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2018年3月7日 平成29年度第1回水道における微生物問題検討会

医薬・生活衛生局水道課水道水質管理室

○日時

平成30年3月7日


○場所

公益社団法人日本水道協会 7階第1会議室


○出席者

委員(敬称略)

秋葉 道宏 五十嵐 良明 泉山 信司 春日 郁朗
勝山 志乃 黒木 俊郎 島崎 大 橋本 温
船坂 鐐三 吉田 弘

関係者(敬称略)

安藤 茂 神子 直之

○議題

(1)クリプトスポリジウム等対策における地表水を対象とした紫外線処理の適用に向けた検討
(2)その他

○議事

○田中係長 それでは定刻となりましたので、ただいまより、平成 29 年度第 1 回水道における微生物問題検討会を開催いたします。委員の皆様方には、御多忙中にもかかわらずお集まりいただきましてありがとうございます。本検討会の開催に当たり、事務局を代表して厚生労働省水道課長の是澤より御挨拶を申し上げます。


○是澤水道課長 水道課長の是澤でございます。本日は年度末のお忙しい中、委員の先生方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 昨今の水道行政をめぐる話題の中では、水道法の改正というのが非常に大ききなものでございます。御承知かと思いますが、昨年、通常国会に法案を提出した後、秋の衆議院の解散に伴いまして廃案となってしまっています。その再提出に向けて今取り組んでいるところでございまして、近々、閣議決定され、さらに国会での審議に移っていくという見通しでございます。

 今回の水道法の改正の内容につきましては、新水道ビジョンで掲げた水道の目標として、安全・強靱・持続という 3 つのキーワードがある中では、どちらかというと強靱性があるとかあるいは持続可能なサービスというところが中心になってはございますけれども、もう 1 つの、安全な水道をきちんと実現し、維持していくということも、水道における基本中の基本課題でございまして、そういう意味で本日のこの微生物問題検討会につきましても、今後の安全、特にクリプトスポリジウム対策の考え方を固めていく上で大変重要なものだと考えております。

 昨年度の厚生労働科学研究費の中で、新しい情報について取りまとめをしていただいたところでございますので、それを踏まえまして、委員の先生方、それぞれの御専門の立場から、忌憚のない御意見を頂戴いたしまして、今後のクリプトスポリジウム対策についての御議論をお願いできたらと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。

 あと、大変申し訳ないですけれども、私は、別のどうにも外せない会議がオーバーブッキングになってしまいまして、途中で退席をさせていただきます。御了承いただきますようお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。


○田中係長 本日の出席状況ですが、
10 名の委員全員に御出席いただいております。また、関係者として、公益財団法人水道技術研究センターの安藤専務理事、並びに立命館大学理工学部環境システム工学科の神子教授に御出席いただいております。なお、安藤様、神子様におかれましては、御都合により 14 30 分に退室されます。よろしくお願いいたします。

 続いて配布資料の確認をいたします。配布資料につきましては、お手元の資料の一番上の議事次第の裏面に記載してございます。資料 1 3 と参考資料 1 4 です。不足等ありましたら事務局までお申し付けいただければと思います。

 続きまして、以降の議事審行に先立ちまして、座長の選出を行いたいと思います。参考資料 2 の水道における微生物問題検討会運営要領では、座長は平成 29 年度第 1 回検討会において委員中から選出するとなっています。事務局としては、秋葉先生にお願いしたいと考えておりますが、皆様よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

 マスコミの方におかれましては、カメラ撮りは会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、御協力をお願いいたします。それでは、以降の議事進行につきましては、秋葉座長にお願いしたいと思います。


○秋葉座長 座長にご指名いただきました秋葉でございます。皆様方からご闊達な意見を頂きまして、実りある議論をしまして、座長として取りまとめてまいりたいと思っております。どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。それでは、議題に入る前に、本検討会の公開の取扱いについて事務局より御説明をお願いいたします。


○田中係長 本検討会の運営要領にて「検討会の公開の取扱いにおいては、検討会について決定する」としております。その取扱いの案を参考資料
3 に付けております。この検討会は、個人情報の保護等の特別な理由が無い限り、基本的に公開することとしており、原則公開でございます。委員のお名前、御職業、会議資料、議事録についても公開です。なお、検討に必要なために、取りまとめ前の中間段階の調査結果、あるいは先生方から未発表の研究成果を出していただく場合は、知的財産権の保護という観点等から、非公開とさせていただきたいと思います。


○秋葉座長 では、議題に入ります。議題
1 「クリプトスポリジウム等対策における地表水を対象とした紫外線処理の適用に向けた検討について」、資料 1 の説明を事務局からお願いします。


○東水道水質管理官 水道水質管理官の東です。私から資料
1 の説明をさせていただきます。既に御案内のとおり、クリプトスポリジウム対策につきましては、平成 8 年の埼玉県越生町の事件があった以降、基本的には濁度 0.1 度を守るということで、対策を取ることになっています。

 その後、平成 19 3 月に、それまでの「暫定指針」を「対策指針」に改めまして、レベル 4 ~レベル 1 に区分して、それぞれの予防対策を行うということに定められています。それが資料 1 の表にありますとおり、この辺は皆さん既に御存じかと思いますが、まず原水の指標菌検査をいたしまして、検出があった場合とない場合で分かれます。あった場合はレベル 4 かレベル 3 の対応が必要になる。原水が地表水の場合はレベル 4 ということで、原則、ろ過濁度 0.1 度以下を維持しなければならない。原水が地表水以外、つまり地下水か伏流水等の場合はレベル 3 に分類されまして、ろ過濁度 0.1 度以下か、又は紫外線設備を設置することとされています。

 具体的には 1 ページの下の所に、レベル 3 に対する施設整備ということで、その指針の中身について抜粋されています。レベル 3 についてはイ (a) ということで、ろ過池等の出口の濁度を 0.1 度以下に維持することが可能なろ過設備、急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過等を設置すること、又は (b) として、クリプトスポリジウム等を不活化することができる紫外線処理設備を設けると。具体的には、その下の 1 4 の要件を満たす紫外線設備を設けることとされています。

 ページをおめくりいただきまして、一方、いわゆる地表水ですね、こちらにつきましては、レベル 4 の対応ということで、原則、ろ過池等の出口の濁度を 0.1 度以下に維持することが定められています。これは指針の本文にも書いてあることなのですが、紫外線処理設備については、ろ過池等の出口の濁度を 0.1 度以下に維持することが可能なろ過設備と、紫外線処理設備を併用してもよいということとされており、浄水処理の安全性を一層高めるための対策と位置付けられている、いわゆるマルチプルバリアの考え方を指針の中にも盛り込んでいます。

 「なお」の所ですが、この平成 19 年の指針策定当時は、パブリックコメントで寄せられた紫外線処理の地表水への適用について検討すべきとの意見がありまして、その当時は定量的なデータ、知見が十分に得られていないということから、知見の収集に努め、必要な検討を進めていくと回答しているところです。資料 1 の説明は以上です。


○秋葉座長 どうもありがとうございました。では、続きまして資料
2 の説明を、島崎委員からお願いします。


○島崎委員 保健医療科学院の島崎です、よろしくお願いします。ただいま東管理官からの御説明にもありましたとおり、資料
1 の最後の所ですが、紫外線処理の地表水への適用に関して、定量的なデータや知見が十分に得られていないという背景がありまして、それを踏まえて、この 3 年間の研究班で知見の収集等を進めて、今回の検討会に資するようなデータが集まったものではないかということで、御紹介させていただく資料です。少し分厚くて恐縮ですが、平成 26 年度から平成 28 年度、昨年の 3 月まで 3 年間実施いたしました。「地表水を対象とした浄水処理の濁度管理技術を補完する紫外線処理の適用に関する研究」と題して、御覧の 1 ページ目と 2 ページ目に書いてあります研究要旨を、研究代表者および研究分担者にて実施を致しました。この検討会に直接関係のあるところを、少し要点を絞って紹介させていただきます。

2 枚めくっていただいて 3 ページ目です。本研究の目的ですが、御承知のとおり我が国の水道水源の 7 5 分以上は地表水であり、クリプト等をはじめとする塩素に対して耐性のある病原微生物の汚染が懸念されています。平成 19 年に、このクリプトスポリジウム等対策指針が策定されて 10 年近くたっていますが、依然として、特に小規模な水道において、対策が検討中、あるいは未対策である施設が残っているところです。括弧書きの中ですが、平成 28 3 月末でレベル 4 該当の 4,090 施設のうち、 1 割強となる 540 施設が未対策となっています。この研究の動機としては、このような未対策の施設に、より安全性を高めるために紫外線を適用してはどうかという次第です。

 その一方で、対策指針のレベル 4 施設の目標である、ろ過水濁度 0.1 度以下を常時維持ということに関して、水道技術研究センターのアンケートによれば、約 47 %の水道事業者が困難を感じているという現状もあります。 1 つには、最近の気候変動ゆえと申してよいかどうか、急激な集中豪雨、それに伴う急激な濁度上昇の回数が増加していることとも相まって、なかなか濁度制御が困難であるというところが聞こえてきています。

 このような背景から、当研究では、濁度管理を補完する、すなわち凝集沈殿および砂ろ過を補完する技術として、地表水を対象とした紫外線処理の適用というものを、まず前提として考える。その際に、濁度管理の課題を明確化するとともに、我が国の地表水原水の水質特性を十分考慮した上で、適切な紫外線の照射法、設計諸元、維持管理の留意事項について、特にわが国の水道事業体の実務に即した具体的な提案を行うことが目標です。こういった検討を通じて、水道の微生物リスクを更に低減していく、ひいては我が国の水道水の更なる安全に資していくことが、究極的な目標です。

 結果をかい摘んで紹介します。少しページを飛んで 10 ページです。 C. の研究結果ですが、まず濁度管理等における課題の抽出のうち、表 4 が地表水の濁度管理という項目で、 66 施設 18 事業体を対象に、また、表 5 が紫外線導入施設、これらは全て地下水ですが、 48 施設 16 事業体を対象にアンケート調査を、一部の事業体に対しては現場を訪問してのヒアリングと視察調査等も行いました。

 次のページ、 11 ページの (1) 急速ろ過においてろ過水濁度が上昇しやすい原因を聞いていますが、図 2 に棒グラフで示したように、最も多かった回答が原水の高濁度時、次に多かったのがろ過池洗浄後のろ過再開時と、ピコプランクトンは少し濁度管理の本質から外れるので省きまして、もう 1 つ下には大規模の浄水場にて、凝集操作の失敗も挙げられています。特に原水濁度が急上昇する際に、凝集操作の設定等がうまくいっていない、薬品注入の管理がうまくいかないという御意見も聞き及んでいるところです。

 同じページ、右下の所ですが、濁度の低減方法として、これは主に大規模の事業体を中心に対策が取られているところでして、施設の改造等を伴うわけですが、逆洗浄時のスローダウン、逆洗浄再開時の捨水、あるいはろ過のスロースタートが挙げられております。また、これも大規模事業体に限られますが、二段凝集の導入という施設も一部にありました。

 一方で、 12 ページの左上、図 4 の棒グラフの所にありますが、一番下に「未実施・予定なし」というのが、中規模、小規模の所にそれぞれ 4 施設あります。実施できない、あるいはしない理由としては、構造上、そういった施設改造を施すことができない。また、ろ過水濁度が低いため必要がない等がありますが、一部の施設では、設計時の前提条件よりも、このクリプト対策指針により、かなり高水準の濁度管理が要求されていて、その対応が致しかねるという現状も、少しうかがえます。

 更にページを 1 つめくっていただいて、 13 ページです。これは緩速ろ過を導入している所の濁度管理ということで、図 7 に示していますが、ろ過池ごとに濁度計を設置しているケースは規模に限らず見受けられなかったということです。一つには、緩速ろ過水には塩素が含まれていなくて、非常に濁度計が汚れやすい。また、自動洗浄設備も濁度計ごとに設ける必要があり、手作業の負担が大きくなります。濁度計の設置や管理が、特に中小の事業体を中心に、財政的に厳しいことも挙げられています。

 「考察」のところで 30 ページに一旦飛んでいただきます。 1.1 の課題の所の考察ですが、下半分の所を紹介させていただきます。このクリプトスポリジウム等対策指針に沿った設備改造については、特に小規模事業体において厳しい状況である。これには財政的な制約もさることながら、人員的な制約もありますし、導入当時に想定されていなかった運用が求められる。改造が構造上不可能な施設も散見されていますが、得てして、対応が先送りになっているというのが非常に懸念されるところです。

 少しページを戻っていただいて、 14 ページから 15 ページです。国内の浄水場の、地表水原水の濁度成分等の分析ということで、 15 ページに濁度と色度、並びに紫外線の透過率の分布を、 2 箇所の浄水場ですが、箱髭図で示しています。御覧いただくと、原水と凝集沈澱後の上澄み、また、そのろ過後の浄水のそれぞれについて、浄水場 A B を横に並べていまして、縦軸がそれぞれの水質になります。さすがに原水は非常に濁度の幅もありますし、紫外線透過率も 75 %を切ることもありますし、色度も高いのですが、凝集沈澱水あるいは浄水に関して言えば、ごく一部の色度を除いては、ほぼ現状、紫外線を適用できる水質要件を十分満たしているという結果となっています。

 更に 2 ページほど飛んでいただいて、 17 ページの左下ですが、その他の水質項目である鉄・マンガン・硬度に関しても、原水がやや上回っているものの、適切に凝集沈澱や砂ろ過を施してある水に関して言えば、紫外線適用の条件を十分満たしていることも分かっています。

 同じページの 2.2 です、これは実験室での実験で、関係者として本日お見えの神子先生によるものですが、濁質が存在する中で紫外線を当てた場合の処理効率、不活化の程度に関して、下水処理場の最初沈澱池の出口水を用いまして、大腸菌ファージ MS2 を指標とした検討です。その次の 18 ページよりも、更に次の 19 ページを御覧になると分かりやすいかと思いますが、横軸が平均紫外線量と題しまして、これは散乱光がないことを仮定した計算で求めたものです。縦軸は log の生残率ですが、傾きが急であるほど不活化速度が大きいことになりまして、濁質が多ければ多いほど、不活化速度が大きいという結果になっています。これはすなわち、散乱光による追加の不活化作用が、非常に大きいということになります。

 そこで、散乱光も考慮した紫外線量の算出ということで、その次の 20 ページの左上ですが、積分球式の吸光度計を用い、散乱光も全て含めて紫外線量を評価しますと、異なる濁質のプロットが、およそ一直線に乗ることになります。このような算定方法で実際の紫外線施設の運用管理等にも使えるとのことですが、こと紫外線照射による不活化に関しては、まず濁度による遮蔽効果という照射量の低減はあるのですが、それとともに散乱作用により不活化速度が向上する面があるという結果が得られたということです。

 では、どのような物質が紫外線の散乱に関わるかについて、 21 ページから 22 ページにかけて、これはお茶の水女子大の大瀧先生による御検討です。 22 ページが分かりやすいかと思いますが、様々な物質を対象とした X 線回折により、例えばカオリンやベントナイトには、 2 θ =26.4 度に特徴的なピークがありまして、同じように右側の浄水場の原水、あるいは浄水場の汚泥についても、この特徴的なピークがあります。こういった成分が、散乱に作用していることが分かっています。

 また、各濁質の粒径であるとか、あるいは色ですね。白色か黒色かということが紫外線の散乱に及ぼす影響についての検討が 22 ページ以降にあります。また 1 つめくっていただいて 23 ページの左下、図 35 です。 5 種類の模擬濁質を使っていまして、 CB がカーボンブラック、 W B とあるのが、それぞれ白と黒のポリスチレン粒子です。 0.2 というのは 0.2 μ m 1.0 1.0 μ m という粒子径です。横軸が粒子の濃度で、 1mL 当たりの個数です。縦軸が紫外線の透過率ということです。粒子の濃度が 10^7 10^8 /mL になってくると、色にかかわらず、粒径 1.0 μ m の粒子が、紫外線の透過率に大きく影響を及ぼすということです。実際の水道の原水としては、 10^9 /mL ぐらいの濃度は、あり得そうな範囲とのことです。一方で粒径 0.2 μ m の粒子に関しては、もう 1 2 桁ぐらい、紫外線透過率への影響は小さいということです。

 一方で、微生物の不活化となるとかなり様相が変わってまいりまして、 33 ページ上の表 11 を見ていただければと思うのですが、この上の CB はカーボンブラックで、 B W は先ほどと同じ略号です。 2 段目、 k が不活化速度定数ということで、表の右に行くほど不活化速度が大きいことになります。粒子なしの場合と比べて、カーボンブラックの 10^9 から、白色のポリスチレン粒子 1.0 μ m 10^8 /mL までは、不活化速度定数に統計的な有意差がないということです。それ以上、 10^9 /mL 10^10 /mL となりますと、白色のポリスチレン粒子は、先ほど申した散乱の作用によって不活化速度が上昇する。一方でカーボンブラックの 10^10 /mL については、やや速度が低減するという結果となっています。

 このように濁質と申しましても、その成分や形状、あるいは色等によって、正の影響もあれば負の影響もある。なかなか一概には言えないというところです。

25 ページに戻っていただきます。維持管理上の留意事項の検討についてですが、紫外線処理設備を実際に増設した地下水の施設に関して、 1 つは十分なスペースがないことが制約要因になる、また、紫外線処理設備の増設に伴って、圧力損失により浄水池に十分な水位が確保できないという点が指摘されています。

 同ページ右側の 4.2 ですが、紫外線処理では、紫外線吸光度の制御が非常に重要であるということが、この研究を通じて分かっています。そこで、非常に紫外線の吸光度が高い、すなわちフミン質を多量に含む原水の情報を頂きました。次の 26 ページ下の図 38 Ak 浄水場では非常に原水のフミン質濃度が高く、赤丸が紫外線の吸光度で、 50mm セルを用いた測定値ですが、原水では紫外線処理の水質要件である 0.125abs./10mm(0.625abs./50mm) を超えてしまうということも往々にしてあります。それが浄水については、凝集沈澱並びに活性炭処理によって、紫外線吸光度も十分に低減されていますし、濁度も十分コントロールされているということが分かっています。

 更にめくって 27 ページとなりますが、海外文献等の調査をいたしました。日本、米国、ドイツ、オーストラリア、英国、フランス、 6 か国の紫外線処理に係る紫外線の照射量と原水水質の要件を、その次の 28 ページの表 8 にまとめております。まず一番上の項目の濁度ですが、日本の 0.1 度というのは紫外線の適用要件ではないですし、米国の 5NTU というのも表流水処理規則ですので、紫外線とは関係ありません。ドイツ、イギリス、フランスを見ていただければ、 FNU というのはほぼ NTU と同じ単位ですが、ドイツが一番厳しくて 0.3 、フランスが 0.5 、イギリスが 1NTU ということです。特に、地下水、あるいは地表水との区別については、各国とも全く行われていない状況です。

2 つ下の紫外線透過率に関しては、ドイツはやや日本よりも緩く 70.8 %以上、フランスはやや厳しく 80 %以上という規定があります。鉄・マンガンに関してはドイツ、フランスとも、日本よりも厳しく半分以下の値となっています。

 もう 1 つ、 29 ページですが、昨年 2 月に WHO が水道システムの濁度管理に関する目標値及び汚染指標を出しています。この中ではろ過の目安として、急速あるいは直接ろ過に関しては、各月のろ過水濁度 95 %値が 0.3NTU 未満である、かつ 1NTU を超過しない水準下で、表の右側ですが、クリプトとジアルジアが最大 3log 程度除去されるとしています。

 少し下に消毒という項目がありまして、これは主に塩素消毒を適用する際に、理想的には 1NTU 未満、大規模に関しては常時 0.5NTU 未満、平均で 0.2NTU 以下という目安が示されています。右側に、適切な CT 値を確保するために消毒剤の注入率などを高める必要があるとしていますが、括弧書きの「紫外線消毒の場合は照射線量を高める」ということに関しては、この研究班の成果から言えば、濁度よりもむしろ紫外線透過率を十分確保する必要があることになります。

 最後に 35 ページのまとめの所です。先ほどの室内実験を取りまとめたものを図 39 に示しており、これは本研究の一番の成果ですが、「 MS2 を添加した場合の紫外線照射による不活化結果への濁質の影響の有無」で、横軸が濁度、縦軸が相対的な不活化速度定数となっております。これを見ていただきますと、濁度が 10 度程度まで上がったとしても、相対的な不活化速度はほぼ 1 前後である。また、 10 度を超えると散乱の影響を受けて、逆に不活化速度が大きくなる場合がある。したがって、砂ろ過後の濁度が 2 度以下である場合には、こと紫外線の不活化速度に関して言えば、特段の影響は見受けられないことになります。

36 ページの右半分の所を申し上げますと、装置の設計に関しては、装置への流入水の紫外線透過率を長期的に測って、 75 %超であることを確認し、同時に装置設計に反映させる。また、その運用時においても UVT を常時モニタリングすることが望ましいとしております。

 以上が本研究の主な成果です。 2 ページ目の研究要旨の最後の部分に戻りまして、既存の濁度管理に加えて、クリプトスポリジウム等対策としての紫外線処理を適切に導入することにより、水道水の安全性はより高くなるということが、この研究を通じて、改めて明らかになったと結論付けている次第です。以上、時間を過ぎて申し訳ありませんが、よろしくお願いします。


○秋葉座長 どうもありがとうございました。昨年度まで3年間の厚労科研の研究成果を、簡潔におまとめいただきました。資料
2 2 ページに研究体制が記載されております。本日は研究分担者の安藤専務理事と神子先生に御出席いただいております。では、ただいまのご説明に関して、何か補足のコメントがあれば承りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。


○安藤氏 水道技術研究センターの安藤です。今の島崎先生の御説明に補足するところは、特にありません。


○神子氏 私も特にありません。


○秋葉座長 分かりました、ありがとうございます。安藤専務、神子先生には、この後のディスカッションにも参加していただきまして、御意見を頂きたいと思います。それでは、今の島崎委員からの説明に関して、御質問、コメントがありましたらよろしくお願いします。よろしいですか。対策指針策定から
10 年間たちまして、先ほどの東管理官からのご説明のとおり、その当時は地表水に関しては定量的なデータや知見が十分に得られていないということで、地表水への適用は見送られたわけですが、この 10 年間、海外や国内の厚労科研等の研究の実施で知見が蓄積されまして、地表水でも適用できるということが明らかになりました。よろしいでしょうか。では、引き続き資料 3 について、事務局からご説明をお願いします。


○東水道水質管理官 資料
3 についてです。今回の事務局からの御提案事項ということで御説明させていただきたいと思います。まず、初めに、クリプトスポリジウム等対策指針を策定されて 10 年経過しまして、いろいろと見直しが必要な箇所もあろうかと思いますが、今回は、今、秋葉座長がおっしゃったように、科学的知見が不足していたために導入を見送った地表水への紫外線の活用に絞って、見直しの検討をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 中身ですが、先ほど島崎委員からも御説明がありましたとおり、昨年度の厚労科研の結果から、地表水に UV を導入することについては、濁度 0.1 度以下にすることとほぼ同等の効果があったということが確認されたと考えられることから、今回、私どもは資料 3 のとおりの御提案をさせていただきたいということです。

1 番目として、現在、レベル 4 に分類されている原水に対する対応措置として、以下の要件を満たす施設整備 ( ろ過設備+紫外線処理設備 ) を新たに位置付けてはどうかということです。これまでの濁度 0.1 度のみに加え、更にこの要件を増やして、選択肢を増やすということにしてはどうかという御提案です。 1 つ目の○としては、給水栓における濁度の水道水質基準 (2 度以下 ) を満たすことが可能なろ過設備を設ける。従来、濁度管理が基本という考え方に基づき、この考え方は踏襲していきたいということです。ただ、 0.1 度にこだわらず、末端の給水栓の水道水質基準を満たせればよいのではないかということです。

2 つ目の○が、クリプトスポリジウム等を不活化することができる紫外線処理設備を導入すると。具体的には 1 4 ということで、これは既存のレベル 3 の対応とほぼ同じで、若干文言を変えているところです。 1 として、紫外線照射槽を通過する水量の 95 %以上に対して、紫外線 (253.7nm 付近 ) の照射量を常時 10mJ/cm2 以上確保できること。これは、基本的にはクリプトスポリジウム等を 99.9 %不活化できる条件という意味です。それから 2 は、以下の水質を満たすものということで、濁度 2 度以下、色度 5 度以下、紫外線 (253.7nm 付近 ) の透過率が 75 %を超えること。それから、 3 の条件として、常時確認可能な紫外線強度計を備えているということ。 4 として、濁度の常時測定が可能な濁度計を備えていること。これは現行のレベル 3 の対応とは若干書きぶりを変えておりまして、現行のものは、原水の濁度が 2 度に達しない場合は濁度計を備えなくてもいいという例外規定を設けていましたが、地表水は原則、濁度計が必要ではないかということで、こういう書きぶりにいたしました。

 その下の 2 番は、このレベル 4 の原水に紫外線処理設備を導入するに当たって留意すべき事項は何かということで、これは上記の 1 とするために何らかの前提条件が必要だという、そういった御意見でもよろしいですし、あるいは、こういうデータが不足しているので、今の段階で 1 番の条件だけでは判断しかねると、こういったデータが必要なのではないかといった御意見でも結構かと思います。

 また、詳細事項ですが、例えば、 UV の条件について、波長 253.7nm というのは、低圧水銀ランプの波長です。当時はそれしかなかったということですが、今は中圧ランプとか、最近は LED も開発されつつあるということで、そういったものも今後出てくるのを念頭に置いた書きぶりにしてもいいのではないかという御意見でもいいですし、できるだけ本日は疑問点とか御意見を出し尽くしていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。資料の説明は、以上でございます。


○秋葉座長 それでは、ただいまの説明に対して、御質問、コメントがありましたらお願いいたします。


○泉山委員 紫外線処理はクリプトに有効で、追加するということについては賛成です。ただ、非常に気になっているのが、従来、濁度
0.1 度だったのを 2 度にするという部分です。この部分については反対しなければいけないのかと思っています。というのは、紫外線に対して強い病原体があります。例えばエキノコックス、アカントアメーバとか、バクテリアの芽胞などがあると思いますが、そういうのは塩素消毒にも強くて、紫外線にも強くてとなると。ろ過で取り除かなければならないということだと思います。クリプトスポリジウムは紫外線に弱いほうの病原微生物なので、紫外線はとてもよく効くと。クリプト対策としては有効で、使えるだろうということはそのとおりなのだと思います。紫外線を追加することには賛成です。濁度の部分については怖いというような話になります。よろしくお願いします。


○秋葉座長 泉山委員からは、紫外線に耐性の強い、クリプト以外の微生物も存在するので、一概に濁度を少し緩めるというのはいかがなものかというご意見でした。そのことに関して他の委員の方々から御質問等はありますでしょうか。


○安藤氏 水道技術研究センターの安藤でございます。今回の厚生労働科学研究費は、クリプト対策ということが当然ながらテーマでありまして、振り返ってみると、先ほどありましたが、平成
8 年に埼玉県の越生町で問題になったときは、紫外線というのは有効な技術がまだ未確立でありまして、濁度管理に依存せざるを得なかった、それ以外の手法がなかったという経緯がありますけれども、現在はその有効性は確認されておりますし、米国、英国、オーストラリア等々でも地表水をむしろ対象にして紫外線の導入が進んでおります。今、御指摘いただいたクリプト以外の微生物に対してどういう対策が講じられるべきかというのは、それはそれで検討すべき課題だと思います。ですから、クリプト対策としては、紫外線を位置付ける。ただし、それ以外のいろいろな病原微生物については、そのためにどういう対策を講じればいいのかというのは、それはそれで検討すべきだと私も思っております。以上です。


○秋葉座長 ありがとうございます。今回の対策指針は耐塩素性微生物のクリプト、ジアルジアを対象としています。ほかの微生物について
UV の知見はまだ十分に蓄積されていないということであります。そのことについての何か知見をお持ちの委員はいらっしゃいますでしょうか。


○島崎委員 手元に
IWA が出版した書籍である ”Elimination of micro-organisms by water treatment process” がございます。これはオランダの KWR が取りまとめたものでして、今、泉山先生がおっしゃったように、例えば、アデノウイルスは非常に紫外線に対して強いということが分かっていますし、アカントアメーバに関して言うと、 2log 不活化するのに必要な紫外線量は 71mJ/cm2 3log ですと 119 です。アデノウイルスも、タイプによって耐性は違いますけれども、一番強くて 167 ということですので、クリプト対策で 3log 不活化に必要となるよりも、更に強い紫外線量が必要な微生物やウイルスも見受けられました。クリプトに関しては EPA 出典のデータで、 3log 不活化に 12mJ/cm2 が必要ということで、環境試料の補正を含まないとの注釈が付いております。

 確かにクリプトよりも紫外線に対して強い耐性を持つものに対して、総合的に微生物リスクを低減する面から考えないといけないという点は、おっしゃるとおりかと思います。ただ、この検討会の場は、秋葉座長がおっしゃったように、クリプト、あるいはジアルジアへの対策を考える場でありますので、もちろん、凝集沈殿や砂ろ過など濁度管理の強化により、そのような様々な微生物やウイルスが副次的に制御されてきたとの効果は承知しておりますが、まず、クリプトやジアルジアの対策をどうするかということが第一義という気がいたします。


○秋葉座長 クリプト、ジアルジア対策に関しては、国外では地表水、地下水に対して区別なく導入されています。私の知りうる限りでは、導入した施設においては、アウトブレイクが発生した事例はないではないかと思います。ほかの微生物、つまり、泉山委員がおっしゃっていました、エキノコックス等が病原体として、水系の集団感染症の発生状況はどうでしょうか。その辺はいかがですか。


○泉山委員 集団感染という意味では知られていないのだろうと思います。クリプトの場合は、たくさんの患者さんが出るので目立つということで大きな集団感染になる。ところが、ほかの病原体の場合は数が少ないので、患者が発生しても分からないのです。そもそもろ過をしないと塩素消毒に耐性のある病原体が抜けていることが分かってきて、では、きちんとクリプトも含めて塩素耐性のあるもの全般を対策しましょうというのが、クリプトスポリジウム等対策指針の意味だったと思っています。クリプト対策指針には「等」が付いていて、別にクリプトだけ対策すればいいのだという話ではなくて、塩素消毒が効かない病原体も含めてきちんと対策していきましょうという意義が含まれていたと私は理解しています。では、どうしようかということになります。クリプト以外を無視していいのか、あるいは、きちんと対策していきましょうになるかと思います。


○秋葉座長 東管理官、どうぞ。


○東水道水質管理官 言葉の定義だけですが、今回、別添の
4 の対策指針の 1 ページ目に書いてありますけれども、クリプトスポリジウム「等」とは、クリプトスポリジウム及びジアルジア、一応、対策指針上は、この 2 つの微生物について対策しなければいけないということにはなっております。


○秋葉座長 今回においては、クリプトの「等」は、
2 つの微生物を対象としているということで、そこに絞りたいと思いますが、今回はUVの地表水の適用でのはじめての検討会でありますので、広く議論して行きたいと思います。泉山委員がおっしゃるように、ほかのものも副次効果としていろいろある。濁度の管理目標を今まで 0.1 度としたところで、耐塩素性微生物以外の微生物に関しても当然のことながら効果はあっただろうということは確かだと思います。しかしながら、結局、今、小規模な施設において、レベル 4 であってもその対策が進んでいない、今回のご説明いただいた研究班の成果としまして、一年中、濁度の 0.1 度を目標値とするのが非常に厳しいという結果が得られました。そういったところで選択肢として UV も「可」ということです。 0.1 度を守れる所は 0.1 度をきちんと守る。当然なことながら、守れない所は 0.1 を守るように努力しつつ、 UV を適用してマルチバリアの原則に従って微生物学的安全性を確保するということだと思います。いかがでしょうか、橋本委員、どうぞ。


○橋本委員 まず、確認をさせていただきます。給水栓で
2 度ということは、ろ過池、ろ過水の濁度のコントロールはしないということなのでしょうか。それとも、現状のように、ろ過池の濁度が 0.1 度を目標としつつ、給水栓では 2 度とするのか、そこで全然議論が違ってくると思います。私も泉山先生と同じで、紫外線を導入することは効果は高いだろうと思いますし、大賛成なのですけれども、いきなり 2 度というのが、この 2 度という数字が少々、特に給水栓で 2 度というのがどういう意味なのか、ここをはっきりさせていただければと思います。


○秋葉座長 そこのところいかがでしょうか。東管理官よろしくお願いします。


○東水道水質管理官 これは説明不足でした。これは、書いても書かなくてもよかった部分です。いわゆる水道水質基準というのは給水栓で求められている基準だということで、その基準を満たすようにろ過池の出口でコントロールしてくださいということです。だから結果的に浄水場から配水される、また給水栓で
2 度を満たしていればよいということです。


○橋本委員 紫外線の効果というのは、十分に私も理解しております。当然、ろ過池でのクリプトの除去率というのは、もし
2 度をターゲットとしてコントロールするのであれば、ろ過出口での 0.1 度を目標として管理していたときよりも恐らく悪いほうになるわけです。そのときに、紫外線を導入したことによって得られるクリプトの不活化率と、濁度のコントロールによってクリプトの除去ができなくなった部分を、十分にそれがバッファーすることができるのかどうかということが気になっています。一律、 2 度でいいよということではなくて、例えば、ろ過池での 0.1 度というのを目指しておいて、そこのどうしても先ほどのスタートアップ時とか、高濁度時というところに 0.1 度を超えてしまうようなところがあると、そういうところのバックアップとしての UV というのはすごく効果があると思いますし、例えば 0.1 度を一律、常時というところにターゲットとするのではなくて、先ほどどこかで 95 %が 0.3NTU を超えないようにとか、そういう管理の仕方もあるのではないかと思います。ですから、いきなり 2 度というのは、少々怖いかなと。では、 2 度がいいか、 0.1 度がいいかということは、これは分からないのです。


○秋葉座長 そうですね。


○橋本委員 そもそも
0.1 度のリスク的な意味というのは、はっきり分かっていないところですから、そこを少し何かクリアにしたほうがいいのかという気はします。


○秋葉座長 ありがとうございます。


○春日委員 東京大学の春日です。橋本先生と同じポイントですが、結局、
0.1 度で運用していたことで、どれぐらいの除去率が実際あったのかという定量的な理解がまずあって、それが 2 度に戻ることで増加するリスクを UV がどれだけ低減できるのかという、比較の議論が必要だと思います。ただ、こういうデータは多分余りないので難しいというのは、皆さん御承知だと思います。私自身としては、濁度 0.1 度を守ることの意味合いが必ずしも明瞭でないことと比べると、濁度が高い状態でも UV による微生物除去が担保されるという今回の研究成果は科学的なエビデンスとして重要と考えます。ただ、濁度 2 度に戻すことで、総合的にどのようなリスクが起こりうるのかということは、しっかり見ておく必要があると思います。これはコメントです。


○秋葉座長 吉田委員、どうぞ。


○吉田委員 国立感染症研究所の吉田でございます。今、春日先生の御発言でも御指摘があったかと思いますが、基準が厳しくなるときというのは、安全にいくのですけれども、緩めるということは、逆に言うと、それはどうなるかというのは、もちろん処理水の中の定量的なエビデンスというのも必要だと思いますし、あとは、健康へのリスクです。具体的にそれはどのように測っていくのかも検討していかないといけないと思います。


○秋葉座長 ありがとうございます。


○島崎委員 皆様方の御意見で、レベル
4 の対策をしている 0.1 度のろ過水濁度を管理している所が、それを 2 度に緩めて、かつ紫外線導入という方向のお話が聞こえるのですが、私自身としては、現行、 0.1 で管理している所が緩和されるというイメージではなく、現行で未対策であり、恐らくろ過水濁度 1 度か、事業体にもよると思いますが、 1 度か、あるいは 0.5 度程度で濁度を管理している所に、更に紫外線を追加することで、より安全な方向に向かっていただくのがまず第一ということになります。ろ過水濁度 0.1 度の管理がどの程度のクリプト除去率に対応するかというのは非常に難しいところで、それは濁度の除去とクリプトの除去に必ずしも相関があるわけではないためです。先ほど紹介した資料 2 29 ページ、 WHO による濁度管理の目安からすれば、 0.3NTU を常時保持していれば、大体 3log 程度の除去だということなので、これに少し追加して、余り根拠はないですけれども、もう 1log ぐらいでしょうか、 4log ぐらいは取れていることになるのかもしれません。ただ、先ほどの KWR の本にもありますが、凝集沈澱および砂ろ過によるクリプトの除去性能のデータはばらつきが大きいです。この本では log 除去ではなくて、 micro-organism elimination credit (MEC) というデータの質により重み付けした指標を用いていまして、実プラントや、実規模に近い実験データにより重みを付けて、テーブル実験のデータは重みを下げるといった集計をしているのですが、そうすると、除去性として 1.4 5.5log という幅になっています。なので、条件によって除去性に大きな差があると言えまして、安全側から考えると、処理がうまくいかないと 1 桁、 2 桁程度の除去にとどまってしまうことがあるかもしれません。ろ過水濁度 0.1 度がどの程度に相当するかは定かではないのですが、この 1.4 5.5log というのは、オランダを含む世界各国の文献データを集めて評価した値になると思います。

 今回、紫外線に関しては、恐らく現行の未対策施設で、ろ過水濁度 0.1 度をあまり達成できていない所は、安全側に見積って 1log 程度クリプトが除去されると考えられます。そこに紫外線を導入して 3log 除去が追加されれば、合計 4log になるかと思います。恐らく、現行のろ過水濁度 0.1 度に相当する物理的な除去と、紫外線の不活化とは本質的に異なるといった議論はあるかと思いますが、今回の御提案では、地表水を原水とする場合のクリプト対策として確保すべき最低限の安全性のレベルとして、 4log 除去あるいは不活化という目安を提案いただいたものと、個人的には理解している次第です。


○秋葉座長 ありがとうございます。船坂委員、どうぞ。


○船坂委員 そういう意味では、暫定的な基準ということで、
0.1 が維持されていない所は UV で対応してくださいというようなことにすべきではないかと思います。というのは、今まで濁度 0.1 で維持してきて、いきなり緩めるということは、やはり疑念があります。研究班の報告の結論にあるように、「既存の濁度管理に加えて、紫外線処理を適切に導入することによって、水道水の安全性はより高くなる」となっています。ということは、要するに濁度処理をして、その後に UV を付けると、それがより安全ですよと言っていますよね。だけれども、今回のその検討は、 2 度で管理するか、あるいは紫外線を付けてくださいということですよね、どちらかということなのではないですか。


○東水道水質管理官 資料
3 で書いたのは、基本的には、給水栓末端で 2 度以下を満たすようなろ過設備を導入、これは当然のことながら、それプラス UV だという案です。


○船坂委員 プラスということですか。


○東水道水質管理官 はい。


○船坂委員 もう
1 つは、 UV では効かない微生物に対する問題ですが、やはり水道水の安全性ということを考えて、原水の中にはクリプトとジアルジアだけがくるわけではないでしょ、そのほかのいろいろな病原菌が入ってくるではないですか。そういうものに対する対策も必要ではないかと思います。したがって、そういう総合的な対策をするということが必要となります。今まで決められていた濁度 0.1 で管理していく、更にそれに UV を付けてくださいというのが、より安全側に立った考え方ではないかと思いますが、どうでしょうか。


○秋葉座長 それはそうですね。


○安藤氏 クリプト対策が日本全国、ほとんどの浄水場で講じられていると、問題がないという状況であればいいのですけれども、残念ながら先ほどから出ていますように、まだまだ対策が講じられていないとか、それから、濁度管理に非常に困っている所があるわけです。その中でクリプト以外の微生物についても検討すべきだから、今回も
UV は位置付けないというようなことになれば、対策は現状から全然進まないという状況になるので、私はそのほうが問題ではないかと懸念しております。以上です。


○船坂委員 ろ過後に
UV を付けるということで、より安全性が高まるということではいけないでしょうか。


○安藤氏 私から言うのもあれですけれども、今回、多分、事務局から提案されているのは、ろ過設備プラス
UV ということだと思います。


○秋葉座長 ろ過設備になっているのですね。


○東水道水質管理官 ただ、ろ過が
0.1 までしなくてもよいということですね。


○船坂委員 だから
2 度にするということは。


○東水道水質管理官 最低
2 度。


○船坂委員 しかも給水栓での基準値ですね。今までは浄水場の出口で
0.1 度、具体的には、ろ過池の出口で 0.1 度ということでしたよね。


○東水道水質管理官 はい。


○船坂委員 したがって、給水栓はろ過池から更に家庭まで行く先ですので、それは途中で汚染を受けないという前提でしょうけれども、やはりそこにも少し安全性に問題があるのではないかと思います。


○東水道水質管理官 ですから、浄水系によりますけれども、
2 度以下ですから、ろ過池出口だと 1.5 度にするのがいいのか、 1 度がいいのか、そこは各浄水系統で変わってきますけれども、それプラス UV でどうでしょうかという提案です。


○勝山委員 神奈川県内広域水道企業団の勝山です。今のお話ですが、給水栓で濁度を
2 度以下にするということですと、やはり浄水処理がちょっといかがなものかなと。凝集沈澱ろ過で取れる濁質が少なくなってきてしまうということもありますので、今までもクリプトは凝集沈澱ろ過で取っていたというところがありまして、そこら辺、フロック等が抜けやすくなると、その中にもクリプトが含まれていたと思うのです。そこら辺が紫外線処理できちんと殺菌できているのかというのが少し懸念があるところなので、そこら辺、今回、お二方で知見がもしおありでしたら教えていただきたいところなのです。


○秋葉座長 そのほかの微生物汚染がいろいろある。


○勝山委員 微生物もそうですが、あと、クリプトもそのような形で除去されますので、そのような濁質に取り込まれた物質の。


○秋葉座長 濁質も。


○勝山委員 殺菌効果はいかがなものか。


○神子氏 濁質に取り込まれる分についての消毒効果はどの程度あるのかというのは、厚生労働科研費の始めの段階でかなり
1 つのテーマと思って考えてきました。具体的には、いろいろな私の実験をやっている所だと、初沈後の生下水にウイルスを投入しているので、実際の浄水の原水とは濁質の成分は違うのですが、そこにウイルスが吸着しやすい。それを仮定して、そのような形でその濁質にくっ付いたウイルスがどのように不活化するのか。それがあるところで寝てきたら、それは UV が効いていないところだろうということを仮定して実験をしていたのですが、ここでやる限りは、私の実験結果だと 3log までは取りあえず寝るところはないという結果が、まず 1 つあります。だから、そういうバイオパーティクルのようなくっ付きやすいところでも、もしかしてくっ付いたとしても、本当に遮蔽するものであれば効かなくなるかもしれませんが、余りその辺の影響は少ないのかなというのが、 1 つ私の思っていることです。

 一方で、クリプトスポリジウムの紫外線耐性のグラフが、 USEPA の導入マニュアルなどにもありますけれども、それで多分、論文数が 30 個ぐらいあって、クリプトスポリジウムの 10mJ まで当てたときにどの程度不活化するのかというのが、きれいな線に乗っている部分もあるのだけれども、それよりも不活化が進んでいないところとか、様々なところがもちろんあります。例えば、 50mJ ぐらい当てて、実は 2log ぐらいしか不活化しないとか様々なデータがあるので、それは昔、この対策指針をつくられた頃の平田先生とその辺について議論をしたところ、クリプトの精製が進 んでいないと、様々な濁質にくっ付いてその紫外線のデータとしては悪くなる傾向は多分あると。だから、例えば排出直後のクリプトスポリジウムがたくさん集まっているとか、あとは、糞便にくっ付いているようなそういう状況であると、それは普通に 10mJ を当てても 3log も不活化しないということは科学的には可能性はあると思います。だからフロックがたまたまポチョッと出てしまったと、その中にクリプトスポリジウムがあって紫外線の効きが悪くなるということはもちろんあると思います。ただ、それと、濁度を管理していてもクリプトスポリジウムが出ていく可能性は全くないわけではないので、そこのところの、そのまま出してしまうのと、たまたま濁度 0.1 を守れていました、だけれどもクリプトは出てしまいましたということと、フロックがたまたまポチョッと出てしまって、ちょっと濁度が上がるというのと、それに対して紫外線を当てるのと、どちらがリスクがどうなのかということは、多分、科学的な知見はまだないのではないかと思います。結局、効きが悪くなることはあるかもしれないし、ないかもしれないというようなことを言っていますけれども、今の私の正直なところは、そのような感じです。


○秋葉座長 泉山委員、どうぞ。


○泉山委員 ろ過も
UV も、得手不得手があって、組み合わせて使うのが前提だったと思います。海外の処理では、ろ過をきちんとして 3log を取って、紫外線も加えて 3log を取って、例えば合計 6log を取りましょうといったことをしていると思います。実際に海外の例を載せてくださっているのですけれども、そういうところは濁度基準をきちんと 0.5 とか数字がありますよね、 2 度ではないですよね、何で 0.5 ではなくて、 2 度でなければいけないのですか。不思議だと思っていました。


○島崎委員 この研究班とは異なる研究の現地調査にて、カナダ国の大規模の紫外線施設を持つ浄水場を訪問いたしまして、そこでは2箇所の貯水池を水源としており、片方の水質はよくて、もう片方は余りよくないという所で、インラインでの凝集後にかなり高速の砂ろ過を行っていました。アンスラサイトをろ材に使って、確か
300 /day ぐらいの相当なろ過速度で処理していました。高分子凝集剤も使っていて、それなりに濁質はきちんと取れているということなのですが、では、紫外線照射前の濁度管理はどうしているのかと聞いたら、特に気にしていないということだったので、泉山先生がおっしゃったような、紫外線に当てる前の水質をきちんと管理しているという印象は、事例は限られていますが、余りないというところです。


○秋葉座長 泉山委員の御懸念としては、
2 度というのが走っていて、これは結局、管理官、 2 度というのは、給水栓での 2 度ですね。確認しますけれども。


○東水道水質管理官 はい、そうですね。


○秋葉座長 これは水質基準値で、ここで
2 度だから、ろ過水濁度が2度を目標とすることではないということです。少し紛らわしいと思います。


○橋本委員 そこは私もちょっと分からないのですが、今、現状で対策が取れていない所に対しては、こういうことを加えることでよりリスク管理にはなると思いますが、現状で
0.1 度で維持ができている所は、例えばコストのことから考えるとこちらのほうがいいだろうと言って切り替えたと、そういうこともありという話になるわけですよね。ですから、例えば新規で今対策ができていない所と、今現状で 0.1 度の対策ができている所では扱いは違うのではないかと、違ってもいいのではないのかと思います。今、このままこれで出てくると、間違いなくそういうことですよね。 0.1 度の管理はできているけれどもこちらのほうがいいという選択肢を取り得る可能性があるのではないかと思いますけれども、その辺りどうでしょうか。


○東水道水質管理官 そこは、公平性の観点で、先行投資した所が損をするということがないようにしなければいけないと思います。ですので、そこが非常に難しい問題なのかなと思っております。


○秋葉座長 そうですね、クリプト対策でろ過を導入して、
0.1 度を常時達成できている施設はそのままで問題ないと思います。しかし、最近、原水水質もゲリラ豪雨、巨大台風の襲来によって、高濁度水が発生しているという現状を考えなくてはなりません。事業体から御参画の勝山委員、そのことに関して、今まで水道の事業体としてですが、ろ過水濁度 0.1 度を目標としてきたわけですけれども、また監視の徹底として濁度計も管理しなければなりません。 UV 適用について全体のシステムとしていかがですか。


○勝山委員 実際もう、うちなどは整備して
0.1 度以下になっておりますので、今の状況で UV を導入するかというと、なかなか難しいところはあるのかなと思っております。

 もう 1 つ、ちょっと確認をさせていただきたいのですが、このように濁度管理というか、表流水レベル 4 のところに UV を入れて濁度 2 度までとした場合、万が一給水栓のほうからクリプトが検出された場合ですけれども、今ですと 1 回給水停止をして、広報をちゃんとして、それからいろいろな処置をしていきなさいというようなお話になるのだったと思うのですけれども、その辺は UV さえ入れれば、多少、浄水からクリプトが検出されてもいいと、厚生労働省さんのほうはお認めになられるのですか。


○田中係長 現在でもレベル
3 で既に紫外線の導入は認められておりまして、そういう所であれば、検出されていても、紫外線処理していて照射量が確保されていれば、問題ないということにはなります。


○勝山委員 そのまま給水も続けて、通常の。


○田中係長 紫外線照射量が確保できていたということをもって、処理できているので問題ない、よって給水は停止する必要はないという判断になると思います。


○勝山委員 そうですか。


○秋葉座長 今の対策指針ではそうですよね。処理をしたということで、それを担保しているということでしょうか。


○勝山委員 ただ、先ほどのお話に戻しますと、うちみたいに処置が終わっているような所、
0.1 度が確保できている所は、紫外線はなかなかコストも掛かりますので、導入するというのは、ちょっと難しいのかなと思います。


○五十嵐委員 もう
1 回事務局に確認なのですが、今回の新たな位置付けということは、現行の 0.1 ができている所は、もうそれでいいと。できていない所があるので、今回、ろ過と UV を見るというような位置付けを、「又は」という形でいれるということですか。


○東水道水質管理官 そこは今の提案では厳密には分けていません。ですので、今もう既に濁度
0.1 で管理されている所で、設備を大幅に変える段階で、 UV プラスろ過というやり方も選択できるようになるという。今のところは、ですから、先行的に濁度で 0.1 をやっている所と、そうでない所の区別はしていないと、案としてはそうですね。


○秋葉座長 よろしいですか。今回の島崎委員から冒頭の研究班の報告では、これまで
10 年経っても、その対策が取られていないのは地表水を水源とする小規模事業体等で、これから対策を検討していて、年間を通して、原水濁度の変動が激しいところでは、それが 0.1 度に代わる選択肢として、 UV も適用できるということですね。地表水の適用に関しては世界的にその効果が認められているということですね。


○黒木委員 神奈川県衛生研究所の黒木ですが、ちょっと確認をさせていただきたいのです。レベル
3 の所では、既にこの紫外線導入をしていて、濁度 2 度以下で色度は 5 度以下となっているわけですが、そのレベル 3 に導入するときに、同じ議論があったのかどうかというところもあるのですが、これは原水そのものが濁度が低いからそこの議論がなかったということでしょうか。


○東水道水質管理官 今の御質問は、具体的にはレベル
3 UV を導入する際にも、塩素にも効かないし UV にも効かないもののリスクとか、そういった議論があったかどうかという御質問ですね。


○黒木委員 そうですね。


○東水道水質管理官 ちょっとそこは。


○黒木委員 何が言いたいかというと、既にそのレベル
3 で、こういう形で紫外線が導入されていて、ではレベル 3 とレベル 4 をどのように分けるかという、あるいは分けることができないのかというところですよね。今、議論があるのは、 2 度以下という、この「 2 度」という数値ですけれども、既にレベル 3 については 2 度以下でいいとなっているものを、レベル 4 のときに、そこでここの濁度を区別することができるのかどうか。そういう意味で、このレベル 3 に導入したときに、この濁度の議論があったのかなかったのかというところかと思うのですが。


○神子氏 すみません、曖昧な記憶で申し訳ないのですけれども、レベル
3 の場合は、そもそも 0.1 を守ればいいということにはならないだろうという、そのような話が多分あったと思うのです。だから 2 度でいいではなくて、 0.1 が実質的に意味がないところがあるから、紫外線を入れるには、その 0.1 を守ればいいというオプションを外したと、そのような議論があったように聞いた覚えがあります。すみません、曖昧です。


○黒木委員 そうすると、この
2 度とはどういう意味があるのだということにもなりかねないわけですよね。今、ここで 2 度にどこまでこだわるかという、そういう話だと思うのですが、レベル 3 に入れるときに、そもそも 2 度になどならない水を対象にしている、 0.1 、原水そのものが非常に濁度が低いものを対象にしているといったときに、 2 度以下というこの数字がどれだけの意味を持っていたのかということもありますので、ここでどこまでこれにこだわって議論をするかというところもあるかと思うのですが。ちょっと、私の質問そのものが、曖昧な方向に持っていきそうな気がして仕方ないのですが。


○東水道水質管理官 ちょっと表現の問題かもしれませんけれども、今の資料
3 の「水道水質基準 (2 度以下 ) 」というのは書かなくてもよいことであって、そもそも水道法令で守りなさいとなっていることなのです。そういうことですので、むしろこれにこだわるのではなくて、こだわらなければいけないのは、今はレベル 4 については、濁度 0.1 度は守りなさいとなっているのですけれども、その選択肢か、あるいは、何らかのろ過設備を入れて、かつ UV 、どちらを選択してもいいですよという、そういったことでどうでしょうかということです。


○秋葉座長 そうですね、
2 度の表記が少し先走ってしまっているような感じがあります。


○泉山委員 
2 度になぜこだわっているかというと、 1996 年の事故のときに、 2 度以下であれば別に凝集剤は使わなくていいではないかという風潮があったので、非常に気になる数字なのです。これは質問ですけれども、この資料 3 のろ過設備に急速ろ過が書いてありますが、これは凝集剤の使用は必須になっているのでしょうか。それとも 2 度を下回っているから、凝集剤は省略していいということになってしまうのでしょうか。もし省略していいということになると、事故当時と全く同じことになってしまって、嫌だなと思って気になっているところです。


○東水道水質管理官 そこは別の議論のところですが、我々としては濁度管理は基本だという考えの下に、急速ろ過であっても必ず凝集剤は必要だという考えの下に、今、書いています。また別の議論かと思います。


○泉山委員 凝集剤は必要ということですね。ありがとうございます。


○秋葉座長 いかがでしょうか。結局、凝集剤を添加して凝集沈殿、ろ過を行い、
UV というシステムということですね。今、異常気象による高濁度原水あるいはプランクトン、ピコプランクトンが発生しますと、 0.1 を目標値とするところは難しいところもある。そういったところでは選択肢として UV も適用もあるということです。当然、 0.1 度を守れるところは 0.1 度を守っていくということです。

 結局、この指針が策定されて 10 年経過したわけですが、当時は地表水の UV 適用について十分な知見がなかったわけです。今、世界的にも、実証的な研究が進んでいますし、研究班でも3年間検討し、効果が認められました。諸外国においては地表水で適用するのが逆に一般的といいましょうか、そういう国もあるということですね。

 いろいろと御意見が出ましたが、事務局案として、 1 の濁度2度というのは、水質基準値の 2 度ということでよろしいですよね。


○東水道水質管理官 はい。


○秋葉座長 水質基準値
2 度を見直しとなりますと、別の委員会でお諮りすることになります。ろ過水濁度 2 度でいいということではないわけです。


○東水道水質管理官 そういうことではないですね。


○橋本委員 蒸し返すようで申し訳ないのですけれども、公平性の観点というのはもちろんあるとは思うのですが、現状で維持できている所に、この基準が例えば見直されたときに、その現状を緩和するのではないのだというようなニュアンスが入っていたほうが、私はいいと思うのです。今、対策できていない所に付加的にこういう方法もあると。でも現状で
0.1 度が維持できている所が、やはり 2 度に戻していいのだという話ではないのだというのを、少し何かそういう表現はあるべきかなと思うのですが、どうでしょうか。


○東水道水質管理官 そこは非常に難しいところでして、対策指針上、曖昧な表現にすると、やはり受け取る側の水道事業者は、では緩くてもいいのだなという、そちらに捉えられがちになってしまうのかなと思っています。やはり指針としては、どちらか明確に書かざるを得ないかなとは思っています。というのは、
1 つ例がありまして、今の対策指針でも、先ほど御説明しました UV をマルチバリアで入れてもいいというのは、今の指針の 4 ページの四角の上に、「浄水処理の安全性を一層高めるために、ろ過池等の出口の濁度を 0.1 度以下に維持することが可能なろ過設備と紫外線処理設備を併用することとしてもよいこと」と書いているのですが、少しこれは曖昧な書き方なのです。これで実際にマルチプルバリアをやっている所は、やはりないのです。出てきていないということもありまして、こういう書き方だと、やはりやらなくてもいいのではないかと捉えられかねないと思っていまして、いちばん書き方が難しいところですけれども。確かに、そのようなメッセージとして、そういったできる限り濁度 0.1 を目指すというようなことを書いてもいいのですが、そう書くと、やらなくてもいいのだなと捉えられるのも問題になると思っていまして、その辺もし先生方で何かお知恵がありましたら御意見を頂きたいと思います。


○秋葉座長 橋本委員、いかがですか。


○橋本委員 ですから、例えば、一律
0.1 度ではなくて、全体のある期間の中での何%が 0.1 度を満たすようにとかというような表現もあるのかなという、結局、やはり降雨とか何かしらの濁度が上がるようなイベントがあると、どうしてもなかなか 0.1 度を守れないというのは、大きい所でも小さい所でもあると思うのです。そういう所に対しては、それをまた、どこに線を引くかというのは難しいのですけれども、そのパーセンテージが余りにも高いような所であれば、 UV は積極的に導入しなさいだとか、若しくは、それが余りないような所であれば 0.1 を維持、例えば 95 %が守られているのであれば 0.1 度の維持とみなすだとか、そういう方法もあるとは思います。 UV だけではなくて、濁度管理という意味で、そういう方法も少し考えてみたらいいと思うのですが。


○船坂委員 私もその点はそう思うのですけれども、そうすると、このレベル
3 はどうなるのですか。レベル 3 の表現はこのまま残るのですか。 0.1 度以下で又は UV 設備。


○東水道水質管理官 今のところは変えるつもりはないです。


○船坂委員 そうすると、この指針の中で矛盾が出てくるのではないですか、というか曖昧さが。レベル
4 が濁度 2 度で、レベル 3 0.1 度ということでしょう。そのあたりはどうなるのですか。


○田中係長 レベル
3 は今も A B 、いずれかなので、 0.1 か若しくは紫外線となっています。


○船坂委員 そうなのですが。レベル
3 0.1 度で、レベル 4 2 度になるわけでしょう。


○秋葉座長 レベル
3 4 は、ただ地表水か地下水の差ですからね。


○船坂委員 だからレベル
3 とレベル 4 が一緒になるということですよね。レベル 3 がなくなるのですね


○田中係長 ただ、レベル
3 の紫外線の場合はろ過を義務付けていないです。レベル 4 の場合はろ過プラス UV です。レベル 3 の場合はろ過をしないで UV が認められています。


○船坂委員 ということですよね。


○田中係長 なので、紫外線を当てる前の条件としてレベル
3 とレベル 4 で違うという提案です。


○秋葉座長 レベル
4 はろ過後に UV ということですよね。


○船坂委員 そうですね、レベル
4 はね。そういうことになるのですけれども、やはり先ほども言いましたように、最終的な水の安全性の面からは不安が残ります。先ほどのデータはファージの MS2 の試験結果ですが、 UV 計による流水系での実証実験のデータというのはあるのでしょうか。


○島崎委員 先ほどというのは、この厚労科研のほうでということですか。


○船坂委員 はい。


○島崎委員 そうしますと、紹介は時間の関係で割愛したのですけれども、先ほどの資料
2 20 ページの (3) で、流水式の紫外線照射槽の性能評価を神子先生にやっていただいたかと思います。結論としては一緒ということでよろしかったでしょうか。


○船坂委員 ちょっと分かりにくいので説明してもらえますか。


○神子氏 すみません、今、もしかしてクリプトに対する流水試験の結果があるかと聞かれたのですが、多分、世界的にないと思います。


○船坂委員 クリプト、ジアルジアに対する流水系での実証実験のデータです。


○神子氏 多分、一番詳しくやっていたとして、橋本先生がやっていたかなというぐらいだと思いますけれど、ないですよね。


○橋本委員 ないです、ないと思います。ついでにいいですか。ちょっと気になったのは
MS2 ですよね、このデータがあって、クリプトと MS2 との関係性というのは少し気にはなるのですけれども。


○神子氏 その辺、私も、今、その話が出たので、今回の改定で気になることを申し上げたいと思います。
UV を入れるか入れないかという話の後に、入れるとしてどの程度の UV を入れたらいいのかということが、この対策指針の前のバージョンから気になっているのは、「紫外線照射槽を通過する水量の 95 %以上に対して、紫外線 (253.7nm 付近 ) の照射量を常時 10mJ/cm2 以上確保できること」とあるのですが、これだけで読むと 95 %に無限に紫外線を当てて、 5 %は当てないでも OK ですかという質問が生じるので、そうするとクリプトの log 不活化は 5 %しかないので、 1. 幾つぐらいしかなくなってしまうのです。

 それと、この設備整備に対する留意事項のところに、「水流の偏りのない、所定の滞留時間が得られる構造のものであること」とかいろいろ書かれているので、併せ読むと分かるのですけれども、これはそういう意味では、装置をどのようなものを作ればいいのかということに関しては、とても分かりやすいものだと思うのですが、それをどのように達成するのかというところまで紫外線照射槽を作るというか、それを、入れる人あるいは作る人がちゃんと分かるように、例えばクリプトを 3log 不活化できる能力を備えていることですとか、そのようにしていただくのもいいかなと思います。そうすると、 253.7nm 付近の何ミリジュール数なども入れなくて済むし、いろいろと検討するのであればそういうところも考えていただければ有り難いかなと思います。


○秋葉座長 よろしいでしょうか。


○東水道水質管理官 今、神子先生がおっしゃるように、ここの
1 の書きぶりは、イコール、クリプトを 99.9 %不活化するものということで捉えていましたが、表現ぶりには確かにそういう御指摘がありますので、もし UV を導入するのであれば、併せて修正は必要と考えています。


○秋葉座長 そのことにつきましては、これから検討していくということでしょうか。そのほか何かありますでしょうか。


○船坂委員 くどいようですけれども、やはり先ほども言いましたように、
MS2 の実験データはありますけれども、実証実験としての、 UV による流水系の実験データがあれば、より安全性に傾くのではないかということで、是非やっていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。


○神子氏 それはクリプトの最終的な不活化率を求めるところに、かなり大きな困難が生じると思うのですが、厚労省が何千万円か用意していただければ誰かできると思いますが、ちょっとそこについては世界的にどうなのでしょう、橋本先生などはお詳しくないですか。


○橋本委員 最近のデータをフォローしていないですけれども、恐らく流水系でというのはなくて、紫外線の照射量がきちんとどこでも
95 %行き渡っているのか、そういう形での評価でしかできないのではないかと。そもそもクリプト自体が大きい槽の中で均一に撹拌させるというのが困難だと思いますので、そこの試験はなかなか難しいと思います。ファージのようにはいかないかもしれないです。


○泉山委員 代わりの方法として、今ちょっと思い付いたのですが、世界中で紫外線の当たったクリプトを飲んでいる人たちが、実際にいるわけですよね。その人たちは何個飲んでいて、どうなっているか確認したらいかがでしょうか。


○秋葉座長 泉山委員がおっしゃるには、照射して、それが不活化したかどうかというのを確認したいということですか。


○泉山委員 海外で実際に紫外線照射が導入されているということは、クリプトを流してしまっているわけですよね。その水の中にはクリプトが何個入っていると。それは紫外線が当たっていると。それで地域住民の方々が飲んでいると。その方々はどうなっているのだろうというのが気になりました。


○秋葉座長 不活化していますけれども、クリプト自体は残ります。それを飲んでいる人たちがどうなっているということでしょうか。


○田中係長 実績みたいなものですね。


○泉山委員 そうです。


○秋葉座長 違った見方になるとおもいますが。


○神子氏 それというのは、お医者さんの領域ですかね。いわゆる
UV に入る前のクリプトの数を数えておいて、 UV を通ったときに何個出ましたと。例えば 99.9 %だったら、そのクリプト濃度が分かって、それをどの程度飲んでというのと、それから先の何か疫学調査みたいなことをすることになるのでしょうか。


○島崎委員 疫学調査のようなイメージでしょうか。


○泉山委員 疫学調査というよりは。浄水場ではクリプトの検査を定期的にされていると思うのですけれども、そうすると濃度が分かりますよね。紫外線の線量は
10mJ とか 40mJ とか当てているわけですよね。その数字があれば、状況が何となく分かるのではないかと想像しました。


○神子氏 クリプトスポリジウムの濃度が一定しているのであれば、その調査は意味があるかもしれないのですが、多分、最大の濃度が幾つだからという形で
UV ドーズを決 めているのではなかったかと思います。


○泉山委員 リスクの大部分は最大の数値のほうで決まってくると思うので、その最大の数値のほうで確認をしたらいいのかなと。もちろん平均値とか分布も分かれば、もっといいわけですけれども。


○島崎委員 海外事例として参考になるかどうか、泉山先生は御存じかとは思いますが、資料
2 27 ページ目に、イギリスの Wales の北西地域で、 2005 年秋にクリプトスポリジウムの集団感染が発生したとあります。ここでは要は凝集剤を使用せずに急速ろ過をしていて、水源の上流には下水処理場もあるのになぜ凝集剤を使っていなかったのか疑問ではあるのですが、当時の Wales には実は浄水中のクリプトスボリジウム基準値があって、何個以下なら問題ないという、結構とんでもない基準値がありまして、それで実際にクリプトによる集団感染が発生した事例です。

 この事例のフォローアップ調査があれば、この浄水場には既に紫外線が入っていますので、その後どのような濃度でクリプトが浄水中に存在するか、あるいはその後の住民に対する健康影響、恐らくないだろうとは思うのですが、紫外線導入による公衆衛生への介入結果については、ここのデータで明らかになろうかと思います。同様の他国の事例、スウェーデンでオゾンを入れているけれども何万人もの集団感染が生じ、その後で紫外線を導入した事例も、事後調査が行われたのではないかと思います。


○秋葉座長 そうですね。そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。


○黒木委員 
1 つよろしいでしょうか。紫外線照射の条件が幾つか付いていたり、あるいは強度計を備えているというようなことで書かれていますけれども、この紫外線装置が普及したときに一番懸念されるのは、管理が徹底してやられているかどうかというところですので、その辺の懸念される材料が何かあるかどうかというところを、もしありましたら教えていただきたい。


○秋葉座長 
UV の適用で懸念すべきところですね。


○島崎委員 クリプトスポリジウム対策指針のほうに、留意事項は書かれていますし、今回の厚労科研でも、実際に紫外線施設が導入されている所で、実際の運用上の課題を調査しております。幾つかありまして、
1 つは、日本に限らないと思いますが、非常に建屋内の結露が発生しやすい点です。紫外線の線量モニターや計装機器などが場合によっては結露で駄目になってしまう。これは当初の設計時には想定していなくて、急遽、後付けでエアコンを入れたという所が少なからずあったということです。

 もう 1 つは、本当は原水濁度の変動に応じて、紫外線の照射強度等も変動させられればいいのですが、実態としては、小規模の施設が多いため、複数系統の紫外線ランプがあっても両方とも常時点灯して、常時ランプ強度も変えずに運用をしている所が大半でした。要は、実際に人手が少ないので、できるだけメンテナンスフリーに近いような形で運用されていまして、また、紫外線ランプも高価なので、いかに寿命を延ばせられるか、どこまで紫外線の強度が下がっても使い続けられるかという点を懸念されているケースが複数ありました。これは当然、紫外線の線量が下がれば不活化の効率は落ちてしまいますので、そのような人手やコストの制約には気を付けなければいけないと考えている次第です。


○吉田委員 紫外線の設備を導入するに当たっての話なのですが、これは結局、レベル
4 の場合というのは、リスクがあるということでレベル 4 なわけですけれども、そうすると、その原水の検査とかは変わってくるという解釈でよろしいのでしょうか。それは海外などはどうなっているのでしょうか。


○東水道水質管理官 今の検査の考え方、
4 ページ目のところに書いていますけれども、必要であれば変更しますが、まだそこは考えていないところです。


○田中係長 
UV を導入するからどうするという話ではないです。


○吉田委員 
UV になってくると、逆に今の濁度管理などは UV が入りますよね。当然そちらはリスクが高い原水ということで、今、処理していない所に UV を取りあえず置くということですよね。そうすると、もともとレベル 3 よりも原水のほうのリスクが高いわけですから、 UV がちゃんと効いているかどうかというのをモニターするための検査というのは、当然ながら変わってくるのではないかという。


○田中係長 原水の指標菌やクリプトの検査に関しては、
UV を入れている施設か、そうでない施設かというのは、区別はないです。それとは別に指針の見直しとして、原水等の検査が今のままでいいかどうかというのは議論になるとは思います。


○島崎委員 それに加えて、研究班の成果としては、紫外線透過率が原水でどれだけ変動するか、また、ろ過水なり紫外線を当てる直前の段階で、常時
75 %以上の透過率が確保できているかどうかの確認を、よりきめ細やかにやっていく必要があると記しております。先ほどのカナダの事例でも、紫外線透過率は常時モニタリングしていましたので、そこは地表水・地下水に限らず必要ということだと思います。


○黒木委員 
1 つよろしいですか。先ほどの管理の話の続きですが、何かあったときの、例えば後追い調査をするようなときに、やはりその記録がきちんとしていないと、全く分からない状況になってしまうので、それをきちんと記録を付ける。どのぐらいの頻度で記録を付けるかというようなこともありますので、どこまで技術的な助言ができるか難しいところではあると思うのですけれども、人手不足なので管理ができないから紫外線を入れますという話だと、では、記録もやはり付けられないということになってしまいかねないような気もします。ですから、そこのところを何らかの形できちんと記録を付けるのだというようなことまで、助言ができればと思います。


○秋葉座長 黒木委員がおっしゃるのは紫外線の照射であるとか、濁度については常時測定が可能な濁度計を備えることが、ここにきちんと書いてあります。それ以外にも効果を保持するための監視ということでしょうか。


○黒木委員 それと強度が幾つあるかという記録も、きちんと付けなければいけないでしょうし、ランプをいつ交換したとか、そういったところまで細かく記録をするべきだと思いますので。


○秋葉座長 強度計を備えるということは、ここに書かれております。それをきちんと記録として残すということですね。


○東水道水質管理官 そこも指針の中の
7 ページにもありますが、必要であれば、また明確にそういうことも書いていきたいなと。


○田中係長 黒木先生がおっしゃったのは、紫外線照射というのは跡が残らないというか、塩素と違って残留しないので、そのときにきちんと処理できていたという証拠は非常に重要であるという、そういう御趣旨での御意見だったと思うのですけれども、クリプト対策指針にも書いてありますし、別途、紫外線照射に関する事務連絡というのも当方で発出しております。そちらにも管理の方法等についての記載がありますので、もちろんこれを併せて見直すということも当然考えておりますが、そういった意味でも紫外線照射に対する対策、きちんと照射をし続けるというような対策というのは、今までも取っていましたし、当然これからも取り続ける予定であります。


○秋葉座長 よろしいでしょうか。そのほか御意見はよろしいですか。いろいろな意見が出てまいりましたけれども、今回の議論を踏まえまして、次回、この対策の指針案につきまして、先ほど出たような御意見に考慮に入れて、事務局側から次回、御提示いただくということでよろしいでしょうか。そのほか事務局から連絡事項はありますでしょうか。


○東水道水質管理官 今日、御議論いただきました中でも、いろいろ解決できなかった問題も多々ありましたので、私どもだけで調べられることは調べますし、また先生方に御協力いただきながら調べなければいけない部分もありました。あとは大垣班の先生方にも御協力いただきながら、次回、地表水に
UV を導入ということの方向性について、また御議論いただきたいと思っています。


○春日委員 先ほど申し上げたことと同じなのですが、濁度
0.1 度を遵守することで制御してきたという経験則は尊重しつつ、それ自体が絶対的な基準になるものではないと思います。

 濁度 0.1 度を守ることで、本当にどれだけの微生物リスクが低減できていたのかということが明瞭でなかった中で、今回出てきた提案というのは、濁度という代替指標ではなく、より直接的に微生物の不活化に基づいております。リスクベースの水道水質管理に転換していく上では、大事なデータであると認識しています。


○秋葉座長 どうもありがとうございます。よろしいでしょうか。


○田中係長 最後に補足事項です。本日の議事録については、後日、事務局より送付いたしますので、皆様御確認のほう、よろしくお願いいたします。


○秋葉座長 では、これにて会議を終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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