平成13年2月26日(月)
1 職場におけるセクシュアルハラスメントへの対応の現状
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2 企業において実効ある防止対策が講じられるための指導の強化
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添付資料
厚生労働省雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 課 長 村 木 厚 子 均等業務指導室長 富 田 契 子 課長補佐 中 村 みどり 電 話 03-5253-1111 (内線 7843) 夜間直通 03-3502-6790
事例1 従業員に対する啓発が形式的にとどまっていた事例
(相談内容) A社の忘年会において、男性社員が女性社員の身体に接触するようなゲームが行われ、参加した女性社員は大変不快な思いをした旨の投書が労働局雇用均等室に寄せられた。 (労働局雇用均等室の対応) A社のセクシュアルハラスメント防止対策について聴取したところ、A社ではセクシュアルハラスメントを許さないという方針を就業規則に記載し、就業規則を改正した旨の通知を各部門あてに配付していた。また、相談・苦情には人事部が対応する旨を役員会等で口頭で説明していた。 問題となった忘年会については、例年、男女の身体が接触するようなゲームを行っていた事実があり、人事部主催により社員食堂で開催したものではあるが、自由参加であり、参加を断った女性社員もいたことから、参加した女性社員はそうしたゲームが行われることは承知の上であったと考えており、職場でのセクシュアルハラスメントには該当しないとの認識であった。 労働局雇用均等室は、A社に対し、問題となった忘年会は社内で開催され、人事部主催であれば参加を拒否しづらいと考えられることから、実質的に職場の延長線上のものと考えられること、社内にセクシュアルハラスメントに関する認識が薄いために女性が不快に感じるようなゲームが企画されたと考えられること、不快に感じた女性社員が社内で相談することができなかったことを指摘した上で、講じられているセクシュアルハラスメント防止対策が形式的であり、従業員に対する十分な周知・啓発が行われていないことから、実効ある防止対策を講じるよう助言した。 (会社の対応) 就業規則において、セクシュアルハラスメントを禁止し、懲戒処分の対象としていることを全従業員あて文書で通知し、再度徹底させた。また、従業員のセクシュアルハラスメントについての理解を深めるため、セクシュアルハラスメント防止マニュアルを購入し、管理職全員に配付した。さらに、管理職全員に対し啓発研修を行い、今後、一般従業員に対しても順次研修を行っていくこととした。 |
事例2 相談・苦情窓口が機能せず、適切な対応が行われなかった事例
(相談内容) B社に勤務する複数の女性社員は、男性管理職Cから、不必要に身体に接触する、性的な発言をする等のセクシュアルハラスメント行為をひんぱんに受けていたが、B社では、人事総務部門の管理職であるCを相談・苦情に対応する担当者として定めていたため、女性社員は相談することができず、Cの上司に、Cの行為をやめさせてほしいと訴えた。 Cは親会社から出向してきている幹部社員であり、B社はCについて人事権を持たないことから、上司は「再発させないよう十分気をつけて見守ることにするので、我慢してほしい」と女性社員に説明するにとどまった。 女性社員はこの対応に納得せず、労働局雇用均等室に相談した。 (労働局雇用均等室の対応) B社に対し、被害者に我慢を強いる等の対応は不適切であり、状況の悪化を招きかねないことから、放置せず真摯に対応することが重要であり、当事者からの事実確認を行った上で、必要に応じ席を離す等の雇用管理上の配慮や親会社への報告、就業規則等に基づく適正な処分等を行うよう助言、指導するとともに、権限をもつ親会社が必要な対応を行わない場合には、親会社に対しても行政指導を行う旨を説明した。また、利用しやすい相談・苦情窓口とするよう、担当者を複数とする、女性も担当者に加えるなどの工夫をするよう助言、指導した。さらに、B社はセクシュアルハラスメントを許さないという方針を就業規則に記載していたが、従業員に周知されていなかったので、周知するよう助言、指導した。 (会社の対応等) 上司が改めて複数の女性社員からの相談内容をもとにCに事情を聞いたところ、Cが事実を認めたため、社内のセクシュアルハラスメント防止対策の推進を担う人事総務部門の責任者としてあるまじき行為として強く反省を促すとともに、親会社に報告した。 親会社では、Cの出向を解いて親会社に異動させた上で、就業規則に基づき降格処分とした。 また、B社では、就業規則の該当部分を全従業員に配付した。さらに、今後は人事総務部門の女性社員を相談・苦情窓口とし、担当となった女性社員には相談対応のための研修を受講させた。 |
事例3 事実確認を行わず、拙速な対処をした事例
(相談内容) D社に勤務する男性社員Eは、日頃から女性社員の服装に対して「派手すぎる」「遊びに行くような格好だ」等の意見を述べることが多く、女性の部下Fは不快に感じていた。しばらくは黙って我慢をしていたが、会社の取引先企業に勤務する知人に不満を漏らしたところ、その知人がD社の役員に「女性の服装をとやかく言うのはセクシュアルハラスメントではないか」と話したことから、Eは事情聴取や弁明の機会が与えられないまま「セクシュアルハラスメントを行ったことで、取引先企業に対するD社の名誉を毀損したため、就業規則の懲戒事由に当たる」として、1か月分の解雇予告手当の支払いをもって解雇された。 Eは、復職は希望しないが、自分の行為がセクシュアルハラスメントであったのかを知りたいとして、労働局雇用均等室に相談した。 (労働局雇用均等室の対応) D社に対し、セクシュアルハラスメントが生じた場合には、迅速かつ正確に事実確認を行い、それに基づいて適正な対処をしなければならないことを指摘し、今後は迅速に事実確認し事案に応じて適切に対処できるようにするため、あらかじめ相談・苦情への対応手順や事後の対応方法を定めるよう助言、指導した。 また、D社では、社員あての通知により、セクシュアルハラスメントを許さない会社の方針と、相談・苦情窓口担当者の氏名を明らかにしていたが、セクシュアルハラスメントがどのようなものであるか、またその問題点等についての啓発は実施していなかったことから、各社員がセクシュアルハラスメントについて正しい認識をもつことができるようにするため、従業員研修を実施するよう助言した。 また、Eに対しては、相手が不快に感じているにもかかわらず職務遂行上必要のない性的な言動や性的とも取れる言動を行うことは、場合によってはセクシュアルハラスメントになりうることを説明した。 |
事例4 セクシュアルハラスメントかどうか判断が困難であるとして、対応しなかった事例
(相談内容) G社の女性社員Hは、上司Iから夕食に誘われ、同行した車中で拒否したにもかかわらず身体への不必要な接触をうけ、その後も執拗に交際を求められたため大変不快に感じ、社内の相談・苦情窓口担当者に相談した。G社では、当事者双方から事情聴取を行ったが、Hはセクシュアルハラスメントであると主張したものの、Iは恋愛関係であると主張し、言い分が対立したため、G社は「セクシュアルハラスメントかどうか判断できないので、双方で話し合い、決着がつかなければ裁判で解決するように。Iがセクシュアルハラスメントをしたと司法が判断した場合、Iに対する会社としての処分を行う」としてHの相談への対応を途中で止めてしまった。 Hはこの対応に納得せず、労働局雇用均等室に相談した。 (労働局雇用均等室の指導) G社に対し、たとえ個人的な好意から出た行為であっても、相手が不快に感じていればセクシュアルハラスメントであることを説明し、セクシュアルハラスメントかどうか微妙なケースであっても、放置すれば就業環境が害されるおそれもあることから、幅広く対応し、従業員への再度の意識啓発や、客観的にセクシュアルハラスメントを招きかねない勤務状況があればその改善を行うよう助言した。 また、IがHへの好意から交際を求めていたのに対し、Hが不快に思いながらも明確な抗議や拒否をしていなかったためにIが行為をエスカレートさせていったことがうかがえたため、G社に対し、管理職研修において「相手は、いやだと思っていても、職場の上下関係を考慮して拒否の意思表示ができない場合がある」といったことも啓発する必要があること、あわせて従業員研修や従業員の集まる機会等に「不快な性的言動を受けたときには拒否の意思をはっきり示すこと」についても説明するよう助言した。 (会社の対応) G社では、HがIと同じ部署で仕事をすることが耐えがたいと訴えたことから、両当事者が顔を合わせて仕事をすることのないよう、Iを他の部署に配置転換した。さらに、管理職研修や従業員研修において、セクシュアルハラスメントの被害者にも加害者にもならないための心がまえも含めて意識啓発を実施した。 |
事例5 セクシュアルハラスメントはなかったとして適正な対処を行わなかった事例
(事案の内容) 観光温泉ホテルJ社に勤務する女性社員Kが、タオルや浴衣を補充するため男性用の脱衣室に入ったところ、男性客から身体に接触される、性的な発言をされる等の行為をされたため、再び同様のことがあるかもしれないと思うと不安であるとして会社に相談した。 J社では、社内の手続きに沿って同僚女性等に対し事実確認のための調査を行ったが、K以外にはそうした相談をした者がいなかったため、Kが過剰に反応したもので、格式あるホテルの利用者はみな良識ある人物なのでセクシュアルハラスメントは起こりえないとしてそれ以上の対応を取らなかった。 Kは会社の対応に納得せず、労働局雇用均等室に相談した。 (労働局雇用均等室の対応) J社に対し、防止の対象となるセクシュアルハラスメントには、行為者が職場の上司・同僚だけではなく顧客によるものも含まれるものであることを説明し、男性用の脱衣室で女性社員が一人で作業するといった客観的にみてセクシュアルハラスメントが生じやすい労働環境は、問題を未然に防止するという観点から見直すよう助言した。 (会社の対応) J社は、女性労働者が安心して作業ができるよう、(1)脱衣室内の作業を女性が行う場合には必ず2人で作業すること、(2)勤務シフト上複数の女性がいない場合には、他の部署の男性社員が作業に加わること、(3)脱衣室内の作業が迅速に行えるよう、脱衣室内に「タオル・浴衣の交換のため従業員が入室することがありますがご協力ください」という表示を掲示することを決め、社内に徹底させた。 |
1. | 方針の明確化のための方法 「社内通達で明記」する企業や、「就業規則に規定」する企業が多いものの、「朝礼などで口頭で説明」した企業も3割に上っている。
方針の明確化の方法をみると、(1)社内通達で明記(42.7%)、(2)就業規則に規定(41.4%)、(3)朝礼などで口頭で説明(32.8%)、(4)社内報に掲載(30.8%)の順になっている。「朝礼などで口頭で説明」、「社内報に掲載」など、1回限り行われただけでは時間の経過とともに印象が薄れてしまうおそれがある方法でのみ対応している企業も多い。 (単位:% MA)
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2. | 意識改革・啓発のための方法 「管理職が各職場で注意喚起」した企業が多い。
従業員の意識改革・啓発のために講じた対策としては、「パンフレットや手引の配付」(37.3%)に次いで、「管理職が各職場で注意喚起」(36.1%)が多くなっており、従業員研修を実施している企業はそれほど多くない。 (単位:% MA)
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3. | 相談・苦情窓口の設置方法 「人事労務担当者が対応する」が圧倒的に多い。
相談・苦情の窓口の設置の方法については、「人事労務担当者が対応する」(66.9%)、「各職場の管理職が対応」(21.2%)が多くなっており、特別の相談窓口を設置している企業は少ない。 (単位:% MA)
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4. | 相談・苦情窓口の周知の方法 約1/4が「朝礼など口頭で説明」している。
相談・苦情窓口の従業員への周知をみると、「社内通達で周知」(51.5%)した企業が最も多いものの、「朝礼など口頭で説明」(25.0%)している企業も多い。 (単位:% MA)
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5. | 事後の対応方法 セクシュアルハラスメントが生じた場合は「人事労務責任者が対応する」と答えた企業が多い。
セクシュアルハラスメントが生じた場合の対応方法としては、「人事労務責任者が対応する」(69.6%)が最も多く、通常の組織体制の中で処理することとしている企業が多い。 (単位:% MA)
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「セクシュアルハラスメント防止の取組についてのアンケート」結果は、(財)21世紀職業財団ホームページ http://www.jiwe.or.jp/gyomu/21/kisya.html でご覧になれます。 |
職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策については、多くの企業において形式的に講じられてはいるものの、実際にセクシュアルハラスメントが生じた場合に、迅速かつ適切な対応が十分になされていない現状がみられる。
このため、厚生労働省では、各企業において実効ある防止対策が講じられ、事案への適切な対処が図られるようにするため、下記のとおり事業主への指導を強化するよう、雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長より都道府県労働局雇用均等室長あて指示した。
厚生労働大臣の指針 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントを許さないという方針を明確にし、労働者に対してその方針の周知・啓発をすることについて配慮しなければならない。 |
<指導内容>
厚生労働大臣の指針 事業主は、
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<指導内容>
厚生労働大臣の指針 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合、
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<指導内容>
セクシュアルハラスメントは、その対象となった女性労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけ、能力発揮を妨げるとともに、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題であり、社会的に許されない行為であることは言うまでもありません。
男女雇用機会均等法第21条において、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のために事業主は雇用管理上必要な配慮をしなければならないと規定されており、事業主が配慮すべき事項については、厚生労働大臣の指針において定められています。
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事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を明確化し、労働者に対してその周知・啓発をすることについて配慮しなければなりません。 |
就業規則・労働協約等の書面で方針を明確化しましょう |
セクシュアルハラスメントを許さないという事業主の方針を、社内報等で1回取り上げただけでは、時間がたつにつれて印象が薄れてしまいかねません。
セクシュアルハラスメントを許さないことを社内ルールとして従業員に徹底させるためには、就業規則等への記載や労働協約の締結等書面による明確化が効果的です。
「就業規則等の規定例」を参考に、書面での方針の明確化に努めてください。
また、社内の従業員研修のプログラムにセクシュアルハラスメント防止に関する講習を組み込む等、定期的な啓発研修の実施にも努めましょう。
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相談・苦情窓口は実質的に相談しやすいかどうか点検しましょう |
「相談窓口は設けているが、一件も相談が寄せられない」という場合、社内でセクシュアルハラスメントが起きていないからではなく、相談しづらい窓口となっている可能性があります。必要に応じ女性労働者の意見も聞きながら、相談担当者、相談窓口の設置場所等について十分検討し、安心して相談できる窓口を工夫しましょう。
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事後の対応方法をあらかじめ定めておきましょう |
セクシュアルハラスメントが発生した場合には、迅速・適切に対応しなければなりません。放置したり、対応を誤ったりすれば問題がこじれるだけではなく、再び同様の問題を引き起こすことになりかねません。
そのためには、問題が生じた場合の担当部署や対応の手順などを、あらかじめ明確に定めておく必要があります。
相談・苦情への対応の流れ
迅速な事実確認 |
相談を受けたときは、初期の段階での迅速な対応が必要です。放置しておくと、被害を拡大させてしまいます。
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事実に基づく適正な対処 |
セクシュアルハラスメントがあったと認められた場合には、必要に応じて加害者への制裁を含め、雇用管理上の措置をとることになります。
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参考
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再発防止のための取組 |
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就業規則等の規定例 |
◇就業規則等(服務規定)への記載例(方針の明確化)
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◇倫理規程の策定例(方針の明確化)
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◇就業規則等(懲戒規定)への記載例
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◇現在の就業規則の懲戒事由にセクシュアルハラスメントも含まれることを従業員に周知する場合の例
セクシュアルハラスメントを行った当社社員は、以下の就業規則の規程に基づき懲戒の対象になります。互いを尊重し、セクシュアルハラスメントのない快適な職場をつくりましょう。
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