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視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第3回)議事録

 
1.日時
 令和元年11月29日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所
 文部科学省東館13階 13F1~3会議室

3.議題
 1.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る基本的な計画の策定について
 2.その他

4.議事録
【中野座長】 それでは,定刻になりましたので,ただいまから視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第3回)を開催させていただきたいと思います。
ちょっと電車の遅れ等で遅れておられる委員の方もおられるようですけれども,昨日に引き続き,お忙しいところお集まりいただいて,まことにありがとうございます。
本日は,昨日に引き続き,第3回目の構成員からの意見聴取を行いたいと思います。その後,これまでの議論を含めて,全体を通した意見交換を行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。本日の会議は10時から12時までの2時間ということでございますので,よろしくお願いいたします。
では,最初に,本日の配付資料の確認と委員の出席についての確認を事務局よりお願いしたいと思います。

【小林障害者学習支援推進室長】 本日の配付資料は,きのうの会議と同じく,ピンクファイルにとじてございます「構成員から提出されたヒアリング資料」,このほかに資料2,3となります。不足などございましたら,事務局まで知らせいただきますようお願いします。
また,本日の会議は,阿部委員,市川委員,近藤委員が御欠席でございます。

【中野座長】 どうもありがとうございました。
今それで見形委員と河村委員が少し遅れて来られるという御連絡を頂いております。
それでは,これはもう3回目なので,皆さんは十分御承知だと思いますが,意見聴取の進め方について,事務局より確認をお願いします。

【小林障害者学習支援推進室長】 再度,本日の意見聴取の進め方について御説明いたします。前回までと同様に,皆様の発表は15分以内でお願いします。時間管理のため,残り1分となりましたら,事務局がベルを鳴らしますので,発表者の方は御発言をおまとめください。その後,質疑応答と意見交換の時間を20分設けます。4件のヒアリングに関する内容を中心に御発言いただきますようお願いします。その後,全体を通した意見交換を行います。
以上です。

【中野座長】 どうもありがとうございました。
きょうは,前半では意見聴取の続きで,後半では意見交換ということになります。
それでは,最初の御発表を樋口委員よりお願いしたいと思います。

【樋口委員】 日本書籍出版協会の樋口と申します。よろしくお願いいたします。このたびはこのような場に参加させていただきましたこと,大変光栄に存じます。
視覚障害者の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)が施行されまして,このように基本計画が策定されるということは大変喜ばしいことであると思っております。出版界といたしましても,全ての国民がひとしく出版物を利用することができるような環境整備を図るために,できる限りの努力,協力を行っていくということはもとよりのことでございます。
ただ,一方で,皆様は御承知かと存じますけれども,出版界は今大変厳しい状況にあります。出版物の売り上げは,1996年をピークに下がり続けておりまして,ほぼそのピークの半分まで落ち込んでいるという状況でございます。
そのような厳しい環境下におきまして,各出版社もそれぞれ経営の効率化を図ったり,経費の節約を行ったりといったことでビジネスを進めているわけでございます。そういった中で,なかなか余裕がなくなってきているということも事実でございます。そういったこともあるのかもしれませんが,現状では,前2回御指摘のように,障害者の方々に対して,十分な提案ができていない,御要望に十分応えられていないというような現状があるということは否定できないのかなと思っております。
ただ,一方で,前2回でいろいろ御指摘がございましたとおり,この障害等を持った方々というのが実は国民の相当な割合を占めているということについては,まだまだ出版界の中でも十分な理解が及んでいないのではないかと思っております。ディスレクシアの方が5%から10%,それから高齢者の方々に至ってはもう人口の3分の1近くになっているわけでございますが,そういった方々も我々にとりましては読者であります。そういう本来読者である方々のことをちょっと忘れてしまっている。潜在的な読者を我々は失っているのではないかというような気もいたします。そういった観点から,それは我々のような団体の仕事でもあるのかもしれませんが,出版界に対して現状の周知を図るといったこともまず必要ではないのかなと,これは前2回の皆様方の御意見や御報告をお聞きして感じるところでございます。
そういった中でどのような改善をしていったらよいのかということにつきまして,出版界として持っている懸念につきまして,そのようなことが解消されるということが必要ではないかという点を何点かまとめておりますので,それについてお話ししたいと思います。
まず,データの目的外使用等に関する懸念ということでございます。電子データの提供ということについての御要望が非常に高いということは存じております。前々からそのようなお話を承っております。もちろん,それが視覚障害者の方をはじめとする障害等をお持ちの方にそれを提供したことによって,そのデータが流出して目的以外に使われるといったことがあるとは思っておりません。そんなことは恐らくないであろうとは思うわけでございます。ただ,一方で,御承知のように,昨今,海賊版といった問題が出版界で大変大きな課題になってきております。そういった中で,出版社が,自己の財産というか,財産の全てであると言ってもいいと思いますけれども,そのコンテンツのデータを提供するということについては,十分な安心感を持ってそれが行えるような環境が必要なのではないのかと思っております。
また,電子データの提供ということについても,日本の出版物には結構その版面を凝って作っているものが多いわけでございまして,その印刷版の内容が電子データの提供によってそのままの形で同一性を保持して御提供できるのかどうかといった心配もあるわけでございまして,その辺のところも一つの懸念であるかもしれないと思っております。
それから,2番目としましては,データ提供に係るコストの問題でございます。テキストデータの御提供ということについての御要望が非常に大きいわけでございますけれども,実はテキストデータというのは,出版物製作の過程で生じるものではなく,最終版の印刷用データから改めて抽出するということが必要になります。そうしますと,そこでは新たな費用が発生してくるわけでございます。それを誰が負担するのかという問題が出てまいります。
それから,出版社は,実は非常に小さな会社が圧倒的に多く,現在でも日本中に3千数百社,出版社があると言われておりますけれども,そのうちの約50%は従業員10人以下という非常に小さな所帯でございます。そういった出版社の中で,そういう障害を持った方々からの御要望が日々どんどん来るということになりますと,それを担当するセクションを独立で設けるということは到底できないわけでございますので,営業部なり編集部なりが片手間にやるということになってまいります。そのような業務上の手間といったものも織り込んでいかなければならない。そういったことをどのような形で全体のコストの中で吸収していくことができるのかといったことも考えなければならないということかと思います。
ただ,一方で,それが先ほど最初に申しましたように,国民の読者の相当部分がそういった障害をお持ちで,読書に対して何らかの困難を持っていらっしゃる方だということになりますと,それを含めた原価構成といったものももしかしたら考える必要があるのかもしれない。ただ,だからといって,それを吸収するために定価を上げるということがそう簡単にできるわけでもございません。競合の出版物がたくさん出ている中で競争しておりますので,定価を上げればいいということにもならないわけでございまして,なかなかこの辺は悩ましいところかと思います。
いずれにしましても,国民全体が障害者を支えていくというようなことが必要なのだろうと思いますので,出版社だけに負担が偏ってくるということについては,何らかの御配慮を是非頂けないかというところが,そういった経済合理性がなければ,なかなかこのようなシステムの持続可能性というのは担保できないのではないかなと考える次第でございます。
それから,著作権者の許諾を得るための対策ということも必要かと思います。出版社というのは,ほとんどの場合,著作権者から出版という態様による利用,それは紙であったり電子であったりするわけですけれども,その許諾を受けて,その範囲においてビジネスを行っている存在でございます。出版社が独自の権利を持っているわけではございません。もちろんいわゆる法人著作とか編集著作といった形で出版社独自が権利を持っているケースもないわけではないのですけれども,それは全体の1割程度にしかすぎません。大半の場合には,著作権者の権利をお借りしてビジネスを行っているわけでございますので,その著作権者の許諾がないと,出版以外の想定されていないコンテンツの提供ということについては,法律上も疑義のあるところになります。このようなことを出版契約の中で当初から,障害等をお持ちの方のための提供について許諾を得ておくといったことも今後必要になってくるのではないかと思っております。
ただ,既に行われていることといたしましては,私ども日本書籍出版協会では,出版契約書のひな形というのを出しておりますけれども,その中では,既に数年前に電子出版に関する出版権制度が改正されているわけでございますが,それを機に,自動音声読み上げに係る口述権の許諾につきましては,ひな形の中で,電子書籍の発行に含めて許諾を受けるという形で対応しておりますので,書協のひな形をお使いであれば,その部分の許諾は既に著作権者から得て出版社が持っているということになりますので,この辺は電子書籍の製作の中でそういった契約関係というものが生きてくるのではないかなと考えております。
いろいろ御要望等はあろうかと思いますけれども,現状の報告をさせていただきました。ありがとうございます。

【中野座長】 どうもありがとうございました。
引き続きまして,吉澤委員,お願いいたします。

【吉澤委員】 一般社団法人日本電子書籍出版社協会の吉澤です。書協さんと比べて電書協はちょっとまだ有名ではないので,少し協会のことを言います。
電書協は,2000年8月設立の任意団体「電子文庫出版社会」を2010年2月1日に一般社団法人として発展させた出版社の団体である。現在は,一般書の電子出版を手掛ける出版社25社が加盟している。電書協の理念は次の3つが柱である。一つは,著作者の利益・権利を確保すること,そしてもう一つは,読者の利便性に資すること,そして3番目に,紙とデジタルとの連動・共存。電書協の主たる事業は,電子出版事業に関する,1,制作,流通,サービス等の調査研究,2,情報の収集及び提供,3,法環境の整備及び提言,4,内外関係機関等との交流及び協力である。この1から4以外にも,当法人の目的を達成するために必要な事業に関わっています。
現在は,国立国会図書館の電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業(50か月)を受託しており,来年1月末の終了に向けて,最終段階を迎えております。この実証実験は,近い将来のオンライン収集,つまり電子納本に向けてのものでございます。
読書バリアフリー法と基本計画について。視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進して,障害の有無にかかわらず全ての国民が読書を通じて,文字・活字文化の恵沢を享受できる社会の実現に寄与するという読書バリアフリー法の目的は,十分理解できますし,社会的な必要性や時代の要請でもあることは認識しております。電子書籍は紙の本ではできなかったことを実現できる可能性があります。しかし,これは電子書籍が紙の本に取って代わるということではなく,紙も電子もという共存を目指しております。この読書バリアフリー法が施行されたことによる基本計画の策定には電書協は前向きに積極的に関わっていきたいと考えております。
きのうまでの2回のところで生の声をいろいろ聞いて,障害者の方の範囲は私が思っているよりも広いということを実感いたしました。
基本計画骨子案の施策の方向性に対する意見。3,特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援,2,出版者から製作者に対する電磁的記録等の提供促進のための環境整備への支援について,意見を述べさせていただきます。
読書バリアフリー法を推進するためには,特定書籍・特定電子書籍を作ることも一つの解決方法かもしれません。ただ,特定電子書籍には,著作権者の理解や許諾,出版社サイドには,特定電子書籍の管理・保存など,解決しなくてはならないハードルがあることも事実でございます。電子書籍は従前から,著作権者との電子出版契約を基に,それぞれの出版社が責任を持って製作して,本文データ,書誌情報,表紙画像等を含めてみずから出版社が管理して,市場へ流通させております。ファイル形式もIDPF(International Digital Publishing Forum。現在はW3C(World Wide Web Consortium)と合流している)が策定した世界標準であるEPUB3に統一され,電子書籍市場は形成されております。電書協加盟社では,EPUB3のリフロー型ファイルを多く製作し,配信しております。このリフロー型のEPUB3ファイルは,主要OS(iOS,Android,Windows等)の独自機能により,音声読み上げが既に可能になっています。もちろん,現状のままでなく,電子書店のサイト作りや閲覧ビューアのユーザビリティの向上等,各所の環境整備を前向きに取り組んでいくことが解決方法であり,この方法は意外と近道かもしれないと思っております。
また,電書協は,EPUB3制作ガイドを世界に先駆けて作成し,IDPFのホームページにも英文で発表しております。現在,日本のEPUB3電子書籍制作のスタンダードになっており,Amazon,Appleも採用しているという形です。
4,アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等,著作権者と出版社との契約に関する情報提供。
読書バリアフリー法を推進するには,出版業界のための新しい電子出版契約書のひな形が必要になるであろう。電書協加盟社も書協作成の電子書籍契約書をベースにしており,一部の出版社はこれをカスタマイズして使用しています。電書協の法務委員会,流通委員会,製作・技術委員会でもこのバリアフリー法について議論をする予定であります。
少しデータ的なことを言いますと,JPO(日本出版インフラセンター)のJPRO(出版情報登録センター)に書誌を登録している電子書籍は,きのう現在で21万8,435点。電子書籍の総数は,分冊や合本を含めると,確定できないのが現状でございます。電書協が運営している電子書店サイト「電子文庫パブリ」では,10万9,735点,きのう現在で配信しております。うちリフロー型のEPUB3電子書籍は7万4,194点と配信の70%を占めております。
電書協が加盟出版社に推奨していることは,1,紙と電子の同時発売あるいは1か月程度のずれというサイマル出版を勧めております。それから,先ほど言いましたリフロー型のEPUB3電子書籍を製作し配信することを推奨しております。
補足のデータでは,出版社数は1997年に6,000社あったのが,2017年には3,382社,事業規模もピーク時の半減,2018年で1兆2,921億円,書店数も1999年の2万2,296店から2017年には1万2,526店と減ってきております。電子書籍の売り上げは,2008年に464億円で,2018年の去年は3,122億円と伸長しております。ただし,この中ではコミックの売り上げが85%を占める。出版社においても電子書籍の伸長に期待している。いつでもどこでも誰にでも,というのが電子書籍のメリットであるとございます。また,世界標準のEPUBを作っていますので,日本のコンテンツが世界へということも含めて今後展開していくというような状況でございます。
以上です。

【中野座長】 どうもありがとうございました。
引き続きまして,鈴木委員より御発表をお願いしたいと思います。

【鈴木委員】 私は,電子出版制作・流通協議会の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。このたび,このような場で発言させていただく機会を頂きまして,大変感謝しております。
まず,私どもの名称は長いので電流協と略しますけれども,電流協はどんな組織かというのを最初に御説明させていただいた上で,意見を述べさせていただければと思っています。
電子書籍の制作というのは,今,吉澤委員からもお話がございましたけれども,いわゆるフォーマット,EPUBという形やEPUBだけではないガラケーの携帯のコミックのフォーマットなど,いろいろな形のフォーマットにコンテンツを直します。コンテンツ自体は出版社様の方から御提供いただいて,それを電子書籍の形にするのが制作というところです。主にこれは今,吉澤委員の御発言にもありましたけれども,紙も電子もというお話ですので,紙の書籍を作ったデータから電子書籍を作っているというのが結構多うございます。ですので,印刷会社がこの制作に携わっているというところが多いです。必ずしもそうではない場合もありますし,電子の書店自らがデータを作っているというところもありますけれども,主に印刷会社を中心とした制作会社が電流協の会員の一つの固まりです。それと,電子の書店がございます。分かりやすく言いますと市販の電子書籍を売っている書店さんです。この辺のところと,出版社様と電子書店を結び付ける取次,一般の小売と同じで,生産者と小売の間をとっている取次があります。その取次と電子書店を含んだ流通企業,この辺のところが加盟している業界団体ということでございます。
電子書籍元年というのは,皆様も御存じだと思いますが,何回も来ているのですが,2010年に第3次の電子書籍元年がありまして,いよいよ本格的に普及が始まったというところでございます。電流協もこの時期に設立しており,電子の制作・流通の立場から,電子出版の産業自体の成長と健全な発展に貢献するというところを目的としております。その観点から,読書バリアフリー法と今回の基本計画の策定に関して一言述べさせていただきます。
ほかの委員の方々もおっしゃっていましたけれども,この法律と基本計画によって,視覚障害者等の方々だけではなく,幅広い方々の読書が進んでいくということは,非常に喜ばしいことです。その中で電子書籍あるいは電子出版が重要な位置を占めているというのは,電流協としても非常に喜ばしいことだと思っております。今御議論をしていただいている基本計画によって,読書に困難を抱えている方々の読書環境が整備されるというのはもちろんですけれども,この基本計画の中で電子書籍の占める位置がある程度あると思いますので,日本の電子出版産業自体も発展していくということがあるのではないかと思っております。この辺のところを期待しているところでございます。その前提で,今回の骨子案において幾つか,私の方から御意見をさせていただきます。
まず(1)でございますけれども,「アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進」の中の「(1)技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進」というところでございます。アクセシビリティの確保においては,電子書籍のコンテンツを読む際のアクセシビリティと,電子書籍コンテンツを入手する際のアクセシビリティの二つが重要になってくるかと思っております。皆様には御承知おきいただいていると思いますけれども,電子書籍自体は,文字を拡大できたり,あるいはバックの色を変えられたり,文字の色を変えられたり,フォントを変えられたりできます。全部のフォントに全書店が対応しているわけではないので,きのうの藤堂委員の御発言にあったようなモリサワのUDフォントが全書店で実装されているかどうかはちょっと私の方も確認できてございませんけれども,いろいろなフォントを使えるところはあります。
それと音声読み上げ(TTS)に対応している書店もございます。音声読み上げに関しましては,対応している書店と対応していない書店がございます。この辺のところは,幾つか理由がございまして,1から3までに理由が書いてございます。
まず,音声読み上げは基本的には機械読み上げです。TTSはText To Speechですので,機械読み上げで,人声(人の声)ではないということです。AIの進歩で,非常に誤読は少なくなってはきています。私の知る限りですけれども,1バイト文字の英文とかは発音文字になっているので,1つのつづりだと,1つの読み方しかないと聞いています。ただ,2バイトの,中国語とかは違うのかもしれないですけれども,日本語に関してはいろいろな読みがあるということで,今でも誤読という問題は,皆さん御承知のとおりあります。
それと,特に文芸系の電子書籍に関しては,外字というJISの第1・第2水準以外の文字,あるいは旧字など,いわゆる普通の文字セットの中にはないようなものに関して,イメージというか,画像にして貼り付けている場合があります。そうすると,機械読み上げをしようと思うと,当然そこは飛ばしてしまうということが起こります。この辺のところは,ウェブでもきっと同じようなことが起こっていると思うのですけれども,電子書籍の場合にも起こっております。
誤読があると,読者の方としても聞きにくいというのが一つあると思うのですけれども,先ほど樋口委員からも御指摘がありましたが,著作物との音声読み上げにおける同一性の保持という問題があります。同一性は保持しなくていいではないかという話もあるかと思いますが,まだ御議論ができていないところだと思いますので,この辺のところを懸念して,対応していない電子書店があると考えております。
それと,この誤読を避けるためには,全文に振り仮名を振ることとか,あるいはSSMLという,これはSpeech Synthesis Markup Languageという合成音声用のMarkup Languageなのですけれども,この辺のところを使って全文に音を振っていくというような手法もあります。当然,基本的には,作るときには機械読み上げをして,機械読み上げをしたものが合っているかどうかというのを確認して修正するという作業になりますので,通常の電子書籍を作るよりも制作の手順が非常に掛かるということになります。ですので,一般的な電子書籍に関しては,これに対応しているところは余り多くありません。私もデジタル教科書は専門ではないので,聞きかじりではございますけれども,デジタル教科書においては、これからかもしれませんが,最近いろいろセミナーをやられている各事業者様,ソフト会社様の方のお話では,ある程度こういうものに対応しようというような動きはあると私は理解してございます。
第3点として,今音声読み上げ対応をしていない書店のビューアアプリを改造する必要があります。その際にはシステム改修の必要がございます。それぞれの書店によってそのシステム改修の負荷に関しては大分違うと私は認識しておりますけれども,いずれにしても負荷がゼロで対応できるということではないので,この辺のところの負荷というのも要因になっていると考えております。これがコンテンツのアクセシビリティのところです。
コンテンツへのアクセスに関してですけれども,これに関しては皆様の方が御承知かと思いますけれども,アクセシブルになっているかというと,なかなかなっていないところが多いと聞いております。この辺のところは今後改善していかなければいけないところだろうと考えております。電子書店などでも取組は始まっているようですけれども,まだまだこれからという状況ですので,電流協としてもこの辺の必要性というのも周知していかなければならないと考えております。
アクセスの改善に関してもシステム改修が要りますし,この辺は結構重いものかと思っておりますので,事業者の努力はもちろんですけれども,関係各位の皆様の御協力とか御支援とか御指示とか御教授を頂きながら,改善していく方向なのかなと考えております。
それと,同じ4番の2)のところですけれども,4番の「アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進」の中の「(4)その他」のところで,民間電子書籍サービスが提供するTTS対応の電子書籍の図書館への導入支援というのが,今回骨子案の中に入っていると認識してございます。電子図書館とよく言いますけれども,電子書籍を図書館に導入して,決済とかはなしで貸し出しができるような仕組みが,電子図書館として既に公共図書館を中心に入ってございます。ただ,まだこの導入に関しては初期段階にあるという状況でございますので,この計画の骨子案の中で御支援いただくような文言が入っているというのは,非常に電流協としても期待しているところでございます。
ただ,1点だけちょっと気になる点として,その導入の際の基準の整備というお話があります。当然その基準は整備されなければいけないのですけれども,その策定の過程等の透明性と公平性を担保していただきたいと考えてございます。
3)ですけれども,これはマラケシュ条約に基づく「外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備」に関してです。これに関しては,基本的には,私の理解としては,マラケシュ条約が対象とされている方々向けのコンテンツをその範囲の中で融通するというようなお話だと思っておりますので,市販の電子書店に影響を及ぼすことはないのではないかと思っております。が,一般の電子書店の中でも,海外の洋書を扱っているところがございますので,万が一にもこの辺に悪影響を及ぼすことがないように,是非御配慮いただければと考えております。
最後のところですけれども,4)のところです。「アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発」に関してですけれども,この辺の研究開発に関しましては,非常にこれから力を入れていただきたいところではあるかと思います。ただ,電子書籍に関しましては,コンテンツとビューアがあって初めて読めるものです。よく植村委員がいろいろなところでおっしゃっておりますけれども,紙の本は紙の本だけで読めますけれども,電子に関してはコンテンツとリーダーがなければ読めません。どの分野で先端的な研究開発が行われるかというところもありますけれども,当然,リーダーとか端末とともに,コンテンツの制作の方もそれに対応した改良をする必要が出てくる可能性があります。ということで,この辺の取組に関して何か先進的な動きがあった場合には,全体のフローの中で対応できるような御支援を頂ければと考えております。
電流協の私の方からは以上でございます。ありがとうございました。

【中野座長】 どうもありがとうございました。
それでは,御報告の最後になりますが,上田委員よりお願いいたします。

【上田委員】 皆さん,おはようございます。日本オーディオブック協議会の上田と申します。株式会社オトバンクという会社の代表取締役でもございます。
最初に自己紹介を簡単にさせていただきます。オーディオブック協議会自体は,今から5年ぐらい前にできた,まだ新しい団体でございまして,オーディオブックという,出版業界においてはまだまだ新しい取組についての業界団体となりますけれども,もともと私自身がこの仕事に携わっているのは,子供のときに私の祖父が緑内障で失明しておりまして,そのときの体験から,このオーディオブックという仕事をやっていこうと思って,今この仕事を続けております。
このオーディオブックという名前は,恐らく皆さんは耳なれていないと思うんですけれども,実はオーディオブックというのは商品名ではなくて,狭義では,書籍を音声化したもの,広い定義でいうと,音楽以外の音声コンテンツ全般という定義となります。広い定義の場合ですと,本の朗読だけではなくて,いろいろな声優さんが演じるドラマ形式のオーディオドラマと呼ばれるものとか,ポッドキャスティングというトーク番組とか,あとラジオ放送の録音版,落語,講演など,要は音楽以外の音声コンテンツ全般というところで,幅広いものが含まれています。
商用のオーディオブックサービスですと,これらが全て配信されているということが主です。オーディオブック自体は,視覚障害者とか読字障害者向けに普及している録音図書とは異なって,視覚障害者も健常者も双方が利用できるということが前提になった形式でございます。特に健常者が楽しめることを前提に作られているというところがありまして,演出などがよりエンターテインメント性が高いような作りになっています。
ちょっと今ここで2,3点ほどオーディオブックを再生してみて,皆さんに何となくイメージをつかんでいただければと思っています。恐らく,聞いたことがない方もたくさんいらっしゃると思いますので,ビジネス書と文芸作品とか,そのような形でちょっと再生してみます。1個目が,ビジネス書で,ドラッカーの本です。
(オーディオブック再生)
【上田委員】 今のがビジネス書で,1人のナレーターさんがずっと読み上げるというような試みになっています。
その次が,シルバー川柳というちょっと変わったものも流します。これは毒蝮三太夫さんが朗読しています。
(オーディオブック再生)
【上田委員】 みたいな感じですね。今のがシルバー川柳でございます。
最後に,文芸作品もいってみます。「マチネの終わりに」という平野啓一郎さんの作品の一部を再生してみます。
(オーディオブック再生)
【上田委員】 みたいな感じです。文芸作品の場合だと,複数名の役者が登場してきたドラマ形式になっていることも数多くございまして,このときには音楽の効果音とかもたくさん入ったりしたような格好になっています。今のようなものがオーディオブックというもので,かなり多岐にわたったコンテンツになっています。
再生デバイスに関しては,日本の市場においては,スマートフォンやタブレットが主流になっていますけれども,視覚障害者さんの利用に配慮して音声ナビゲーションに対応しているサービスもございます。
視覚障害者ではないのですけれども,老眼や眼病(白内障・緑内障など)という形で視力が低下して本が読みづらくなった方とか,そもそも本が読むのが苦手だとか,本を読む時間がないとか,そういう方も幅広く使っているのがオーディオブックになります。
オーディブック自体に学習効果みたいなものも若干ありまして,基本的には,海外の論文等で言われていますけれども,耳からオーディオブックを聞いていくと,言語能力が上がるということが証明されています。例えば日本語であれば,国語能力が上がりますし,英語であれば,英語力が上がるみたいな形になっています。ほかにも,今ちょっと実証実験中なんですけれども,ぼけ防止になるみたいな話とかも出てきているというような感じでございまして,何かいろいろと効果的に使えるのではないかというようなところが出てきます。
日本のオーディオブック市場なんですけれども,広義で捉えた場合には大体60億円前後の規模という形でございまして,日本語のタイトル数では3万ぐらいになります。ちなみに,アメリカは3,000億円ぐらいの規模でございまして,年率で20%以上の成長率を今誇っているということで,かなり一気に伸びているという状態でございます。ラインナップに関して,ビジネス書に関しては一定のコンテンツ量があるのですけれども,人文・文芸等に関しては,制作に時間が掛かるとかコストが掛かるとかというところもありまして,そんなに多くはないという状態でございます。書籍と電子書籍とを比較してコンテンツ数が多いとは言えなくて,視聴者のニーズを満たすものにはまだまだなっていないという状態です。出版業界といたしましては,もちろんこのオーディオブック市場を広げていくために,コンテンツを増やしていきたいという意向は持っているのですけれども,実は電子書籍の制作と比較いたしまして10倍以上のコストが掛かるということも多くて,投資に関しては回収の見込みの問題もありまして非常に慎重になっているという状態でございまして,そのことが,コンテンツが増えにくい原因の一つになっているという状態でございます。
今回の基本骨子案に関する意見を何点か述べさせていただきたいと思います。現状では,現在の録音図書・点字図書の利用者なんですけれども,基本的には若年時に視覚障害になった方が中心に利用されているというイメージを持っておりまして,特に高齢者になってから視力が低下ないしは視覚障害になった方というのは,健常者の生活が長いために,どちらかというとエンターテインメント性が高いものの方が求められる傾向にあるのかなと思っています。実際,私自身の経験で,祖父が緑内障で失明したという話を最初に申し上げましたけれども,祖父自身が実は点字図書館を利用したという実績は全くなくて,これは私の家族自体がそのことを知らなかったということもございますし,あと合わなかったという両方があったみたいなんですね。なので,そういう祖父みたいな方,特に中途失明の方が楽しめるようなコンテンツというと,オーディオブックも視野に入るのではないかなと考えています。
1つ目は,「視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等」というところで,例えば公立図書館等における「アクセシブルな書籍・電子書籍等の充実」において,オーディオブックライブラリの充実の支援を是非御検討いただきたいと思っています。オードブック自体は書籍と同じく1冊幾らという金額で販売されているものですから,図書館がオーディオブックをたくさん導入しようとしますと,当然,本を買うという話になりますので,導入予算が必要となるんです。ただ,現状では,図書館にオーディオブック導入を進めるための予算の枠組みというものが実はそもそもない。書籍購入予算ではないというところがあるみたいなので,それに関する支援を頂けないかなと思っています。要は,図書館に導入されるということがある程度,一定数見込めるのであれば,回収ができる,回収見込みが立つという意味で,出版社としてオーディオブック制作に投資をしてコンテンツを増やしていくということはできるようになるかなということでございます。
その次に,「特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援」において,オーディオブックの制作面において資金面の支援を頂けるようになると,コンテンツの量をより増やしていけるのではないかなと思っております。電子書籍の場合では出版デジタル機構という座組みがかなり前にございまして,東日本大震災がきっかけになっていたと思うんですけれども,そのような形でオーディオブックに関しても同じような座組み等がとれるのであれば,コンテンツの量を増やしていきやすいのかなと思っています。出版業界としてはこれが一番希望していることでございます。
次は,「端末機器及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援」に関してなんですけれども,高齢者の方とか中途失明者の方とかは,スマートフォンとか,そういうものを使いこなせないケースが非常に多くて,オーディオブックというのは今CDでは日本では余り流通していなくて,基本的にはデジタルデバイスを中心にしているのですけれども,スマートフォンの使い方みたいなものを行政としてそういう高齢者の方々に教えるようなセミナーなのか講座なのか分かりませんけれども,そのようなことがあると,より普及しやすいのではないかなと思っています。
ちょっと書き忘れたことが1点ございまして,視覚障害者の方が何か機材を買うときに補助金が出るような仕組みがあったと思うんですけれども,ああいうものにコンテンツを買うというようなことに関して,もし適用されるのであればいいなということが個人的には思っている範囲でございます。
以上でございます。ありがとうございました。

【中野座長】 どうもありがとうございました。
以上で4名の委員の方からの御発表が終了いたしました。これまでの2日間とは少し違う観点での御発表をしていただいたわけです。これから約20分ほど,現在御発表いただいた4件に関する質疑応答をさせていただきたいと思います。御質問等ある方は,お願いします。では,竹下委員,お願いします。

【竹下委員】 全視情協の竹下です。基本的なことで吉澤委員に伺いたいんですが,最後に昨日時点ということで非常に最新の電子出版の数字を教えていただいたのですけれども,それを書き取れませんでして,3つほど挙げていただきましたのをちょっともう一度教えていただければありがたいんですが。

【吉澤委員】 日本出版インフラセンターの数字でよろしいですか。

【竹下委員】 点数ですね。はい。

【吉澤委員】 これは書誌登録をしている電子書籍ですけれども,21万8,435点です。紙の方はもう230万件ぐらい登録していますけれども,電子は21万8,435点でございます。

【竹下委員】 済みません,そちらの協会で何かアップされているものがあると聞きましたが。

【吉澤委員】 協会で,電子文庫パブリックで電子書店をやっているのですが,それは10万9,735点です。一般書,小説,文芸書が多い。ただ,コミック,雑誌も一部配信しているというところでございます。

【竹下委員】 ありがとうございます。

【中野座長】 竹下委員,よろしいでしょうか。

【竹下委員】 はい。

【中野座長】 では,ほかにいかがでしょうか,御質問等。お願いします。

【高橋委員】 日本図書館協会の高橋です。最後に発表された日本オーディオブック協議会の上田さんにお聞きしたいんですけれども,一番最後の図書館への導入の件なんですが,確かにオーディオブックは,小説だけではなくてビジネス書とか実用書なども入っていて,非常に図書館の資料としても有益なものだと思っております。私の勤務する図書館でもオーディオブックを購入しておりますけれども,今買えるとすると,CDタイプのものでパンローリングさんとかことのは出版さんぐらいに限られてしまっております。なぜかというと,今のオーディオブックは,個人と契約してダウンロードの形式で利用する形ですけれども,図書館での購入だと,CDのような物の形になっていないと,会計上も難しいということがあります。今後,障害者サービスの取組はまだまだこれからという図書館が,このバリアフリー法の関係で取り組むところがどんどん増えてくるというところを考えると,全国には公共図書館は3,300以上ありますから,これを一つのマーケットとして,このオーディオブックを利用しやすい方法,普及の方向性として,CDのような媒体で購入ができるような形を考えていただくのか,配信型のライセンス契約のような形でするのか。その辺の方向性というのはどのような形でお考えでしょうか。

【上田委員】 オーディオブックの時間数が実は非常に長くて,単行本1冊が大体4,5時間ぐらいが平均なんですけれども,文芸作品になると10時間を超えてくるものがざらにあります。例えば先ほどの「マチネの終わりに」だとたしか15時間ぐらいあって,最近ですと,「かがみの孤城」という作品だと19時間ある,「海賊とよばれた男」は29時間あるという感じで,CDですと29枚組を出すのかということになってしまいまして,大変な量になるんですね。そうすると,一応過去に図書館さんからの御依頼で,CDに焼いて納品したことがございます。29枚焼いて納品するわけですけれども,そうすると,手間というか,価格も高くなってしまうので,余り望ましくはないと思っておりまして,もし可能であれば,デジタルの電子図書館の仕組みを併せて導入するみたいなことになると思うんですけれども,その電子図書館の仕組み自体が,コストが掛かるようなサービスが多いとも認識しております。なので,コストが掛かるのを極力減らせるような,オーディオブックが活用しやすいような電子図書館みたいなところとかもできないかなと模索していまして,最近ですと,京セラコミュニケーションシステムさんという会社と弊社が一緒に作っているものとかだと,1万タイトル近くのオーディオブックの聞き放題サービスみたいなものを図書館向けに提供するような試み等も始めているところでございます。なので,そういうものと1冊幾らで買うというものを組み合わせて導入していくとか,そういう感じなんですけれども,いずれにしろ,CDでというところは,御要望があればお応えできますが,場所等も含めてかなりかさばりますので,基本的にはデジタルの方をお勧めしたいなと思っております。
以上でございます。

【中野座長】 では,植村委員,お願いします。

【植村座長代理】 植村です。今の件について,少し私の知っていることをお話ししたいなと思うことと,あともう一つ,別な質問です。
まず,海外でオーディオブックは,公共図書館で貸し出しをしている例が非常に多くて,私が見ている限りでは,パッケージを借りてみて開けると,レコーダーごと入っているんです。データ量は御存じのように,CDはたかが数百キロバイトですけれども,データだったら十何時間のオーディオは全部入りますので,それごと貸し出しているという例は,フランクフルトでも,サンディエゴでも,そういうサービスをしておりました。ただこれは図書館側の対応ということもあって,一事業者だけができることではないと思いました。これはちょっと私の知っているところの補足です。
では,次,質問を続けてよろしいですか。

【中野座長】 はい。

【植村座長代理】 今の日本書籍出版協会と電流協さんのお話を並べて聞いていくと,テキストデータの提供というのを現状ですぐというのは,難しいが,TTSに関してはかなり可能性が高く,今後対応する余裕があるのかなと読み取りました。書協の27ページの最後の方にありますが,電子書籍の自動音声読み上げについての口述権の許諾については,出版契約書のひな形で含まれているということでした。そのような契約をされている出版社さんが多く,さらに電書協,吉澤委員の御発言の中では,EPUBファイルになっているので,電子書店側の対応で読み上げ可能になっているということがありました。パブリさんで10万点ですか,その中でリフローが7万4,000という数字だったかと思います。これが場合によってテキストを持っているEPUBと私は理解しました。これが読み上げられるだけでも非常によろしいかと思います。ただ,それは,配信側が対応がしなくてはならず,非常にコスト等が掛かるし,一事業者だけの努力ではできないかなと感じました。ここに対するケアがあれば,権利者からの許諾から一連の中でTTS対応ができるようになるかなと思ったんです。例えば,許諾が取れたとして,関係者の御協力と御支援というのは具体的にどうしたらいいんでしょう。やっぱり補助金モデルですか。これは電流協さんへの質問になります。

【鈴木委員】 電流協,鈴木でございます。補助金モデルと完全に考えているわけではありません。各事業者も当然,社会的責任を果たさなければいけないということを強く思っているところも多いので,対応をできるところは自主的に対応できると思います。先ほど樋口委員,吉澤委員のお話にもありましたけれども,出版社様は割と小規模なところも多いですし,電子書店に関しては,大きいところもあるのですが,実際にはすごく小さいところもあります。すごく小さいところは,どちらかというと,漫画しかやっていないところが多く,漫画を読み上げるのは結構難しいと思いますので対象外なのかもしれませんが,本当に数人とかでやっていらっしゃるようなところもあります。出版社様の団体,出版広報センター様が主体になって,海賊版サイトの対策の一つとして正規版のサイトを認定されています。正規版サイトが認定されると,どれが海賊版か分かりやすくなります。正規版サイトが全部そのマークを付けているわけではありませんが,今、正規版サイトを認定するものとして「ABJマーク」というものがありまして,それを私どもの方で運営させていただいています。今恐らくサービス数として700ぐらいの申請を頂いています。正確な数字ではないですけれども,160ぐらいの事業者様から申請を頂いていて、出版社様からの申請もありますので,70から100ぐらいの電子書店様から申請を頂いています。詳細は分かりませんけれども,メールでやりとりさせていただいているなかでは,非常に小さいところもあるなという印象がありますので,自主的にできるところと,そうでないところというのが出てくるかと思っています。
今後に関して,必ずしも補助金ということかどうかは分かりませんけれども,何らかの優遇措置とかを頂くというのは可能性としてはあるのかと思います。それと,一番重要なのは,同一性の保持等,他にも懸念点がございますので,この辺のところを皆様とお話しして,機械読み上げをしても大丈夫だよという,どちらかというと合意形成の方の必要性が強いと私は考えております。
以上です。

【植村座長代理】 ありがとうございました。

【中野座長】 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。では,順番にいきます。まず安形委員,それから宇野委員ということでお願いします。

【安形委員】 安形です。日本電子書籍出版社協会の吉澤委員と電子出版制作・流通協議会の鈴木委員に伺いたいのですけれども,きのう河村委員の方から,EPUBのアクセシビリティの規格化がISOの方で進んでいるというお話がありました。ISOは,御存じの方がどのぐらいいらっしゃるか分からないんですが,それなりの時間が掛かって決まるのですけれども,実際もう既にほぼドラフトとして決まっているような案が今審議されているところでして,このようなメタデータとかに関しては,できるだけ早い段階から取り組んだ方が,実際の制作に取り込んでいった方がいいと思うんですけれども,そのようなドラフト的なものに対応したEPUBのデータ等は作成できるのかということを一つ伺いたい。
もう一つは,日本書籍出版協会の樋口委員の方から,海賊版への懸念というのが少しありましたけれども,アクセシビリティを高めますと,少し海賊版的なものが出てきてしまうといったときに,電子書籍のデータ等は,流通の各段階でコンテンツが,言うならば分冊版とか合冊版とかお試し版とか,そのような形で出てくる中で,なかなか管理がしづらいといったときに,どのぐらいトレースできるのか。つまり,例えばどこから流出したのかがトレースできるのか,どこが作ったデータで,どこからどこに流通して,どこから出たものなのかみたいなものがトレースできるのかということに関して,鈴木委員の方に伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

【中野座長】 お願いします。

【吉澤委員】 電書協の吉澤です。EPUBアクセシビリティの件,今年はW3CのTPACを福岡でやりまして,私も参加しました。来年の夏にISOを決定すると聞きました。W3Cに関しては,電書協は正会員として入っていて,今EPUB3.2という仕様,あとEPUBCHECK 4.2.xやEPUBアクセシビリティにも早めに対応できないかということなのですけれども,EPUB3.2に関してもまだ電書協EPUB制作ガイドをバージョンアップしていません。やっぱり使うところがないと,なかなか難しい。要するに,電書協EPUB制作ガイドを作ったのも,いわゆる黎明期で,みんな作り方が分からない。出版社の中においても,最大手はすぐやるけれども,その下は少し様子を見てみたいなという状況で出版界が,混乱するのを防ぐため。でも,要するにこのガイドをバージョンアップすることによってまた全部に影響を与えるということも含めまして,状況をウオッチしています。先に作るのは無理で,それが策定されて,皆さんが使い始めたところが一番いいのかな,というような状況です。

【鈴木委員】 電流協,鈴木でございます。今の吉澤委員のお話と同じところですけれども,EPUBアクセシビリティ対応に関しては,電子書店としては,出版社様の方から指定されたフォーマットで制作をして,それを売っているというところですので,その採用自体が各出版社様の方でされていないと,電子書店として独自に対応するという話にはなかなかならないところはあります。ただ,鶏と卵の話になってしまいますけれども,リーダーに関しては,やはりリーダーだけ作ってもコンテンツがないと、というところもあります。恐らく各社,研究はしていると思っておりますし,EPUB3.2とか,EPUBアクセシビリディの詳しいところまで私も見ていないのですが、対応自体はできないことはないと思います。けれども,現状はまだそこまでの対応はしていないと私は認識しています。
それと,もう1点の海賊版に関する流出コンテンツのトレースの問題ですけれども,基本的には,私の理解なので,ちょっと間違えているかもしれませんけれども,各読者の方々に購買された電子書籍に、例えばシリアルのナンバーが入っているとか,電子透かしが現状入っているかというと,基本的には入っていないと認識しています。DRMを掛けて,DRMの著作権管理のいわゆる鍵みたいなものを暗号化して流通しております。基本的にDRMは破られないかというと,これは河村委員などはよく御承知だと思いますけれども,絶対に破られない暗号というのはなかなかないので,ないとは言い切れません。けれども,これがあることにより非常に流出のハードルが高くなっていますので,全くないとは言い切れませんけれども,電子書籍からそのまま海賊版に流出しているというのはないのではないかと思います。これは私の私見ですので,ひょっとしたら違うかもしれませんが。
紙からスキャニングしているものも結構あると,海賊版に関しては認識しています。出版社様の取組とか印刷会社などで,紙に関してはウォーターマークみたいなものを見えない形で,いわゆるコピーすると「COPY」という文字が出てくる偽造防止対策があると思いますが,それと同じようなものをやったらどうかというのは,前にあったのですけれども,やはりこれもコストの問題やトレースするために一個一個全部違うものを印刷しなければいけないため,現実的ではなく,このトレースというのは現状はなかなか難しいのではないかというのが私の認識でございます。
以上です。

【安形委員】 ありがとうございます。ただ,紙とは違いまして,電子のデータになってしまいますと,コンテンツ複製の容易さ等もありますので,何らかの形でトレースをしていくような仕組みは検討していく必要があるのではないかと思います。
以上です。

【中野座長】 では,宇野委員,お願いします。

【宇野委員】 2段階に分けて質問させていただきます。
まず樋口委員にお伺いなんですが,年間で発行されているそもそもの書籍数について,5万とか8万とかという数字を聞いたことがあるのですが,一体年間どれぐらい発売されているのかをお伺いします。
それから,吉澤委員に関連して,その中で電子書籍は,先ほどは10万9,000という数字もありましたけれども,年ベースで言うと,新刊図書に対してどれぐらい電子書籍というものが発売されているのか。それから,もしどなたか御存じであれば,いわゆる本の巻末にテキスト引換券,テキスト請求券が付いているような書籍というのはそのうちどれぐらい発売されているのか,まずこれを教えてください。

【樋口委員】 書籍協会の樋口です。年間の新刊発行点数は,取次会社を通じて流通しているものが今大体約7万5,000点ぐらいだと思います。あと,市場で流通している本は,先ほど吉澤委員からもありましたけれども,200万点を超えております。
以上です。

【中野座長】 宇野委員からの御質問……。よろしいですか。

【吉澤委員】 電子書籍の年間の発行点数ですけれども,これはちょっと正式な数字というのはないのですけれども,今,ある電子取次のデータでいくと,サイマル出版――紙も電子も同時にやろうというものが相当増えてきて,今50%を超えている段階です。あとは,電子書籍にしにくいものも出版の中にはあるので,電書協は一般書,文芸書が中心なのですけれども,そこでいきますと,基本的に電書協の加盟者は大手の出版社が多いので,ほとんど電子書籍を出していくと。どうしても作家の許諾をもらえないものもあるにしても,出していくと。電子書籍は,一時期は過去に出たものをやっていたりしたので,年間に新しく配信するのは新刊だけではなくて,昔の名作だったり,過去のベストセラーというところがあるので,ちょっと数字的にはデータとして把握はできていませんけれども,紙・電子同時というのは増えてきているというのが現状です。

【宇野委員】 ありがとうございます。

【樋口委員】 済みません,樋口です。テキストデータ引換券付きという例は,極めて少ないと思います。自社のものに大体付けているといった会社は数社だと思いますので,ちょっと正確な件数は把握しておりませんけれども,極めて少ないということかと思います。

【宇野委員】 ありがとうございます。まず,樋口委員の方からお話のあった,なかなかテキストファイルでのいろいろな漏えいの問題とかということで,電子透かし等々のお話もありましたけれども,現在のところ,電子書籍で読み上げ等は,幾つかを除いて読み上げも可能になってきている端末もある。それと,拡大や色の対応というのもかなりのところで実装できている。ところが,前々回申し上げたとおり,学齢期の参考書,問題集,専門書等においては,読み上げだけでは不十分で,どうしてもきちんと文字を確認したいとか,又は盲聾者を含め点字にしたいというニーズがあるわけです。そこで,そのテキストファイルというのが希望ではあるのですが,そこのEPUBからテキストファイルというところの仕組みを,今このタイミングでこそ国の支援を受けて確立していくことが大事かなと思うんですが,それについてどのようにお考えかということと,あと,先ほど同一性保持の問題があって,合意が必要だというお話がありましたが,その点だけ触れさせていただきます。
これは音訳ボランティアの団体でもよく議論になるのですけれども,例えば「さちこ」と読むか「ゆきこ」と読むかなどというのは,もうこれは筆者がどういう意図で書いたかが何らかの形で表明されていないと分からない。それから,「けいい」と読むか「いきさつ」と読むかとか,「よろん」と読むか「せろん」と読むかと,どっちでもいいかなというのがいっぱいあったりするわけです。ところが,例えば「もみじの葉っぱ」を「こうようの葉っぱ」と読まれたら,これは確かに私たちも困るわけです。それらを解決するには,おっしゃるとおり,SSMLとか総ルビとかということしかないわけですけれども,これはまた出版社に負担が掛かって,なかなかそれも進みにくい現状がある。ということで,確かに「こうよう」という誤読は困るんですけれども,それをもってストップされてしまったら元も子もないので,ほぼ99%正確であれば,多少の誤読があっても,音声読み上げで読み上げるものを提供していただきたいというのが,多くの視覚障害者の思いだと思われます。
以上です。

【中野座長】 ありがとうございました。では,御質問の件について,どなたかお答えいただけますか。では,鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】 電流協,鈴木でございます。最後の同一性保持が一つの理由で読み上げていない書店があるというところなのですけれども,この辺のところは宇野委員の御指摘のとおりだと思います。電子書店としても,恐らく今後いろいろ対応は考えてくると認識しております。ただ,著者の方によっては,同一性を保持してほしいという方もいらっしゃると思いますので,この辺のところも事業者だけの判断ではなくて,皆様との合意形成の中で対応していくという方向だと思います。御指摘のとおり,できているところもありますので,技術的にできないわけでもないので,今後はそちらの方向にかじを取っていくのではないかと私は個人的には思っております。
以上でございます。

【中野座長】 ほか,お願いします。

【樋口委員】 樋口です。確かに今,宇野委員がおっしゃったように,音声読み上げだけでは全てを解決するものではないということは十分承知しております。実際にそのテキストデータの御要望ということにつきまして,そのテキストデータの引換券は付いていないにしても,御要望があった場合には,出版社としてその都度対応しているというケースは実はかなりあると思っております。例えば,大学の方から障害のある学生さんのために教科書のテキストデータが欲しいといった御要望があって,そういったものに対応しているといった例も聞いております。ただ,それがたび重なってくると,なかなか負担が掛かるかなということはありまして,しからば,ではテキストデータを全て最初から用意しておくことができるかというところもまたあるので,その辺は実際のニーズの中で,何ができるかということは考えていく必要があるのかなと思っております。
最近ちょっとこの協議会の前に書協の会員社にアンケート調査を行いまして,回答数が非常に少ないので,全体を表してしているかどうかは分かりませんけれども,そのお答えを頂いた中で約3割は「テキストデータを提供しても構わない」といったお答えをされている出版社があったわけでございます。ただ,それもいろいろな条件がクリアされた上でということかと思いますけれども,そういった様々な条件がクリアされたのであれば,テキストデータを提供してもいいという,そういったことにやぶさかでないといった出版社もそれなりにあるということだろうと思います。

【中野座長】 今の件に関しては,ほかに出版関係で御回答を頂ける方はおられますか。お願いします。

【吉澤委員】 テキストデータを渡す云々というのは,確かに,今やられていないかというと,一部あるというのは聞いています。ただ,それは著者が学者の先生だったりして,特別これはやってくれみたいなことで,正規なルートにはなっていないというところです。出版界の懸念というと,テキストデータを渡してから,その管理・保管を誰がどうするのだ,みたいなとこが結構気になります。先ほどもおっしゃられましたが,性善説でいくと,そういうことはないと思うけれども,その間にいろいろな人が入ってしまうと,大変なことになる。印刷データを渡せば,紙の出版までできてしまうし,EPUBのファイルだったら,それはもう配信もできてしまうしということを含めると,非常に大きな問題を抱えているということで,今の段階では,EPUBを配信する正式なデータが盗用されたことはないのですけれども,これはまだ,これからまた分からなくなって,データを抜かれてしまうというようなソフトが出てきてしまうかもしれないしということを含めると,非常に技術の進歩が出版社のサイクルよりもその周りの人たちの方が先に進んでしまうという,大体そういう状況です。それを考えると,データに番号を振るなどということも必要になってくるかもしれないし,それはできないことではないにしても,それを今度は調べたりなどというのがすごく大変な話になるかもしれません。それよりも,ちゃんと普通に管理して,制作して,出版社がみずから保管するというのが一番効率的な方法だと思うし,責任は出版社にあると思いますので,多分契約書もそういう形になっているものが多いと思いますので,非常にきょうの意見はいろいろ参考になっているのですけれども,現状は今そういう感じです。

【中野座長】 ありがとうございます。ほかに出版で,今の件について御回答はよろしいですか。では,植村委員,関連してでしょうか。

【植村座長代理】 関連しての発言です。後のディスカッションでちょっと触れようかなと思ったんですが,質問の形で最初に聞いておきます。書協の会員社は400から500くらいでしょうか。一方,先ほどの発表によると,電子出版を手掛けている電書協の会員者は25社,それもほとんど大手です。先ほどの発表だと,漫画は当然ありますが,小説類とのことでした。ところが,書協の会員社は,しかも会員外で3,000社もあって,その大多数が小さい。だけれども,読み上げに精度が求められる本の版元は,この専門書出版社,書籍専門出版社なのかなと受けとりました。テキストデータの提供は,文芸はないが,専門書とかが割と多いことになります。そうすると,書協会員社の書籍専門出版社で電書協に入っていない出版社さんはかなりあるわけですよね。その辺の電子出版の取組ぐあいはどうなっているのでしょうか。

【樋口委員】 樋口です。今,書協の会員社は410社でありますが,出版社の大多数というのはいわゆるそういう専門出版社でありまして,総合出版社というのは数的には少ないわけでございます。そういった専門書について,どのくらい電子化が進んでいるのかということですけれども,そういう専門出版社の中でどのくらいのバーセンテージかというのを調べた調査がないので分かりません。ただ,先ほど吉澤委員の方でもお話がありましたけれども,電子書籍にしにくい,あるいは電子書籍を作る上でコストの掛かるといった種類の本があります。例えば,法律書などは,御承知かどうか,非常に版面が複雑で,二段注みたいなものが入っていまして,非常に難しかったりします。それからあと,自然科学系のものについては,例えば数式とか化学式をどうするのかと。特別な方法はありますけれども,その部分は画像として取り込んでいたりということもありまして,そもそも専門書の電子書籍のニーズというのがどこまであるかと。
日本の場合は非常に特殊というか,7割,8割がコミックというような,海外では専門書の電子書籍というのが相当な割合を占めていたりするのですけれども,日本の場合はそうでもないということもありますので,全ての専門書が先ほどのサイマル出版をされているというわけでは全くなく,特に専門書については,その売り上げを見ながら,様子を見ながら電子化をしているというケースも少なくはないのではないかと思います。

【中野座長】 よろしいですか。

【植村座長代理】 はい。付け加えれば,先ほど宇野委員からの発言などにある,割と精度が求められるものが専門書に多いのであれば,優先順位を分けて考えなければいけないかなと思います。文芸書であればTTSで読むことに合意がとれてきたのではないかと感じています。この合意に関しては一つお願いしておきたいのは,文藝家協会などの文芸著作者の団体がこの中に入っていませんが,私の知るところ,この10年間でTTSの読み上げに対して合意が大分形成されてきたかなと思います。以前は,「ゆうこ・ひろこ」問題,「さちこ・ゆきこ」問題みたいなものでも抵抗感があったのですが,最近は著作権者の中でも理解がとれてきたかなと思います。団体を通して,何らかの御提案なり合意形成的なものは,この協議会の一つの方向性として声を掛けていくような形があっていいかなと思いました。ここには著作者団体のメンバーがいないということもあります。その上で,文芸物ではない,しかも小さな出版社で電子書籍を作るのが大変なところこそ精度の高い読み上げが求められるのだとしたら,ここに対して何らかの手当てが必要なのかなと思った次第です。少し意見になりましたが。

【中野座長】 本件はもともと宇野委員からの御提案でございましたので,今のような整理で,宇野委員,いかがでしょうか。

【宇野委員】 まさにそのとおりだと思います。参考書,専門書等々のニーズというのはやはりテキスト,これは視覚障害の学者とか先生からも非常に高いニーズがありますので,かといって,小さな専門書は電子書籍を出していない。せいぜいインデザインで作ったものをPDF化して印刷所に納入するということが多いのではないかと思うんです。そこに今回の法律に基づいて,12条は主語が「国」とかになっていますので,何らかの国の支援をかませて,きちんと専門書が障害者に届いていくという仕組み作りを方向付けていくということが大事だと思います。

【中野座長】 ありがとうございます。
ほかに,本日の4件について。はい。

【竹下委員】 全視情協の竹下です。出版社の方々に私どもが非常に期待しているのが,11条の2に「国は,特定書籍及び特定電子書籍等の効率的な製作を促進するため,出版を行う者からの特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するための環境の整備」云々ということがあって,要は点字図書館等にこういうものを出していただけるかということなのですけれども,きょうの発表ではそういうことはコメントがなかった。それ以前,というと失礼ですけれども,そこまでまだいかないと認識したのですが,そういうことでよろしいでしょうか。

【中野座長】 どなたか,御回答できる方はおられますでしょうか。

【吉澤委員】 要するに,きょう,今この段階で賛成とか反対とか,そういうことではなくて,非常にいろいろな様々な要因が絡まってくると,ではどんな電子的なものかということで,それが例えばEPUB3データなのか印刷データなのかでもう全く変わってくるということを含めて,そのような要望があるというのは分かりましたので。ただ,要するに一番懸念されるのは,データを渡してからそのデータの管理とか保管というところは結構大事な問題になってきて,出版社としては,紙の本を印刷・製本して出して,でも電子書籍のデータもちゃんと保管していると,それはもう当然,本文データも書誌情報も含めたところの,その責任はあるとも思いますので,その責任を放棄はできないというところがあるので,ちょっと今すぐここで,ではそうしますと言えないのはありますけれども,そのような意見をまた電書協にも持ち帰って,また議論をしていきたいという感じです。

【中野座長】 ありがとうございます。ここでは,ここで答弁をして何かの方向を決定するというわけではありませんので,御発言の際にはその点は御了解いただいた上で御議論いただければと思います。
まず宇野委員に確認したいのですが,宇野委員の御質問は以上で終了でよろしいですか。

【宇野委員】 済みません。今のやりとりの件で一言だけ。確かに11条の2について,出版社が出しやすい形というのをしっかり出していただくのが大事かなと思うんです。ですから,それに当たり,コストがこれぐらい掛かる,これはとても出版社が持ち出しでできることではないということも多分出てくるでしょうし,今のフォーマットの問題も,EPUBなら出せるよとか,出版社に出しているPDFなら出せるよということもあろうかと思います。また管理の問題も,結局,点字出版とか,公共図書館,製作者側は,当然ながらその契約書とか誓約書とかをきちんと示して,絶対にそれは流用しないと。これはもう点字変換のために使うのだとか,マルチメディアDAISY製作のために使うのだということだけに限定して,きっちり約束の下に使っていくということを踏んだ上で,では一体,最新のものは難しいかなとは思いますけれども,発売から5年たったものとか絶版になったものならいいかもねというような話になっていくのではないかなと思っています。

【中野座長】 ありがとうございます。
では,挙手いただいた順番で指名させていただきます。樋口委員からお願いします。

【樋口委員】 昨日,図書館協会さんの方から,図書館への電子書籍の購入というのがなかなか進んでいないというような御指摘がございましたけれども,我々出版社としては,図書館さんにも電子書籍を購入していただきたいと思っております。先ほどの会計上の問題とか,システムの対応の問題とか,いろいろな問題があって,どうやったら公共図書館への電子書籍の納入が進んで,さらにそれが障害者のためにも使っていただけるかというようなところも,なぜ進まないかという原因を考えていかなければいけないのかなと思っております。

【中野座長】 御意見ということで承りました。ありがとうございます。
では,河村委員,お願いします。

【河村委員】 きょう,高速の事故渋滞に巻き込まれて遅れて参りまして,御発表は聞いていないのですが,書面で出されたものを読ませていただいての質問を含めて,質問させていただきます。
いわゆる一般の紙の出版の場合で,今,版下を作るときに電子ファイルを作っていないものというのが果たして存在しているのだろうかということなんですけれども,ほとんど全部,一度版下を作るときに電子ファイルを製作しているのではないかと思うんですが,その点につきまして出版関係の団体から,まずどういう電子ファイルで版下を作っているのかということについて御回答を頂いて,その後私の意見を申し上げたいと思います。

【中野座長】 お願いします。

【鈴木委員】 電流協,鈴木でございます。電流協というか,印刷会社系の立場でお話しさせていただきます。版下は,紙の台紙と呼ばれるものに文字が打ってある,パソコンで打った文字をレイアウトの形に張り付けたものです。今版下で印刷会社に入ってくるものはほとんどないと思っています。ほとんどはデータです。文芸系のものなどは,テキストデータだけで入ってきます。雑誌のようなレイアウトがあるものに関しては,印刷会社で組み上げることもありますし,出版社様の方から,もう既に組み上がったインデザインという,これもDTPソフト,デスクトップパブリッシング用のソフト,で組み上げたものを頂くということはあります。以上です。

【河村委員】 ありがとうございました。そこで,先ほど議論になっていたテキストファイルを請求されたときに,なかなか出すのが難しいということが言われているかと思うんですが,またコストも掛かると。ただ,そこのもともとの版下に相当する電子ファイルの段階で,インデザインのバージョンにもよるのですけれども,最新バージョンなどは,テキストブロックの読み上げ順まで指定できるというPDFを出すこともできる。つまり,見た目は同じでも,実際には,ファイルの中にはテキストブロックがただ平面に並んでいるだけではなくて,EPUBと同じように,読み上げる際の順番を付けて出すということも可能という処理ができるインデザインのバージョンもあるわけですので,そういったニーズに出版社自身が気付いておられるのかどうかということがまず問題なのですが,気づいておられるとしたら,方法があるということで,つまり,テキストブロックに順番が付いていれば,後でそれをその順番どおり抽出するのは手間が掛からないので,印刷のための版面を作って,それで印刷して紙で出しているという場合にも,代替資料としてアクセシブルなテキストを要求されたときに,そのような解決方法があるのではないかということを普及していく,そこも重要なポイントではないのかと思います。
それから,同時に,各省庁などがウェブにおいて配付しているものにPDFが圧倒的に多いのですけれども,それぞれの省庁ごとに,ワープロで原稿を作ってPDFで出しているはずですので,PDFに落とすソフトの何らかのライセンス契約をしているかと思うのですが,それはまさに公共調達に当たりますので,そういったところはきちんと読み上げ順の指定ができるPDF化ソフトにするとか,見た目には余り変わらないし手間もそんなに変わらないけれども,実際に利用可能な機能を使うとかなり解決する部分というのが既に存在しているのではないかと考える次第です。そういったあたりの検討もさらに必要ではないかと思います。

【中野座長】 ありがとうございました。
何か御意見はありますか。鈴木さん,お願いします。

【鈴木委員】 電流協,鈴木でございます。今のインデザインでテキストブロックの読み順を指定してというお話なのですが,実際には印刷会社の方では,インデザインデータを頂いて,印刷用のデータを作るときに独自にいろいろな工夫をしています。ですので,出版社さんから頂いたインデザインデータをそのまま印刷に「ぽん」と渡しているかというと,印刷上でうまくできるような形に加工するということをいろいろしています。それとともに,御理解いただいているかと思いますけれども,当然,最初に入ってきた原稿のまま刷っているという場合もないと言えないのですが,大部分は赤字が入って直してしまったりしていますので,印刷用のデータが最終データになっているという場合が多くあります。その印刷用のデータに関して,テキストブロックの順番に関して指定ができるのかどうかは私も今は分かりません。今のところ,そこら辺はまだできていないところだと思います。各印刷会社の対応の話ですけれども,その辺のところを今後検討していくというのが必要なのかなと,今お話を伺っていて考えました。
以上です。

【中野座長】 ありがとうございます。出版に関する話は今回3回目が初めてでしたので,それぞれユーザーの立場からこれまで2日間いろいろ議論をしていただいて,必要なことというのが出てきました。それから,きょうの議論の中では,そこになるべく資するということをそれぞれの立場で考えておられるわけですが,一方で,そのためには例えば海賊版が出ないようにしていただくとか,そのような配慮というのも書籍の方の制作側では当然同時に考えてほしいということで,今後この読書バリアフリー法が目指すことというのを私たちが実現していく際に,それぞれ立場があって,その立場というのを尊重しながら,どうやってバリアフリー法を実現していくかと,実行力のあるものにしていくかというのがこれからのすごく重要な議論になろうかと思います。
残りの時間はあと25分ほどでございますけれども,今後,これまで意見を述べていただいたものに関して,骨子の案をずっと作り上げていく必要がありますので,具体的に,例えばデータフォーマットをこういうフォーマットに決めますよというような議論ではなくて,今後の作業を進めていくためにどんな視点が必要かとか,それからきょうの議論の中でも,事前の資料の中にはなかった数字等というのがいろいろ出てまいりました。今後この議論をより進めていく際には,データの裏付けというのが必要だというようなものも出てくるかと思います。きょうのこの場ではその全て議論することはできませんけれども,例えばこういうデータというのはそろえておく必要があるのではないかとか,そういったことも含めて自由に討議をしていただいて,次の第4回で,今後どのようなまとめにしていくかということを議論していきたいと思います。きょうはフリーに,それぞれ御意見を頂きたいと思いますので,これまでの3回全てを含んで,それから今後に向けての御意見も含んで,それぞれ御議論を頂きたいと思います。
では,どなたか御意見のある方は,よろしくお願いします。では,植村委員,お願いします。

【植村座長代理】 植村です。昨日,私が申し上げたデータに関しては,文部科学省ホームページからとったものですが,義務教育段階の児童・生徒の中で,特別支援学校に入っている生徒と小中学校における特別支援学級にいる生徒以外に,通常の学級の中に障害を持ったお子さんがいるということですよね。その数字と,さらにそこのとてもグレーな発達障害の段階で,まだ障害とは分からないけれども,その可能性のある生徒を発見し,あるいはその学ぶための機会を通常の学級の中でどうケアしていくかというのが大事なポイントと思っています。何かのツールとか方法というものがどこで提供できるかなというと,学校図書館にあるのかなと思いました。
きょうは紙資料だけで配付すると情報保障ができませんので,是非次回のときに資料として追加していただけないかなと思っています。座長の御判断も含めましてお願いいたします。

【中野座長】 事務局の方で,いかがでしょうか。

【小林障害者学習支援推進室長】 先生の御指摘いただいている資料については,そのテキストデータ化等,処理した上で次回配付させていただくように,ちょっと中で調整いたします。

【中野座長】 よろしくお願いいたします。
ちなみに,通常の学級に在籍している児童・生徒も,音声教材やPDF版拡大図書等のアクセシブルになった教材に関しては利用できるようになっていますので,そのあたり,補足的な情報も含めてデータ化していただいて,皆様のところにアクセシブルな形でお届けさせていただきたいと思います。
ほかに御意見等はいかがでしょうか。では,小池委員,お願いします。

【小池委員】 小池です。昨日は欠席しておりまして,ちょっと内容が把握できていないところですけれども,先ほど樋口委員から,図書館において電子書籍が普及していないということの御指摘がございましたけれども,それに関して,データ的な話で,現状,私は大学の方はよく分かりませんけれども,公共図書館系に対して,そういうサービスを提供しているというか,実際の商品的なものでは2つ,3つぐらいなのかなと理解しているのですけれども,そこがシステムプラスコンテンツをどう提供するかと今なっているはずです。例えば,TRCがTRC-DLとかで出しているものは,コンテンツとセットで出すというのが基本の売り方というんでしょうか。そうしたときにTRCが提供できるコンテンツ数がどのぐらいかとかという,それからその中身が図書館に合っているのかとかということが,実際に普及していない理由だと私は思っているんです。
前にも別のときに聞かれてお話したことがあります。きょうのお話にもありましたけれども,専門書を要求してくる利用者というのは実は余りいない。みんな,村上春樹が読みたい,だけれども村上春樹はないというのが現実であるし,電子出版の場合の7割から8割ぐらいは漫画だとなったときに,余り図書館ではそういうのは提供しないというところのずれみたいな話が,実際,なかなか普及しないのだろうなと私は理解していたのですけれども,そこのところのずれみたいなところの現状を知るためには,どんなコンテンツが出ているかという情報があるといいのかなと思ったので,図書館で提供するとなったときに,一定の電子図書館システムがアクセシブルなものかも含めて,検討が必要なのかなと思いました。よろしくお願いいたします。

【中野座長】 今の御意見は,今後この議論を進めていく上で,図書館が特に貢献する際に,電子的にどんなコンテンツが出ているかということについてのデータを是非この中でシェアできるようにしてほしいという御意見として承りました。ありがとうございます。
ほかに。

【鈴木委員】 関連で。

【中野座長】 関連で鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】 電流協,鈴木でございます。電流協の中に植村委員に参加いただいている電子図書館コンテンツ教育利用部会という部会があります。そこで毎年,『電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告』という書籍を発行しています。その中で,全コンテンツ数については調査していませんけれども,TRCの供給しているコンテンツ数とかは把握してございます。ただ,詳しい,どのジャンルのコンテンツがどのくらいというのは今すぐ出てきませんので,その辺のところを私の方でまた整理して,次回にでも御提出するようにします。

【植村座長代理】 私からも,著作権者なものですので一言。年の一番新しい調査結果ですと1,300ぐらいの中央館にアンケートをとったところ,電子書籍サービスは89自治体,86館しか入っていません。しかも,3,300館という全体からしても,中央館に入っているのがほとんどですので,シェア率はさらに下がることになります。とともに,各事業者が提供している電子図書の何点が読み上げTTSに対応しているか分からないんですが,1万を超えているのは間違いありません。
実はこういうアンケートをとると,「なぜ電子図書館を導入しないのですか」というときに必ず挙がるのが「予算がない」というのと,「電子書籍の点数が少ないから」という2つです。実際には大手さんはサイマルで50%出しており,それなりの数字は出ています。一方,一番電子図書を購入している図書館でも,1,000点をいくところは数館しかありません。電子図書を導入している大半の図書館でも100とか200点なんです。だから,「アイテム数が少ない」というのは言い訳ではないかと言いたいところがあります。ですから,別な枠組みがないと,なかなか図書館側も導入しにくいのかなとは思っています。電子図書館が利用できる電子図書点数は増えてきたというのが今回あたりの結論ですが,残念ながらまだ理解が進んでいなくて,アイテム数が少ないと思われている状況です。この数字はまた後,次回のときに電流協さんと相談して,出せるものは出していきたいと思います。

【中野座長】 是非,御相談いただいて,お願いします。
ほかに,ほかの視点も含めてですが,藤堂委員が先に手を挙げておられたので,お願いします。

【藤堂委員】 先ほどの学校図書館に関連しての意見でございます。私どもは教育の中の教科書の音声化というものをさせていただいているのですけれども,これがなかなか普及していかないという現状がございます。その理由の一つは,学校でダウンロードするときに,システム上なかなか外部からのものをダウンロードすることができないという制約があります。それがまた,各自治体によってとか各学校によってシステムが違っているので,一々先生方がダウンロードすることがなかなか難しいと。教育委員会単位とかできちんと把握していただければいいのですけれどもというのがあるんです。その上で今度は,では先生方が自宅でダウンロードしたものはどうなのかというと,私物を持ってきてはいけないという規則がございまして,なかなか自宅でダウンロードしたものを持ってきていいのかどうかという問題があるということを聞いております。なので,学校図書館に整備するといったときに,多分そこの問題が絶対に出てくるので,その整備のところでそこのところもきちんと入れて,いかにしてユーザーにきちんと届くのかというところを,そのシステムを加えて考えていただきたいなと思います。以上です。

【中野座長】 ありがとうございました。ユーザーへの届け方という点で,今御指摘いただきました。重要な視点かと思います。
河村委員,お願いいたします。

【河村委員】 ここで議論すべきなのは,電子書籍一般というよりは,アクセシブルな電子書籍に関する議論を詰めていくということだと思いますし,電子書籍一般がアクセシブルになるようにするにはどうしていったらいいのかということだと思いますが,その場合どうしても避けて通れないのが,先ほど来DRMをかけないと不安であるというお話がされているわけですけれども,確かに,どんなDRMでも解けないものはないと一般に言われておりますので,一定の,普通の利用者だったらば簡単には解除できないようなDRMというところで妥協するということは,出版社の方もお考えだと思うんです。EPUBの場合に,LCPという共通DRM――ライトウエイトと言っておりますけれども,完全に暗号化するわけではない,だけれども普通の一般の方はそれを簡単には解除できないというLCPというものを提案して,一部実装しているところがあるかと思いますけれども,なかなかそれが普及していないということで,それぞれの出版社がそれぞれのDRMでいろいろなプラットフォームが並立しているという状況で,しかもDRMを優先させる余りアクセシビリティを犠牲にしてしまっている例が非常に多いというのが現状だと思います。LCPは,アクセシビリティを確保しつつDRMとしての機能をどうするかというオープンスタンダードとして提案されておりますので,それについての検討も,あるいはそれについての研究開発も,これは規格ですので,公的な活動として,客観的な活動が期待できるところがやるべきではないかと考えるところです。

【中野座長】 ありがとうございます。きょうの議論の中でもすごく重要だったのがこの鍵の問題でございますので,どういうところまで用意すればいいかというところを是非基本計画の中では盛り込む必要があるという御意見を頂きました。
あと10分ほどとなりましたけれども,ほかにいかがでしょうか。まず,では見形委員からお願いしたいと思います。

【見形委員】 済みません,私も遅れて来たもので,最初の方をお聞きできなかったのですけれども,私の質問というか,意見として聞いていただけたらと思います。DPIの見形です。
きのうからの議論の中で,どうしてもAIとかデジタル化というところが中心となっているのですけれども,それももちろん大切なことなんですが,そこで漏れてしまう障害者が必ずいるということと,アクセスできない,ネットが不得意だったり,あと図書館に行くということでお聞きできないというか,人から教えてもらえたら,高齢者の方も知的の方たちとかも分かったりする。もちろん,私も余りデジタルの方が得意ではないので,パソコンの操作も一々いろいろ聞きながら設定したりしなければできないんですけれども,そういうところにある人的支援とか,本当に昔から図書館にある朗読サービスというか,そういった奉仕員の方たちの力だったり,ボランタリーな人的支援というのも忘れてはならないというか,手の届くところに人がいるというか,届かないところに人がいるということもものすごく読書には大切な部分ではないのかなというところで,今回まだ議論がそちらに達していないというか,これからだとは思うんですけれども,ハードだけではなくてソフトの部分でサポートしていただけるといいなというか,漏れがないというか,そう思うので,両方の面で,デジタル化はもちろん,AI化も進めていきたいのですけれども,そちらの方での両方の議論をお願いしたいというか,していきたいと思っています。
以上です。ありがとうございます。

【中野座長】 ありがとうございました。意見で大丈夫でございますので,ありがとうございます。重要な指摘だと思います。
では,安形委員,宇野委員という順番で手を挙げていただいていましたので,お願いします。

【安形委員】 こちらは,電子書籍等の法律ですので,書籍でも「(雑誌,新聞その他の刊行物を含む)」と定義の方でなっております。その際に,今回の議論ではほとんど何も出ていないと思うんですけれども,我々の例えば研究成果は,学術雑誌という形で,雑誌論文という形で出てくるということになるのですけれども,そのような論文のアクセシビリティの問題みたいなものについても,どちらかというと結構簡単で,きちんと,先ほどEPUBのいろいろな様々なフォーマットとか,PDFのいろいろなフォーマットみたいな話がありましたけれども,アクセシブルなPDFの形できちんと外に出すというようなガイドライン的なものがあれば,これは多分,結構確保できる話なのかなと思いますので,一言言わせていただきました。
以上です。

【中野座長】 ありがとうございます。
宇野委員,お願いします。

【宇野委員】 今の件に関連しますけれども,学校図書館の問題が出ていましたけれども,大学図書館も非常に重要だと思うんです。ですので,昨年の国会審議の中では,大学図書館が国会図書館のデータベースにデータを提供しているのはわずか6大学にとどまっているという現状{※「視覚障害者等用データの収集および送信サービス」への大学図書館の加入状況(令和元年11月末時点):データ提供館9館(データ提供館全85館のうち)、送信承認館25館(送信承認館全116館のうち)}もありましたので,大学生,障害学生の大学図書館利用をメーンにしていくための策について,是非ヒアリングも含めて,もう少し深めていく必要があるのではないかと思うのが一つです。
それから,アクセシブルな電子書籍の販売の件なんですけれども,DRMの技術的な問題はさておき,実際にやるときにお金の問題があるかと思うんです。ここに是非参考になるかなと思うのは,実は映画の世界なんです。映画の世界は,5年前までは何もなかったわけですが,障害者芸術文化振興法のおかげで,文化庁がきちんと映画製作者に対する補助という形で,UDCastというアプリができて,音声解説や字幕というのが多くの映画に付けられるようになってきている。このスキームがどういうものだったのかというものを真似るというか,検証しながら,こっちに取り入れられるものはないかというものもちょっと視点としては大事かなと思います。
それから,きのう議論があった点字図書館のネーミングの問題なんですが,私も,その名前によって誤解されて余り利用されないというのは非常にもったいない話だと思うんですが,一晩いろいろネーミングを考えて,例えば「バリアフリー図書館」とか「ユニバーサル図書館」とか「ダイバーシティ図書館」とか「インクルーシブ図書館」とか,片仮名以外でも,「みんなの図書館」とか「だれでも図書館」とか「縁の下の力持ち図書館」とか,いろいろ考えられるかなと思うんです。ただ,これらは実は表層的な問題ではなくて,もともとの法律上の定義は視聴覚障害者情報提供施設ということなんです。これは厚労管轄で進んできていますけれども,ではこのようにマラケシュ条約,そして著作権法の改正があった地点で,では一体この視聴覚障害者情報提供施設がどういう役割を果たすべきなのか,本当に読書障害者情報提供施設として生まれ変わっていくのかというのは,この根っこの問題がありますので,是非これは厚労省に国としての施策の方向性というのを考えていただければなと思います。

【中野座長】 ありがとうございます。
関連して,お願いします。

【野村委員】 日本点字図書館の野村でございます。今話題になっています私ども法人名に「点字図書館」が入っておりますけれども,皆さんのおっしゃる部分は,昨日御意見を拝聴いたしまして,非常によく分かる部分がございます。実際,私どもは「点字図書館」というネームを使っていて,御来館された方が録音図書があるということで驚かれることも多いのですけれども,名称につきましては,私どもの創業者の本間一夫が,5歳のときに失明し,その後14歳で点字と出会って,その後成長していくに当たって,盲学校,大学図書館等,点字の図書がなかった。それで本人が非常に苦労しまして,それでその同じ思いをさせたくないというところで私財をなげうって,1940年11月に,当初は「日本盲人図書館」というネームで点字図書館を作りました。そのことを私どもは創業の理念として,視覚障害者のために,点字の図書,また時代背景に合わせて録音図書,CD図書,今は違った図書を作って,時代に合わせて視覚等障害者に対しての情報提供というのを本業としておりますので,また点字というものは,宇野先生も三宅先生も御存じで当然お使いになっていますけれども,御本人たち,当事者にとってみれば,大変重要な文字ですよね。そこの部分の意味もありますので,点字図書館というだけで全てを否定するのではなく,もちろん御意見を頂いて,点字図書館という部分で分かりにくいというのも承知しております。ただ,その部分に関しては,御出席の当事者団体の方たちとか公共図書館と連携して,その内容を広く広報し,周知していただくという方法も考えていただきたいと思いますし,点字図書館のコンテンツを使って公共図書館の方たちがサービスをしていただく。全ての読書に困難のある方を点字図書館1館では当然無理です。全国にある数の中ではフォローできませんので,第一義的には公共図書館さん,各地域にある地域に根差した公共図書館さんが第一義的に対応していただくということが一番,サービスを進めていく中では,本当に使われる方の身近にあるもの,使いやすいものであると思いますので,そういった方向性を持つよう見直していただきたいのと,名称につきましては,それぞれの施設,点字図書館として使っています施設の歴史とか経緯,また私どもは法人格として登記しておりますし,そういったところも考慮していただけたらと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【中野座長】 ありがとうございます。何か今あるものを否定していくというような話ではありませんので,それぞれのこれまでの取組,特に歴史的な経緯というのはすごく重要なことだと思いますので,そういうものを含めて,どのようにすればよいかということを今後まとめていく必要性があるかと思います。
これから基本計画を策定していくわけですけれども,次の会議のところで集中的に審議をさせていただくことになりますが,きょうのところはほぼ時間になりましたので,これで意見交換を終了させていただいて,きょうの意見交換に基づいて,次回の会議がより本質的な議論ができるような形で,それぞれ,様々なデータとか御意見とかというのを御用意いただけるとよいかなと思います。
今,4回目のお話をさせていただいたのですが,今後の進め方について,事務局より説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【金原自立支援振興室長】 事務局でございます。皆様には本当に3回にわたり様々な意見を頂き,ありがとうございました。
今後につきましてですが,年末年始を挟んでお時間を頂戴し,頂いたヒアリング資料やこの協議会で頂いた御意見について,関係省庁等で検討して,骨子案をベースに作り込み作業を進めてまいりたいと考えております。そして,第4回目に基本計画の素案という形でこの協議会にお示しし,再び御意見を頂く形で進めたく考えております。
そういう点で,2つほどお願いがございます。座長からもお話がありましたデータの裏付けですとか,今回お話しいただいた幾つかの統制資料がございますが,それにつきましては,できましたら次回ではなく,そういった作り込み作業をしますので,できるだけ早く事務局にメールなりで頂けると大変ありがたいと思っております。
それから,素案作成に当たりまして,個別に御相談をさせていただくということもあろうかと思いますので,構成員の皆様におかれては,引き続き御協力を頂きますようお願いしたいと思います。
以上でございます。

【中野座長】 どうもありがとうございました。むしろ積極的に各団体等を回っていただいて,きょうこの場では十分に意見を表明していただくことが時間的にもできませんでしたので,吸い上げていただいた上で,事務局の素案を作成していただければと思います。本日まで3回の会議で出た御意見というのを是非しっかりと盛り込んでいただいた素案にしていただければと思います。
それでは,最後に事務局より連絡事項がありましたら,お願いします。

【小林障害者学習支援推進室長】 資料3に今後の会議日程をお配りしております。次回の第4回の開催日時につきましては,12月5日を締め切りとして,現在日程調整表を皆様にお送りしているところです。開催としては1月から2月を予定しておりますが,日程調整ができましたら,改めて御連絡させていただきます。
また,配付資料につきましては,お持ち帰りいただくか,机に置いておいていただければ,こちらより御指定の住所にお送りします。
以上でございます。

【中野座長】 どうもありがとうございました。ほんの少し時間をオーバーしてしまいまして申し訳ございませんが,本日の会議はこれで終わりにさせていただきたいと思います。皆様,是非よいお年をお迎えいただければと思います。ありがとうございました。

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