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医薬品、医療用具、医薬部外品及び化粧品分野における
BSEのリスク評価と回収措置について(案)

(10月29日 薬事・食品衛生審議会伝達性海綿状脳症対策調査会)

1.平成13年10月の措置に基づく報告状況

 平成12年12月の予防的措置により、(1) 危険部位(14部位)に由来する原料を含む製品又は、(2) BSE発生国及び発生リスクの高い国を原産国とする原料を含む製品については、製造・輸入の切り替えを指導してきたところであるが、市場に残存する当該措置未対応製品について、厚生労働省に報告があった製品数は3,935品目あった(平成13年10月26日時点)。

(1)医薬品94品目
(2)医療用具41品目
(3)医薬部外品945品目及び化粧品2,855品目。

2.報告対象製品のリスク評価と自主回収の状況

(1)これらの報告のあった製品については、いずれも平成13年10月2日の調査会において了承された対処方針を踏まえ、自主回収を指導しているが、自主回収に取り組むに当たっての客観的な優先順位を示し、自主回収をより円滑に進めるため、成分毎に改めて詳細なリスク評価を行った(別表1及び2)。なお、これらは、いずれも、理論的に存在するリスクを数学的に評価したものであり、また、現時点で、製品の使用に伴う人への感染について科学的知見が示されているものではないことに留意すべきである。

(2)このリスク評価の区分に基づき、1の報告のあった製品についての自主回収の処理を整理した。

3.リスク評価区分毎の回収等の今後の対応案

 以上を踏まえ、各関係企業において予防的観点を踏まえた効果的・効率的な対応が可能となるよう、きめ細やかな指導を行う。

(1)区分(イ)に分類される製品は、当該リスクが区分(ロ)以下の他の製品よりも理論的に高い確率で存在しうることから、現在市場に存在するものについては、直ちに回収等を行う。(なお、平成13年10月26日時点で全品目の回収等が完了。)

(2)区分(ロ)に分類される製品については、区分(イ)に分類されるもの程ではないが、リスクが理論的に存在しうることに鑑み、予防的な観点から、区分(イ)に準じて、速やかに製品の回収等を行う。

(3)区分(ハ)に分類される製品については、その理論的リスクが、区分(ロ)よりもさらに低いものであるが、一層の予防的な観点から可能な限り速やかに製品の切替えを進める。なお、製品の切替えの実施状況に関して、医療関係者、消費者等の安全性に関する懸念に応え、各企業とも正確な製品情報、切替え情報を提供する。

(4)回収等の状況は、今後とも、各月末時点で公表する。


別表1

BSEに関するリスクのクラス分類表

(1)考え方

(1)原料にBSE感染牛由来の臓器等が用いられるリスクの確率
・ 発生国・リスクの高い国を原産国としているか。
・ 臓器を多数収集する等の濃縮により、リスクが高まるか。
(2)使用部位のリスク分類
・ リスクの高いウシの部位を使用しているか。
(3)製品中の残留割合、投与経路(適用部位)等による安全性(暴露レベル)
・ 成分が製品中で希釈されているもの、皮膚に適用するものは低いレベル。(参考)

(2)より実際的なリスクの推定

(感染牛、発生国・リスク国、危険部位、曝露のクライテリアによる分類)

  区分 類型 原料 リスクの目安
地域 部位
あり




リスク



なし
リスクの起点 (1)BSE感染牛の危険部位
(2)BSE感染牛+危険部位以外



1/1万
区分(イ) (3)発生国等+危険部位(高曝露) 1/1万(注)
(4)発生国等以外+危険部位(高曝露) 1/100万(注)
区分(ロ) (5)発生国等+危険部位(低曝露) 1/1億
(6)発生国等+危険部位以外 1/1億
区分(ハ) (7)発生国等以外+危険部位(低曝露) 1/100億
区分(ニ) (8)発生国等以外+危険部位以外 1/∞

注:(3)(4)は、仮に感染した動物の原料を使用していたと仮定した場合、当該製品に、理論的には感染リスクが薄まらずに存在することとなり、それが流通する場合を想定した保健衛生上のインパクトが大きいものである。また、原料プールでの部位の混合等によりリスクが増大するなどの影響を受けやすいとも考えられる。(例えば、100個の危険部位臓器を採取する場合は、100×1/100万 = 1/1万 となる。)


(参考)

○臓器別リスク分類 (EMEAガイドライン)及びリスク評価

カテゴリー 感染伝播リスク 臓器等 脳内投与時のID50/g リスク
高リスク 脳、脊髄、眼 107 1
II 中リスク 回腸、リンパ節、近位結腸、脾臓、扁桃、(硬膜、松果体、胎盤)、脳脊髄液、下垂体、副腎 <2.5×104 400分の以下
III 低リスク 末梢結腸、鼻粘膜、末梢神経、骨髄、肝臓、肺、膵臓、胸腺 <100 10万分の1
IV リスクなし 血液凝固物、便、心臓、腎臓、乳腺、乳、卵巣、唾液、唾液腺、精嚢、血清、骨格筋、精巣、甲状腺、子宮、胎児組織、(胆汁、骨、軟骨、結合組織、髪の毛、皮、尿) <0.1 1億分の1
注: スクレイピー感染ヒツジ及びヤギの組織等の感染実験に基づく分類。()内の臓器は、この感染実験には含まれていないが、他の研究報告により感染性の程度が示唆されたもの

○投与経路による感染リスクの減衰(動物実験によるリスク評価等)

  脳内 静脈内 皮下注射 経口(消化管)  
リスク推計(1) 1 1/9 1/24,500 1/ 10万
リスク推計(2) 1 1/10 1/100 1/10,000 1/ 10万 1/ 100万 1/1000万
  脳内 血管内 その他
注射
粘膜 経口(消化管) 経皮 健康皮膚
(1)Kimberlin RH, An Overview of bovine spongeform encephalopathy Dev Biol Stand, 75:75-82, 1991
(2) Quantitative Classification of the Safety of Individual Medicinal Products (ドイツ医薬品庁)


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