制定: | 平成9年3月31日 |
第1次改訂: | 平成10年10月19日 |
第2次改訂: | 平成13年1月6日 |
第3次改訂: | 平成13年4月18日 |
第1 目的
この実施要領は、「厚生労働省健康危機管理基本指針」に基づき、薬事法(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)に規定する厚生労働大臣の権限及びこれに関連して必要な行政措置に関する事務を的確、かつ、迅速に行うことにより、医薬品等(医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具をいう。以下同じ。)による健康被害の発生を未然に防止し、及び発生した健康被害の拡大を防止することを目的として、医薬局内における業務の実施要領を定めるものである。
第2 医薬品等における危機管理の基本的心得
1. 非加熱血液製剤によるHIV感染の発生、拡大の反省を踏まえ、日頃から医薬品等の安全性情報(生物学的製剤を含み、医薬品等の製造管理に係るものを含む。以下同じ。)の迅速な把握に努めるとともに、健康被害の発生、拡大を防止するため、常に総合的な安全対策の立案、実施に努めるものとする。
2. 因果関係が不明である場合又は入手した安全性情報が不確実なため健康被害の発生のおそれの有無が直ちに判断できない場合には、常に最悪の事態を想定して、安全対策の立案、実施に努めるものとする。
第3 医薬局各課の役割分担
1. 総務課
(1) 安全対策事務の総合的企画及び調整
(2) 薬事法その他関係法規の総括
2. 安全対策課
(1) 安全性情報の収集及び一次評価
(2) 安全性情報の評価及び安全対策の立案
(3) 決定された安全対策の公表
(4) 各課が実施する安全対策の実施に関する事務の調整
(5) 安全対策の実施及び実施状況の公表(医薬品等の使用上の注意の改訂の指示、緊急安全性情報の配布その他の医薬関係者への情報提供及び他課の主管に属さないもの)
(6) 各課が実施する安全対策の実施状況の総括
3. 監視指導・麻薬対策課
(1) 安全対策の実施及び実施状況の公表(医薬品等の回収若しくは廃棄の指示又は製造若しくは出荷の停止の指示に係るもの)
(2) 安全対策の実施に当たっての都道府県知事との連絡調整
(3) 検査に係る国立感染症研究所及び国立医薬品食品衛生研究所との連絡調整
4. 審査管理課
(1) 安全対策の実施及び実施状況の公表(医薬品等の承認の取消若しくは一部変更又は再評価の指定に係るもの)
(2) 医薬品等の承認に関する情報の提供その他の関係各課に対する技術的支援
5. 血液対策課
(1) 安全対策の実施に伴う血液製剤の供給に関すること
(2) 日本赤十字社及び血液製剤の製造業者等との連絡調整
(3) 血液製剤に関する情報の提供その他の関係各課に対する技術的支援
(4) 安全対策の実施に伴うワクチンの供給に関すること
(5) ワクチンの製造業者等との連絡調整
第4 医薬品等安全対策連絡会議
1. 安全対策課長(安全対策課長に事故があるときは、安全対策企画官。安全対策企画官に事故があるときは、安全対策課の課長補佐。3.において同じ。)は、安全性情報の収集及び評価並びに安全対策の立案及び実施に当たり、各課の情報交換を促進するとともに、各課の事務の円滑な調整を行うため、必要に応じ、医薬品等安全対策連絡会議(以下「連絡会議」という。)を召集するものとする。
2. 連絡会議は、安全対策課長及び安全対策企画官並びに総務課、審査管理課、安全対策課、監視指導・麻薬対策課及び血液対策課の予め定めた課長補佐をもって構成する。但し、当該課長補佐が出席できない場合は、他の課長補佐が代理できるものとする。
3. 安全対策課長は、必要に応じて医政局経済課に対し、連絡会議への出席を求めるものとする。
4. 緊急時において速やかに連絡会議を開催するため、安全対策課において休日、夜間における連絡会議の構成員の連絡先を把握するものとする。なお、連絡会議の構成員に異動があった場合には、その都度回覧するものとする。
第5 安全性情報の収集及び一次評価
1. 安全性情報の収集
(1) 安全対策課は、次に掲げる情報を収集する。
(3) 各課は、その所掌事務に関する安全性情報の収集について、安全対策課に協力するとともに、自ら安全性情報を入手した場合には、直ちに、安全対策課に報告するものとする。
(4) (1)のウ及びカに掲げる安全性情報の収集については、安全対策課及び関係各課において収集を行うほか、(財)日本医薬情報センターその他の団体に委託できるものとする。
2. 収集した安全性情報の一次評価
(1) 安全対策課は、必要に応じ連絡会議を開催するとともに、関係各課の協力を得て、収集した安全性情報が次のいずれかに該当するか判断する。
3. 収集した安全性情報の関係者への報告
(1) 安全対策課は、自ら収集した安全性情報及び他課から報告された安全性情報について緊急に安全対策の実施を要するものであると判断する場合にあっては、速やかに連絡会議を開催するとともに、医薬局長、審議官及び総務課長並びに厚生労働省健康危機管理調整会議主査に報告する。また、当該情報について緊急に安全対策の実施を要するものではないと判断する場合のうち重要なものについても、速やかに連絡会議を開催するとともに、医薬局長、審議官及び総務課長に報告する。
(2) 安全対策課は、自ら収集した安全性情報及び他課から報告された安全性情報が緊急に安全対策の実施を要するものであるときは、必要に応じて厚生労働大臣まで報告する。
(3) 安全対策課は、自ら収集した安全性情報及び他課から報告された安全性情報が緊急に安全対策の実施を要するものであり、かつ、健康被害の範囲が大規模に及ぶことが予想されるときは、必要に応じて内閣総理大臣まで報告する。
(4) 安全対策課は、自ら収集した安全性情報及び他課から報告された安全性情報が医薬品等の供給に係るものであるときは、当該情報を医政局経済課に報告する。
(5) 安全対策課は、自ら収集した安全性情報及び他課から報告された安全性情報が、医薬品等の使用による感染症の発生に係るものであるときは、当該情報を健康局疾病対策課若しくは結核感染症課又はこの両課に報告する。
(6) 安全対策課は、自ら収集した安全性情報及び他課から報告された安全性情報又はその情報に基づく対応等で保健所、地方衛生研究所がかかわる場合には、健康局総務課地域保健室に報告する。
4. 収集した安全性情報の保存
安全対策課は、法第77条の4の2の規定に基づく報告及び医薬品等安全性情報報告により収集した安全性情報を副作用情報データベースに入力し、管理する。
安全対策課は、収集した安全性情報の保管及び管理に努めるものとする。
第6 補充調査の実施
1. 安全対策課は、一次評価の結果、因果関係が不明である場合、収集した安全性情報が不確実である場合その他の場合であって、健康被害が発生するおそれの有無が判断できないときには、更に安全性情報の収集を行うため、次に掲げる方法により同課において調査を実施し、又は関係各課に調査を実施するよう指示するものとする。
(1) 製造業者等に対する安全性情報の収集の指示
(2) 医薬関係者に対する安全性情報の収集、提供の要請
(3) 文献の検索
(4) 国立感染症研究所又は国立医薬品食品衛生研究所における検査の実施その他の関係国立試験研究機関等における調査の実施の要請
(5) 外国政府、在外日本大使館及び国際機関に対する照会
(6) 職員の現地派遣
2. 1.の場合において、関係各課は安全対策課に協力するものとする。
3. 緊急時において速やかに1.(5)の照会を行えるようにするため、安全対策課において外国政府、在外日本大使館及び国際機関の担当者の連絡先を把握するものとする。
第7 安全性情報の評価及び安全対策の決定
1. 安全性情報の評価及び安全対策の立案を行う場合
安全対策課は、一次評価の結果に基づき、第5の3.(1)に規定する緊急に安全対策の実施を要するものであると判断する場合のほか、次に掲げる場合に、必要に応じ局議を開催するとともに、関係各課の協力を得て、安全性情報の評価及び第8の1.(1)に規定する安全対策の立案を行うものとする。
(1) 健康被害の発生、又は発生のおそれがある安全性情報を入手した場合(当該安全性情報が医薬品等の既知の副作用若しくは不具合に係るもの又は医薬品等の使用による感染症の発生に係るものである場合であって、当該健康被害が当該医薬品等の承認の際、又は過去において安全対策を決定した際に予想されていた範囲内のものであるときを除く。)
(2) 因果関係が不明である場合、収集した情報が不確実性を伴う場合その他の場合であって、健康被害が発生するおそれの有無が判断できない安全性情報(第6に規定する補充調査を実施中である情報を含む。)を入手したとき
2. 薬事・食品衛生審議会への付議
安全対策課は、安全性情報の評価及び安全対策の立案を行う場合には、薬事・食品衛生審議会の意見を聞くものとする。
3. 安全対策の決定及び公表
(1) 安全対策課は、薬事・食品衛生審議会の意見を勘案して、関係各課と協議の上、安全対策の立案を行うものとする。
(2) 安全対策の決定は、別紙3の様式により、安全対策課において起案し、安全対策課長、関係各課の長、総務課長、審議官及び医薬局長の決裁を得て行うものとする。また、第6に規定する補充調査の結果、安全対策の実施を要するものではないと判断する場合のうち重要なものについては、速やかに医薬局長、審議官及び総務課長に報告するものとする。
(3) 決定された安全対策及び安全対策を要するものではないと判断したもののうち重要なものは、安全対策課において適宜公表する。
4. 緊急時の特例
(1) 重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれがあり、緊急に安全対策を講じる必要があり、かつ、薬事・食品衛生審議会の意見を聞く時間的余裕がないと医薬局長が判断した場合には、薬事・食品衛生審議会の意見を聞くことなく、情報提供、出荷停止の指示、回収又は廃棄の指示を行うことを決定することができる。
(2) (1)の場合において、安全対策課は、安全対策の決定前に、薬事・食品衛生審議会委員又は臨時委員に個別にその意見を聞くよう努めるとともに、安全対策の決定後速やかに薬事・食品衛生審議会に対して、事後報告を行うものとする。
第8 安全対策の実施
1. 安全対策の区分
(1) 厚生労働省が実施する安全対策は次に掲げる方法の一又は二以上の方法による。
2. 承認の取消
医薬品等の承認に際して提出された資料に重大な虚偽又は誤りがあることが発見された場合であって、当該虚偽又は誤りのため、承認時には予測されなかった重篤な健康被害が生じたときには、承認を取り消すものとする。
3. 承認の一部変更
(1) 医薬品等に起因する健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合であって、当該医薬品等の承認の対象となった効能、効果、用法、用量、製造方法、規格及び試験方法を改訂しなければ、当該健康被害の発生又は拡大を防止できないときは、承認の一部変更を行うものとし、製造業者等に対して、期限を定めて法第14条第6項の承認の一部変更申請を提出すべき旨を文書をもって指示するものとする。
(2) 次に掲げる場合には、承認の一部変更は、法第74条の2第2項の命令により行うものとする。
4. 使用上の注意の改訂の指示
(1) 医薬品等に起因する健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合であって、当該健康被害の発生が現に記載されている使用上の注意の内容からは予測し得ないとき、又は現に記載されている使用上の注意の内容が適切でなくなったときは、製造業者等に対して使用上の注意の改訂を指示するものとする。
(2) (1)の指示は、改定すべき内容及び改訂の期限を文書をもって通知することにより行うものとする。
(3) 製造業者等が(2)の通知により指定した期限までに、当該通知により指定した内容の改定を行わないか、又は行わないことが予想される場合には、(2)にかかわらず、使用上の注意の改訂は、法第69条の2の命令をすることにより行うものとする。
5. 回収又は廃棄の指示
(1) 次のいずれかの場合には、製造業者等に対して、次に掲げる範囲の医薬品等の回収を指示するものとする。
(3) (1)の回収の指示又は(2)の廃棄の指示は、製造業者等に対して回収又は廃棄を行うべき旨を文書で通知することにより行うものとする。
(4) (3)の通知には回収期限(重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合には2週間を超えない期間とする)、回収すべき医薬品等の範囲及び回収の対象となる販売業者等の範囲(販売業者、医療機関又は患者の別)を明示するものとする。
(5) 次に掲げる場合には、(1)及び(2)にかかわらず、回収の指示又は廃棄の指示は、法第69条の2又は第70条の規定に基づき命令することにより行うものとする。
6. 製造又は出荷の停止の指示
(1) 次に掲げる場合には、製造業者等に対して、当該医薬品等の製造又は出荷の停止の指示を文書で通知するものとする。
(2) 重篤な健康被害が発生し、若しくは発生するおそれがある場合など、直ちに製造若しくは出荷の停止を行わせなければ健康被害の発生若しくは拡大を防止し得ない場合又は製造業者等が(1)の通知後速やかに製造若しくは出荷の停止を行わないか、若しくは行わないことが明らかな場合には、法第69条の2の規定に基づき、製造又は出荷の停止を命令するものとする。
(3) 医薬品等の製造又は出荷の停止を命令し、又は文書で指示したときは、必要に応じて、都道府県知事の協力を得て、製造業者等の事業所に法第69条の規定に基づく立入検査を実施するなど、製造又は出荷の停止が行われていることを確認するものとする。
7. 回収等に伴う安定供給への配慮
(1) 回収又は製造若しくは出荷の停止が行われる場合には、必要な医薬品等の安定供給を確保するため、その対象となった医薬品等に代替する医薬品の供給状況の把握に努めるとともに、必要に応じ、代替品の製造業者等に対する増産の要請等必要な措置を講じるものとする。
(2) 回収又は製造若しくは出荷の停止の対象となった医薬品等について、国内に代替し得る医薬品等がなく、かつ、他の治療法が限定されている場合には、当該医薬品等の安全性及び治療上の必要性等に関する総合的な評価について、薬事・食品衛生審議会における審議を経た上で、次に掲げる措置その他必要な措置を講じることができる。
8. 再評価の指定
当該医薬品等に起因する健康被害が現に発生し、又は発生するおそれのある場合その他の場合であって、法第14条の5の再評価を行う必要があると認められるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、再評価の指定を行うものとする。
9. 情報提供
(1) 医薬関係者等への緊急安全性情報の伝達の指示
重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合であって、緊急かつ広範囲に医薬関係者に情報提供を行う必要がある場合には、緊急ファックスにより情報提供を行うものとする。
(3) 安全対策を実施する場合には、安全対策課が窓口となって、報道機関に対してその内容について情報提供を行うとともに、厚生労働省ホームページに掲載する等インターネット等の広報媒体を利用して広く情報提供を行うものとする。
(4) 重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合であって、不確実性を伴う安全性情報に基づき、安全対策の決定を行った場合には、その決定の前提となった安全性情報、対策決定に当たって考慮した要因、制約条件等を併せて情報提供するものとする。
10. 継続調査
因果関係が明らかでない場合、入手した安全性情報に不確実性が伴う場合その他の場合であって、安全対策に万全を期すため必要と認められる場合には、当該医薬品等について、継続的な安全性情報の収集、第6の例による調査の実施その他の調査を実施する。
11. 安全対策の実施状況調査
安全対策を実施した課室は、製造業者等にその遵守状況を報告させるとともに、必要に応じて、都道府県知事の協力を得て、製造業者等の事業所、販売業者等に法第69条の規定に基づく立入検査を実施するなど、遵守状況を確認するものとする。
12. 省内の関係各課との連携
安全対策課は、安全対策の立案及び実施に当たり、医政局経済課に対し、医薬品等の供給に関する協力を求める等、必要に応じ、省内の関係課との連携を図るものとする。
第9 製造業者等による自主的措置がとられた場合
1. 健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合であって、その原因となった医薬品等の製造業者等が当該健康被害の発生又は拡大を防止するための自主的措置をとることを文書により申し出たときには、安全対策課は、必要に応じ連絡会議を開催するとともに、関係各課の協力を得て、当該自主的措置により必要な安全対策が確保されるかどうかを確認し、自主的措置に加えて当該製造業者等において実施すべき安全対策がある場合には、必要な指示を行うものとする。
2. 製造業者等が1.の自主的措置を実施する場合には、当該製造業者等に対して、当該自主的措置の内容を公表するよう指示するものとする。
第10 記録の管理
安全対策課は、各課の協力を得て、第5の4に規定するもののほか、第7の3の(2)の決裁文書、製造業者等に対する指示に係る通知その他の安全性情報の評価並びに安全対策の立案及び実施に関連して作成し、又は入手した重要文書を保存し、管理するものとする。
第11 その他
1. この実施要領の運用に当たっては、医薬品等に起因する健康被害発生の態様の多様性に鑑み、個別事案の特性に配慮するとともに、健康被害の発生又は拡大の防止を図る観点から、柔軟な運用に努めるものとする。
1. この実施要領の運用を通じて、健康被害の発生又は拡大の防止をより効果的に行うため必要がある場合には、機動的にこの実施要領の見直しを行うものとする。
(照会先) 医薬安全局安全対策課 関野 TEL(03)5253-1111 内線2748
(国内)
(海外)
別紙2 規制情報
FDA Medical Bulletin
FDA Talk Paper
Federal Register
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)CDC
FDC Report ゛The Pink Sheet゛(米国医療用医薬品規制情報)
FDC Report ゛The Gray Sheet゛(米国医療用具規制情報)
FDC Report "The Rose Sheet" (米国化粧品規制情報)
FDC Report ゛The Tan Sheet゛ (米国一般用医薬品規制情報)
別紙3 (対策決定の際の決裁様式)
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