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平成13年10月29日

「食品表示研究班アレルギー表示検討会」中間報告(概要)について

 アレルギー物質を含む食品に関する表示制度については、本年4月より施行されているところでございますが、現在、本制度の問題点等を明らかにし、法的整備等を図るため、平成13年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)において「食品表示が与える社会的影響とその対策及び国際比較に関する研究班(主任研究者:順天堂大学医学部公衆衛生学教室教授 丸井 英二)」により調査検討を行っているところです。
 このたび、同研究班の中に設置された「食品表示研究班アレルギー表示検討会」において中間報告がとりまとめられました。
 なお、本中間報告は、アレルギー物質を含む食品に関する表示制度施行後の問題点等をとりまとめたものであり、今後、この報告を受けて必要に応じ「アレルギー物質を含む食品に関する表示Q&A」の改訂等を行う予定としております。

○ 「食品表示研究班アレルギー表示検討会」中間報告については、独立行政法人国立健康・栄養研究所ホームページ(ホームページアドレスは以下のとおり)に掲載する予定です。(掲載予定日:平成13年10月29日)  

http://www.nih.go.jp/eiken/html/hyouji.html


(照会先)
厚生労働省医薬局食品保健部企画課
        調査表示係 大井、神奈川
TEL:03-5253-1111(内線2452、2492)


平成13年度厚生科学研究補助金 生活安全総合研究事業

食品表示研究班アレルギー表示検討会

中間報告(概要)



平成13年10月29日

食品表示が与える社会的影響とその対策
及び国際比較に関する研究

主任研究者 丸井 英二


アレルギー表示検討会の概要(中間報告)

1.はじめに

 近年、アレルギー物質を含む食品に起因する健康危害を防止するために、表示による情報提供の要望が高まってきた。本年4月の食品衛生法関連法令の改正に伴い、アレルギー物質を含む食品の表示が義務づけられた(平成14年3月末までに製造、輸入又は加工されるものについては経過措置が設けられている)。アレルギー症状を誘発する特定原材料5品目については、全ての流通段階での表示が義務づけられ、またその他の特定原材料に準じる19品目についても表示が推奨されることとなった。
 そこで今年度から発足した「食品表示が与える社会的影響とその対策及び国際比較に関する研究班」(以下「研究班」という)の中の「アレルギー表示検討会」において、実際に表示を義務化することにより生じる諸問題について検討を行ったので、その内容について報告する。

2.本検討会におけるアレルギー表示の目的

 食品衛生法は「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」を目的としている。今回のアレルギー物質を含む食品の表示義務化は、その理念に則り、重篤なアレルギー症状の誘発を回避することを目的として施行された。省令では、発症数、重篤度から勘案して、表示する必要性の高い特定原材料5品目の表示を義務づけ、通知では、特定原材料に準じる19品目の表示を行うよう努めることとしている。本検討会としてのアレルギー表示の目的は「食物アレルギー患者が重篤なアレルギー症状を誘発する食品を回避し、その結果として摂食可能な食品を選ぶことができるようになる」こととした。
 本検討会においては、現在定められている法的枠組を踏まえつつ、アレルギー表示の方法について検討することによって、加工食品を選択するためのアレルギー物質に関する正確な情報の入手が可能となることが期待された。

3.アレルギー反応を誘発する抗原(特定タンパク)量について

 健康危害回避の観点から、食物アレルギーを誘発する量を考える際には、特定原材料等の抗原(特定タンパク)量ではなく、加工食品中の特定原材料等の総タンパク量として考えることが望ましいとされた。
 アレルギー症状を誘発する抗原量に関しては、総タンパク量として一般的にはmg/ml濃度(食物負荷試験における溶液ml中の重量)レベルでは確実に誘発しうるといえるが、μg/ml濃度レベルではアレルギーの誘発には個人差があり、ng/ml濃度レベルではほぼ誘発しないであろうと考えられる。
 このことより、数μg/ml濃度レベルまたは数μg/g含有レベル以上の特定原材料等の総タンパク量を含有する食品については表示が必要と考えられる。一方、食品中に含まれる特定原材料等の総タンパク量が、数μg/ml濃度レベルまたは数μg/g含有レベルに満たない場合は、表示は必ずしも必要としないと考えられる。
 また、今後食物アレルギー物質にかかる検知法の開発では、加工食品中の特定原材料等のタンパク量を数μg/ml濃度レベル以下または数μg/g含有レベル以下まで検出可能となれば、表示の必要性の有無を確認するに十分な検知法となると考えられる。
*註 mg=10-3g, μg=10-6g, ng=10-9g

4.キャリーオーバー、加工助剤の記載について

 特定原材料については、全ての流通段階においてその含有量にかかわりなくアレルギー表示が必要とされているが、上記において、最終加工食品においての特定原材料等の総タンパク量が数μg/ml濃度レベルまたは数μg/g含有レベルに満たない場合には、アレルギー症状を誘発する可能性がきわめて低いと考えられる。このような場合には、キャリーオーバー、加工助剤であっても、最終食品への表示の必要性は低いと考えられる。

5.コンタミネーションの定義と対応について

 従来の表示Q & Aでは、特定原材料等がごく微量混入してしまう場合をコンタミネーションと定義し、このうち製造過程で混入することが確実な場合については原材料としてアレルギー表示を必要としていた。しかし、コンタミネーションによる混入物質と食品に含まれる本来の原材料との違いが不明瞭であるとの指摘があった。
 この指摘に対する対応方法として、コンタミネーションにより確実に混入する危険性があるものに関しては、原材料との区別を明確にするため、欄外に注意喚起として表記することが望ましいとの意見が出された。なぜならば、製品が鉄板等へ付着することを防ぐ目的で使用する「しき油」のように製造過程において微量ではあるが必ず使用されるものと区別するためである。これらを原材料として表記することは、消費者の「原材料」としての認識が一般的ではないことから、誤解を生じる可能性がある。また表示の正確性を保つためにも、意図せざる混入については、原材料としては整理せず、欄外での注意喚起として表記することが望ましいとの意見があった。
 しかし、「原材料」の定義をどの様にするべきか、今後さらなる検討が必要である。

6.用途名併記の食品添加物、複合原材料に含まれる特定原材料等の表示について

 現在の表示方法では、従来の添加物の記載に、アレルギー表示が追加されたことにより、「二重カッコ」、「、」「・」の混在等が見受けられる。用途名併記を必要とする添加物において、特定原材料等が表示されていることを消費者がよりよく認知できるための表示方法を検討した。実際の添加物を構成する物質に関する特定原材料等の説明には「:」を使用する等の方法が検討された。またこのルールを複合原材料にも応用できるのではないかとの意見が出され、別添に示すルール化を行うことによって表示の明瞭化を図ることの合意を得られた。

7.消費者への正確な情報提供

 事業者としては、ラベル表示のみで全てのアレルギー物質に関する情報が伝達されることが困難であることを常に想定しつつ、消費者情報窓口等を整備し、正確な情報提供を行うことができる体制を整えることが必要であるとされた。

8.複数の複合調理加工品を含む加工食品(べんとう等)の表示について

 複数の複合調理加工品を使用しているべんとう等の表示はその困難さを指摘されている。一つのパッケージに数種の具材が入っているものは、具材(複合調理加工品)どうしの接触などにより、アレルギー物質が他の具材に混入する可能性が高く、アレルギー物質の混入を正確に判断することが難しいため、一括表示でもよいのではないか、という意見が出された。しかし、軽症の患者では、各自の個人的な経験を頼りにその接触状況等からアレルギー物質量を推定し、具材の選択摂取をしている現状が報告された。特定原材料等をパッケージ単位で一括表示することは軽症の患者でさえも選択が不可能となることから、可能な限り具材ごとの個別表示が必要であるとの意見が出された。
 一方、現時点では表示スペースには限界があり、やむを得ず省略表記となりうることが多いことも認識された。複合調理加工品個々に特定原材料等の表示を行った上で、調味料や添加物等食品全体に占める重量が少ないものに関してはその他の原材料と区別して最後に一括表記として表示する方法も、現時点では現実的な方法のひとつではないかとの提案がなされた。
 そのためには、現在認められていない原材料個々の「を含む」表示と、最後に一括表記する方法の併用が必要であるという強い意見が出された。


 用途名併記の場合の食品添加物における特定原材料表示、及び、複合原材料に含まれる特定原材料の表示において、より消費者が認知しやすい表示方法を検討した。
 添加物を構成する特定原材料等の説明には「:」を使用する等の方法が検討された。またこのルールは複合原材料の表示にも応用可能と考えられた。このルール化案を以下に示す。

●用途名併記の場合の食品添加物における特定原材料等の表示ルールについて

(1) 添加物が1種類の特定原材料等より出来ている場合
用途名(物質名:○○由来) 用途名(物質名:○○を含む)
例 保存料(しらこたん白:さけ由来)
  保存料(しらこたん白:さけを含む)

(2) 添加物が2種類以上の特定原材料等からなる場合
用途名(物質名:○○・△△由来) 用途名(物質名:○○・△△を含む)
例 安定剤(ペクチン:りんご・オレンジ由来)
  安定剤(ペクチン:りんご・オレンジを含む)
特定原材料等が2つ以上になる場合には、特定原材料等どうしは『・』でつなぐ。

 以下の例示は実際上はあまり発生することはないと思われるが、仮に、このような使用がなされた場合の記載例として示す。
(3) 2種類以上の添加物(物質名1,2)がいずれも特定原材料等からなる場合
用途名(物質名1:○○由来、物質名2:○○由来)
用途名(物質名1:○○を含む、物質名2:○○由来)
例 糊料(ペクチン:りんご由来、キチン:えび由来)
物質名が2つ以上になる場合は、物質名どうしは『、』でつなぐ。

(4) 2種類以上の添加物(物質名1,2)がいずれも2種類以上の特定原材料等からなる場合
ただし、これは、現在のところ該当するものがほとんどないと予測されている
用途名(物質名1:○○・●●由来、物質名2:○○・▲▲由来)
用途名(物質名1:○○・●●を含む、物質名2:○○・▲▲由来)
例 糊料(ペクチン:りんご・オレンジ由来、キチン:えび・かに由来)


●複合原材料に含まれる特定原材料等の表示ルールについて

(1) ある複合原材料が、2種類以上の特定原材料等からなる場合
複合原材料名(○○・△△由来)
複合原材料名(○○・△△を含む)
特定原材料等が2つ以上になる場合は、特定原材料等どうしは『・』でつなぐ。
例 ハム(豚肉・小麦を含む)

(2) ある複合原材料Aが、2種類以上の複合原材料等(複合原材料名B,C)よりなる場合
・ 二重括弧を使用した例
複合原材料名A(複合原材料名B(○○・●●由来)、
        複合原材料名C(△△・▲▲由来))
複合原材料名A(複合原材料名B(○○・●●を含む)、
        複合原材料名C(△△・▲▲を含む)
物質名が2つ以上になる場合は、物質名どうしは『、』でつなぐ。
   例.卵サラダ(ハム(豚肉・小麦を含む)、マヨネーズ(小麦を含む))
・ 上記の複合原材料Aを一括表示した場合
  複合原材料名A(○○・●●・△△・▲▲を含む)
  複合原材料名A(○○・●●・△△・▲▲由来)



参考資料

 食品表示研究班アレルギー表示検討会の設置要項については以下のとおりですので、参考のため添付します。

食品表示研究班アレルギー表示検討会

1.目的

 平成13年度厚生科学研究補助金生活安全総合研究事業「食品分野 食品由来の健康被害に関する研究 食品表示が与える社会的影響とその対策及び国際比較に対する研究」(以下食品表示研究班という)における研究の一環として行うものであり、特にアレルギー食品の表示について、より有効な表示方法を見出し、これを周知するために関係者が一同に集まり、意見の集約及び具体的方策をとることを目的とする。

2.設置主体

 食品表示研究班内にアレルギー表示検討会を設置する。

3.業務内容

 (1) 消費者向け
   (ア) 現在の表示方法に関する実態調査
   (イ) 情報提供用教育媒体の作成

 (2) 事業者向け
   (ア) アレルギー表示状況と問題点の調査
   (イ) 事業者向け表示マニュアルの作成

 (3) アレルギー表示の記載ルールに関して
   (ア) 現行の一般ルールの整合性の確認
   (イ) 省略のルールについて

 (4) 弁当等の複合原材料の記載方法の整理とルールについての検討

 (5) キャリーオーバー、加工助剤の記載ルールについての検討

 (6) その他

4. 検討会委員(別紙1のとおり)

5. ワーキンググループ設置について

 班長は必要に応じて検討会の下にワーキンググループを設置することができる。

6. 検討会設置期間について

 平成13年8月から平成14年3月末日まで

7. 経費について

 厚生科学研究費で賄う(会場費、資料代、交通費、通信費など)

8. 事務局について

 事務局は順天堂大学医学部公衆衛生学教室内におく。
 担当:堀口逸子(厚生科学研究班分担研究者、順天堂大学医学部公衆衛生学教室助手)


別紙1

平成13年度厚生科学研究補助金生活安全総合研究事業

食品表示研究班アレルギー表示検討会委員名簿

丸井 英二 順天堂大学医学部公衆衛生学教室教授
海老澤元宏 国立相模原病院臨床研究センター
病態総合研究室部長
武内 澄子 食物アレルギーの子を持つ親の会代表
太田 裕見 食品産業センター企画調査部次長
丹 敬二 日本生活協同組合連合会開発企画部
佐藤 和久 日本フランチャイズチェーン協会顧問
渡辺 幸彦 日本べんとう工業協会事務局長
浅野 貞男 日本食品添加物協会常務理事
川村 洋 日本香料工業会専務理事
◎は座長


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