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ウシ等由来原料を使用した医薬品、医療用具等に対する
現行措置の評価と今後の対応方針(案)

1.現行措置の評価等

(1)平成12年12月、ウシ等由来原料の原産国にかかわらず、医薬品、医療用具、医薬部外品及び化粧品(以下、「医薬品、医療用具等」という。)の原料として、BSEの伝播のリスクが高い部位(脳、脊髄、眼等)の使用を禁止したことにより、狂牛病の発生が確認された現時点においても、医薬品、医療用具等として通常使用される範囲では、公衆衛生上のリスクは回避されていると評価している(現時点で厚生労働省が有する科学的知見に基づく評価(別紙1参照))。

(2)なお、平成13年9月19日、念のため、(1)の措置の徹底のほか、

(1) 狂牛病サーベイランスでBSE陽性と診断されたウシ等由来原料の使用を禁止
(2) 原料となる国内産のウシの飼育過程で動物性飼料(肉骨粉)の使用を禁止
等を指導したところ。

2.今後の対応方針(案)

 わが国がBSE発生国となったことを踏まえ、現時点における更なる安全性確保策として、ウシ等由来原料によるリスクの可能性をできるかぎり排除し、今後の一層の安全性に対して万全を期すため、製造業者等に対し、以下の措置を講じる。

(1)念のため、平成12年12月の措置に対応していない医薬品、医療用具等が医療機関等で使用されていないことを確認するための現状調査を行うとともに、仮に当該医薬品、医療用具等の存在が確認された場合にあっては、当該医薬品、医療用具等の回収を指導する。

(2)さらに、将来的なプリオン感染のリスクを最小限とするため、製造業者等に対し、以下の措置を講じる(別紙2参照)。

(1) 医薬品、医療用具等の原料として、BSEの伝播のリスクが高い部位(脳、脊髄、眼等)の使用を禁止する(平成12年12月の措置の継続)。
(2) 日本を含むBSE発生国及びBSE発生リスクの高い国に加え、リスクの評価がなされていない国(リスク不明国)を原産国とするウシ等由来原料について、医薬品、医療用具等に使用することを原則禁止する(*)。
(*)リスク不明国を原則使用禁止とする措置は、現段階では他の先進諸国でも行われていない厳しい規制である。
 なお、やむを得ずこれらの国(ただし、高発生国である英国、ポルトガルを除く。)を原産国とするウシ等由来原料を使用する場合は、次の事項等によってBSEに汚染していないことを科学的に確実に証明できなければならない。
イ 原料のウシ等にBSEの疑いがないこと
ロ 原産国のBSE防疫体制が組まれていること
ハ 原料のウシ等の飼育管理での動物性飼料が使用されていないこと

(3) (2)に該当する製品については、今後、製造又は輸入を禁止することとし、これに伴い、製造業者等においては、(2)に対応する製品への切り替えを直ちに行うとともに、製造承認書等の一部変更承認申請を要する場合は、可及的速やかに(遅くとも平成13年12月28日までの約3ヶ月以内に)当該申請手続きを行うこととする。

(3)なお、ワクチン類の取扱いについては、他の製品とは異なり以下の特性を有していることに鑑み、製造業者等において、(2)の措置にかかわらず、製造工程で用いるウシ由来原料を可及的速やかに(遅くとも平成14年3月29日までの約6ヶ月以内に)より安全な原料に切り替えること(別紙3)。

イ ワクチン類の製造工程において用いられるウシ等由来原料は、血清、肝臓、胆汁等感染リスクが低い部位を使用していること
ロ 最終製品となるまでの製造工程中で、ウシ等由来原料は概ね10の6乗以上に希釈されていること
ハ 通常、ワクチン類の製造に要する期間が概ね数ヶ月ないしそれ以上であることから、ウシ等由来原料の即時切り替えが困難であること


(別紙1)

現状のリスクの評価の考え方

1.疫学的に、BSE高発生国/vCJD発生国の英国においても、vCJDの原因として医薬品は指摘されていない。

2.臓器分類毎の感染リスク(感染ヒツジの臓器のマウスへの脳内注射感染実験による。)を基に、現在使用を禁止しているウシ等の部位はカテゴリーI及びIIであり、使用が認められているIII及びIVは、感染動物を仮に使用していたとしても、通常の医薬品としての使用において感染リスクは考えにくい。

カテゴリー リスク 臓器の例 脳内投与時の
ID50/g (注1)
リスク(注2)
高リスク 脳、神経組織等 107
II 中リスク 脾臓、リンパ節、腸、胎盤等 < 2.5×104 400分の1以下
III 低リスク 膵臓、肝臓、肺等 < 100 10万分の1以下
IV リスクなし 骨格筋、骨、心臓、血液、乳等 < 0.1 1億分の1以下
出典: 欧州医薬品庁評価及びFDAレポート「Estimating Risks for vCJD in Vaccines Using Bovine-Derived Materials」

(注1)
 ID50/g: 臓器1グラムあたりの感染単位数(number of infectious units pergram of tissue)。
(注2)
 カテゴリーIに属する臓器(脳、神経組織等)のリスクを1とした場合の他のカテゴリーに属する臓器のリスクを示す。
 なお、脳内投与に比して、筋肉注射や静脈注射等通常の注射を行った場合は、さらに200分の1程度リスクが減じられると言われている。


(別紙2)

1.BSE発生国又は発生リスクの高い国

  国名
BSE発生国 英国*、ポルトガル*、スイス、フランス、チェコ、アイルランド、オマーン、オランダ、ベルギー、デンマーク、ルクセンブルグ、ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペイン、リヒテンシュタイン、日本
BSE発生リスクの高い国 アンドラ、アルバニア、オーストリア、ボスニア・ヘルチェゴビナ、ブルガリア、ノルウェー、クロアチア、ユーゴスラビア、フィンランド、ハンガリー、マケドニア、モナコ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スウェーデン、サンマリノキプロスエストニアリトアニア、スロベニヤ
(注1) 米国連邦規則第9巻第一章第98条第18項(米国農務省告示)(9CFR Ch.I §94.18)をもとに、新たに米国で輸入制限国となった国、欧州委員会の地理的BSEリスク評価結果(GBR)クラスIII(高発生国以外の国及びリスクの高い国)となった国を追加。
(下線部)
(注2) *はBSE高発生国


2.BSE発生リスクの低い国

  国名
BSEのリスクの低い国 アルゼンチン、オーストラリア、ボツワナ、ブラジル、チリ、コスタリカ、エルサルバドル、ナミビア、ニカラグア、ニュージーランド、パナマ、パラグアイ、シンガポール、スワジランド、ウルグアイ、カナダ、コロンビア、インド、ケニア、モーリシャス、ナイジェリア、パキスタン、米国

(注3)欧州委員会の地理的BSEリスク評価結果(GBR)クラスI及びII


3.BSE伝播のリスクの高いウシ等の部位

 脳、脊髄、眼、腸、扁桃、リンパ節、脾臓、松果体、硬膜、胎盤、脳脊髄液、下垂体、胸腺又は副腎


(別紙3)

ワクチンのBSEリスクについて
(平成12年7月のFDAの判断を参考)

 ワクチンの製造工程において、ウシ等由来原料はマスターシードの製造、菌、ウイルス等の培養に用いられる。そこで用いられるウシ等由来原料は、もともと、血清、肝臓、胆汁等の感染リスクの低い部位であること、最終製品となるまでに製造工程中で、これら原料が概ね10の6乗以上に希釈がされていることからも、現時点で厚生労働省が有する知見に基づけば、安全性において懸念はないと思われる。

※FDAの資料についてはPDFファイル(126KB)を参照してください。


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