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2018年1月30日 第3回国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会 議事録

○日時

平成30年1月30日(火) 15:00~16:48


○場所

厚生労働省政策統括官(統計・情報政策担当)会議室
(中央合同庁舎5号館21階11号室)


○出席者

構成員(五十音順、敬称略、◎:座長)

  石井 太
  稲葉 由之
  津谷 典子
◎廣松 毅

構成員以外の出席者

 西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)

事務局

  酒光政策統括官(統計・情報政策担当)
  中井参事官(企画調整担当)
  中村世帯統計室長
  北世帯統計室国民生活基礎統計専門官
  大村人口動態・保健社会統計室室長補佐

○議題

(1)国民生活基礎調査の推計方法等に係る検証・検討
(2)郵送回収(試験調査)の結果の検証
(3)その他

○議事

1.開会

○中村室長
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第3回の研究会を開催させていただきます。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。本日は全員出席ということです。

 それでは、以後の進行につきましては、廣松先生によろしくお願いいたします。

2.議事

(1)国民生活基礎調査の推計方法等に係る検証・検討

○廣松座長
 では、議事次第にのっとりまして議事を進めたいと思います。本日は大きく3つの議事が予定されておりますが、そのうち最初の国民生活基礎調査の推計方法等に係る検証・検討について、御審議をいただきたいと思います。また、この議題につきましては、本日と第2回目の資料も含めて当研究会として評価を行いたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

 それでは、まず資料について事務局から説明をお願いいたします。

○みずほ情報総研
 それでは、資料1-1と資料1-2、前回の研究会で御意見いただきました点について追加で集計を行いましたので、御説明させていただきます。

 資料1-1は、各推計方法における平均所得金額の検証について、3通りの試算をした結果、現行方法に比べて各試算のほうが平均所得が低く出る傾向があったことについて、より詳細に検証するということで、ブートストラップという手法を用いてシミュレーションを行っております。

 ブートストラップは、母集団から無作為に復元、抽出してデータを取り直し、もう一度、取り直したデータで平均等を取るという手法です。つまり、1回試行するごとにサンプルデータが組みかわって、新しい平均の値が出てきます。これを 200 回繰り返し、得られた 200 個の平均所得がどのように分布しているかということを見たということです。今回の場合は、平均所得ですので、所得票の調査単位区を復元、抽出して抜き直して、その都度、拡大乗数等を全て作り直して集計しました。

 その結果が、「 H22 ブートストラップ 200 回 平均所得」ということで、1つ目の上の表は、現行と3つの試算を比べたときに、全部で 200 回のうち何回現行の平均値を超えたかというところで、この場合ですと、 200 回行ったうち、試算2と試算 は、全て現行のほうが大きな値が出ました。そして、試算 はわずか8回現行を上回ったことがありましたが、 200 回中 192 回は現行のほうが平均所得は高いという結果です。

 具体的にどのような集計結果になったかというのは、その下の表の平均所得のところで代表値の集計結果を示しています。左から、現行、試算 、試算 、試算 3と それぞれありますけれども、まず一番上の行の平均所得というのは 200 回試行した場合の平均所得の平均値ということで、4つ並んでおります。その下の行は、現行と各試算との差で、最小所得と最大所得とあるのは、その 200 回のうちの一番低かった値と一番高かった値、要は、最小値と最大値です。青色の網がけをしているところが、前回の研究会でお出しした全件を使用して普通に計算した場合の平均所得であり、こちらと一番上の行の平均所得、 200 回ブートストラップをやった場合の結果は、現行と試算 は近い値まで収束しておりますが、試算 が若干高めに出ているという状況です。

 試算 、試算 、試算 がそれぞれどういった方法だったかというのは欄の下に書いておりまして、試算 が単位区別回答世帯数による補正、試算 H22 国勢調査ベースの世帯数による補正、試算 は所得票の有効回答率による補正です。この試算の3通りの方法は、前回研究会資料、さらに 19 年データで実施したときと変わっておりません。

 具体的にグラフで示したものを、次の2ページと3ページに4枚掲載しております。2ページ目の上のヒストグラムは、平成 22 年ブートストラップ 200 回の平均所得分布ということで、こちらは 200 回の結果をバンドに区切ってヒストグラムに示したもので、青色の棒が現行のもの、オレンジ色が試算 、黄色が試算2で、茶色が試算 です。御覧になって分かるとおり、現行のバンドは、 545 万以上 550 万未満のところがピークで、次がその1つ上の階級というところに見えています。試算 は、ピークの位置は同じところに出ていますけれども、次に高いのは1つ下の階級ということで、やはり現行よりも若干低めのところに分布していると思われます。試算 と試算 は、明らかに現行に比べて低いところにピークが出ておりまして、 530 万以上 535 万未満のあたりが試算 のピークということで、試算 も、そこと、もう1つ下の階級に山ができているという形です。

 このページの下のグラフは、上のグラフから単純に青い棒グラフの現行の値を引いた差分をプロットしているものであって、こちらで見ますと、やはり試算 と試算 が現行のピークのところを境に、高いところではほとんど出ておらず、低いところに多く出ているという分布が見られます。

 続きまして3ページの2つのグラフですけれども、3ページの上のグラフは、 200 回ブートストラップを行ったときに、1回1回の結果に着目して、1回の試行のときに計算した現行の値と試算 、試算 、試算 の差を計算し、それがどういうふうに分布しているかというのをプロットしたものです。こちらは0以上5未満というところに、わずかに試算 が出ていますけれども、これが試算 で8回分現行を上回ったところのみで、それ以外に基本的には、マイナスの値、現行よりも低いところに、このように分布しております。

 3ページの下のプロットした図ですけれども、こちらは 200 回ブートストラップを行った結果を、横軸を現行の場合の平均所得、縦軸を各試算の場合の平均所得に取ってプロットしたものでありまして、この3色の点が全部で 200 個プロットされているということです。右上がりの線が引いてありますのは、同じ金額を結んだ線、 45 度ではないですけれども、 530 万から 570 万まで右に引いている線で、ここより上にプロットされたということは、現行よりも試算のほうが高い結果が出たということです。この線を超えたのは試算 の場合の上の8つの点のみで、ほかは現行よりも低いところに分布しているものです。こちらが一番分かりやすいですけれども、試算 、試算 、試算3の順に、現行に比べて低い結果が見られるという形でした。

 ブートストラップの試行結果については以上です。

○廣松座長
 ありがとうございました。前回御指摘があったものを踏まえて、ブートスラップという方法で再度検討をいただきました。 では、次の資料1-2の説明をお願いします。

○みずほ情報総研
 では、もう1つの資料1-2の説明を続けてさせていただきます。資料1-2は、「国勢調査との乖離にかかる要因分析について」ということで、こちらも前回の集計結果を御覧いただいた際に、特に、試算
、国勢調査ベース世帯数による補正を行った試算と、実際に国勢調査の結果を比較したときに、世帯構造が「ひとり親と未婚の子のみの世帯」は、試算 の場合と国勢調査の場合でそれほど開きがなく、試算2が 455 7 千世帯、国勢調査では 452 3 千世帯という結果であったのに対して、それに近いであろう、世帯類型が母子世帯の場合は、試算 のときに 102 8 千世帯、国勢調査では 75 6 千世帯と開きがあったというところで、この原因を調査したものです。

 前回のときにも説明がありましたけれども、具体的には、「ひとり親と未婚の子のみの世帯」というのは、世帯類型ではその構成が異なっておりまして、この1ページ目の円グラフにあるとおり、世帯構造で言うところの「ひとり親と未婚の子のみの世帯」の内訳を見ますと、実際には「母子世帯」と「父子世帯」はあわせて4分の1程度しか含まれておらず、世帯類型で言うと、「その他の世帯」のほうが 73.6 %と大部分を占めておりました。

 これは、どんな世帯かといいますと、ひとり親と未婚の子のみではあるけれども、いわゆる親の年齢が 65 歳を超えているような高齢の親とその子供というようなケースで、母子世帯や父子世帯という定義からは外れるけれども、実はこちらのひとり親と未婚の子のみという構造のものが大多数を占めていたということでした。結論から申し上げますと、こういう構成の世帯向けの乗率を母子世帯や父子世帯に掛けてしまっていたということが乖離の原因です。

 裏面の2ページ目、具体的に前回の結果の抜粋を載せておりますけれども、推計数のところで世帯構造でいうと「ひとり親と未婚の子のみの世帯」は現行では 318 万世帯、これが試算 では 455 7 千世帯で、国勢調査では 452 3 千世帯ということで、現行に比べれば試算 というのは、かなり大きく膨らますような乗数を掛けているところでして、試算 というのは、あくまで世帯構造と世帯主の年齢階級別に作った乗数を掛けておりますので、現行に比べて大きく膨らませる乗数を同じように母子世帯にも掛けていました。母子世帯の場合は、現行は 70 8 千世帯で、国勢調査が 75 6 千世帯でしたので、現行の乗数でもそれほど大きな差がなかったところですけれども、それに対して、ひとり親のほうと同じように膨らませる試算 の乗数を掛けると、逆にこちらは過大になってしまって、国勢調査の結果とは乖離が出るということでした。

 ですので、こちらをまとめますと、そもそも試算 の計算方法が世帯構造ごとに作られているというところで、これが世帯類型でみると必ずしも一致していなかったということが乖離の原因だと分析しております。

 資料1-2の説明は以上です。

○廣松座長
 ありがとうございました。それでは、資料1-1と資料1-2とでは性格が違いますので、まず資料1-1のほうで各推計方法における平均所得額の乖離について、御質問、御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 今回の試算は、試算 から は、いずれも過少になってしまいますね。

 どうぞ。

○津谷委員
 もし間違えていたら申しわけないのですが、この資料の1-1と1-2は関連があると思います。まず、座長がおっしゃったように、現行に比べて試算
はいずれも低い。これは言いかえれば、現行では低所得層がアンダーリプレゼントされているということになります。逆に言うと、所得の高い層がオーバーリプレゼントされている。どちらでもいいのですが、乖離は試算 で特に大きいということが言えるのかと思います。

 試算 については、所得票の有効回答率ですので、やはり所得が低いところの回答率が低い。それを逆に乗じますので、当然、低いところが大きく出てくるという結果であろうと私は思います。

 試算 のほうは、先ほど見せていただいたように、母子家庭とひとり親と未婚の子のみの世帯というのはほぼ同じだとして乗率を掛けていたのでこうなってしまった。つまり、母子家庭が現実よりもはるかに大きくブローアップされたいうことであろうと思います。本来4分の1しかないものが、全体として大体4倍ぐらいとして推計されたということなので。母子世帯は多くの場合小さなお子さんを抱えたお母さんの家庭ですので、おそらくその世帯所得は、その他のひとり親と未婚の子のみの世帯よりも低い傾向があります。さきほど「ひとり親と未婚の子のみの世帯」の親は高齢者の場合が多いとおっしゃいましたけれども、おそらく親が 50 代から 60 代の前半で、未婚のお子さんが 20 代から 30 代、つまり親と子の両方が生産年齢で、両方が働いている場合が結構あり、その場合には世帯所得は結構高くなってしまうということがあるのではないでしょうか。それらを全部ひっくるめてひとり親と未婚の子のみの世帯として乗率を掛けていたため、当然所得の分布は下に動くという結果が出てきていると思います。

 そして、この試算 では、調査単位区別の回答世帯数で補正をされて、低くは出ていますけれども、ほかの2つの試算ほどは大きく下に押し下げられていないという結果が出ています。ただ、この結果を調査にどう反映するのかということについて考えねばなりません。これはあくまでも研究会ですので、こういう結果が出たということについて話し合い、それを集約することが目的のひとつであり、特にひとり親と未婚の子のみの世帯と母子世帯は同じではないということが分かったことは、考えてみれば当たり前なのですけれども、有用であったと思います。

 また、これは当然予想されていたことですけれども、低所得層は回答率がやはり相当低いことも示されました。ですので、さまざまな乗数を掛けて補正をしたデータを調査報告書に含めるということは適切ではないと思います。出てきた結果は結果として公表すべきです。これ以上複雑なことは、研究者のやるべき領域だと思いますが、この調査実施主体である厚労省がこのようにいろいろと試算をされ、それに関してさまざまな情報や知識を得て、それを今後の調査に反映させていくことが大切です。調査単位区別の回答世帯数による補正と現行の補正を出して、これらの補正によるとこのような結果が出るということを公表されるぐらいはいいと思いますが、それ以上のことになると、理解するのが難しい複雑なものになってしまうのではないでしょうか。むしろここでは、調査を実施する際に、回答率を上げる、特に低所得層の回答率を上げる努力をするとか、世帯類型に気をつけて実査やデータの集計を行う必要があるという示唆をここで得たと考えるのが適切ではないかと思います。これは私の個人的な意見です。

 以上です。

○廣松座長
 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。お願いします。

○稲葉委員
 資料1-1の3ページが、今回の検証について非常に分かりやすいグラフではないかと思いました。現行と試算
を比べますと明らかに違いが出ているということが分かりまして、ブートストラップを実施した意味が出てきていると感じました。

 続きまして、資料1-2の話につきましてですが、前回の研究会においても私は申し上げましたが、数値として随分違いが出てきてしまうというようなことで、それがもう少し細かく明らかになった結果ではないかと思います。試算 2のほうは、 「世帯主の年齢階級×世帯構造」という層を作っていますので、母子世帯のところだと年齢階級が低いというところで、ここの部分の乗数が大きな値になって、こういう結果になるということは類推できる話です。また、今回、こういった結果を見せていただきますと、先ほどの御指摘どおり国勢調査の結果と随分離れた結果を出すことになってしまうということで、問題点が明らかになったのではないかと思います。

 以上です。

○廣松座長
 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。では、石井委員、お願いします。

○石井委員
 試算2のところで、全件の平均とブートストラップの平均がややずれるという話があったと思うのですけれども、これはどういう理由で乖離しているのでしょうか。

○中村室長
 そこをどう評価したらいいのかが私どものほうも難しいなと思っていまして、試算
はそんなに差がないのですが、試算2だけがこういうふうに出るというのは、どう理解したらいいのかというところが、私ども悩んでいます。

○石井委員
 普通に考えると全体の平均の周りに分布するのが自然だと思うので、こういうことは起きにくい気がするのですけれども、試算
に対して、試算 のブートストラップのやり方が違うということはあるのですか。

○みずほ情報総研
 そこは基本的にはないですね。同じように抽出した結果を使って、全ての試算方法、要は、サンプルを全部洗いがえたような状態で一から作っていますので。そうなると、試算
の手法の中に原因があるのではないかとは思います。

○石井委員
 その可能性もありますよね。多分、試算
だけは国勢調査という合わせにいく対象があって、そこが試算 と違うところなので、それを合わせにいくメカニズムがあるために分布の出方が違っているという気もします。だとすると、そもそも推定方法としていいのかどうかということも考えなければいけないのではないかと思いました。

○西郷審議協力者
 表の見方から教えていただきたいところがあります。資料1-1の1ページの2つ目の表で、現行と試算
、試算 、試算 と書いてあって平均所得というところがあるのですけれども、これはフルサンプルを使った場合の平均所得なのか、それとも 200 回ブートストラップを繰り返した場合の平均値がここに書いてあるのか、どちらですか。

○みずほ情報総研
 後者です。前者は一番下の青い網かけです。

○西郷審議協力者
 なるほど。ここでずれているということですよね。

○津谷委員
 これもちょっとずれています。なぜかなと思います。

○中村室長
 この試算
の場合は、 200 回、毎回、世帯主年齢階級と世帯構造の拡大乗数をもう一回作り直すので、そういうのが原因というのは考えられます。

○津谷委員
 要は、国勢調査という国民生活基礎調査以外の大規模な調査に準拠して推計を繰り返すと、乖離が大きくなるということを示していると思います。その他の推計は国民生活基礎調査に関係する情報の中でのブートストラップですから、おそらくそういうところもあるのかなと思います。石井委員もおっしゃっていましたけれども、確かにブートストラップの平均との差がこれだけ大きいですものね。

○廣松座長
 大変悩ましいところですが、確かに試算
に関しては、これは先ほどおっしゃったとおり、低所得層の回答率が悪いという原因が比較的大きくて、こういう結果になったということですね。

○津谷委員
 ということで、こうなってしまうという感じです。これは1つの例です。

○西郷審議協力者
 あとは3ページの散布図のところを見ていただくと、もし試算の方法で偏りの入り方が違うというだけであれば、これは全部、3つの試算はほぼ並行線になりそうですけれども、これはスケールが縦と横で同じではないから、この黒い線で描いてあるのが、多分
45 度線という意味ですよね。なので、ちょっと視覚的に私が錯覚している恐れもあるのですけれども、試算 というのは、明らかに傾きが違うような気がするのですね。

○津谷委員
 確かに違いますね。試算1がこうで、試算
がちょっと平たくて、試算 はもう少し急なような感じがします。

○西郷審議協力者
 ええ。だから、サンプルの取り方によって、傾きに違いがあるのは当然なのか。

○津谷委員
 ある程度はですね。

○西郷審議協力者
 ただ、一定の傾向があるということですよね。だから、試算
のほうは試算1よりも傾きの偏りの入り方というのが違うのかどうなのか、ちょっとこのままだと悪いというか。

○津谷委員
 ただ、この分布が全く同じ並行になるということはおそらく考えられないと思います。

○西郷審議協力者
 そうですね。

○津谷委員
 ただ、やはり試算3の傾きが一番急で、他はそれほどもなくて、これはちょっと横に長いので、もう少し場所があるので縦に引き伸ばしていただくとビジュアル的にも見やすかったかなと思います。ただ、ディストリビューションとしては、並行ではないですけれども、全体的にそういう
傾向が見られます

○西郷審議協力者
 あとは、ばらつきというか、分散を見たときには、試算
が一番大きいことになりますか。

○津谷委員
 確かにそうですね。

○西郷審議協力者
 これは多分数値として計算してあるわけですね。

○大村室長補佐
 あります。

○津谷委員 最小二乗法による値はどれくらいなのでしょうか。

○西郷審議協力者
 ブートストラップでやっているので、分散を推定することができますので、そうすると、試算
が、一番ばらつきが大きいということですかね。

○酒光政策統括官
 今計算したのはありますか。

○大村室長補佐
 あります。

○西郷審議協力者
 では、教えてください。

○大村室長補佐
 現行の分散が
25.25 、試算 19.25

○西郷審議協力者
 それは標準偏差ですか。

○大村室長補佐
 分散です。ルートを取る前です。現行が
25.25 、試算 19.25 、試算 18.01 、試算 43.49 です。

○津谷委員
 やはりそうですか。

○廣松座長
 最初に申し上げましたとおり、この平均所得金額の検証に関して、現行も含めて4種類の試算値を出していただいたわけです。何らかの形で評価をしなければならないのですが、いかがでしょうか。おそらく試算
は、やはりかなり偏りというか、回答率に差があるということからいうと、ちょっと現実的ではないという気がします。試算 は、国勢調査に合わせにいっているのにこれだけ差が出てしまうと、本当に悩ましいですね。

○津谷委員
 6万円の差は大きいと思います。

○廣松座長
 西郷先生、これは本調査自体が集落抽出をやっているということ何か関係がありますか。

○西郷審議協力者
 どうでしょうかね。

○津谷委員
 試算
1で は、単位区別の回答世帯数を補正しているわけです。

○廣松座長
 特に試算2に関して、どうですかね。

○津谷委員
 この所得票のデータは、例えば貧困率とかの計算にも使われていますね。

○中村室長
 はい。大規模の年ですけれども。ですから、調査方法を変えたことの影響というのが仮に出てきたとすると、今回初めてというか、
24 年から 27 年にかけて所得が増えたことによって貧困率が下がったと言っているのですが、次がどうなるかというのがまだ見えないです。そのときに上がったり下がったりしたときに、今までのやり方を踏襲すれば、そこは比較できますけれども、仮に方法を変えたとすると、そこがまた難しい話になってしまいます。

○津谷委員
 時系列の継続性は大切です。どれぐらいそしてどのように説明すれば一般の方に分かりやすいかということも含めて、これは社会経済的に重要な指標なので慎重な対応が必要です。とは言え、明らかに現実を適切に反映していないという根拠なり示唆が得られるのであれば、やはり推計方法を変えないといけないのかなとも思いますが、これはなかなか難しい問題です。であるがゆえに、おそらく統計委員会でこれについてきちんと検討しろという提言が出ているわけですよね。

○廣松座長
 そうですね。今後の検討課題になっています。

○津谷委員
 でも、これをどうするのかということは、結構悩ましい課題だと思います。

○中村室長
 前回、平成
25 年調査の部会のときは、 19 年データで試算しましたが、どの方法をとっても補正しきれないと。やはり所得も低めに出ているというのが 19 年のデータでも分かったわけです。それを今回 22 年のデータでもう一度やってみると、そこでもはやはり補正がしきれないということ、また、今回やると、所得が前よりもより低く出るという結果が出てしまったということ。それで、どれかの方法を取るにしても、その妥当性をどう説明できるのかというところが非常に問題かと思っています。

○津谷委員
 結局補正しきれないということですので、現行のままの方が分かりやすいとも言えます。

○中村室長
 特に試算
は、国勢調査は5年に1回ですから間の年をどうするかというような問題もあります。例えば 27 年の国勢調査の結果と 27 年の国民生活基礎調査の関係でいうと、 27 年の国民生活基礎調査は、6月に調査をやって、翌年の6月、7月ぐらいに結果を出すわけです。国勢調査は 27 10 月に調査をやって、例えば世帯類型とか細かい集計が出るのが、もう国民生活基礎調査の公表の後になってしまいます。そうすると、国勢調査の結果を使えるのが 28 年の国民生活基礎調査からしか使えなくて、そうすると、 27 年はやはり 22 年の国勢調査でいかざるを得ない。そこを5年開いた情報のままで本当にやるのかというような問題も出てくるだろうと思っています。

○西郷審議協力者
 試算
に関しては、一種の事後層別を使っている形になるわけですね。外部の情報を使って母集団を作った から、 もしかしたら、もともとの推計が、偏りが入っている可能性もあるのかもしれないということです。

○津谷委員
 国勢調査がということですか。

○西郷審議協力者
 いいえ、推定値の作り方自体に偏りが入ってしまっているという可能性はあるのかもしれないです。ただ、必ず過大推定になるとか過少推定になるとか必ずどちらかに偏るということではなくて、無回答の置き方と事後層別の組み合わせによって、この場合にはどちらか過大推定になってしまっているのですかね。

○津谷委員
 試算が全体的に低く出てきていますね。

○西郷審議協力者
 そうですね。試算が随分低いということになります。

○廣松座長
 とにかく先ほど室長から説明があったとおり、これから、国民生活基礎調査と国勢調査とのタイミング等を考えると、今変えるというのはなかなか勇気が要るというか、平均所得の推計方法に関して変えるというのはちょっと勇気が要るというか、変えた理由を説明をどうするかということが難しいですね。

○津谷委員
 今後もし変えるとなれば、全員が納得しないまでも、大多数がやはりこちらのほうがよいと思うような説得力のある説明がないと変えることは難しいと思います。変えることについての費用対効果を考えると、特に費用は時系列の連続性が失われてしまうことです。現行のままだと高く出ているということはそうなのだろうと思うのですが、でも、変えるとなると、その変更について多数の人が納得するような説得力のある説明がないとなかなか難しいと思います。

 では、現行のままでいくのかというのですが、ここで3つの試算の結果を見せていただきましたけれども、これをベースに今変更するのはなかなか難しい。時間の経過とともに、乖離は前回よりも今回はより大きくなっているようですので、変更が必要であると考えることもできますが、現行と比べてこの3つの試算のうちのどれを選ぶのかということも難しい問題です。見た限りでは、試算 と試算 は難しいので、試算 かとも思いますが、やはりその際どういう説明をするのかという課題が今度は出てくるように思います。

○廣松座長
 そうですね。ちょっと保守的かもしれませんけれども、変えてみようかというところまで踏み切るのは難しいような気もしますね。

○津谷委員
 先ほどの繰り返しになりますが、ここでは、今変えるだけの強力なエビデンスは得られていないと思います。ただ、これらの試算を行うことによって得られた有用な知見がありますので、それを今後の国民生活基礎調査の実施、実査に生かすという形でおさめるのはいかがでしょうか。変えるための材料は今の段階ではまだ不足しているように、私は個人的には感じます。

○廣松座長
 先ほどちょっと触れられましたけれども、変えたとして相対的貧困率がどう変わるかというのも、これもまたちょっと読めませんよね。

 皆さん、いかがでしょうか。

 この研究会の検証結果としては、資料1-1、あるいは資料1-2もそうかもしれませんけれども、考慮すべき点はあるにしても、私は推計方法を変えるというところまではちょっといきにくいのではないかという気がいたします。その辺、私は前回のこの調査の諮問、答申の場にはいなかったものですから、そのときの雰囲気が分からないのですが。

○中村室長
 この3つのうちからどうしても選べという話ではなくて、もう一度
22 年データで数字を作って、研究会で有識者の御意見も伺った上で検討しなさいということです。

○廣松座長
 なるほど。その意味では、この研究会で検討した結果、まさにこれは津谷委員がおっしゃったように、変えるという積極的な証拠、検証結果は得られなかったという結論にせざるを得ないのではないでしょうか。
19 年データを使っても同じような傾向だったという御紹介ですけれども、 22 年でもほぼそれに似たような検証結果になったということですね。

○津谷委員
 むしろその傾向がより明確になりました。

○中村室長
 所得に関しては、より差が出たということです。

○廣松座長
 あまり迷っていてもしようがないので、資料1-1の平均所得の試算1、
、3に関して、どれかを特に優先して取るべきである、変えるべきであるという結論には至らなかったということでよろしいでしょうか。よろしゅうございますか。

 では、今回の研究会の評価としては、試算1から の結果について、大きく変えるべきであるという積極的な証拠は得られなかったという評価にしたいと思います。

 では、続きまして、資料1-2の母子家庭と、それからひとり親と未婚の子のみの世帯の数の差についてはは、先ほど説明はいただきました。

○中村室長
 前回の宿題ということではないですが、分析した結果を御紹介したということです。

○廣松座長
 これも、ここで言うひとり親と未婚の子のみの世帯と母子世帯というのを有効に分けられるかどうかの説明が必要でしょうか。

○中村室長 ですから、今でも、世帯構造と世帯類型という分類で両方出てきます。今回は、推計方法を世帯構造に合わせにいくと別なところに影響が出ますという例です。

○津谷委員
 働き方の区分についても正規雇用、非正規雇用をどう提示するかということについてもさまざまな定義があります。この定義の統一について、関係する複数の省が一同に集まって大変な作業をされたのですけれども、こういういろいろな区別、類型、カテゴリーは、その取扱いに気をつけないといけないということですね。

○酒光政策統括官
 いろいろな切り口がありますね。

○廣松座長
 そうですね。それでは、資料1及び2の検証結果につきましては、先ほど、申し上げましたような形で研究会の評価とさせていただきたいと思います。

 

(2)郵送回収(試験調査)の結果の検証

○廣松座長
 では、続きまして議題の2、郵送回収です。これは試験調査をやっていただいたわけですが、その結果の検証です。これについても評価をお願いしたいと思いますが、その前に資料2、3について御説明をお願いします。

○中村室長
 資料2を御覧ください。昨年実施いたしました調査の概要について御説明いたします。

 まず、試験調査の目的ですけれども、国民生活基礎調査の世帯票の回収率は、直近の 26 年から 28 年で見ますと、大体 78.7 77.6 %ということで、 80 %を少し切るぐらいということになっております。その中で面接不能率、調査員が行っても会えないというのが大体 14 %ぐらいあります。次に所得票の回収率は、この直近3年で見ますと 80.1 %から 73.7 %ということで、直近の大規模がちょっと低めに出ておりまして、面接不能というのが大体5~7%ぐらいということになっております。この回収率の低下の部分が、非標本誤差の拡大につながっているのではないかと考えております。

 このために、現在、調査員回収だけで実施しているわけですけれども、調査員回収自体は維持して、調査員が何回も訪問しても会えない世帯に対して郵送回収を取り入れることによって、回収率にどの程度のプラスαが見込めるかというようなことを検証するために試験調査をやりました。

 主な検証事項としましては、左側の調査方法のところに書いていますように、訪問回数の実態はどのぐらいになっているのか。真ん中のところで、実際に集まった回収率は、調査員回収と郵送回収のそれぞれに分けてどうなったのか。それと、記入率とか誤記入率みたいなもの、例えば郵送回収で集まったものが使いものになるのかどうかといったようなところを検証するということです。それとあわせて、参考程度ですけれども、一番右側に書いていますように、調査員とか自治体への調査方法等に関するアンケートを実施したということでして、これらの結果をこの研究会で評価をいただきたいということです。

 真ん中ほどの調査の概要ですけれども、まず対象は、平成 27 年の国勢調査区から、東京都の区部、それと熊本市を除く 19 の指定都市に対して、調査地区を抽出しております。

 調査方法と規模ですけれども、試験はA、B、2種類の試験をやっております。A、Bそれぞれ、東京都が3地区、それ以外の指定都市が各1地区で 19 ありますので、それぞれ 22 地区で調査をやっております。なお、この 22 地区というのは、同じ時期にやっております本体調査とは別の地区を抜いております。

 次に試験のAのほうですけれども、資料に「訪問回数制限なし」と書いておりますけれども、これは調査員が回収した調査票を保健所とか福祉事務所に提出する期限ぎりぎりまで調査員回収に努めてもらって、提出日の前日で1度も会えない世帯に対しては郵送に切り替えてもらうという方法です。

 対しまして試験Bのほうは、「訪問回数制限あり」となっていますが、これは調査員が調査票を配布に行ったところを1回目とカウントしまして、3回連続で訪問しても1回も会えない場合は、3回目のタイミングで郵送に切り替えてもらうという方法です。

 調査事項と調査の時期につきましては、 29 年の本体の調査と同じ内容で、同じ時期、6月、7月に調査を実施しております。

 以上が試験調査の概要です。

 次に、資料3を御覧ください。横紙ですけれども、こちらは結果の概要です。上が世帯票、下が所得票になります。まず、上の世帯票の回収率ですけれども、表とコメントを付しています。今回、試験AとBの比較、それと本体調査の比較をすることにしておりますが、今回の試験調査は大都市しかやっておりませんので、本体調査と比較する場合には、一番右の欄、「(再掲)指定都市・特別区分」と書いていますけれども、これは、 27 年の中間年の大都市分に相当する部分が今回の試験調査の対象だったとお考えいただければと思います。

27 年の指定都市の部分につきましては回収率が 68.1 %。これは当然調査員回収のみとなります。試験Aの調査員回収を見ていただきますと、 66.3 %ということで若干低めになっております。試験Bの調査員回収は、 51.6 %ということで、 16.5 ポイントほど低いという結果になっております。

 次に、郵送回収のところを見ていただきますと、試験Aが 4.4 %、試験Bが 9.5 %ということで、Bのほうが若干多くなっています。その次に、再掲のところで郵送回収に切り替えた世帯を 100 として回収率を見ますと、試験Aが 19.6 %、試験Bが 31.4 %ということで、Bのほうが高いのですが、これは本来調査員さんが頑張って、訪問していくうちに回収できたものが郵送回収のほうに幾らかは回ってきたためだろうと考えています。

 最後に、全体の総回収率の欄を見ていただきますと、本体の 68.1 %に比べて、試験Aが 70.6 %と若干高めで、試験Bが 61.0 %ということで7ポイントほど低く出ております。

 次に、下の所得票の回収率ですが、 27 年の指定都市・特別区分を見ますと 68.7 %、試験Aの調査員回収のところは 62.9 %で 5.8 ポイントほど低くて、試験Bのほうが 51.4 %で 17.3 ポイントほど低くなっております。

 郵送回収率のところを見ていただきますと、試験Aが 4.1 %、試験Bが 5.9 %。郵送回収に切り替えた世帯に対する回収率は、Aが 22.8 %、試験Bが 21.3 %となっておりまして、全体の回収率は 27 年の 68.7 %に対して、試験Aが 67.1 %ということで若干低め、試験Bのほうが 57.2 %ということで 11.5 ポイント低いという結果になっております。

 次に、2ページ目を御覧ください。主な項目の未記入率・誤記入率について見たものです。

 まず、未記入率のところで、世帯票ですけれども、試験A、Bともに最多所得者という項目がありますけれども、この項目の郵送回収のところが、試験Aが 41.8 %、試験Bが 31.8 %ということで、調査員回収に比べて非常に高くなっております。誤記入率は、右側のところを見ていただきますと、こちらは試験A、Bともに調査員回収と郵送回収でそれほど大きな差はなかったということです。ただし、未記入率が多かった最多所得者の4割、3割のところですが、このデータは入力直後のデータで、実際にはこれからデータチェックをかけます。かける過程の中で、例えば世帯の続柄とか、あとは所得票とのマッチングといったものを行って、相当部分が救えるデータになるだろうということで、これが致命傷ではないということです。

 次に、3ページ目を御覧ください。所得票の未記入率を見ますと、試験Aでは、調査員回収と郵送回収でそれほど大きな差はないのですけれども、試験Bのほうで見ますと、所得の状況から、社会保険料額、ここまでは郵送回収の未記入率が高いという結果になっております。右側の誤記入率は、試験A、Bともに郵送回収のほうが高い結果となっております。これも同じように、データチェックをかける中で相当救える部分があるというふうに考えております。ただし、いずれにしても、今まで調査員回収で、未記入、誤記入が非常に少なかった部分が多くなることによって、救おうと思えば、私ども職員の目で見るとかコンピュータでチェックをかけるとか、そういった部分の作業量が多くなるというのは否めないということです。

 次に4ページ目を御覧ください。次は訪問回数の実績を見たものです。

 上のほうが世帯票の試験Aです。一番左の緑のグラフですが、これは試験Aの全調査対象をグラフにしたもので、平均の訪問回数というのが 4.6 回、訪問回数が3回のところが一番高くて、次に4回、2回の順ということになっております。真ん中の青いグラフですけれども、これは試験Aの回収できた世帯だけを集計したものです。これで見ますと、平均は全体よりも低くなって、 3.8 回、訪問は2回、3回、4回のところ、このあたりが高い山になっています。一番右の黄緑色のところですが、これは郵送に切り替えた世帯の訪問回数で、ここの訪問回数は、ほかに比べて非常に多くて、平均で7回、分布も非常にばらつきが大きいという結果になっております。

 試験Bのほうですけれども、試験Bはもともと3回で打ち切りということですので、大方のところは3回までになっているということです。

 次に5ページ目を御覧ください。所得票の訪問回数です。

 上が試験Aです。試験Aでは訪問回数は平均で4回。一番多いのが4回で、次が3回、5回という順で、世帯票よりも若干多めのほうに分布しているということです。真ん中の青色のところが回収できた世帯で、平均が 3.8 回で、訪問は同じく4回が一番多く、次に3回、5回の順です。郵送切替は、訪問回数の平均が 5.5 回で、3回が若干多めですが、非常にばらつきがあるという結果になっています。

 試験Bのほうは、先ほどと同じように3回で打ち切りですので、こういう結果ということです。

 次に6ページ目を御覧ください。これは参考といたしまして、 28 年の大規模調査の世帯票の訪問回数で、上が全世帯、下が指定都市・特別区、今回の試験調査の対象に当たる部分です。ほぼ同じような形になっていますが、やはり指定都市・特別区のほうが、若干訪問回数が多めになっているということです。回収率自体は大都市のところが低いのですが、調査員さんは平均よりも訪問回数が多く非常に頑張っていただいているのですけれども、結果はそれほど回収率が上がっていないということで、やはり都市部の調査環境は厳しいということだろうと思っております。

 次に7ページ目を御覧ください。ここからはアンケートの結果です。まず初めに調査員のアンケート結果で、今回、試験A、Bをやったわけですが、実際に試験A、Bの担当をした調査員さんに答えていただいております。例えば今回はAを担当したが、Aの負担が多かったというのが 54.5 %で、Bのほうは負担がなかったという評価でした。これは当たり前の結果というふうに考えております。

 下のグラフですが、訪問回数の制限を設けた方がよいかどうかということですが、これも、試験AよりもBのほうが「設けた方がよい」という答えが多かったということです。

 次の8ページ目を御覧ください。これは、望ましいと考える回収方法はどういうものですかということで、いろいろな組み合わせも含めて聞いたものです。世帯票、所得票ともに、「調査員+郵送+オンライン」というのが、大体4割ぐらいを占めています。次いで「調査員+郵送」の組み合わせ、これが世帯票では 27 %、所得票では 18 %ぐらいあったということでした。一方で、世帯票、所得票ともに「郵送+オンライン」の組み合わせだけとか、「郵送」だけという割合が非常に少なくなっておりまして、調査員さんは、やはりこの調査に限っては、調査員回収というものをかませないと、やはりだめなのだろうという意識が出ているのだろうと考えております。

 次に9ページ目。こちらは実際の試験を担当した保健所、福祉事務所の回答で、負担があったと感じているのは、やはり試験Aのほうが多かったということです。それから下のグラフですけれども、保健所が考える望ましい方法は、試験B、要は、訪問回収に制限を設けるほうがよいという答えが多かったということです。

 次に 10 ページ目。こちらは試験調査を担当いただいた東京都と指定都市の窓口に聞いたものですが、こちらも、やはり望ましい方法としては訪問回数の制限を設ける試験Bのほうがいいという答えが多かったということです。

 最後に 11 ページですが、今回、この研究会で御議論いただきたい点ということで、幾つかまとめています。

 まず、郵送回収の導入の是非については、今回の回収率とか未記入率といった結果を踏まえて、郵送回収を導入することに効果があるのかどうかといったことについて御議論をいただきたい。その上で、仮に本体のほうに郵送回収を取り入れる場合の検討事項として3つほど書いています。

 2つ目が、郵送切替のタイミングは訪問回数に制限を加えたほうがいいのかどうか。

 3つ目が、郵送回収の対象とする世帯の範囲をどう考えるかということです。今回の試験調査というのは、1回でも世帯の方に会えたら調査員回収に努めてくださいということです。例えば私は郵送回収なら答えるよというふうに対面で言われた場合でも、会えたら調査員回収にしてくれというふうに、試験ですので割り切ってやりました。しかしながら、実際の現場では、郵送回収だったら答えますよというような場合、もう1つは配布時には会えたのだけれども、回収時に会えないというような場合の取り扱いについて、範囲をそこまで広げるのかどうかということで、私どもは実施者側の立場としては、範囲を広げた場合に、幾ら説明会ではきちんと文字にして書いて説明しても、現場では調査員さんは「郵送回収でも回答できますよ」というふうに言ってしまうのではないかということです。それをやられると、調査員回収が減り、郵送回収で答えるよと言ったのが実は回答はしてくれなかったというようなことで、回収率自体がガタ落ちになるのではないかということを私どもは非常に危惧しているということです。この範囲を試験調査と同じような範囲にとどめるのか、もうちょっと広げるのかというところが3つ目です。

 4つ目は、郵送回収をやる場合に導入時期をどうするのか。次の大規模というのが 2019 年で、これが最短の導入です。とは言っても、先ほどから話にも出ておりますように貧困率への影響とか非常に注目を集める調査ですので、そのあたりを考慮して、それから現場の混乱といったものも考慮して、簡易年からやるというのも1つの手でではないかというふうに考えておりまして、その辺をどう考えるのかということです。ここはどちらかというと私どもが考えるべきことですけれども、そのあたりについても御意見をお伺いしたいということです。

 説明は以上です。

○廣松座長
 ありがとうございます。それでは、この議題2の郵送回収の結果の検証に関しまして、御質問、御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

○津谷委員
 まず、この1と2についてですが、これは私の考えですが、郵送回収を導入することは、回収率の向上に資する可能性があると思います。ただし、条件がありまして、訪問回数を制限しない。そうでないと、これは確実に、それも相当大きく回収率が落ち込むと思います。ですので、郵送回収を導入する場合、本体調査で見せていただいた調査不能世帯、つまり資料3の6ページの一番右の棒グラフの赤いところを少しでも拾いたい、その一方で回収世帯の割合を下げたくないということがおそらく目的であると思いますので、訪問回数を制限しないことが必要だと思います。訪問回数を3回までに制限した場合、基本的には、配布でまず1回、あと2回訪問をしたわけですね。もちろんそうすれば調査員さんや地方自治体の負担は減りますので、調査員さんや自治体を対象にしたアンケートの結果は当然訪問回数を制限したいということになります。

 調査員さんや地方自治体には大変に厳しい負担をしていただいているのはよく分かっていますが、調査員さんや地方自治体の負担を減らすことが調査の目的ではありません。極端なことを言うと、一番楽なのは調査を実施しないことです。でも、この調査は厚生労働行政にとって欠くことのできない大切な調査です。これを見せていただいた限りでは、郵送回収はこのままほうっておけば調査不能になった世帯を少しでも拾うという目的のためなら、これはもう訪問回収の制限を設定しないということが条件になるのではないかと思います。そうしなければ、おそらく回答率に統計的に有意な落ち込みが起こるのではないかと思います。

 次に、3番目についてですが、先ほどご説明があったように、「郵送なら回答する」と言われても、とにかく頑張ってくれと調査員に指示されても、おそらく現場では「郵送でもいいですよ」と、調査員によってはおっしゃる場合があるのではないかと私も思います。そうすると、回収率が落ちるだけではなく、未記入、誤記入が多くなります。回収率ももちろん大切なのですが、どれだけきちんとしたデータが取れるかというのが最終的には大切です。より多くの回答者から質の良いデータを取ることが調査の目的ですので、やはりこれは慎重に対応しなくてはなりません。一度も面接できない世帯は仕方ありませんけれども、郵送を希望する世帯とか、配布はできたけれども回収に行ったときに会えなかった世帯に対して、どのように対応すればよいのか。これについては委員の皆様に御意見を伺いたいのですが、郵送調査の導入については慎重に対応する必要があると思います。どれだけトレーニング時に調査員の方にお願いしても、これを現場で実施するのはなかなか難しいであろうと思います。

 最後に4番についてですが、最終的にどのようなやり方で調査を実施するのかは調査実施主体であるところの皆様方がお決めになることですが、大規模調査をどのように実施するかにもよるのですが、できるだけ早く実施したほうがいいという考え方もあるかと思います。なぜかというと、調査環境は悪くなりこそすれ、よくなることはほとんどないと思います。とは言え、もう今は 2018 年ですので、大規模調査の準備にはかなり時間が押しています。もしこれで何かあった場合に備えて、この調査の結果は厚労省の施策のみならず我が国の社会経済に対して重要な意味を持っています。政策、施策だけではなく、この調査結果は広く使われていますので、テストケースとしてまず簡易調査で試した方がいいのかという気もいたします。ただ、これについては、どちらがいいのか、賛成、反対いろいろなご意見があると思いますので、厚労省で慎重にお考えになる必要があります。ただ、個人的には、今の段階では、まず簡易調査で十分に準備をしてやってみる。その結果を次回の大規模調査ではなく、次々回の3年後の 2022 年の大規模調査に反映させるのが、一番無理がないのかなと思います。その時には相当な経験を積んで、いろいろな現場での知識も積み上げて、それをベースに調査を実施できるということになるのではないかと思います。

 以上です。

○廣松座長
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○稲葉委員
 2つほど質問があります。資料に含まれていないものは、もしかしたらなかなか分析等が難しかったのかもしれないですけれども、試験調査において郵送回収をした標本、調査員が回収した標本のデータの違いはあったのでしょうか。

○中村室長
 それは、未記入とか誤記入とかですか。

○稲葉委員
 属性のような。

○酒光政策統括官
 属性とか、平均とか、そういうようなところですね。

○中井参事官
 どういったところが傾向的に取りにくかったとかそういうことですか。

○津谷委員
 それは当然あると思います。

○稲葉委員
 ちょっと少ないから、分からないかもしれないです。

○酒光政策統括官
 調べればわかります。普通は、マンションに住んでいる人が取りにくいとはよく言われます。

○稲葉委員
 もう1つの質問としては、誤記入が随分多いということですけれども、この原因として考えられることというのは、その誤記入の状況から判別できるものなのでしょうか。どういったものが誤記入なのでしょうか。

○中村室長
 誤記入というのは、例えば所得票でも世帯票でも、基本的には、調査員さんが回収に行って未記入がないかをチェックいただくのが基本です。でも、郵送回収はそれができません。それが一番の大きな理由です。

○稲葉委員
 非常に誤記入が多いところは、数字が違っているということでしょうか。

○中村室長
 誤記入は、例えば税金のところで税の有無というのと金額を書く欄があるのですが、例えば税の有無が書いていなくて金額があるとか、それは「有」に変えられますので、そういうのは救えるのですね。逆の場合は、税金があって金額がなければ、税は「有」だけれども、金額不詳になってしまうので、これはもう救いようがないです。

○津谷委員
 もしくは、総所得に比べて、どう見ても税があまりにも多い場合とか、どう見てもおかしいと思われる場合があります。以前は、この所得票は他計で調査員さんが聞き取って実施していたのですが、それを自計に切り替えたときには大変でした。私はその変更についての検討会のメンバーでしたが、調査票の色もウグイス色が一番目に優しいとか、源泉徴収票のここをこういうふうに書き移してくださいとか、いろいろな工夫をこらしました。だだ、どのように工夫をしても、どう見てもおかしいという回答は出てきます。ですので、回答について誰かがチェックをかけないと、こういうことが起こってしまいます。これが大量発生すると、当然ですが、推計結果がかなり歪んでくるということが起こってくるので、とても心配です。

○稲葉委員
 今お伺いしたのは、それが記入方法みたいな手引で解決可能なのかどうかということです。

○中村室長
 今でも丁寧に書いているのですね。例えば見開きにして、左側が答えを書く欄、右側が源泉徴収票などのイメージがあって、この欄を書いてくださいとなどとなっています。

○津谷委員
 調査票はとても見やすくなっていて、各ページでたくさんの質問はしていません。とはいえ、数値を記入していくということは、回答肢のどれかに丸をつけるものと違って、おそらく回答者にとって相当な負担で、それをきちんとやってもらうために調査員さんは相当な負担をなさっているというのは確かです。

○中村室長
 あとは、ダブルマークで、2つマークが入ってしまっています。例えば疾病のところで何かの疾病に丸があって、最後の「特にない」にも丸が入ってしまうとか、そういったような論理的に合わないというようなことがあります。それは基本的には開封のときは見られるけれども、密封、特に郵送回収では見えないということです。

 また、先ほどの、郵送回収と調査員回収で、例えば単独世帯というのは、世帯票の試験Aで言うと、郵送回収は 10.8 %、単独世帯以外では 3.5 %ということで、単独世帯のほうが郵送回収の割合が多いという結果が1つあります。

○稲葉委員
 会えないからということですね。

○中村室長
 特に都市部の独身、若年が取れないというのが過去の分析で分かっているので、それがそのまま出ている部分があるかと思います。それとあと若い層です。単独世帯の郵送回収の割合は
20 代が多いということで、やはり若い層が特にそうです。

○津谷委員
 特に大都市に居住する若い未婚の男性ですね。

○中村室長
 そういうことが、もうそのまま今までの回収率に出ています。

○稲葉委員
 分かりました。ありがとうございます。

○酒光政策統括官
 セキュリティの高いマンションというよりも、そもそも日中も夜もいないということですね。

○津谷委員
 以前、科研費で大規模調査を実施したときに、調査員さんから夜うち朝がけをしても、そして週末や休日に訪問してもなかなか未婚の若い男性には会えないと言われたことがあります。このように、若い未婚男性の訪問は大変で、調査員さんに御苦労をかけたのですけれども、若い一人暮らしの未婚女性の場合も会うのが難しくなっています。これらの女性は、家にいるのだけれども、訪問した時に出てこない。

○中井参事官
 警戒して出ない場合も多いでしょうね。

○津谷委員
 はい、若い一人暮らしの女性が被害者になる犯罪が起こっていますので、若い未婚の女性が1人でマンションに住んでいる場合、モニターをのぞいてみて知らない人が立っていると、呼びかけに答えないということが起こっています。

○中井参事官
 それこそ知らない人がモニターに映っていたりしたら、もう絶対に怪しいと思ってしまいます。

○津谷委員
 とはいえ、回答してくれたら図書券などの金券のようなものを出して、調査について説明しているホームページを作って、それを見て調査の目的や内容を確認をしてくださいというはがきを出したりすると、結構多くの若い女性がインターネットを使っているので、図書券をもらえるなら調査に回答してもいいかなと思ってもらえるということはあります。

○中村室長
 ホームページについては、先生からそういう御意見をいただいて、不在者連絡票に厚生労働省ホームページの
URL やQRコードを印刷しています。

○津谷委員
 ただ、例えば図書券を回答者1人に
1,000 円出したら、大変な費用がかかることになりますから、できませんよね。

○中村室長
100 円程度です。昔は二百数十円だったのですけれども、今はもう予算が削られています。

○津谷委員
 この調査の回答者数を見ると、とんでもない予算がかることになりますので、無理だと思います。

○廣松座長
 ほかにいかがでしょうか。

 確かに7ページ以降のアンケートの調査にかかわった保健所、福祉事務所の方の反応は分かりますけれども、今会えていないとか回答してもらえていない人が郵送で応えてくれる増加分に、郵送だったら答えるという人の増加分を加えて、郵送回収を入れて何とか現状の回収率を維持するというか、回収率を増やすというところまでいけるかどうか。そのことが郵送回収を入れるかどうかということを議論するときの一義的な目的ではないかという気がいたします。その意味で、3回で切るというのは、どうですかね、少なくとも結果を見る限り、やはり少し差が出ますね。

○中村室長
 ちょっとあり過ぎるかなと思ったりもします。

○酒光政策統括官
 逆に言うと、調査員の方に納得してもらうためにも、こういうふうになってしまいますという、このぐらいの数字は必要なのかもしれないです。

○廣松座長
 そうですね。

○津谷委員
 国民生活基礎調査は、厚生労働省の施策の柱になっているものであり、厚生労働省が実施されている最も重要なサンプル調査です。昔に比べたら回答率は低くなっていますけれども、ほかの多くの調査に比べて、比較的高い回答率を維持しています。今後はこの回答率を何としてでも守るべく工夫と努力をしなくてはなりません。これで訪問回数を区切るなどしますと、回答率を下げてしまいます。この調査の実施意義に疑問符がつくようになるといけませんので、調査員の皆さんの負担が非常に多いことはよく分かっているのですが、やはり調査をやるからには、そこは何とか耐えて頑張ってやっていただくしかないかと思います。こんなことを言うと本当に申しわけないのですけれども。

○廣松座長
 そうですね。ほかに御意見はございますか。

 その意味では、私も、郵送回収を導入するとして、それはあくまで現状の回収率を上げる、それを維持するための手段であって、訪問回数に制限をつけると、やはりこれだけ差が出るという結果から見ると、回数を制限するというのはちょっと難しいように思います。ただ、その3番目のところで、先ほど申し上げましたとおり、郵送回収を希望する世帯がどこまで本当に言葉どおり回答してくれるかというところが、かなり不確定要素ですね。逃げ口上に使われると困りますね。

○中村室長
 そこの範囲を広げると、やはり現場では「郵送回収でもできますよ」言ってしまうのではないかと思います。そうすると、「では、そうします」と言って、そのままに。

○廣松座長
 そうですね。郵送を希望する世帯はそのような行動をとる恐れがありますね。その次の、配布時に面接できたが回収時に面接できない世帯の扱いはどうですか。

○中村室長
 こちらは、私の個人的な意見ですけれども、実は、会えれば次は何日ごろ来ますと多分相手方と約束して、その日は都合が悪いと言えば、いつごろ来ればいいですかというやりとりをすると思います。ですから、ほとんどは次のアポイントを取って訪問できるのだと思うのですけれども、それでもなおかつ居ないというのは、回答する意思がないのかと思うのですね。ですから、ここは、郵送切替しなくても。

○廣松座長
 調査員による回収でいくという方針ですか。

○中村室長
 ということにしても、そんなに大きな差が出ないのかなという気はしています。

○酒光政策統括官
 どのぐらいの割合かというのは。

○中村室長
 そこまでは、分からないです。普通、調査日の1週間前に調査をお願いして、調査票を持って行って、会えれば次は何日に来ますとかという約束をするわけですね。

○廣松座長
 保健所とか福祉事務所に提出するまでに、どれぐらいの期間がありますか。

○中村室長
 調査日から大体2週間後ぐらいです。土、日が2回ぐらい入るぐらいの期間があります。

○廣松座長
 そういう意味で言うと、試験調査と同じ扱いでするということですね。

○中村室長
 というふうに厳しくするのがいいのか。ここは自治体からのそういう御意見とかもあって非常に悩ましいところなのですが、この郵送回収を希望する世帯をやると、もう現場でなし崩しになってしまう恐れがないかというので、そこが一番怖いところです。本当は、督促とか、送ってくれたかどうかの確認というのをちゃんとできればいいのですけれども、調査員の任命期間は基本2カ月間なので、4月の中旬頃に任命して6月の中旬まで、調査をやるのにほぼ2カ月使って、そのあとは任命期間が切れてしまうので確認できる時間がありません。その間はまだ確認できますけれども、あまり任命期間を長くするわけにいかないので。

○廣松座長
 当然、調査員はそうですね。

○中村室長
 だから、「私、郵送なら答えますよ」と言われて郵送に切り替えたときに、「ちゃんと答えてくれましたか」という確認を本当は取りたいのですけれども、その期間内で取れるなら取ってくださればいいのですけれども、任命期間を越えると確認することができなくなります。

○酒光政策統括官
 厚生労働省からバックすればいい、厚生労働省に調査票が来るでしょう。

○中村室長
 それは、厚生労働省に来た場合は膨大な量になるので、おそらく外注になります。日々、業者に郵送の分を引き渡して開封させて、何件回収というのを名簿上でチェックをして、例えば翌日に、それを都道府県、保健所ルートで戻さないとだめです。そのタイムラグというのは相当あると思います。現実問題として、その期間はなかなか取れないです。

○津谷委員
 国勢調査では、調査員専用のポータルを作って、それを通じて情報をアップデートしていましたけれども、国勢調査は膨大な予算のある調査であり、国民生活基礎調査とは予算規模が全く違いますので、同じような対応はできないとは思います。ただ、調査員用のポータルを作ることは無理でも、出来る限りタイムラグを置かないで調査の進捗状況についての情報交換ができれば大きな助けになると思います。とはいえ、予算から考えても、実際のところはなかなか難しいです。

○中村室長
 それをやるなら、まずオンラインをやれということです。

○津谷委員
 しかし、この調査はオンライン調査には本当に不向きな調査だと思います。オンライン調査は、国勢調査のように大規模だけれども、非常にシンプルな調査票が基本的には1つしかないというようなものに適してしています。我が国の政府統計でオンライン調査をできる限り導入していくというのが政府の基本方針であることはよく分かっているのですが、国民生活基礎調査はオンライン化が最も難しいものの1つであると、個人的には感じています。この調査をオンラインでやろうと思ったら、現在5つある調査票を最大1つにまとめる必要があります。そのためには、現行の調査票を大幅に簡略化して、ある意味で別の調査になるというぐらいの刈り上げをしないと、現状ではちょっと難しいです。

○廣松座長
 それでは、郵送回収の導入に当たって、あくまでも現在の回収ベースを維持すること、それをさらに高めることが第一義的な目的であって、その意味で、この調査の訪問の回数は制限をしないとする。その上で、対象、世帯の範囲に関しては、どうですか。今のお話だと、配布時に面接できたが、回収時に面接できない世帯に関しては、含めるという考え方ですか、それとも、もう厳しく、そういう一度配布時に面接できたところは調査員に回収をしてもらうということにするか。そのところは、御判断はいかがですか。

○津谷委員
 お伺いしますが、現状では回収時に調査対象者に面接できないと、訪問回数に制限を設定しなければ、提出期限の前日まで訪問を続けていただくわけですね。

○中村室長
 そうです。

○津谷委員
 そうすると、提出期限前日まで訪問を続けても会えなかった場合に、郵送してもらうことによる付加価値がどれぐらいあるのかということを考えなくてはなりません。今までは、このようなケースはほとんどが結局調査不能として処理されていたわけです。

○中村室長
 それを何とか回収できれば。

○津谷委員
 今までと同じように、提出期限前日まで訪問を続けて、それでもだめだったら、そこであきらめるということにするということですか。それとも、提出期限後、例えば2週間後か3週間後に郵送で調査票が返ってきた場合に、どうするのかという問題があります。いかがですか。それでも、そのほうがよろしいのですか。

○中村室長
 例えば、行ってもぎりぎりまで会えない世帯がありますね。その場合、前日で郵送回収に切り替えるわけです。

○津谷委員
 では、これもその対象になるわけですね。

○中村室長
 2週間ぐらいまでは、期限を設けて、送ってくださいという話をすればいいわけです。

○津谷委員
 ということは、これを別にわざわざくくり出す必要はなくて、配布時に会えない場合と、回収時に会えない場合とを、同じくくりにしてしまって差支えないのではないでしょうか。おそらく配布時に会えないほうがずっと多いと思いますが、この場合、ぎりぎりまで訪問を続けて、最後の策として郵送で回答の可能性を探るわけですから、これもそれに準じてやればよろしいということなのでしょうか。ただ、危険なのは、調査票を配布したときに調査員さんに「回答は郵送でもいいですよ」と言われてしまうことですね。そうすると未記入、誤記入が増えてしまいますし、回答を引き受けたほうも、後で面倒くさくなって、郵送で返すと言ったけれども送り返さないということが出てきてしまいます。以前の方法で調査をしたら回答してくれていた世帯が、結局回答しなくなってしまうことがリスクだと思います。

○中村室長
 そこにいってしまうのではないかというリスクが大きいかと思います。

○津谷委員
 ですから、できる限り最初から「郵送でもいいですよ」という一言を発していただかないようにしないといけないですよね。

○中村室長
 それは、当然そう言うのですけれどもね。

○津谷委員
 そうですね。指示を受けても、やはりやってしまう可能性がありますから、そういう環境、そういう可能性をできる限り狭めるということをするしかないと思います。

○中村室長
 今でも、所得票は、原則、調査員がことわりを入れて開封して中身を確認してやりますというので、どうしても見られるのが嫌だという人に関しては密封回収というふうになっているのですが、実は、調査票を配るときに、もう固まりとして密封用の封筒を渡してしまうところもあるのです。そういうような方向にいくのが、現場としてはそうなってしまっているところもあります。

○津谷委員
 そのほうがはるかに楽ですので。ただ、それは
2000 年の国勢調査の場合と同じですね。

○中村室長
 そうです。同じです。

○津谷委員
2000 年の国勢調査では調査票配布時に密封用シールを配ってしまったものですから、返ってきた調査票の回答が意味をなさないものが多発しました。また、最初のページだけ答えて、あとは全部白紙のままとか。さらに、わざと意図的にとんでもない回答をしているのではないかというものが今までにないくらい多く発生をしたので、調査票を密封して返すことは1回だけでやめてしまったのです。

○中村室長
 とりあえず、いきなり広げるということではなくて、例えば試験調査を今回やったように、厳しめにいって、もう少し現場の意見なり実態を聞いた上で、そこは緩くなりませんよねというようなことをきちんと都道府県とか保健所に理解させると。その上でやっていくというふうなのは、あってもいいのかなと思います。

○中井参事官
 今回の結果もそうですけれども、データを現場に見せたりしているものですか。

○中村室長
 データというのは?

○中井参事官
 この資料のようなものです

○酒光政策統括官
 試験調査の結果です。

○中村室長
 これから、試験調査の結果とか、こういう研究会の結果というのは、ホームページに載せるようになりますので。

○中井参事官
 そうですよね。だから、そういう結果をあえて世の中にオープンにした情報を提供して、緩むとこうなってしまうというようなことを現場にも認識してもらうのはあるかと思います。

○中村室長
 実際にも、全国会議とかブロック会議で各県の担当者の説明会があるので、そういうときに、こういう結果の内容を示して、今回このように変えたけれども、3回のというのはやはりだめなのですよとか、やはり緩めると危ないですというような話を、そういうところで説明して理解してもらうことが必要と思います。

○廣松座長
 そうですね。そういう意味では、配布時に面接できた云々のところは、これはあえて書かなくてもいいのではないですか。

○中村室長
 スタートから緩めるのはいかがなものかということです。

○津谷委員
 統括官と参事官がおっしゃったように、調査をやる意味が損なわれてしまっては、せっかくの調査員の皆さんの御苦労が無になってしまいますので、大変だけれども頑張って下さいとお願いするしかありません。

 ここで心配なのは、郵送のための封筒を最初から持って歩くと、使いたくなるのではないかということです。もし私が調査員でも、つい誘惑に負けそうになるのではないかと思います。ですから、調査票の提出期限の直近になるまで、郵送による回答の可能性をできる限り低くする必要があります。持っていると、私も含めて人間は弱いですので、やはり使ってしまうような気がします。自治体の担当者も大変だと思われるお気持ちはよく分かるのですが、やはりこの調査の基本は調査員調査です。郵送に切り替えるまでの訪問回数についても、慎重に考えないといけないと思います。とは言え、回答率は減ってきていますので、長期凋落傾向に歯どめをかけるためにいろいろと工夫をするということは、必要であろうと思います。

○酒光政策統括官
 今回の結果だと、郵送回収の上乗せは4%ぐらいかもしれない。4%にどれだけ価値を置くかというはありますけれども。

○津谷委員
 4%は相当大きな割合だと思います。ただ、訪問回数制限なしの調査員回収の割合を見ると、世帯票だけでも2%ぐらい落ちているので、緩やかではありますけれども下がってきています。

○廣松座長
 それでは、特に反対の御意見もないようですので、郵送回収の導入は、あくまで回収率を維持、高めるというものであって、ここにあるような訪問回数の制限とか、あるいは郵送回収を希望する世帯とかにまでは広げないということにしたいと思います。

 その上で、この導入時期ですが、平成 31 年から行うのか、あるいは平成 32 年から行うのかどうか、そこのところはいかがでしょうか。平成 31 年が大規模調査ということですので、平成 31 年の大規模調査の委員会への諮問はいつですか。

○中村室長
 ことしの秋、諮問です。実は、もうこの3月末ぐらいにある程度の方向性を決めないとだめなので、一応、省内の手続というと統計分科会にもお諮りをしていて、それは大体6月ぐらいにやっていますので、やはり年度内なり年度明け早々には、方向を決めなければいけないということです。最終的には、ここはもう本当に私どもの判断だとはと思っています。

○廣松座長
 そうですね。特にスケジュール上はそうだと思いますけれども、先ほど言った、この郵送回収の導入というのは、あくまで回収率を維持、向上させるためのものであるという視点からは、どちらかというとこの研究会での委員の参考意見ということになるかもしれませんけれども、平成
31 年から導入するか、 32 年から導入するかということに関しては、何か御意見はありますか。

○稲葉委員
 少し関連しての意見ですけれども、先ほどの資料を見ると、郵送回収の誤記入率というのが非常に大きいように感じます。それに対しては、エディティング、つまり誤記入であるというふうに分かって、それを直すような手段については、もう検討はされているのでしょうか。

○中村室長
 それは、冒頭に申し上げましたように、今回のデータというのは入力直後のデータで、これからエラーチェックをかけて、エラーが出てくると、自動修正で直すプログラムの部分もありますし、それもできない場合は、一旦エラーリストを出して職員の目で見るとか、そういうことをこれまでもやってきました。

○稲葉委員
 はい。今の時点で分からないとは思いますけれども、調査員回収と同等レベルに修正するということはできるのでしょうか。

○中村室長
 調査員回収と同じレベルぐらいまでの何らかの修正というのは、ほぼできるのだろうと思います。

○稲葉委員
 それでしたら、特に問題はないと思うのですが、そこでまた何らかの技術が必要だとしたらならば、その技術ができた段階で実施したほうがよろしいのではないかというふうに思ったので、もし現状で問題がないとすれば、それはいつでも構わないと思います。

○中村室長
 ただ、手間がかかるだけです。自動修正でできるものは、手間はそんなにかからないのですけれども、やはり目で確認しないとだめだという部分が増えるとデータ修正とチェックに相当時間がかかります。

○酒光政策統括官
 未記入が多いのは最多所得者ですね。これは自動でできますか。

○中村室長
 それは、続柄とか、所得とか、そういったものは、ある程度自動の部分もありますけれども、やはり目で見る部分が多いと思います。

○廣松座長
 では、この導入時期については、先ほど御説明があったとおり、事務局サイドのタイムスケジュールもあるでしょうし、そこはある程度お任せするということでよろしいですか。

 さて、そういうことで議題2の郵送回収の試験調査の結果の検証と同時に、この研究会での評価をいただきました。一応、先ほど申し上げましたとおり、郵送回収の導入というのは、あくまでも回収率を維持・向上させるためのものであって、現状を緩めるものではないという基本的な考え方を、この研究会は確認したということにしたいと思います。

 

(3)その他

○廣松座長
 さて、議事として、その他というのがありますか。何か事務局のほうで予定のものはありますか。

○中村室長
 資料とか、御議論いただく点は、もう今のところで終わりです。

○廣松座長
 よろしいでしょうか。それでは、事務局のほうにお戻しします。

 

3.閉会

○中村室長
 それでは、長時間にわたりまして御議論いただきまして、ありがとうございました。これをもちまして、第3回の研究会を閉会させていただきます。

 次回、4回目は、今年度中に最後の研究会を開催いたしまして、この研究会としての報告書(案)の取りまとめについて、御議論いただきたいということを考えております。3月中に開催したいと思っております。日程は、後ほどまた調整をさせていただきます。

 ということで、本日は、どうもありがとうございました。よろしくお願いします。

 


(了)

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