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食調第 84号
平成12年12月25日

食品衛生調査会
 委員長 寺田 雅昭 殿

食品衛生調査会
バイオテクノロジー特別部会
部会長 首藤 紘一

組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査に関する部会報告書

 平成12年7月4日付厚生省発生衛第199号及び平成12年11月29日付厚生省発生衛第326号をもって諮問された食品及び添加物の安全性については、「組換えDNA技術応用食品等の安全性評価に関する分科会」において、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(平成12年5月1日 生衛発第825号―1 厚生省生活衛生局長通知。以下「審査基準」という。)に基づき審議してきたところである。
 今般、同分科会の検討結果を踏まえ、当部会において審議した結果を別記のとおり取りまとめたので報告する。


(別記)

1. 審議経過

 食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会(以下「部会」という。)においては、詳細な検討を行うため、専門家で構成された「組換えDNA技術応用食品等の安全性評価に関する分科会」(以下「分科会」という。)を設置し、分科会における検討をもとに、さらに部会において審議を行うこととした。分科会は平成12年1月22日から同年12月25日の間に計8回開催され、諮問された食品及び添加物の安全性について、審査基準に基づき審議を行った。
 分科会報告を受け、平成12年12月25日に開催された部会において、次の(1)及び(2)に該当する食品・添加物の安全性について、審査基準に基づき審議された。

(1) 平成12年7月4日付厚生省発生衛第199号をもって諮問された、
既に「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」(平成3年12月26日衛食第153号厚生省生活衛生局長通知。以下「評価指針」という。)で確認済の食品29品種及び添加物6品目のうち、申請が取り下げられた食品5品種(うち、3品種に関しては、その一部の系統)及び添加物1品目を除く食品27品種及び添加物5品目について

(2) 平成12年7月4日付厚生省発生衛第199号をもって諮問された新規申請の食品9品種及び添加物1品目並びに平成12年11月29日付厚生省発生衛第326号をもって諮問された新規申請の添加物2品目について

2.審議結果

(1) 平成12年7月4日付厚生省発生衛第199号をもって諮問された、
既に「評価指針」で確認済の食品27品種及び添加物5品目についての審議結果は次のとおりである(別紙1参照)

(1) 食品27品種(うち、5品種に関しては、その一部の系統)及び添加物3品目については、審査基準に基づき、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断された。
(2) 食品3品種(一部の系統)及び添加物2品目については、分科会において審議が継続されることとなった。
※ なお、食品5品種(うち、3品種に関しては、その一部の系統)及び添加物1品目については、申請が取り下げられた。

(1) 平成12年7月4日付厚生省発生衛第199号をもって諮問された新規申請の食品9品種及び添加物1品目並びに平成12年11月29日付厚生省発生衛第326号をもって諮問された新規申請の添加物2品目のうち、食品2品種及び添加物2品目については、審査基準に基づき、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断された。
 なお、食品7品種及び添加物1品目については、分科会において、審議が継続されることとなった。(別紙2参照)


別紙1

既に「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」で
確認済の食品29品種及び添加物6品目に係る報告書

 これまで、厚生省は「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に基づき、安全性の確認を行ってきたところであるが、既に安全性の確認が終了している29品種の食品及び6品目の添加物についても、再度、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(以下「審査基準」という。)に基づく審査を行うこととされていることから、今般、申請者から提出のあった追加資料に基づき審査を行ったところ、その結果は次のとおりとなった。

1.ラウンドアップ・レディ大豆、インガード・ワタ531系統及び757系統、とうもろこしT14を除く25品種の食品については、種子の保存に関する追加資料及び挿入遺伝子の近傍配列に関する追加資料に問題は認められず、また、他に問題となる新たな知見も認められなかった。
 キモシン2品目を除く3品目の添加物については、問題となる新たな知見は認められなかった。
 従って、
別添1の食品及び添加物については、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断される。

2.ラウンドアップ・レディ大豆については、種子の保存に関する追加資料には問題はなかったが、周辺配列に関する追加資料において挿入DNA断片の存在が明らかとなったので、さらなる審議を行った(別添2-1)。インガード・ワタ531系統についても、挿入DNA断片の存在が明らかとなったので、さらなる審議を行った(別添2-2)。この結果、上記2品種についても、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断される(別添3)

3.また、インガード・ワタ757系統については、種子の保存に関する追加資料には問題はなかったが、周辺配列に関する追加資料において新たな知見が認められたことから継続して検討されることとなった。また、とうもろこしT14、わたBXNcotton10215系統及びキモシン2品目については、追加資料の不足等により、継続して検討されることとなった(別添4)

※食品5品種(うち3品種に関しては一部の系統に限る。)及び添加物1品目については、今後、流通・販売される可能性がないこと等の理由から、申請者の申し出により、申請が取り下げられた(別添5)


別添1

● 安全性審査基準において、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断された食品25品種及び添加物3品目について

  対象品種 / 品目 商品名 性質 申請者 開発者
なたね ラウンドアップ・レディー・カノーラ
RRC73系統
除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
じゃがいも ニュー・リーフ・ジャガイモ
BT6系統
害虫抵抗性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company (米国)
とうもろこし BT11 害虫抵抗性 ノバルティス シード株式会社 Northrup King Company(米国)
なたね HCN92 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 AgrEvo Canada Incorporated(カナダ)
なたね PGS1 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
とうもろこし Event 176 害虫抵抗性 ノバルティス シード株式会社 Ciba-Geigy Corporation(米国)
とうもろこし イールドガード・トウモロコシMon810 害虫抵抗性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
じゃがいも ニューリーフ・ジャガイモ[スーペリア品種]SPBT02-05系統 害虫抵抗性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company (米国)
とうもろこし T25 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Hoechst Schering AgrEvo GmbH(ドイツ)
10 なたね PHY14、
PHY35
除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
11 なたね PGS2 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
12 なたね PHY36 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
13 なたね T45 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Hoechst Schering AgrEvo GmbH(ドイツ)
14 わた ラウンドアップ・レディー・ワタ 1445系統 除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
15 わた BXN cotton
10211、10222系統
除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Calgene Incorporated(米国)
16 なたね MS8RF3 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
17 なたね HCN10 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Hoechst Schering AgrEvo GmbH(ドイツ)
18 なたね MS8 除草剤耐性
雄性不稔性
アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
19 なたね RF3 除草剤耐性
稔性回復性
アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
20 なたね WESTAR-
Oxy-235
除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Rhone-Poulenc Agrochimie(カナダ)
21 てんさい T120-7 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Hoechst Schering AgrEvo GmbH(ドイツ)
22 とうもろこし DLL25 除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Dekalb Genetics Corporation(米国)
23 とうもろこし DBT418 害虫抵抗性
除草剤耐性
日本モンサント株式会社 Dekalb Genetics Corporation(米国)
24 なたね PHY23 除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
25 とうもろこし ラウンドアップ・レディー・トウモロコシ
GA21系統
除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
α-アミラーゼ TS-25 生産性向上 ノボザイムズ ジャパン株式会社 ノボザイムズA/S(デンマーク)
リボフラビン リボフラビン(ビタミンB2) 生産性向上 日本ロシュ株式会社 F.Hoffmann-LaRoche(スイス)
α-アミラーゼ BSG-アミラーゼ 生産性向上 ノボザイムズ ジャパン株式会社 ノボザイムズA/S(デンマーク)


別添2―1

追加報告書

品種: 大豆(商品名:「ラウンドアップ・レディー大豆」)
性質: 除草剤(グリホサート)耐性
申請者: 日本モンサント株式会社
開発者: Monsanto Company

 ラウンドアップ・レディー大豆(40-3-2系統)については、平成12年5月に、その分子特性に関する追加資料が申請者より提出されたことから、その内容について審査したところ、結果は次のとおりである。

 当初、ラウンドアップ・レディー大豆には、E35Sプロモーターの一部、CTP、CP4EPSPS及びNOS3末端を含む挿入DNA断片が挿入されているとされていたが、その後の詳細な調査により、CP4EPSPS遺伝子発現カセットのNOS3'末端に隣接して250bpのCP4EPSPS遺伝子断片が存在していること、また、72bpのCP4EPSPS遺伝子断片を含むもう一つの挿入遺伝子断片が存在していることが新たな知見として確認された。
 このことに関し、CP4EPSPS遺伝子断片を含む新たな転写産物が生じないことをノーザンブロット分析及び更に感度の高いRT-PCR分析により検討したところ、増幅産物は検出されなかった。
 また、挿入遺伝子の近傍ゲノム配列について、推定されるポリペプチドの相同性検索を行った結果、転写が起こる可能性は低く、推定ポリペプチドに既知の毒素蛋白質等との相同性はなかった。
 さらに、ウエスタンブロット分析の結果、新しいタンパク質は出来ていないことが確認されている。

 以上のことから、新たな知見であるこれら2つの遺伝子断片の存在は、これまでのラウンドアップ・レディー大豆の安全性評価に特に影響するものではなく、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断される。


別添2−2

追加報告書

品種: わた(商品名:「インガード・ワタ(531系統)」)
性質: 除草剤(グリホサート)耐性
申請者: 日本モンサント株式会社
開発者: Monsanto Company

 インガード・ワタ(531系統)については、平成12年12月に、その分子特性に関する追加資料が申請者より提出されたことから、その内容について審査したところ、結果は次のとおりである。

 当初、インガード・ワタ(531系統)には、ワタゲノムをはさんで2つの挿入遺伝子(Cry1Ac遺伝子カセット及び7S 3'転写ターミネーターに結合したCry1Ac遺伝子の3'末端断片)が挿入されているとしていたが、その後、PCR, DNAシークエンス、サザンブロット分析等を用いた詳細な解析により、離れて存在していると考えられた上記2つの挿入遺伝子は隣接しており、Cry1Ac遺伝子の3'末端断片の挿入遺伝子が当初の分析結果とは逆向きに存在しているということ、また、245bpの7S 3'転写ターミネーター断片が存在していることが新たな知見として確認された。
 この知見をうけて遺伝子の発現機序を解析したところ、当初の結論と違わず、Cry1Ac遺伝子カセットから完全長のCry1Ac蛋白質が発現されることにより、植物体に鱗翅目昆虫に対する抵抗性が付与されることを確認した。また、この遺伝子断片が新たなmRNA及び蛋白質を発現する可能性について検討したところ、この245bpの7S 3'断片は、DNA断片の非翻訳領域であること、さらに、その断片の5'末端及び3'末端の近傍配列を決定した結果、mRNAの転写開始に必要な5'プロモーターが存在しないこと、翻訳に必要なDNA配列を欠いていること等から、この遺伝子断片からは転写、翻訳が起こる可能性はなく、新たな蛋白質は発現しないと結論された。

 以上のことから、新たな知見である遺伝子断片の存在は、これまでのインガード・ワタ(531系統)の安全性評価において、特に影響するものではなく、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断される。


別添3

● 追加資料により新たな知見が得られたため、さらなる審議を行った結果、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断される食品2品種(うち1品種は、その一部の系統)について

  対象品種 / 品目 商品名 性質 申請者 開発者
大豆 ラウンドアップ・レディー・大豆40-3-2 除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
わた インガード・ワタ
531系統
害虫抵抗性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)


別添4

● 審議が継続されることとなった食品3品種(但し、一部の系統のみ)及び添加物2品目について

  対象品種 / 品目 商品名 性質 申請者 開発者
わた インガード・ワタ757系統 害虫抵抗性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
とうもろこし T14 除草剤耐性 アベンティス クロップ サイエンス ジャパン株式会社 Hoechst Schering AgrEvo GmbH(ドイツ)
わた BXNcotton
10215系統
除草剤耐性 アベンティス クロップ サイエンス ジャパン株式会社 CaigeneIncorporated(米国)
キモシン マキシレン 生産性向上 株式会社ロビン ギスト・ブロカーデス(オランダ)
キモシン カイモゲン 生産性向上 株式会社野澤組 クリスチャンハンセン社(デンマーク)


別添5

● 申請者の申し出に基づき、申請が取り下げられた食品5品種(うち、3品種に関しては、その一部の系統)及び添加物1品目について

  対象品種 / 品目 商品名 性質 申請者 開発者
じゃがいも ニューリーフ・ジャガイモ
BT10、12、16、17、18、23系統
害虫抵抗性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company.(米国)
じゃがいも ニューリーフ・ポテト[スーペリア品種]SPBT02-07、[アトランティック品種]ATBT04-06,04-30,04-31、04-36系統 害虫抵抗性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company.(米国)
わた BXN cotton
10224系統
除草剤耐性 アベンティス クロップ サイエンス ジャパン株式会社 Calgene Incorporated(米国)
トマト フレーバーセーバートマト 日持ち性の向上 麒麟麦酒株式会社 Calgene Incorporated(米国)
わた Bollgard with
BXN Cotton
31807系統
害虫抵抗性
除草剤耐性
日本モンサント株式会社 Calgene Incorporated(米国)
キモシン カイマックス 生産性向上 株式会社野澤組
(ファイザー株式会社)
ファイザーインク(米国)


別紙2

平成12年7月4日付厚生省発生衛第199号をもって諮問された新規申請の食品9品種及び添加物1品目並びに平成12年11月29日付厚生省発生衛第326号をもって諮問された新規申請の添加物2品目の安全性審査に係る報告書

(1) 次に示す食品2品種及び添加物2品目については、安全性審査基準に基づき審査を行ったところ、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断された。

  対象品種/品目 商品名 性質 申請者 開発者
大豆 260-05系統 高オレイン酸形質 デュポン株式会社 Optimum Quality Grains L.L.C.(米国)
とうもろこし ラウンドアップ・レディー・トウモロコシNK603系統 除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
リパーゼ SP388 生産性向上 ノボザイムズ ジャパン株式会社 ノボザイムズA/S(デンマーク)
α-アミラーゼ TMG-アミラーゼ 生産性向上 ノボザイムズ ジャパン株式会社 ノボザイムズA/S(デンマーク)

※ 上記の食品2品種及び添加物2品目についての各報告書は別添1〜4を参照。

(1) 次に示す食品7品種及び添加物1品目については、分科会において審議が継続されることとなった。

  対象品種/品目 商品名 性質 申請者 開発者
じゃがいも ニューリーフ・プラス・ジャガイモ 害虫抵抗性
ウイルス抵抗性
日本モンサント株式会社 Monsanto Company(米国)
とうもろこし CBH351 害虫抵抗性
除草剤耐性
アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Plant Genetic Systems(ベルギー)
大豆 A2704-12、
A5547-127
除草剤耐性 アベンティス クロップサイエンス ジャパン株式会社 Hoechst Schering AgrEvo GmbH(ドイツ)
パパイヤ 55-1 ウイルス抵抗性 有限会社マック(パパイヤ管理委員会) Cornell University,University of Hawaii,The Upjohn Company (米国)
てんさい ラウンドアップ・レディー・テンサイ77系統 除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company.(米国)
てんさい ラウンドアップ・レディー・テンサイH7-1系統 除草剤耐性 日本モンサント株式会社 Monsanto Company.(米国)
とうもろこし Bt スイートコーン 害虫抵抗性及び
除草剤耐性
ノバルティスシード株式会社 Monsanto Company.(米国)
プルラナーゼ Optimax 生産性向上 ジェネンコア・インターナショナル・インク及び
ジェネンコア・インターナショナル・ジャパン・リミティッド日本支店
Genencor International,Inc.(米国)


別添1

報告書

品種: 大豆(商品名:「高オレイン酸大豆260-05系統」)
性質: 高オレイン酸形質
申請者: デュポン株式会社
開発者: Optimum Quality Grains, L.L.C. 社

 高オレイン酸大豆260-05系統(以下「高オレイン酸大豆」という。)について開発者が行った安全性評価が、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(以下「審査基準」という。)に適合しているか否かについて審査した。その結果は次の1から3のとおりである。
 また、当該大豆が高オレイン酸形質であることについて、食品として留意すべき事項は次の4のとおりである。

1 申請された食品の概要

 大豆油は食用油として最もよく利用されているが、多価不飽和脂肪酸が多く含まれるため、安定性が低い。そこで一般に、揚げ物など高い熱安定性が要求される場合には、水素を添加することにより油の安定性の向上を図っている。
 今回申請された高オレイン酸大豆は、大豆の脂肪酸組成について、リノール酸やリノレン酸といった多価不飽和脂肪酸の含有量を減らし、代わりにモノ不飽和脂肪酸であるオレイン酸を増やしている。したがって、この高オレイン酸大豆から得られた油は、多価不飽和脂肪酸が少ないことから、水素を添加しなくても、油の安定性を保つことができる。
 また、オレイン酸はLDLコレステロールを下げ、HDLコレステロールを低下させない作用があることが報告されるなどの有用性が示されている。
 当該高オレイン酸大豆には、GmFad2-1遺伝子、GUS遺伝子、ampr遺伝子及びdapA遺伝子が挿入されている。
 それぞれの挿入遺伝子の機能は後述の3の(4)の2)のbのとおりである。

2 審査結果

 審査基準の第2章第1の各項に規定される資料(1.遺伝的素材に関する資料 2.広範囲な人の安全な食経験に関する資料 3.食品の構成成分等に関する資料及び4.既存種と新品種との使用方法の相違に関する資料)から判断した結果、当該高オレイン酸大豆は、

(1) その宿主は既存の大豆と同じであり、導入遺伝子も明確である、

(2) 当該高オレイン酸大豆の成分は、大豆由来の遺伝子を導入することによりオレイン酸の含有量が多くなっている点、リノール酸、リノレン酸が少なくなっている点及びパルミチン酸の含有量も若干低下している点が異なっている以外は、主要構成成分内の脂肪酸としての組成比及び構成脂肪酸は既存の大豆とほぼ同じである、

(3) オレイン酸はもともと大豆に含まれている成分であり、毒性物質や抗栄養素とは見なされない、
ことから、当該食品と既存のものが全体として食品としての同等性を失っていないと判断し、当該高オレイン酸大豆の食品としての安全性を評価するために、既存の食品を比較対象として用いる方法が適用できると判断した。そこで、既存の食品との比較において、審査基準の第2章第2以下の各事項に掲げられた基準に沿って審査を行った。

(1) 組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項

 高オレイン酸大豆の食品としての使用方法は、既存の大豆を油の原料として用いるのと相違ないが、唯一、当該高オレイン酸大豆から作られた油は多価不飽和脂肪酸が少ないため、高温下で安定であることから、通常の大豆油のように水素添加をする必要がない点が異なる。
 なお、脱脂大豆については、通常の大豆の場合と相違ない。

(2) 宿主に関する事項

 高オレイン酸大豆の宿主は、大豆(Glycine max L. Merr.の早生グループIIに由来する大豆品種A2396)である。
 大豆は、主に食用油の原料として利用され、脱脂大豆は高蛋白食品や飼料として利用される。
 食品として、油以外に、豆腐・味噌など様々な加工食品の原料として幅広く利用されており、広範囲なヒトの安全な食経験がある。大豆はアレルゲンを含むことが報告されており、また、トリプシンインヒビター、フィチン酸、ラフィノース、スタキオース等の抗栄養素とイソフラボンの存在が知られている。

(3) ベクターに関する事項

 高オレイン酸大豆の作出にはプラスミドpBS43及びプラスミドpML102が用いられた。
 pBS43は、pBR322由来のpGB-9zf(-)に由来し、pML102はpBR322由来のpTZ18Rに由来する。
 pBS43及びpML102に存在する全ての遺伝子は、その特性が明らかとなっており、既知の有害塩基配列を含まない。また、これらはアンピシリン耐性プラスミドであり、ampr遺伝子を含むが、このampr遺伝子は、大腸菌本来のプロモーターの制御下にあり、植物内では発現しない。また、これらのプラスミドは宿主依存性が高いプラスミドに由来する複製開始領域をもつため、他の微生物への伝達を可能とするいかなる配列も持たず、伝達性はない。
 pBS34には、GmFad2-1遺伝子発現カセット(GmFad2-1遺伝子及びその発現を調節する遺伝子領域)と、GUS遺伝子発現カセット(GUS遺伝子及びその発現を調節する遺伝子領域)が連結したものが含まれており、これらが予想された順序で正しく配列されていることがプラスミド制限酵素分析等によって確認されている。
 pML102には、dapA遺伝子発現カセット(dapA遺伝子及びその発現を調節する遺伝子領域)が含まれており、これらが予想された順序で正しく配列されていることがプラスミド制限酵素分析等によって確認されている。

(4) 挿入遺伝子及び遺伝子産物に関する事項

1) 供与体
 高オレイン酸大豆に導入された遺伝子の供与体は、それぞれ、GmFad2-1遺伝子が大豆(Glycine max)に由来し、GUS遺伝子及びampr遺伝子がE.coliに由来し、dapA遺伝子がCorynebacterium glutamicumに由来する。
  高オレイン酸大豆に導入されたいずれの遺伝子も本大豆中で発現しておらず、また、GmFad 2-1遺伝子は長い食経験のある大豆に由来する。

2) 挿入方法
 pBS43及びpML102の大豆細胞への導入には、パーティクルガンが用いられている。

3) 構造に関する事項
 高オレイン酸大豆には、GmFad2-1遺伝子(β-コングリシニンプロモーター/GmFad 2-1/フォゼオリン3'ターミネーター)、GUS遺伝子(35Sプロモーター/GUS/NOS3'ターミネーター)、ampr遺伝子及びdapA遺伝子(Kit3プロモーター(不完全)/dapA/Kit3 3'ターミネーター)が挿入されている。
 また、導入された遺伝子の構造は明らかにされており、既知の有害塩基配列は含まれていない。

4) 性質に関する事項
 GmFad2-1遺伝子は、オレイン酸のδ-12(n-6)位に第2の二重結合を付加し、リノール酸を生成させる酵素をコードしている。外来のGmFad2-1遺伝子を大豆に導入することにより、もともと大豆に存在する内因性のGmFad2-1遺伝子との相互作用により、双方のGmFad2-1遺伝子の発現が抑制されるという現象(「ジーン・サイレンシング」)が起きる。その結果、リノール酸の生合成反応を触媒するδ-12デサチュラーゼが産生されず、本生合成反応が阻害されることから、大豆中のオレイン酸含有が増加する。R0世代においては、GmFad2-1遺伝子発現カセット(非発現)導入遺伝子座をヘテロで持っていることから、種子選抜のため、自家受粉を繰り返してホモ化を行い、R1及びR2のホモ化個体を種子として選抜している。
 GUS遺伝子は、β-グルクロニダーゼ酵素をコードしている。この遺伝子は、形質転換大豆当代を選抜するために行われる比色分析のマーカーとして用いられている。なお、遺伝子導入世代(R0世代)で発現する1コピーのGUS遺伝子発現カセットも、ホモ化過程で分離・除去されている。このため、R1及びR2世代の1コピーの完全なGUS遺伝子発現カセット及び1コピーの不完全なGUS遺伝子は発現していないことが確認されている。
 ampr遺伝子は、E. coliにアンピシリン耐性を付与する遺伝子である。形質転換大腸菌の選抜に用いられるが、植物内ではプロモーターが存在しないことより発現していないことが確認されている。
 dapA遺伝子は、リシン生合成経路の第一段階の反応を担う酵素、ジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードするが、リシン蓄積による制御の影響を受けず、その結果、遊離リシンの蓄積を促す。
 なお、この遺伝子は、高リシンの大豆の開発を試みて挿入されたものであるが、本遺伝子のプロモーター部分の一部が欠落していることにより、大豆中で発現していないことが確認されている。

5) 純度に関する事項
 挿入DNAに含まれる遺伝子は、塩基配列が全て決定されており、その特性も明らかになっている。また、宿主に導入された遺伝子は、それらの特性が明らかとなった遺伝子のみである。

6) 安定性に関する事項
 R1又はR2世代とR6世代の種子サンプルを用いたサザンブロッティング分析の比較により、GmFad2-1遺伝子発現カセット及びdapA遺伝子発現カセットが6世代にわたり安定に維持されていることが確認されている。また、R4からR7世代の脂肪酸分析により、高オレイン酸形質が後代に安定的に受け継がれていることが証明されている。
 また、R4、R5及びR6世代の種子サンプルを用いたアミノ酸分析により、dapA遺伝子が後代においても発現・機能していないことが証明されている。

7) コピー数に関する事項
 R1及びR2世代に、2コピーの完全なGmFad2-1遺伝子発現カセット、1コピーの完全なGUS遺伝子発現カセット、1コピーの不完全なGUS遺伝子、2コピーの完全なampr遺伝子、1コピーの不完全なampr遺伝子及び1コピーの不完全なdapA遺伝子発現カセットが導入されている。
 なお、遺伝子導入世代(R0世代)において、1コピーの完全なGUS遺伝子発現カセットが導入・発現していたが、ホモ化過程で分離・除去されている。
 また、挿入されたDNAの近傍における植物(組換え体)のDNA配列は明らかとなっている。

8) 発現部位、発現時期、発現量に関する事項
 外来及び内因性のGmFad2-1遺伝子は発現しておらず、このことは、GmFad2-1mRNAをプローブとしたノーザンブロッティング分析により確認されている。また、大豆中の脂肪酸組成の分析により、大豆中のオレイン酸が脂肪酸組成の80%以上含まれていたことからも、ジーン・サイレンシングにより内因性及び外来のGmFad2-1遺伝子のいずれも発現していないことが証明されている。
 GUS遺伝子については、遺伝子導入世代(R0世代)において発現していた1コピーの完全なGUS遺伝子発現カセットは、ホモ化過程で分離・除去されている。このため、R1及びR2世代に導入されている1コピーの完全なGUS遺伝子発現カセット及び1コピーの不完全なGUS遺伝子は、発現していないことが確認されている。従って、当該高オレイン酸大豆ではこの遺伝子による蛋白質(β-グルクロニダーゼ酵素)は発現していない。
 また、ampr遺伝子が発現していないことが、βラクタマーゼ活性測定(DeBoerらの方法に準拠)により証明されている。
 さらに、dapA遺伝子が発現していないことが、dapAmRNAをプローブとしたノーザンブロット分析により証明されている。また、大豆のアミノ酸組成分析により、リシンの量に変化がないことが確認されている。

9) 抗生物質耐性マーカーの安全性に関する事項
 高オレイン酸大豆には、抗生物質耐性マーカー遺伝子としてampr遺伝子が挿入されているが、この遺伝子は前述のとおり、微生物のプロモーターの制御下にあり、植物中では発現しないことが、β-ラクタマーゼ活性分析により証明されている。

10) オープンリーディングフレームの有無並びにその転写及び発現の可能性に関する事項
 挿入DNA にはGmFad2-1遺伝子、GUS遺伝子、dapA遺伝子及びampr遺伝子の発現に係るオープンリーディングフレームあるいはその一部が含まれているが、前述のとおり、R1及びR2世代以降の世代(商品化ライン)では、これらの遺伝子は発現していないことがノーザンブロット分析により確認されている。

(5) 組換え体

1) 組換えDNA 操作により新たに獲得された性質に関する事項
 高オレイン酸大豆に導入された性質は、モノ不飽和脂肪酸であるオレイン酸含有量が約80%(既存の大豆のオレイン酸含有量は17-30%)となっており、この大豆から得られた油は、水素添加をしなくても高い熱安定性を有している点である。

2) 遺伝子産物のアレルギー誘発性に関する事項
 オレイン酸大豆では、導入遺伝子による新たな蛋白質は産生されていないことが確認されているが、GmFad2-1遺伝子に連結したβ-コングリシニンプロモータと大豆内因性β-コングリシニン遺伝子の相互作用(ジーン・サイレンシング)により、β-コングリシニン量が低下し、グリシニン量が増加している。これらは、いずれも大豆アレルギー患者のIgE抗体と結合することが報告されていることから、既存の大豆に比較して当該大豆のアレルギー誘発性が有意に変化していないことを確認するため、大豆蛋白質を抽出し、大豆アレルギー患者の血清を用いてRAST阻害試験及びSDS-PAGEにより大豆蛋白を分離した後、IgE結合能を調べた結果、アレルギー反応について高オレイン酸大豆と親品種との間に有意な差がないことが示されている。

3) 遺伝子産物の毒性に関する事項
 前述3の2)のfのとおり、高オレイン酸大豆には導入遺伝子による新たな蛋白質は産生されていないことが確認されている。

4) 遺伝子産物の代謝経路への影響に関する事項
 前述3の2)のfのとおり、高オレイン酸大豆には導入遺伝子による新たな蛋白質は産生されていないことが確認されているので、遺伝子産物の代謝経路への影響は考えられない。

5) 宿主との差異に関する事項
 高オレイン酸大豆の構成成分の分析を行った結果、目的としたオレイン酸の含量が高められ、代わりに多価不飽和脂肪酸の含有量が減少したことが確認され、その脂肪酸組成には既存の大豆との有意な差が認められた。
 オレイン酸は、LDLコレステロールを下げ、また、HDLコレステロールを低下させないよう作用することが報告されるなどの有用性が示されている。
 また、大豆種子を供試して行った構成成分の分析の結果、種子中総脂肪酸含有量も含めて、主要構成成分(蛋白質、脂質、炭水化物、繊維質、灰分)、アミノ酸組成、種子中貯蔵蛋白質、ミネラル、ビタミン、トコフェロール、各種抗栄養素(トリプシンインヒビター、フィチン酸、ラフィノース、スタキオース)、イソフラボン、クメストロールについて高オレイン酸大豆と既存の親品種との間に生物学的に有意な差は認められないか、文献値の範囲内であった。
 β―コングリシニンとグリシニンの比率については、β―コングリシニンの減少によりグリシニン量が増加しているが、その比率の相違は既存の大豆で認められる変動の範囲内であることが示されている。
 脂肪酸組成に関しては、前述のとおり、既存の大豆と比較して、モノ不飽和脂肪酸であるオレイン酸含有量が80%以上と多く、リノール酸やリノレン酸といった多価不飽和脂肪酸の含有量が少なくなっているが、ヒトの安全な摂取に問題はないと考えられる。なお、親品種で認められないリノール酸異性体が総脂肪酸含有量の1%未満存在しているが、これは、デチュラーゼの作用によりオレイン酸からリノール酸異性体が生成したものであると推察されている。本異性体は、バターや部分的に水素添加した植物油等多くの食用油からも総脂肪酸の0.4〜3.4%の濃度で検出され、ヒトの食生活にとって問題となるものではない。

6) 外界における生存及び増殖能力に関する事項
 高オレイン酸大豆の圃場試験は米国24カ所及びプエルトリコ1カ所で行われているが、生存、増殖能力に関し、既存の大豆と同等である。

7) 組換え体の生存及び増殖能力の制限に関する事項
 高オレイン酸大豆の生存、増殖能力は非組換え品種と同等であることが、米国及びプエルトリコで行った圃場試験で示されており、当該高オレイン酸大豆の生存・増殖能力の制限に関し、既存の大豆と同等である。

8) 組換え体の不活化法に関する事項
 物理的防除(耕耘)や化学的防除(感受性を示す除草剤の散布)など、大豆を枯死させる従来の方法によって不活化される。また、大豆食品の加工工程による熱処理により不活化される。

9) 諸外国における認可・食用等に関する事項
 高オレイン酸大豆は、米国において、1997年3月に米国食品医薬品局(FDA)により食品としての安全性が確認された。

10) 作出、育種及び栽培方法に関する事項
 高オレイン酸大豆と既存の大豆との栽培方法の違いはなく、すべての点で同等である。

11) 種子の製法及び管理方法に関する事項
 高オレイン酸大豆の製法及び管理方法については、当該大豆がオレイン酸を多く含み、その油が熱に安定性を有することから、こうした性質を持たない通常の大豆と混合しないよう、別途管理される。また、各世代の種子は温度4.2℃、湿度37%の条件下で保存されている。

3 基準適合性に関する結論

 以上のことから、デュポン株式会社から申請された高オレイン酸大豆については、申請に際して提出された資料を審査基準に基づき審査した結果、人の健康を損なうおそれがあるとは認められないと判断される。

4 留意事項

 当該大豆は、一価の不飽和脂肪酸であるオレイン酸含有量が高まっていることにより、相対的に多価不飽和脂肪酸であるリノール酸やリノレン酸の量が低くなっている。現在の日本人の食生活から考えて、本大豆及び大豆油等の加工品を摂食することにより、食品全体からのリノール酸やリノレン酸摂取量が急激に低くなるわけではなく、また、既存の大豆が全て高オレイン酸大豆に置き換わったとしても、総脂肪酸摂取量を増加させない限り、特に問題にはならないと推測される。しかしながら、大豆が一般に、我が国の食生活において大量に消費されていることを鑑みれば、将来的に健康影響の可能性も考慮する必要があるかもしれない。
 従って、審査基準には適合しているものの、当該大豆及びこの加工品が一般の大豆/大豆加工品に比べて脂肪酸成分含量が異なっていることを示す情報が自主的に消費者に提供されるよう、何らかの形で考慮されることが望ましい。


別添2

報告書

品種: とうもろこし
(商品名:「ラウンドアップ・レディー・トウモロコシNK603系統」)
性質: 除草剤(グリホサート)耐性
申請者: 日本モンサント株式会社
開発者: Monsanto Company

 ラウンドアップ・レディー・トウモロコシ NK603系統(以下「NK603」という。)について開発者が行った安全性評価が、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(以下「審査基準」という。)に適合しているか否かについて審査した。その結果は次のとおりである。

1 申請された食品の概要

 NK603は、除草剤「グリホサート(商品名:ラウンドアップ、一般名:N-ホスホノメチルグリシン、農林水産省:農薬登録番号14360号、米国ChBical Abstract Service(CAS) 登録番号:1071-83-6、38641-94-0)」の影響を受けずに生育できる性質が付与されている。
 グリホサートは、植物や微生物に特有の芳香族アミノ酸合成経路(シキミ酸経路)中の酵素の一つである5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(以下「EPSPS」という。)と特異的に結合し、その活性を阻害する。その結果、ほとんどの植物は生育に必要なアミノ酸を合成できずに枯死する。しかし、NK603は、グリホサート存在下でも機能するCP4EPSPS蛋白質を発現する遺伝子(以下「CP4EPSPS遺伝子」という。)を導入したので、グリホサートが散布されても枯死せずに生育することができる。

2 審査結果

 審査基準の第2章第1の各項に規定される資料(1.遺伝的素材に関する資料 2.広範囲な人の安全な食経験に関する資料 3.食品の構成成分等に関する資料及び4.既存種と新品種との使用方法の相違に関する資料)から判断した結果、当該食品と既存のものが全体として食品としての同等性を失っていないと客観的に判断し、当該NK603の食品としての安全性を評価するために、既存の食品を比較対象として用いる方法が適用できると判断した。そこで、既存の食品との比較において、審査基準の第2章第2以下の各事項に掲げられた審査基準に沿って審査を行った。

(1)組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項

 NK603には、グリホサート存在下でも機能するCP4EPSPS蛋白質を発現する遺伝子が導入されているので、栽培期間中にグリホサートが使用できる。この点以外、その栽培方法、利用目的、利用方法は従来のとうもろこしと変わらない。

(2)宿主に関する事項

 とうもろこし(デント種)は、主に飼料用として利用されるが、食品としてもコーン油や澱粉等の製造に幅広く利用されており、広範囲なヒトにおいて安全な食経験がある。とうもろこしのアレルギーは比較的希であり、有害生理活性物質の産生は知られていない。

(3)ベクターに関する事項

 NK603の作出には、プラスミドPV-ZMGT32を制限酵素MluIで切断・精製後、CP4EPSPS遺伝子発現カセットのみを含むDNA断片(以下、PV-ZMGT32Lという。)が用いられ、nptII遺伝子が導入されないよう工夫されている。プラスミドPV-ZMGT32は、それぞれが1コピーのCP4EPSPS遺伝子を含む2つの植物遺伝子発現カセットを含み、そのサイズは9,307bpである。
 PV-ZMGT32に存在する全ての遺伝子は、その特性が明らかとなっており、既知の有害塩基配列を含まない。また、伝達を可能とする配列を含まないので、伝達性はない。

(4)挿入遺伝子及びその遺伝子産物に関する事項

1)供与体に関する事項
 NK603に導入されたCP4EPSPS遺伝子は、Agrobacterium sp.CP4株から単離した遺伝子に改変を加えたものである。
 Agrobacterium sp.は土壌中及び植物の根圏に存在する微生物類の一つであり、CP4EPSPS遺伝子には、植物の芳香族アミノ酸生合成の場である葉緑体中で直接機能できるように葉緑体輸送ペプチド配列(CTP2)が組み込まれれている。
 NK603に導入された遺伝子でAgrobacterium sp.CP4株に由来するものはCP4EPSPSのみである。 CP4EPSPS遺伝子及びその発現蛋白質であるCP4EPSPS蛋白質の配列は明らかになっており、これまでも、ヒトは、安全な食経験のある植物や微生物由来のEPSPS蛋白質を摂取してきている。
 なお、発現蛋白質であるCP4EPSPS蛋白質については、すでにラウンドアップ・レディー・大豆、カノーラ、ワタにおいて、食品としての安全性が、厚生省の安全性指針に適合していることを確認済みである。また、米国食品医薬品局(FDA)においても食品及び飼料としての安全性が承認されている。
2)遺伝子の挿入方法に関する事項
 PV-ZMGT32をとうもろこしの不定胚にパーティクルガン法で導入した。形質転換細胞をグリホサートを含む培地で培養し、組換え体の選抜を行った後、植物体を再生し、CP4EPSPS遺伝子の発現の有無を解析した。導入された遺伝子は、メンデル型の単一優性遺伝子として発現したことから、トウモロコシのゲノムに挿入されたと結論された。

3)構造に関する事項
 NK603のゲノムには1コピーのPV-ZMGT32L及び217bpのP-ractlエンハンサー領域断片が挿入され、このDNAのサイズは約7kbであると推測される。なお、既知の有害塩基配列は含まれていない。

4)性質に関する事項
 CP4EPSPS遺伝子は、グリホサート存在下でも阻害を受けずに機能するCP4EPSPS蛋白質を発現することにより、グリホサートの除草効果を妨げる。

5)純度に関する事項
 遺伝子導入に用いたプラスミドPV-ZMGT32は塩基配列が全て決定されており、その特性も明らかになっている。また、宿主に導入された遺伝子は、それらの特性が明らかとなった遺伝子のみである。

6)安定性に関する事項
 NK603を9世代について戻し交配し、各世代のグリホサートに対する耐性の有無を調べたところ、CP4EPSPS遺伝子の分離の実測値と期待値との間には有意差が見られなかった。
 またサザンブロット分析によりCP4EPSPS遺伝子が5世代目においても確認されており、CP4EPSPS遺伝子が単一の優性遺伝子として安定して後代に存在していることが示された。

7)コピー数に関する事項
 NK603には1コピーのPV-ZMGT32L及び217bpのP-ractlエンハンサー領域断片が挿入されている。

8)発現部位、発現時期、発現量に関する事項
 CP4EPSPS蛋白質の発現量は、8カ所の圃場から採取した試料をELISA法を用いて分析した平均値として、生組織重量1g あたり茎葉で25.6μg 、穀粒では10.9μg である。
9)抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性に関する事項
 NK603には、抗生物質耐性マーカー遺伝子は挿入されていない。

10)オープンリーディングフレームの有無並びにその転写及び発現の可能性に関する事項
 外来のオープンリーディングフレームは、CP4EPSPS蛋白質の発現に係るもののみであり、このことはサザンブロット分析により確認されている。

(5)組換え体に関する事項

1)組換えDNA 操作により新たに獲得された性質に関する事項
 NK603に導入された性質は、グリホサートの影響を受けずに生育できる点のみである。

2)遺伝子産物のアレルギー誘発性に関する事項
a 供与体の生物の食経験に関する事項
 CP4EPSPS遺伝子の供与体であるAgrobacterium sp.CP4株はヒトの直接の食物源ではないが、これまでにもヒトはCP4EPSPS遺伝子がコードするCP4EPSPS蛋白質と同様の機能を持つEPSPS蛋白質類を摂取してきている。

b 遺伝子産物がアレルゲンとして知られているか否かに関する事項
 EPSPS蛋白質が、アレルギー誘発性を有するということは報告されていない。

c 遺伝子産物の物理化学的処理に対する感受性に関する事項
ア 人工胃液・人工腸液に対する感受性
 ほとんどの既知アレルゲンは、ペプシン及びトリプシン消化に対して安定であることをふまえ、CP4EPSPS蛋白質を人工胃腸消化液に反応させ、ウェスタンブロット分析した結果、人工胃液中、15秒でCP4EPSPS蛋白質の免疫反応性が完全に消滅することが確認された。また、人工腸液中では、10分後にCP4EPSPS蛋白質の免疫反応性の大半が失われ、100分後には完全に消失することが確認された。このことから、この蛋白質が哺乳動物の消化器官から吸収される可能性が極めて低いことが示された。

イ 加熱処理に対する感受性
 CP4EPSPS蛋白質を産生するラウンドアップレディー大豆を用いた加熱試験では、熱処理によって脱脂大豆中のCP4EPSPS蛋白質の免疫反応性及び酵素活性が99%以上失われることがELISA分析により確認されている。

d 遺伝子産物の摂取量を有意に変えるか否かに関する事項
 NK603の穀粒1g中にはCP4EPSPS蛋白質が10.9μg発現しており、日本人の一日一人あたりの「その他の穀類」の平均摂取量2.0g(国民栄養の現状、1999)をNK603に置き換えて計算すると、日本人のCP4EPSPS蛋白質の一日予想摂取量は、加工損失が無いと仮定して最大21.8μgとなる。
 ある蛋白質に対してヒトが抗体を産生するには、ある程度の量を摂取することが必要であり、また、CP4EPSPS蛋白質が速やかに消化されることをあわせると、この蛋白質がアレルゲンとなることは考えにくい。
e 遺伝子産物と既知の食物アレルゲンとの構造相同性に関する事項
 CP4EPSPS蛋白質と既知のアレルゲンとの構造相同性を検索するため、567のアレルゲン及びグリアジンとの配列の比較をデータベースより抽出して解析した結果、CP4EPSPS蛋白質と隣接したアミノ酸配列が8つ以上同一であるアレルゲンはなく、CP4EPSPS蛋白質と既知アレルゲンとの間に相同性は認められなかった。

f 遺伝子産物が一日蛋白摂取量の有意な量を占めるか否かに関する事項
 CP4EPSPS蛋白質の一日予想摂取量は21.8μgであり、これは、日本人の一日一人当たりの平均蛋白質摂取量80.5g(国民栄養の現状、1999)に対する割合は0.27ppmと極めて少ない。

3) 遺伝子産物の毒性に関する事項
 植物及び微生物由来の食品中に広く存在するEPSPS蛋白質とCP4EPSPS蛋白質の類似性を活性部位残基、三次構造、アミノ酸配列から評価したところ、両者は機能的に同一であることが確認された。CP4EPSPS蛋白質の毒性影響について、データベース検索を行った結果、CP4EPSPS蛋白質と既知の毒素の間に相同性は認められなかった。
 CP4EPSPS蛋白質は人工胃液・人工腸液により急速に分解され、免疫反応性が完全に消滅することが確認されていることから、CP4EPSPS蛋白質が活性を保ったまま消化管から吸収される可能性は極めて低い。
 マウスを用いたCP4EPSPS蛋白質の強制経口投与試験の結果、最大投与量572mg/kgまで投与しても有害な影響は認められなかった。この投与量は、日本人がトウモロコシから摂取するCP4EPSPS蛋白質の一日最大予想摂取量21.8μgの131万倍に相当する。

4)遺伝子産物の代謝経路への影響に関する事項
 CP4EPSPS蛋白質は芳香族アミノ酸の合成経路であるシキミ酸経路を触媒する。本経路における炭素の流れは、経路の第1段階に関与する3-デオキシ-D-arabino-ヘプツロン酸-7-リン酸(DAHP)合成酵素の活性による調節を受け制御されることが証明されているが、DAHPからコリスミ酸が生成されるまでの段階は、中間代謝産物や最終生成物によって阻害されたり抑制されることはほとんどないことが知られていることから、CP4EPSPS蛋白質が本経路における律速酵素ではないことを示している。仮に、EPSPS蛋白質活性が増加したとしても、本経路の最終産物である芳香族アミノ酸の濃度が高くなることはないと推測される。
 EPSPS蛋白質はホスホエノールピルビン酸(PEP)及びシキミ酸-3-リン酸(S3P)と特異的に反応する。PEPとS3P以外にEPSPS蛋白質と反応することが知られているのはS3P類似体であるシキミ酸のみである。EPSPS蛋白質とシキミ酸の反応性は、EPSPS蛋白質とS3Pの反応性のおよそ200万分の1にすぎない。したがって、シキミ酸が植物体内で EPSPS蛋白質と反応することはない。

5)宿主との差異に関する事項
 前述のとおり、NK603は、主要構成成分(灰分、炭水化物、酸性デタージェントファイバー(ADF)、中性デタージェントファイバー(NDF)、水分、総脂質、蛋白質、)、アミノ酸組成及び脂肪酸組成に関し、既存のとうもろこしの間で比較したところ、生物学的に意味のある差異はないと考えられた。

6)外界における生存及び増殖能力に関する事項
 NK603の圃場試験は米国で行われているが、生存・増殖能力に関し非組換え品種と同等であった。

7)組換え体の生存・増殖能力の制限に関する事項
 NK603の生存・増殖能力は非組換え品種と同等であることが、米国で行った圃場試験により確保されている。

8)組換え体の不活化法に関する事項
 NK603は、物理的防除(耕耘)や化学的防除(感受性を示す除草剤の散布)など、とうもろこしを枯死させる従来の方法によって不活化される。

9)諸外国における認可、食用等に関する事項
 NK603は、米国食品医薬品局(FDA)に食品及び飼料としての安全性についての申請を行っており、米国農務省(USDA)に対しても栽培規制免除の申請を行っている。

10)作出、育種及び栽培方法に関する事項
 NK603と既存のとうもろこしとの栽培方法の相違は、生育期の雑草防除にグリホサートが使用できるか否かの点のみであり、他の点では同等である。

11)種子の製法及び管理方法に関する事項
 NK603の製法及び管理方法については、既存のとうもろこしと同様である。また、B73/BC1F1、B73/BC2F3、B73/BC5F1世代の種子を発芽能力を失わせずに保存している。
3 基準適合性に関する結論

 以上のことから、日本モンサント株式会社から申請されたNK603については、申請に際して提出された資料を審査基準に基づき審査した結果、人の健康を損なうおそれがあるとは認められないと判断される。


別添3

報告書

添加物名: リパーゼ(SP388)
性質: 生産性向上
申請者: ノボザイムズ ジャパン株式会社
開発者: ノボザイムズA/S

 ノボザイムズ ジャパン株式会社から申請されたリパーゼ(商品名「SP388」、以下「SP388」という。)について、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(以下、「基準」という。)に適合した安全性評価がなされているか否かについて検討し、以下のような結果を得た。

申請された食品添加物の概要

 SP388は食品添加物の酵素の一つとして、グリセリンのエステル合成やトリグリセリドのエステル交換を触媒するため、油脂食品工業において使用される。
 Aspergillus oryzaeを宿主とし、プラスミドpUC19をもとにして作成されたプラスミドpRML787を発現ベクターとして、Rhizomucor mieheiのリパーゼ合成遺伝子を染色体上に導入した組換え体を培養し、効率的にリパーゼを生産するものである。

1 生産物の既存のものとの同等性に関する事項

 SP388については、リパーゼとしての特性(分子量、酵素活性、等電点、抗原抗体反応、N−末端アミノ酸配列)に関する資料の検討を行い、既存の食品添加物であるリパーゼと同等であると考えられた。また、SP388については、製造方法、製品の規格及び使用方法についても既存のリパーゼと同一である。さらに、SP388については、組換え体自身を食さないものであり、食品中に含有されない使用方法が想定されている。以上の点から、SP388については、既存のリパーゼと同等とみなし得ると考えられ、したがって基準に沿って以下の審査が可能であると判断できる。

2 組換え体等に関する事項

(1)GILSP(Good Industrial Large-Scale Practice)又はカテゴリー1による製造に用い得る非病原性の組換え体であることに関する事項

 宿主(Aspergillus oryzae)は非病原性の微生物であり、挿入遺伝子及びベクターについても機能や構造が明らかにされており、既知の有害物質を発現することはなく、生産菌はカテゴリー1組換え体であると考えられる。

(2)組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項

 Rhizomucor miehei由来のリパーゼ遺伝子をAspergillus oryzaeに導入することにより、リパーゼの生産性が高い組換え体を得た。得られたリパーゼは、油脂のエステル合成やエステル交換の過程で使用される。

(3)宿主

 宿主は分類学上、Blastodeteromycetes Phialidales Aspergillus oryzaeに属し、自然界に広く分布し、食品中にも通常的に存在する微生物であり、古くから発酵食品の製造に使用されてきたものである。また、宿主は、国立感染症研究所の「病原体等安全管理規程」(平成11年)のバイオセーフティレベル1(ヒトに疾病を起こし、或は動物に獣医学的に重要な疾患を起こす可能性のないもの。)に該当する微生物である。さらに、米国国立衛生研究所「NIH GUIDELINES FOR RESEARCH INVOLVING RECOMBINANT DNA MOLECULES」(以下、「米国NIHガイドライン」という。)においてもRisk Group 1に該当する微生物とされている。JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)や米国環境庁においてもAspergillus oryzaeは、安全な微生物であると評価されている。申請資料からも寄生性、定着性等において問題は認められていない。我が国においてAspergillus oryzaeは酒や味噌の製造において数百年以上にわたり用いられており、安全性上問題はないものと考えられる。

(4)ベクターに関する事項

 リパーゼ合成遺伝子は、pRML787を発現ベクターとして宿主に導入されている。
 pRML787は、Escherichia coli K-12株に由来するpUC19にAspergillus oryzaeに由来するTAKA−アミラーゼプロモーター配列、Rhizomucor mieheiに由来するリパーゼ遺伝子(1.2kb)、Aspergillus niger由来のグルコアミラーゼターミネーター配列を組込んで構築されたものであり、制限酵素による切断地図は明らかにされている。また、pRML787の構築過程は明らかにされており安全性上問題はないものと考えられる。
 アセトアミダーゼ遺伝子(amdS)はプラスミドp3SR2をベクターとして組換え体の選択のために宿主へ導入されている。p3SR2は、Escherichia coli K-12株に由来するプラスミドpBR322にAspergillus nidulans由来のアセトアミダーゼ遺伝子を組込んで構築されたものであり、制限酵素による切断地図は明らかにされている。
 pUC19及びpBR322の由来であるEscherichia coli K-12株は、国立感染症研究所の「病原体等安全管理規程」(平成11年)においてバイオセーフティレベル1に該当する微生物である。また、米国NIHガイドラインにおいてもRisk Group 1に該当する微生物とされている。
 なお、pRML787及びp3SR2は、ともにアンピシリン耐性マーカー遺伝子を含んでいる。

(5)挿入遺伝子に関する事項

 リパーゼ合成遺伝子を発現するために挿入される遺伝子は、Aspergillus oryzaeに由来するTAKA−アミラーゼプロモーター配列、Rhizomucor mieheiに由来するリパーゼ遺伝子(1.2kb)、Aspergillus niger由来のグルコアミラーゼターミネーター配列であり、これらを含むpRML787として宿主の染色体上に導入されている。選択マーカーとして挿入される遺伝子は、Aspergillus nidulansに由来するアセトアミダーゼ遺伝子(amdS)であり、これを含むp3SR2として宿主の染色体上に導入されている。
 挿入される遺伝子の構造、塩基配列、性質は明らかにされており、有害塩基配列は含まれておらず、安全性上問題はないものと考えられる。
 また、選択マーカーとして用いられているアセトアミダーゼは、食経験のあるAspergillus oryzaeのアセトアミダーゼと相同性が高く、既知の有害物質または既知のアレルゲン物質との相同性は認められない。
 さらに、生産菌の染色体上には、Escherichia coli(原核生物)に由来するアンピシリン耐性マーカー遺伝子が導入されているが、生産菌においては発現しないと考えられ、最終製品には混入しない。アンピシリン耐性マーカー遺伝子産物(β−ラクタマーゼ)については、既知の有害物質または既知のアレルゲン物質との相同性は認められない。

(6)組換え体に関する事項

 組換え体は、リパーゼ産生性以外にアセトアミダーゼ発現性を獲得している。これら挿入遺伝子の導入方法、性質、機能等は前項で記載したように明らかであり、宿主が非病原性であることから、組換え体が病原性を獲得することはないものと考えられる。
 組換え体は、宿主との比較で生存・増殖性等において問題は認められない。また、組換え体は4%硝酸と4%水酸化ナトリウムで処理することにより死滅することが示されている。

3 組換え体以外の製造原料及び製造器材

 SP388は、通常の非組換え微生物から酵素を製造する場合に用いられる製造原料及び製造器材と同様のものを使用しGMPに基づき製造される。発酵原料についても全て食品グレードのものが用いられていることが示されている。従ってSP388の製造において安全性上問題はないものと考えられる。
 また、SP388の製造に用いるマスターセルバンクは、グリセロール培地にて−80℃に保存され、培養にあたり、微生物汚染の無いこと、生菌数が適切であること、酵素生産性が適切であることの確認を行っていることが示されている。

4 生産物に関する事項

(1)組換え体の混入を否定する事項

 製品の規格項目として「生産菌の混入のないこと」を定め、製品中に生産菌の混入がないことを確認している。また、SP388に組換え体DNAの混入がないことをドットブロットハイブリダイゼーション法により確認している(検出限界1ng DNA/g)。

(2)製造に由来する不純物の安全性に関する事項

 SP388は、精製される酵素タンパク質であり、培養等に用いられるものも食品グレードであることから、生産物に有害物質が混入する可能性はないものと考えられる。

(3)生産物の精製方法及びその効果に関する事項

 SP388は、適正な条件下で組換え体を培養後、pH、温度調整等の前処理に始まり、限外濾過、除菌濾過等により精製した後、安息香酸ナトリウムとソルビン酸カリウムを加えることにより安定化する。通常は担体に固定され製剤化される。製造過程は明らかにされており、最終製品であるSP388は、JECFAやFCC(米国食品添加物規格)の酵素規格に適合していることが示されている。

(4)含有量の変動により有害性が示唆される常成分の変動に関する事項

 生産物はJECFA及びFCCの食品用酵素剤の純度規格を満たしており、生産物の含有量は既存のものと同等であると判断できる。

(5)組換え体によって製造された生産物の諸外国における認可及び使用等の状況に関する事項

 生産物SP388は、通常固定化したもので使用され、固定化されたものは、デンマークにおいて食品に使用することが許可されている。また、米国においてもGRASとして取り扱われている。我が国においても固定化して用いられることが示されている。

5 安全性試験に関する事項

 SP388については、in vitroでの変異原性試験及びラットを用いた13週間の反復投与試験が行われている。ラットを用いた混餌投与試験(0.16、0.8、4%)においては、0.8%以上の用量において、胃の角質層の肥厚等が認められた。病理組織学的検査においては、毒性学的に意義のある所見は認められていない。無作用量は0.16%(一日あたり115mg/kg体重)であると報告されている。また、復帰突然変異試験並びにマウスリンパ腫細胞及びヒト培養リンパ球での染色体異常試験の結果は陰性であることが示されている。

6 基準適合性に関する結論

 ノボザイムズ ジャパン株式会社から申請されたリパーゼ(SP388)について、申請に際して提出された資料を、組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準(平成12年5月1日付生衛発第825号―1)に基づき審査した結果、人の健康を損なうおそれがあると認められない。


別添4

報告書

添加物名: α−アミラーゼ(TMG−アミラーゼ)
性質: 生産性向上
申請者: ノボザイムズ ジャパン株式会社
開発者: ノボザイムズA/S

 ノボザイムズ ジャパン株式会社から申請されたα−アミラーゼ(商品名「TMG−アミラーゼ」、以下「TMG−アミラーゼ」という。)について、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(以下、「基準」という。)に適合した安全性評価がなされているか否かについて検討し、以下のような結果を得た。

申請された食品添加物の概要

 TMG−アミラーゼは食品添加物の酵素の一つであり、アミロースやアミロペクチンのα-1,4グルコシド結合を任意の位置で加水分解し、デキストリンやオリゴ糖を生成する反応を触媒するため、澱粉糖工業において液化澱粉の製造に使用される。
 Bacillus licheniformis ATCC 9789系統株DN2461を宿主とし、プラスミドpUB110をもとにして作成されたプラスミドpDN1981を発現ベクターとして、Bacillus licheniformis ATCC 9789系統株DN52のα−アミラーゼ合成遺伝子を宿主の染色体上に導入した。この操作により得られた組換え体は、染色体上のα−アミラーゼ合成遺伝子のコピー数が増加しており、これを培養することにより、効率的にα−アミラーゼを生産するものである。

1 生産物の既存のものとの同等性に関する事項

 TMG−アミラーゼについては、α−アミラーゼとしての特性(分子量、酵素活性、等電点、抗原抗体反応)に関する資料の検討を行い、既存の食品添加物であるα−アミラーゼと同等であると考えられた。また、TMG−アミラーゼについては、製造方法、製品の規格及び使用方法についても既存のα−アミラーゼと同一である。さらに、TMG−アミラーゼについては、組換え体自身を食さないものである。以上の点から、TMG−アミラーゼについては、既存のα−アミラーゼと同等とみなし得ると考えられ、したがって基準に沿って以下の審査が可能であると判断できる。

2 組換え体等に関する事項

(1)GILSP(Good Industrial Large-Scale Practice)又はカテゴリー1による製造に用い得る非病原性の組換え体であることに関する事項

 宿主(Bacillus licheniformis)は非病原性の微生物であり、挿入遺伝子及びベクターについても機能や構造が明らかにされており、既知の有害物質を発現することはなく、生産菌はGILSP組換え体であると考えられる。

(2)組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項

 宿主(Bacillus licheniformis)由来のα−アミラーゼ遺伝子をBacillus licheniformisに導入することにより、α−アミラーゼの生産性が高い組換え体を得た。得られたα−アミラーゼは、液化澱粉の製造過程において使用される。

(3)宿主

 宿主は分類学上、 Firmibacteria Bacillaceae Bacillus licheniformisに属し、自然界に広く分布し、食品中にも通常的に存在する微生物であり、古くから産業用酵素の製造に使用されてきたものである。また、宿主は、国立感染症研究所の「病原体等安全管理規程」(平成11年)のバイオセーフティレベル1(ヒトに疾病を起こし、或は動物に獣医学的に重要な疾患を起こす可能性のないもの。)に該当する微生物である。さらに、米国国立衛生研究所「NIH GUIDELINES FOR RESEARCH INVOLVING RECOMBINANT DNA MOLECULES」(以下、「米国NIHガイドライン」という。)においてもRisk Group 1に該当する微生物とされている。申請資料からも寄生性、定着性等において問題は認められていない。

(4)ベクターに関する事項

 α−アミラーゼ合成遺伝子は、pDN1981を発現ベクターとして宿主に導入されている。
 pDN1981は、Staphylococcus aureusに由来するpUB110にBacillus licheniformisに由来するプロモーター領域及びターミネーター領域を含むα−アミラーゼ遺伝子を組込んで構築されたものであり、制限酵素による切断地図は明らかにされている。
 pUB110の構成及び塩基配列は明らかにされており、既知の有害塩基配列は含まれていない。また、発現ベクターの構築に用いられたプラスミドpBR322の由来であるEscherichia coli K-12株は、国立感染症研究所の「病原体等安全管理規程」(平成11年)のバイオセーフティレベル1に該当する微生物である。また、米国NIHガイドラインにおいてもRisk Group 1に該当する微生物とされている。
 なお、pDN1981は、カナマイシン耐性マーカー遺伝子及びフレオマイシン/ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子を含んでいる。

(5)挿入遺伝子に関する事項

 α−アミラーゼ合成遺伝子を発現するために挿入される遺伝子は、Bacillus licheniformis に由来するα−アミラーゼ遺伝子であり、この遺伝子を含むpDN1981として宿主の染色体上に導入されている。また、挿入される遺伝子の構造、塩基配列、性質は明らかにされており、有害塩基配列は含まれておらず、安全性上問題はないものと考えられる。
 なお、生産菌の染色体上には、pDN1981に由来するカナマイシン耐性マーカー遺伝子及びフレオマイシン/ブレオマイシン系抗生物質耐性遺伝子が導入されており、カナマイシン耐性の獲得により組換え体を選択している。これらの耐性遺伝子産物について、既知の有害物質または既知のアレルゲン物質との相同性は認められていない。

(6)組換え体に関する事項

 組換え体は、α−アミラーゼの生産性が向上した以外の形質として、カナマイシン耐性及びフレオマイシン/ブレオマイシン系抗生物質耐性を獲得している。これら挿入遺伝子の導入方法、性質、機能等は前項で記載したように明らかであり、宿主が非病原性であることから、組換え体が病原性を獲得することはないものと考えられる。
 組換え体は、宿主との比較で生存・増殖性等において問題は認められない。また、組換え体は90℃、pH11以上に1時間処理することにより死滅することが示されている。

3 組換え体以外の製造原料及び製造器材

 TMG−アミラーゼは、通常の非組換え微生物から酵素を製造する場合に用いられる製造原料及び製造器材と同様のものを使用しGMPに基づき製造される。発酵原料についても全て食品グレードのものが用いられていることが示されている。従ってTMG−アミラーゼの製造において安全性上問題はないものと考えられる。
 また、TMG−アミラーゼの製造に用いるマスターセルバンクは、グリセロール培地にて−80℃に保存され、培養にあたり、微生物汚染の無いこと、生菌数が適切であること、酵素生産性が適切であることの確認を行っていることが示されている。

4 生産物に関する事項

(1)組換え体の混入を否定する事項

 製品の規格項目として「生産菌の混入のないこと」を定め、製品中に生産菌の混入がないことを確認している。

(2)製造に由来する不純物の安全性に関する事項

 TMG−アミラーゼは、精製される酵素タンパク質であり、培養等に用いられるものも食品グレードであることから、生産物に有害物質が混入する可能性はないものと考えられる。

(3)生産物の精製方法及びその効果に関する事項

 TMG−アミラーゼは、適正な条件下で組換え体を培養後、pH、温度調整等の前処理に始まり、限外濾過、除菌濾過等により精製した後、塩化ナトリウムとスクロースを加えることにより安定化する。製造過程は明らかにされており、最終製品であるTMG−アミラーゼは、JECFAやFCC(米国食品添加物規格)の酵素規格に適合していることが示されている。

(4)含有量の変動により有害性が示唆される常成分の変動に関する事項

 生産物はJECFA及びFCCの食品用酵素剤の純度規格を満たしており、生産物の含有量は既存のものと同等であると判断でき、安全性上問題はないものと考えられる。

(5)組換え体によって製造された生産物の諸外国における認可及び使用等の状況に関する事項

 生産物TMG−アミラーゼは、デンマーク、アメリカ、フランス等各国において食品に使用することが許可されている。

5 安全性試験に関する事項

 TMG−アミラーゼについては、in vitroでの変異原性試験及びラットを用いた4週間の反復投与試験が行われている。ラットを用いた強制経口投与試験(1、3及び5g/kg/day)による4週間の反復投与では、盲腸の肥大が認められたが、組織の生理的順応によるものであり、毒性学的意義はないと考えられた。また、病理組織学的な検査においても毒性学的に意義のある所見は認められていない。本試験における無作用量は、5g/kg/dayと報告されている。また、復帰突然変異試験並びにヒト培養リンパ球での染色体異常試験の結果は陰性であることが示されている。

6 基準適合性に関する結論

 ノボザイムズ ジャパン株式会社から申請されたα−アミラーゼ(TMG−アミラーゼ)について、申請に際して提出された資料を、組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準(平成12年5月1日付生衛発第825号―1)に基づき審査した結果、人の健康を損なうおそれがあると認められない。

照会先:厚生労働省 医薬局食品保健部 監視安全課
    高谷 監視安全課長
    担当 :三木、齊藤
    TEL:03-5253-1111(内線2455)
      03-3595-2337(夜間直通)

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