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 精神障害者社会復帰対策の推進について

(1)  精神障害者社会復帰施設の整備について
 精神障害者社会復帰施設については、平成14年度までの障害者プランに数値目標を盛り込み、計画的な推進を図ってきたところであるが、平成15年度からは、平成14年12月に策定された障害者基本計画に基づく重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)により整備の推進を図ることとしたところであり、特に、精神病床入院者約33万人のうち「条件が整えば退院可能な者」約7万2千人の退院・社会復帰を早期に進めていくことを重要な課題として策定されたところである。
 なお、精神障害者社会復帰施設の整備に当たっては、未設置の障害保健福祉圏域を優先することとしているので、各都道府県・指定都市におかれては、精神障害者社会復帰施設の計画的かつ積極的な整備の推進をお願いしたい。

(2)

 精神障害者居宅生活支援事業の充実について
 精神障害者居宅生活支援事業については、精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)、精神障害者短期入所事業(ショートステイ)及び精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)を、本年度から住民に最も身近な行政機関である市町村において一体的に実施しているところである。
 本事業は、地域における精神障害者の日常生活を支援することにより、精神障害者の自立と社会参加を促進する観点から実施するものであり、地域住民に対し利用手続き等についての周知徹底をお願いしたい。
 昨年12月、社会保障審議会障害者部会精神障害分会が取りまとめた報告書においては、精神保健医療福祉サービスは、サービスを必要とする本人が居住する地域で提供されるべきであるとの考えに基づき、これまでの入院医療主体から地域保健・医療・福祉を中心としたあり方への転換を図るとともに、受入条件が整えば退院可能な約7万2千人の精神病床入院者の退院・社会復帰を図ることとしている。平成15年度からの新障害者プランにおいても、この考え方に立ち、本事業の充実を図るべく数値目標を設定しているところであり、各市町村の積極的な取組が求められるところである。
 各都道府県におかれては、本事業の全市町村での実施及びより一層の充実に向けて、特段の御配慮をお願いしたい。

(3)

 社会的入院者の受け皿については、新障害者プランにおいてその整備を図ることとしているが、より円滑な退院を目的として、平成15年度から社会的入院解消のための退院促進支援事業を開始することとしている。
 本事業は、精神科病院、精神障害者社会復帰施設等の従事者、保健所、精神保健福祉センター、福祉事務所、市町村等の関係行政機関の担当者で構成する「自立促進支援協議会(仮称)」において、自立支援のための計画を策定し、これに沿って訓練を行うに際し、支援職員が当該入院者に同行する等の支援を行うことにより、社会復帰の促進を図るものであり、16か所で実施することとしているので、各都道府県・指定都市におかれては、積極的な取組をお願いしたい。

(4)

 精神障害者社会適応訓練事業の一般財源化について
 精神障害者社会適応訓練事業については、事業創設から20年を経て全都道府県・指定都市で実施され、既に定着していることから、国庫補助により誘導する手法を改め、地方交付税で措置し、地方公共団体の一般財源において実施することとしているので、その旨御了知いただくとともに、その一層の推進をお願いしたい。

 精神科救急医療システムの整備について
 これまで、都道府県等が実情に応じて、精神障害者の緊急時における適切な医療及び保護の機会を確保するための体制整備を行う事業として、精神科救急医療システムの運営に関する国庫補助事業を実施してきたところであり、その中に、精神保健福祉法に基づく移送を適正・円滑に実施するための精神科救急情報センターを盛り込むなど、同事業の充実に努めてきたところである。
 しかしながら、現行の救急医療施設は、措置入院、移送による医療保護入院など行政機関が関与した入院者の受入れが中心となっており、地域において精神障害者が休日・夜間に診療を受けることができる状況にないことから、在宅の精神障害者の症状の悪化に対し、身近な地域において早期に適切な医療を提供できる体制を確保するため、平成15年度から、休日・夜間対応の輪番制病院を2つの二次医療圏に概ね1ヶ所整備し、精神科初期救急医療輪番システムを整備することとした。
 本事業の具体的な採択範囲、単価等については、本年度中に詳細を決定することとしているが、各都道府県・指定都市においても積極的に同事業を活用し、精神科救急医療システムの充実・強化を図られるようお願いする。

 精神病院に対する指導監督等について

(1)  精神保健福祉施策の推進については、かねてより人権に配慮した適切な医療・保護の確保に努めていただいているところであるが、厚生労働省としても、近年の精神病院における人権侵害事案の発生等にかんがみ、より適正な入院患者の医療・保護の確保を図るため、都道府県知事等が精神病院に対して実施した実地指導等を検証する「精神病院実地検証」を実施している。
 精神病院を実地検証した結果、一部の精神病院において、不当な身体拘束や開放処遇の制限などの事例が未だに見られ、また、身体拘束等の重要事項について指導が徹底されていない事例がある。

 精神病院入院者の適切な処遇の確保等については、精神病院に対する実地指導後の措置として、平成11年の精神保健福祉法改正により、改善計画書の提出を求め、若しくは提出された改善計画書の変更を命じ、これらの命令に従わない場合には医療の提供の全部又は一部の制限ができることとされたことにより、都道府県知事等の権限が強化されており、各都道府県・指定都市においては、適正かつ効果的な指導監督に努められたい。
 なお、管下医療機関に対し実地指導等を実施する際には、精神保健福祉法及び関係通知(平成10年3月3日障第113号・健政発第232号・医薬発第176号・社援第491号厚生省大臣官房障害保健福祉部長、健康政策局長、医薬安全局長、社会・援護局長通知「精神病院の指導監督等の徹底について」等)の趣旨を踏まえ、一層の指導の強化を図るようお願いしたい。

(2)

 また、措置入院者の入院期間について、半数近くの者が5年以上と長期化しているなどの状況にあることから、各都道府県及び指定都市においては、措置入院の必要性について評価を行うとともに、管下医療機関に対する一層の指導の強化を図るようお願いしたい。

(3)

 今年度会計検査院が実施した精神障害者社会復帰施設に対する実地検査において、8施設について、不適切な経理事務が行われていたとして、国庫補助金が過大交付であると指摘された。
 不正・不明瞭な経理処理の事例により、社会復帰施設の信頼低下等の社会問題化も懸念されることから、各都道府県・指定都市においても、一層、適正かつ効果的な指導監督に努められたい。
 なお、管下社会復帰施設に対し実地指導等を実施する際には、平成12年3月31日障第248号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神障害者社会復帰施設に係る指導監査の実施について」により、指導の一層の強化を図るようお願いしたい。

(4)

 昨年11月に報道された財団法人全国精神障害者家族会連合会の不祥事については、報道日翌日から、厚生労働省において、立入検査を実施したところであり、検査結果等を踏まえ、厳正に対処していくこととしている。また、平成15年度の小規模作業所運営助成費については、(福)全国精神障害者社会復帰施設協会を通じ引き続き支援を行うこととしているので御了知されたい。

 精神医療審査会の適切な運営について
 平成13年10月に実施した「精神医療審査会の申請処理状況」の調査結果を見ると、多数の自治体において、退院請求・処遇改善請求等の処理に要する平均的な日数が1か月を超える状況が見受けられたことから、平成13年10月30日障精発第56号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長通知「精神医療審査会の申請処理状況調査結果について」により、その適正な運営に努めるようお願いしたところであるが、精神医療審査会は在院患者の人権確保の観点から極めて重要な役割を果たすものであることから、平成12年3月28日障第209号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第12条に規定する精神医療審査会について」により、適正な運営を図るよう徹底されたい。
 なお、精神医療審査会報告書料については、平成元年度から精神医療適正化対策費として国庫補助してきたところであるが、創設から14年を経て、既に同化・定着していることから、国庫補助により誘導する手法を改め、地方交付税で措置し、一般財源化することとしているので、その旨御承知いただくとともに今後とも適正な運営を図るようお願いしたい。

 心の健康づくり対策について

(1)  思春期児童等の心の問題に対する相談については、精神保健福祉センター、保健所、児童相談所等において実施しているところであるが、思春期精神保健に関する専門家が少なく、各機関における相談体制が十分ではないことから、平成13年度から、精神保健福祉センター、児童相談所、保健所、病院等に勤務している医師、看護師、精神保健福祉士、児童指導員等を対象として、思春期精神保健の専門家の養成研修を実施している。つきましては、精神保健福祉センター、保健所、児童相談所等の関係機関に所属する職員の当研修会への参加について配慮いただきたい。また、別途配布している研修修了者の名簿についても活用され、関係機関との連携強化を図っていただきたい。
 思春期児童などの心の問題については、その原因や対応が多様であることから、精神保健福祉センター、児童相談所、教育機関、警察等の関係機関が連携をとりつつ、専門家チーム等を編成し、発見・相談から、指導・解決まで総合的な対応を行う思春期精神保健ケースマネジメントモデル事業を平成13年度から実施している。平成15年度を目途にして、本モデル事業の結果を基にした事例集を作成し、各地域に配布することとしていますので、その際は本事例集を思春期精神保健対策の推進に活用していただきたい。

(2)

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)対策の推進
 大規模な災害や犯罪等により被害を受けた者に対する心のケアの充実強化を図るため、平成13年度から、精神保健福祉センター、保健所、病院などに勤務している医師、看護師、精神保健福祉士等を対象に、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関する専門的な養成研修を実施している。つきましては、思春期精神保健対策専門研修と同様に、関係機関に所属する職員の当研修会への参加について配慮いただき、本研修の修了者名簿についても活用され、関係機関の連携強化を図っていただきたい。

(3)

 自殺防止対策の推進
 我が国における自殺者は、平成10年以降、3年連続して3万人を超えている。自殺は、家族や周囲の人々に大きな悲しみや困難をもたらすだけでなく、社会全体にとっても大きな損失であり、効果的な予防対策を実施することは緊急の課題となっている。
 昨年12月、自殺防止対策有識者懇談会が取りまとめた報告書「自殺予防に向けての提言」においては、自殺予防対策として、自殺に関する実態把握、自殺を考えている人を含むすべての人々に対し、生きる勇気と力を取り戻させるような支援体制や環境づくりが重要であること、また、自ら心の健康に関心を持つとともに、問題が生じた場合には、家族や周囲の者に相談したり、悪化する前に地域・職域の適切な機関(保健所、精神保健福祉センター、児童相談所、市町村、医療機関、学校、事業場、労災病院、地域産業保健推進センター等)に相談できるよう、心の健康問題についての普及・啓発が必要であることなどが指摘されているところであり、各都道府県等においては、本報告書を自殺予防対策の推進に活用していただくとともに、関係機関への周知をお願いしたい。
 また、自殺予防対策として、地域におけるサポートグループの活動等身近な支援体制を図ることが有効であることから、平成15年度に、一般医、精神保健従事者向けに、各場面に応じた具体的な介入方法を示したマニュアル等を作成・配布することとしており、地域における自殺防止対策の推進に活用されたい。
 この他、「いのちの電話」を中心に、関係機関等による自殺防止ネットワークを構築し、相談体制の充実強化を図るとともに、12月1日を「いのちの日」として位置づけ、その後1週間、「いのちの電話」によるフリーダイヤル電話相談を実施することとしている。また、労働者の自殺防止対策に関しては、セミナー等を開催し普及啓発を行うほか、労働者のメンタルへルス相談機能の中核となる総合相談窓口を横浜労災病院に設置するなど相談体制の強化を図ることとしている。
 さらに、厚生労働科学研究などにおいて、自殺の原因の一つであるうつ病への対策に関する研究、自殺防止対策の実態に関する研究、自殺による経済的影響に関する研究などが実施されているところであり、引き続き、これらの調査研究を推進することとしている。


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