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平成11年歯科疾患実態調査の概要



I 調査の概要

1.調査の目的

 歯科疾患実態調査は、昭和32年に第1回の調査が行われ、以後6年間隔で行われている。本調査は8回目にあたり、その目的は、わが国の歯科保健状況を把握し、今日まで行われてきた種々の対策の効果について検討を行い、今後の歯科保健医療対策の推進に必要な基礎資料を得ることである。

2.調査の対象

 全国を対象として、平成11年国民生活基礎調査地区より設定された単位区から、無作為に抽出した300単位区の地区内の世帯および世帯員のうち満1歳以上の世帯員すべてを調査客体とした。

3.調査の期日

 平成11年11月中に実施した。

4.主な調査事項

1)現在歯の状況(う蝕の有無、処置の有無等;う蝕の検出に関して、基準を改定)

2)喪失歯およびその補綴状況

3)歯肉の状況(診査方法を改定)

4)歯列・咬合の状況(追加項目)

5)歯ブラシの使用状況

6)フッ化物の塗布状況

5.調査の方法

 厚生大臣が都道府県知事、政令市長並びに特別区長に委託して行った。調査に当たっては、厚生省は作成した歯科疾患実態調査必携に従い、必要な事前準備、診査基準などに基づき、全国同一の手順によって行った。

6.診査基準

 診査基準は、歯科疾患実態調査必携に定める基準によって実施した。 ただし、近年、内外でのう蝕の診断に探針を用いることの是否論を踏まえ、検診方法及び未処置歯の診断基準を改めた。
 更に、永久歯の未処置歯の診断に関しては、97年のWHOの基準の変更に伴い、う蝕の国際比較が変化していくことに対応するため、「別に示す基準」を設定し、上記の基準と併せて診査を行った。

7.結果の集計

 集計は、厚生省健康政策局歯科保健課において行った。


II 結果の概要

1 被調査者数

 被調査者数は6,903人(男 2,865人、女 4,038人)であり、1〜15歳未満の者は1,104人(男 566人、女 538人)、5歳以上の者は6,570 人(男 2,692人、女 3,878人)及び5〜15歳未満の者は771人(男 393人、女 378人)であった(表1)。

2 う蝕有病者とその処置の状況

( )内の数字は、前回の平成5年調査の結果値

 う蝕有病者率は、乳歯(1〜15歳未満)の総数では45.20%(56.87%)、永久歯(5歳以上)の総数では85.86%(85.64%)、乳歯+永久歯(5〜15歳未満)の総数では78.34%(90.41%)となっており、今回の調査では、永久歯において、依然、高いう蝕有病者率を示している(表2−1)。
 一方、処置完了者の率は、乳歯の総数では41.48%(30.53%)、永久歯(5歳以上)の総数では51.32%(42.71%)、乳歯+永久歯(5〜15歳未満)の総数では41.89%(34.99%)となっており、前回(平成5年)の調査と比較すると、処置完了者の割合は、総数で乳歯では 10.95%、永久歯では8.61%、乳歯+永久歯では6.9%高くなっており、処置状況の改善が認められる(表2−2図1図2)。
 年齢別にみると、乳歯では6歳前後、永久歯では12歳前後までう歯有病者率が急増する傾向は、前回と比較して変わっていない。しかし、乳歯、永久歯において、6歳で10.34%、12歳で13.61%の減少が認められるように、う蝕の急増しやすい時期における減少傾向が認められる(表2−3図3図4図5図6)。

3 現在歯の状況

(1)1人平均現在歯数

 1人平均現在歯数は乳歯(1〜15歳未満)では11.23本(10.75本)であり、そのうち健全歯8.96本(7.38本)、処置歯1.39本(1.86本)、未処置歯0.88本(1.50本)となっている。また、永久歯(5歳以上)では21.06本(20.50本)であり、そのうち健全歯11.29本(11.41本)、処置歯8.56本(7.47本)、未処置歯1.20本(1.62本)となっている。前回の調査と比較すると、乳歯では未処置歯の減少が、また永久歯では処置歯の増加が著明に認められる。
 なお、既出の永久歯の未処置歯1.20本のうち、「別に示す基準に基づく未処置歯」に該当するものは、0.69本であった(表3−1)。

(2)う蝕有病歯率

 乳歯では健全歯率79.81%(68.67%)、処置歯率12.35%(17.33%)、未処置歯率7.84%(14.00%)であり、永久歯では健全歯率53.63%(55.67%)、処置歯率40.66%(36.45%)、未処置歯率5.71%(7.88%)となっている。また、永久歯について「別に示す基準に基づく未処置歯」の割合は、3.27%となっている。
 永久歯の処置率は、男性で33.92%(29.87%)、女性で45.36%(41.38%)であり、性差が大きく、女性の方がが11.44%高くなっている(表3−2)。
 永久歯では、調査毎に処置歯率が高くなってきており、前回に引き続き処置状況の改善が認められる(表3−3)。

(3)未処置歯の進行状況別分布

 う歯(未処置歯)を罹患程度別(C1〜C3以上)にみると、乳歯におけるC1(う蝕1度)およびC2(う蝕2度)の割合は90.75%(85.06%)、C3(う蝕3度)以上の割合は9.26%(14.94%)であり、前回の調査と比較して、乳歯においてC1およびC2の割合が高く、C3(以上の割合が低くなってきており、う蝕の軽症化が認められる。
 一方、永久歯におけるC1およびC2の割合は71.74%(72.51%)、C3以上の割合は28.26%(27.50%)であり、乳歯と違い、う蝕の軽症化は認められない。(表3−4図7図8)。

(4)1人平均DMF歯数

 1人平均DMF歯数は総数で15.67本(14.98本)となっており、前回の調査と比較すると0.69本増加しているが、一方、40歳未満までの1人平均DMF歯数は、逆に減少しており、低・中年齢層での永久歯う歯の減少傾向が認められる(表3−5)。

4 喪失歯の状況(永久歯)

(1)喪失歯のある者の割合

 歯を喪失している者の割合は総数で60.06%(58.04%)となっており、性別では男性57.91%(54.59%)、女性61.55%(60.56%)を示し、女性が男性に比べ3.64%高くなっている。また、前回の調査に比べると男女ともに喪失歯のある者の割合が増加している(表4−1)。

(2)1人平均喪失歯数

 1人平均の喪失歯数は総数で5.91本(5.89本)、性別でみると男性5.59本(5.20本)、女性 6.13本(6.40本)であり、女性が男性に比べ0.54本喪失歯が多くなっている(表4−1)。
 年齢階級別にみると、各年齢階級とも前回の調査と比較して、1人平均喪失歯数の減少傾向が認められる(表4−2)。

5 補綴(義歯・冠等)の状況

 15歳以上で補綴の状況をみると、補綴を完了している者は53.56%(46.40%)となっている。また、補綴を必要とする者のうち、補綴をしていない者が18.76%(21.92%)認められる。
 昭和32年から今回調査までを比較すると、補綴完了者が増加し、補綴を全くしない者は減少している(表5図9)。

6 歯肉の状況

 歯肉に所見のある者は総数でみると72.88%となっている。そのうち、プロービング後に出血した者は11.33%、歯石の沈着している者は29.06%、歯周ポケット4mm以上6mm未満の者は25.36%(そのうち歯石沈着がある者は11.48%)、歯周ポケット6mm以上の者は7.14%(そのうち歯石沈着がある者は4.07%)となっている。年齢階級別の有病者率をみると、年齢が高くなるごとに歯肉に所見のある者が増え、45〜54歳の年齢階級層で88.44%を示し、最も高い率となっている(表6図10)。

7 歯列・咬合の状況

(1)叢生・空隙の状況

 12〜20歳で叢生の状況をみると、上下顎に叢生ありの者は総数で20.27%、上顎で13.71%、下顎で12.55%となっている。
 また、空隙の状況では、上下顎に空隙ありの者は総数で3.47%、上顎で9.27%、下顎で3.28%となっている(表7−1)。

(2)オーバージェット

 12〜20歳のオーバージェットは0.5mm以上4mm未満の者は総数で59.27%、4mm以上6mm未満の者は23.17%、6mm以上の者は8.30%、±0.5mm未満の者は6.37%、-0.5mm以上-4mm未満の者は2.90%、-4mm以上の者はなしとなっている(表7−2)。

(3)オーバーバイト

 12〜20歳のオーバーバイトは0.5mm以上4mm未満の者は総数で61.66%、4mm以上6mm未満の者は20.81%、6mm以上の者は7.51%、±0.5mm未満の者は7.71%、-0.5mm以上-4mm未満の者は2.31%、-4mm以上の者はなしとなっている(表7−3)。

8 フッ化物の塗布状況

 15歳未満でフッ化物塗布を受けたことのある者は42.03%(38.16%)となっており、前回の調査と比較すると、3.87%高くなっている。
 実施場所別では、市町村保健センター等17.75%(10.37%)、その他医療機関24.28%(27.79%)となっている(表8図11)。

9 歯ブラシの使用状況

 歯ブラシの使用状況を総数でみると、毎日みがく者は96.16%(94.16%)、時々みがく者は2.55%(3.95%)、みがかない者は1.29%(1.09%)となっている。
 歯ブラシ使用状況の年次推移をみると、毎日みがく者は調査を重ねるごとに増加しており、各年齢階級別にみても全て90%を越える値を示している(表9−1)。
 毎日歯をみがく者の回数の内訳をみると、1回29.04%(33.32%)、2回48.10%(45.33%)、3回以上19.02%(16.32%)となっている。
 年次推移でみると、調査を重ねるごとに2回および3回以上みがく者の割合が増加している。一方、みがかない者、時々みがく者および1日1回みがく者の割合は減少傾向にある(表9−2図12)。

10 歯の寿命

 歯の平均寿命が最も長いのは男では下顎左および右側の犬歯で66.7年、女は下顎右側犬歯で66.2年となっている。また、最も短いのは男女とも下顎左側第2大臼歯で、男50.0年、女49.4年となっており、最も寿命の長い歯と短い歯では16年以上の差がみられる。
 年次推移でみると、いずれの歯種でも12年間で、歯の寿命が5〜9年伸びている(表10)。

(参考)
日本人の平均寿命(平成10年)男 77.16年、女 84.01年
(昭和62年)男 75.62年、女 81.39年

11 8020(ハチマルニイマル)について

 75〜79歳及び80〜84歳での1人平均現在歯数は、それぞれ9.01本(6.72本)及び7.41本(5.14本)となっていることから、80歳での1人平均現在歯数は、8.21本(5.93本)と推定される(単純平均)。
 また、75〜79歳及び80〜84歳で20本以上自分の歯を有する者の割合は、それぞれに17.5%(10.00%)及び13.0%(11.70%)であることから、80歳で自分の歯を20本以上有する者の割合は、15.25%(10.85%)と推定される(単純平均)。(表11図1314


問い合わせ先
健康政策局歯科保健課 担当 上條 電話03−3595−2205


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