ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(健康危機管理部会)> 2018年4月16日第11回厚生科学審議会健康危機管理部会議事録(2018年4月16日)

 
 

2018年4月16日 第11回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成30年4月16日(月)10:15~12:00

 

○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎5号館 9階)

○出席者

(委員)

大野部会長 倉根委員 明石委員 五十君委員 遠藤委員 大友委員 大曲委員 野村委員 古米委員 

○議題

1.健康危機管理調整会議の開催状況について
2.国際保健規則(IHR2005)に基づく活動について
3.世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)について
4.東京オリンピック・パラリンピックに向けた危機管理対応について
5.災害対応に関する平成31年度厚生科学課予算事業(案)について
6.その他

○配布資料

資料1 健康危機管理調整会議の主な議題について(平成29年4月~30年3月)
資料2 国際保健規則(IHR)に基づく我が国連絡窓口の活動内容について(平成29年度)
資料3 第18回世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)閣僚級会合(概要)
資料4 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた厚生労働省の取組について
資料5 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等に向けた化学テロ等重大事案への準備・対応に関する研究(小井土班)
資料6 受入病院の安全確保に向けた取り組み
資料7 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての感染症のリスク評価について(松井班)
資料8 災害対応に関する平成31年度厚生科学課予算事業(案)について
参考資料1 国際保健規則(IHR2005)について
参考資料2 世界健康安全保障イニシアティブ(Global Health Security Initiative:GHSI)について
参考資料3 第18回世界健康安全保障閣僚級会合共同声明(英文・仮訳)
参考資料4 2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等を見据えたテロ対策推進要綱
参考資料5 主なテロの未然防止対策の現状
参考資料6 厚生科学審議会令
参考資料7 健康危機管理部会委員名簿
 

○議事

 

○松崎健康危機管理・災害対策室長 定刻になりましたので、ただいまから「第11回厚生科学審議会健康危機管理部会」を開催いたします。
 厚生労働省大臣官房厚生科学課健康危機管理・災害対策室長の松崎でございます。委員の皆さまには本日は御多忙のところ、お集りいただき御礼を申し上げます。
 本日は、石川臨時委員、加茂臨時委員、吉川臨時委員、倉橋臨時委員から欠席の御連絡を頂いております。委員13名のうち、出席者は過半数を超えており、会議が成立しておりますことを御報告いたします。
 まず、最初に新任の委員を御紹介いたします。日本中毒情報センターの遠藤臨時委員です。
○遠藤日本中毒情報センターの遠藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 どうぞよろしくお願いいたします。
 また、今回は参考人として、国立病院機構災害医療センターの小井土臨床研究部長と国立感染研究所感染症疫学センターの松井先生のお二方に御出席いただいております。また、前回の開催から事務局に人事異動がありましたので御紹介いたします。佐原審議官です。浅沼厚生科学課長です。寺谷国際健康危機管理調整官です。伊藤原子力災害対策調整官です。市川室長補佐です。
 それでは、佐原審議官から、開会に当たって御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐原審議官 皆さんおはようございます。大臣官房審議官の佐原です。第11回の健康危機管理部会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。委員の皆様方にはお忙しいところ、お集りいただきましてありがとうございます。御礼を申し上げたいと思います。
 本部会は、原因の明らかでない公衆衛生上の緊急事態に際して、臨時に会議を開催し、事態への対処について御議論を頂くということとしておりますけれども、特段の事態がない場合でも定期的に会議を開催しているところであります。本日は定期の会議でありまして、昨年3月の会議以降に生じた健康危機管理上のトピックスについて事務局から御報告し、健康危機管理の対処の適切な在り方などについて御議論を頂きたいと思っております。
 また、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えまして、テロ対策等の検討を進めていく必要があります。本日の部会では、化学テロなどの対応や、受入病院の安全確保、感染症対策などについて御議論いただきたいとも思っております。また併せて、現在検討している災害対応に関する事業等についても御意見を頂ければと思っております。今後とも本部会で頂いた御意見を健康危機管理対応にいかしていきたいと考えております。本日もよろしくお願い申し上げます。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 カメラ等、撮影がある場合は、ここまでとさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をいたします。次第を御覧ください。資料1、健康危機管理調整会議の主な議題について。資料2、国際保健規則に基づく我が国連絡窓口の活動内容について。資料3、第18回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合(概要)。資料4、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた厚生労働省の取組について。資料5、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等に向けた化学テロ等重大事案への準備・対応に関する研究。資料6、受入病院の安全確保に向けた取り組み。資料7、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての感染症のリスク評価について。資料8、災害対応に関する平成31年度厚生科学課予算事業(案)について。参考資料はその他各種配布しておりますので御確認ください。また本日、机上配布用の資料を配布しておりますが、こちらは会議後に回収させていただきますのでよろしくお願いいたします。欠落している資料等ありましたら、お声かけいただきたいと思いますが、大丈夫でしょうか。もし途中でお気付きになられましたら事務局にお声かけいただければ資料の差し替えなどをさせていただきます。
 これよりの進行は大野部会長にお願いしたいと思います。大野部会長、よろしくお願いいたします。
○大野部会長 議事を始めさせていただきます。昨年に引き続き、座長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、議題1の健康危機管理調整会議の開催状況について、事務局から説明をお願いいたします。
○寺谷国際健康危機管理調整官 事務局の寺谷から説明させていただきます。資料1を御覧ください。健康危機調整会議の主な議題について、平成29年4月~30年3月と書いてある資料です。私たちは厚生労働省健康危機管理指針に基づいて、健康危機管理調整会議を定例と臨時でも月に数回行っておりますが、そこで扱った議題、話題を簡単にまとめたものです。
 1.食品関係です。食中毒事案、これは8月から10月辺りにありましたので扱っています。2.感染症関係に関しては、一類感染症、エボラなどがありますが、この辺のフォローアップをしたり、最新状況について共有したことがあります。また、重症熱性血小板減少症候群についても、インフルエンザについてもかなりいろいろな壁がありますが、最新状況について省内で、このように共有しているところです。
 次に、健康危険情報の様々な通報がありますが、こちらについては、がん治療に関わる有害事象、治療薬など、主に薬の内容が多かったと思いますが、そのようなものを9月や1月に扱っております。そのほかには、このように医薬品の回収、有機粉じんによる肺疾患の防止に関する関係業界の要請。コデイン含有医薬品の小児への処方制限、ヒアリ対策のようなもの。それから医療安全に関するものも扱っております。あと、血液製剤の件など。また、ここには全ては書いてはおりませんが、臨時でニュースにもなったような案件も幾つか扱ったりして、その都度、情報共有や評価をしています。事務局からは以上です。
○大野部会長 ありがとうございます。ただいまの御説明に対して、質問、御意見はございますでしょうか。よろしいですか。それでは、報告いただいたということで、次に進みたいと思います。
 次は、国際保健規則に基づく活動について、事務局から説明をお願いいたします。
○寺谷国際健康危機管理調整官 こちらも資料に基づいて、寺谷から説明させていただきます。資料2を御覧ください。IHRに基づいて窓口が、それぞれの国に設定されており、私が今、現在担っているところでございます。ここで関係するようなこととして4つありますが、特に1、2、3は毎年やっており、4つ目が今年の新しいものかと思います。1つ目は、WHOとの情報共有をルーチンでやっているものですが、定期的、又は何かあったときにWHOからメールが届きますので、それに基づいてEIS(Event Information Site)にアクセスし、その情報を国内の関係者にお伝えしています。今年も、月に数回程度、このような作業をしておりました。
 2つ目は、それぞれIHR参加国の窓口にNational Forcal Point(NFP)が設定されております。ここで、結核や麻疹等の感染症患者が動いていたとき、飛行機で発見されたり、若しくは海外から帰ったとか、出た場合に関しての情報交換をしており、日本から発信したこともありましたし、海外から頂くこともしております。
 3つ目は、訓練への参加です。WPROがNFPを対象として行っているコミュニケーション訓練をIHR Crystal Exercise というのがあるのですが、今年も参加しておりました。このようなことをしております。
 4つ目が新しいものだと思いますが、IHR合同外部評価への参加をしております。これはWHOが、もともとこの国際保健規則を作ったときに、キャパシティ・ビルディングをそれぞれの国に求めているところでした。そこで、どのくらい整備されているかの評価を受けました。これはJEEというもので、合同外部評価と呼ばれているものです。もともと複数の項目が設定されており、それに基づいて、こちらが自己評価をした上で、評価団が来ますので、そことの議論ややり取りを経て、評価を受けたところです。現在、報告書の最終調整、それから今後、サマリーなども外に出していくことになると思いますが、そのようなステータスとなっているところです。少し御紹介をしますと、大体80ページ程度の報告書がまとまる予定で、その中には日本能力についてスコアリングがされており、あらゆる項目がどのくらいの何点取れたかを評価されております。全体としては、prevent、detect、respondという大きな柱の中で、それぞれのキャパシティー、能力が評価されています。それからオールハザード・アプローチとなっていますので、後段のほうでは、放射線やケミカルのことなどにも触れて、あらゆることに対してのキャパシティ・ビルディングがなされているかどうかという評価を受けているところです。日本は総じて評価は、先進国としても非常にいい評価を得ているところはありますが、一部、5段階でいくと3点の所も幾つかあったりと、そのようなことが今後の課題になるかと思います。以上です。
○大野部会長 ただいまの御説明について、質問、御意見はございますでしょうか。
○倉根委員 最後のJEEですが、ここは評価というか、報告書は国際的にオープンになるのですか。それとも日本は日本だけのものを見ることになるのですか。
○寺谷国際健康危機管理調整官 部分的に出るところがあると。全てを書くわけではないのですが、一部分とか、オープンになるものもあると聞いています。
○倉根委員 例えば、点数が5点に、満点になっていない部分については、いつまでに直せというか、直すべきであるというような指示はくるのでしょうか。それとも次回のJEE(Joint External Evaluation)までに直しておいてください
という形になるのでしょうか。
○寺谷国際健康危機管理調整官 私の把握している範囲では、どちらかというとこうするほうが良いという書かれ方をしています。それから期限を切って、ここまでに報告しろというようなものではなくて、どちらかというと助言を頂いているものが多いかと認識しております。
○大野部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
○大友委員 取り組むべき評価が良くなくて、これから改善を求められているところは、どんなところになるのでしょうか。
○寺谷国際健康危機管理調整官 実は、まだ調整中のところですから、全ては申し上げられませんが、一部、例えばナショナル・ラボラトリー・システムのところ、つまり研究機関やその辺りのところであったりとか、それからリスクコミュニケーションのところで、3点という評価をいただいております。決して悪いわけではないのですが、平凡な評価になっているところがあります。
○大友委員 オールハザードアプローチということをおっしゃっていましたけれども、日本は意外と、それは苦手のような気がするのですが、そこは大丈夫なのですか。
○寺谷国際健康危機管理調整官 評価上は、わりと5段階で言うと、4や5を頂いたところですが、やはり少なくともパーツパーツにおいては、確かに我々の国はいろいろな経験をしておりますので、例えばラディエーションのところに関しましても、福島の事故を踏まえて、原子力規制庁、内閣府等が整備しているものなどが評価されていたような印象を持っています。
○大野部会長 よろしいですか。
○大友委員 追加で、こういう外部からの外圧という言い方はいいかどうか分かりませんが、指摘していただいたところを改善するように何らかの形でフォローアップして、必要があれば予算等も獲得するべきではないのかなと思います。よろしくお願いいたします。
○大野部会長 今の関係で、寺谷さんがおっしゃった、ナショナル・ラボの整備状況とか、何でしたか、ラボの整備状況が不十分だということでしたか。
○寺谷国際健康危機管理調整官 今後、サマリーをまとめたうえで、公表できる部分を峻別して、どこかのタイミングで、御報告したいと思っているのですが、現状では、ナショナル・ラボラトリー・システムというのが大きな評価項目の1つにあって、その中の一部分のところだけが平凡な評価となっているところもあったということです。
○大野部会長 BSL4の整備状況がよくないとか、そういうことなのかなと思ったのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 いずれにしても評価自体、現在は調整中のものですので、それができましたら、またこの部会でもお示しさせていただきたいと考えております。
○大野部会長 よろしくお願いいたします。ほかにありますか。よろしいですか。それでは、議題2の国際保険規則に基づく活動についての報告は承ったということで、次に進みたいと思います。
 議題3、世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)について、事務局から説明をお願いいたします。
○寺谷国際健康危機管理調整官 資料3を御覧ください。第18回世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)閣僚級会合(概要)です。こちらの会合に関しては閣僚級会合をやっております。また局長級会合、さらに担当者の会合などもあるところですが、平成30年3月9日にロンドンにて行われたものを報告させていただきます。もともと参加国としては日本、カナダ、米国、英国、フランス、ドイツ、メキシコ、イタリア、欧州(EC)、そしてオブザーバーとしてWHOが入っているところです。ここには書いておりませんが、もともとナインイレブンからのことでできたので、このような一部の先進国、若しくはアメリカ等に関係の深い国で構成されております。
 会議の概要は、今回ロンドンで開催され、サリー・デイビス氏から、特にパンデミックインフルエンザの中でも医薬品対策だけではなくて、より大きな公衆衛生全体として、学校閉鎖や大規模集会の中止、国境管理といったような講義もなされ、それに対して議論がなされたところです。「また」の所にありますが、WHO健康危機プログラム責任者のピーター・サラマ博士から、WHOにおけるインフルエンザ対策及び健康危機に対するCFEプログラムの状況について説明がありました。それから、これは大きなテーマでもあるリスクコミュニケーションについても議論がなされたところです。最後に、インフルエンザを含めた健康危機に対する準備及び対応策について各国が引き続き強調していく旨、またWHOとも協働していくということの共同声明の採択が行われました。なお、日本からは池田千絵子総括審議官が御参加されているところです。
 これを踏まえて現在、また来月の頭には担当者及びチェアーによる会議体があり、その後に、局長級会合もありますので、また来年の同時期、若しくは少し早い時期かもしれませんが、メキシコで閣僚級会合が開催されるという流れになっております。以上です。
○大野部会長 ただいまの御説明について、御意見、御質問はありますでしょうか。
○明石委員 量研の明石でございます。御存じのとおり、この参考資料3にもありますとおり、GHSIは放射線と核という脅威ということで、グループも、サブグループとしてあって、こういう放射線の領域は感染症とか化学物質から比べると目立たないものではあるのですが、一応放射線の部分もあるということで、是非御支援のほどよろしくお願いしたいと思います。
 それから先ほどのJEEの所にちょっと戻らせていただきたいのですが、そこには実は放射線の部分も一部含まれています。最初に申しましたように、放射線の部分はどうしても原子力規制庁であるとか、他の省庁の役割が大きいこともあって、なかなか連携が取りにくいとか、種々の問題がありますので、是非、規制庁の役割等も考えて連携を深めていただければと考えております。
 それから、この放射線の部分については、あまり呼ばれることもないのですが、オブザーバーの参加とか、いろいろなこともできなくはないと考えておりますので、是非とも情報の提供を規制庁、それから文部科学省も通して情報を頂けると有り難いと思います。と申しますのは、我々の研究機関は新しい組織になりましても、一応、文部科学省の主管で一部こういう防護とか被ばく量の部分は規制庁との両方で管轄されていることもありますので、情報の提供は文科省、両省庁とも是非よろしくお願いいたします。
○大野部会長 事務局から何かありますでしょうか。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 御発言どおり、各省が連携を深めながら対応してまいりたいと考えております。
○大野部会長 よろしくお願いいたします。ほかにありますか。
○大友委員 このイニシアティブは、生物、化学、核・放射線、新型インフルエンザということですが、シリアでの化学兵器使用の話とか、ここで議論をされていますでしょうか
 あともう1つ、化学のテロというのは世界的にどれだけ驚異があるのか、かなり頻度も減ってきてしまっていると思うのですが、このイニシアティブでは、どのような発生のリスクがあるのかに関して何か議論されているのか、お願いいたします。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 詳細まではちょっと把握はできないのですが、ただ、この世界健康安全保障イニシアティブと申しますが、参考資料2にあるとおり、2001年9月11日の米国における同時多発テロを受けて、米国、カナダ政府の呼び掛けによって、世界的な健康危機管理の向上及びテロリズムに対する準備と対応に係る各国の連携等について話し合うための会合ということですので、当然、議論としては、含み得る状況にはなっております。この参考資料の3ページの下を御覧ください。ここには、専門家会合というものがありまして、具体的には、生物剤、化学剤、核・放射性物質によるテロ等の健康被害への対応について議論をする専門家グループがあり、議論はできる環境になっております。
○寺谷国際健康危機管理調整官 ちょっと付言しますと、次のページに、化学イベントWGというのがあります。議長は英国と日本になっています。やはり日本は大きな経験を持っているから、このように議長となっているところです。申し訳ないのですが、詳細までのフォローアップはできていないのですが、適宜、情報を収集しておきたいと思います。
○大野部会長 よろしくお願いします。大友先生よろしいでしょうか。
○大友委員 はい、
○大野部会長 ほかにありますでしょうか。
○野村委員 専門的な質問ではないかもしれないのですが、今回、医薬品以外のパンデミックインフルエンザ対策に関する講義が行われ、みたいな議論があったというようにあるのですが、日本独自なのかもしれませんけれども、医薬品以外の対策の中で、労働環境のことがこうした感染防止を妨害しているという、感染があっても休めないみたいな苛酷な形の労働環境というのも、このような場合にかなり影響してくる感じがあるのかなと思ったりしているのですが、そのような議論はなかったのでしょうか。
○寺谷国際健康危機管理調整官 今のような感染防止の中には、働き方や労働環境が重要なのではないかという議論が世界でなされたかという質問でよろしいですか。
○野村委員 はい、そういうことも大事かなと思っています。
○寺谷国際健康危機管理調整官 そうですね、私が把握している範囲では、そのときに各国の意見などもいろいろと当時の記録はあるのですが、見る限りは、余りそこまでは出ていなかったような気がします。どちらかというと、学校の閉鎖とか、大規模集会等、集まったりするのをどうするかとか、国境管理というのも大きな柱になっていたように思います。一方で職場での感染防止は非常に重要な観点かと思いますので、そのような意見があるというのは理解しています。
○野村委員 ほかの国ではちょっと理解されない部分もあるのかもしれませんが。
○寺谷国際健康危機管理調整官 もしかしたら、その部分なのかもしれません。
○野村委員 ありがとうございます。
○市川室長補佐 事務局の市川でございます。補足をさせていただきますと、今回の会合では、主にいわゆる社会的対応としまして、中心的には学校閉鎖が一番、各国としては議論の中心にありました。特に日本の場合は普段から学校閉鎖をしていたので、その経験等を各国は興味深く聞いておられました。もちろん労働に関しても労働環境というか、労働制限というか、自宅にとどまるということに関しても議論はなされましたけれども、そういった場合に、では今度、子供をどうするのかとかいろいろな問題があって、結論が出るというよりは、非常に難しい問題を皆さんであぶり出したと、そういったところでとどまっていたと思っております。
○大野部会長 野村先生よろしいですか。
○野村委員 はい。
○大野部会長 ほかにありますでしょうか。それでは今の報告について、審議は終了ということで、次の議題に入ります。
 次は、東京オリンピック・パラリンピックに向けた危機管理対応について、事務局から資料4を基に説明をお願いいたします。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 資料4に基づいて説明いたします。本日の議題4として、東京オリンピック・パラリンピックに向けた危機管理対応について、追って研究班の先生方からの御報告等も含めて御議論頂きたいと考えておりますが、まず、それに先だちまして、現在の東京オリンピック・パラリンピックの検討体制の概略を説明するという趣旨で御説明させていただきます。ポンチ絵を御覧ください。まず、「東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部」ということで、本部長が総理大臣の会議体があります。その下に「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会関係府省庁連絡会議」が設置されており、杉田内閣官房副長官が議長となっているものです。これを基に幾つか取組があるのですが、セキュリティーに関しては、下を御覧ください。内閣危機管理監を座長とする「セキュリティー幹事会」が設置されており、構成員は局長級ということで、厚生労働省は医政局長となっております。それの下に、更に「サイバーセキュリティWT」と、「テロ等警備対策WT」があり、この右側の部分の、テロ等警備対策WTに対応するものとして、右側の「厚生労働省東京オリンピック・パラリンピック健康危機管理連絡会議」を厚生科学課長を議長として立ち上げております。昨年に立ち上げて、種々取り組んでいるということで、次のページに、取組内容の主なものを挙げております。
 幾つかありますので、かいい摘んで御説明いたしますが、まず救急医療体制の整備・拡充として、昨年から行っている搬送先医療機関における爆傷、銃創の外傷の治療を担う外科医の養成などの取組を行っております。次に、毒物、劇物及び病原体の適正管理を徹底させることや、感染症発生動向調査、NBCテロ対策の強化ということで化学テロ対応医薬品の備蓄等。この他、旅館等における外国人宿泊客の本人確認の徹底。水道施設に対する警備等の強化、検疫体制を整備することや、先ほどもありましたが、GHSIを通じて情報を共有するといったことを現時点では取り組んでおります。
 加えまして、この3月には、この会議体を開催させていただき、オリンピック・パラリンピックまで残り2年半を切ったということで、各部局において新しい施策や既存の施策の発展、あるいは、地方自治体関係機関への周知等、どのようなものをするかを改めて検討いただきたいということで、各局に依頼をしたという状況になっております。概要については以上です。
○大野部会長 ありがとうございます。ただいまの説明について御意見、御質問はございますでしょうか。
○五十君委員 直接的な緊急対応というわけではないとも思われますが、食品衛生分野に関しまして、今、工程管理の制度化、HACCPの制度化、リスクマネジメント方法の基盤整備というようなことが進んでいると思います。こちらにつきましては、リスクマネジメントの非常に重要なポイントになるような内容であると思いますので、是非、こちらも加えていただけるとよろしいと思います。御検討いただきたいと思います。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 了解いたしました。
○五十君委員 よろしくお願いいたします。
○大野部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はございますでしょうか。
○古米委員 オリンピック・パラリンピックの時期が夏場で熱射病等の影響があるということがよく噂されておりますが、この中ではそういった形では具体的に表記されておられませんが、何かそういった議論はないのでしょうか。
○寺谷国際健康危機管理調整官 熱中症に関しましては、当然、オリンピックに関して、オリンピックの委員会も非常に熱心にやっていますし、政府も非常に支援をしているところです。実はこれは環境保健的な要素も大きいので環境省等が中心になって、当然、厚生労働省も関係あります、医療もあります、あと、労働への働き掛けというのもあり得ますので、関係省庁が連携して、そもそも、東京オリンピックに限らず、熱中症全体に関しましては関係省庁が連携する枠組みもありますし、その中で東京オリンピックにスペシフィックな課題もあって。例えば、他省庁においては、訪日する方々へのパンフレットを整備したり、それから、あまり強調しすぎると観光に来なくなってしまうのですが、あらかじめ来る前に注意喚起を呼び掛けると、そのような動きがあることを聞いているところです。その枠組みの中で厚生労働省としてやるべきところは、医療のところであったり、労働のところであったり、そのようなことをやっていくと認識しております。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 あと1点だけ補足させてください。厚生労働省の中でもオリンピック・パラリンピック全体を見ている部局があり、そのための会議もが立ち上がっています。我々のほうで受け持っているのは、あくまでテロと警備対策に関するものに注力してやるという位置付けで立っている会議体です。その中で、寺谷が申したとおり、今やれることはきちんとやってまいりたいと考えております。以上です。
○大野部会長 ありがとうございます。古米先生、よろしいですか。
○古米委員 はい。
○大野部会長 ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。それでは、関連したことで、次にいきたいと思います。次は、小井土参考人から資料5の説明を頂くことになっています。よろしくお願いいたします。
○小井土参考人 災害医療センターの小井土です。今回、お時間を頂きましてありがとうございます。私は、昨年度の特別研究、2020年オリパラ東京大会等に向けた化学テロ等重大事案への準備・対応に関する研究の概要を説明させていただきたいと思います。
 まず研究目的ですが、この研究班は研究課題を4本柱としています。1つ目は、Cテロの際に多数傷病者が発生した場合に病院前・病院内でどのような対応をすべきかということです。2つ目が、Cテロ時に必要な緊急時の医薬品(解毒薬あるいは拮抗薬)の種類と量及び備蓄に関すること。3つ目が、化学災害テロ対応の今までの資料を再整理して最新のものにすること。そして、今、備蓄しているものもありますが、それをどうやって現場まで搬送するかというような搬送スキームの研究ということで、この4本柱で進めております。
 もちろんこの研究成果は2020年のオリパラ東京大会の施策に反映されることになりますが、今日は、昨年度の研究の成果をメインのほうから一つずつ発表させていただきたいと思います。パワーポイントが47枚もあって時間が限られていますので、一部、端折っていきたいと思います。そして、番号を言いますが、このページ数ではなくてパワーポイントの右下に入っている番号で進めさせていただきたいと思います。
 まず3ページ目、Cテロ発生時の解毒薬・拮抗薬の種類と量の再検討につきましては、日本中毒情報センターの水谷先生と高野先生に担当していただきました。この件に関しましては先行研究がありまして、平成24年に吉岡先生が既に種類と量に関して検討なされ、国家備蓄も済んでいるわけです。もちろん、今回、東京オリンピックに関しましては特別の対応が必要ですし、平成24年から6年たっているということで解毒剤あるいは拮抗薬の状況も大きく変わっていますので、まずは、現状がどのようなことになっているかというような調査をさせていただきました。
 4ページ目ですが、都内の災害拠点病院80施設と医薬品卸68施設に対して、アンケート調査を行っています。そのアンケート調査の内容に関しましては机上配布資料という所に含まれておりますので、ちょっと見ていただけたらと思います。このアンケートと、後ろのほうにグラフが付いていますが、それが今回の結果になります。
 まず、これで現状が分かったわけですが、この備蓄量が適切であるかどうかを判断するためにはシナリオが必要になるわけですが、このパワーポイントの5ページのようなシナリオを想定しました。新国立競技場でサリンが散布されて、重症80名、中等症400名、軽症400名が出たという想定にしております。例えば重症であれば、1人に対して2時間以内にプラリドキシム(パム)が2筒、アトロピンが12筒が必要になるということになります。
 パワーポイントの6ページですが、そこからの計算でいくと、例えばアトロピンに関しては、重症、中等症、軽症を合わせて5,760筒が必要になる、パムに関しては960筒が必要になるということになります。それに対して実際にどのくらいあるのかということですが、机上配布資料のグラフを見ていただきたいと思います。まず、アトロピンに関しましては、縦軸が施設の数、横軸が備蓄量になりますので、右へ行くほど多く備蓄している施設があるということになります。その下がパムの備蓄量になります。この備蓄量と先ほどのシナリオを見てみると、どのような差があるかというのが一番最後の「在庫量及び必要量」という所になりますが、シナリオからいく必要量に対して、現時点で新国立競技場10km以内の28医療施設にはこれだけのものが備蓄されていますというようなことになります。
 今度は、その備蓄されたものをどうやって運ぶかという話です。それが資料の7ページ目からいきますが。7ページ目の搬送スキームに関する研究は、災害医療センターの近藤先生に担当していただきました。東京オリパラを想定した搬送スキームを策定するということですが、9ページ目の3つのことに関して検討させていただきました。まず諸外国の体制ということで、アメリカとイスラエル、この分野で進んでいると言われている国の2か所を調査させていただいています。
 12ページ目は、アメリカです。アメリカは、CDCがCHEMPACKチームというものを組織しておりまして、アメリカ全土の90%の人たちが1時間以内に投与できるように戦略的にCHEMPACKが配置されている。一応、写真に載っていますけれども、この特徴としては、CHEMPACKは人数分をこのようにパッケージングされています。どこに備蓄されているかというと、病院と消防署になります。内容が少し違っていますけれども、もちろん病院のほうが多く備蓄しているようですけれども、この2か所に備蓄しています。13ページ目がアメリカ全土のどこにどのようなものがあるかというように、これが戦略的配備ということになると思います。
 14ページ目、今度はイスラエルです。イスラエルに関しましては、この3つの対策が取られているわけです。国レベルの対策としては、15ページ目ですが、備蓄に関することです。もちろん、ある程度は病院に備蓄されていて、その次に、この青の丸印ですが、各医療圏の倉庫(6か所)に備蓄されていて、さらに、その上に中央倉庫(2か所)という所に備蓄されているということです。hospital、regional、centralな備蓄が行われているというようなことだそうです。16ページですが、更に優れているのは、この備蓄のものに対して専属のロジスティシャンが24時間体制になっておりまして、プラス、緊急走行車両というものも配備されていて、定期的に訓練を行っているということになります。
 次に、東京オリパラを考えたときにどのような搬送スキームがいいのかということです。これに関しては、18ページの4点に関して検討させていただきました。まず、備蓄の場所です。もちろん、先ほど言いましたように、平成24年の吉岡研究により既に国家備蓄があるわけですが、それを東京オリパラのために移動させるというのは、テロはどこで起こるか分かりませんので決していい案ではないというようになりますと、やはり東京オリパラに対して今ある国家備蓄プラスアルファのものを備蓄するべきであろうと。そうすると、今度はプラスアルファのものをどこに初期分配するかということを考えなければいけないわけです。
 22ページになりますが、研究班としては「二つの矢構想」というのを提言させていただいています。まず初期の備蓄のところがあって、その上に国家備蓄があるというようなことです。ポンチ絵にすると23ページ目の絵のようになります、二次医療圏に1つ、そして、その上に国家備蓄ということです。まず、何かあった場合に、災害医療センターあるいは救命センターに対しては、まずはその地域の備蓄を早急に搬送して、それでも足りない場合には、上の国家備蓄から持ってくるというように、一の矢、二の矢という構想にさせていただいています。
 では、二次医療圏においては、どこに置けばいいのかということです。東京都23区の中には地域災害拠点中核病院というのがあります。これは発災時には医療中核病院になるわけですが、ここには災害医療コーディネーターという者も指名されています。現実的なのは、この7病院に備蓄して、そして、指揮命令系統で、コーディネートしてくれるのは、災害コーディネーターが一番いいのではないかというようなことを今、考えております。
 もちろん、もう1つの案としては、26ページですが、二次医療圏の保健所に置くというような案もありますが、なかなか、24時間対応できないとか、様々なことがあるので、現実的には案1の地域災害拠点病院に置く、23区では7病院に置くのが現実的かなというような話になっております。
 またその1つのメリットとして、地域災害拠点病院からニーズがある災害医療センターに誰が運ぶかというと、DMATが緊急車両で運べば、その運んだDMATがそのまま病院支援もできるというようなメリットがあるのではないかと考えています。もちろんDMATだけではなくて、渋滞とか、いろいろなことを考えると、空路とか、あるいは警察車両との協働とか、いろいろなことを考えなければいけないわけですが、1つの案としてDMATがあるだろうということになっております。
 二つ目の矢の国家備蓄からどうやって持っていくかということですが、これに関しましては、NBCテロの連携モデルの中にも文言が入っています。搬送車両に関しましては、厚労省から警察、消防、海上保安庁、自衛隊に対して支援を要請するということになっていますので、このスキームを使えばいいのかなということになります。
 29ページ目は、指揮命令系統です。新たな二次医療圏の国家備蓄というのが出来るわけですが、そこのコントロールとかは災害医療コーディネーターが適切ではないかということになります。トップダウンでもボトムアップでもいいのですが、大事なことは、先ほどのイスラエルの例ではないですが、期間中だけでも専属のロジスティシャンを駐在させるのがいいのではないかと考えております。
 次に30ページですが、その利用に関しまして、国家備蓄であるわけですが、更に不足が生じた場合には、これもNBCテロの連携モデルの中に文言があるわけですが、厚生労働省に対して必要な医薬品の確保等を要請する流れを定めているということです。とにかく迅速性が求められますから、さらに、都道府県・国ともに、迅速かつ効果的な体制構築が今後、必要ではないかと思います。今後、この搬送スキームの研究班に関しては、今年度、先ほど言った搬送スキームに関するシミュレーション等を行っていく予定になっております。
 33ページに関しましては、Cテロ発生時に多数傷病者が出たときにどのように対応するかということを、病院前と病院内に分けて検討しております。病院前に関しましては、藤沢市民病院の阿南先生に担当していただいています。これは、方法としては、多数傷病者救命の観点から効率的で現実的な多数傷病者の現場対応の在り方を検討するということです。この1.海外の先進的指針の検証と、2.本邦の現行化学テロに対応する指針をワールドスタンダードを基に検証してみて、今後、どのように変えていけばいいのかということを検討しています。
 35ページ目ですが、我々は、東京地下鉄サリンを経験しており、問題点としては、二次災害を防ぐためにどのようにするかということに、かなりウエイトがあって、被災者の救命というところが十分ではないということが、世界のワールドスタンダードから見ると言えると思います。
 それがここの海外の先進的指針の検証ということで5つの項目で示されています。避難に関しては、救出・救助に関しては第一義にすべきだとか、あるいは、今、除染の方法としては脱衣とか水除染とかありますが、世界では脱衣と除染は別ものにしております。脱衣に関しては自分たちで行うが、除染に関しては専門的な者が行うというような観点が必要だろうと。そして、除染の方法に関しても、除染イコール水除染ではなくて、即席除染、粗除染、専門除染というような分けた考え方で、とにかくできるところからやるということが必要だろうとなっております。そのほか、被災者とのコミュニケーションの重視とか、あるいは、傷病者を通常対応と要支援対応に分離して対応したほうがいいのではないかというようなことが書かれています。とにかく、我々は「病院前」で一番抜けているのは、時間の観念が抜けているというところが、世界標準から見ると言えるということになります。
 36ページ目が、それを世界標準に合わせて、総務省、消防庁の計画と合わせてみるとこのような問題点があるのではないかということが箇条書にされております。
 37ページですが、今後、そういうことをプラスアルファして、世界標準を見て、時間の概念を足して、あと、除染の階層化あるいは、この研究成果を加味した論理的構築を足して、医学的な観点を重視した現場対応の指針を作るということが、今年度の目標となっております。
 今度は病院内での対応です。これは鳥取大学の本間教授に担当していただきました。正に、39ページの写真を見ていただくと、このように、これは吉岡先生のサリンの想定で、もし現時点で起こったら消防あるいは病院がどのように対応できるかということをシミュレーションでやっているわけです。40ページは千葉市で行っていますが、なかなか、その周辺の災害拠点病院には、除染設備があるものは3施設、あと、防護服は21着とか、非常に厳しい状況が分かっています。また、病院には、その対応を立ち上げる前に歩ける患者さんはどんどん入ってきますので、対応に関してはそういうことも考えておかなければいけないということです。
 41ページです。今後は、災害拠点病院と総合病院の対応と、一般病院の初期対応は分けて考えるべきだろうということで、今年度に関しましては、これらの対応策を作っていくということになります。
 最後に42ページです。最新の治療方法とか、そのような整理ということになります。これは日本中毒情報センターの吉岡先生に担当していただいております。43ページからですが、とにかく時間の観念が非常に抜けているということで、それを含んだ対応をしなければいけないということで、研究方法として、吉岡先生にもたくさんのことを研究していただいていますが、特に、やはり最新の治療方法等の整理ということですので、お願いしているのは、そのようなマニュアル、ガイドラインを作るということと、もう1つは解毒剤の種類ということで、45ページにあります。今、日本では、プラリドキシム(パム)ですけれども、静注薬しかないわけです。静注薬を投与するには、ラインを取って、そこから入れるまでは少なくとも20分程度掛かってしまうということで、これに関しましては、筋注用を作ってファーストレスポンダーに持たせるということが今後は必要ではないかということになります。米国の例が書かれていますが、アメリカでは、DuoDoteと言って、アトロピンとパムの自動注入注射器というもので、ファーストレスポンダーを3本ずつ持っているというような話です。あと、BAL軟膏、アセチルシステイン静注用とか、いろいろ書いてありますが、新しく開発あるいは認可しなければいけない医薬品があるということになると思います。
 プラス、成果物に関してです。昨年度に関しましては、サリンの対応マニュアルと基本データベースを最新のものに刷新していただきました。今年度は、びらん剤のマスタード、ルイサイトを作っていくということと、一般の医療従事者が分かりやすいパンフレット等を作成していくということになります。
 47ページ、最後のスライドですが、まとめです。解毒薬・拮抗薬の保有状況を踏まえ、オリパラに向けた国家備蓄の再検討が必要だということが分かりました。配送に関しては、私たちの研究班の提案では、国家備蓄と新規購入備蓄の2つの矢を作って、そこの搬送スキームも作成するのが重要ではないかということになります。また新規購入備蓄の初期分配場所としては、今回、東京都内においては災害医療中核病院を提案させていただきましたが、今後はそこの決定が重要でしょうということになります。また病院前・病院の対応に関しましては、ワールドスタンダードが大分変わってきていますので、そういうものを含めて、消防との連携の中では新知見に基づいた刷新が必要ではないかということになります。最後には、まだ日本に入ってきていないワールドスタンダードである解毒薬・拮抗薬というのがありますので、そういうものに関して、剤形も含めて見直しが必要ではないかということになります。ちょっと長くなりましたが以上です。
○大野部会長 御説明、ありがとうございました。ただいまの説明について御意見、御質問はございますでしょうか。
○遠藤委員 1つ。今回、解毒剤の搬送スキームということで研究されたということですが、今後、解毒剤と一緒に患者さんの搬送スキームが必要になってくるかと思うのですが、次年度のシミュレーションにおいて、それも合わせて検討されるということでしょうか。また、その辺りは消防庁との連携などが必要になってくると思うのですが、厚労省として、どのような形で取り組もうとされているのか、その辺りのことを1つお聞かせいただければと思います。
○小井土参考人 もちろんです、遠藤先生、非常に重要なことなのですが、私たち、今の研究班の中では解毒薬・拮抗薬の搬送スキームということで、重症患者さんが発生したら災害拠点病院からどうやって高度救命センターに運ぶかとか、そのような患者さんの搬送までは、この研究班の中では検討しておりませんが、それは重要な問題ですので、今、日本救急医学会を中心に学会の中でもコンソーシアムというのを作って、今では、20学会が合同して、ベッドをどうしようかとか、いろいろなことを考えています。それで、その中には東京消防庁も入っていますので、そういう所で今、患者さんの搬送に関しては検討されているということになります。
○遠藤委員 ありがとうございます。
○寺谷国際健康危機管理調整官 消防庁との連携という話がありましたが、こちらに書いてありますように、例えば、平成28年度救助技術の高度化等検討会という報告書がまとまっています。私の認識している限りでは、向こうの救急部門も毎年のように検討会を開催していまして、近年、オリパラについての報告書もまとめていますし、確か平成26年度か平成25年度ぐらいには大規模イベントに関する研究もしていて、その中でも搬送についても触れていたところです。消防庁としても、傷病者の搬送計画、しかも、化学もそうですし、多数傷病者対策の計画をしっかり作って医療側と消防側で連携していくことが大事だということも研究していきます。また、その中には、かなり踏み込んだことも書いてあります。現場で注射がどうしても必要なときはどうするのかとか、救命のことを考えれば、ある程度汚染した状態でも運ばなければいけないこともあるだろうとか、そのようなことも研究されていたように思います。この辺を議論するときには、搬送については消防側で検討すべきという言い方もあります。ただ、結局、議論を深めると病院の中に、完全に除染してくれないと受け入れないという病院があると、消防側も完璧に除染して持っていこうという話になってしまいます。恐らく先ほど小井土先生がおっしゃったのは、それでは助けられないケースもあって、であれば一定程度は汚染をしたまま搬送するか、もしくは、現場で投薬をしなければいけないというような発想もあるやに思います。このあたりの検討については、当然、地域でやるべきこともありますが、国としてやるべきこともあると思いますので、とにかく、こういう研究をすすめていただきつつ、今日、いただいた意見などもやり取りしながらやっていきたいと思います。
○大友委員 質問の前に、今、寺谷さんがおっしゃったことで。現場から薬剤を投与するということも検討していこうとか、汚染したままでも運んでいいのかなという議論が出ているということだったのですが。
○寺谷国際健康危機管理調整官 大友先生、消防庁の研究会に参加されていませんでしたか。まさにそこの研究会でまとめたことの中で、そんなことが言及されていたかと思います。
○大友委員 いや、私は入っていないですけれども。そうすると、平成28年度の救助技術の高度化等検討会の報告書若しくは、この中のマニュアルには、そのようなことは書かれていませんが、それ自体を今後、変えていくということに。
○寺谷国際健康危機管理調整官 それは、すみません、私の立場、もしくは厚生労働省からは軽々には発言できないところだと思いますので、やはりそれは、こういう意見があったということをお伝えした上で検討していただくものだと思います。
○大友委員 では、よろしいですか、関連して。
○大野部会長 はい。
○大友委員 これは小井土先生に質問ですが。薬剤の国家備蓄を増やすと、これも大賛成ですし、2段階で備蓄する、これもそれが現実的だと思うのですが、この備蓄している薬剤は、病院に運ぶ、病院に持って行くということでよろしいですか。
○小井土参考人 現時点としては、現場ではなくて、患者さんが集まってくるであろう災害拠点病院とか、あるいは、救命救急センターということを今、考えています。どうしても医療従事者が、もちろんホットゾーンは全く入れませんが、ウォームゾーンまで行くのか行かないのか、あるいは現場まで行くのかというのは、これはまた別の議論がありますので、そこで議論すべきだと思います。ただ、東京DMATに関しても、今、特殊チームを作っていますが、コールドゾーンでは活動するということになっていますので、もしもしっかりとした安全が確保できるのであれば、現場でのコールドゾーンまでの配送が必要になれば、そういうことも考えておかないといけないかなと思います。
○大友委員 いや、先ほど筋注用も用意するということだったので、それは現場かなというように思いました。アメリカ、6ページ、イスラエル、8ページ、これは結局、オートインジェクション、オートインジェクターが半分になっている、イスラエルもオートインジェクションということで。やはりこれは現場で使わないと間に合わないということの裏返しだと思うのですが。
○小井土参考人 そうですね。
○大友委員 水谷先生のシミュレーションで80名の方にパムとアトロピンをこれだけたくさん、2時間以内に投与というのですが。多分これは、ほとんどの患者は、病院に来られない現状の消防のやり方だと病院には届かないと思えますので、やはり消防の対応をもっと、阿南先生に頑張ってもらうということなのでしょうけれども、早く今のやり方を変えてもらう必要があります。現場の120m前で一旦止まって防護服を着用して、人が倒れている所は全部レベルAで対応する。ですから、建物の中にはまず入れない、外で倒れている人をやっと何とか脱出させるぐらいの話だということです。黄色の人も、倒れてしまえば、その周辺はみんなホットゾーンということなので、レベルAの防護服の数からしても、患者のほとんどは病院には届かない。ですから、幾ら病院に大量の薬剤があっても、注射できる機会がないと。これは3年前の私の厚生科学研究で調べたところ、そういう結果ですので、是非とも消防の、この計画の見直しをしていただかないと駄目だと思っております。
 あと幾つかあるのですが、もしほかの方があれば、その後でまた。
○大野部会長 ほかにございますでしょうか。
○倉根委員 シナリオがないと、なかなか計算も難しいのだと思いますが、ここにお示しいただいているサリンのシナリオはかなり大きく見積もったシナリオなのですか。幾つかのシナリオがあった中でこういうものを選んで今回はお示しいただいたということなのですか。それとも、あとはほかのケミカルに対してのシナリオも当然あると思いますが、これは一つ一つ埋めていくということになるのでしょうか。
○小井土参考人 一応、参考とさせていただいたのは、平成24年の吉岡先生のシナリオを参考にしております。どちらかというと、大きいか中ぐらいか小さいかというようなことになりますと、多分、重症は80名で、中等症400名、軽症400名ということですので、小さくはないと思っています。一応、みんながみんな別々のシナリオで話していると話が混乱してしまうので、それが起こるかどうかは分かりませんが、一応シナリオを統一して検討していったほうが現実的な話につながるのではないかということで、シナリオを作成させていただいているところです。
○大野部会長 よろしいですか。
○野村委員 質問なのですが、最初の所に「地方で起こったときに対応が困難な可能性が高いため」ということで、国家備蓄以外にとなっているのですが、今回は二次医療圏、保健医療圏も東京都のものをお示ししていただいていますが、東京都以外の地方で起こった場合については何か知見があるのでしょうか。
 あと、先ほど、五輪期間中だけでも専用の注用剤という話でしたが、薬自体を、それ以外の期間中にというのはリスクがあると思うのですが、その辺の検討はどのようなことでしょうか。
○小井土参考人 まず、場所に関しては、ロンドンオリンピックのときもそうでしたが、決して会場で起こるわけではなく、ソフトターゲットということになりますから、日本全国のどこで起こるか分からないのですが、私たちの研究班としては、まずは会場を中心に考えましょうということで、昨年度に関しては東京都内、今年度に関しては会場が幾つかの県に分かれますので、そこに対する検討を加えていこうということを考えています。それ以外に対しては、国家備蓄が既にありますので、それで対応していくということでよろしいのではないかと考えています。あとは、そこの搬送スキームさえ、しっかりと作れば可能かと考えています。
○大友委員 もう1つ、ものすごく喫緊の課題だと思われるのは病院の受入体制です。サリン事件のときに、8時18分に消防から聖路加病院に、「茅場町駅で地下鉄爆発火災」という連絡がきたのですが、最初の患者が来たのは、その12分後の8時半になっておりまして、汚染した患者がすぐに来てしまうということです。ですから、現場除染等はもちろん消防でやっておられるのでしょうけれども、一方で、現場で汚染して具合の悪い人を、消防の対応が遅いので、待っていられない。家族や友達がタクシー等で病院に運んで来るだろうということになりますので、それに対して準備をしなければいけないのですが。まともな除染体制を持っている病院は全国で10か所あるかないかだと思いますが、ほとんどの病院は除染テントというものを持っていますが、これはまず使いものにならないということです。10数分で患者が来院するのですから、テントを立てている場合ではないと。ですから、病院の入口で服を脱いでもらうことと、シャワーは病院の中にお湯はあるので、テントを買うより全然安いので屋外にシャワー設備を設置する、そういうことをやってもらう必要があると思います。
 しかし病院はギリギリの採算性でやっていますので、お金を生まないものに関して病院がお金を付けるのはなかなか難しいのですが、余り大きな金額ではないので、うまく予算措置してそういうことをやってもらうように、院内の体制を作ってもらうように、今、行政からの通知と補助事業を始めないと、多分オリンピックには間に合いません。研究している段階ではなくて、今言ったようなことはもう進めないといけないのではないかと思います。
○小井土参考人 先生がおっしゃられた除染の考え方とか、受入れの考え方というのは、私たちの研究の中では病院前の所、病院の中で除染に関しても先ほど言いましたように、脱衣と除染を別々に考えるべきだと。脱衣に関しても段階的にやればいいわけで、本当に水除染が必要な人は、東京地下鉄サリンのときも数名だけだと言われていますから、脱衣と拭き取りだけで90%は除染できるというようなことを含めて、報告書の中に反映していきたいと思います。
 消防との連携に関しても、こうあるべきというのではなくて、世界的な標準的基本対応はこのように変わってきているというようなことを提言していきたいと思っております。ありがとうございます。
○遠藤委員 先ほどの件と関係があるのですが、病院前だけではなくて、化学テロを想定したときの多数傷病者発生時の大友先生がおっしゃられた自力歩行の患者が多数押し寄せてくるという段階で、その患者自身がパニックにならないために、あるいは病院での限られた対応者で対応できるように、国民とか知識のない人にも最低限の基礎的な除染に関する知識、脱衣に関してスムーズな除染を行えるような、そういった知識の普及というのが必要になってくると思うのです。その辺りはこの研究で検討される課題として予算上入っているのか、それとも別の所で検討されるような課題として挙がっているのか、その辺りのことを教えてください。あと、もう1つ解毒剤のことでお伺いしたいのですが、先に以上の点について教えていただければと思います。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 これに関しては内閣官房のほうで、武力攻撃やテロなどが身を守るためにということで、一般国民向けにどういった対応をするかということについて、ホームページの中にポータルサイトを作っておりまして、そこで周知しております。そういった中で、我々としても必要な役割を果たしていきたいと考えています。
○五十君委員 今のことに関係すると思うのですが、スライド36、スライド37に、問題点の抽出として多数傷病者の救命に重点ということ、時間という概念をきちんとしなさいということがあります。これに関しては、今後どういう形でこの研究班で対応して提案していただけると考えればよろしいのでしょうか。
○小井土参考人 各国の対応のガイドラインやマニュアルを見ると必ず時間が入っていまして、何分以内に除染すべきだということが入っていますので、私たちの研究班の中では時間の概念を入れた対応策を作成することになります。ですから、それを病院や消防等に参考にしていただいて、あとは両者の中での検討課題ということになると思います。
○遠藤委員 先ほどの45ページの「国産化の臨まれる解毒剤」の部分です。その中のプラリドキシム注射剤は剤形変更が望まれます。現在日本で臨床現場で使用されている解毒剤自体、静注専用です。先ほど小井土先生がおっしゃったように、医療現場でもルートを取って対応するには時間がかかるということで、世界標準としては、オートインジェクターやその他に臨床現場で使われているものが筋注も静注も両方できるパウダーの製剤です。日本の場合は、静注専用で20mLのバイアル製剤であり、それを筋注で代用するということは不可能です。オートインジェクターとまではなかなか難しいとは思いますが、そういったタイプの、日常医療でも使える筋注製剤の開発も踏まえた開発企業の候補選定を、国のほうからこの機会に取り上げていただく必要があると思います。この問題は8年前に既に日本中毒学会と日本中毒情報センターから、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬として、医薬品として承認してほしいという要望をだしましたが、日常臨床では問題ないとうことで必要性が認められませんでした。多数傷病者が発生する化学テロを想定している、この機会に少しでも進むように、前向きに取り組んでいただけたらと思います。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 国家備蓄の状況自体が危機管理に関するものでありまして、こういった米国のものや日本のものをどういった形で備蓄しているかを具体的に申し上げることはできないのですが、現場の化学テロへの対応に対して迅速にするということ重要ですので、研究企業など、いろいろと調整がありますが、一般的には先生方の御意見を踏まえながら、より良い対応ができるように努めていくというのが我々としての立場と考えております。以上です。
○大野部会長 まだまだ御質問はあるかもしれませんが、予定時間を大分過ぎていますので、次に資料6の説明を伺いたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○野口専門官 資料6を御覧ください。テロ等が発生した際は、初動の中で、傷病者は病院の中に搬送されるわけですが、昨今は病院もソフトターゲットであるという認識が必要であるとなっております。それを踏まえて、受入病院の安全確保に向けた取組を検討する必要があり、現在進めているところです。
 現状としては、そちらにあるように、対策の目的は医療機関におけるセキュリティ体制の現状を把握し、管轄警察署による管理者対策、テロ対策に有効な手法等について必要な指導・助言・協力等を行い、受入病院の安全確保を図るというところです。
 下のタイムスケジュールと合わせて御覧ください。平成29年度から、こちらの取組は行っており、現時点としては警視庁が作成した「中小企業におけるテロ対策マニュアル」を参照して調査項目を作成し、アンケートを東京都を通じて実施したところです。これに関しては、平成30年度にしっかりと精査した上で、右にあるような対策の深化ということで進めていきたいと考えております。その後、対策の深化を合わせて、東京都以外の所でも進めていければなと考えております。事務局としての説明は以上です。
○大野部会長 ただいまの説明について、御質問、御意見はございますか。
○大友委員 これはすごく大事な取組だと思います。テロリストがプロであったら、爆弾などを使ってテロを起こしたときに近隣の病院もターゲットにするだろうということで、ボストンマラソンの爆弾テロのときには、警察が近くの外傷センターの入口にすぐに駆け付けて警護をしておりました。ですから、もしプロのテロリストが起こすテロであったら、間違いなく病院は危ないので、警察にそういうことをお願いしなくてはならないのですが、警察は犯人の確保には行くけれども病院を守ることはできないということでした。是非とも取組でその辺をうまくやっていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○野口専門官 事務局から追加です。これに関しては、現場になる病院は管轄の警察署ということで、東京であれば警視庁と病院の連携が一番考えられると思うのですが、病院と警察機関は結び付きが弱いという部分もあるので、上の省庁として、厚生労働省と警察庁といったところで合同でこちらに関しては進めているところです。
 実際の内容に関して、通常にテロが起きた際に病院の警護のイメージはあるということなのですが、平時よりどのように受入病院の安全確保をするべきかといったところをアンケートであぶり出しを行います。その後、対応の深化に当たってはアンケートを通じて、どういった対応をしたらいいかといったところを訓練等で深化させていかれればいいというようにイメージしております。
○大野部会長 よろしいでしょうか。それでは次の議題に移ります。次は、松井参考人から資料7の説明を伺うことになっています。よろしくお願いいたします。
○松井参考人 国立感染症研究所感染症疫学センターの松井です。資料7に従って、厚生労働科学研究において検討した進捗について御報告いたします。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての感染症のリスク評価について。背景としては、皆様御懸念のとおり、東京大会に際しては様々な国々からの訪日客の増加に伴う感染症の発生リスクの増加が懸念されております。また、地方の実情に合わせてリスク評価を行い、適切な対策を取っておくことも重要だろうと考えております。当研究班においては、国立感染症研究所、地方感染症情報センターの関係者、また一部病院の関係者等の方々の御協力を頂きまして、東京大会に向けての検討も行っております。研究班の概要は資料に示すとおりです。
 研究結果の概要については、今回は時間の関係上、詳細は控えますが、資料の11ページ、もともとの資料番号の9ページを御覧ください。中段の辺りに「ステップ2の結果のまとめ」ということで、感染研として全国の感染症発生状況を基にまとめた結果をまとめています。表においては、リスクの評価の切口として、輸入例の増加、感染伝播の懸念、大規模事例の懸念、かつ高い重症度というような3つの切口を代表的に提示しております。この検討の結果、表3のすぐ上ですが、麻疹、侵襲性髄膜炎菌感染症、中東呼吸器症候群、腸管出血性大腸菌感染症は、まず注意すべき感染症ということで、リストアップしております。
 次のページを御覧ください。「表3に関連した特記事項」として、表のすぐ下から提示しています。加えて、輸入感染症については、一般の臨床医の診断経験が乏しいこと、また特異的な検査が医療機関レベルで行えないものもあり、診断が難しいと懸念されています。
 次のページを御覧ください。健康な人が突然、重症病態に陥り、特定の診断が付かないまま、「感染症も否定できない」との報道がなされた場合においては、リスクを認識する上での大きな課題が起こることが想定されると、このような形でまとめています。
 資料7の頭紙にお戻りください。このような研究結果に基づき、昨年の10月5日に、厚生労働省から各自治体に対し、この手順書を基にリスク評価を行っていただくよう要請が出ております。現在は、各自治体からのリスク評価結果の報告を受けているところです。この結果を基に、各自治体において、また国レベルでのサーベイランス体制の強化等について、当研究班において引き続き検討を行っていきたいと思います。私からは以上です。
○大野部会長 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明について、御意見や御質問はございますか。
○大友委員 各自治体にリスク評価をしていただいて、もう回答を得たのでしょうか、これからやるのですか、それとも回答を得ているのでしょうか。
○松井参考人 今、回答を順次、頂いている状況です。
○大友委員 分析はこれからということでしょうか。
○松井参考人 はい。
○大野部会長 ほかにいかがでしょうか。
○野村委員 1つは、時期は違いますが平昌オリンピックで、こういった厚生労働省が取り組まなければいけない課題に関して、新たな問題点や知見、参考になる点があったかどうかについて、あればお聞きしたいなということが1点です。
 あと、先ほどの厚生労働省の取組のところで聞くべきだったと思っていますが、松井先生がおっしゃっていた報道がなされた場合にも関係すると思いますが、基本的に、先ほどの周知と徹底というのもあるのですが、実際に起きた場合というのはかなり情報のパニックが起きると思います。それで、対応策をあらかじめポータルサイトに置いておいても多分、誰も見ていなくて、何か起きたときにパニックになったときに、もちろん偽の情報というか、おかしな情報がどんどん流れていくことに対しての対策というのは厚労省の取組の中ではないのですか、どこでやっているのでしょうか。この2点についてお願いします。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 まず、全体のオリンピックに関するテロの対応というのは、最初に御説明しましたように、セキュリティ幹事会、テロ等警備対策ワーキングチームということで、これは厚生労働省で完結するものではありませんので、政府全体の取組の中でやっているということが、まず1点です。先ほどの受入病院の安全確保に向けた取組も、警察庁との連携がありました。そういった全体の中で一丸的にやっていくということであり、我々の取組も、そこに整合性のある形でやりたいと考えております。
 そして、平昌の対応については、当然、こちらは政府でも視察等をしており、状況は把握しております。分析はこれからです。ただ、東京のような大都市と平昌のような地域では、大分人口密度も会場の広さも違うところがありますので、そういったところの様子を見ながら、どういった対応をしていくかということかと考えております。
 そして、周知徹底の話です。これも最初に申し上げましたが、内閣官房が全体としてはやっているのですが、本日頂いた御議論は然るべき所にお伝えしますので、そういった中で政府全体として統一感のある対応の中で、我々としてもやるべきことをやっていきたいと考えております。以上です。
○大野部会長 ほかにございますか。それでは、五輪関係はこれでおしまいということで、次の議題5「災害対応に関する平成31年度厚生科学課予算事業について」の説明をお願いいたします。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 資料8を御覧ください。内閣府から、厚生労働省の業務継続計画(BCP)に関して、有識者による評価・提言という通知があり、かい摘んで言いますと、大きく2つの指摘がありました。下の矢印の所に書いています。
 1つ目が、関係機関の担当部署との非常時連絡体制を検討しておく必要がある。特に非常時の通信手段の確保について、固定電話、携帯電話が使用できない事態を想定し、各局レベルの具体的な手段も含めた検討が必要である。このような通信に関する指摘です。
 あと1つが、災害対策本部の設置訓練では、災害状況を付与した上での意思決定及びオペレーション訓練をしておく必要がある。また、有識者による外部評価や、関係する地方自治体との合同訓練も実施する必要がある。このような訓練に関する御指摘を頂いたということです。
 これを受けて2つ目の○です。厚生科学課では、目下、来年度の予算事業として以下の内容を検討しています。よろしければ、この辺りについて御意見を頂ければ、今後の検討の参考にしていきたいという趣旨です。
 まず、通信に関するものです。「災害時等通信機能強化事業」です。厚生労働省の非常用通信ツールは、災害時優先電話・中央防災電話(FAX付)が設置されていますが、中央防災無線は原則的に中央省庁間での通信にしか対応できず、現地対策本部や地方支分局、関係機関との通信体制は脆弱ということがあります。特に、データ通信に関しては、本省内でも非常用ツールが確保されておらず、災害時の膨大な情報伝達を音声でしか伝達できない状況となっています。本事業では、衛星携帯電話、高速衛星データ通信の導入等により、厚生労働省の本省・現地対策本部・地方支分局・関係機関等との間で通信体制を確保して、災害時の通信機能の向上を図っていきたいと考えつつ、検討しているところです。
 2つ目が、「災害等対応能力向上事業」です。厚生労働省では災害対応等の訓練では省内各局の対応や関係機関と連携した対応までは含まれておらず、十分に実践的なものとは言えないということで、現行の訓練を拡充させていく必要があると考えています。
 この際、先ほどの話にもありましたが、「災害において直接国民に支援を行う地方自治体の災害対応訓練のノウハウ」、「先進的な訓練を行う他省庁の災害等対応訓練のノウハウ」、そして「外部専門家による第三者からの評価」を活用することが有用ではないかと考えております。本事業では、厚生労働省災害対策本部構成員、及び災害等対応を行う部局に対して、災害等に関する基礎研修、関係機関と連携した訓練等を実施し、省内の災害等対応能力の向上を図っていきたいと考えながら検討を進めております。私からの説明は以上です。
○大野部会長 先生方から御意見を伺いたいということですが、いかがでしょうか。
○野村委員 「データ通信に関しては、非常用ツールは確保されておらず音声でしか伝達できない状況」というのは、現在がそのようなことだということですよね。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 はい。
○野村委員 東日本大震災も7年前にあったのですが、その辺りが、今もまだ整備されていない理由は何かあるのでしょうか。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 インフラ自体が回復したら通常回線で使うことができていますので、そういったこともあるかもしれません。ただ、非常用のところが弱く、なぜこういう状況になったかというのは分からないのですが、少なくともこれはやらなくてはいけないということで、来年度以降はやれるようにしたいという意思表示ということです。
○大野部会長 ほかはいかがでしょうか。
○五十君委員 緊急時対応というのは、どういうものを想定するかによって状況が変わってくると思うのですが、今回強化するという議論を進めていくターゲットは、資料の2ページにある首都圏直下型地震を中心に考えるわけですか。それとも、ほかのことも含めて、どの程度の想定をされて議論されるのかが分かりにくかったと思います。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 ベーシックとしては、首都直下地震ということで提言を受けたものですので、それを踏まえてということになりますが、実際にこれを踏まえて地方支分局に通信ツールを置けるような体制にすれば、一般の災害においても対応できるようになると考えております。もともとの提言自体はBCPに関するものなのですが、我々としては、それも含めた形で、一般的な災害対応のときの通信ツールの向上であったり、訓練能力を向上していきたいと考えております。
○大野部会長 私からですが、通信などですが、こういう災害対策のときにはいろいろと法的な整備も必要になってくるのかなと思ったのですが、例えば通信の中でも特定の電話しかつながらないようにするとか、そういうことがないと東日本大震災のときに全然つながらなくなってしまいましたが、そのような時に非常事態に対応している部署の電話はつながるとか、特定の電話だけがつながるようにするとか、電話番号の末尾が1番のものだけつながるとか、2番のものだけがつながるとか、そういうことが可能なような法的な整備も必要な対応はないのかなと思ったのですが、そういうのはいかがでしょうか。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 まず、災害時の通信ということで、中央防災無線、あるいは中央防災電話ということで、特別な回線はあります。ただ、それが現時点ではすごく限られた範囲ということですので、現地対策本部が立ったときに厚生労働省の情報がすぐに取れるようにならないと、Second Handになってしまうというのはありますので、予算事業で、今回の予算を頂けることになった場合には、厚生労働省からも直接情報を取れるような体制ということで強化していきたいと考えています。
○大野部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議題5については説明を伺って、御意見も伺ったということで、議題6にいきます。「その他」ということになりますが、何か報告事項などはございますでしょうか。事務局からはございますか。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 特にございません。
○大野部会長 先生方からはいかがでしょうか。
○大友委員 今日はテロ対策ということで、主に化学テロを中心に、あとは感染症ということで議論されましたが、世界的にテロの発生件数は1万7,000件起きていて、そのうちの7割が爆弾で、2割強が銃の乱射ということで、化学テロというのは兵器で使うこと以外には、もちろん北朝鮮が持っているということはあるでしょうけれども、発生頻度からするとかなり低いという状況で、もっと爆弾テロのことに関してしっかりとやらなければいけないと思うのです。
 実際に、秋葉原の僅か10数人のけが人でも、受入先が決まるまでに50何分かかってしまっているということを考えると、都内のどこかで爆弾テロが起きたときに、その受入れに関して相当な困難が生じると。もちろん厚生労働省としては、外傷外科医の養成はやっていらっしゃいますが、やはり病院の体制に関してもっときちんと課題を、大体課題も分かっておりますが、爆弾テロに関する医療体制に関して取り組む必要があるのではないかと思いますので、是非お願いいたします。
○寺谷国際健康危機管理調整官 ふだんの急病の発生のときには119番が要請されれば、そこで救急車が行って、そこで病院選定をしています。ただ、多数傷病者が起きたときには、いちいち個別の救急車が個別に病院選定をやっていれば救急車のほうも混乱するだろうし、受け入れる病院も混乱するだろうということで、違うスキームが必要になります。
 私の知っている限りでは、消防庁が去年か一昨年ぐらいの救急業務の在り方検討会の中でも、そのことには多少言及していました。
 他方で実は、それは病院側の問題でもあって、消防がいくらそれをやろうとしても病院側のスイッチが入らなければ、ふだんのとおりに一件一件電話をしてくれとなります。そういう場合は歩いて来る人もいるし、場合によってはアポなし搬送も受けなければならない状態になるはずなので、こういう事態に備えて、地域ごとに消防と救急、場合によっては保健所も入って計画を作らなければいけないというのは、確かに4、5年前に消防庁からもそのような研究結果や報告結果は出ているはずですから、恐らく東京オリンピック等に備えて地域で進めていくと認識しています。ただ、進まない地域に促していくことを、消防もそうですし厚労省側も促していくことが必要になるのだろうと思います。
○大友委員 現状ですと、たくさんのけが人が発生すると一遍に全員は運べないので、現場に救護所を設置して、重症の人から安定化処置を行い、重症の患者は一部の特定の病院に運ぶのではなくて分散搬送しましょうという計画なのですが、爆弾テロの場合にはそれは具合が悪いということです。
 ボストンマラソンのときに、現場に確か200床レベルのすごく立派な救護所があったのですが、そこは使われませんでした。それはどうしてかと言うと、そこに爆弾があるかもしれないというリスクがある中で、そこにたくさんのけが人を寝かせて診療することは無理だということです。それから、爆弾テロのときに、通常のトリアージを実施すると相当間違ってしまうので、実際に秋葉原のときも医科歯科に3人の患者が来たのですが、3人目の人が一番重症で、その人は現場で黄色が付いていたということがありました。その方は病院に来てすぐに亡くなってしまったのですが、つまり現場でトリアージを行うことが好ましくないことと、現場にたくさんの人が集まることが危ないということ、それから搬送先を分散することにすごく時間がかかるということから、直近の病院一旦、全ての患者を搬送し、そこを現場救護所とする、そこはしっかりと警備してもらうということです。重症と思われる人は全部直近の病院に集めるというようなやり方に、ドラスティックに変えないといけないのではないかと思いますので、その辺はどこかで是非検討いただきたいと思います。これは医療機関や消防にも納得していただかなければいけないので時間がかかると思いますので、かなり早く動かないといけないのではないかと思っております。よろしくお願いいたします。
○大野部会長 事務局から何かありますか。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 関係省庁ともしっかりと情報共有して対応を考えていきたいと思っております。
○大野部会長 ほかにございますか。よろしいですか。それでは、これで本日予定していた全ての議事が終了いたしました。次回の開催について、事務局からお願いいたします。
○松崎健康危機管理・災害対策室長 次回の開催は未定ですが、緊急に開催を要することがなければ、年に1回程度、定例で開催したいと考えております。その際は、追って日程調整等の御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
○大野部会長 それでは、本日はこれで閉会といたしますが、多くの重要な御意見を頂き、どうもありがとうございました。

 

(了)

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