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1.保健機能食品制度

(問1) 保健機能食品制度とはどのような制度か。

(答)
 保健機能食品制度とは、従来、多種多様に販売されていた「いわゆる健康食品」のうち、一定の条件を満たした食品を「保健機能食品」と称することを認める制度で、国への許可等の必要性や食品の目的、機能等の違いによって、図1のとおり「特定保健用食品」と「栄養機能食品」の2つのカテゴリーに分類される。
 特定保健用食品は、身体の生理学的機能や生物学的活動に影響を与える保健機能成分を含み、食生活において特定の保健の目的で摂取をするものに対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品である。食品を特定保健用食品として販売するには、個別に生理的機能や特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する国の審査を受け許可(承認)を得なければならない。
 一方、栄養機能食品は、身体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分(ミネラル、ビタミン等)の補給・補完を目的としたもので、高齢化や食生活の乱れ等により、通常の食生活を行うことが難しく、1日に必要な栄養成分を摂取できない場合等に、栄養成分の補給・補完の目的で摂取する食品である。栄養機能食品と称して販売するには、国が定めた規格基準に適合する必要があり、その規格基準に適合すれば国等への許可申請や届出の必要はなく、製造・販売することができる。

図1 保健機能食品の分類
保健機能食品の分類図
(参照)
「保健機能食品制度の創設について」平成13年3月27日医薬発第244号厚生労働省医薬局長通知

(問2) 保健機能食品制度創設の目的とは何か。

(答)
 国民生活において、消費者自らにより健やかで心豊かな生活を送るためには、バランスの取れた食生活が重要である。消費者個々人の食生活が多様化し、しかも多種多様な食品が流通する今日では、その食品の特性を十分に理解し、消費者自らが正しい判断によりその食品を選択し、適切な摂取に努めることが重要である。そのためには、消費者が安心して、食生活の状況に応じた食品の選択ができるよう、適切な情報提供が行われることが不可欠である。
 こうしたことから、国民の栄養摂取状況を混乱させ、健康上の被害をもたらすことのないよう、また国民に過大な不安を与えることのないよう、一定の規格基準、表示基準等を定めるとともに、消費者に対して正しい情報の提供を行い、消費者が自らの判断に基づき食品の選択を行うことができるようにすることを目的として、保健機能食品の制度化を図るものである。

(参考)
「保健機能食品制度の創設について」平成13年3月27日医薬発第244号厚生労働省医薬局長通知

(問3) 保健機能食品制度創設の経緯はどのようなものか。

(答)
 高齢化社会といわれる今日、健やかな一生を送るために国民の健康に対する意識が高まりを見せ、食生活への関心が増加している。また、飽食の時代とも称される今日では、過剰な栄養摂取状況や偏った食生活が生活習慣病等の一因ともされており、国民自らの自覚に基づいた適切な食生活が望まれ、食品に求められる情報提供の方法や機能性等も以前に比べ変化してきている。
 このような状況の中、厚生労働省では、規制緩和推進計画や市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)報告に対応して食薬区分の見直しを行い、これまで基本的に医薬品等として規制していたビタミン、ミネラル等を食品として自由に流通できることとし、さらに、従来、食品としては認めていなかったカプセル、錠剤等の形態が、食品として可能となった。また、いわゆる健康食品の中には、ビタミン、ミネラル等の栄養素以外にハーブ等種々の成分を含んだものがあり、謳われている機能も多岐にわたっており、これらは、目的に応じて適切に摂取すれば国民の健康の維持増進等に寄与するものと思われるが、不適切な表示や摂取方法等により健康危害を生ずる恐れも否定できない。
 一方、諸外国においても食品の規制について種々の議論がなされており、特にコーデックス(FAO/WHO合同国際食品規格委員会)においては、一定の機能を持つ食品について規格基準を定め、それらの食品に対しての健康強調表示も種々検討されている。
 これらの状況を踏まえ、厚生労働省は、いわゆる栄養補助食品の取扱いについて、薬事・食品衛生審議会にはかり検討し、その結果、平成13年2月に「保健機能食品の表示等について」と題した報告書を取りまとめた後、いわゆる健康食品のうち、一定の要件を満たすものを「保健機能食品」と称することとし、平成13年4月に当該制度を施行するに至った。

 以下に制度創設の経緯及び概略を示す。

(1)食生活の乱れ、生活習慣病の増加、医療費の高騰等を背景とした国民の健康に対する関心が高まる中、食品に求められる機能が複雑かつ多様化
(2)食品科学や技術開発の進歩による多種多様な機能を持つ新しい食品の開発
(3)規制緩和の流れや国際化による食薬区分の見直し
(4)消費者からの食品についての適切な情報提供に対する要望の高まり
(5)不適切な表示や摂取方法などによる食品に対する健康危害や苦情の散見
(6)海外において、一定の機能を持つ食品の規格基準を始め、特に表示に関し、健康強調表示についての検討が進行

(問4) 保健機能食品の表示の基本的考え方はどのようなものか。

(答)
 保健機能食品の表示の基本的な考え方は以下のとおりである。

(1)国の栄養目標及び健康政策に合致したものであること。
(2)栄養成分の補給・補完あるいは特定の保健の用途に資するもの(身体の機能や構造に影響を与え、健康の維持増進に役立つものを含む。)であることを明らかにするものであること。
(3)表示の科学的根拠が妥当なものであり、かつ、事実を述べたものであること。
(4)消費者への適切な情報提供の観点から、理解しやすく、正しい文章及び用語を用い、明瞭なものであること。
(5)過剰摂取や禁忌による健康危害を防止する観点から、適切な摂取方法などを含めた注意喚起表示を義務づけること。
(6)食品衛生法、栄養改善法、薬事法などの法令に適するものであること。
(7)医薬品などと誤認しないよう、保健機能食品(栄養機能食品あるいは特定保健用食品)である旨を明示するとともに、疾病の診断、治療又は予防にかかわる表示をしてはならないこと。

(参考)
「保健機能食品の表示等について」平成13年2月26日薬事・食品衛生審議会報告書

(問5) 保健機能食品と、特別用途食品や栄養表示基準の関係はどのようになっているのか。

(答)
 特定保健用食品は、従来、栄養改善法に規定する特別用途食品の一つとして取り扱ってきたが、保健機能食品制度創設に伴い食品衛生法に規定する保健機能食品の一つとしても取り扱うこととした。特定保健用食品を食品衛生法上に明記した理由としては、従来、食品としては認めていなかったカプセル、錠剤等の形態を食品として可能としたことにより(「医薬品の範囲に関する基準の改正について」平成13年3月27日医薬発第243号厚生労働省医薬局長通知の別紙「医薬品の範囲に関する基準」のIの3参照)、今後、医薬品との誤認や過剰摂取等の恐れが懸念されることから、より安全性を確保し監視指導を強化することにある。
 栄養機能食品については、当該事項を栄養表示基準上に組み入れたことから、当該規格基準が定める栄養成分の機能表示のほか、一般食品と同様に栄養表示基準に定める規定に従った栄養成分の強調表示が可能である。なお、特定保健用食品にあっては、個別に表示許可するものであることから、栄養改善法第17条において栄養表示基準の対象外としている。

(参考)
保健機能食品、特別用途食品、栄養表示基準等の法令上の位置づけ
保健機能食品、特別用途食品、栄養表示基準等の法令上の位置づけ図

(問6) 保健機能食品といわゆる健康食品等の違いは何か。

(答)
 いわゆる健康食品(栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称も含む。)と称して販売されている食品は、販売業者等が独自の判断で、「健康食品」等と称して販売しているものである。なお、「健康食品」という名称は、法令上で定義されているものではない。
 一方、保健機能食品とは、個別に、生理的機能や特定の保健機能を示す有効性及び安全性等に関する国の審査を受け、厚生労働大臣によって許可(承認)された食品(特定保健用食品)もしくは特定の栄養成分を含むものとして厚生労働大臣が定める基準に従い当該栄養成分の機能を表示する食品(栄養機能食品)を指し、法令上に規定された食品である。

(問7) 日本における栄養成分に関わる表示(健康強調表示も含む)の実態はどのような状況か。

(答)
 現行における日本の栄養成分に関わる表示(健康強調表示も含む。)の実態の概略は以下のとおり。

(1) 栄養成分含有表示(コーデックスの栄養成分表示及び比較強調表示に相当)  この表示は、食品に栄養成分がどれだけ含まれているのかを示した表示であり、我が国では、平成7年に、食品の栄養成分に関する適切な情報を広く国民に提供するために、栄養改善法第17条に栄養表示基準制度として導入されたものである。  栄養表示基準制度は、販売する食品に栄養成分や熱量について何らかの表示を行う場合、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム及び栄養表示しようとする栄養成分について表示を義務付けているほか、その表示が一定の栄養成分や熱量についての強調表示である場合には、含有量が一定の基準を満たすことを併せて義務付けている。

【例】

(2) 栄養成分機能表示(コーデックスの栄養素機能強調表示に相当)
 この表示は、食品に含まれる栄養成分の機能についての表示で、身体の成長、発達、正常な機能における栄養成分の生理的な役割を表示するものである。
 当該表示は、従来、食品への表示は認められていなかったが、今回創設された栄養機能食品には、食品衛生法施行規則第5条第1項第1号シや栄養機能食品の表示に関する基準に基づき、栄養成分の機能表示ができることとした。なお、機能表示できる栄養成分及びその表示内容は国が定めたものに限定している。

【例】

(3) 保健用途の表示(コーデックスの高度機能強調表示に相当)
 この表示は、身体の生理学的機能や生物学的活動に関与する特定の保健機能を有する成分を摂取することにより、健康の維持増進に役立ち、特定の保健の用途に適することを示す表示である。
 当該表示は、平成3年から栄養改善法施行規則に規定されている特別用途食品の一つの特定保健用食品に国の許可表示として認められている表示である(保健機能食品制度により、特定保健用食品は食品衛生法施行規則にも規定されている)。特定保健用食品は、当該表示内容について、厚生労働大臣の定める手順に従い、個別に生理的機能や特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する国の審査を受けなければならない。

【例】

(4) 疾病リスク低減表示
 疾病リスク低減表示は、特定の疾病への罹患リスクの低減ができる旨の表示であるが、医薬品的効能効果であること、その概念や表示のあり方が国際的にも未だ検討途上であること等から、現在は、我が国において認められていない。ただし、その概念やあり方等については、国際的動向も踏まえながら、引き続き検討すべき課題と考えている。

【例】

(問8) コーデックスにおける健康強調表示の動向はどのようになっているか。

(答)
 食品の健康強調表示(Health claim)については、国際的な調和・協調が必要不可欠であり、特に、食品の国際基準を決定するコーデックス(FAO/WHO合同国際食品規格委員会)の決議の動向は重要である。
 現在、コーデックスでは健康強調表示の定義を、「健康強調表示とは、食品あるいはその食品の成分と健康(よい健康、あるいは健康〔疾病〕に関連する状態)との関連を示す全ての表示であり、食品あるいはその食品の成分が、健康に効果のあることを指示するすべての表示である」としている。
 また、コーデックスの食品表示規格部会においては、健康強調表示には次の3種類を示しているが、栄養素機能強調表示以外は定義や使用範囲等で各国の意見がまとまらず、合意に至っていない。引き続きこの2つの表示については検討がなされることになっている。

(1) 栄養素機能強調表示(Nutrient Function Claims)
 身体の成長、発達、正常な機能における栄養素の生理的な役割の表示

【例】

(2) 高度機能強調表示(Enhanced Function Claims)
 食生活において、ある食品あるいはその食品成分の摂取が、生理的(あるいは心理的)機能、生物学的活動に与える、特定の有用な効果に関する表示であり、健康機能改善、調整、維持に関する表示

【例】

(3) 疾病リスク低減表示(Reduction of Disease Risk Claims)
 食生活において、ある食品あるいはその食品成分の摂取と疾病(あるいは健康に関連する状態)のリスクの低減との関係を示す表示

(問9) 国民が、保健機能食品やその他のいわゆる健康食品に関する十分な情報提供を受けることができ、適正に利用し、摂取するためには、その相談・指導にあたる専門家の養成や相談窓口などの充実が必要と考えるが、今後の動向はどのようになっているか。

(答)
 多種多様な食品が販売されている中、国民自らの選択により、自分の食生活の状況や健康状態に応じた適切な食品を摂取することは非常に重要なことである。平成13年2月26日の薬事・食品衛生審議会の報告書「保健機能食品の表示等について」では、「国民に対して正しい情報を提供して、自らの選択に委ねるためには、相談機関の充実やアドバイザリースタッフの確保が必要と考えられ、そのための官民役割分担した施策の充実が望まれる。」とされた。その後、薬事・食品衛生審議会新開発食品調査部会において、保健機能食品やその他のいわゆる健康食品について、消費者に適切に情報を提供し、消費者が気軽に相談できる者の養成に関する基本的な考え方をまとめ、平成14年2月に地方自治体及び関係団体にこの考え方について通知し、周知を図っているところである。

(問10) 保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品の英語名は、何か。

(答)
保健機能食品 : Food with health claims
特定保健用食品 : Food for specified health uses
栄養機能食品 : Food with nutrient function claims


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