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視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第1回)議事録
1.日時
令和元年11月19日(火曜日)14時00分~16時30分
2.場所
文部科学省旧庁舎6階 第二講堂
3.議題
1.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る基本的な計画の策定について
2.その他
4.議事録
【小林障害者学習支援推進室長】 定刻になりましたので,ただいまから視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第1回)を開催させていただきます。本日は,お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございます。
私は,文部科学省障害者学習支援推進室長の小林と申します。本日,冒頭で議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに,寺門文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官,及び橋本厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長より御挨拶をさせていただきます。
寺門社会教育振興総括官よりお願いいたします。
【寺門社会教育振興総括官】 本日は,大変お忙しい中,本協議会のために御足労賜りまして,まことにありがとうございます。
皆様方御案内とおり,今年6月に視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律が施行されました。これは,視覚障害者等の方々が読書環境の整備の総合的かつ計画的な推進によりまして,障害の有無にかかわらず,全ての国民が等しく読書を通じて,文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現を目指していくところでございます。
このたびはこの法律の第7条に基づきまして,基本計画を今後具体化していく作業をするために,本日は有識者でございます皆様方に御足労賜りました。多面的な御意見等を丁寧に伺いながら,しっかりとした計画ができるように,共同事務局を務めます厚労省とともに尽力してまいりたいと存じます。
大変に短期間で,インテンシブな御議論をお願いすることになると思いますけれども,何とぞ改めまして御協力をお願いたしまして,御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本障害保健福祉部長】 厚生労働省の障害保健福祉部長の橋本でございます。構成員の皆様方におかれましては,大変お忙しい中,構成員をお引き受けいただきまして,御参集いただきましたこと感謝申し上げます。
私ども厚労省におきましてはこれまで,どちらかといえば,障害当事者の方々ですとか,あるいは全国の点字図書館の関係者の方々,あるいは福祉関係の方々,そういった方々とともに,視覚障害者等の様々な情報提供ということに取り組んできたわけでございますけれども,今回のこの読書バリアフリー法というものを契機にいたしまして,これからは公立図書館ですとか学校図書館,あるいはさらには出版業界など,もっともっと広く,関係する皆様方と一緒に手を携えながら,文科省と協力しながら,この対策を進めていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 続きまして,配付資料を確認します。本日の配付資料は,議事次第にございますとおりですが,資料4及び参考資料については,別冊のピンクのファイルにとじてございます。不足などございましたら,事務局までお申し付けください。なお,一部の資料については,点字化やテキストデータの作成が間に合っておりません。追って共有させていただきますので,何とぞ御容赦ください。
続きまして,本会議の構成員の御紹介に移ります。お手元の資料1の2枚目にございます別紙をごらんください。こちらからお名前の御紹介をさせていただきます。
まず,安形委員でございます。
【安形委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 上田委員です。
【上田委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 植村委員です。
【植村委員】 植村です。よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 宇野委員です。
【宇野委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 小池委員です。
【小池委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 小林委員です。
【小林委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 鈴木委員です。
【鈴木委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 髙橋委員です。
【髙橋委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 竹下委員です。
【竹下委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 長尾委員です。
【長尾委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 中野委員です。
【中野委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 野村委員です。
【野村委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 樋口委員です。
【樋口委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 三宅委員です。
【三宅委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 見形委員です。
【見形委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 吉澤委員です。
【吉澤委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 なお,本日は,市川委員,近藤委員,藤堂委員が御欠席です。
河村委員が今御到着されました。河村委員です。よろしくお願いします。
【河村委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 続いて,関係省庁からの構成員についても紹介いたします。
文部科学省,寺門社会教育振興総括官です。
【寺門社会教育振興総括官】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 厚生労働省,橋本社会・援護局障害保健福祉部長です。
【橋本障害保健福祉部長】 お願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 文部科学省,三好男女共同参画共生社会学習・安全課長です。
【三好男女共同参画共生社会学習・安全課長】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 文部科学省,水田地域学習推進課長です。
【水田地域学習推進課長】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 文化庁,浦田著作権課専門官です。
【浦田著作権課専門官】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 経済産業省,冨田コンテンツ産業課課長補佐です。
【冨田コンテンツ産業課課長補佐】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 経済産業省,笹本産業人材政策室室長補佐です。
【笹本産業人材政策室室長補佐】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 厚生労働省,野村障害保健福祉部企画課長です。
【野村障害保健福祉部企画課長】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 国立国会図書館,大場総務部企画課長です。
【大場総務部企画課長】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 総務省,村瀬情報流通振興課情報活用支援室長です。
【村瀬情報活用支援室長】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 最後に事務局の御紹介をいたします。
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課,金原自立支援振興室長です。
【金原自立支援振興室長】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 そして私,文部科学省の小林です。
本会議の事務は,文部科学省と厚生労働省が共同で行います。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして,座長と座長代理を決めていただきます。資料1をごらんください。2の構成員の(2),(3)に記載がございますとおり,座長は構成員の互選により決定し,座長代理は座長の指名により決定することとされております。
座長について,事務局としましては,教科書のデジタルデータ化をはじめ,視覚障害者のための書籍のアクセシビリティに関する研究をされており,障害者の福祉政策に幅広く御知見のある中野泰志委員に座長をお願いしたいと考えておりますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【小林障害者学習支援推進室長】 それでは,中野委員は座長席に御移動いただきますようお願いいたします。
続いて,座長代理については,座長より御指名をいただきますようお願いします。
【中野座長】 慶応大学の中野でございます。
座長代理に関しましては,通常の書籍及び電子書籍研究及び,その普及に非常に深い造詣をお持ちの植村委員にお願いしたいと思います。
植村委員,お願いいたします。
【植村委員】 専修大学の植村です。座長代理を承りたいと思います。微力ながら尽力してまいりますので,どうぞよろしくお願いいたしします。
【中野座長】 どうぞよろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 それでは,植村委員は座長代理席へ御移動をお願いいたします。
それでは今後の議事については,中野座長にお願いいたします。
【中野座長】 それでは,座長に指名していただきました慶應大学の中野でございます。改めましてよろしくお願いいたします。少しだけ自己紹介と,それからこの会議について,私の思うところというのを紹介させていただきたいと思います。
私は現在,慶應大学で心理学を中心に教えながら,なおかつ障害のある学生の大学等での参加というのを支援するような活動をしております。今から30年ほど前から,この障害のある子供たちに対する様々な情報保障に関する研究というのを行ってまいりました。今回の読書バリアフリー法というのは,そういった障害のある子供たちや障害のある人たちに対するアクセシビリティ,特に書籍のアクセシビリティを実現する上で,非常に悲願の法律が成立したと思っております。
これから皆様に御議論いただくわけですけれども,本会議の議論というのは,共生社会を実現し,Society5.0をノーマルな社会にするために,極めて重要だと考えています。皆様御存じのように,ユニバーサルデザイン2020行動計画というのが立てられておりますけれども,その中で目指されている共生社会を実現するために,この読書環境の整備というのはとても重要だと思いますので,是非皆さんのお力で,この会議をより実りあるものにしていければなと考えております。何とぞどうぞよろしくお願いいたします。
それでは,議事に早速入らせていただきたいと思います。本日の議題は全部で3つあります。1番目は運営規則の決定等について,2番目は,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画の策定について,そして3番目は,協議会構成員からの意見聴取についてという3つがございます。
最初の議題であります運営規則の決定等について,まず議論をしていきたいと思います。それでは最初に事務局より,本件につきまして説明をお願いいたしたいと思います。
【小林障害者学習支援推進室長】 初めに,本協議会の位置付けについて口頭で御説明します。
視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律第18条では,国は,施策の効果的な推進を図るため,関係者による協議の場を設けること及び関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとされており,本条文に基づいて,本会議は設置されております。
一方で,法の施行に伴い,法第7条に規定のとおり,文部科学大臣,そして厚生労働大臣は,施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,基本的な計画を定めるものとされており,その際,あらかじめ視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとされております。
そのため,本協議会を設置するとともに,基本計画の策定に当たって,関係者である構成員の皆様からの御意見をお聞きする場としたところです。
続いて,運営規則について御説明いたします。机上にお配りしております運営規則(案)をごらんください。
本協議会は原則として公開で行われます。資料や議事録も公開となります。個人情報を含むなど正当な理由がある場合には,協議会の合意を得て非公開とすることが可能です。
会議の傍聴については,事前に登録いただいた方のみ可能としており,撮影や録音なども可能です。ただし,開催案内でお示しのとおり,撮影や録画は冒頭のみ可能としておりますので,御留意ください。
【中野座長】 説明は以上ということでございます。ただいまの御説明に関しまして,何か御質問等ございましたらお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。特に御質問等ございませんでしょうか。
なければ,この運営規則に関しましては,先ほど御説明があったとおり決定できればと思いますがよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【中野座長】 ありがとうございます。では,これにて議題の1番目は終了させていただきたいと思います。本会議の運営規則は,机上の資料どおりということでよろしくお願いします。
それでは,2番目の議題に進めさせていただきたいと思います。議題の2番目は,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画の策定についてです。
事務局より説明をお願いします。
【金原自立支援振興室長】 厚生労働省の金原です。私の方からは,資料2-1,2-2,2-3を簡単に説明させていただきます。
まず資料2-1でございますが,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律の概要ということで,もう委員の皆様については御承知の内容ですので,簡単に御説明をさせていただきます。
まず目的でございます。1条にございますが,視覚障害者等,これは視覚障害者の方だけでなく,発達障害の方,肢体不自由等の障害によって,書籍について,視覚による表現の認識が困難な方の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進するという法律の目的でございます。
基本理念が3条にございまして,アクセシブルな電子書籍等の普及がまず図られることとともに,視覚障害者の方の需要を踏まえて,引き続きアクセシブルな書籍が提供されること,それから,そのような書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上が図られること,さらには障害の種類・程度に応じた配慮がなされることが基本理念として定められております。
飛ばしまして,次に基本的施策でございますが,9条から17条,全部で9つの基本的な施策が規定されております。全部説明はできませんが,視覚障害者等の図書館利用に係る体制の整備ですとか,インターネットを利用したサービス提供体制の強化,それから特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援など,全部で9つの条項がございます。
その下に記載しておりますが,このような基本施策を計画的に推進するために,文部科学大臣・厚生労働大臣が基本計画を策定して,施策を具体化するというのが7条にございます。また地方公共団体も計画策定の努力義務が掲げられております。また政府には,必要な財政上の措置の義務付けも記載されております。
さらには協議の場等ということで18条にございますが,施策の効果的な推進を図るために,各省庁だけではなくて,国会図書館,公立図書館,大学等の図書館,学校図書館,点字図書館,さらにサピエなどのネットワークの運営者,特定書籍・特定電子書籍等の製作者,出版者,それから視覚障害者など,そのほかの関係者による協議の場を設けるということが規定されております。
続いて資料2-2を説明させていただきたいと思います。これからこの協議会を中心に,基本計画の策定を行っていくわけでございますが,そのスケジュールでございます。
10月11日に関係省庁等会議を開催させていただきまして,基本計画の骨子案を提示させていただいております。それから本日,それから11月の末になりますけれども,関係者協議会を3回ほど開催させていただき,皆様方から御意見を頂くということを考えております。その後,関係団体等を含めまして意見等の整理・取りまとめを行い,1月に関係者協議会の4回目を開き,この4回目のときに基本計画の素案を提示する予定としております。それについてまたさらに意見集約を頂きながら,2月に関係省庁等会議で基本計画の了解をする予定でございますが,場合によってはここにもう一回予備日ということで,関係者協議会の5回目というのも考えております。それからパブリックコメント,3月にはさらに関係行政機関での協議を行い,3月までには基本計画を公表できるようにと考えております。
資料2-2は以上でございます。
それでは資料2-3に移りたいと思います。読書バリアフリー法の基本計画の骨子案ということで,今回御提示をさせていただいております。
まず若干お断りさせていただきますと,一番上の四角の囲みの下段に記載してございますけれども,この基本計画骨子案は全体構成を含めて,記載されている内容については,本日お集まりいただいた構成員の方に,議論を深めていただくためのたたき台として作成したものでございます。特に皆様に御議論いただきたい施策の方向性については,現時点においては,それぞれの省庁ごとに取り組むことを検討している施策のイメージを列挙したものでございますので,今後この協議会で御意見,御議論を頂き,さらには省庁間の連携を含めて,基本計画の素案を1月までに作成するという形で考えております。
それでは目次というところでございますが,まず「はじめに」があり,次に基本的な方針,3番目に施策の方向性ということで,読書バリアフリー法の先ほど説明しました基本的施策に合わせて項目立てをしております。最後に「おわりに」という構成で考えております。
2ページ目をおめくりいただきまして,まず「はじめに」というところでございますが,ここについては法律施行までの背景や経緯,それから2番目に基本計画についてということで,この位置付けにつきましては,読書バリアフリー法の第7条の規定に基づいて作成されるものという形になります。(2)の対象期間でございますが,この基本計画の対象期間については,令和2年度から5年間を対象とするということで事務局では考えております。
それから3番目になりますが,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題というところで,「……」となっておりますけれども,ここについては,次の施策の方向性というところを中心に,皆さんに御意見を頂くことを考えておりますので,御意見を頂きながら,素案作成の段階で記載することと考えております。
それから3ページになりますが,大きな2番目の基本的な方針というところでは,これは法律の第3条の基本理念に該当する部分として考えておりますが,こちらにつきましても御意見を頂いた上で,素案作成段階で記載をすることとしております。
それから大きな3番目の施策の方向性でございます。これが法律の基本的施策の各条文に基づいて記載をしていこう,計画を立てていこうという項目でございます。
一番最初が視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等ということで,これは9条関係になります。基本的な考えには,条文に記載されている内容を分かりやすく記載した内容になっております。ここで言いますと,公立図書館,大学及び高等専門学校の附属図書館,学校図書館並びに国立国会図書館について,点字図書館とも連携して,アクセシブルな書籍等の充実,また円滑な利用のための支援の充実,そのほかの視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制整備を図る。また,点字図書館につきまして,アクセシブルな書籍等の充実,公立図書館等に対する情報提供ですとか,視覚障害者による十分かつ円滑な利用の推進を図るという形で記載させていただいております。
以下,より具体的な施策を記載するイメージとしており,ここのところでは,(1)でアクセシブルな書籍・電子書籍の充実,(2)で円滑な利用のための支援の充実,(3)でそのほかとしております。
この大きな3番の施策の方向性について,特に委員の皆様方から御意見を頂ければと思っております。
4ページになりますが,これは10条関係で,2番目として,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化いうことでございます。基本的な考え方とか具体的な項目立てについては1と同様でございますので,ごらんいただいていると思いますので,説明は省略させていただきます。
3番が特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援ということで第11条関係,4番目がアクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等ということで第12条関係,5番目が外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備ということで第13条関係,6番目が第14条,第15条をちょっと合わせておりますけれども,端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援という項目を立てさせていただいております。7番目がアクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進,最後のページになりますけれども,8番目が製作人材・図書館サービス人材の育成等と17条関係を記載しています。
最後の大きな4番目になりますが,「おわりに」ということで,例えばこちらについては今後の長期的課題ということで,先ほど御説明したとおり,今回策定する計画については5か年の計画と考えておりますけれども,例えば御意見を頂いた中で,より長期的に検討すべき課題ですとかそういう事項がございましたら,最後に記載するようなことを考えております。
また,地方公共団体もこの基本計画を勘案して計画の策定に努めることとされておりますので,それに当たっての特に留意する事項ですとかお願いする事項なども,こちらの方に記載することも想定をしております。
以上でございます。
【中野座長】 御説明ありがとうございました。この内容につきまして,何か御質問等ございますでしょうか。
皆様既によく御存じの内容かと思われますので,それでは,議題の3番に進めさせていただきたいと思います。協議会構成員からの意見聴取についてということで,今回この法律が成立するまでの間に,構成員の皆様の御尽力がそれぞれあり,様々な思いというのがあったかと思います。構成員の皆様はそれぞれに関して非常に知見をお持ちでございますので,構成員の皆様からの意見をこれから聴取させていただきたいと思います。
進め方につきましては事務局より説明をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 それでは,資料3に基づいて御説明させていただきますが,先ほど1人委員が到着されましたので,御紹介させていただきます。日本身体障害者団体連合会会長の阿部委員です。
【阿部委員】 阿部でございます。よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 お願いいたします。
それでは,資料-3,構成員からのヒアリングについてをごらんください。本日と28日,29日,この3回にわたりまして,皆様から御意見を頂きます。多くの皆様からの御意見を頂きますため,タイトなスケジュールで実施させていただくことをあらかじめ御了承ください。
皆様の御発表は15分以内でお願いいたします。時間管理のため,残り1分となりましたら,事務局がベルを鳴らします。このようなベルが鳴りますので,発表者の方は御発言をおまとめください。もしお時間を超過する場合には,御発言の最中でも事務局よりその旨お伝えする場合がございますので,恐縮ではございますが,どうか御容赦ください。
また,質疑応答と意見交換の時間は,3件のヒアリングが終わりましたら設けます。この時間についても,残り1分となりましたら,事務局でベルを鳴らしてお知らせいたします。
質疑応答と意見交換の時間では,直前のヒアリングに関する内容に的を絞って御発言いただきますようお願いいたします。
また,11月29日に予定している第3回では,ヒアリングが終わった後で,全体を通じた意見交換を時間をとって行う予定です。
御説明は以上です。
【中野座長】 それでは進行していただいてよろしいですか。こちらから進行した方がよろしいですか。
【小林障害者学習支援推進室長】 お願いします。
【中野座長】 では,最初の御発表は,宇野委員からでございますね。宇野委員,よろしくお願いいたします。
【宇野委員】 筑波大学附属特別支援学校,弱視者問題研究会の宇野と申します。本日はこのような場を御提供いただきましてありがとうございます。
読書バリアフリー法につきましては,実は2008年の教科書バリアフリー法ができた直後に初めて産声を上げまして,2013年にマラケシュ条約がWIPOで採択され,そのときから,主に障害当事者の4団体で運動を求めてきました。当時の日盲連,今は日視連,それからDPI日本会議,全国盲ろう者協会,弱問研,この4団体で運動を進めてきて,ようやく法律が成立し,そして18条に基づきこのような協議の場が始まるということで,大変しみじみと感じているところです。
まず,ここにお集まりの皆様方はいろんな立場がありますので,この障害者の読書環境を整備していこうということについても,利害関係があったり,いろんな思惑があったりするかと思うんですが,そもそも果たして読書というものと私たち人というものが,現代社会においてどういう関係があるのか,ちょっと考えてみます。
読書に困難のない方々からすると,まず,初めての本との出会いというのは,恐らく二,三歳時に,お母さんやお父さんに絵本を読んでもらうというところから始まります。そして小学校に入って,教科書をもらったり,ドリル,副読本などを読んでいく,また夏休みには読書感想文のため本を読んだり,そして中3,高3になると受験を経るということです。そのときには,教科書のみならず,参考書や問題集,そして大学に行ったら様々な専門書を読んで,社会人になっていくということなんです。そう考えると,障害がある,なしにかかわらず,もうこの現代社会において本が読めないというのは,非常に生きにくいことにつながっているということです。
視覚障害に限って言いましても,もう御存じかと思いますが,例えば全盲の弁護士もいます。それから精神科医ですが,お医者さんも何人もいます。東大には全盲聾の大学の教授もいます。ということで,このような立場に立つには,それぞれ難関な試験を突破してきているわけですが,それを支えているのはやはり,いろんな専門書,参考書などなんです。と考えると,これまで障害者というと,ついつい福祉の恩恵を受ける側と思われがちでしたけれども,やはりきちんと環境を整えて,その能力を発揮できるような立場に置かれれば,本当に今挙げたような,社会で活躍できる人がたくさんいる状況になっているということです。
バリアフリーと聞くとついつい,駅で言うとエスカレーターとかエレベーターとか,道路で言うと段差をなくそうということを連想される方が多いかと思うんですが,やはり情報というか,教科書もそうですし,この本もそうですし,いろんな意味でバリアを取り払っていくということが,まさに共生社会,みんながともに暮らしやすい社会を目指していく,又はインクルーシブな社会とかユニバーサルな社会,いろんな言われ方をされますけれども,この現代日本に生まれて,たまたま障害を負ったがゆえに大事な情報に接しられないというのは,やはり何とかしていかなくてはいけない。
そもそも出版社も図書館も,よくよく考えてみれば,著者が作った作品を,全ての日本にいる人たちに届けるんだという根源的な願いがあると思うんです。それをいろんな立場を乗り越えて,どういう形態であっても,きちんと本の内容を全ての読書障害者に届ける,こういうような共通認識を,まず共有できれば大変うれしいなと思います。
それで実は私たち4団体は,マラケシュ条約が採択されるときに,著作権法が改正されるだけではなく,この読バリ法を求めたわけですが,そのとき,買う自由ということと借りる権利,この2つをスローガン的にしっかり確立してもらいたいということを,大きな柱として立ててきたわけです。
まず買う自由については,主に12条に書いてありますが,これも非常にこの読バリ法の中での胆といいましょうか,重要な1条になっているかと思っています。
出版社がこれまで何もしてこなかったかというと全然そんなことはなくて,例えば一部の出版社ですけれども,本の巻末にテキスト請求券というものを付けて,障害のある人が本を買ったときにテキストを提供するという試みも進められてきました。ところが独り暮らしの視覚障害者を想定すると,本を買って,そのテキスト引き換え券を切り取って,そして出版社の住所を書いて,送ってというようなことは,ちょっとハードルがあって,なかなか1人ではできにくいという側面があります。
また近年,オーディオブックの普及とかEPUB,電子書籍の端末による読み上げ,スクリーンリーダーとか,iPhoneで言うとボイスオーバーという機能なんですが,その読み上げによって本を聞くことができる,このような取組も始まっています。ところが私たちと一緒に運動してきた盲聾者の立場から考えると,このオーディオブックやスクリーンリーダーによる読み上げというのは,やはり聞こえないがゆえに,読書をすることができないという側面を持っています。
そうなると一番望ましいのは,本,つまり紙に印刷される前のデジタルデータ,これを何とか障害者側に提供していただければ,それを自分で点字に変換するということが可能になってきています。ですので,例えば障害者だけがアクセスできるような書籍の販売サイトで,そのデジタルデータを購入できるようになる。こうなれば,発売日初日に私たちも本にアクセスできる。あとは自分たちで点字に変えようが,音声で聞こうが,又は画面で拡大しようが,それはそれぞれのニーズに応じてできるということになります。
この考え方はずっと前から,One Source, Multi Useという形で,広くいろんなところで叫ばれていました。このOne Sourceをどうするかという問題は,ちょっと細かい議論になりますけれども,例えばEPUBデータからテキストファイルを抽出して,そしてそのテキストファイルから点字変換,音声拡大へと変換していく。こういうのが望ましいかなと思っています。これは活版印刷のときには難しかったわけですけれども,今はいわゆるデジタルプリンティングといいましょうか,電子媒体を使って印刷が行われていますので,ちょっといろんな仕組みを作ってしまえば,もうこれは技術的には可能になってきているということです。
現状,私たちが本を読むとなると,例えば点訳ボランティア,音訳ボランティアに媒体を変換してもらう。そのためには数か月待って読まなくてはいけない。若しくは何年待っても,点字にも音声にもされない図書もあったりします。
一方発売される書籍というのは,年間5万タイトルとも8万タイトルともお聞きします。この5万から8万が毎年毎年新しく出ていく中で,やはり私たちも一人の消費者というか,買いたくても買えない,でも電子媒体を売ってもらえたら買えるという立場にありますので,ここは是非お互いウイン・ウインの関係を作るという意味でも,何とか12条というものを前に進めていっていただければと思います。
今お話ししているのは,かなり具体的なことも言っていますけれども,当面3月までは基本計画の策定ということですが,この将来的なグラウンドデザインというか,理想的な状態を展望しつつ,そこにレールが引けるような基本計画にしていただければ大変ありがたいなと思っています。
次に借りる自由について,時間の限り触れさせていただきます。まず9条関係ですが,これまで視覚障害者を中心として,点字図書館がいろんな本のバリアフリー化を進めてくれていたわけですが,マラケシュ条約が提唱したように,ディスレクシア,それから肢体不自由,寝たきりの方も含めて,これからは読書障害者として考え,そしてその読書環境を整えていく時代になったということです。
その中で,公立図書館がいろんな媒体,点字,録音,拡大,LLブック等ありますけれども,それらを全部3,300の図書館にそろえるというのは,ちょっとこれは実際現実論としては難しい。とはいうものの,やはりそういう媒体があるんだということが,まだまだ全国の読書障害者には伝わっていない。そういう意味では,一般の活字図書のほかにこういう媒体があるんだよということを,サンプルのように見本として提示する,こういう役割を3,300の図書館には期待したいなと思っています。
それから10条については,サピエへの支援財政支援というのが大きいところかと思うんですが,ここでちょっとお願いしたいのは,確かに個人会員に寄附を募っているというのも変な形だと思うんですけれども,現状ボランティア団体にも年会費を求めて,データのアップをお願いしているという状況があります。この1万円ですけれども,やはりこれは早々になくしていただいて,ボランティア団体はちゃんとこの1万円に悩まされることなく,作ったデータをきちんとネットワークに乗せるということを実現していただきたいなと思っています。
それから,教育はかなり重要だと思うんですけれども,実は盲学校でさえサピエに加入できているところは,全国67校の半分もないんです。ですので,盲学校とか肢体不自由の特別支援学校,旧養護学校には,是非このサピエは年会費云々ということではなく,全国の蓄積されたアクセシブルなデータにきちんとつなげていただきたいと考えているところです。
それから11条については,第2項で出版社からデータの提供というところが非常に重要だと思います。これについては,図書館界若しくはボランティアの世界からすると,悲願なわけです。これまで本の背表紙のところを伐採して,スキャナーで読み取って,そしてテキストデータ化して点訳するとか,1文字ずつ手入力で打ち込むということをしてきたわけです。それの蓄積が,最も歴史の長い点字データでさえ,サピエには18万タイトル,録音は7万タイトルということになっています。
もしここで出版社から正確なテキストデータ等が提供されれば,その作業が一気にはかどるというか,効率的に進められるわけです。点字や録音は18万とか7万という数字になっていますけれども,弱視者とかディスレクシア,肢体不自由の方が求める,画面上に文字が映る,このためには,やはりテキストというものが非常に重要になりますので,先ほどお話ししたとおり,One Source, Multi Useを展開する上でも,この11条の2項をどう具体化するかというところを御検討いただければと思います。
もっとも出版社側からすると,そんな最新のものは渡せないよということなら,じゃ,例えば発売後数年間たったものとか,絶版になったものとか,それほどもう今は商売ベースには乗っていないというようなものであれば,提供いただけることもあるかと思いますので,このあたりは議論を続けていただきたいと思っています。
14条については端末のことなんですが,これは是非肢体不自由の方も含めて,デイジープレーヤー等の普及を考えていただきたいと思います。
17条については,人材の育成の中で,是非各公立図書館等の中で,障害者サービスを担当する,仮称ですけれども,例えば読書支援コーディネーターのような立場を示していくのも一案かなと思います。
最後なんですけれども,マラケシュ条約の前文に非常に大事な理念が書いてあります。マラケシュ条約は,各国に著作権の制限や例外規定と外国へのデータの輸出入というのを求めていますけれども,条文の中には,この著作権は制限されていたとしても,まだまだ障害者が読めるフォーマットは少ない,よって国内の相当な資源を活用していくことが大事であると書かれています。
この出版社,図書館を含め,相当な資源がうまく障害者に,ちゃんとバリアフリーとして伝わっていくような制度設計を,是非議論していきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは,続きまして野村委員よりお願いしたいと思います。
【野村委員】 日本点字図書館の野村でございます。よろしくお願いいたします。
私どもはこの法律が施行されることによって,やはり多くの活字の読めない方,視覚障害者以外の方でも活用されることを本当に望んでおります。この協議会の中で私どもは,点字図書館というサービスの一番現場にいる立場だと思っておりますので,そちらの観点から幾つかお話をさせていただきたいと思っております。
まず,視覚障害者等による図書館の利用に関する体制の整備なんですけれども,現在も私どもは,ディスレクシアの方だとか,活字困難の方の受け入れをしておりますけれども,現在私どもの図書館の利用登録約1万2,700名の中の35名の方だけが利用されております。35名しかいないんです。
この部分に関しましては,やはりサピエを使うにしても,専用の機械が非常に高価だったりといったものがございます。また,私ども点字図書館だけでは,視覚障害以外の方に対する,図書館を使えるというサービス,情報提供にはやはり限度がございますので,今後この制度を推進してくためには,視覚障害者以外の視覚障害者「等」の部分の当該団体の方たちと協力して,当事者の方たちにより細かな利用説明というものを進めていかなければ,活用が広がっていかないと考えておりますので,その部分に関しましては協力体制をとっていただけたらと思っております。
また点字図書館の中でも,実際に地方の図書館さんなんかですと,障害等級で切って,視覚障害等級で1,2級しか登録できないというようなことも非常に多くございます。この場合,民間の図書館は別なんですけれども,県立図書館とか指定管理の施設になりますと,指定管理者の許可が必要になってきます。
県及び市町村,そういったところが障害種別を改善していただかなければ,そこの部分がクリアできないので,視覚障害者以外の方の登録もままならない状態になりますので,そういった部分に関して,もう一度各省庁の方を中心に見直し,通達みたいなことを出していただくことによって,視覚障害者以外の方も利用しやすくなると思っております。それに伴って,点字図書館側も利用規約を見直すという形で,受け入れ体制を整えるんじゃないかと思っております。
インターネットを利用したサービスの提供体制の強化なんですけれども,私どもはサピエ図書館のサーバーの管理を担っておりますので,そちらの観点から言わせていただきますと,現在サピエ図書館は,サーバーの機器が買い取りという状態になっておりますので,五,六年たちますと,やはり老朽化してまいります。サピエというものを活用していただきたいと思っていますけれども,メーカーサイドも,サーバーの製造中止から部品供給を7年ぐらいしかもう持たないんです。そうするとある程度の期間で入れ換えを考えていかなきゃいけません。そうしなければ,サピエを活用した形で新しいサービス提供をしていけませんので,そういった部分で新しいサーバーの確保の予算的な措置はお願いしたいと思っております。
私ども日本点字図書館としましては,運営を担っております全視情協さん及び国会図書館さんとは横断検索をさせていただいておりますので,今後もよりそういったところを緊密に話し合いながら,また新たな当事者団体の方たちの御意見を頂戴しながら,サピエをより使いやすいものに変えていきたいと思っておりますが,どうしても改造するとなりますと,それなりの金額が発生してまいりますので,金銭的な部分及び,また大学図書館とかそれ以外の図書館さんで持っているデータがあるのであれば,サピエを改造するというわけでもなく,ポータルサイトみたいなものを設立することによって,それぞれの図書館の持っているデータの検索ができるようになったらいいんじゃないかなということは考えております。
それは私ども点字図書館の中でも,自分のところで持っていない資料,特に大学図書館さんの持っているような資料なんかは,学生さんが授業で使うので,点訳をしてほしい,朗読をしてほしいという話を持ってこられますけれども,点訳,朗読をすると半年,1年,そういった時間が掛かってしまいますので,今現在,点字図書館側ですぐに検索できるツールがないですので,そういったところから大学図書館なんかと協力したポータルサイトみたいなのを作って,そこで検索すると,より利用者の方にサービス提供ができると思っておりますので,そういったところの工夫もできたらいいなと考えております。
あとは図書の製作に関してですけれども,現在点字図書館では,全視情協さんが製作に関するある程度のマニュアルを作っておりまして,その基準に沿って製作しております。ですけれども,ほかの公共図書館さんなんかですと,なかなかそういったマニュアルが作られていなかったりとか,公共図書館は特に担当の方が数年でいなくなってしまうことが多いので,そこで抱えているボランティアグループの方が力関係で非常に強くなっていて,なかなか一定のレベルを保つことができない,ボランティアさん側の意見が強過ぎて,なかなか職員側がその製作技術に追い付かないということがございますので,できることであれば,今後は公共図書館も点字図書館も,図書を作るという部分では,ある一定の基準を満たしたもので製作していくことが必要じゃないかと思っております。
あとは私どもの端末機器に関してなんですけれども,現在サピエで使われている図書については,デイジーフォーマットで作っておりますので,専用の再生機が必要になってまいります。今後,視覚障害者以外の方がサピエの録音図書等を使用するのに関しましては,専用の再生機が必要になりますけれども,現在給付等で認められていない部分が多いので,私どもに登録している35名の方も,8万円近くする機械を自費で購入していただいたりしております。
ですのでせっかく既にあるサピエ図書館のデータなんかを活用していただくためには,専用の再生機を購入できる公的な支援が必要になってまいりますので,視覚障害者以外の方へのサービス提供を進めるためにも,そういった障害の範囲を広げていただく,給付の範囲を広げていくということは,必要不可欠であると考えております。
本当に視覚障害者に関しましても,再生機というのは非常に頻繁に使われる方は壊れる頻度が高いので,耐用年数の縛りがもう少し短くなっていただかなければ,新しいものを購入できないという状況でございますので,視覚障害者の機器の耐用年数という部分も一つの基準としていただけたらと思っております。
もう一つアクセシブルな電子書籍・端末機器に係る先端技術の研究開発なんですけれども,もちろんいろんな新しい先端の技術を取り入れることは非常に大切ですし,それをやめてはいけないと思うんですけれども,実際には視覚障害者の中では,今ある専用のいろんな機能を使いこなせない方もいらっしゃいますので,最先端の機器を導入していくとともに,簡易な簡便な機械の開発,そちらの方も必要不可欠だと思っております。
実際に私どもの図書館でも,購入したけれども使いこなせないという方がいらっしゃいますので,そういった方たちには我々職員がマンツーマンで,2時間,3時間掛けて指導しているような状況になりますので,できる限り,先端のものプラス簡便なものを製作していく必要があると思っております。
また,再生機に関しましては,現在それを製造しているメーカーが本当に限られておりますし,視覚障害者だけの機械ですので,製作会社が非常に利益が上がらないということで,撤退していくような状態がございます。この部分に関して,今あるメーカーも撤退されたときには,視覚障害者すら再生ができなくなってまいりますので,こういった製作会社に対する,補助とまではいきませんけれども,公的な支援をしなければ,視覚障害者はおろか視覚障害者等の皆さんにとっても,読書が非常に危ぶまれる状況だということを御理解いただいて,そこら辺についての支援みたいなものを御検討いただけたらと思っております。
あともう一つ私どもが考えていますのは,ボランティアの高齢化でございます。点字図書館においてはどこの図書館もそうですけれども,図書の製作においてボランティアの方は必須です。職員だけではとても作り切れないものでございます。近年はボランティアも高齢化しております中で,新しい方を育成するに当たって人が集まらないというのが多くなっております。
昔は御家庭の主婦の方たちなんかが,空いた時間にやっていただけることが多かったんですけれども,最近はやはり皆さん社会に出ていらっしゃる中で,ボランティアという形での時間が取れない状況でおります。ですので私どもの図書館でも,少しずつ有償という形でなければ人が集まらない状況になっておりますので,ボランティアの育成という部分と,できれば公的な製作の部分に関する費用の工面,そういったものも御支援いただけたらなと思っております。
以上が私どもの点字図書館としての意見でございます。
【中野座長】 どうもありがとうございました。
引き続きまして,竹下委員よりお願いいたします。
【竹下委員】 本日は意見発表の機会を頂きありがとうございます。私どもは,視覚障害者等を対象に,図書製作と提供を行っている国内の点字図書館をはじめ,ボランティア団体,公立図書館等,101の視覚障害者情報提供施設・団体で組織にしている特定非営利活動法人です。
目標とするところは,全ての人が情報を共有できる社会を目指すということで,今日サピエ図書館を中心に,インターネットと郵送で,全国8万人の視覚障害者等の方々に点字,録音,電子書籍をはじめとする情報を提供し,利用実績は,録音図書のダウンロードと貸し出しだけでも,年間約450万タイトルに達しています。
事前に提出し,皆さんごらんいただいている資料は,文部科学省からお示しいただいた基本計画骨子案の順番に沿ってまとめたものですので,本日はこの資料を基に,要望事項が多くなるんですけれども,重点項目から順に6項目にまとめて,意見と要望を述べさせていただきます。
まず第1に,資料では一番最後になってしまうんですが,基本計画骨子案,8,製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係)について申し上げます。
読書バリアフリー法で定義された特定書籍と特定電子書籍等のほとんどの製作を担っている点訳・音訳等ボランティアの地位の向上と,養成・活動支援のための施策を要望します。
全国の点字図書館が所蔵し,点字図書館や公立図書館等から借り出しできる図書は,2016年度の調査になりますが,点字50万タイトル,録音82万タイトルに達します。同時に,この数字にほぼ含まれますが,サピエ図書館が所蔵し,インターネットからダウンロードできる図書データ,つまり特定電子書籍等は,2018年度の集計で点字21万タイトル,録音9万タイトル,アクセシブルな電子書籍7,000タイトルに及びます。
これは今,日本点字図書館さんからも要望がありましたが,これらのほとんどは,全国の点字図書館八十数館で見た場合,約1万8,000人に上るボランティアの方々を中心に,その他の公立図書館等や地域のグループに属するボランティアの方々も加わって製作したものです。このボランティアの方々は,1年から2年間の講習を受けた上で,研さんを重ね,さらに技術の習得をし,そして御自分の貴重な時間を割いて活動されているわけです。
厚労省の予算補助がある全国72館の点字図書館においては,これらのボランティアの方々の養成・活動支援に使える予算が,今年度,点字図書館事務費における身体障害者保護費負担金として年額最大240万円増額され,ボランティアの養成や謝金,交通費等に使えることになりました。
しかし,私どもの調査――これは今年8月末,回答50館です――では,「今年度から実施された」館は16館にとどまり,「来年度以降の実施に向けて協議中」が11館,「まだ実施の予定はないと思われる」と答えたところが23館に上りました。しかもこの72館で見た場合,ほとんど半数近くが指定管理制度で運営されているため,仮に補助金が増えても,実際の予算は増えない館が多数に上ると予想されます。
点字図書館の誕生から80年余り,日本の視覚障害者の読書は,世界に誇る点訳・音訳ボランティアによって支えられてきましたが,今世紀に入り,社会・経済情勢の変化により,全国の点訳・音訳ボランティア等の高齢化が進み,新たに講習を受講されて活動を始められるボランティアが避け難く減りつつあります。
今後はこの状態を補うために,この読書バリアフリー法に盛り込まれた種々の支援策が期待されるわけですが,しかし当面の間はこれまでどおり,多数の質実なボランティアの方々の協力を得ることなしに,視覚障害者等の読書を維持,発展させることはできないと考えております。
そこで今後も点訳・録音図書等の製作を維持するための前提として,まず障害者総合支援法の地域生活支援事業において,都道府県・市町村の任意事業にとどめられている点訳・朗読奉仕員等養成研修事業を必須事業に改正し,点訳・音訳ボランティア活動の位置付けを引き上げていただくことを要望します。
市町村における手話奉仕員と都道府県における手話通訳者,要約筆記者の養成が必須事業として安定的に行われているのに対し,点訳・朗読奉仕員の養成は任意事業にとどめられているため,多くの自治体で毎年予算の減額や,中には養成が中止されるケースも起こっています。また,この講習は多くの自治体で点字図書館が受託していますが,この広報活動においても自治体の協力が十分に得られず,受講者の確保が進まない現状があります。さらに,これに加えて,専門的な技術を必要としたり,公共的な情報の作成に関する点訳・音訳作業等を中心に,点訳・音訳作業の有償化に向けた施策の実施も強く要望いたします。
ボランティアに関しては,もう1点,基本計画骨子案の1,視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等の(1)に「点字図書館において,点字図書や音声図書を製作するために必要な機器が充実するよう支援を行い」と書かれておりますけれども,これに基づいて,特に全国の点訳・音訳ボランティアの方々の多くが自費購入している製作機器の購入費の予算化も要望いたします。
第2に,基本計画骨子案の2,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係)に盛り込まれた,サピエの運営に対する支援として,私どもが負担しているサピエの運営費の増額を要望します。
当協会では,2010年のサピエ誕生以来,サピエの運営,つまり,図書製作の基準や質の維持,登録の管理,施設や会員のサポートなどを行ってきましたが,この経費は年間概算3,000万円に上っています。そして,先ほども御指摘がありましたけれども,それを当協会が施設団体の会費や個人利用者の御寄附などで賄ってきております。この経費について,厚生労働省においては,日本点字図書館が担当するサーバーシステムの維持管理費は補助されてきましたが,当協会への補助は長くありませんでした。今年度,読書バリアフリー法のおかげで,厚労省からサピエの利用者支援の経費として870万円が予算化され,日本点字図書館を通して日本ライトハウスがこれを肩代わりすることで当協会の負担が軽減されました。しかし,このたびの予算措置を受けてもなお,サピエの運営には2,000万円余りが必要なため,そのうち約1,000万円は個人利用者からの御寄附で捻出するほかなく,当協会では今年度,これまで1口5,000円だったものを3,000円に下げて,利用協力金として利用登録者約1万7,000人のうち3,500人から頂戴する予算を立てています。社会的障壁により晴眼者に比べて著しく読書が困難な状態に置かれている視覚障害者等の方々が少なくとも無償でサピエを利用できるように,運営費への公的補助を要望します。
第3に,基本計画骨子案6,端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係)と,7,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係)について,まとめて申し上げます。
これは今,日本点字図書館さんが述べられましたけれども,現在,視覚障害者が音声デイジーを聞くためのデイジー録音図書プレーヤーは日常生活用具に指定されていますが,この給付対象となる障害等級の拡大,そして,読書バリアフリー法の対象に準じた障害種別の拡大と耐用年数――これは一度給付を受けてから次の給付を受けるまでの期間ですけれども――この短縮を要望します。デイジー録音図書プレーヤーは,従来のカセットテープレコーダーに比べて非常に高額で,物によって4万8,000円とか8万5,000円等いたします。そして,給付対象は地方自治体の実態においては視覚障害のおおむね1・2級の方で,それ以外の方の自費購入には困難が伴います。また,耐用年数がおおむね6年若しくは5年ですので,その前に壊れて使えなくなったり,機器が更新されても購入できないことも多く,録音図書の普及の大きな障壁となっています。
また,骨子の6の(2)に書かれた情報通信技術の習得支援については,全国の点字図書館等では以前から視覚障害者に対するICT機器の紹介,利用支援,貸し出し,講習等のサービスに取り組んでいますが,ほとんどの施設が予算の捻出と人員配置に苦慮しています。こうした実態,実績に対して,国の補助金が適切に交付されることを要望します。厚生労働省では,今年度,障害者ICTサポート総合推進事業が新設されましたが,当協会の調査(8月末,回答66館)では,「今年度から実施された」館は1館にとどまり,「来年度以降の実施に向けて協議中」が5館,「まだ実施の予定はないと思われる」が44館に上っています。
もう1点,基本計画骨子案7,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等における端末機器等の開発について申し上げます。今日の技術革新のスピードは目まぐるしく,特にOS内蔵の機器などは発売後ほどなくして生産中止になり,修理不能で買い換えを強いられるケースも生じています。したがって,先端的技術等の研究開発に当たっては,単に先端的技術の導入を掲げるのではなく,長期間安定的に生産供給されることと,高齢の視覚障害者等が簡単に使えるユーザビリティーの高い機器の開発を促すことを希望します。
第4に,基本計画骨子案1,視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係)について申し上げます。
点字図書館と公立図書館,また,私どもにとっては視覚支援学校図書館等との連携強化の具体策として,それぞれが担当を分担して,視覚障害者の利用拡大は主に点字図書館,その他の読字障害者や身体障害者の利用拡大は公立図書館等が力を入れることを提案します。
なお,これに関連してお願いしたいことは,全国の点字図書館では,多くの館で,設置自治体の条例や指定管理規程により,利用対象者が障害者手帳を所持する視覚障害者に限定されています。これをマラケシュ条約と改正著作権法及び読書バリアフリー法に従って拡大するため,利用対象者を障害者手帳を所持する視覚障害者に限定している身体障害者福祉法の規定を改めるように要望いたします。
もう1点,基本計画骨子案2,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係)の(2)に書かれた関係者の連携強化について申し上げます。これまでも当協会では,公立図書館や学校図書館,国立国会図書館,関係団体に対して独自に連携・協力を働き掛け,研修会の開催などに取り組んできました。今後,こうした連携・協力が恒常的に行えるように,文部科学省等の主催による常設の協議会の開設を要望いたします。
第5に,基本計画骨子案3,特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係),そして4,アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等について申し上げます。
出版社から製作者に対する電磁的記録等の提供促進に向けては,なかなか難しい問題が多いと思いますので,これからこれを継続的に協議できる場を出版社と点字図書館と製作者との間に設けていただくことを要望します。
また,アクセシブルな電子書籍等の規格については,アクセシブルなEPUB方式,あるいはデイジー3.0以降とすることを私どもは提案しておりますけれども,アクセシブルの規定というのは非常に重要で,例えば,大変失礼ながら,今回メールで事前配信されたPDFデータの資料は,視覚障害者の方が音声用ソフトで読むことは可能ではあっても読めない部分があったり,文章や単語が途中で切れて意味がとりにくかったり,文章の構成が読み取れないなど,アクセシブルなものとは言えません。こうした点も配慮して,「アクセシブルな」と言うときの電子書籍について十分な検討をお願いしたいと思います。
第6番目,最後に,基本計画骨子案5,外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係)については,当協会では国立国会図書館とともにマラケシュ条約によるAE,国際的な図書交換窓口業務を担当することになりました。しかし,この業務は無償で行っているもので,実際には当協会加盟のNPOが人件費を自己負担することで行おうとしております。今後,図書交換の実績に応じた国の経費負担を要望するものです。
当協会からの意見と要望は以上です。ありがとうございました。
【中野座長】 どうもありがとうございました。以上3件,御発表いただきました。ここで,質疑応答,それから意見交換を行いたいと思います。ただいま御発表いただいた3人の委員からの御意見について御発言をお願いしたいと思います。
なお,最初に事務局から説明がありましたように,時間が限られておりますので,それぞれの御発言はなるべく簡潔に,できれば1分程度に収めていただきますようにお願いしたいと思います。
では,御意見がある方がおられましたら,よろしくお願いします。では,お願いします。
【植村座長代理】 植村から宇野委員に質問させてください。電子書籍というと,文芸,あるいは9類の読み物系が多い中で,先ほどの御発表は大変重要な指摘と思いました。実は学びのための本,専門書とか参考書というのが必要なんだということだったと思います。実際,宇野委員が教えられる中で,このような専門書,つまり,かなり電子書籍が少ない領域かと思うのですが,どのように対応されているのか,教えていただければと思います。
【宇野委員】 ありがとうございます。まず,盲学校の中で教えている中で,点字を使っている子供たちにとってはサピエでかなりの参考書がアップされているんですが,弱視の子供たちにとっては参考書や問題集というのが本当に弱いというか,少ない状況にあります。ですので,拡大写本ボランティアの方にテキストデータを作っていただいたり,または電流協の方に内々にちょっとデータをというような工面をしていただいたりということは細々とはやっているんですけれども,実は中高生の学習環境の教科書以外の部分はかなり苦労しているという実態があります。
それから,卒業生で,ある盲・ろうのお子さんが大学に進んで,社会福祉を勉強したことがあります。そのときにも,社会福祉用語辞典というのがサピエには1980年版が載っていたんですけれども,最新のものは全くなくて,それを出版社に問い合わせたところ,電子データはあるんだけれども,アクセシブルな形で販売はしていただけないということで,学生にとっては,残念ながら,社会福祉用語辞典というのは今時のものは勉強できないということになっています。御存じのとおり,多くの学生はそれぞれの大学の障害学生支援室に教科書を持ち込んで,テキスト化していただいて何とかやっているということなんですけれども,これも非常に点での努力ですので,やはりこれは線になって,面になって,もう少し全国的に多面的に進めていけるような施策になればなというふうに願っているところです。
以上です。
【中野座長】 植村委員,よろしいでしょうか。
【植村座長代理】 はい。ありがとうございます。
【中野座長】 ほかに御質問等はございますでしょうか。御発表いただいた委員同士でも構わないと思いますが,もし何かあればお願いしたいと思います。では,宇野委員,お願いします。
【宇野委員】 竹下委員にちょっとお伺いしたいんですが,最後の方で,視覚障害者は点字図書館,それからディスレクシアや肢体不自由の方は公共図書館というふうに提案があったわけですが,点字図書館,いわゆるサピエが持っている資産というのは,録音図書なんかは例えば肢体不自由,ディスレクシアの人にも大変有効であるのではないかと思われるんですが,そこはネットを介して公共図書館側からサポートしていけばいいというような趣旨での御提案でしょうか。
【竹下委員】 正直に申し上げますが,今,全視情協で全国の点字図書館に,マラケシュ条約に従って,とにかく門戸を開放するようなことでずっと働き掛けております。ただ,点字図書館の本音としては,職員基準配置が5人の中で,視覚障害者の方にそのサービスをするのが手いっぱいであって,なかなかどんどん広げていくことは難しいということがあります。それを広げることはもちろん前提なんですけれども,今回,マラケシュ条約,そして読書バリアフリー法に従って,公立図書館等がここに参加してくることによって,いたずらに,点字図書館は何でもかんでもやるんだ,全部門戸を開放するんだと。公立図書館も同じように,希望する方に全部開放するんだと。もちろんそれは前提なんですけれども,力を入れるところはそれぞれあっていいのではないかと。先ほど述べましたけれども,まず点字図書館の方では障害者手帳を持たない視覚障害者の方々に門戸を開放することが重要であって,そこからさらに身体障害や読字障害の方々にも広がっていくだろうと。公立図書館の場合には,やはりその地域地域で使用していただきやすい障害のある方々にまず門戸を開放して,そしてもちろんサピエ図書館を利用して,相互に連携するという形が望ましいのではないかということを本音で申し上げました。
【宇野委員】 分かりました。おっしゃるとおり,本来は,もう数十年前に図書館というものが設置された時点で,いろんな市民,障害の有無に関わらず市民全体に対するサービス提供というのが図書館であるべきであったと思うんですね。そこを点字図書館という形で,視覚障害者等を中心にサービス提供が進んできた。でも,今,この法律が求めているように,本来,図書館が全ての障害者に対してサービスを提供していくということが始まろうとしていますので,このときに,では今までノウハウを持っている点字図書館がどういう役割を担うべきなのか,公共図書館はどうやって障害者サービスのノウハウをさらに充実していけばいいのか。ここはおっしゃるとおり,役割分担とある程度のすみ分けをやっていくことによって,うまく回っていくんだろうなというふうに思いました。ありがとうございました。
【竹下委員】 あと一言補足ですが,後ろ向きに捉えたかもしれませんけれども,今回の要望にも書いていますとおり,点字図書館では,地域における公立図書館等への支援をこれまでも続けてきましたし,今後,読書バリアフリー法に従ってさらにそれを強化するし,求められていくように思っております。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。特にございませんでしょうか。多分,今後,次の発表が出てくると,またさらに御意見等というのがより活発になるのではないかと思いますので,進行させていただいて,またその次の質疑応答のときにでも御発言いただければと思います。
それでは,再度ヒアリングに戻らせていただきまして,次の発表者である三宅委員から御発表をお願いしたいと思います。三宅委員,お願いします。
【三宅委員】 日本視覚障害者団体連合の三宅と申します。こちらからの骨子案についての意見を述べさせていただきます。
まず冒頭に,視覚障害者の方がどういった形で読書をされるかというふうなニーズについて少し触れたいと思っております。先ほど宇野委員からあったように,やはり学びということで,それぞれの個人の中の知見を深めていくという形で読書をするというふうな方もいらっしゃいます。ただ,中には,今,視覚障害者が働いている環境としまして,まだまだ半分近い方が,従来からのあんま・マッサージ・指圧・鍼灸業で生計を担っている方もいらっしゃいます。そういった,人に対する業種に関わっている方たちは,いろいろな情報を入手して,その方たちにサービス,要は治療をするわけですけれども,その場合に,まさか無言のまま淡々と行うというわけではなくて,来られた患者さんに対していろいろな話をしたりとかという形でコミュニケーションをとっています。その場合に,やはり話題になるのは,最近はやっているテレビとかラジオの番組,なかなかラジオは少なくなっているかもしれませんが,テレビの番組ですとか,あとは新聞の情報ですとか,あるいはその中には話題になっている本の情報も出てきます。そういったときに,ラジオとかテレビで話題になっている本の内容をいち早く知ることによって,そういった患者さんとの話の中でも話が盛り上がって,治療以外の効果も得られるというふうなところもあろうかと思いますので,こういった働くといった場の中でも読書というのは大変重要なことだというふうに痛感をしております。現にそういった形で携わっている方たちからは多くこういう話を聞いております。
そういった観点から,今,点訳・音訳などのボランティアさんを中心としまして,様々な形で読書環境が整っているわけですけれども,やはり時間が掛かってしまうわけです。これはただ単にデータを訳すのに時間が掛かるのではなくて,そのほとんどが調査,正確に表すということに時間を割いてしまうわけです。ですので,テキストデータの提供というのもそれを利用される方に必要だと思うんですけれども,それと同時に,やはりそのデータをより製作者,ボランティアさんのところにいち早く届けるような形をとっていただいて,正確な点字データ,あるいは音訳のものに使っていただくというふうなことも少し考えていただければなというふうに思っております。
いち早く図書の内容を知るためにというふうなことで,そういった点訳・音訳のボランティアの方に委ねるという点もありますけれども,先ほど来出ております電子書籍を利用して,発売されて余り時間の差がなく購入して,自分たちも金銭を払ってその本を手に入れることによって内容を知るというふうなことができれば,本当にこれこそ,そんなに差がなくコミュニケーションの手段として図書の内容を知り,患者さんと向き合ったり,あるいは一般企業などに勤めている方でもそういった話の中でついていくことができるわけです。そういった観点からも,やはりアクセシブルな電子書籍というのは非常に重要であって,こういった点からもEPUBなどのフォーマット形式,どうすればアクセシブルなものになるかというふうな検討は必要ですし,そのための支援,あるいは情報提供などは必要だと思っております。
あとは,買うところでもう1点だけ触れさせていただきます。弱視の方で,私どもの団体の方に寄せられているお話としまして,専門的な図書を手に入れて,より自分の中にある,例えば技術向上ですとか専門的な知識を深めるというふうなことで利用するというふうな声も頂いております。その際に,やはり多くの電子書籍がそういうアクセシブルなものになっていない。例えば,電子書籍が提供されていても,画像のみで,音声読み上げに対応していないとか,あるいは拡大とか色反転など,自分の目の状態に合ったものに変換しようにも,制限が掛けられていて,その対応ができない,読めないというふうな状況があるというふうにお聞きします。これは何もテキストデータで全部カバーできるというものでありません。もちろんできるものはできますけれども,それが専門的なものになればなるほど二次元的な視覚情報というのがたくさん紹介されて,それによって情報を得られるというものもあります。テキストデータの提供自体も支援体制を整える必要はあるとは思うんですけれども,こういった,見て,その図書の情報を知るというふうな弱視の方々にこういう専門的な学びの機会がちゃんと充実するように,例えばPDFに関してもそういうふうなアクセシブルなもの。先ほどのテキストデータに関しても,ただテキストデータが組み込んであっても,ちゃんと読んでスムーズに行くようなものになっていないので,ぽつりぽつりと読んだりとか,字が飛んでしまったりとかということがあるというふうにありましたけれども,そういった視覚障害者の多様なニーズのアクセシブルを確保するという観点からも,電子書籍の技術的な取組というふうなことはお願いしたいところです。
借りるところについてですけれども,まずは,我々にお問い合わせいただく中に,やはり先ほどのように半数の方近くは三療業に携わっているというふうなことがあります。一般企業に勤めている方はなかなかこういうお話は頂かないんですけれども,学校で専門的な知識を身に付けた方からは,そういったところで自分が今就いている,例えば三療業につきまして,昔習った知識で業はこなしているんだけれども,データ的な資料とか,あるいは法律が改正されたとか,そういうふうなことも一挙に知れるものは今使われている教科書だという話をされるんです。確かにいろいろなところから資料は出ているので,それを見てしまえばそれで済むんですけれども,やはりそれが端的にまとめられていて,より新しいものが手に入るというのは,教科書,あるいは付属する資料等々になってきます。
ただ,例えば視聴覚情報提供施設の中に入っている点字出版所,こういうところから発行されているものなどが図書館に蔵書としてないというふうなことがあって,利用ができないという状況もあるようです。そういったところで,自分の新たなる学びの修正,あるいは向上といったところにそういったものが利用できないというのもやはり課題かと思います。しかも,これが図書館の方で蔵書をそろえるのにとても費用が負担できないというふうな状況にあるということになりますと,こういったところでの蔵書をそろえるための予算的措置というのはさらに必要になってくるかと思われます。
私どもも,やはり皆様,視覚障害者の方が住んでいる各地域のところでアクセスしやすい施設を利用していただいて,それは点字図書館かもしれないですし,あるいは公共図書館かもしれない。とかく,中途失明をされた方は,入り口となると,点字図書館という言葉を聞くと,一歩引いてしまうというふうなことがあります。徐々にそれが利用の方に至る方もいらっしゃいますけれども,やはりこういったところはそれぞれの公共図書館,点字図書館,大学図書館などと連携をして,自分の利用しやすいところの図書館でこういったアクセシブルな図書が利用できるというふうな環境を整えることが必要だと思っております。それには,点字図書館にもそうですし,公共図書館にもやはりそれぞれの視覚障害者,あるいはそれ以外の障害の方々のためのノウハウというのは必要なんですけれども,こういった蓄積ができるような支援というのは計画上は作っていただいて,しかも実際に取り組んでいくのは国ではなくて各地方になってきますので,地方がそういう形で取り組んでいって,将来的にはどの図書館からでも自分の読みたい本を探せる環境にあるようにというふうなことで,是非支援をしていただきたいと思っております。
例えばで言いますと,公共図書館の場合は障害者サービスに実際にアクセスすればいいだけということではなくて,障害者サービスがある図書館にしても実際にその図書館に蔵書されている一般活字の本を探そうと思うと,司書の方に検索をしてもらえるならまだしも,一部そういうふうな実験的な取組があるようですけれども,例えば端末だけ置いて,それを検索するというふうなシステムもあるようです。これですと,端末自身がアクセシブルなものになっていないというふうなことで,障害者サービスにある本だけではなく,その公共図書館にある図書を利用したいにも関わらず,それが検索すらできないというふうなこともあるようですので,やはり図書館の環境整備というふうなことにつきましても,必要なものは予算措置はしていただいて,視覚障害者等がよりアクセスしやすい,利用しやすい図書館環境を整えていただきたいと思っております。
先ほど盲・ろう者の件が出ておりましたけれども,やはり盲・ろう者の方も,あと,視覚障害者も,全部が全部,音声だけ,点字だけというわけではないです。音声の方がいいという方もいらっしゃれば,点字の方が情報を入手しやすい,あるいは拡大文字の方が入手しやすいというふうな方がいらっしゃいますので,こういった方たちでそれぞれのニーズに合ったものが選択できるというふうな状況を整えてもらうということが必要になってくるかと思います。ですので,点字の方は余り利用がないので,点字の方のボランティアを養成するのは抑えていくとか,そういうふうなことがないように,1人,2人,3人かもしれないですけれども,やはりニーズというのはなくなっていくものではないと思います。全くなくなるというものではないですので,そういったところでは個々のニーズに合った読書環境を整えられるようにというふうな予算措置,あるいは整備などを行っていただけると非常にありがたいと思っております。
やはり視覚障害者の中で端末などをいろいろ利用して情報を入手されるというふうな方は,まだまだ多いというふうには言い切れないのが実情です。今後はそういうふうな方たちが多分伸びてくるとは思うんですけれども,現状では視覚障害者の65歳以上が約7割を占めているという状況にあります。そういった中で,どうしても新しい機器とかを使いこなせないというふうな方たちも出てきますので,そういったところでも簡易的な端末の開発,あるいは丁寧な指導ができるように,あるいは貸し出し環境が整うようにというふうなことを是非お願いしたいと思っております。
製作に関してですけれども,製作に関しては,やはり私たちにとって,点訳・音訳,あるいはテキストデイジー化など,こういったボランティアさんの力というのは本当に大きなものになっています。それが,先ほど来ありますけれども,高齢化などによってボランティアさんの数が減少していく,あるいは養成研修が任意事業になっているがために養成すらできないというふうなことがあると,我々にとっての読書環境が整わない状況がより一層広がってしまうということにもなってきますので,こういったところでの一層の支援をお願いしたいと思っております。
最後に,この9つの事業以外のところで1点触れさせていただきますけれども,こういう基本計画を作る,あるいは地方がそれぞれの計画を作るといった場合に,そこで済んでしまうケースというのもあります。基本計画については5年後に見直しを進めていくというふうなお話が冒頭にありましたけれども,そういった中で,交通バリアフリーのところではそういうふうな議論がされておりますけれども,計画が施行された後,きっちりとその内容に即したものになっているかどうかというチェックの機能を是非持っていただきたいというふうに思っております。それは恐らくこの協議の場でやるのが一番望ましいとは思いますけれども,そういった形で適切に,どこまで計画に対して達成できているのかという評価をする機関を是非担っていただきたいというのと,それから,地方に関しては,率先的に行われている取組というのはほかのまだ取り組んでいない地方でどうしたらいいか分からないというふうなところに関しても非常に参考の事例となりますので,好事例的なものがありましたら,こういうふうなものは積極的な周知をしていただくというふうなことをお願いしたいと思っております。
最初に申し上げましたけれども,視覚障害者はいろいろな読書環境のニーズを持っております。そういった方たちのニーズを全てかなえていただくようにというのが最終的な目標ではありますけれども,そういった形での読書環境の整備の推進を切にお願いしたいところです。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは,引き続きまして,小池委員よりお願いしたいと思います。
【小池委員】 調布市立図書館から参りました小池です。どうぞよろしくお願いいたします。事前に提出させていただいた資料に沿って意見をということで述べさせていただきたいと思います。
初めに,今回調製いただいた基本計画骨子案は,法律成立後,遅くない時期に取り組んでいただくということは,今回の施策推進にとってもよい効果があるというふうに考えております。この協議会でよりよいものにするよう努力を重ねていきたいと考えております。
次に,施策の方向性についてです。視覚障害者における図書館の利用に係る体制の整備等についてですけれども,各図書館では,利用可能な資料製作に毎日取り組んで,日々,資料の蓄積が図られております。既に運用されておりますサピエなどのサービスも利用が増えています。さらに利用を伸ばすことは重要であり,サービスの安定,継続が必要であります。そのために,現在のサピエや国立国会図書館の視覚障害者等用データの収集及び送信サービスが永続的に行われるよう,財政も含めた支援を求めたいと考えております。
このことは,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化についても同様であります。
次に,特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援についてです。著作権法の権利制限等の規定がありますけれども,新たな権利制限を盛り込んではどうかと考えます。権利の保護を求める立場である著者,出版社の御理解を得ることが前提でもありますし,法的な規定だけではなく,保護が可能な製作システムの開発に取り組むことも考えてはどうかと考えております。
次に,アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等についてです。出版社の御努力により販売価格は決定されるものと理解はしておりますけれども,どうしても印刷の本よりも製作コストというのは高くなり,販売価格にも反映されるのではないかと考えております。このあたりは販売に関わる方からの御意見をお聞きしたいところでありますけれども,コストをどのように抑えるかは事情が分からない者から具体的な意見はちょっとお出しできませんけれども,考え方として,紙の本と同程度の価格に落ち着くと流通も進むのではないかとも考えております。また,インターフェースなどの標準化によって,例えば自動車はハンドル,ブレーキ,アクセルなど,車種などによって違いが基本的にないように製造されていると思いますけれども,標準化ということがこういうことの利用の促進につながるのではないかと考えております。
次に,外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備についてですけれども,いわゆる窓口としては,やはり国立国会図書館が御担当いただくことが適当なのではないかと考えております。目次情報の交換,資料の交換ということでは,国立国会図書館はノウハウというのは本当に50年,60年と蓄積されておりますので,そのように推察すると適当ではないかなと考えるところです。
次に,端末機器類及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の取得支援についてです。開発のための投資資金というのは財政的な課題ともなろうかと思いますけれども,支援の仕組みの検討が必要かと考えます。現在も各地で実施はしていますけれども,例えばプレクストークなど,再生機器の操作方法を利用者の方に説明する個別の研修を効果的に実施する体制というのは,骨子となる人の養成ということが重要でありますし,機器の操作が抵抗感となって利用が進まないということも,これは経験的にありますので,やはり1人1人個別の研修が重要ではないかと考えます。このことは,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等についても同様と考えます。人材育成については,司書の資格取得のための科目に加えるなど,養成課程,ないしは資格取得の講習の段階で理解と技術を身に付けることが効率的・効果的ではないかと考えます。
最後に,加えたい視点といたしまして,読書習慣を身に付ける段階での取組というものを加えてはいかがかと考えます。幼少期に布の絵本の読み聞かせ,点字付き絵本などに出会い,成長に合わせ,マルチメディアデイジーなども含めた個々に適切な資料を通じ,読書の習慣,学びの習慣を獲得する,そういう環境整備ということを計画に盛り込んではいかがと考えます。
今回お示しいただいた基本計画骨子案に基づいて整理させていただきました。以上でございます。
【中野座長】 どうもありがとうございました。
それでは,最後の御発表になりますが,小林委員よりお願いしたいと思います。
【小林委員】 長野県教育委員会事務局,文化財・生涯学習課長の小林司と申します。全国知事会におきまして,文教環境委員会というのがございます。10の県によって構成されておりますが,現在,長野県知事がその文教環境委員会の委員長をやっておりますので,長野県におきまして,構成する10県にこの骨子に対する意見を照会を掛けまして,取りまとめたものがこれでございますので,これから意見を発表させていただきます。
まず,全般的なことに関してなんですけれども,1つ目の丸に書いてありますが,「国においては」とか「地方公共団体においては」とか,具体的に誰が何をするのか,そこら辺が明確になるように計画が記載されていた方がより実効性があるかなという意見がございます。また,「○○等」という表現が非常に多く出てくるんですが,何々等とやってしまいますと,ちょっと内容がぼやけたり,分かりにくくなってしまうところがあるので,そこら辺の表記の工夫はお願いしたいというような意見があります。また,読書バリアフリー法の中では直接的に表現のない「アクセシブル」という表現の意味を分かりやすく説明していただいた方がよろしいのではないかなというような一般的な意見がございました。
以下,内容についての意見ですが,最初に,視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備についてでございます。1つ目の丸に書いてあるのですが,視覚障害者等は図書館に来訪することも困難な方が多いという現状がございますので,図書館の施設や機器の整備などハード面や,サービスの充実などソフト面を充実するということでは十分ではなく,電子書籍の普及など情報化社会の進展に合わせ,インターネットを活用した情報へのアクセスの保障をする体制の整備が必要ではないかなという意見が出ております。また,今回の骨子ですが,全体的にアクセシブルな電子書籍等の普及に重点を置いた記載となっておるという印象が受けられまして,引き続き点字図書や拡大図書などアクセシブルな図書と読み上げ機などが提供されることにも配慮した記載が,当然のことながら,必要なのではないかと。また,予算的なことになってしまうのですが,現在の地方交付税の交付の算定の根拠に含まれております公立図書館等の人件費とか図書購入費とはまた別に,視覚障害者等へのサービスを担当する職員の人件費やアクセシブルな電子図書の購入費もまた追加計上していただきたいと,そのような声もございました。
次に,2つ目,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化についてでございますが,1つ目の丸は,視覚障害者等が利用しやすい,括弧書きで書いてありますが,要は実際にサイトとかが用意されておるとは思うんですが,そのサイトにたどり着きやすい,そういう図書情報ネットワークが必要なのではないか。2つ目としまして,多くの公立図書館が導入しております図書検索システム,WebOPACというのがございますが,それを,視覚障害者等でも確実に利用できるようなシステム設計だとかデザインだとかプログラム,そこら辺のガイドラインみたいなものを作ってみてはどうかというような意見がございました。
次に行きまして,アクセシブルな電子図書等の販売等の促進等でございます。先ほども御意見がありましたが,1つ目の丸は,図書館購入用,個人購入用とも,紙版よりも電子書籍版の方が割高になってしまうのではないかという懸念がございますので,是非そこら辺がそのようにならないようにしてほしい。2つ目の丸では,アクセシブルな電子書籍のサピエ図書館への納本を義務付けてはどうか。3つ目としましては,公立図書館においては,販売又は頒布された電子書籍等について,著作権者の許可なく視覚障害者等へ提供できるようにしてほしいというような声もございました。
次ですが,端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援についてでございます。1つ目の丸ですが,「特別支援学校学習指導要領において規定されている」というような記述がございましたが,通常校にも弱視等のお子様が在籍していらっしゃいますので,それにも配慮した説明が必要ではないか。2つ目としましては,視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等の用具の給付やアクセシブルな電子書籍等の利用方法の研修につきましては,公立図書館・学校図書館職員と障害福祉担当関係機関の職員が絶対連携してやっていかなくてはいけないのではないかという意見です。
次に,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等の係る先端技術等の研究開発の推進等につきましては,開発に際しましては,研究開発協力として,特別支援学級等で試用していただいて,子供たちの意見も是非取り入れていただきたいというものです。
最後に,製作人材・図書館サービス人材の育成等につきましてですが,1つ目は計画的な製作人材・図書館サービス人材の育成ができるようなシステム。あと,実際に人材と事業者を結び付けるようなシステムの検討が必要なのではないか。最後に,具体的な成果を目標とする計画を策定してほしいということで,今後,国の方で計画ができましたら,地方公共団体の方でもまた計画を立てるというような流れになっていくことになると思いますが,その際,初めに国の方の計画で具体的な成果目標が載っていれば地方公共団体においてもそれを参考にして作っていきやすいという意見がございました。
以上でございます。
【中野座長】 どうもありがとうございました。
それでは,ただいまの三宅委員,小池委員,小林委員からの御発表に関する質疑応答をさせていただきたいと思います。御意見や御質問等がある方はお知らせいただければと思いますが,いかがでしょうか。では,植村委員,お願いします。
【植村座長代理】 では,植村から小池委員の方にちょっと質問をさせてください。お手元,事前に頂きました配付資料の方にもありますけれども,10ページの2の第11条関係のところで,出版者から製作者に対する電磁記録等の提供促進のために,権利者の理解を得ることを前提に一定権利制限を設けるとあります。具体的にどういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。第37条があるなかで,さらにもう1つの権利制限とは,例えばどういうことをお考えでしょうか。
【小池委員】 第37条の議論というのは結構緻密にされたんだと思っているんですけれども,それでもやっぱり権利制限なので,どっちも納得できるというところに今落ち着いてはいると思います。例えば,販売されているものはだめです,作ることについては基本的には遠慮しましょうとかという話に今はなっているわけですけれども,先ほど出ているような,スピード感というのでしょうか,そのときに,それとクオリティーの問題で,その辺が現場ではいろいろ配慮というんでしょうか,そういうことがどうも起こってしまうということがあるようですので,そこのところを,権利者の方の権利をかなり抑えるというところをもう少し進めることはできないものかなというのが少し頭にあったものですから,こういうふうにさせていただきました。
【植村座長代理】 この提言で少し思ったのは,第35条の今回の著作権法改正の中で,公衆送信に関しては補償金制度の導入が決まりました。例えば何か補償金のような形で提供できるみたいな,そういう方法は考えられていましたか。
【小池委員】 今言われると,なるほどなと。よく著作権の議論の中ではお金の話でどこかでそこで解決しようという話があり,公共貸与権の話も含めてですけれども,例えば公共貸与権の話はなかなか進まないという中でも,一方で,こういうお話であれば,最後はお金はどこが出すのという話になるかと思うんですけれども,権利として,こういう情報流通のために一定のコストが掛かる,あるいはお互いに納得するという部分について,お金というのはありかなと,これは個人的には思っております。
【中野座長】 ほかにいかがでしょうか。河村委員,お願いします。
【河村委員】 長野県の小林委員にお伺いしたいんですが,子供たちの意見も取り入れてという非常に重要な御提言があったと思うんですね。意識的に聞いていかないと子供たちは意見を言う場がないということで,様々なニーズがあっても,意見を表明するチャンスが非常に少ない世代だと思いますので,とても重要な視点だというふうに思いました。
それで伺いたいんですが,今年,学校教育法の改正がございまして,デジタル教科書のときに,ちょうど小林委員がおっしゃっている「等」の中身は何なんだろうということで,デジタル教科書を全教科にわたって使える場合に,障害等のある児童生徒等というふうに学校教育法が改正されまして,その「等」の中に,今,文部科学省の方で把握しているのでは5万人以上というふうに数が出ております。日本語に通じていない児童生徒についても,デジタル教科書に関しては「障害等」の中に含めて扱うんだということが学校教育法改正で決まったわけですが,そうしますと,今のこの文脈は「障害」ということでやっているんですが,実際に不登校とか,心理的・情緒的にもう教室にいられないとなりますと,特別支援の対象になる。そのボーダーラインのところにいる子供たちが実は教育の場にいっぱいいるわけですね。そこで,では,壊れてからなら障害,特別支援の対象になるから,ここで言っている対象の「等」に入る,でも,壊れる前は入らないという,教育の現場としては非常につらい状況が出てくるというふうに今,分析しているんですけれども,そのあたり,特に教育委員会という立場で今回の読書バリアフリー法の中ではどういうふうな扱いをなされようとしておられるのか,あるいはこれからどういうふうにお考えになるのか,御意見を伺いたいと思いました。
【小林委員】 貴重な御意見ありがとうございます。今回の読書バリアフリー法の意見をまとめる際には,済みません,頭の中が視覚障害者等の障害バリアフリーということで考えておりましたので,不登校問題だとか,学校に来れなくて,お家で確かに本が読めればいいということはあるかと思うんですが,そこまでは全く考えておりませんでしたので,ちょっと今,即答できなくて申し訳ございません。
【中野座長】 河村委員,よろしいでしょうか。
【河村委員】 はい。
【中野座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。では,宇野委員,お願いします。
【宇野委員】 私が説明することでもないかと思うんですが,読書バリアフリー法の「視覚障害者等」というのは,マラケシュ条約の受益者の定義から来ている。その受益者が従来の著作権法第37条3項の権利制限対象者とのそごがあったので,昨年,著作権法改正が行われ,マラケシュ条約の受益者が第37条3項の権利制限に入った。それに基づいて,読書障害者というか,読バリ法の対象者がそこに倣ってきているので,当面は視覚障害者,ディスレクシア,肢体不自由者,寝たきり,眼球使用困難者ということが想定されているということだと思います。確かに,日本にいる外国人とか,いろんな意味で様々な読書障害というのは実際にはありますけれども,日本図書館協会はガイドラインの中でもっと幅広い受益者を定義されていますけれども,今のところ,法律上の「視覚障害者等」というのはそういうふうに定義をされているということかと思います。
併せて,少し意見を2点お願いします。小林委員がおっしゃった地方交付税の問題は,私は非常に重要な問題だと思います。これまで公共図書館の予算は,確かに地方交付税で措置はされているものの,現場の図書館司書から聞くと,なかなかそのとおりには使われずに,実際には道路等々に使われてしまうということで,図書費がどんどん削られてきているという実態が各公共図書館にはあるということなんです。まして,人数の費用対効果からすると,一般の晴眼者,健常者の数よりも,読書障害者は少ない。その人のための読書環境を整えるのはよりコストが掛かってしまう。こうなってくると,確かにお金が十分なければどうしても後回しになってしまうということだと思うんです。ですので,今回の読バリ法には財政面の措置というのが義務として入っていますけれども,これは各公立図書館でいざ運用するときに,やはり地方交付税で,例えば確実に図書館費用の中の何%は読バリ法の受益者に対して使うとか,何らかのことをしていかないとなかなか……。首長さんが非常に前向きな方だったら,それはそれでいいと思うんですけれども,そうでない地域のところは相変わらず寂しい状態で放置されてしまうということが起こり得るのではないかということで,地方交付税に伴う予算措置について何らかの方向性をこの基本計画で示せればいいのではないかなというふうに思うのが1つです。
それからもう1つは,障害者は,紙の媒体ではなくて,電子書籍ということをどうしてもワンソース・マルチユースの関係で求めるわけですが,電子書籍が本より高くなるということは,これは出版社の方が詳しいと思いますけれども,恐らく紙の印刷代とか製本代というのが掛からない分,その前の段階のデータをうまく活用していけばそういうことにはならないんだろうと思うんですね。ただ,それをテキストに変換するとか,障害者用に提供する仕組みを作る,ここにはどうしてもコストが掛かってしまうので,ここに対して出版社が赤字とか身銭を切ってということよりも,もう少しこれはユニバーサルな形を考えていくべきだと思うんです。例えば,駅のホームドアについても,これは鉄道事業者だけではなくて,国や自治体の補助がちゃんとあるわけですし,例えばNTTにしたって,物すごく田舎のところの部分をみんなで分けるということで,ユニバーサル料金,3円ぐらいだったと思うんですが,そういうふうにやっていると思うんです。ですので,そういう仕組みも含めて,やはり電子書籍を障害者にうまく使っていただくという仕組みは国も含めて考えていく必要があるんじゃないかなというふうに思いました。
以上です。
【中野座長】 宇野委員,ありがとうございます。今の2つについては御意見ということでしょうか。それとも,どなたかに御意見をお聞きするか。
【宇野委員】 意見です。
【中野座長】 意見ですね。分かりました。ありがとうございます。
今,宇野委員から意見も出していただきましたので,質疑以外に,もし御意見等があったら,そちらにも発言を頂きたいと思いますけれども,その前にもしこれまでの3件の発表についてさらに質問があればそれを出していただいた上で,議論へと進めていきたいと思いますけれども。では,植村委員,お願いします。
【植村座長代理】 簡単にもう1つ,三宅委員にお願いします。先ほどの御発表で,テキストだけでもだめなんだという指摘にちょっと目からうろこが落ちました。先ほど言いましたけれども,電子書籍って,どうしても文芸物が多いというのは一般に思われていますけれども,ここで問われているのは学びのための本であって,それには,やはり図は確かに多いですよね。この図は,具体的に触図とかとなると,ボランティアが作るとさらにハードルが高くなり,しかも正確に伝えられないという状況が起こっていると思います。具体的に図というものに対してはどう扱ったらよろしいでしょうか。
【三宅委員】 ありがとうございます。図というもの,その二次元的なもので表された視覚的な情報を我々視覚障害者が把握するというのはなかなか困難な状況にはあります。これを文字情報で置き換えてやったとしても,やはり必ずしも十分な理解を得ない場合もあるわけなんですね。ただ,こういったところはテキストデータを作るときに,こういうふうな作り方ですると例えば表組みのようにされているものはきっちり情報が伝わりますよとか,表の説明にしても,こういうふうな表が表されていますというふうなことになってしまいますけれども,そういうふうな文字で表す方法がまず考えられるだろうなというのが1つ目。
それから,これもボランティアさんの手によってされていますけれども,点図とか立体コピーとか,様々な触図についての技術があります。こういったところで利用して,二次元的なものを表すというふうな仕組みを持っていますので,こういったものを利用して,例えば全盲の方へ本の内容の二次元的なものを伝えるというような手段はできるかなというふうに考えられますけれども,私が言った専門的な知識の中の一例で言いますと,例えばデザイン的なもので仕事をされているという方も中にはいらっしゃいます。さらに一例を言うと,例えばウエブデザインをしている視覚障害者の方もいらっしゃいます。そういった方はどうしてもテキスト情報だけでは全然足りないんですね。これがPDFになっていると,まさしくそれが二次元的に,例えばこういうふうな色とか文字の配置をしていくとこういうふうに見えますよとかですね。ウエブデザインというのは,アクセシビリティーのことも考えなければいけない反面,一般的な注文に対してもそれをかなえるというふうな役目を負うわけですので,そういったところでどういうふうに視覚的に効果的なものを表していくかという勉強のためにそういうふうな専門書が見たいのに,アクセス制限が掛かっている,あるいは電子書籍がないというふうなところで非常に苦労されているというふうな声を聞いております。
あくまで一例ですけれども,そういったものがあるので,やはりテキストデータも必要なものではあるんですけれども,そういった二元的なものを視覚的に見られる弱視の方に関してはこういうふうなニーズもあるということで知っていただければと思います。
【中野座長】 ありがとうございます。
竹下委員,お願いします。
【竹下委員】 全視情協の竹下から補足させていただきます。先ほど来,ボランティアの方々の研さんについてお話をしておりますけれども,点訳・音訳,録音,そして電子書籍のボランティアの方々にとって,何を学ぶのが大変かというと,基本的な間違いのない点訳,あるいは発声,発音,イントネーション,そして聞きやすい朗読ということはもちろん基本であって,それにプラスして,今,視覚的な資料,図や表や絵やグラフ,これをいかにして点字にし,あるいは録音,音訳にし,あるいは電子書籍にするかということが非常に大きな課題であり,皆さん一生懸命勉強されているわけです。先ほど少し今日のPDFデータについて申し上げましたけれども,今日の「次第」の資料2-2を御覧いただきたいんです。例えば,資料2にございますスケジュールです。これはPDFではちゃんと読めません。これはテキストデータでも文章に書き換えないと読めません。ですから,これを点字にし,あるいは録音にし,あるいは電子書籍のテキストデータにする場合に,どのように書き換えるかということが非常に重要です。これも恣意的に自己満足でやってはいけないわけであって,標準的なものを作っていかなくてはいけない。それが私ども全視情協の加盟施設や団体,ボランティアの方々が目指しているところです。
具体的には,点字の場合には,今,三宅委員がおっしゃったように,図や表や絵を文章化することがあります。そして今,非常に取り組まれているのが,点図,触図。点図の視覚的な図や表を点,点,点に表す,そういうソフトがあって,それを使って,指で触って例えばグラフの増減とか地図の形とかを把握できることが改めて取り組まれています。これは視覚的にきれいにできればいいわけではなくて,指で読んで分かるかどうかということです。録音の場合も,では音声で、耳で聞いて表やグラフや図が分かるかということが非常に重要で,これに皆さん取り組んでいるわけです。
そこら辺が,今のところ,点訳・音訳,アクセシブルな電子書籍のボランティアの方々が非常に研さんをし,ノウハウを積み,提供しているということなのかと思います。
【中野座長】 分かりやすい御説明ありがとうございました。
植村委員,よろしいでしょうか。
【植村座長代理】 はい。大変よく分かりました。ありがとうございます。
【中野座長】 ほかにいかがでしょうか。3件についての御質問はよろしいですか。
特になければ,前半の3件で質問し忘れてしまったというような件がありましたら,先にお伺いした上で,議論を深めていきたいと思いますが,前半3件。ちょっと最初の方は皆さんも緊張していたところもあって,質問しにくかったところもあるかもしれませんが,ありましたら是非お願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。では,お願いします。
【安形委員】 前半の方のサピエの図書館の関係者の方に伺いたいんですけれども,以前にサピエ図書館のデータについてちょっと調査をした際に,同じタイトルに関して何件もボランティアベースで分散的に作業しますと重複が多くなってしまうという問題はあるんだと思うんですけれども,やはりできるだけ多くの資料をより使える形にしていくという中では,効率的な作業を進めていく必要があると思うんですけれども,そのような重複を減らすというためにはどのようなものが必要だと思われますか。
【中野座長】 では,それぞれからお答えいただければと思いますので,よろしくお願いします。
【竹下委員】 では,まず全視情協の竹下からお答えします。その調査をされたのがいつであって,どういう状態だったかはちょっと把握していないんですけれども,今日,サピエは重複製作をなくすことが前提です。ですから,各加盟施設――今,点字,録音,電子書籍をアップできる施設団体が百四,五十ありますけれども――その施設・団体が,例えばこの本を,ボランティアの方がこれをしたいと言われて,点訳したい,録音したいという場合は,まずサピエで検索をして,それが既に上がっていればそれは着手しません。ただ,版次が違ったり,改訂されていたり,それから,場合によっては内容的に処理の仕方が違うというような場合に重複することがあり得ますけど,基本的にはないんです。
ただ,もう1つ,蛇足で付け加えますと,今はそのことに対して,かなりの利用者の方々から,なぜ重複がないんだ,なぜ自分が選べないんだと。例えば録音の場合にも,率直に言って,男の人が読むか,女の人が読むかとかあります。さらに,言いにくいことですけれども,ちょっとこれは聞きにくいなというのもあったりします。そういうことに対して,選べるようにしてほしいという声も,今,強く出ているのは事実です。
【安形委員】 ありがとうございます。やはり過去のものも含めて重複等があったときに,さらに言うと,電子書籍のデジタルデータになりますと,必ずしも1冊の本全部をそれぞれのデータに変えるということも必要なくなるかもしれませんし,あるいは複数の書籍を合わせたような合冊版みたいなものも出てくるかと思ったときに,やはり識別子とかメタデータの形で,ある本から出てきたようなデータに関してきちんと追えるような体制作りが必要ではないかと思いまして,今のような質問をさせていただきました。済みません。
【中野座長】 野村委員の方からももし何かありましたら。
【野村委員】 今現在,サピエの方で,国会図書館さんでお作りになった本と連携,国会図書館で収集したものを含めるというチェックボックスを付けていますので,チェックボックスを入れますと,サピエで出てくるのは,国会図書館さんが収集した,公共図書館さんとかサピエに加入していない団体さんのものが上がってきて,その書誌データがサピエ側に入ってきますので,サピエの中で一見すると同じタイトルのものが出てくるような感じで見えることはあります。ただ,チェックボックスを外しますと,あくまでもサピエ側の方だけのデータになりますので,そうすると重複製作というのは抑えられているというのは分かると思います。
【安形委員】 ありがとうございます。
【中野座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。前半の御発表に関する御質問等。では,お願いします。
【小池委員】 先ほど日本電子図書館の御報告というところの中で,利用者の方が1万2,700人で,その中でサピエを利用される人は35人というような説明だったかということでよろしいでしょうか。
【野村委員】 35名の方は,私どもに利用登録をしていただいている方でございまして,サピエを登録した方はそのうちの28名の方ですね。残りの差分の7名の方は,サピエを活用しないで,私ども図書館のCDだとか媒体の蔵書を活用されている方になります。ですので,利用されるときには,郵送等はできませんので,図書館まで来館していただいて,お貸し出しするような形が主になっております。
【小池委員】 ありがとうございます。
【中野座長】 ほかに御質問はよろしいですか。
御発表に対する御質問が特になければ,今のやりとりの中でも今後の議論に非常に役立つ視点というのが幾つか提起されたのではないかと思います。宇野委員からはもう既に地方交付税の問題や変換するための費用ということも今後の議論の中で考えていく重要な視点ではないかという御意見を頂きました。今回の御発表に限らず,今回の御発表を契機に,あと10分ちょっとでございますけれども,その間に少し議論を深めていきたいと思いますが,何か御発言がある方がおられましたらお願いします。河村委員,お願いします。
【河村委員】 先ほどの質問と関係するんですけれども,2010年の1月1日に実施された著作権法の改正で,現在の第37条の著作権権利制限の障害に関わる部分の基本形が構成されて,それが今日も引き継がれているというふうに認識しておりますが,それは2000年から始まった著作権法の障害者団体による改正運動がずっと積み重なった結果のものであります。したがいまして,その中で,例えば精神障害,あるいはなかなかどこが読書に障害があるかということがすぐには分かりにくい,自閉症スペクトラムの方の場合とかいろんな,こういうふうにするとよく分かるんだけれどもというのを手探りで探りながらこれまで教育してきた知見とか,そういったものを集大成した形で2010年の改正は,様々な障害を実際に含み得る,そういう改正になったというふうに私ども図書館のサイドからは評価をしております。
それで,それは日本図書館協会だけではなくて,図書館の関係5団体でしたね,大学図書館等も含めて全国で定着をしてきて今日に至っているというふうに理解しておりまして,その中では,先ほど来言われています「等」の範囲というのはかなり広く捉えて,実際にサービスも展開してきているという認識でございます。そこの認識の上に立って,では,今回の読書バリアフリー法で言う「等」というのはどこまでなのかということをもう一度しっかり議論する必要があるのではないのかというふうに思う次第です。その場合に,先ほど1級,2級の視覚障害の方だけが点字図書館に登録できるという,そういう図書館もあるというお話がありましたが,例えばそれは遠視力,遠くの視力で測った視力障害だけがそういうふうに認定を受けるわけで,小さい子供などに老眼と同じような近視力の障害があった場合に,それは認定を受けられないという,今の認定そのものから外れてしまう子供たちの問題というものもあり,それらに早い段階で介入できればそこで解決できるのが,そこを見逃してしまうと,それが別の障害になっていくというふうな経過もこれまであったかと思います。
したがいまして,先ほど私,学校教育法の改正のときに「障害等」ということでの日本語に通じない子供たちの扱いというものを申し上げたんですが,実はそういうボーダーラインにいる子供たちをはじめとして,高齢者もいろんな意味でボーダーラインに立っておりまして,そういう人たちも含めて最終的には読書バリアフリーを実現していく。そのためには何を戦略的に整備していくのかというふうな考え方と,それから,既に認知されている,自他ともに認めている障害のある方の場合に,障害者差別解消法で言う合理的配慮の提供義務が国と地方自治体にはございますので,その範囲ではすぐに何ができるのかという直近の課題と,やはり両方組み合わせて,先ほど5年の計画ということでしたので,今後の日本における,誰もが読書できる体制を作っていくためのしっかりした基本を是非御検討いただきたいなというふうに思う次第です。
【中野座長】 ありがとうございました。「等」の範囲ということについても今後検討をしていく必要があるのではないかという御意見を頂きました。
ほかにいかがでしょうか。残り時間がだんだん少なくなってきて,大体最後の方に意見がたくさん出てきますので,早めにお願いします。では,お願いします。
【安形委員】 読書バリアフリー法案ということで,アクセシブルという視点は非常に多いと思うんですけれども,様々な御意見の中にも,継続的とか,持続可能なというキーワードもありますので,やはり一度作られたデータがきちんと長期保存とか継続的な提供という観点で提供され続けるような視点も基本計画の中に盛り込むべきではないかと思います。
【中野座長】 ありがとうございます。持続可能性というところは,今,重要なキーワードになっているかと思います。
ほかにいかがでしょうか。では,三宅委員,お願いします。
【三宅委員】 アクセシブルな図書を使う,要はデイジー図書などのものを使う場合,やはり端末というふうなことが重要になってきますけれども,先ほど来皆様からも出ていますが,日常生活用具などで,例えば視覚障害の方に給付される対象のほとんどが身体障害者手帳の1・2級を持っている方というふうになっていますが,一部の自治体ではそこから枠を広げて,3級も対象になっているというふうなところも出てきてはいます。ただ,ここにもう1つ制限が掛かっているところがあって,例えば年齢制限が掛かっている。例えば,学校に通っているお子さんにデイジー図書を活用してもらって学べる場を設けたいんだというふうになっても,実際その機械を買おうと思うと,その子供は手帳を持っているんだけれども,日常生活用具の給付対象になっていないというふうなことがあると聞いております。そういったところもありますので,やはり環境を整えるのは,端末が十分にその人に使えるような措置というのは必要だろうと思います。しかも,日常生活用具というのは,各地方自治体の裁量によって決められるというふうなことが大きくあります。ですので,基本計画のところでは,そういったところのニーズも改めてほかの会議等々では示されているかとは思いますけれども,端末を利用する上での地方自治体への働き掛けというのは強くこの中に盛り込んでいただきたいと思っております。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございます。これも大きな問題だと思います。多分,日常生活用具そのものの制度を変えるというお話ではなく,読書バリアフリー法の範囲の中で読書の権利というのをどう構築していくかというような視点が必要なんじゃないかというような御意見でございました。
ほかはいかがでしょうか。では,植村委員,お願いします。
【植村座長代理】 課題として,実は先ほど宇野委員が御発言された点についてですが,電子書籍に関わる製作経費を広くみんなで負担できないかというアイデアの1つとして,電話料金におけるユニバーサルサービスのようなものがないかというようなお話でした。私も以前そういうのをちょっと考えたことがありまして,あるいはCDとかDVDの私的録音・録画補償金のようなものですね。みんなが広く少し払うことでそのコストを持てないかなと思ったんですが,これは電気通信事業の方で考えていただくしかないかなと私は個人的に思っています。つまり,今やスマホの中で読めるのが読書であるというならば,必ずしも電子書籍にこだわらないで,通信事業の中で何らかの経費というのを少し薄く取るということができないでしょうか。なぜかというと,通信事業は業法があるんですが,出版には業法がないんですね。これは言論・表現の枠組みがあるからで,出版業の電子書籍については,何か法的なものは余り踏み込んでほしくないというのが,言論・表現に関わる仕事をしている人間としての気持ちです。
ただ,今やスマホの中で全てのものを読んでいるんだということを考えれば,通信事業的な枠組みの中で検討できることは可能じゃないかなとちょっと思っています。少し長い目になるかもしれませんけど,可能性の議論として残していただければなと思いました。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。ユニバーサルサービス料というのはいろいろなところでセットされていますけれども,これを通信事業との関係で考えていってみたらどうかというアイデアを頂きました。
ほかはいかがでございましょうか。お願いします。
【小池委員】 先ほど植村委員からお金の話を投げられたので,何となく話がそっちに行っているなと思いながらあれなんですけれども,個人的に思うには,最終的には多分この事業は自治体がとなったときに,国が地方交付税で措置しましょうといったときになかなか進まないというのも,これまでこの分野だけではなくていろんなところで言われてきているわけですよね。そうしたときに,例えば地方交付税の対象になったような自治体は,少ないけど,あるわけです。そうすると,そういうところでいったときに,これは国民にとって基本的な仕事なんですということは,お金でだけではなく,もうちょっと強い枠組みを作っておかないとなかなか進まないのかなというのが1つ。そのときに,ではお金は誰がといったときに,税金だけという話もなかなかないと。今,植村委員がおっしゃった通信事業者のユニバーサルというのも一つのアイデアだろうし,広く薄く,余り負担感がなく公益的に何らかお金が回っていくという仕組みを。アイデアは全然ないんですけれども,やはりそれはこれからの持続可能な社会としては1つあるのかなというふうに思います。同じような発言ですけど,以上です。
【中野座長】 ありがとうございます。交付税系というのはなかなか難しいなというのは私も感じていて,例えば,大学における障害学生支援も,障害者に対して付くわけではないので,一括して,例えば私立大学助成のような形で付いてくると,その経費というのが必ずしもそこに費やされないことがあり得ると。今回,読書バリアフリー法のことを考えてみると,結論としては,障害のある人たちの読書の権利というのがちゃんと保障されるという,そういう成果物が重要になってきますので,それを担保するためにはどんな仕組みを考えないといけないかというのがこの基本計画の中では非常に重要な視点になるのかなというふうな御議論を頂いていたかと思います。
ほかはいかがでしょう。あともう1件ぐらいで,そろそろまとめとさせていただきたいんですが,御発言はございますでしょうか。では,お願いします。
【見形委員】 DPIの見形です。ちょっと戻ってしまうんですけれども,長野の取組というか,バリアフリーにアクセスし難い障害者の方がいらっしゃるというところで,具体的に長野ではどんな取組をされていらっしゃるのかなということをお聞きしたいと思いました。
それから,これは意見なんですけれども,「視覚障害者等」というのは,高齢者も含めてというか,やはりバリアフリー法は,障害者だけとはいうものの,その「等」にはいずれ皆さんというか,私たち自身も向かうであろう高齢の部分での読書の困難というのは向かっていくはずなので,この法律は全国民が周知するべきというか,そういうふうに私は思って,この成立をとても喜んでいるんですけれども,皆さんのコンセンサスというか,障害者ではない人たち,子供たちも含め,1人1人がコンセンサスを持てるような法律になることをちょっと期待しているというか,そういったことを皆さんで作っていけたらすばらしい法律になるんじゃないかなと思っています。
それで,済みません,長野の小林委員,もし分かるようでしたら,教えていただけたらと思います。
【小林委員】 はい。残念ながら,いい事例があるというわけではございません。図書館の実際の利用状況を見ていると,やっぱり障害者の方の利用は少ないと。だから,図書館の設備とかサービスをよくしても,来てくれる方が少ないもので,それだったら自宅で図書が読めるような,そういうためのインターネットとかを活用したそちらの方を充実させた方がいいのではないかという,そういう提案でして,こういう取組をやっていて,障害者の方々の図書館利用がとても評判がいいという事例を持ち合わせているわけではございません。
【中野座長】 ありがとうございます。
【村瀬情報活用支援室長】 役所からでもいいですか。
【中野座長】 はい。そろそろ時間なので,短くお願いします。
【村瀬情報活用支援室長】 では,一言,済みません。私,総務省の村瀬と申しますけれども,先ほど植村委員からちょっと御提案がありましたので,読書環境の整備ということで必要な資金をしっかりと獲得していく方策を考えることは極めて重要だというふうに,まず総論として思ってございます。そうした上で,電気通信事業法というのは,御案内のとおりでございますけれども,円滑な電気通信役務の提供を図るために公共性の観点から法律として整備されているというものでございますので,ある意味,私が所管しているわけではないので,ここは持ち帰ってまたという部分もありますけれども,通信というインフラの上に電子書籍といったようなものが乗っかってくるという文脈になってまいりますので,法律が現在形作っている目的なり理念,それに照らしてどういう形が適切かどうかというのは慎重な検討があるかなというふうに第一感として思っておりますので,コメントさせていただきました。
【中野座長】 どうもありがとうございます。
【植村座長代理】 一言だけ。必ずしも電気通信事業法の内側でと思ったわけではなくて,通信には業法があるけど,出版業にはないということからすると,通信というような枠組みで,メディアの中で捉えておかないと,設計が難しいかなと私案としたところです。先ほど言いましたように,広く,スマートフォンの中で読んでいるんだと捉えれば,何も電子書籍と捉えるだけではなく,読書の概念は広がっていますので,その辺の御考慮ももう一つあるかなと思ったまでです。以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。ちょっともう時間が。本当に短くお願いします。
【竹下委員】 1点だけ。今,見形委員から出た,公立図書館の取組についての質問については,実際に各地の公立図書館でいろんな障害者が利用している図書館があります。その事例は次回以降,多分日本図書館協会の発表もあるので,その場で聞かせていただければありがたいと思います。
【中野座長】 ありがとうございました。やはり最後の方になると質問等がたくさん出るというのは常でございまして,様々な御意見,非常に今後の議論にとって重要な御意見を頂いて,ありがとうございます。これは今後,ここで何かすぐに結論を出すものではありませんで,これからまだ2回,3回とございますので,そこで様々な意見を出していただきながらそれぞれの視点というのを整理させていただくというのがすごく重要かと思います。本日頂いた御意見に関しましても,事務局の方で整理をしていただくようにお願いいたしますので。それから,きょうの議論の場では最後もうちょっと時間がなくなってしまいましたので,十分な意見が出せなかったという場合には,是非今後の,3回ございますので,そちらでも御発言いただければありがたいなというふうに思います。
最後に,その他,もし事務局より連絡事項等があればお願いしたいんですが。
【小林障害者学習支援推進室長】 ありがとうございます。資料5に今後の会議日程をお示ししております。次回の開催日時については,11月28日木曜日の2時から4時半を予定しております。会場は,文部科学省東館の13階会議室でございます。
あと,本日の配付資料のうち,ファイルに綴じたヒアリング資料と参考資料は次回も使用いたします。お持ち帰りいただいても結構なんですが,次回会議の際に御持参いただきますようお願いします。また,机上に置いておいていただければ,次回会議の際にはこちらで御用意いたします。
以上でございます。
【中野座長】 ありがとうございました。それでは,本日の議事はこれにて全て終了といたします。皆様,長時間にわたる御協力ありがとうございました。
令和元年11月19日(火曜日)14時00分~16時30分
2.場所
文部科学省旧庁舎6階 第二講堂
3.議題
1.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る基本的な計画の策定について
2.その他
4.議事録
【小林障害者学習支援推進室長】 定刻になりましたので,ただいまから視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第1回)を開催させていただきます。本日は,お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございます。
私は,文部科学省障害者学習支援推進室長の小林と申します。本日,冒頭で議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに,寺門文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官,及び橋本厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長より御挨拶をさせていただきます。
寺門社会教育振興総括官よりお願いいたします。
【寺門社会教育振興総括官】 本日は,大変お忙しい中,本協議会のために御足労賜りまして,まことにありがとうございます。
皆様方御案内とおり,今年6月に視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律が施行されました。これは,視覚障害者等の方々が読書環境の整備の総合的かつ計画的な推進によりまして,障害の有無にかかわらず,全ての国民が等しく読書を通じて,文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現を目指していくところでございます。
このたびはこの法律の第7条に基づきまして,基本計画を今後具体化していく作業をするために,本日は有識者でございます皆様方に御足労賜りました。多面的な御意見等を丁寧に伺いながら,しっかりとした計画ができるように,共同事務局を務めます厚労省とともに尽力してまいりたいと存じます。
大変に短期間で,インテンシブな御議論をお願いすることになると思いますけれども,何とぞ改めまして御協力をお願いたしまして,御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本障害保健福祉部長】 厚生労働省の障害保健福祉部長の橋本でございます。構成員の皆様方におかれましては,大変お忙しい中,構成員をお引き受けいただきまして,御参集いただきましたこと感謝申し上げます。
私ども厚労省におきましてはこれまで,どちらかといえば,障害当事者の方々ですとか,あるいは全国の点字図書館の関係者の方々,あるいは福祉関係の方々,そういった方々とともに,視覚障害者等の様々な情報提供ということに取り組んできたわけでございますけれども,今回のこの読書バリアフリー法というものを契機にいたしまして,これからは公立図書館ですとか学校図書館,あるいはさらには出版業界など,もっともっと広く,関係する皆様方と一緒に手を携えながら,文科省と協力しながら,この対策を進めていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 続きまして,配付資料を確認します。本日の配付資料は,議事次第にございますとおりですが,資料4及び参考資料については,別冊のピンクのファイルにとじてございます。不足などございましたら,事務局までお申し付けください。なお,一部の資料については,点字化やテキストデータの作成が間に合っておりません。追って共有させていただきますので,何とぞ御容赦ください。
続きまして,本会議の構成員の御紹介に移ります。お手元の資料1の2枚目にございます別紙をごらんください。こちらからお名前の御紹介をさせていただきます。
まず,安形委員でございます。
【安形委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 上田委員です。
【上田委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 植村委員です。
【植村委員】 植村です。よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 宇野委員です。
【宇野委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 小池委員です。
【小池委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 小林委員です。
【小林委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 鈴木委員です。
【鈴木委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 髙橋委員です。
【髙橋委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 竹下委員です。
【竹下委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 長尾委員です。
【長尾委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 中野委員です。
【中野委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 野村委員です。
【野村委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 樋口委員です。
【樋口委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 三宅委員です。
【三宅委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 見形委員です。
【見形委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 吉澤委員です。
【吉澤委員】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 なお,本日は,市川委員,近藤委員,藤堂委員が御欠席です。
河村委員が今御到着されました。河村委員です。よろしくお願いします。
【河村委員】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 続いて,関係省庁からの構成員についても紹介いたします。
文部科学省,寺門社会教育振興総括官です。
【寺門社会教育振興総括官】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 厚生労働省,橋本社会・援護局障害保健福祉部長です。
【橋本障害保健福祉部長】 お願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 文部科学省,三好男女共同参画共生社会学習・安全課長です。
【三好男女共同参画共生社会学習・安全課長】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 文部科学省,水田地域学習推進課長です。
【水田地域学習推進課長】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 文化庁,浦田著作権課専門官です。
【浦田著作権課専門官】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 経済産業省,冨田コンテンツ産業課課長補佐です。
【冨田コンテンツ産業課課長補佐】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 経済産業省,笹本産業人材政策室室長補佐です。
【笹本産業人材政策室室長補佐】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 厚生労働省,野村障害保健福祉部企画課長です。
【野村障害保健福祉部企画課長】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 国立国会図書館,大場総務部企画課長です。
【大場総務部企画課長】 よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 総務省,村瀬情報流通振興課情報活用支援室長です。
【村瀬情報活用支援室長】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 最後に事務局の御紹介をいたします。
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課,金原自立支援振興室長です。
【金原自立支援振興室長】 よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 そして私,文部科学省の小林です。
本会議の事務は,文部科学省と厚生労働省が共同で行います。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして,座長と座長代理を決めていただきます。資料1をごらんください。2の構成員の(2),(3)に記載がございますとおり,座長は構成員の互選により決定し,座長代理は座長の指名により決定することとされております。
座長について,事務局としましては,教科書のデジタルデータ化をはじめ,視覚障害者のための書籍のアクセシビリティに関する研究をされており,障害者の福祉政策に幅広く御知見のある中野泰志委員に座長をお願いしたいと考えておりますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【小林障害者学習支援推進室長】 それでは,中野委員は座長席に御移動いただきますようお願いいたします。
続いて,座長代理については,座長より御指名をいただきますようお願いします。
【中野座長】 慶応大学の中野でございます。
座長代理に関しましては,通常の書籍及び電子書籍研究及び,その普及に非常に深い造詣をお持ちの植村委員にお願いしたいと思います。
植村委員,お願いいたします。
【植村委員】 専修大学の植村です。座長代理を承りたいと思います。微力ながら尽力してまいりますので,どうぞよろしくお願いいたしします。
【中野座長】 どうぞよろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 それでは,植村委員は座長代理席へ御移動をお願いいたします。
それでは今後の議事については,中野座長にお願いいたします。
【中野座長】 それでは,座長に指名していただきました慶應大学の中野でございます。改めましてよろしくお願いいたします。少しだけ自己紹介と,それからこの会議について,私の思うところというのを紹介させていただきたいと思います。
私は現在,慶應大学で心理学を中心に教えながら,なおかつ障害のある学生の大学等での参加というのを支援するような活動をしております。今から30年ほど前から,この障害のある子供たちに対する様々な情報保障に関する研究というのを行ってまいりました。今回の読書バリアフリー法というのは,そういった障害のある子供たちや障害のある人たちに対するアクセシビリティ,特に書籍のアクセシビリティを実現する上で,非常に悲願の法律が成立したと思っております。
これから皆様に御議論いただくわけですけれども,本会議の議論というのは,共生社会を実現し,Society5.0をノーマルな社会にするために,極めて重要だと考えています。皆様御存じのように,ユニバーサルデザイン2020行動計画というのが立てられておりますけれども,その中で目指されている共生社会を実現するために,この読書環境の整備というのはとても重要だと思いますので,是非皆さんのお力で,この会議をより実りあるものにしていければなと考えております。何とぞどうぞよろしくお願いいたします。
それでは,議事に早速入らせていただきたいと思います。本日の議題は全部で3つあります。1番目は運営規則の決定等について,2番目は,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画の策定について,そして3番目は,協議会構成員からの意見聴取についてという3つがございます。
最初の議題であります運営規則の決定等について,まず議論をしていきたいと思います。それでは最初に事務局より,本件につきまして説明をお願いいたしたいと思います。
【小林障害者学習支援推進室長】 初めに,本協議会の位置付けについて口頭で御説明します。
視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律第18条では,国は,施策の効果的な推進を図るため,関係者による協議の場を設けること及び関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとされており,本条文に基づいて,本会議は設置されております。
一方で,法の施行に伴い,法第7条に規定のとおり,文部科学大臣,そして厚生労働大臣は,施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,基本的な計画を定めるものとされており,その際,あらかじめ視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとされております。
そのため,本協議会を設置するとともに,基本計画の策定に当たって,関係者である構成員の皆様からの御意見をお聞きする場としたところです。
続いて,運営規則について御説明いたします。机上にお配りしております運営規則(案)をごらんください。
本協議会は原則として公開で行われます。資料や議事録も公開となります。個人情報を含むなど正当な理由がある場合には,協議会の合意を得て非公開とすることが可能です。
会議の傍聴については,事前に登録いただいた方のみ可能としており,撮影や録音なども可能です。ただし,開催案内でお示しのとおり,撮影や録画は冒頭のみ可能としておりますので,御留意ください。
【中野座長】 説明は以上ということでございます。ただいまの御説明に関しまして,何か御質問等ございましたらお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。特に御質問等ございませんでしょうか。
なければ,この運営規則に関しましては,先ほど御説明があったとおり決定できればと思いますがよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【中野座長】 ありがとうございます。では,これにて議題の1番目は終了させていただきたいと思います。本会議の運営規則は,机上の資料どおりということでよろしくお願いします。
それでは,2番目の議題に進めさせていただきたいと思います。議題の2番目は,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画の策定についてです。
事務局より説明をお願いします。
【金原自立支援振興室長】 厚生労働省の金原です。私の方からは,資料2-1,2-2,2-3を簡単に説明させていただきます。
まず資料2-1でございますが,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律の概要ということで,もう委員の皆様については御承知の内容ですので,簡単に御説明をさせていただきます。
まず目的でございます。1条にございますが,視覚障害者等,これは視覚障害者の方だけでなく,発達障害の方,肢体不自由等の障害によって,書籍について,視覚による表現の認識が困難な方の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進するという法律の目的でございます。
基本理念が3条にございまして,アクセシブルな電子書籍等の普及がまず図られることとともに,視覚障害者の方の需要を踏まえて,引き続きアクセシブルな書籍が提供されること,それから,そのような書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上が図られること,さらには障害の種類・程度に応じた配慮がなされることが基本理念として定められております。
飛ばしまして,次に基本的施策でございますが,9条から17条,全部で9つの基本的な施策が規定されております。全部説明はできませんが,視覚障害者等の図書館利用に係る体制の整備ですとか,インターネットを利用したサービス提供体制の強化,それから特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援など,全部で9つの条項がございます。
その下に記載しておりますが,このような基本施策を計画的に推進するために,文部科学大臣・厚生労働大臣が基本計画を策定して,施策を具体化するというのが7条にございます。また地方公共団体も計画策定の努力義務が掲げられております。また政府には,必要な財政上の措置の義務付けも記載されております。
さらには協議の場等ということで18条にございますが,施策の効果的な推進を図るために,各省庁だけではなくて,国会図書館,公立図書館,大学等の図書館,学校図書館,点字図書館,さらにサピエなどのネットワークの運営者,特定書籍・特定電子書籍等の製作者,出版者,それから視覚障害者など,そのほかの関係者による協議の場を設けるということが規定されております。
続いて資料2-2を説明させていただきたいと思います。これからこの協議会を中心に,基本計画の策定を行っていくわけでございますが,そのスケジュールでございます。
10月11日に関係省庁等会議を開催させていただきまして,基本計画の骨子案を提示させていただいております。それから本日,それから11月の末になりますけれども,関係者協議会を3回ほど開催させていただき,皆様方から御意見を頂くということを考えております。その後,関係団体等を含めまして意見等の整理・取りまとめを行い,1月に関係者協議会の4回目を開き,この4回目のときに基本計画の素案を提示する予定としております。それについてまたさらに意見集約を頂きながら,2月に関係省庁等会議で基本計画の了解をする予定でございますが,場合によってはここにもう一回予備日ということで,関係者協議会の5回目というのも考えております。それからパブリックコメント,3月にはさらに関係行政機関での協議を行い,3月までには基本計画を公表できるようにと考えております。
資料2-2は以上でございます。
それでは資料2-3に移りたいと思います。読書バリアフリー法の基本計画の骨子案ということで,今回御提示をさせていただいております。
まず若干お断りさせていただきますと,一番上の四角の囲みの下段に記載してございますけれども,この基本計画骨子案は全体構成を含めて,記載されている内容については,本日お集まりいただいた構成員の方に,議論を深めていただくためのたたき台として作成したものでございます。特に皆様に御議論いただきたい施策の方向性については,現時点においては,それぞれの省庁ごとに取り組むことを検討している施策のイメージを列挙したものでございますので,今後この協議会で御意見,御議論を頂き,さらには省庁間の連携を含めて,基本計画の素案を1月までに作成するという形で考えております。
それでは目次というところでございますが,まず「はじめに」があり,次に基本的な方針,3番目に施策の方向性ということで,読書バリアフリー法の先ほど説明しました基本的施策に合わせて項目立てをしております。最後に「おわりに」という構成で考えております。
2ページ目をおめくりいただきまして,まず「はじめに」というところでございますが,ここについては法律施行までの背景や経緯,それから2番目に基本計画についてということで,この位置付けにつきましては,読書バリアフリー法の第7条の規定に基づいて作成されるものという形になります。(2)の対象期間でございますが,この基本計画の対象期間については,令和2年度から5年間を対象とするということで事務局では考えております。
それから3番目になりますが,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題というところで,「……」となっておりますけれども,ここについては,次の施策の方向性というところを中心に,皆さんに御意見を頂くことを考えておりますので,御意見を頂きながら,素案作成の段階で記載することと考えております。
それから3ページになりますが,大きな2番目の基本的な方針というところでは,これは法律の第3条の基本理念に該当する部分として考えておりますが,こちらにつきましても御意見を頂いた上で,素案作成段階で記載をすることとしております。
それから大きな3番目の施策の方向性でございます。これが法律の基本的施策の各条文に基づいて記載をしていこう,計画を立てていこうという項目でございます。
一番最初が視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等ということで,これは9条関係になります。基本的な考えには,条文に記載されている内容を分かりやすく記載した内容になっております。ここで言いますと,公立図書館,大学及び高等専門学校の附属図書館,学校図書館並びに国立国会図書館について,点字図書館とも連携して,アクセシブルな書籍等の充実,また円滑な利用のための支援の充実,そのほかの視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制整備を図る。また,点字図書館につきまして,アクセシブルな書籍等の充実,公立図書館等に対する情報提供ですとか,視覚障害者による十分かつ円滑な利用の推進を図るという形で記載させていただいております。
以下,より具体的な施策を記載するイメージとしており,ここのところでは,(1)でアクセシブルな書籍・電子書籍の充実,(2)で円滑な利用のための支援の充実,(3)でそのほかとしております。
この大きな3番の施策の方向性について,特に委員の皆様方から御意見を頂ければと思っております。
4ページになりますが,これは10条関係で,2番目として,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化いうことでございます。基本的な考え方とか具体的な項目立てについては1と同様でございますので,ごらんいただいていると思いますので,説明は省略させていただきます。
3番が特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援ということで第11条関係,4番目がアクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等ということで第12条関係,5番目が外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備ということで第13条関係,6番目が第14条,第15条をちょっと合わせておりますけれども,端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援という項目を立てさせていただいております。7番目がアクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進,最後のページになりますけれども,8番目が製作人材・図書館サービス人材の育成等と17条関係を記載しています。
最後の大きな4番目になりますが,「おわりに」ということで,例えばこちらについては今後の長期的課題ということで,先ほど御説明したとおり,今回策定する計画については5か年の計画と考えておりますけれども,例えば御意見を頂いた中で,より長期的に検討すべき課題ですとかそういう事項がございましたら,最後に記載するようなことを考えております。
また,地方公共団体もこの基本計画を勘案して計画の策定に努めることとされておりますので,それに当たっての特に留意する事項ですとかお願いする事項なども,こちらの方に記載することも想定をしております。
以上でございます。
【中野座長】 御説明ありがとうございました。この内容につきまして,何か御質問等ございますでしょうか。
皆様既によく御存じの内容かと思われますので,それでは,議題の3番に進めさせていただきたいと思います。協議会構成員からの意見聴取についてということで,今回この法律が成立するまでの間に,構成員の皆様の御尽力がそれぞれあり,様々な思いというのがあったかと思います。構成員の皆様はそれぞれに関して非常に知見をお持ちでございますので,構成員の皆様からの意見をこれから聴取させていただきたいと思います。
進め方につきましては事務局より説明をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【小林障害者学習支援推進室長】 それでは,資料3に基づいて御説明させていただきますが,先ほど1人委員が到着されましたので,御紹介させていただきます。日本身体障害者団体連合会会長の阿部委員です。
【阿部委員】 阿部でございます。よろしくお願いします。
【小林障害者学習支援推進室長】 お願いいたします。
それでは,資料-3,構成員からのヒアリングについてをごらんください。本日と28日,29日,この3回にわたりまして,皆様から御意見を頂きます。多くの皆様からの御意見を頂きますため,タイトなスケジュールで実施させていただくことをあらかじめ御了承ください。
皆様の御発表は15分以内でお願いいたします。時間管理のため,残り1分となりましたら,事務局がベルを鳴らします。このようなベルが鳴りますので,発表者の方は御発言をおまとめください。もしお時間を超過する場合には,御発言の最中でも事務局よりその旨お伝えする場合がございますので,恐縮ではございますが,どうか御容赦ください。
また,質疑応答と意見交換の時間は,3件のヒアリングが終わりましたら設けます。この時間についても,残り1分となりましたら,事務局でベルを鳴らしてお知らせいたします。
質疑応答と意見交換の時間では,直前のヒアリングに関する内容に的を絞って御発言いただきますようお願いいたします。
また,11月29日に予定している第3回では,ヒアリングが終わった後で,全体を通じた意見交換を時間をとって行う予定です。
御説明は以上です。
【中野座長】 それでは進行していただいてよろしいですか。こちらから進行した方がよろしいですか。
【小林障害者学習支援推進室長】 お願いします。
【中野座長】 では,最初の御発表は,宇野委員からでございますね。宇野委員,よろしくお願いいたします。
【宇野委員】 筑波大学附属特別支援学校,弱視者問題研究会の宇野と申します。本日はこのような場を御提供いただきましてありがとうございます。
読書バリアフリー法につきましては,実は2008年の教科書バリアフリー法ができた直後に初めて産声を上げまして,2013年にマラケシュ条約がWIPOで採択され,そのときから,主に障害当事者の4団体で運動を求めてきました。当時の日盲連,今は日視連,それからDPI日本会議,全国盲ろう者協会,弱問研,この4団体で運動を進めてきて,ようやく法律が成立し,そして18条に基づきこのような協議の場が始まるということで,大変しみじみと感じているところです。
まず,ここにお集まりの皆様方はいろんな立場がありますので,この障害者の読書環境を整備していこうということについても,利害関係があったり,いろんな思惑があったりするかと思うんですが,そもそも果たして読書というものと私たち人というものが,現代社会においてどういう関係があるのか,ちょっと考えてみます。
読書に困難のない方々からすると,まず,初めての本との出会いというのは,恐らく二,三歳時に,お母さんやお父さんに絵本を読んでもらうというところから始まります。そして小学校に入って,教科書をもらったり,ドリル,副読本などを読んでいく,また夏休みには読書感想文のため本を読んだり,そして中3,高3になると受験を経るということです。そのときには,教科書のみならず,参考書や問題集,そして大学に行ったら様々な専門書を読んで,社会人になっていくということなんです。そう考えると,障害がある,なしにかかわらず,もうこの現代社会において本が読めないというのは,非常に生きにくいことにつながっているということです。
視覚障害に限って言いましても,もう御存じかと思いますが,例えば全盲の弁護士もいます。それから精神科医ですが,お医者さんも何人もいます。東大には全盲聾の大学の教授もいます。ということで,このような立場に立つには,それぞれ難関な試験を突破してきているわけですが,それを支えているのはやはり,いろんな専門書,参考書などなんです。と考えると,これまで障害者というと,ついつい福祉の恩恵を受ける側と思われがちでしたけれども,やはりきちんと環境を整えて,その能力を発揮できるような立場に置かれれば,本当に今挙げたような,社会で活躍できる人がたくさんいる状況になっているということです。
バリアフリーと聞くとついつい,駅で言うとエスカレーターとかエレベーターとか,道路で言うと段差をなくそうということを連想される方が多いかと思うんですが,やはり情報というか,教科書もそうですし,この本もそうですし,いろんな意味でバリアを取り払っていくということが,まさに共生社会,みんながともに暮らしやすい社会を目指していく,又はインクルーシブな社会とかユニバーサルな社会,いろんな言われ方をされますけれども,この現代日本に生まれて,たまたま障害を負ったがゆえに大事な情報に接しられないというのは,やはり何とかしていかなくてはいけない。
そもそも出版社も図書館も,よくよく考えてみれば,著者が作った作品を,全ての日本にいる人たちに届けるんだという根源的な願いがあると思うんです。それをいろんな立場を乗り越えて,どういう形態であっても,きちんと本の内容を全ての読書障害者に届ける,こういうような共通認識を,まず共有できれば大変うれしいなと思います。
それで実は私たち4団体は,マラケシュ条約が採択されるときに,著作権法が改正されるだけではなく,この読バリ法を求めたわけですが,そのとき,買う自由ということと借りる権利,この2つをスローガン的にしっかり確立してもらいたいということを,大きな柱として立ててきたわけです。
まず買う自由については,主に12条に書いてありますが,これも非常にこの読バリ法の中での胆といいましょうか,重要な1条になっているかと思っています。
出版社がこれまで何もしてこなかったかというと全然そんなことはなくて,例えば一部の出版社ですけれども,本の巻末にテキスト請求券というものを付けて,障害のある人が本を買ったときにテキストを提供するという試みも進められてきました。ところが独り暮らしの視覚障害者を想定すると,本を買って,そのテキスト引き換え券を切り取って,そして出版社の住所を書いて,送ってというようなことは,ちょっとハードルがあって,なかなか1人ではできにくいという側面があります。
また近年,オーディオブックの普及とかEPUB,電子書籍の端末による読み上げ,スクリーンリーダーとか,iPhoneで言うとボイスオーバーという機能なんですが,その読み上げによって本を聞くことができる,このような取組も始まっています。ところが私たちと一緒に運動してきた盲聾者の立場から考えると,このオーディオブックやスクリーンリーダーによる読み上げというのは,やはり聞こえないがゆえに,読書をすることができないという側面を持っています。
そうなると一番望ましいのは,本,つまり紙に印刷される前のデジタルデータ,これを何とか障害者側に提供していただければ,それを自分で点字に変換するということが可能になってきています。ですので,例えば障害者だけがアクセスできるような書籍の販売サイトで,そのデジタルデータを購入できるようになる。こうなれば,発売日初日に私たちも本にアクセスできる。あとは自分たちで点字に変えようが,音声で聞こうが,又は画面で拡大しようが,それはそれぞれのニーズに応じてできるということになります。
この考え方はずっと前から,One Source, Multi Useという形で,広くいろんなところで叫ばれていました。このOne Sourceをどうするかという問題は,ちょっと細かい議論になりますけれども,例えばEPUBデータからテキストファイルを抽出して,そしてそのテキストファイルから点字変換,音声拡大へと変換していく。こういうのが望ましいかなと思っています。これは活版印刷のときには難しかったわけですけれども,今はいわゆるデジタルプリンティングといいましょうか,電子媒体を使って印刷が行われていますので,ちょっといろんな仕組みを作ってしまえば,もうこれは技術的には可能になってきているということです。
現状,私たちが本を読むとなると,例えば点訳ボランティア,音訳ボランティアに媒体を変換してもらう。そのためには数か月待って読まなくてはいけない。若しくは何年待っても,点字にも音声にもされない図書もあったりします。
一方発売される書籍というのは,年間5万タイトルとも8万タイトルともお聞きします。この5万から8万が毎年毎年新しく出ていく中で,やはり私たちも一人の消費者というか,買いたくても買えない,でも電子媒体を売ってもらえたら買えるという立場にありますので,ここは是非お互いウイン・ウインの関係を作るという意味でも,何とか12条というものを前に進めていっていただければと思います。
今お話ししているのは,かなり具体的なことも言っていますけれども,当面3月までは基本計画の策定ということですが,この将来的なグラウンドデザインというか,理想的な状態を展望しつつ,そこにレールが引けるような基本計画にしていただければ大変ありがたいなと思っています。
次に借りる自由について,時間の限り触れさせていただきます。まず9条関係ですが,これまで視覚障害者を中心として,点字図書館がいろんな本のバリアフリー化を進めてくれていたわけですが,マラケシュ条約が提唱したように,ディスレクシア,それから肢体不自由,寝たきりの方も含めて,これからは読書障害者として考え,そしてその読書環境を整えていく時代になったということです。
その中で,公立図書館がいろんな媒体,点字,録音,拡大,LLブック等ありますけれども,それらを全部3,300の図書館にそろえるというのは,ちょっとこれは実際現実論としては難しい。とはいうものの,やはりそういう媒体があるんだということが,まだまだ全国の読書障害者には伝わっていない。そういう意味では,一般の活字図書のほかにこういう媒体があるんだよということを,サンプルのように見本として提示する,こういう役割を3,300の図書館には期待したいなと思っています。
それから10条については,サピエへの支援財政支援というのが大きいところかと思うんですが,ここでちょっとお願いしたいのは,確かに個人会員に寄附を募っているというのも変な形だと思うんですけれども,現状ボランティア団体にも年会費を求めて,データのアップをお願いしているという状況があります。この1万円ですけれども,やはりこれは早々になくしていただいて,ボランティア団体はちゃんとこの1万円に悩まされることなく,作ったデータをきちんとネットワークに乗せるということを実現していただきたいなと思っています。
それから,教育はかなり重要だと思うんですけれども,実は盲学校でさえサピエに加入できているところは,全国67校の半分もないんです。ですので,盲学校とか肢体不自由の特別支援学校,旧養護学校には,是非このサピエは年会費云々ということではなく,全国の蓄積されたアクセシブルなデータにきちんとつなげていただきたいと考えているところです。
それから11条については,第2項で出版社からデータの提供というところが非常に重要だと思います。これについては,図書館界若しくはボランティアの世界からすると,悲願なわけです。これまで本の背表紙のところを伐採して,スキャナーで読み取って,そしてテキストデータ化して点訳するとか,1文字ずつ手入力で打ち込むということをしてきたわけです。それの蓄積が,最も歴史の長い点字データでさえ,サピエには18万タイトル,録音は7万タイトルということになっています。
もしここで出版社から正確なテキストデータ等が提供されれば,その作業が一気にはかどるというか,効率的に進められるわけです。点字や録音は18万とか7万という数字になっていますけれども,弱視者とかディスレクシア,肢体不自由の方が求める,画面上に文字が映る,このためには,やはりテキストというものが非常に重要になりますので,先ほどお話ししたとおり,One Source, Multi Useを展開する上でも,この11条の2項をどう具体化するかというところを御検討いただければと思います。
もっとも出版社側からすると,そんな最新のものは渡せないよということなら,じゃ,例えば発売後数年間たったものとか,絶版になったものとか,それほどもう今は商売ベースには乗っていないというようなものであれば,提供いただけることもあるかと思いますので,このあたりは議論を続けていただきたいと思っています。
14条については端末のことなんですが,これは是非肢体不自由の方も含めて,デイジープレーヤー等の普及を考えていただきたいと思います。
17条については,人材の育成の中で,是非各公立図書館等の中で,障害者サービスを担当する,仮称ですけれども,例えば読書支援コーディネーターのような立場を示していくのも一案かなと思います。
最後なんですけれども,マラケシュ条約の前文に非常に大事な理念が書いてあります。マラケシュ条約は,各国に著作権の制限や例外規定と外国へのデータの輸出入というのを求めていますけれども,条文の中には,この著作権は制限されていたとしても,まだまだ障害者が読めるフォーマットは少ない,よって国内の相当な資源を活用していくことが大事であると書かれています。
この出版社,図書館を含め,相当な資源がうまく障害者に,ちゃんとバリアフリーとして伝わっていくような制度設計を,是非議論していきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは,続きまして野村委員よりお願いしたいと思います。
【野村委員】 日本点字図書館の野村でございます。よろしくお願いいたします。
私どもはこの法律が施行されることによって,やはり多くの活字の読めない方,視覚障害者以外の方でも活用されることを本当に望んでおります。この協議会の中で私どもは,点字図書館というサービスの一番現場にいる立場だと思っておりますので,そちらの観点から幾つかお話をさせていただきたいと思っております。
まず,視覚障害者等による図書館の利用に関する体制の整備なんですけれども,現在も私どもは,ディスレクシアの方だとか,活字困難の方の受け入れをしておりますけれども,現在私どもの図書館の利用登録約1万2,700名の中の35名の方だけが利用されております。35名しかいないんです。
この部分に関しましては,やはりサピエを使うにしても,専用の機械が非常に高価だったりといったものがございます。また,私ども点字図書館だけでは,視覚障害以外の方に対する,図書館を使えるというサービス,情報提供にはやはり限度がございますので,今後この制度を推進してくためには,視覚障害者以外の視覚障害者「等」の部分の当該団体の方たちと協力して,当事者の方たちにより細かな利用説明というものを進めていかなければ,活用が広がっていかないと考えておりますので,その部分に関しましては協力体制をとっていただけたらと思っております。
また点字図書館の中でも,実際に地方の図書館さんなんかですと,障害等級で切って,視覚障害等級で1,2級しか登録できないというようなことも非常に多くございます。この場合,民間の図書館は別なんですけれども,県立図書館とか指定管理の施設になりますと,指定管理者の許可が必要になってきます。
県及び市町村,そういったところが障害種別を改善していただかなければ,そこの部分がクリアできないので,視覚障害者以外の方の登録もままならない状態になりますので,そういった部分に関して,もう一度各省庁の方を中心に見直し,通達みたいなことを出していただくことによって,視覚障害者以外の方も利用しやすくなると思っております。それに伴って,点字図書館側も利用規約を見直すという形で,受け入れ体制を整えるんじゃないかと思っております。
インターネットを利用したサービスの提供体制の強化なんですけれども,私どもはサピエ図書館のサーバーの管理を担っておりますので,そちらの観点から言わせていただきますと,現在サピエ図書館は,サーバーの機器が買い取りという状態になっておりますので,五,六年たちますと,やはり老朽化してまいります。サピエというものを活用していただきたいと思っていますけれども,メーカーサイドも,サーバーの製造中止から部品供給を7年ぐらいしかもう持たないんです。そうするとある程度の期間で入れ換えを考えていかなきゃいけません。そうしなければ,サピエを活用した形で新しいサービス提供をしていけませんので,そういった部分で新しいサーバーの確保の予算的な措置はお願いしたいと思っております。
私ども日本点字図書館としましては,運営を担っております全視情協さん及び国会図書館さんとは横断検索をさせていただいておりますので,今後もよりそういったところを緊密に話し合いながら,また新たな当事者団体の方たちの御意見を頂戴しながら,サピエをより使いやすいものに変えていきたいと思っておりますが,どうしても改造するとなりますと,それなりの金額が発生してまいりますので,金銭的な部分及び,また大学図書館とかそれ以外の図書館さんで持っているデータがあるのであれば,サピエを改造するというわけでもなく,ポータルサイトみたいなものを設立することによって,それぞれの図書館の持っているデータの検索ができるようになったらいいんじゃないかなということは考えております。
それは私ども点字図書館の中でも,自分のところで持っていない資料,特に大学図書館さんの持っているような資料なんかは,学生さんが授業で使うので,点訳をしてほしい,朗読をしてほしいという話を持ってこられますけれども,点訳,朗読をすると半年,1年,そういった時間が掛かってしまいますので,今現在,点字図書館側ですぐに検索できるツールがないですので,そういったところから大学図書館なんかと協力したポータルサイトみたいなのを作って,そこで検索すると,より利用者の方にサービス提供ができると思っておりますので,そういったところの工夫もできたらいいなと考えております。
あとは図書の製作に関してですけれども,現在点字図書館では,全視情協さんが製作に関するある程度のマニュアルを作っておりまして,その基準に沿って製作しております。ですけれども,ほかの公共図書館さんなんかですと,なかなかそういったマニュアルが作られていなかったりとか,公共図書館は特に担当の方が数年でいなくなってしまうことが多いので,そこで抱えているボランティアグループの方が力関係で非常に強くなっていて,なかなか一定のレベルを保つことができない,ボランティアさん側の意見が強過ぎて,なかなか職員側がその製作技術に追い付かないということがございますので,できることであれば,今後は公共図書館も点字図書館も,図書を作るという部分では,ある一定の基準を満たしたもので製作していくことが必要じゃないかと思っております。
あとは私どもの端末機器に関してなんですけれども,現在サピエで使われている図書については,デイジーフォーマットで作っておりますので,専用の再生機が必要になってまいります。今後,視覚障害者以外の方がサピエの録音図書等を使用するのに関しましては,専用の再生機が必要になりますけれども,現在給付等で認められていない部分が多いので,私どもに登録している35名の方も,8万円近くする機械を自費で購入していただいたりしております。
ですのでせっかく既にあるサピエ図書館のデータなんかを活用していただくためには,専用の再生機を購入できる公的な支援が必要になってまいりますので,視覚障害者以外の方へのサービス提供を進めるためにも,そういった障害の範囲を広げていただく,給付の範囲を広げていくということは,必要不可欠であると考えております。
本当に視覚障害者に関しましても,再生機というのは非常に頻繁に使われる方は壊れる頻度が高いので,耐用年数の縛りがもう少し短くなっていただかなければ,新しいものを購入できないという状況でございますので,視覚障害者の機器の耐用年数という部分も一つの基準としていただけたらと思っております。
もう一つアクセシブルな電子書籍・端末機器に係る先端技術の研究開発なんですけれども,もちろんいろんな新しい先端の技術を取り入れることは非常に大切ですし,それをやめてはいけないと思うんですけれども,実際には視覚障害者の中では,今ある専用のいろんな機能を使いこなせない方もいらっしゃいますので,最先端の機器を導入していくとともに,簡易な簡便な機械の開発,そちらの方も必要不可欠だと思っております。
実際に私どもの図書館でも,購入したけれども使いこなせないという方がいらっしゃいますので,そういった方たちには我々職員がマンツーマンで,2時間,3時間掛けて指導しているような状況になりますので,できる限り,先端のものプラス簡便なものを製作していく必要があると思っております。
また,再生機に関しましては,現在それを製造しているメーカーが本当に限られておりますし,視覚障害者だけの機械ですので,製作会社が非常に利益が上がらないということで,撤退していくような状態がございます。この部分に関して,今あるメーカーも撤退されたときには,視覚障害者すら再生ができなくなってまいりますので,こういった製作会社に対する,補助とまではいきませんけれども,公的な支援をしなければ,視覚障害者はおろか視覚障害者等の皆さんにとっても,読書が非常に危ぶまれる状況だということを御理解いただいて,そこら辺についての支援みたいなものを御検討いただけたらと思っております。
あともう一つ私どもが考えていますのは,ボランティアの高齢化でございます。点字図書館においてはどこの図書館もそうですけれども,図書の製作においてボランティアの方は必須です。職員だけではとても作り切れないものでございます。近年はボランティアも高齢化しております中で,新しい方を育成するに当たって人が集まらないというのが多くなっております。
昔は御家庭の主婦の方たちなんかが,空いた時間にやっていただけることが多かったんですけれども,最近はやはり皆さん社会に出ていらっしゃる中で,ボランティアという形での時間が取れない状況でおります。ですので私どもの図書館でも,少しずつ有償という形でなければ人が集まらない状況になっておりますので,ボランティアの育成という部分と,できれば公的な製作の部分に関する費用の工面,そういったものも御支援いただけたらなと思っております。
以上が私どもの点字図書館としての意見でございます。
【中野座長】 どうもありがとうございました。
引き続きまして,竹下委員よりお願いいたします。
【竹下委員】 本日は意見発表の機会を頂きありがとうございます。私どもは,視覚障害者等を対象に,図書製作と提供を行っている国内の点字図書館をはじめ,ボランティア団体,公立図書館等,101の視覚障害者情報提供施設・団体で組織にしている特定非営利活動法人です。
目標とするところは,全ての人が情報を共有できる社会を目指すということで,今日サピエ図書館を中心に,インターネットと郵送で,全国8万人の視覚障害者等の方々に点字,録音,電子書籍をはじめとする情報を提供し,利用実績は,録音図書のダウンロードと貸し出しだけでも,年間約450万タイトルに達しています。
事前に提出し,皆さんごらんいただいている資料は,文部科学省からお示しいただいた基本計画骨子案の順番に沿ってまとめたものですので,本日はこの資料を基に,要望事項が多くなるんですけれども,重点項目から順に6項目にまとめて,意見と要望を述べさせていただきます。
まず第1に,資料では一番最後になってしまうんですが,基本計画骨子案,8,製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係)について申し上げます。
読書バリアフリー法で定義された特定書籍と特定電子書籍等のほとんどの製作を担っている点訳・音訳等ボランティアの地位の向上と,養成・活動支援のための施策を要望します。
全国の点字図書館が所蔵し,点字図書館や公立図書館等から借り出しできる図書は,2016年度の調査になりますが,点字50万タイトル,録音82万タイトルに達します。同時に,この数字にほぼ含まれますが,サピエ図書館が所蔵し,インターネットからダウンロードできる図書データ,つまり特定電子書籍等は,2018年度の集計で点字21万タイトル,録音9万タイトル,アクセシブルな電子書籍7,000タイトルに及びます。
これは今,日本点字図書館さんからも要望がありましたが,これらのほとんどは,全国の点字図書館八十数館で見た場合,約1万8,000人に上るボランティアの方々を中心に,その他の公立図書館等や地域のグループに属するボランティアの方々も加わって製作したものです。このボランティアの方々は,1年から2年間の講習を受けた上で,研さんを重ね,さらに技術の習得をし,そして御自分の貴重な時間を割いて活動されているわけです。
厚労省の予算補助がある全国72館の点字図書館においては,これらのボランティアの方々の養成・活動支援に使える予算が,今年度,点字図書館事務費における身体障害者保護費負担金として年額最大240万円増額され,ボランティアの養成や謝金,交通費等に使えることになりました。
しかし,私どもの調査――これは今年8月末,回答50館です――では,「今年度から実施された」館は16館にとどまり,「来年度以降の実施に向けて協議中」が11館,「まだ実施の予定はないと思われる」と答えたところが23館に上りました。しかもこの72館で見た場合,ほとんど半数近くが指定管理制度で運営されているため,仮に補助金が増えても,実際の予算は増えない館が多数に上ると予想されます。
点字図書館の誕生から80年余り,日本の視覚障害者の読書は,世界に誇る点訳・音訳ボランティアによって支えられてきましたが,今世紀に入り,社会・経済情勢の変化により,全国の点訳・音訳ボランティア等の高齢化が進み,新たに講習を受講されて活動を始められるボランティアが避け難く減りつつあります。
今後はこの状態を補うために,この読書バリアフリー法に盛り込まれた種々の支援策が期待されるわけですが,しかし当面の間はこれまでどおり,多数の質実なボランティアの方々の協力を得ることなしに,視覚障害者等の読書を維持,発展させることはできないと考えております。
そこで今後も点訳・録音図書等の製作を維持するための前提として,まず障害者総合支援法の地域生活支援事業において,都道府県・市町村の任意事業にとどめられている点訳・朗読奉仕員等養成研修事業を必須事業に改正し,点訳・音訳ボランティア活動の位置付けを引き上げていただくことを要望します。
市町村における手話奉仕員と都道府県における手話通訳者,要約筆記者の養成が必須事業として安定的に行われているのに対し,点訳・朗読奉仕員の養成は任意事業にとどめられているため,多くの自治体で毎年予算の減額や,中には養成が中止されるケースも起こっています。また,この講習は多くの自治体で点字図書館が受託していますが,この広報活動においても自治体の協力が十分に得られず,受講者の確保が進まない現状があります。さらに,これに加えて,専門的な技術を必要としたり,公共的な情報の作成に関する点訳・音訳作業等を中心に,点訳・音訳作業の有償化に向けた施策の実施も強く要望いたします。
ボランティアに関しては,もう1点,基本計画骨子案の1,視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等の(1)に「点字図書館において,点字図書や音声図書を製作するために必要な機器が充実するよう支援を行い」と書かれておりますけれども,これに基づいて,特に全国の点訳・音訳ボランティアの方々の多くが自費購入している製作機器の購入費の予算化も要望いたします。
第2に,基本計画骨子案の2,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係)に盛り込まれた,サピエの運営に対する支援として,私どもが負担しているサピエの運営費の増額を要望します。
当協会では,2010年のサピエ誕生以来,サピエの運営,つまり,図書製作の基準や質の維持,登録の管理,施設や会員のサポートなどを行ってきましたが,この経費は年間概算3,000万円に上っています。そして,先ほども御指摘がありましたけれども,それを当協会が施設団体の会費や個人利用者の御寄附などで賄ってきております。この経費について,厚生労働省においては,日本点字図書館が担当するサーバーシステムの維持管理費は補助されてきましたが,当協会への補助は長くありませんでした。今年度,読書バリアフリー法のおかげで,厚労省からサピエの利用者支援の経費として870万円が予算化され,日本点字図書館を通して日本ライトハウスがこれを肩代わりすることで当協会の負担が軽減されました。しかし,このたびの予算措置を受けてもなお,サピエの運営には2,000万円余りが必要なため,そのうち約1,000万円は個人利用者からの御寄附で捻出するほかなく,当協会では今年度,これまで1口5,000円だったものを3,000円に下げて,利用協力金として利用登録者約1万7,000人のうち3,500人から頂戴する予算を立てています。社会的障壁により晴眼者に比べて著しく読書が困難な状態に置かれている視覚障害者等の方々が少なくとも無償でサピエを利用できるように,運営費への公的補助を要望します。
第3に,基本計画骨子案6,端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係)と,7,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係)について,まとめて申し上げます。
これは今,日本点字図書館さんが述べられましたけれども,現在,視覚障害者が音声デイジーを聞くためのデイジー録音図書プレーヤーは日常生活用具に指定されていますが,この給付対象となる障害等級の拡大,そして,読書バリアフリー法の対象に準じた障害種別の拡大と耐用年数――これは一度給付を受けてから次の給付を受けるまでの期間ですけれども――この短縮を要望します。デイジー録音図書プレーヤーは,従来のカセットテープレコーダーに比べて非常に高額で,物によって4万8,000円とか8万5,000円等いたします。そして,給付対象は地方自治体の実態においては視覚障害のおおむね1・2級の方で,それ以外の方の自費購入には困難が伴います。また,耐用年数がおおむね6年若しくは5年ですので,その前に壊れて使えなくなったり,機器が更新されても購入できないことも多く,録音図書の普及の大きな障壁となっています。
また,骨子の6の(2)に書かれた情報通信技術の習得支援については,全国の点字図書館等では以前から視覚障害者に対するICT機器の紹介,利用支援,貸し出し,講習等のサービスに取り組んでいますが,ほとんどの施設が予算の捻出と人員配置に苦慮しています。こうした実態,実績に対して,国の補助金が適切に交付されることを要望します。厚生労働省では,今年度,障害者ICTサポート総合推進事業が新設されましたが,当協会の調査(8月末,回答66館)では,「今年度から実施された」館は1館にとどまり,「来年度以降の実施に向けて協議中」が5館,「まだ実施の予定はないと思われる」が44館に上っています。
もう1点,基本計画骨子案7,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等における端末機器等の開発について申し上げます。今日の技術革新のスピードは目まぐるしく,特にOS内蔵の機器などは発売後ほどなくして生産中止になり,修理不能で買い換えを強いられるケースも生じています。したがって,先端的技術等の研究開発に当たっては,単に先端的技術の導入を掲げるのではなく,長期間安定的に生産供給されることと,高齢の視覚障害者等が簡単に使えるユーザビリティーの高い機器の開発を促すことを希望します。
第4に,基本計画骨子案1,視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係)について申し上げます。
点字図書館と公立図書館,また,私どもにとっては視覚支援学校図書館等との連携強化の具体策として,それぞれが担当を分担して,視覚障害者の利用拡大は主に点字図書館,その他の読字障害者や身体障害者の利用拡大は公立図書館等が力を入れることを提案します。
なお,これに関連してお願いしたいことは,全国の点字図書館では,多くの館で,設置自治体の条例や指定管理規程により,利用対象者が障害者手帳を所持する視覚障害者に限定されています。これをマラケシュ条約と改正著作権法及び読書バリアフリー法に従って拡大するため,利用対象者を障害者手帳を所持する視覚障害者に限定している身体障害者福祉法の規定を改めるように要望いたします。
もう1点,基本計画骨子案2,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係)の(2)に書かれた関係者の連携強化について申し上げます。これまでも当協会では,公立図書館や学校図書館,国立国会図書館,関係団体に対して独自に連携・協力を働き掛け,研修会の開催などに取り組んできました。今後,こうした連携・協力が恒常的に行えるように,文部科学省等の主催による常設の協議会の開設を要望いたします。
第5に,基本計画骨子案3,特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係),そして4,アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等について申し上げます。
出版社から製作者に対する電磁的記録等の提供促進に向けては,なかなか難しい問題が多いと思いますので,これからこれを継続的に協議できる場を出版社と点字図書館と製作者との間に設けていただくことを要望します。
また,アクセシブルな電子書籍等の規格については,アクセシブルなEPUB方式,あるいはデイジー3.0以降とすることを私どもは提案しておりますけれども,アクセシブルの規定というのは非常に重要で,例えば,大変失礼ながら,今回メールで事前配信されたPDFデータの資料は,視覚障害者の方が音声用ソフトで読むことは可能ではあっても読めない部分があったり,文章や単語が途中で切れて意味がとりにくかったり,文章の構成が読み取れないなど,アクセシブルなものとは言えません。こうした点も配慮して,「アクセシブルな」と言うときの電子書籍について十分な検討をお願いしたいと思います。
第6番目,最後に,基本計画骨子案5,外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係)については,当協会では国立国会図書館とともにマラケシュ条約によるAE,国際的な図書交換窓口業務を担当することになりました。しかし,この業務は無償で行っているもので,実際には当協会加盟のNPOが人件費を自己負担することで行おうとしております。今後,図書交換の実績に応じた国の経費負担を要望するものです。
当協会からの意見と要望は以上です。ありがとうございました。
【中野座長】 どうもありがとうございました。以上3件,御発表いただきました。ここで,質疑応答,それから意見交換を行いたいと思います。ただいま御発表いただいた3人の委員からの御意見について御発言をお願いしたいと思います。
なお,最初に事務局から説明がありましたように,時間が限られておりますので,それぞれの御発言はなるべく簡潔に,できれば1分程度に収めていただきますようにお願いしたいと思います。
では,御意見がある方がおられましたら,よろしくお願いします。では,お願いします。
【植村座長代理】 植村から宇野委員に質問させてください。電子書籍というと,文芸,あるいは9類の読み物系が多い中で,先ほどの御発表は大変重要な指摘と思いました。実は学びのための本,専門書とか参考書というのが必要なんだということだったと思います。実際,宇野委員が教えられる中で,このような専門書,つまり,かなり電子書籍が少ない領域かと思うのですが,どのように対応されているのか,教えていただければと思います。
【宇野委員】 ありがとうございます。まず,盲学校の中で教えている中で,点字を使っている子供たちにとってはサピエでかなりの参考書がアップされているんですが,弱視の子供たちにとっては参考書や問題集というのが本当に弱いというか,少ない状況にあります。ですので,拡大写本ボランティアの方にテキストデータを作っていただいたり,または電流協の方に内々にちょっとデータをというような工面をしていただいたりということは細々とはやっているんですけれども,実は中高生の学習環境の教科書以外の部分はかなり苦労しているという実態があります。
それから,卒業生で,ある盲・ろうのお子さんが大学に進んで,社会福祉を勉強したことがあります。そのときにも,社会福祉用語辞典というのがサピエには1980年版が載っていたんですけれども,最新のものは全くなくて,それを出版社に問い合わせたところ,電子データはあるんだけれども,アクセシブルな形で販売はしていただけないということで,学生にとっては,残念ながら,社会福祉用語辞典というのは今時のものは勉強できないということになっています。御存じのとおり,多くの学生はそれぞれの大学の障害学生支援室に教科書を持ち込んで,テキスト化していただいて何とかやっているということなんですけれども,これも非常に点での努力ですので,やはりこれは線になって,面になって,もう少し全国的に多面的に進めていけるような施策になればなというふうに願っているところです。
以上です。
【中野座長】 植村委員,よろしいでしょうか。
【植村座長代理】 はい。ありがとうございます。
【中野座長】 ほかに御質問等はございますでしょうか。御発表いただいた委員同士でも構わないと思いますが,もし何かあればお願いしたいと思います。では,宇野委員,お願いします。
【宇野委員】 竹下委員にちょっとお伺いしたいんですが,最後の方で,視覚障害者は点字図書館,それからディスレクシアや肢体不自由の方は公共図書館というふうに提案があったわけですが,点字図書館,いわゆるサピエが持っている資産というのは,録音図書なんかは例えば肢体不自由,ディスレクシアの人にも大変有効であるのではないかと思われるんですが,そこはネットを介して公共図書館側からサポートしていけばいいというような趣旨での御提案でしょうか。
【竹下委員】 正直に申し上げますが,今,全視情協で全国の点字図書館に,マラケシュ条約に従って,とにかく門戸を開放するようなことでずっと働き掛けております。ただ,点字図書館の本音としては,職員基準配置が5人の中で,視覚障害者の方にそのサービスをするのが手いっぱいであって,なかなかどんどん広げていくことは難しいということがあります。それを広げることはもちろん前提なんですけれども,今回,マラケシュ条約,そして読書バリアフリー法に従って,公立図書館等がここに参加してくることによって,いたずらに,点字図書館は何でもかんでもやるんだ,全部門戸を開放するんだと。公立図書館も同じように,希望する方に全部開放するんだと。もちろんそれは前提なんですけれども,力を入れるところはそれぞれあっていいのではないかと。先ほど述べましたけれども,まず点字図書館の方では障害者手帳を持たない視覚障害者の方々に門戸を開放することが重要であって,そこからさらに身体障害や読字障害の方々にも広がっていくだろうと。公立図書館の場合には,やはりその地域地域で使用していただきやすい障害のある方々にまず門戸を開放して,そしてもちろんサピエ図書館を利用して,相互に連携するという形が望ましいのではないかということを本音で申し上げました。
【宇野委員】 分かりました。おっしゃるとおり,本来は,もう数十年前に図書館というものが設置された時点で,いろんな市民,障害の有無に関わらず市民全体に対するサービス提供というのが図書館であるべきであったと思うんですね。そこを点字図書館という形で,視覚障害者等を中心にサービス提供が進んできた。でも,今,この法律が求めているように,本来,図書館が全ての障害者に対してサービスを提供していくということが始まろうとしていますので,このときに,では今までノウハウを持っている点字図書館がどういう役割を担うべきなのか,公共図書館はどうやって障害者サービスのノウハウをさらに充実していけばいいのか。ここはおっしゃるとおり,役割分担とある程度のすみ分けをやっていくことによって,うまく回っていくんだろうなというふうに思いました。ありがとうございました。
【竹下委員】 あと一言補足ですが,後ろ向きに捉えたかもしれませんけれども,今回の要望にも書いていますとおり,点字図書館では,地域における公立図書館等への支援をこれまでも続けてきましたし,今後,読書バリアフリー法に従ってさらにそれを強化するし,求められていくように思っております。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。特にございませんでしょうか。多分,今後,次の発表が出てくると,またさらに御意見等というのがより活発になるのではないかと思いますので,進行させていただいて,またその次の質疑応答のときにでも御発言いただければと思います。
それでは,再度ヒアリングに戻らせていただきまして,次の発表者である三宅委員から御発表をお願いしたいと思います。三宅委員,お願いします。
【三宅委員】 日本視覚障害者団体連合の三宅と申します。こちらからの骨子案についての意見を述べさせていただきます。
まず冒頭に,視覚障害者の方がどういった形で読書をされるかというふうなニーズについて少し触れたいと思っております。先ほど宇野委員からあったように,やはり学びということで,それぞれの個人の中の知見を深めていくという形で読書をするというふうな方もいらっしゃいます。ただ,中には,今,視覚障害者が働いている環境としまして,まだまだ半分近い方が,従来からのあんま・マッサージ・指圧・鍼灸業で生計を担っている方もいらっしゃいます。そういった,人に対する業種に関わっている方たちは,いろいろな情報を入手して,その方たちにサービス,要は治療をするわけですけれども,その場合に,まさか無言のまま淡々と行うというわけではなくて,来られた患者さんに対していろいろな話をしたりとかという形でコミュニケーションをとっています。その場合に,やはり話題になるのは,最近はやっているテレビとかラジオの番組,なかなかラジオは少なくなっているかもしれませんが,テレビの番組ですとか,あとは新聞の情報ですとか,あるいはその中には話題になっている本の情報も出てきます。そういったときに,ラジオとかテレビで話題になっている本の内容をいち早く知ることによって,そういった患者さんとの話の中でも話が盛り上がって,治療以外の効果も得られるというふうなところもあろうかと思いますので,こういった働くといった場の中でも読書というのは大変重要なことだというふうに痛感をしております。現にそういった形で携わっている方たちからは多くこういう話を聞いております。
そういった観点から,今,点訳・音訳などのボランティアさんを中心としまして,様々な形で読書環境が整っているわけですけれども,やはり時間が掛かってしまうわけです。これはただ単にデータを訳すのに時間が掛かるのではなくて,そのほとんどが調査,正確に表すということに時間を割いてしまうわけです。ですので,テキストデータの提供というのもそれを利用される方に必要だと思うんですけれども,それと同時に,やはりそのデータをより製作者,ボランティアさんのところにいち早く届けるような形をとっていただいて,正確な点字データ,あるいは音訳のものに使っていただくというふうなことも少し考えていただければなというふうに思っております。
いち早く図書の内容を知るためにというふうなことで,そういった点訳・音訳のボランティアの方に委ねるという点もありますけれども,先ほど来出ております電子書籍を利用して,発売されて余り時間の差がなく購入して,自分たちも金銭を払ってその本を手に入れることによって内容を知るというふうなことができれば,本当にこれこそ,そんなに差がなくコミュニケーションの手段として図書の内容を知り,患者さんと向き合ったり,あるいは一般企業などに勤めている方でもそういった話の中でついていくことができるわけです。そういった観点からも,やはりアクセシブルな電子書籍というのは非常に重要であって,こういった点からもEPUBなどのフォーマット形式,どうすればアクセシブルなものになるかというふうな検討は必要ですし,そのための支援,あるいは情報提供などは必要だと思っております。
あとは,買うところでもう1点だけ触れさせていただきます。弱視の方で,私どもの団体の方に寄せられているお話としまして,専門的な図書を手に入れて,より自分の中にある,例えば技術向上ですとか専門的な知識を深めるというふうなことで利用するというふうな声も頂いております。その際に,やはり多くの電子書籍がそういうアクセシブルなものになっていない。例えば,電子書籍が提供されていても,画像のみで,音声読み上げに対応していないとか,あるいは拡大とか色反転など,自分の目の状態に合ったものに変換しようにも,制限が掛けられていて,その対応ができない,読めないというふうな状況があるというふうにお聞きします。これは何もテキストデータで全部カバーできるというものでありません。もちろんできるものはできますけれども,それが専門的なものになればなるほど二次元的な視覚情報というのがたくさん紹介されて,それによって情報を得られるというものもあります。テキストデータの提供自体も支援体制を整える必要はあるとは思うんですけれども,こういった,見て,その図書の情報を知るというふうな弱視の方々にこういう専門的な学びの機会がちゃんと充実するように,例えばPDFに関してもそういうふうなアクセシブルなもの。先ほどのテキストデータに関しても,ただテキストデータが組み込んであっても,ちゃんと読んでスムーズに行くようなものになっていないので,ぽつりぽつりと読んだりとか,字が飛んでしまったりとかということがあるというふうにありましたけれども,そういった視覚障害者の多様なニーズのアクセシブルを確保するという観点からも,電子書籍の技術的な取組というふうなことはお願いしたいところです。
借りるところについてですけれども,まずは,我々にお問い合わせいただく中に,やはり先ほどのように半数の方近くは三療業に携わっているというふうなことがあります。一般企業に勤めている方はなかなかこういうお話は頂かないんですけれども,学校で専門的な知識を身に付けた方からは,そういったところで自分が今就いている,例えば三療業につきまして,昔習った知識で業はこなしているんだけれども,データ的な資料とか,あるいは法律が改正されたとか,そういうふうなことも一挙に知れるものは今使われている教科書だという話をされるんです。確かにいろいろなところから資料は出ているので,それを見てしまえばそれで済むんですけれども,やはりそれが端的にまとめられていて,より新しいものが手に入るというのは,教科書,あるいは付属する資料等々になってきます。
ただ,例えば視聴覚情報提供施設の中に入っている点字出版所,こういうところから発行されているものなどが図書館に蔵書としてないというふうなことがあって,利用ができないという状況もあるようです。そういったところで,自分の新たなる学びの修正,あるいは向上といったところにそういったものが利用できないというのもやはり課題かと思います。しかも,これが図書館の方で蔵書をそろえるのにとても費用が負担できないというふうな状況にあるということになりますと,こういったところでの蔵書をそろえるための予算的措置というのはさらに必要になってくるかと思われます。
私どもも,やはり皆様,視覚障害者の方が住んでいる各地域のところでアクセスしやすい施設を利用していただいて,それは点字図書館かもしれないですし,あるいは公共図書館かもしれない。とかく,中途失明をされた方は,入り口となると,点字図書館という言葉を聞くと,一歩引いてしまうというふうなことがあります。徐々にそれが利用の方に至る方もいらっしゃいますけれども,やはりこういったところはそれぞれの公共図書館,点字図書館,大学図書館などと連携をして,自分の利用しやすいところの図書館でこういったアクセシブルな図書が利用できるというふうな環境を整えることが必要だと思っております。それには,点字図書館にもそうですし,公共図書館にもやはりそれぞれの視覚障害者,あるいはそれ以外の障害の方々のためのノウハウというのは必要なんですけれども,こういった蓄積ができるような支援というのは計画上は作っていただいて,しかも実際に取り組んでいくのは国ではなくて各地方になってきますので,地方がそういう形で取り組んでいって,将来的にはどの図書館からでも自分の読みたい本を探せる環境にあるようにというふうなことで,是非支援をしていただきたいと思っております。
例えばで言いますと,公共図書館の場合は障害者サービスに実際にアクセスすればいいだけということではなくて,障害者サービスがある図書館にしても実際にその図書館に蔵書されている一般活字の本を探そうと思うと,司書の方に検索をしてもらえるならまだしも,一部そういうふうな実験的な取組があるようですけれども,例えば端末だけ置いて,それを検索するというふうなシステムもあるようです。これですと,端末自身がアクセシブルなものになっていないというふうなことで,障害者サービスにある本だけではなく,その公共図書館にある図書を利用したいにも関わらず,それが検索すらできないというふうなこともあるようですので,やはり図書館の環境整備というふうなことにつきましても,必要なものは予算措置はしていただいて,視覚障害者等がよりアクセスしやすい,利用しやすい図書館環境を整えていただきたいと思っております。
先ほど盲・ろう者の件が出ておりましたけれども,やはり盲・ろう者の方も,あと,視覚障害者も,全部が全部,音声だけ,点字だけというわけではないです。音声の方がいいという方もいらっしゃれば,点字の方が情報を入手しやすい,あるいは拡大文字の方が入手しやすいというふうな方がいらっしゃいますので,こういった方たちでそれぞれのニーズに合ったものが選択できるというふうな状況を整えてもらうということが必要になってくるかと思います。ですので,点字の方は余り利用がないので,点字の方のボランティアを養成するのは抑えていくとか,そういうふうなことがないように,1人,2人,3人かもしれないですけれども,やはりニーズというのはなくなっていくものではないと思います。全くなくなるというものではないですので,そういったところでは個々のニーズに合った読書環境を整えられるようにというふうな予算措置,あるいは整備などを行っていただけると非常にありがたいと思っております。
やはり視覚障害者の中で端末などをいろいろ利用して情報を入手されるというふうな方は,まだまだ多いというふうには言い切れないのが実情です。今後はそういうふうな方たちが多分伸びてくるとは思うんですけれども,現状では視覚障害者の65歳以上が約7割を占めているという状況にあります。そういった中で,どうしても新しい機器とかを使いこなせないというふうな方たちも出てきますので,そういったところでも簡易的な端末の開発,あるいは丁寧な指導ができるように,あるいは貸し出し環境が整うようにというふうなことを是非お願いしたいと思っております。
製作に関してですけれども,製作に関しては,やはり私たちにとって,点訳・音訳,あるいはテキストデイジー化など,こういったボランティアさんの力というのは本当に大きなものになっています。それが,先ほど来ありますけれども,高齢化などによってボランティアさんの数が減少していく,あるいは養成研修が任意事業になっているがために養成すらできないというふうなことがあると,我々にとっての読書環境が整わない状況がより一層広がってしまうということにもなってきますので,こういったところでの一層の支援をお願いしたいと思っております。
最後に,この9つの事業以外のところで1点触れさせていただきますけれども,こういう基本計画を作る,あるいは地方がそれぞれの計画を作るといった場合に,そこで済んでしまうケースというのもあります。基本計画については5年後に見直しを進めていくというふうなお話が冒頭にありましたけれども,そういった中で,交通バリアフリーのところではそういうふうな議論がされておりますけれども,計画が施行された後,きっちりとその内容に即したものになっているかどうかというチェックの機能を是非持っていただきたいというふうに思っております。それは恐らくこの協議の場でやるのが一番望ましいとは思いますけれども,そういった形で適切に,どこまで計画に対して達成できているのかという評価をする機関を是非担っていただきたいというのと,それから,地方に関しては,率先的に行われている取組というのはほかのまだ取り組んでいない地方でどうしたらいいか分からないというふうなところに関しても非常に参考の事例となりますので,好事例的なものがありましたら,こういうふうなものは積極的な周知をしていただくというふうなことをお願いしたいと思っております。
最初に申し上げましたけれども,視覚障害者はいろいろな読書環境のニーズを持っております。そういった方たちのニーズを全てかなえていただくようにというのが最終的な目標ではありますけれども,そういった形での読書環境の整備の推進を切にお願いしたいところです。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは,引き続きまして,小池委員よりお願いしたいと思います。
【小池委員】 調布市立図書館から参りました小池です。どうぞよろしくお願いいたします。事前に提出させていただいた資料に沿って意見をということで述べさせていただきたいと思います。
初めに,今回調製いただいた基本計画骨子案は,法律成立後,遅くない時期に取り組んでいただくということは,今回の施策推進にとってもよい効果があるというふうに考えております。この協議会でよりよいものにするよう努力を重ねていきたいと考えております。
次に,施策の方向性についてです。視覚障害者における図書館の利用に係る体制の整備等についてですけれども,各図書館では,利用可能な資料製作に毎日取り組んで,日々,資料の蓄積が図られております。既に運用されておりますサピエなどのサービスも利用が増えています。さらに利用を伸ばすことは重要であり,サービスの安定,継続が必要であります。そのために,現在のサピエや国立国会図書館の視覚障害者等用データの収集及び送信サービスが永続的に行われるよう,財政も含めた支援を求めたいと考えております。
このことは,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化についても同様であります。
次に,特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援についてです。著作権法の権利制限等の規定がありますけれども,新たな権利制限を盛り込んではどうかと考えます。権利の保護を求める立場である著者,出版社の御理解を得ることが前提でもありますし,法的な規定だけではなく,保護が可能な製作システムの開発に取り組むことも考えてはどうかと考えております。
次に,アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等についてです。出版社の御努力により販売価格は決定されるものと理解はしておりますけれども,どうしても印刷の本よりも製作コストというのは高くなり,販売価格にも反映されるのではないかと考えております。このあたりは販売に関わる方からの御意見をお聞きしたいところでありますけれども,コストをどのように抑えるかは事情が分からない者から具体的な意見はちょっとお出しできませんけれども,考え方として,紙の本と同程度の価格に落ち着くと流通も進むのではないかとも考えております。また,インターフェースなどの標準化によって,例えば自動車はハンドル,ブレーキ,アクセルなど,車種などによって違いが基本的にないように製造されていると思いますけれども,標準化ということがこういうことの利用の促進につながるのではないかと考えております。
次に,外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備についてですけれども,いわゆる窓口としては,やはり国立国会図書館が御担当いただくことが適当なのではないかと考えております。目次情報の交換,資料の交換ということでは,国立国会図書館はノウハウというのは本当に50年,60年と蓄積されておりますので,そのように推察すると適当ではないかなと考えるところです。
次に,端末機器類及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の取得支援についてです。開発のための投資資金というのは財政的な課題ともなろうかと思いますけれども,支援の仕組みの検討が必要かと考えます。現在も各地で実施はしていますけれども,例えばプレクストークなど,再生機器の操作方法を利用者の方に説明する個別の研修を効果的に実施する体制というのは,骨子となる人の養成ということが重要でありますし,機器の操作が抵抗感となって利用が進まないということも,これは経験的にありますので,やはり1人1人個別の研修が重要ではないかと考えます。このことは,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等についても同様と考えます。人材育成については,司書の資格取得のための科目に加えるなど,養成課程,ないしは資格取得の講習の段階で理解と技術を身に付けることが効率的・効果的ではないかと考えます。
最後に,加えたい視点といたしまして,読書習慣を身に付ける段階での取組というものを加えてはいかがかと考えます。幼少期に布の絵本の読み聞かせ,点字付き絵本などに出会い,成長に合わせ,マルチメディアデイジーなども含めた個々に適切な資料を通じ,読書の習慣,学びの習慣を獲得する,そういう環境整備ということを計画に盛り込んではいかがと考えます。
今回お示しいただいた基本計画骨子案に基づいて整理させていただきました。以上でございます。
【中野座長】 どうもありがとうございました。
それでは,最後の御発表になりますが,小林委員よりお願いしたいと思います。
【小林委員】 長野県教育委員会事務局,文化財・生涯学習課長の小林司と申します。全国知事会におきまして,文教環境委員会というのがございます。10の県によって構成されておりますが,現在,長野県知事がその文教環境委員会の委員長をやっておりますので,長野県におきまして,構成する10県にこの骨子に対する意見を照会を掛けまして,取りまとめたものがこれでございますので,これから意見を発表させていただきます。
まず,全般的なことに関してなんですけれども,1つ目の丸に書いてありますが,「国においては」とか「地方公共団体においては」とか,具体的に誰が何をするのか,そこら辺が明確になるように計画が記載されていた方がより実効性があるかなという意見がございます。また,「○○等」という表現が非常に多く出てくるんですが,何々等とやってしまいますと,ちょっと内容がぼやけたり,分かりにくくなってしまうところがあるので,そこら辺の表記の工夫はお願いしたいというような意見があります。また,読書バリアフリー法の中では直接的に表現のない「アクセシブル」という表現の意味を分かりやすく説明していただいた方がよろしいのではないかなというような一般的な意見がございました。
以下,内容についての意見ですが,最初に,視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備についてでございます。1つ目の丸に書いてあるのですが,視覚障害者等は図書館に来訪することも困難な方が多いという現状がございますので,図書館の施設や機器の整備などハード面や,サービスの充実などソフト面を充実するということでは十分ではなく,電子書籍の普及など情報化社会の進展に合わせ,インターネットを活用した情報へのアクセスの保障をする体制の整備が必要ではないかなという意見が出ております。また,今回の骨子ですが,全体的にアクセシブルな電子書籍等の普及に重点を置いた記載となっておるという印象が受けられまして,引き続き点字図書や拡大図書などアクセシブルな図書と読み上げ機などが提供されることにも配慮した記載が,当然のことながら,必要なのではないかと。また,予算的なことになってしまうのですが,現在の地方交付税の交付の算定の根拠に含まれております公立図書館等の人件費とか図書購入費とはまた別に,視覚障害者等へのサービスを担当する職員の人件費やアクセシブルな電子図書の購入費もまた追加計上していただきたいと,そのような声もございました。
次に,2つ目,インターネットを利用したサービスの提供体制の強化についてでございますが,1つ目の丸は,視覚障害者等が利用しやすい,括弧書きで書いてありますが,要は実際にサイトとかが用意されておるとは思うんですが,そのサイトにたどり着きやすい,そういう図書情報ネットワークが必要なのではないか。2つ目としまして,多くの公立図書館が導入しております図書検索システム,WebOPACというのがございますが,それを,視覚障害者等でも確実に利用できるようなシステム設計だとかデザインだとかプログラム,そこら辺のガイドラインみたいなものを作ってみてはどうかというような意見がございました。
次に行きまして,アクセシブルな電子図書等の販売等の促進等でございます。先ほども御意見がありましたが,1つ目の丸は,図書館購入用,個人購入用とも,紙版よりも電子書籍版の方が割高になってしまうのではないかという懸念がございますので,是非そこら辺がそのようにならないようにしてほしい。2つ目の丸では,アクセシブルな電子書籍のサピエ図書館への納本を義務付けてはどうか。3つ目としましては,公立図書館においては,販売又は頒布された電子書籍等について,著作権者の許可なく視覚障害者等へ提供できるようにしてほしいというような声もございました。
次ですが,端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援についてでございます。1つ目の丸ですが,「特別支援学校学習指導要領において規定されている」というような記述がございましたが,通常校にも弱視等のお子様が在籍していらっしゃいますので,それにも配慮した説明が必要ではないか。2つ目としましては,視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等の用具の給付やアクセシブルな電子書籍等の利用方法の研修につきましては,公立図書館・学校図書館職員と障害福祉担当関係機関の職員が絶対連携してやっていかなくてはいけないのではないかという意見です。
次に,アクセシブルな電子書籍等・端末機器等の係る先端技術等の研究開発の推進等につきましては,開発に際しましては,研究開発協力として,特別支援学級等で試用していただいて,子供たちの意見も是非取り入れていただきたいというものです。
最後に,製作人材・図書館サービス人材の育成等につきましてですが,1つ目は計画的な製作人材・図書館サービス人材の育成ができるようなシステム。あと,実際に人材と事業者を結び付けるようなシステムの検討が必要なのではないか。最後に,具体的な成果を目標とする計画を策定してほしいということで,今後,国の方で計画ができましたら,地方公共団体の方でもまた計画を立てるというような流れになっていくことになると思いますが,その際,初めに国の方の計画で具体的な成果目標が載っていれば地方公共団体においてもそれを参考にして作っていきやすいという意見がございました。
以上でございます。
【中野座長】 どうもありがとうございました。
それでは,ただいまの三宅委員,小池委員,小林委員からの御発表に関する質疑応答をさせていただきたいと思います。御意見や御質問等がある方はお知らせいただければと思いますが,いかがでしょうか。では,植村委員,お願いします。
【植村座長代理】 では,植村から小池委員の方にちょっと質問をさせてください。お手元,事前に頂きました配付資料の方にもありますけれども,10ページの2の第11条関係のところで,出版者から製作者に対する電磁記録等の提供促進のために,権利者の理解を得ることを前提に一定権利制限を設けるとあります。具体的にどういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。第37条があるなかで,さらにもう1つの権利制限とは,例えばどういうことをお考えでしょうか。
【小池委員】 第37条の議論というのは結構緻密にされたんだと思っているんですけれども,それでもやっぱり権利制限なので,どっちも納得できるというところに今落ち着いてはいると思います。例えば,販売されているものはだめです,作ることについては基本的には遠慮しましょうとかという話に今はなっているわけですけれども,先ほど出ているような,スピード感というのでしょうか,そのときに,それとクオリティーの問題で,その辺が現場ではいろいろ配慮というんでしょうか,そういうことがどうも起こってしまうということがあるようですので,そこのところを,権利者の方の権利をかなり抑えるというところをもう少し進めることはできないものかなというのが少し頭にあったものですから,こういうふうにさせていただきました。
【植村座長代理】 この提言で少し思ったのは,第35条の今回の著作権法改正の中で,公衆送信に関しては補償金制度の導入が決まりました。例えば何か補償金のような形で提供できるみたいな,そういう方法は考えられていましたか。
【小池委員】 今言われると,なるほどなと。よく著作権の議論の中ではお金の話でどこかでそこで解決しようという話があり,公共貸与権の話も含めてですけれども,例えば公共貸与権の話はなかなか進まないという中でも,一方で,こういうお話であれば,最後はお金はどこが出すのという話になるかと思うんですけれども,権利として,こういう情報流通のために一定のコストが掛かる,あるいはお互いに納得するという部分について,お金というのはありかなと,これは個人的には思っております。
【中野座長】 ほかにいかがでしょうか。河村委員,お願いします。
【河村委員】 長野県の小林委員にお伺いしたいんですが,子供たちの意見も取り入れてという非常に重要な御提言があったと思うんですね。意識的に聞いていかないと子供たちは意見を言う場がないということで,様々なニーズがあっても,意見を表明するチャンスが非常に少ない世代だと思いますので,とても重要な視点だというふうに思いました。
それで伺いたいんですが,今年,学校教育法の改正がございまして,デジタル教科書のときに,ちょうど小林委員がおっしゃっている「等」の中身は何なんだろうということで,デジタル教科書を全教科にわたって使える場合に,障害等のある児童生徒等というふうに学校教育法が改正されまして,その「等」の中に,今,文部科学省の方で把握しているのでは5万人以上というふうに数が出ております。日本語に通じていない児童生徒についても,デジタル教科書に関しては「障害等」の中に含めて扱うんだということが学校教育法改正で決まったわけですが,そうしますと,今のこの文脈は「障害」ということでやっているんですが,実際に不登校とか,心理的・情緒的にもう教室にいられないとなりますと,特別支援の対象になる。そのボーダーラインのところにいる子供たちが実は教育の場にいっぱいいるわけですね。そこで,では,壊れてからなら障害,特別支援の対象になるから,ここで言っている対象の「等」に入る,でも,壊れる前は入らないという,教育の現場としては非常につらい状況が出てくるというふうに今,分析しているんですけれども,そのあたり,特に教育委員会という立場で今回の読書バリアフリー法の中ではどういうふうな扱いをなされようとしておられるのか,あるいはこれからどういうふうにお考えになるのか,御意見を伺いたいと思いました。
【小林委員】 貴重な御意見ありがとうございます。今回の読書バリアフリー法の意見をまとめる際には,済みません,頭の中が視覚障害者等の障害バリアフリーということで考えておりましたので,不登校問題だとか,学校に来れなくて,お家で確かに本が読めればいいということはあるかと思うんですが,そこまでは全く考えておりませんでしたので,ちょっと今,即答できなくて申し訳ございません。
【中野座長】 河村委員,よろしいでしょうか。
【河村委員】 はい。
【中野座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。では,宇野委員,お願いします。
【宇野委員】 私が説明することでもないかと思うんですが,読書バリアフリー法の「視覚障害者等」というのは,マラケシュ条約の受益者の定義から来ている。その受益者が従来の著作権法第37条3項の権利制限対象者とのそごがあったので,昨年,著作権法改正が行われ,マラケシュ条約の受益者が第37条3項の権利制限に入った。それに基づいて,読書障害者というか,読バリ法の対象者がそこに倣ってきているので,当面は視覚障害者,ディスレクシア,肢体不自由者,寝たきり,眼球使用困難者ということが想定されているということだと思います。確かに,日本にいる外国人とか,いろんな意味で様々な読書障害というのは実際にはありますけれども,日本図書館協会はガイドラインの中でもっと幅広い受益者を定義されていますけれども,今のところ,法律上の「視覚障害者等」というのはそういうふうに定義をされているということかと思います。
併せて,少し意見を2点お願いします。小林委員がおっしゃった地方交付税の問題は,私は非常に重要な問題だと思います。これまで公共図書館の予算は,確かに地方交付税で措置はされているものの,現場の図書館司書から聞くと,なかなかそのとおりには使われずに,実際には道路等々に使われてしまうということで,図書費がどんどん削られてきているという実態が各公共図書館にはあるということなんです。まして,人数の費用対効果からすると,一般の晴眼者,健常者の数よりも,読書障害者は少ない。その人のための読書環境を整えるのはよりコストが掛かってしまう。こうなってくると,確かにお金が十分なければどうしても後回しになってしまうということだと思うんです。ですので,今回の読バリ法には財政面の措置というのが義務として入っていますけれども,これは各公立図書館でいざ運用するときに,やはり地方交付税で,例えば確実に図書館費用の中の何%は読バリ法の受益者に対して使うとか,何らかのことをしていかないとなかなか……。首長さんが非常に前向きな方だったら,それはそれでいいと思うんですけれども,そうでない地域のところは相変わらず寂しい状態で放置されてしまうということが起こり得るのではないかということで,地方交付税に伴う予算措置について何らかの方向性をこの基本計画で示せればいいのではないかなというふうに思うのが1つです。
それからもう1つは,障害者は,紙の媒体ではなくて,電子書籍ということをどうしてもワンソース・マルチユースの関係で求めるわけですが,電子書籍が本より高くなるということは,これは出版社の方が詳しいと思いますけれども,恐らく紙の印刷代とか製本代というのが掛からない分,その前の段階のデータをうまく活用していけばそういうことにはならないんだろうと思うんですね。ただ,それをテキストに変換するとか,障害者用に提供する仕組みを作る,ここにはどうしてもコストが掛かってしまうので,ここに対して出版社が赤字とか身銭を切ってということよりも,もう少しこれはユニバーサルな形を考えていくべきだと思うんです。例えば,駅のホームドアについても,これは鉄道事業者だけではなくて,国や自治体の補助がちゃんとあるわけですし,例えばNTTにしたって,物すごく田舎のところの部分をみんなで分けるということで,ユニバーサル料金,3円ぐらいだったと思うんですが,そういうふうにやっていると思うんです。ですので,そういう仕組みも含めて,やはり電子書籍を障害者にうまく使っていただくという仕組みは国も含めて考えていく必要があるんじゃないかなというふうに思いました。
以上です。
【中野座長】 宇野委員,ありがとうございます。今の2つについては御意見ということでしょうか。それとも,どなたかに御意見をお聞きするか。
【宇野委員】 意見です。
【中野座長】 意見ですね。分かりました。ありがとうございます。
今,宇野委員から意見も出していただきましたので,質疑以外に,もし御意見等があったら,そちらにも発言を頂きたいと思いますけれども,その前にもしこれまでの3件の発表についてさらに質問があればそれを出していただいた上で,議論へと進めていきたいと思いますけれども。では,植村委員,お願いします。
【植村座長代理】 簡単にもう1つ,三宅委員にお願いします。先ほどの御発表で,テキストだけでもだめなんだという指摘にちょっと目からうろこが落ちました。先ほど言いましたけれども,電子書籍って,どうしても文芸物が多いというのは一般に思われていますけれども,ここで問われているのは学びのための本であって,それには,やはり図は確かに多いですよね。この図は,具体的に触図とかとなると,ボランティアが作るとさらにハードルが高くなり,しかも正確に伝えられないという状況が起こっていると思います。具体的に図というものに対してはどう扱ったらよろしいでしょうか。
【三宅委員】 ありがとうございます。図というもの,その二次元的なもので表された視覚的な情報を我々視覚障害者が把握するというのはなかなか困難な状況にはあります。これを文字情報で置き換えてやったとしても,やはり必ずしも十分な理解を得ない場合もあるわけなんですね。ただ,こういったところはテキストデータを作るときに,こういうふうな作り方ですると例えば表組みのようにされているものはきっちり情報が伝わりますよとか,表の説明にしても,こういうふうな表が表されていますというふうなことになってしまいますけれども,そういうふうな文字で表す方法がまず考えられるだろうなというのが1つ目。
それから,これもボランティアさんの手によってされていますけれども,点図とか立体コピーとか,様々な触図についての技術があります。こういったところで利用して,二次元的なものを表すというふうな仕組みを持っていますので,こういったものを利用して,例えば全盲の方へ本の内容の二次元的なものを伝えるというような手段はできるかなというふうに考えられますけれども,私が言った専門的な知識の中の一例で言いますと,例えばデザイン的なもので仕事をされているという方も中にはいらっしゃいます。さらに一例を言うと,例えばウエブデザインをしている視覚障害者の方もいらっしゃいます。そういった方はどうしてもテキスト情報だけでは全然足りないんですね。これがPDFになっていると,まさしくそれが二次元的に,例えばこういうふうな色とか文字の配置をしていくとこういうふうに見えますよとかですね。ウエブデザインというのは,アクセシビリティーのことも考えなければいけない反面,一般的な注文に対してもそれをかなえるというふうな役目を負うわけですので,そういったところでどういうふうに視覚的に効果的なものを表していくかという勉強のためにそういうふうな専門書が見たいのに,アクセス制限が掛かっている,あるいは電子書籍がないというふうなところで非常に苦労されているというふうな声を聞いております。
あくまで一例ですけれども,そういったものがあるので,やはりテキストデータも必要なものではあるんですけれども,そういった二元的なものを視覚的に見られる弱視の方に関してはこういうふうなニーズもあるということで知っていただければと思います。
【中野座長】 ありがとうございます。
竹下委員,お願いします。
【竹下委員】 全視情協の竹下から補足させていただきます。先ほど来,ボランティアの方々の研さんについてお話をしておりますけれども,点訳・音訳,録音,そして電子書籍のボランティアの方々にとって,何を学ぶのが大変かというと,基本的な間違いのない点訳,あるいは発声,発音,イントネーション,そして聞きやすい朗読ということはもちろん基本であって,それにプラスして,今,視覚的な資料,図や表や絵やグラフ,これをいかにして点字にし,あるいは録音,音訳にし,あるいは電子書籍にするかということが非常に大きな課題であり,皆さん一生懸命勉強されているわけです。先ほど少し今日のPDFデータについて申し上げましたけれども,今日の「次第」の資料2-2を御覧いただきたいんです。例えば,資料2にございますスケジュールです。これはPDFではちゃんと読めません。これはテキストデータでも文章に書き換えないと読めません。ですから,これを点字にし,あるいは録音にし,あるいは電子書籍のテキストデータにする場合に,どのように書き換えるかということが非常に重要です。これも恣意的に自己満足でやってはいけないわけであって,標準的なものを作っていかなくてはいけない。それが私ども全視情協の加盟施設や団体,ボランティアの方々が目指しているところです。
具体的には,点字の場合には,今,三宅委員がおっしゃったように,図や表や絵を文章化することがあります。そして今,非常に取り組まれているのが,点図,触図。点図の視覚的な図や表を点,点,点に表す,そういうソフトがあって,それを使って,指で触って例えばグラフの増減とか地図の形とかを把握できることが改めて取り組まれています。これは視覚的にきれいにできればいいわけではなくて,指で読んで分かるかどうかということです。録音の場合も,では音声で、耳で聞いて表やグラフや図が分かるかということが非常に重要で,これに皆さん取り組んでいるわけです。
そこら辺が,今のところ,点訳・音訳,アクセシブルな電子書籍のボランティアの方々が非常に研さんをし,ノウハウを積み,提供しているということなのかと思います。
【中野座長】 分かりやすい御説明ありがとうございました。
植村委員,よろしいでしょうか。
【植村座長代理】 はい。大変よく分かりました。ありがとうございます。
【中野座長】 ほかにいかがでしょうか。3件についての御質問はよろしいですか。
特になければ,前半の3件で質問し忘れてしまったというような件がありましたら,先にお伺いした上で,議論を深めていきたいと思いますが,前半3件。ちょっと最初の方は皆さんも緊張していたところもあって,質問しにくかったところもあるかもしれませんが,ありましたら是非お願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。では,お願いします。
【安形委員】 前半の方のサピエの図書館の関係者の方に伺いたいんですけれども,以前にサピエ図書館のデータについてちょっと調査をした際に,同じタイトルに関して何件もボランティアベースで分散的に作業しますと重複が多くなってしまうという問題はあるんだと思うんですけれども,やはりできるだけ多くの資料をより使える形にしていくという中では,効率的な作業を進めていく必要があると思うんですけれども,そのような重複を減らすというためにはどのようなものが必要だと思われますか。
【中野座長】 では,それぞれからお答えいただければと思いますので,よろしくお願いします。
【竹下委員】 では,まず全視情協の竹下からお答えします。その調査をされたのがいつであって,どういう状態だったかはちょっと把握していないんですけれども,今日,サピエは重複製作をなくすことが前提です。ですから,各加盟施設――今,点字,録音,電子書籍をアップできる施設団体が百四,五十ありますけれども――その施設・団体が,例えばこの本を,ボランティアの方がこれをしたいと言われて,点訳したい,録音したいという場合は,まずサピエで検索をして,それが既に上がっていればそれは着手しません。ただ,版次が違ったり,改訂されていたり,それから,場合によっては内容的に処理の仕方が違うというような場合に重複することがあり得ますけど,基本的にはないんです。
ただ,もう1つ,蛇足で付け加えますと,今はそのことに対して,かなりの利用者の方々から,なぜ重複がないんだ,なぜ自分が選べないんだと。例えば録音の場合にも,率直に言って,男の人が読むか,女の人が読むかとかあります。さらに,言いにくいことですけれども,ちょっとこれは聞きにくいなというのもあったりします。そういうことに対して,選べるようにしてほしいという声も,今,強く出ているのは事実です。
【安形委員】 ありがとうございます。やはり過去のものも含めて重複等があったときに,さらに言うと,電子書籍のデジタルデータになりますと,必ずしも1冊の本全部をそれぞれのデータに変えるということも必要なくなるかもしれませんし,あるいは複数の書籍を合わせたような合冊版みたいなものも出てくるかと思ったときに,やはり識別子とかメタデータの形で,ある本から出てきたようなデータに関してきちんと追えるような体制作りが必要ではないかと思いまして,今のような質問をさせていただきました。済みません。
【中野座長】 野村委員の方からももし何かありましたら。
【野村委員】 今現在,サピエの方で,国会図書館さんでお作りになった本と連携,国会図書館で収集したものを含めるというチェックボックスを付けていますので,チェックボックスを入れますと,サピエで出てくるのは,国会図書館さんが収集した,公共図書館さんとかサピエに加入していない団体さんのものが上がってきて,その書誌データがサピエ側に入ってきますので,サピエの中で一見すると同じタイトルのものが出てくるような感じで見えることはあります。ただ,チェックボックスを外しますと,あくまでもサピエ側の方だけのデータになりますので,そうすると重複製作というのは抑えられているというのは分かると思います。
【安形委員】 ありがとうございます。
【中野座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。前半の御発表に関する御質問等。では,お願いします。
【小池委員】 先ほど日本電子図書館の御報告というところの中で,利用者の方が1万2,700人で,その中でサピエを利用される人は35人というような説明だったかということでよろしいでしょうか。
【野村委員】 35名の方は,私どもに利用登録をしていただいている方でございまして,サピエを登録した方はそのうちの28名の方ですね。残りの差分の7名の方は,サピエを活用しないで,私ども図書館のCDだとか媒体の蔵書を活用されている方になります。ですので,利用されるときには,郵送等はできませんので,図書館まで来館していただいて,お貸し出しするような形が主になっております。
【小池委員】 ありがとうございます。
【中野座長】 ほかに御質問はよろしいですか。
御発表に対する御質問が特になければ,今のやりとりの中でも今後の議論に非常に役立つ視点というのが幾つか提起されたのではないかと思います。宇野委員からはもう既に地方交付税の問題や変換するための費用ということも今後の議論の中で考えていく重要な視点ではないかという御意見を頂きました。今回の御発表に限らず,今回の御発表を契機に,あと10分ちょっとでございますけれども,その間に少し議論を深めていきたいと思いますが,何か御発言がある方がおられましたらお願いします。河村委員,お願いします。
【河村委員】 先ほどの質問と関係するんですけれども,2010年の1月1日に実施された著作権法の改正で,現在の第37条の著作権権利制限の障害に関わる部分の基本形が構成されて,それが今日も引き継がれているというふうに認識しておりますが,それは2000年から始まった著作権法の障害者団体による改正運動がずっと積み重なった結果のものであります。したがいまして,その中で,例えば精神障害,あるいはなかなかどこが読書に障害があるかということがすぐには分かりにくい,自閉症スペクトラムの方の場合とかいろんな,こういうふうにするとよく分かるんだけれどもというのを手探りで探りながらこれまで教育してきた知見とか,そういったものを集大成した形で2010年の改正は,様々な障害を実際に含み得る,そういう改正になったというふうに私ども図書館のサイドからは評価をしております。
それで,それは日本図書館協会だけではなくて,図書館の関係5団体でしたね,大学図書館等も含めて全国で定着をしてきて今日に至っているというふうに理解しておりまして,その中では,先ほど来言われています「等」の範囲というのはかなり広く捉えて,実際にサービスも展開してきているという認識でございます。そこの認識の上に立って,では,今回の読書バリアフリー法で言う「等」というのはどこまでなのかということをもう一度しっかり議論する必要があるのではないのかというふうに思う次第です。その場合に,先ほど1級,2級の視覚障害の方だけが点字図書館に登録できるという,そういう図書館もあるというお話がありましたが,例えばそれは遠視力,遠くの視力で測った視力障害だけがそういうふうに認定を受けるわけで,小さい子供などに老眼と同じような近視力の障害があった場合に,それは認定を受けられないという,今の認定そのものから外れてしまう子供たちの問題というものもあり,それらに早い段階で介入できればそこで解決できるのが,そこを見逃してしまうと,それが別の障害になっていくというふうな経過もこれまであったかと思います。
したがいまして,先ほど私,学校教育法の改正のときに「障害等」ということでの日本語に通じない子供たちの扱いというものを申し上げたんですが,実はそういうボーダーラインにいる子供たちをはじめとして,高齢者もいろんな意味でボーダーラインに立っておりまして,そういう人たちも含めて最終的には読書バリアフリーを実現していく。そのためには何を戦略的に整備していくのかというふうな考え方と,それから,既に認知されている,自他ともに認めている障害のある方の場合に,障害者差別解消法で言う合理的配慮の提供義務が国と地方自治体にはございますので,その範囲ではすぐに何ができるのかという直近の課題と,やはり両方組み合わせて,先ほど5年の計画ということでしたので,今後の日本における,誰もが読書できる体制を作っていくためのしっかりした基本を是非御検討いただきたいなというふうに思う次第です。
【中野座長】 ありがとうございました。「等」の範囲ということについても今後検討をしていく必要があるのではないかという御意見を頂きました。
ほかにいかがでしょうか。残り時間がだんだん少なくなってきて,大体最後の方に意見がたくさん出てきますので,早めにお願いします。では,お願いします。
【安形委員】 読書バリアフリー法案ということで,アクセシブルという視点は非常に多いと思うんですけれども,様々な御意見の中にも,継続的とか,持続可能なというキーワードもありますので,やはり一度作られたデータがきちんと長期保存とか継続的な提供という観点で提供され続けるような視点も基本計画の中に盛り込むべきではないかと思います。
【中野座長】 ありがとうございます。持続可能性というところは,今,重要なキーワードになっているかと思います。
ほかにいかがでしょうか。では,三宅委員,お願いします。
【三宅委員】 アクセシブルな図書を使う,要はデイジー図書などのものを使う場合,やはり端末というふうなことが重要になってきますけれども,先ほど来皆様からも出ていますが,日常生活用具などで,例えば視覚障害の方に給付される対象のほとんどが身体障害者手帳の1・2級を持っている方というふうになっていますが,一部の自治体ではそこから枠を広げて,3級も対象になっているというふうなところも出てきてはいます。ただ,ここにもう1つ制限が掛かっているところがあって,例えば年齢制限が掛かっている。例えば,学校に通っているお子さんにデイジー図書を活用してもらって学べる場を設けたいんだというふうになっても,実際その機械を買おうと思うと,その子供は手帳を持っているんだけれども,日常生活用具の給付対象になっていないというふうなことがあると聞いております。そういったところもありますので,やはり環境を整えるのは,端末が十分にその人に使えるような措置というのは必要だろうと思います。しかも,日常生活用具というのは,各地方自治体の裁量によって決められるというふうなことが大きくあります。ですので,基本計画のところでは,そういったところのニーズも改めてほかの会議等々では示されているかとは思いますけれども,端末を利用する上での地方自治体への働き掛けというのは強くこの中に盛り込んでいただきたいと思っております。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございます。これも大きな問題だと思います。多分,日常生活用具そのものの制度を変えるというお話ではなく,読書バリアフリー法の範囲の中で読書の権利というのをどう構築していくかというような視点が必要なんじゃないかというような御意見でございました。
ほかはいかがでしょうか。では,植村委員,お願いします。
【植村座長代理】 課題として,実は先ほど宇野委員が御発言された点についてですが,電子書籍に関わる製作経費を広くみんなで負担できないかというアイデアの1つとして,電話料金におけるユニバーサルサービスのようなものがないかというようなお話でした。私も以前そういうのをちょっと考えたことがありまして,あるいはCDとかDVDの私的録音・録画補償金のようなものですね。みんなが広く少し払うことでそのコストを持てないかなと思ったんですが,これは電気通信事業の方で考えていただくしかないかなと私は個人的に思っています。つまり,今やスマホの中で読めるのが読書であるというならば,必ずしも電子書籍にこだわらないで,通信事業の中で何らかの経費というのを少し薄く取るということができないでしょうか。なぜかというと,通信事業は業法があるんですが,出版には業法がないんですね。これは言論・表現の枠組みがあるからで,出版業の電子書籍については,何か法的なものは余り踏み込んでほしくないというのが,言論・表現に関わる仕事をしている人間としての気持ちです。
ただ,今やスマホの中で全てのものを読んでいるんだということを考えれば,通信事業的な枠組みの中で検討できることは可能じゃないかなとちょっと思っています。少し長い目になるかもしれませんけど,可能性の議論として残していただければなと思いました。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。ユニバーサルサービス料というのはいろいろなところでセットされていますけれども,これを通信事業との関係で考えていってみたらどうかというアイデアを頂きました。
ほかはいかがでございましょうか。お願いします。
【小池委員】 先ほど植村委員からお金の話を投げられたので,何となく話がそっちに行っているなと思いながらあれなんですけれども,個人的に思うには,最終的には多分この事業は自治体がとなったときに,国が地方交付税で措置しましょうといったときになかなか進まないというのも,これまでこの分野だけではなくていろんなところで言われてきているわけですよね。そうしたときに,例えば地方交付税の対象になったような自治体は,少ないけど,あるわけです。そうすると,そういうところでいったときに,これは国民にとって基本的な仕事なんですということは,お金でだけではなく,もうちょっと強い枠組みを作っておかないとなかなか進まないのかなというのが1つ。そのときに,ではお金は誰がといったときに,税金だけという話もなかなかないと。今,植村委員がおっしゃった通信事業者のユニバーサルというのも一つのアイデアだろうし,広く薄く,余り負担感がなく公益的に何らかお金が回っていくという仕組みを。アイデアは全然ないんですけれども,やはりそれはこれからの持続可能な社会としては1つあるのかなというふうに思います。同じような発言ですけど,以上です。
【中野座長】 ありがとうございます。交付税系というのはなかなか難しいなというのは私も感じていて,例えば,大学における障害学生支援も,障害者に対して付くわけではないので,一括して,例えば私立大学助成のような形で付いてくると,その経費というのが必ずしもそこに費やされないことがあり得ると。今回,読書バリアフリー法のことを考えてみると,結論としては,障害のある人たちの読書の権利というのがちゃんと保障されるという,そういう成果物が重要になってきますので,それを担保するためにはどんな仕組みを考えないといけないかというのがこの基本計画の中では非常に重要な視点になるのかなというふうな御議論を頂いていたかと思います。
ほかはいかがでしょう。あともう1件ぐらいで,そろそろまとめとさせていただきたいんですが,御発言はございますでしょうか。では,お願いします。
【見形委員】 DPIの見形です。ちょっと戻ってしまうんですけれども,長野の取組というか,バリアフリーにアクセスし難い障害者の方がいらっしゃるというところで,具体的に長野ではどんな取組をされていらっしゃるのかなということをお聞きしたいと思いました。
それから,これは意見なんですけれども,「視覚障害者等」というのは,高齢者も含めてというか,やはりバリアフリー法は,障害者だけとはいうものの,その「等」にはいずれ皆さんというか,私たち自身も向かうであろう高齢の部分での読書の困難というのは向かっていくはずなので,この法律は全国民が周知するべきというか,そういうふうに私は思って,この成立をとても喜んでいるんですけれども,皆さんのコンセンサスというか,障害者ではない人たち,子供たちも含め,1人1人がコンセンサスを持てるような法律になることをちょっと期待しているというか,そういったことを皆さんで作っていけたらすばらしい法律になるんじゃないかなと思っています。
それで,済みません,長野の小林委員,もし分かるようでしたら,教えていただけたらと思います。
【小林委員】 はい。残念ながら,いい事例があるというわけではございません。図書館の実際の利用状況を見ていると,やっぱり障害者の方の利用は少ないと。だから,図書館の設備とかサービスをよくしても,来てくれる方が少ないもので,それだったら自宅で図書が読めるような,そういうためのインターネットとかを活用したそちらの方を充実させた方がいいのではないかという,そういう提案でして,こういう取組をやっていて,障害者の方々の図書館利用がとても評判がいいという事例を持ち合わせているわけではございません。
【中野座長】 ありがとうございます。
【村瀬情報活用支援室長】 役所からでもいいですか。
【中野座長】 はい。そろそろ時間なので,短くお願いします。
【村瀬情報活用支援室長】 では,一言,済みません。私,総務省の村瀬と申しますけれども,先ほど植村委員からちょっと御提案がありましたので,読書環境の整備ということで必要な資金をしっかりと獲得していく方策を考えることは極めて重要だというふうに,まず総論として思ってございます。そうした上で,電気通信事業法というのは,御案内のとおりでございますけれども,円滑な電気通信役務の提供を図るために公共性の観点から法律として整備されているというものでございますので,ある意味,私が所管しているわけではないので,ここは持ち帰ってまたという部分もありますけれども,通信というインフラの上に電子書籍といったようなものが乗っかってくるという文脈になってまいりますので,法律が現在形作っている目的なり理念,それに照らしてどういう形が適切かどうかというのは慎重な検討があるかなというふうに第一感として思っておりますので,コメントさせていただきました。
【中野座長】 どうもありがとうございます。
【植村座長代理】 一言だけ。必ずしも電気通信事業法の内側でと思ったわけではなくて,通信には業法があるけど,出版業にはないということからすると,通信というような枠組みで,メディアの中で捉えておかないと,設計が難しいかなと私案としたところです。先ほど言いましたように,広く,スマートフォンの中で読んでいるんだと捉えれば,何も電子書籍と捉えるだけではなく,読書の概念は広がっていますので,その辺の御考慮ももう一つあるかなと思ったまでです。以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。ちょっともう時間が。本当に短くお願いします。
【竹下委員】 1点だけ。今,見形委員から出た,公立図書館の取組についての質問については,実際に各地の公立図書館でいろんな障害者が利用している図書館があります。その事例は次回以降,多分日本図書館協会の発表もあるので,その場で聞かせていただければありがたいと思います。
【中野座長】 ありがとうございました。やはり最後の方になると質問等がたくさん出るというのは常でございまして,様々な御意見,非常に今後の議論にとって重要な御意見を頂いて,ありがとうございます。これは今後,ここで何かすぐに結論を出すものではありませんで,これからまだ2回,3回とございますので,そこで様々な意見を出していただきながらそれぞれの視点というのを整理させていただくというのがすごく重要かと思います。本日頂いた御意見に関しましても,事務局の方で整理をしていただくようにお願いいたしますので。それから,きょうの議論の場では最後もうちょっと時間がなくなってしまいましたので,十分な意見が出せなかったという場合には,是非今後の,3回ございますので,そちらでも御発言いただければありがたいなというふうに思います。
最後に,その他,もし事務局より連絡事項等があればお願いしたいんですが。
【小林障害者学習支援推進室長】 ありがとうございます。資料5に今後の会議日程をお示ししております。次回の開催日時については,11月28日木曜日の2時から4時半を予定しております。会場は,文部科学省東館の13階会議室でございます。
あと,本日の配付資料のうち,ファイルに綴じたヒアリング資料と参考資料は次回も使用いたします。お持ち帰りいただいても結構なんですが,次回会議の際に御持参いただきますようお願いします。また,机上に置いておいていただければ,次回会議の際にはこちらで御用意いたします。
以上でございます。
【中野座長】 ありがとうございました。それでは,本日の議事はこれにて全て終了といたします。皆様,長時間にわたる御協力ありがとうございました。
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