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大規模製造業における安全管理の強化に係る緊急対策要綱


 趣旨
 本要綱は、昨年夏以降に我が国を代表する企業において頻発した重大災害を契機として、昨年11月に大規模製造業事業場を対象として実施した「安全管理体制及び活動等に係る自主点検」(以下「自主点検」という。)の分析結果等を踏まえ、対象事業場における安全管理水準の向上を図り、もって労働災害防止の徹底を期するために、以下の対策を推進することを目的とする。

 実施期間
 本要綱の実施期間は、平成16年度末までとする。

 本要綱の適用範囲
 本要綱における「大規模製造業事業場」とは、労働安全衛生法第10条に基づく総括安全衛生管理者の選任義務のある「労働者数300人以上」の製造業の事業場とし、自主点検の対象とした事業場を主たる対象とする。

 都道府県労働局幹部による経営トップに対する安全管理の徹底指導
 事業場における安全管理対策を確実に実行するためには、個々の事業場における活動はもとより、経営トップの積極的な取り組みが極めて重要である。
 このため、都道府県労働局幹部による経営トップに対する安全管理の徹底指導を強化することとする。
 なお、本省においても、製造業の主要な業界団体の長を対象とした指導を行うこととしている。

 (1)経営トップ等を対象とした集団指導
 管内の対象事業場の経営トップ等を招集し、安全管理の徹底に向けた経営トップの役割と責務に重点を置いた集団指導を実施すること。
 指導内容は自主点検の内容を柱とし、経営トップが各事業場の安全管理の状況、中でも安全管理を担当する人員や経費に係る問題点を自ら把握し、その解決のために自ら主体的に活動することの重要性を認識させることに主眼を置いたものとすること。

 (2)繰り返し重大な災害を発生させるなど、安全管理に特に問題が認められる事業場の経営トップ等に対する指導
 下記5の指導の結果、安全管理に特に問題が認められた事業場に関しては、経営トップ等の来庁を求め、経営トップ自らの積極的な安全管理活動が労働災害防止上大切であること、及び安全管理に必要な人員確保の重要性等について認識させること。

 安全管理に問題のある事業場に対する重点的な個別指導等の実施
 自主点検の結果、安全管理に問題のある事業場では次の事項の対応が十分でないことが明らかになった。
 このため、事業場のトップ自らによる安全管理活動や安全管理に係る認識が不十分であるなど、安全管理に問題が認められる事業場に対しては、次の事項について、重点的に指導すること。

 (1)事業場のトップによる安全衛生方針の表明
 事業場のトップ自らが安全確保に向けた決意を宣言し、それを繰り返し事業場内に周知することが、事業場における安全管理活動が形骸化することなく有機的に機能する上で重要であることから、災害防止を果たすために、事業場のトップ自らが安全衛生方針を作成し、労働者に徹底するなど、積極的に災害防止に取り組むことを宣言し、明示すること。

 (2)安全委員会の活性化
 事業場の労使が参加して安全対策等を調査審議する場である安全委員会で活発な意見交換を行うことが労働災害防止上有効であるため、委員を適切に選任するとともに、事業場の安全体制の検証、作業マニュアルの作成・改訂、設備新設・変更時の安全に係る事前評価等について調査審議するなど、その活性化を図ること。
 また、災害が発生した場合には、作業標準からの逸脱や指示違反といったヒューマンエラーとして片づけるのではなく、人員配置、教育訓練の有無、納期の設定など、そこに至った背景要因や設備の状態等の物的要因についても掘り下げ、再発防止に繋げるための調査審議等を実施すること。

 (3)所属元の異なる労働者が混在している事業場における関係者相互の確実な連絡調整の確保
 親企業が下請事業場の作業場所を巡視すること、異常時の連絡体制を確保すること、必要な情報は口頭ではなく文書で伝達するとともに現場でも確認すること等の措置が災害防止上重要であることから、元請・下請混在で作業を行う場合には、作業間の連絡調整を確実に実施するとともに、常態的に多数の労働者を構内に混在させて作業させている事業場にあっては、協議組織の設置による安全確保等、必要な調整を図ること。
 また、危険有害業務を発注する際には、発注者の責任において、元請に対して、作業に関連する危険有害情報を伝達・提供すること。
 さらに、本年3月以降、物の製造の現場への派遣労働者の導入が解禁されたことから、派遣先事業者としての労働安全衛生法上の責任についても、留意すること。

 (4)安全管理者に対する選任時等の教育の充実
 災害発生率の高い事業場において安全担当部署のスタッフの知識・経験の不足感が強いこと、安全管理業務従事人員数の減少幅が大きいほど10年前と比較した能力の低下傾向が強いことから、安全管理者を選任する際には、初任時の能力向上教育と併せて、ノウハウの確実な伝承を図る観点から、過去に発生したトラブル・災害の事例及びその対策や、作成されている作業マニュアル類の内容及びその作成の背景についても説明すること。

 (5)雇入れ時あるいは作業転換時などの労働者に対する安全教育の充実
 現場労働者に定期(5〜10年ごと)に安全に係る教育を行っていない事業場では災害発生率が高いことから、作業マニュアルに基づく作業方法に係る定期的な訓練、及び作業マニュアルが見直された際の周知のための教育を実施すること。
 なお、教育の実施に当たっては、座学のみによることなく、機械設備等を実際に使用した具体的な現場教育や、視聴覚教材を活用した危険性を認識できる教育など、安全管理の重要性をより具体的にイメージしやすい方法で行うこと。また、小集団活動を通した定期的な安全教育の実施を図ること。

 (6)職場の危険箇所の特定・評価及びそれに基づく対策の徹底
 職場の危険箇所を特定し、そのリスクを評価して必要な対策を講ずること、及びそれを中核とする労働安全衛生マネジメントシステムの導入が労働災害防止上有用であることから、リスクの評価及びそれに基づく対策の実施について、総括安全衛生管理者の職務としての事業場における自発的な活動の中心に位置づけること。
 また、機械設備のリスク評価に当たっては、「機械の包括的な安全基準に関する指針」に基づき、メーカーから当該機械設備に係る残留リスクの提供を受け、その活用を図ること。

 (7)設備の適切な維持管理の確保
 適切な維持管理対策が講じられていない設備では、経年劣化による労働災害発生の危険性が高くなるおそれがあることから、事業場内の施設設備について、労働安全衛生法に基づき厚生労働大臣が公表した定期自主検査指針に基づく適切な検査を実施するほか、経年した設備・機器の継続使用に当たり、科学的な裏付けによらない経験則的な合理化の積み重ねではなく、客観的なデータ等に基づき、ライフサイクルと整合した計画的な点検、補修、交換等の実施を図ること。


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