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全国厚生労働関係部局長会議資料

厚生科学課


健康危機管理対策の推進について

(1)国内でのテロ事件発生に備えた対応について

  ア わが国をめぐるテロ情勢
  (ア)  平成13年9月11日に、米国において航空機による同時多発テロが発生した。

  (イ)  その後、米国では、平成13年10月5日にフロリダ州で肺炭疽の患者が死亡するなど、平成13年12月5日までに22例の炭疽患者が発生し、米国の捜査当局では、炭疽菌によるテロが行われたと断定している。

  (ウ)  また、最近においても、イエメン沖やインドネシア・バリ島における爆発事件が発生するなど、テロ情勢は極めて厳しい事態にある。

  イ 厚生労働省等の対応
  (ア)  厚生労働省では、かねてより、政府の対応の一環として、生物化学テロ対策を進めてきた。

  (イ)  米国における同時多発テロ等の発生を踏まえ、平成13年10月8日には厚生労働省緊急テロ対策本部を設置するとともに、
(1)  炭疽や天然痘等の診断や治療方法、炭疽菌等に汚染されたおそれがある場合における対処方法など、情報提供及び研修の実施
(2)  炭疽の発生をはじめ異常な感染症の発生等を把握した場合の迅速な連絡の要請
(3)  平成13年度の補正予算に必要な経費を計上し、天然痘ワクチンの生産・備蓄や、救命救急センターへの除染設備及び防護服の配置の推進など、必要な措置を講じてきた。

  ウ 各都道府県等における対応
  (ア)  厚生労働省では、米国同時多発テロ以降、各都道府県等に対し、
(1)  平成13年10月4日及び同月8日には、感染症、救急医療、医薬品、食品、地域における健康危機管理の体制整備等にわたる、テロの発生を踏まえた所要の措置に関して、
(2)  また、平成13年11月16日には、炭疽菌等の汚染のおそれがある場合における、住民、医療機関、保健所の具体的対応等について、それぞれ通知を発出するなど、必要な指示及び注意喚起を実施してきた。

  (イ)  また、最近のイエメン沖やインドネシア・バリ島における爆発事件の発生等を踏まえ、平成14年10月29日に通知を発出し、国内でのテロ事件発生に備えたテロ対策の再点検を行うよう体制整備を求めた。

  (ウ)  さらに、天然痘テロに備えるため、平成14年12月18日に都道府県等の担当者を集め、天然痘が発生した際の対応指針等について会議を開催したところである。

  (エ)  なお、化学テロに対する対応としては、救急医療の中心となる救命救急センターにおいて除染設備や防護服を整備するとともに、日本中毒情報センターにおいて化学兵器を含む化学物質中毒に係る治療情報の提供体制を整備し、また、医療機関等に対し化学テロ被災者への対応に必要な診断治療方法等の情報を提供するなどの対応を講じてきたところである。
 また、平成13年11月22日には、関係省庁からなるNBCテロ対策会議幹事会において、関係省庁、地方公共団体等関係機関の連携のあり方を示すものとして、「NBCテロ対処現地関係機関連携モデル」が取りまとめられた。

  (オ)  今後とも、
関係機関との連絡・協力体制の確立
事件の発生防止のための警戒
事件が発生した場合の迅速な把握、連絡及び適切な対処
等が極めて重要であるので、(ア)〜(ウ)の通知等を踏まえ、引き続き必要な設備の配置の推進や点検、関係機関との連携、関係団体等への指導及び情報提供等をお願いする。


(2)健康危機管理体制の充実について

  ア 健康危機管理の重要性
  (ア)  近年、国民の生命、健康の安全を脅かす健康危機事例の発生が度々みられる。
(1)  平成 8年以降  腸管出血性大腸菌O-157による大規模な食中毒の発生
(2)  平成11年9月  茨城県東海村のウラン加工施設における原子力災害
(3)  平成13年9月  牛海綿状脳症(BSE)を疑う牛の報告事例
(4)  同 年  10月  米国同時多発テロ以降の炭疽菌事件

  (イ)  こうした健康危機事案に対して、できるだけ迅速に原因究明を図り、その拡大を防止するとともに、迅速かつ的確な医療の確保等を通じて、地域住民の生命・健康を守ることは、地方公共団体の重要な責務である。また、これらの取組みを支援することは国の責務である。

  イ 厚生労働省における健康危機管理体制
  (ア)  厚生労働省においては、適切な健康危機管理対策を迅速に講じるため、その基本的な枠組を「健康危機管理基本指針」において定め、部局横断的な組織である「健康危機管理調整会議」を設置するとともに、次のような体制をとっている。
(1)  平素の対応


 健康危険情報の把握に努めるとともに、事件・事故等による突発的な健康危機の発生に備え休日夜間を含めた連絡体制を確立し、内容に応 じて健康危機管理実施要領に基づき対応。

 健康被害が懸念される事案について調整を図るために、調整会議を通じ関係部局間の情報の共有化を図り、必要に応じて国民に情報提供。
(2)  重大な健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合
 必要に応じ、厚生労働省に対策本部を設置し、関係各部局間の対応調整、関係省庁との連携、広報等を一元的に実施。
  (イ)  厚生労働省では、平成10年度より都道府県等における健康危機管理業務従事者の資質の向上を図ることを目的とした健康危機管理研修会を実施しており、今年度においても、1月20日から2日間開催しているところである。

  ウ 都道府県等における健康危機管理体制の整備
  (ア)  健康危機事案が発生した場合に適切に対処するためには、平素から地方公共団体において、次の取組みをはじめとして健康危機管理体制を整備することが重要である。
(1)  他の地方公共団体を含む関係機関及び関係団体等との役割分担を明確化し、必要な連携を図る必要がある。
(2)  健康危機管理発生時における被害者に関する情報の収集、管理及び分析等の拠点として、保健所の機能を強化する必要がある。
(3)  健康危機管理発生時に対応できるように、休日夜間を含めた、連絡体制の確立・強化を図る必要がある。

  (イ)  既に、多くの都道府県等においては、健康危機管理に係る要綱等が作成され、厚生労働省に提供いただいているところであるが、平成13年3月には、健康局総務課長の私的検討会である地域における健康危機管理のあり方検討会において「地域健康危機管理ガイドライン」を作成しお示ししているところであるので、当該ガイドラインを参考とし、更なる体制整備の推進をお願いする。また、既に要綱等を整備した都道府県等においても、要綱等に基づき危機管理体制が十分に機能するか等を、訓練の実施により検証等を行い、適宜見直しを行われるようお願いする。

  (ウ)  保健所、地方衛生研究所等を含む都道府県の危機管理を担当する部署における健康危機管理業務を支援する「健康危機管理支援情報システム」を本年度中に稼働する予定である。今後、本システム等を十二分に活用するなどして、健康危機に対応できるよう体制整備を図られたい。



平成15年度厚生労働省科学技術関係予算案について

(1)平成15年度科学技術関係予算案について

  ア  科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)においては、(1)ライフサイエンス分野、(2)情報通信分野、(3)環境分野、(4)ナノテクノロジー・材料分野の4つが研究開発の重点分野と定められている。

  イ  平成15年度予算の概算要求に当たっては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」に示された新重点4分野に施策の集中を図ることとされ、このうち、「人間力の向上・発揮−教育・文化、科学技術、IT」において、ライフサイエンス等、科学技術の重点4分野への更なる集中と戦略的重点化等に取り組むこととされている。
 また、科学技術施策について調整にあたる総合科学技術会議(内閣府)では、「平成15年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」を決定した。

  ウ  厚生労働省では、これらの決定を踏まえ、経済活性化へも配慮しつつ、国民の健康で安全な生活を守る上で欠くことのできない施策について、ライフサイエンス分野を中心に概算要求を行い、新重点4分野への重点化を図ったところである。

  (ア)  科学技術振興費では、疾患関連たんぱく質解析研究等を含む厚生労働科学研究費が約417億円(対前年度2.4%増)など、約1,064億円(対前年度3.8%増)。
  (イ)  また、これに国立がんセンター研究所等の国立高度専門医療センター研究所などの特別会計における研究費など、科学技術に係る予算全体をまとめた科学技術関係予算案では、約1,340億円(対前年度4.6%増)。


(2)厚生労働科学研究費補助金について

  ア  厚生労働科学研究費補助金は、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関する行政施策の科学的な推進を確保し、並びに技術水準の向上を図ることを目的とし、独創的又は先駆的な研究や社会的要請の強い諸問題に関する研究について公募の上交付するものであり、平成15年度における予算額案は約417億円(平成14年度の厚生労働科学研究費補助金の予算額は約407億円)である。

  イ  平成15年度においては、先端医療を実現し、あわせて医薬品・医療機器等の産業活性化を推進するために、疾患関連たんぱく質の解析の研究、新しい医療機器の開発、大規模治験ネットワークの構築による治験の活性化を推進する。
 また、人の健康に影響を与える食品、医薬品・医療機器、化学物質の安全にかかる研究や、がん等の生活習慣病予防、難治性疾患に対する診断・治療法の研究を要求したところであり、4分野28研究を行うこととしている。

 疾患関連たんぱく質解析研究(仮称)
 身体機能解析・補助・代替機器開発研究(仮称)
 治験推進研究(仮称)
 食品医薬品等リスク分析研究(仮称)
 がん予防等健康科学総合研究(仮称)
 難治性疾患克服研究(仮称)

 なお、厚生労働科学研究費補助金については、競争的な研究環境の形成を行い、厚生労働科学研究の振興を一層推進する観点から、平成15年度においても厚生労働省のホームページにおいて募集を行う予定。


(3)C型肝炎等緊急総合対策について

  ア 背景及び経緯
  (ア)  我が国のB型肝炎の持続感染者は、120万人から140万人、C型肝炎の持続感染者は、100万人から200万人存在すると推定されているが、感染の自覚がない者が多く、さらに近年の知見によれば、感染者の中から肝硬変や肝がんに移行するものがあることが判明した。
  (イ)  このため、旧厚生省は、平成12年11月に省内に「肝炎対策プロジェクトチーム」を設置した。また有識者の科学的、専門的な見地からの意見を聞くために、同月に「肝炎対策に関する有識者会議」を設置し、平成 13年3月に 肝炎対策の総点検の結果及び将来に向けた提言を盛り込んだ報告書を取りまとめた。

  ○ 報告書の基本的な考え方
   (1)  肝炎による健康障害は回避できることが可能であり、感染者の偏見や差別を防ぐという観点から正しい知識の普及が必要。
   (2)  C型肝炎ウイルス等の持続感染者の数は多いことから、感染率等の要素を勘案して、感染率が一般より高いとされる集団に対する重点的、迅速な対応が必要

  イ 報告書を受けた取り組み
  (ア)  平成15年度においては、14年度に引き続きC型肝炎等緊急総合対策として、60億円の予算を計上し、次の施策を実施することとしている。

(1)  老人保健法に基づく基本健康診査など現行の健康診査体制を活用とした肝炎ウイルス検査等の実施。
(2)  肝臓病の治療方法、治療薬等の研究開発等肝炎等に関する総合的な研究の推進。
(3)  肝炎に関する保健指導従事者研修の実施等国民に対する普及啓発・相談指導の充実。

  (イ)  各地方公共団体におかれては、研修に積極的に参加されるとともに、各種の肝炎ウイルスの検査が円滑に実施されるよう、特段のご配慮をお願いする。


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