようにするために必要な措置
 その他必要な措置
 短時間労働者の教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善
(1) 教育訓練の実施
 事業主は、短時間労働者の職業能力の開発及び向上等を図るための教育訓練については、その就業の実態に応じて実施するように努めるものとする。
(2) 福利厚生施設
 事業主は、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、短時間労働者に対して通常の労働者と同様の取扱いをするように努めるものとする。
(3) 育児休業及び介護休業に関する制度等
 事業主は、短時間労働者について、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。なお、イの(ロ)に掲げる者に該当するかどうかに関し、期間を定めないで雇用される者と実質的に異ならない状態となっているかどうかを判断するに当たっては、子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成14年厚生労働省告示第13号)に定める事項に留意するものとする。
 育児休業又は介護休業に関する制度(次に掲げる者に対するものを除く。)
(イ)  日々雇用される者
(ロ)  期間を定めて雇用される者
 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する者又は要介護状態にある家族を介護する者に対する時間外労働の制限の措置又は深夜業の制限の措置(イの(イ)に掲げる者に対するものを除く。)
 1歳に満たない子を養育する者に対する勤務時間の短縮等の措置若しくは1歳から3歳に達するまでの子を養育する者に対する育児休業の制度に準ずる措置若しくは勤務時間の短縮等の措置又は要介護状態にある家族を介護する者に対する勤務時間の短縮その他の措置(イの(イ)に掲げる者に対するものを除く。)
(4) 雇用保険の適用
 事業主は、雇用保険の被保険者に該当する短時間労働者について、雇用保険法の定めるところにより、必要な適用手続をとるものとする。
(5) 高年齢者の短時間労働の促進
 事業主は、短時間労働を希望する高年齢者に適当な雇用の場を提供するように努めるものとする。
(6) 通常の労働者への応募機会の付与等
 事業主は、通常の労働者を募集しようとするときは、現に雇用する同種の業務に従事する短時間労働者に対し、あらかじめ当該募集を行う旨及び当該募集の内容を周知させるとともに、当該短時間労働者であって通常の労働者として雇用されることを希望するものに対し、これに応募する機会を優先的に与えるよう努めるものとする。
(7) 通常の労働者への転換に関する条件の整備
 事業主は、短時間労働者の通常の労働者への転換について、これを希望し、かつ、その能力を有する短時間労働者のニーズが自らのニーズに合致する場合において、当該事業所の実情に即して、これが可能となる制度の導入、必要な条件の整備等をするように努めるものとする。
 職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置の実施
 事業主は、短時間労働者の職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置を講ずるように努めるものとする。
 所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ労働者の取扱い
 事業主は、所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ短時間労働者のうち通常の労働者と同様の就業の実態にあるにもかかわらず、労働条件その他の処遇について通常の労働者と区別して取り扱われているものについては、通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努めるものとする。
 労使の話合いの促進のための措置の実施
(1) 事業主は、短時間労働者を雇い入れた後、当該短時間労働者から当該短時間労働者の処遇について説明を求められたときは、その求めに応じて説明するように努めるものとする。
(2) 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理の改善等のための措置を講ずるに当たっては、 当該事業所における関係労使の十分な話合いの機会を提供する等短時間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとする。
(3) 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した処遇について、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的な解決を図るように努めるものとする。
 短時間雇用管理者の選任等
(1) 短時間雇用管理者の選任
 事業主は、常時10人以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに、短時間雇用管理者を選任し、次に掲げる業務を担当させるよう努めるものとする。
 本指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項について、事業主の指示に基づき必要な措置を検討し、実施すること。
 短時間労働者の労働条件等に関し、短時間労働者の相談に応ずること。
(2) 短時間雇用管理者の氏名の周知
 事業主は、短時間雇用管理者を選任したときは、当該短時間雇用管理者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示する等により、その雇用する短時間労働者に周知させるよう努めるものとする。

 別表(第3の1の(4)関係)
短時間労働者の
週所定労働時間
  雇入れの日から起算した継続勤務期間の区分に応ずる
年次有給休暇の日数
短時間労働者の
週所定労働日数
短時間労働者の
1年間の所定労働
日数(週以外の期間
によって労働日数が
定められている場合)
6箇月 1年
6箇月

2年
6箇月

3年
6箇月

4年
6箇月

5年
6箇月

6年
6箇月
以上
30時間以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
30時間未満 5日以上 217日以上
4日 169日から216日まで 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日から168日まで 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日から120日まで 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日から72日まで 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
備考 上に掲げるもののほか、所要の経過措置が労働基準法施行規則の一部を改正する省令(平成12年労働省令第49号)において定められている。


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