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2017年1月30日 第5回地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)議事録

厚生労働省 社会・援護局 地域福祉課

○日時

平成29年1月30日(月)14時30分~17時00分


○場所

厚生労働省専用15会議室


○出席者

原田 正樹 (座長) 相田 義正 (構成員) 朝比奈 ミカ (構成員)
井岡 仁志 (構成員) 越智 和子 (構成員) 片山 睦彦 (構成員)
勝部 麗子 (構成員) 鴨崎 貴泰 (構成員) 菊本 圭一 (構成員)
櫛部 武俊 (構成員) 中 恵美 (構成員) 永田 祐 (構成員)
野澤 和弘 (構成員) 福本 怜 (構成員) 藤山 浩 (構成員)
堀田 聰子 (構成員) 前田 小百合 (構成員) 横山 美江 (構成員)

○議題

(1)今後の進め方(案)について
(2)住民に身近な圏域での「我が事」の地域づくりについて
(3)その他

○議事

<事務局より、社会福祉法改正に向けた進捗状況について説明後、意見交換>

 

論点1「地域が活性化していくように、今までつながっていなかった福祉分野以外の既存の活動(地方創生やまちづくり、教育や住まいなど他分野の取組み等)と協働していくためには、どのように関わりをもっていくとよいか。具体的にどのような事例があるか。」

 

【第1グループ報告】(グループメンバー:越智委員、片山委員、鴨崎委員、櫛部委員、藤山委員、横山委員/報告者:鴨崎委員)

○ 藤山委員から地域運営組織の事例をもとに、好事例のポイントとして、1.具体的には場所があること、2.活動できる人を雇えていること、3.そこで集うための時間が提供されていることが紹介された。

○ 高知県の場合は、1.場所については集落活動センター、2.人については福祉だけではなく、農業など地域の課題ごとにそれぞれの分野で少しずつお金を持ち寄って、横断的に一人雇い、3.楽しい時間が提供されており、これに県が予算措置している。

○ こうした活動のためには、地域課題をデータで見える化し、課題や危機感を共有していくというプロセスが必要ということであった。

 

【第2グループ報告】(グループメンバー:朝比奈委員、永田委員、野澤委員、福本委員、前田委員/報告者:永田委員)

○ 第1グループ同様、人と場と空間を意識して討議をした。1.人については、いろんな人がマグネットやハブになり得るので、縦横斜めの関係づくり必要であり、2.そのつながりを作っていくためには、ある種の場が必要であり、具体的にはお寺や地域の空き家などが考えられる。3.そういった場や空間では、緩やかなつながりを常に作っておくことが必要で、その中に少しの義務がある関係が重要との話になった。

○ 具体的な事例として、千葉県のある不動産屋が、保証人が居なくても入居を認めてくれるが、木曜日の朝には必ずラジオ体操をしなければならないというものがあった。そういう少しの緩やかなつながりの中に少しの義務があることで、つながりができていくのではないか。

○ こうした取組のキーワードとして、「のりしろ」「実験できる場」「縁側」などが出された。いずれも、制度化したりルール化するのではなく、まずは緩やかにいろんなことを試し、空間や場を地域の中にボトムアップで作っていくことが大事という議論になった。

 

【第3グループ報告】(グループメンバー:相田委員、井岡委員、勝部委員、菊本委員、中委員、堀田委員/報告者:井岡委員)

○ 分野に関わらず、お互いの困りごとを持ち寄るということが重要で、例えば、引きこもりの若者支援、就労支援など通して、商店街や農業などとつながるということがあるが、その際に、福祉側が一方的に引きこもりの若者支援としてつないでいくのではなく、商業や農業などの側も人材不足などの困りごとがあり、そういったウィンウィンの関係を作っていくということで、互いの困りごとを持ち寄ることができるのではないか。あるいはフードロス、食物の廃棄をしなければいけないという問題についても、フードバンクや子ども食堂につながることがあるのではないかとの話があった。

○ 一方、入口の方についても、例えば引きこもりの若者支援でいえば、出口の方では商業や農業だが、入口の方では学校側とつながっていかなければいけない。そういう意味では福祉を核にして、様々な多機関とつながっていくっていうことができなければいけないといった意見があった。

○ また、新しいつながりという視点では、「福祉×○○」といった視点があった。例えば、高島平都営住宅の空き室を大学生に貸し、そこで高齢者との助け合いの関係を作っているが、こうしたことが全国的に広がってきている。その他、学校の空き教室でデイサービスセンターを行ったり、高島市では認知症カフェを学校の中で行っている。そういった新しい連携の中で、助け合いの活動を生み出していくことができている。

○ イギリスの事例として、日常生活上、認知症の方が困っている中で何をクリアすればよいかを10項目程度あげ、その課題達成のために、300位の機関がつながってアクションプランを作っていくというものもあり、そのなかで、「緩い目標共同体を作る」という言葉がキーワードとして出てきた。

○ そうしたインフォーマルな資源や多分野との連携・協働を進めていく上で、そもそも福祉の専門職側の考え方や視点が、いつまでも制度やサービスで縛っている面があるのではないか。縦割りのサービスを、受けている人の立場で見直し、それを底辺にして、地域の資源や人とのつながりを作っていくという専門職側の考え方を変えていくことも重要、という意見が出された。

 

【原田座長小括】

○ 各グループ共通していることとして、地域の困りごとをどう持ち寄り、共有化していくか。その地域課題が共有化できる仕組みをどう作っていくか。具体的には場や空間、人や時間という具体的な提案もあり、それが各町々でどういう形で作られていくのか。ボトムアップで作った方が良いという意見もあったが、そこと制度との兼ね合いをどう考えたらいいか課題も出た。さらには、「緩やかな空間やつながり」、「緩い目標」という意見もあった。

○ しかし、全く緩いだけでなくて、「少しの義務」という話もあった。その辺のバランスを地域の方とどう共有していくか、あるいは、進めていく時に福祉や専門職が意識を変えていけるかどうかという点も考えていかないと、多分野との協働は難しい。

 

 

論点2「社会的に排除されやすい課題を地域住民等が「我が事」としてとらえていくためには、どのような取り組みが求められるのか。具体的にどのような事例があるか。」

 

【第1グループ報告】

○ キーワードとして最初に出てきたのが「正しい理解」。例えば何か課題が起きた時の背景に対する正しい知識、例えば障害に関する正しい知識などが共有されてくる中で、正しく「我が事」化ができていくのではないか。

○ その正しい理解をするために、当事者参加が少ないことが阻害要因の一つとしてあることも共有された。また、先程の議論にも出た「場」も必要であり、課題に対して集まるのではなく、種々雑多な日常的なふれあいの中から課題が見えてくる、海外で言うと広場みたいなものが必要。それも一対一の関係ではなく、「多角形」というキーワードも出された。縦横斜めの関係の中でその課題の当事者も含めて課題を共有し、地域の中で課題を解決していく場の設計も必要という話があった。

○ 具体例として、ある学校で調理実習の際に、車椅子を使用している人と一緒に買い物に行くという体験をして、その後調理もする。そういった生活を一緒に体験することによって町なかでの課題を理解していく場を作っていく。要は一般的な課題として捉えるのではなく、AさんBさんという個人の顔が見える中で課題や課題の背景を理解していくことが、課題を身近に感じ、「我が事」化につながるのではないか、という議論になった。

○ また、藤沢市では、地域住民や民生委員が抱えている課題を、CSWがきちんと社会資源に仲介するなど、ボトムアップで情報を吸い上げながらその課題に住民参加で取り組むチーム編成も行い課題解決までしていく。その過程で理解も深めていくといった報告もあった。

 

【第2グループ報告】

○ 非常に困難な問題を抱えていても、それを開示できない、もしくは開示したくないという人がいるということを前提として議論を進めた。

○ まず、排除という問題は、その「匿名性」をどう考えるかが課題となる。つまり、ある程度人に知らせていかないと解決につながらないが、それは安心感がないとできない。そこで、第1グループ同様、それを理解する、偏見を持たれないような地域づくりが重要との確認をした。

○ 例えば暴力団から抜けてきたとか、刑務所から出たとか、そういった方が地域に帰っていく、もしくは社会に復帰することが非常に困難な人がいる。そういう人びとを、いわゆる我々のような専門家ではなく、非常に当事者性の強い特殊な支援者が支えている例がある。そういう支援者の支援していくべきという議論があった。

○ 「課題を無効化する」というキーワードも出された。それは、我々専門職や行政などが大騒ぎをして課題にしてしまっているという側面もあるのではないか。例えば、マンションの上の人がちょっと騒いでいてうるさいなと思うのは、良く知っている人であれば、「今日も元気だな」と思うかも知れないが、付き合いがなければ、それはすごくうるさい騒音になってしまうということがある。知っていれば解決できる問題もあるのではないか。つまり、その行為をどう意味づけするか、その行為をきちっと説明したり解釈できる人がいれば、そもそも課題にならないで済むことも沢山ある。

 

【第3グループ報告】

○ 地域の方は知っていても言わない、あるいは見て見ぬふりをしているということが実際ある。しかし、あくまでも表面的なところだけで判断をして、本当のその方の思いとか置かれている状況を知らずに差別や排除が起こっているのではないか。そういったことを無くしていくためには、地域住民自らが問題を発見し、それをしっかり受け止めていく、そういう取り組みとしての見守りやなんでも相談を住民参加で行っていく。そういうことを通して専門職と住民がともに問題を受け止め分かち合っていく、そういうところから本当のことを知る、あるいは気づくということが、差別や排除を無くしていくことにつながるのではないか。

○ 民生委員が地域から排除されている方とつながっていくきっかけを作っているが、個人情報の問題、守秘義務の問題等があり、民生委員がなかなか周りと共有できないということも、課題として出てきた。民生委員を支える、あるいはバックアップする専門職の役割も改めて考え直す必要がある。

○ 排除されやすい人を地域の中で暮らしていけるようにするために、「どう地域の中に交じっていく機会を作るか」、あるいは「『実はうちも同じ』ということが言える環境をどう作っていくか」、さらには、「専門職としてしっかりと代弁する」という専門職側の覚悟のようなものが求められている。そのために、専門職側がもっともっと地域に出向いていくことと、逆に制度やサービスによって、そういった方を地域から切り取ってしまって、問題を見えにくくしていることが専門職側の責任としてあるのではないか。むしろ、そういった問題を可視化して地域の人とどう分かち合っていくかが本来の専門職の役割ではないのか、という意見が出された。

○ また、専門職側が、制度では対応できないと言ってしまえば、それは地域も見ているので、専門職と同じように行動を起こしてしまう。つまり、地域云々より、専門職がどういう姿勢でやっていくということが何よりも重要という認識に至った。

 

【原田座長小括】

○ 「我が事」にしていくため一つの大きなキーワードとして、「知らないということをどう乗り越えていくのか」というのがあった。「正しい理解」「情報の共有」といった意見もあったが、「仕掛け」としてどうしていくか。そしてこの時に専門職だけでなく、当事者参加や当事者と考える場を地域の中でどう作るかがポイントとなる。「多角形の関わり」というキーワードもあったように、専門職とそのクライエント利用者という一対一ではなく、沢山の人が関わる多角形の関わりを地域の中で作っていく。それをするには、何か課題が起こって課題のために集まるのではなく、日常の地域の中でどう交わる場を作っていくかというところが前提にあり、この点が共通しているところだった。

○ 一方でその日常の場に関われる人もいれば関わりにくい人もいる中で、本当に重度の、もしくは難しいケースの場合は、最初から全て「我が事」にしていくのは無理があって、「少し丸くして」というキーワードがあったが、少し関係者がしっかり関わることでそのとげとげしい状態が少し丸くなって地域に関わっていくというような段階がとても大事で、そのときの支援者の支援、あるいは民生委員の支援のようなことを専門職がどう考えていくことができるのか。

○ ただし、専門職が従来、制度やサービスでその人達を切り取って支援をしてきたが故に、その地域から見えなくしてしまったのも専門職の責任としてあるのではないか。むしろ専門職はその地域の課題としてどう見える化していくかが問われる。

○ そのときのネックの一つとして、個人情報と守秘義務の問題がある。「我が事」にしていくときの個人情報が大事であると同時に、そこをどう共有していくのか、仕掛けや仕組みの問題があるのではないかとの指摘があった。

 

 

論点3「住民に身近な圏域で「我が事・丸ごと」の地域づくりをしていくために、専門職に求められる機能、役割は何か。」

 

【第3グループ報告】

○ まずは人材をどう育てていくかを中心に議論した。この人材はスーパーマンではなく、俯瞰する力であったり開発する力、あるいはネットワーキングできる力が必要という話があった。こういう人材は、一人ひとりが個別ケースにちゃんと向き合っていきながら事例から学ぶもので、特に専門職だけで事例検討をするのではなく、住民とともに地域からも学んでいくことの重要性を確認した。

○ 専門職は、高齢、障害、児童、貧困といった縦割りの制度に規定される部分で動くが、これを制度福祉ではなくて地域福祉人材として、地域との連携や専門職との連携を意識していくことが求められる。また、地域の活動を評価する、可視化する、言語化する、そういった力も「我が事・丸ごと」をしていくためには専門職側にも求められる、という意見もあった。

 

【第2グループ報告】

○ 最初に議論があったのは、ソーシャルワーカーがなんでもかんでもやるのかということ。地域の中にはいろいろなプレーヤーがいて、福祉以外の人とつながりを作っていく力、地域の人たちの活動をバックアップしていく力、場合によっては思い切って地域に入っていくような力が必要だろうということを議論した。ただ、そういう力は、学校教育の中で獲得していくのは難しいのではないか、という議論もあった。そこで、一つはその地域の流儀、地域で行われていることに巻き込まれて、地域の人たちと一緒に仕事をしていく。地域の人たちが活躍できるような場や場面をつくっていくということと、もう一方では個別ケースにしっかりこだわって、地域の中できちんと受け止められるように自分から働きかけていく。つまり、その地域の方がたに合わせながらそこに巻き込まれていく部分と、そこから少し引いて個別ケースにしっかりこだわって、それに寄り添っていくという部分を行ったり来たりすることが重要との合意に至った。

 

【第1グループ報告】

○ 例えば地域福祉計画を作る際、その前提となるデータ、つまり地域にどのような課題があって、どこに原因があってといったエビデンスベースで考えていくことが重要だが、そのデータは行政にある。そこが縦割りになっており、情報を統合的に全体最適な計画を立てるためのエビデンスになっていないという課題があるが、その専門性を行政が発揮し、データをもとに地域、地区ごとに計画を立て、その振り返り等も含めて取組むことが必要との意見があった。

○ もう1点は地域づくりという視点での専門職とはどういう人か、どういう職があるのかについては、個別の専門分野ではなくて、横断的に全体を見渡す役割を持った人が必要で、例えば地域マネジャーのような方。では、そういう方に求められる能力について、先程のグループからもあったが、胆力のようなもので、やはり一定の経験や、地域の作法も含めた知見、それから人間関係構築能力、特にその地域の住民と信頼関係を築けるような能力、地域の様々な取組に一定のアンテナと理解を示せるような能力も必要だろうという話しがあった。

 

【原田座長小括】

○ 3つのグループに共通しているのは、チームでアプローチできる仕組みをどう作るかということと、専門職はスーパーマンではなくチームアプローチができる人材が必要になってくるということ。個別ケースの解決が縦割りにならないためには、住民とともに、もしくは当事者とともに課題解決できる力、そういう意味では地域ケア会議や協議体の取り回しなどをどのように実践するかという力も求められてくるだろう。

○ もう一つは地域福祉人材とか地域マネジャーという言葉が出てきたが、地域にしっかり関われる力をつけていかなければならないということ。具体的には地域に入る力、人脈を作ったり、交渉ができたり、胆力があったり、あるいは地域を見る力ということで、地域のアセスメントやデータ分析ができることなどがあげられた。討議のなかであった「巻き込まれつつ、一方で対峙する場面もある」というのがとても大事だと思う。専門職が巻き込むのではなくて地域に巻き込まれつつ、しかし、アドボカシーをしなければならない時には、そこは専門職として地域と対峙していく。そういう人材をどのような形で役割、機能として位置付けていくのか。そして、どう養成していくかが最も重要なテーマだろう。

 

(以上)

 

 


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