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2015年3月24日 平成26年度第1回水道における微生物問題検討会議事録

健康局水道課

○日時

平成27年3月24日


○場所

中央合同庁舎5号館6階専用第23会議室


○出席者

遠藤座長 秋葉委員 五十嵐委員 泉山委員 片山(浩)委員
片山(和)委員 勝山委員 岸田委員 国包委員 黒木委員
島崎委員 橋本委員 船坂委員

○議題

(1)クリプトスポリジウム検査法の陽性試料の供給について
(2)水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について
(3)微生物リスク評価を用いた水質管理手法について
(4)原水を対象としたクリプトスポリジウム等の検査法について
(5)その他

○議事

○服部室長補佐

 定刻となりましたので、ただいまより「平成26年度第1回水道における微生物問題検討会」を開催させていただきます。委員の皆様方には、御多忙中にもかかわらずお集まりいただきましてありがとうございます。本検討会の開催に当たり、事務局を代表して、厚生労働省水道課水道水質管理官の長坂より御挨拶を申し上げます。

 

○長坂管理官

 皆様こんにちは。水道水質管理官をしております長坂です。本日は、年度末の御多忙の折、皆様お忙しい中をこの微生物問題検討会に全員御出席ということでお集まりいただきましてありがとうございます。微生物問題検討会は、ほぼ1年ぶりの開催になりますが、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 水道における微生物問題という意味では、水質基準のある化学物質のほうもこれまた大事な問題ですけれども、微生物のほうはすぐに食中毒に結び付いてしまうということですので、水道水中の微生物問題は非常に重要な問題と認識しております。現時点で特段非常に大きな問題がある状況ではないことは認識しておりますが、本日ほとんどの議題に関係しておりますクリプトスポリジウムについては、なかなかその検査法が難しい問題を今でも抱えていることもあり、こういうことに対して少しでも最新の科学的知見も参考にしつつ、より改善できる部分は改善していけたらと考えております。この微生物問題検討会で、少しでもそういう方向に役に立つような御議論を頂ければ幸いと考えております。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 

○服部室長補佐

 本日は、委員の皆様13名全員に御出席いただいております。今回の検討会から、国立保健医療科学院の島崎先生、県立広島大学の橋本先生に新たに委員として御参加いただいております。御多忙中にもかかわらずお集まりいただきましてありがとうございます。

 初めに、事務局のほうから紹介させていただきます。先ほど挨拶を申し上げました水道水質管理官の長坂です。私は、室長補佐をしております服部です。係長の川崎です。係長の吉崎です。係員の河西です。

 続いて委員の先生方を、座席順に御紹介をさせていただきます。国立保健医療科学院の秋葉委員です。国立医薬品食品衛生研究所の五十嵐委員です。国立感染症研究所の泉山先生です。東京大学の片山浩之先生です。国立感染症研究所の片山和彦先生です。神奈川県内広域水道企業団の勝山委員です。国立保健医療科学院の岸田委員です。検討会座長の国立感染症研究所客員研究員の遠藤先生です。元・静岡県立大学の国包委員です。神奈川県衛生研究所の黒木委員です。国立保健医療科学院の島崎委員です。県立広島大学の橋本委員です。一般社団法人全国給水衛生検査協会の船坂委員です。

 マスコミの方におかれましては、カメラ撮りは会議の冒頭のみとさせていただいておりますので御協力をお願いいたします。

 配布資料の確認をお願いいたします。

 

○吉崎係長

 配布資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第、委員名簿、席次表があります。次に、資料1「水道クリプトスポリジウム検査法の陽性試料の供給について」ということで、資料1と参考として1枚ずつ添付してあります。資料2「水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について」が全5ページ。資料3「微生物リスク評価を用いた水質管理手法について」が全32ページ。資料4「原水を対象としたクリプトスポリジウム等の検査法について」が全35ページ。資料5「水道において特別なエボラウイルス対策が必要でない根拠について」が全3ページの資料となっています。不足等がありましたら事務局までお申し付けください。

 以降の議事進行は遠藤座長にお願いいたします。

 

○遠藤座長

 それでは、議題1「クリプトスポリジウム検査方法の陽性試料の供給について」泉山委員から説明をお願いいたします。

 

○泉山委員

 資料1(参考)の所から順に説明します。クリプトスポリジウムは消化管に寄生して、下痢症の原因となります。クリプトスポリジウムは、オーシストという、塩素消毒に抵抗性を有する形を取りますので、国内外で、水道を介して水系の集団感染が生じます。このことから、いろいろな指針等対策が図られています。

1番の「背景」に戻ります。クリプトスポリジウムの検査は、その技術や経験が必要で、更に検査精度を確保するために陽性試料、いわゆるポジティブコントロールを用いて精度管理を行う必要があります。この精度管理に用いる陽性試料は、遺伝子検査用の供給がなく、また顕微鏡用であっても、海外からの輸入に依存していて、費用や時間を要していたという問題がありました。

 一方、国内ではクリプトスポリジウムを保有する施設はあったのですが、クリプトスポリジウムの検査を行う、例えば民間の検査機関に対して、陽性試料を販売したり、提供したりすることは考えられていませんでした。この状況を改善し、国内で安定的に陽性試料を調達できるようにして、精度管理を可能とすることを企図しました。この件では、厚生労働省の水道課長より、感染症研究所の所長に対し、陽性試料を安定的に供給しようとする者に対し、クリプトスポリジウム及びジアルジアの株を交付するように協力の依頼が出されました。平成265月より、国立感染症研究所において、これらの菌株の交付を開始しました。

2番の「結果、状況」についてです。国立感染症研究所では「製品交付制度」、例えばワクチン等の株を、製造企業へ交付する制度です。この制度の中で、陽性試料を供給しようとする企業に対し、株の交付を行いました。ジアルジアの株は平成271月に、クリプトスポリジウムは3月です。相手方企業に関しては、製品交付の制度にのっとり、陽性試料の供給の公共性、必要性、バイオセーフティの観点に問題がないこと等を審査した上で交付を決定しております。さらに、国内で水道検査に関連する製品を販売、供給していて、ユーザーサポートの一環として長期の安定供給が期待できること、また感染させた実験動物の管理をきちんと行うことができるということを確認しております。現在は、当該企業において陽性試料の国内供給体制の確立に向けて準備が進められております。私からは以上です。

 

○遠藤座長

(参考)についてはよろしいですか。

 

○吉崎係長

(参考)について、事務局から少し説明させていただきます。参考として付けさせていただいている資料については、泉山委員から御説明のあった補足的な資料になっています。現在通知として出されている水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針の中には、クリプトの検査法として2つの方法が記載されています。1つ目は、蛍光抗体染色の顕微鏡による検査です。2つ目は、今回陽性試料の供給体制を確立しようとしている遺伝子検出法について書かれています。遺伝子検出法については、平成2432日に新たな検査法として追加されたものです。ただ、その検査の精度を確保する上で、必要な陽性試料の入手について容易ではないといった状況であったことから、今回の対応を頂きました。

 「課題解決に向けた動き」として、御説明いただいた内容をポンチ絵にして示しております。こちらについては、厚生労働省健康局水道課から、国立感染症研究所のほうに平成265月に依頼文書を発出し、今年の1月にはジアルジア株、3月にはクリプトスポリジウム株を交付していただいている段階です。今後は、企業のほうで陽性試料の供給体制を確立していただいた後に、水道事業者等、また登録検査機関に販売できる体制が整っていく予定です。

 

○遠藤座長

 ただいまの説明を受け、御意見、御質問等をお願いいたします。

 

○船坂委員

 私どもの全国給水衛生検査協会は、水質検査登録機関が152機関集まっています。そこでクリプトスポリジウムの検査を行っております。各検査機関としては、クリプトスポリジウムを検査している機関が大半なのですけれども、最終的にその判定の段階で、それぞれ困っていて、セカンドオピニオン制度を協会の中に設置し、そこでクリプトスポリジウムの実務経験者と遠藤先生を中心に委員会を設けて会員の検査結果の補完的な役割を果たしております。

 私どもの協会は、国のほうにはポジティブコントロールを分けていただきたい、あるいは提供できるような仕組みを作ってほしいということを前々から要請していて、ようやく日の目を見ることになりました。そういう意味では、今後私どもの全国給水衛生検査協会としても精度管理ができるし、更に各機関の検査技術の向上も図られると思っています。大変有り難いことだと思います。そこで、もう少し具体的にどれぐらいの個体数のものが、お値段は幾らぐらいで提供されて、いつ頃から販売されるかをもう少しお聞かせ願えますか。

 

○泉山委員

 具体的にいつから、どういう価格で販売されるかという御質問だと思うのですが、残念ながらまだ企業側で株を受け取ったばかりで、今後の検討課題だと思います。情報が入りましたらお伝えします。

 

○船坂委員

 大体でもいいのですが、まだ全くの白紙ですか。

 

○泉山委員

 はい、まだ具体的なことは伺っていないです。

 

○岸田委員

1点質問させていただきます。実際に陽性試料を提供する際には、クリプトスポリジウム等を不活化、固定してから提供すると思うのです。今回販売する際にはどのような固定方法を取られるのでしょうか。

 

○泉山委員

 現在のところは、紫外線照射によって不活化をして販売すると聞いております。

 

○遠藤座長

 本検討会などから当該業者に対して注文みたいなものも出し得る状況にあるのでしょうか例えば価格に関しては安く抑えるようにご努力戴くとか。

 

○泉山委員

 要望を出すことはできると思いますので、是非声を上げてみていただければと思います。

 

○勝山委員

 今、これは1社に供給したということなのですが、今後は他の企業に供給する予定はないのですか。

 

○泉山委員

2社目以降の希望がもしあれば、交付することは考えられます。今のところ1社だけになります。

 

○遠藤座長

 ようやく和製の陽性試料が供給されるということです。なるべく早く製品化されることを期待したいと思います。

 続いて次の議題2「水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について」事務局から説明をお願いします。

 

○吉崎係長

 資料2を用いて、「水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について」を御説明いたします。今回提供する議題として、毎年水道課のほうで、水道事業者等にアンケート調査を行っており、その結果の報告という形で認識していただければと思います。

 資料には、水道事業、水道用水供給事業及び専用水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針に基づく浄水施設への対策状況等の結果を示しております。1ページの下のフロー図に関しては、水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染のおそれの判断の流れを示しています。指標菌検査等で汚染のおそれがあって、地表水の場合にはレベル4判定ということで、そうした所についてはろ過設備、濁度0.1度以下を保てるような施設を整備しなさいということが定められています。

2ページ以降に調査結果をまとめてあります。平成263月末時点の対策指針に基づく予防対策の実施状況を3ページの表-1に示しております。またレベル別の浄水施設の数についての経年変化を4ページの図-2に、レベル4、レベル3施設の予防対策の実施状況を図-3、図-4に示しております。その他まだレベル判定していない施設について、その水源内訳を図-5に割合として示しております。

 まず、表流水、伏流水、浅井戸又は深井戸を水源とする浄水施設が全体で2150施設ありますけれども、そのうちクリプトスポリジウム等による汚染のおそれがある施設(レベル4、レベル3判定された施設)が約37%の7,368施設あります。そのうち5,030施設については、既にろ過設備等の対策がなされていて、予防対策について実施済みということです。残る2,338施設については、そういう危険があるものの、まだ施設整備がなされていない所です。主には簡易水道等の小規模な水道事業者によるものが多いという結果になっております。これらの施設では、当面の措置として、対策指針に基づいて、原水の水質管理を徹底し、クリプトスポリジウム等が混入するおそれが高まった場合には、取水停止の措置を行う等の対策をしています。

 次に、レベル別の浄水施設の経年変化を見ると、まだレベル判定をしていない施設数は図-2のグラフの一番下の白い枠の所ですが、平成22年度で3,284施設あったのが年々減ってきていて、平成25年度末では2,001施設がまだレベルが未判定の施設になっています。レベル4、レベル3判定されて、まだ対策がされていない施設についても、年々その数は減ってきていて、徐々に対策は進捗している状況です。

 クリプトスポリジウム等の汚染のおそれの判断を行っていない施設が2,001施設あるという説明の中で、その水源がどうなっているかを図-5に示してあります。こちらについては、約60%が深井戸を水源としています。なぜまだ判定していないのかという問もしており、その中では原水の状況から検査不要と認識している事業体が多数存在することが確認されております。ただし、深井戸については汚染のおそれは少ないとはいえ、その施設がきっちりされていないと、表流水等が混入するおそれもあるということで、レベル判定については、早急に実施するよう引き続き指導していきたいと考えております。

 最後に「近年のクリプトスポリジウム等の検出状況とその対応の事例」ということで一覧を5ページに載せております。平成26年度については、4件の給水停止等の対応を行った事例について、厚生労働省水道課のほうに報告があがっております。北海道、岐阜県でそれぞれ1件、長野県で2件の報告が上がっています。これらについては、長期的な対応としては、膜ろ過施設を今後設置していくであるとか、紫外線照射設備の設置又は飲料水の供給施設の統合といった対応が考えられています。浄水処理が塩素処理のみの場合、クリプトスポリジウム等が原水で出てしまったときには、そのまま危険にさらされてしますため、当面の措置としては、別の地区からの給水をするというのが3件、あと1つは仮設で紫外線設備を設けて当面運用するということで、長期的な対応も含めたかたちで報告が上がっています。資料2の説明は以上です。

 

○遠藤座長

 ただいまの事務局の説明について、御意見、御質問等がありましたらお願いします。

 

○国包委員

 レベル1、レベル2、レベル3、レベル4という色分けをして対策を取るようにということが表に出たのはもう10年ぐらい前でしょうか、あるいはもうちょっと前になるかもしれません。その時にも私は関わったのですが、何年かたって、例えば図-2、図-3、図-4を見ると、かなり安定的な状況になってきています。対策を検討中という所も、給水人口で見ると、そんなに大きな数字ではないにせよ、ずっと対策中という所がかなりの割合で残っています。

 幸いにも、深刻な事故は起きていないですけれども、ただ、いつ、どこでまた事故が起きないとも限りません。そういう意味では、せっかくこういうレベル分けをしてきちんと対応するようにという指導をされているのですから、もう一押しこの辺で何か考えなければいけないのではないかという気が、この数字を見てしたのですけれども、いかがでしょうか。

 

○吉崎係長

 水道関係者の担当者会議などでは、レベル判定及び汚染の恐れの高い施設の対策の実施を早急にしてくださいということを言っており、徐々に減ってきてはいる状況であります。ただし、レベル4判定された施設の対応として、ろ過施設を設ける話になってくると、なかなか早急に対応できるものでもなく、難しいという事業体もあります。そういった事業体についても、可能な限り早急に対応しなければいけないわけですが、計画的にその対応を進めていかないと、対応検討中という状態が継続していくだけになってしまう恐れがあります。その辺の指導方法については、今後検討すべき課題だと考えております。

 

○遠藤座長

 確かに国包委員から御発言があったように、この間対応を取っていない事業所が減っておらず、長期に渡りこの数字が残っていることは好ましい事ではありませんので、もう少し厳しい指導を頂いたほうがよろしいのかと思います。是非御検討いただきたいと思います。

 黒木先生、昔、深井戸でクリプトスポリジウムが多数出た例が兵庫県でありましたが、あの事例はは深井戸ではなかったですか。

 

○黒木委員

 深井戸ではなかったと思います。

 

○遠藤座長

 兵庫の事例はどのようなものであったか説明していただけますか。

 

○黒木委員

 兵庫の事例は、田圃の中の浅井戸だったと思います。それは、ヘビ型が検出されました。田の中に水源があり、外から簡単に動物が入れるような状況になっていました。たまたまそこにヘビが入っていって排泄したために、クリプトスポリジウムがその便に入っていたので汚染してしまったと思われます。定期的にそこの水道の検査をしていたときに、たまたまクリプトスポリジウムが見付かって、数が多かったので感染研の遠藤先生と泉山先生が遺伝子型を調べたところ、ヘビ型であったのが分かった事例でした。それは平成13年の兵庫県山崎町の事例だったと思います。

 

○遠藤座長

 基本的に井戸だから安全だというのではなくてケーシングというのでしょうか、井戸とは言え構造的な問題を解決しておかないと、そのような事故につながり得るのだということについては周知しておく必要があるのだろうと思います。このような典型的な例に関しては折に触れ説明していただけたらと思います。

 

○片山()委員

 今年の事例の中に、原水から検出とあって、これは処理をしていないから原水から検出と書かれているのですね。上水からは調べていないのですか。

 

○吉崎係長

 北海道の事例ということでしょうか。

 

○片山()委員

 長野も。

 

○吉崎係長

 北海道では、浄水でも検出、長野の場合は、1件は浄水未検出、もう1件は浄水検査の報告はあがってきておりません。

 

○片山()委員

 岐阜県損斐川町の事例では。

 

○吉崎係長

 岐阜県損斐川町は、急速ろ過ということになっているのですけれども、濁度の測定が簡易濁度計によるものであり、念のため給水停止を行い、別のところから給水することとした事例であります。

 

○片山()委員

 分かりました。

 

○遠藤座長

 給衛協さんは、クリプトスポリジウム検査を年間でどのぐらいあるのですか。

 

○船坂委員

 申し訳ありません、データを持っていないです。一部の機関では、年間数千件検査をしている機関もあります。トータル的なものはつかんでおりませんけれども、全般的には、結構な数の検査が実施されていると思います。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 

○秋葉委員

 先ほどから地下水の話が出ていましたけれども、表-1で専用水道です。専用水道は最近増えている傾向です。結局その中でレベル不明というのは、当然のことながら地下水は専用水道が多いですから、パーセンテージが非常に高くなっているということです。表-2を見ると、専用水道でも検出例があるということです。この辺は最近設置されたものなのか、昔からあるものなのか。専用水道というのは、結局県から市のほうに権限を移譲し、その辺の指導はどうなっているのですか。

 

○吉崎係長

 今回、この値として上がってきている施設が、最近設置されたものかというところまでは把握していません。権限は平成254月から専用水道等は市のほうに移管されていますので、そちらのほうで指導をしていただいています。最近設置されたような施設については、対策等について審査を受けているものと認識しています。

 

○橋本委員

 各年度でそれぞれいろいろと問題があって、長期的対応を各自治体でされているということですね。この長期的対応というのが、例えばどこまで取られているのかという情報、これは個人的な興味になってしまうのですが、例えば損斐川町の例だと、昨年度出てきて、濁度管理を強化してマニュアルを作って、また今年も出てくる。これは対策が取られたのか、取られていないのか分からないというイメージだと思うのです。もし可能でしたら、そのような資料もあったらいいと思いました。

 

○吉崎係長

 長期的対応というところで報告を受けたまでで、情報が止まっていますので、その後のフォローアップも必要かと考えております。損斐川の事例は、平成25年、平成26年が同じだったかどうかは把握していないのですけれども、その辺のフォローアップもしていく必要があるかというのは感じています。

 

○遠藤座長

 同じ施設だったのか、違った施設なのかもはっきりしておりません。重要な点ですので分かり次第教えていただければと思います。

 

○黒木委員

 ここで「対応と事例」といいますか、5ページに事例がずっと並んでいます。ジアルジアあるいはクリプトスポリジウムが検出されたということなのですが、汚染源が分かっているのはありますか。

 

○吉崎係長

 厚生労働省への報告には、汚染源がこれだったので、クリプトスポリジウムなりジアルジアが出たというところまでの情報は頂いておりませんので、汚染源について把握されている所もあるとは思うのですけれども、こちらのほうでは情報として把握できておりません。

 

○黒木委員

 対応を取るときに、いろいろな対応の取り方があると思うのです。やはり汚染源を把握することがかなり重要だと思います。そういう意味で、できるだけ汚染源を把握する努力をする。把握した上で対応をどうしようかということにつながると思いますので、そこまで注目をしていただく必要があるかという気はしています。

 

○遠藤座長

 汚染源まで特定しなさい、あるいは報告せよということはなかなか難しい問題だとは思いますが、可能であれば汚染源が分かっている例については、汚染源も併せて報告していただけると参考になると思います。よろしくお願いします。

 

○黒木委員

 先ほど平成13年の事例の話をしましたけれども、その時には感染研で遺伝子型を調べて、どの動物が汚染源だということが特定できた事例になりました。もしそうやってクリプトスポリジウムやジアルジアを確保することができて、それの遺伝子型を調べる。もちろん水道事業体でやるのは難しいでしょうから、できるだけ感染研に協力をしていただいて、そこまでやっていただければというところもあります。それは、可能な範囲とは思うのですが、そういう方向性も少しあると、ある意味理想的な姿になってしまいますけれども、そういうところが必要かという気はしています。

 

○遠藤座長

 いろいろなご意見を頂きましたので、厚生労働省からはなるべく良い形で指導を頂けたらと思います。よろしくお願いいたします。

 次は、資料3の「微生物リスク評価を用いた水質管理手法について」、これは島崎委員から説明をお願いいたします。

 

○島崎委員

 資料として大変分厚いものを用意してしまい、全部紹介するわけにはいきませんので、エッセンスのみを紹介させていただきます。細かいところはお持ち帰りいただき、後ほど目を通していただければ幸いです。

 前回の本検討会でも紹介させていただきましたが、平成23年度から平成25年度、昨年度までの3年間、厚生労働科学研究で「水道の浄水処理および配水過程における微生物リスク評価を用いた水質管理手法に関する研究」を実施させていただき、その成果を昨年度に報告いたしました。

 厚労科研自体は昨年度で完了したわけですが、その後、水道課よりフォローアップ的な調査を依頼されています。特に、国内外の微生物リスク評価を用いた水質管理手法に関する情報を引き続き収集することと、我が国の水道の水質管理への適応に資する技術的知見を整理し、微生物問題検討会にて話題提供をしてもらいたいということで、今回このような形で報告をさせていただきます。

 メンバーは私、それから京都大学の伊藤禎彦先生、お茶の水女子大学の大瀧先生、東京大学の春日先生の4名で、各先生方から情報を頂きましたので整理して紹介いたします。

 まず、「諸外国における微生物リスク評価手法の現状」として京都大学の伊藤先生より頂いた情報です。オランダは、前回も申しましたように、微生物リスク評価に関してはかなり先進的な取組がなされております。水道の水質基準の中に、「指標微生物による年間の感染リスク10-4 未満を満たすこと」というのが明文化されて、水道行政にて定量的な微生物リスク評価が活用されております。

 表1に示していますが、これは一番新しい情報で、一昨年(2013)9月にブラジルで開催されたIWAの健康関連微生物の専門家会議(Watermicro 2013)での報告ですが、オランダ国の12浄水場で4種類の指標微生物、エンテロウイルス、カンピロバクター、クリプト、ジアルジアを対象にして、46ケースの定量的な微生物リスク評価をまとめたものです。

12か所の浄水場の中で、オランダの基準であるところの年間感染リスク10-4 未満を満たすのは6浄水場しかなかったということと、その中で最も超過しやすかったのがカンピロバクターであったということです。Median10-4 を超えた所が4ケースありました。

 ただし、御承知のとおり、オランダでは一切塩素消毒等を浄水処理で行っていない、また、配水過程での残留消毒剤も無い状況ですので、塩素が存在する状況下では、もう少し容易にコントロールできるだろうとは言えると思います。

 次のページです。引き続きオランダの話題ですが、このような定量的微生物リスクに関する研究を先進的に行っているKWRが中心となって、watershareというプラットフォームが立ち上げられたという情報を頂いております。これは、オンライン上でアクセスできるプラットフォームで、水道分野を中心とした実務的な課題に対応するための、23種類のソフトウェアツールが公開されており、その1つとして、先ほどの表1に示したような定量的微生物リスク評価を行うQMRA spotというソフトウェアも公開をしている。ソフトウェア自体の無償利用は可能なのですが、プラットフォームに参加すること自体に関しては会費が必要であるとのことです、そのような場の立ち上げも、オランダはここ数年取り組んでいるということです。

2-2WHOやその他の国」です。WHOで、現在このQMRA、定量的な微生物リスク管理に関するガイドブックの編纂を進めております。既に飲料水水質ガイドラインの中にも、定量的な微生物リスク評価に関する記述がありますが、そのほかに下排水の農業あるいは漁業利用に関するガイドライン、レクリエーション水に関するガイドラインと、3つのガイドラインがあり、それぞれのガイドラインにおけるQMRAの手法を調和させることを目的として、1つのガイドブックを作成する。それぞれの分野の実務担当者が実務に導入することが可能となるようなガイドブックを目指していると聞いております。やや遅れていて、来年度以降に公開される見込みです。そのほか、このような微生物リスク評価の手法を導入しつつある国としては、アメリカEPA、カナダ、オーストラリア等があるとのとです。

 次は国内の状況です。3-1が「飲料水健康危機管理実施要領の状況における報告状況」です。これは水道課から提供いただいた情報を基にまとめております。図1がクリプトスポリジウム、図2がジアルジアの原水中濃度です。横軸が対数軸になっているので、それぞれのマス目が、12345から67から9オーシスト又はシスト数(10Lあたり)に対応することになります。

 各々の検出率は明らかではないのですが、岸田委員による2010年度全国調査の参考値としてはクリプトスポリジウムの検出率が27%、ジアルジアは20%ということですので、おおよその参考になろうかと思います。

3ページです。個別の水道事業体からの情報ということで、3-2が「利根川・荒川水系の存在状況」です。御覧のとおり、利根川・荒川水系では、AB2つの浄水場において、2002年以降2011年まで、10年間継続的に検出されるという状況が見て取れます。

4ページは淀川水系の3か所の浄水場での、クリプトとジアルジアの検出状況です。これは対照的に、2000年から2004年、2005年辺りまで、クリプトスポリジウムは検出されていて、それ以降は検出されていない状況です。これは、畜産排水の管理がこの水源で強化されたことによるとの説もあります。

5ページです。ジアルジアに関しては2009年のみ、5月から8月あるいは9月から12月の間に、突発的に1度検出されていて、それ以外は淀川水系では検出されていない状況です。

6ページです。ある事業体ではエンテロウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスの3種類を対象として、平成19年度以降、年に3回、6浄水場の7か所で測定を継続しております。図13がエンテロウイルス、図14がノロウイルスで、ともに継続的に検出されています。特に、冬季の検出状況が高いことがうかがえます。

 オランダの例でも、このようなエンテロウイルス等の微生物リスク評価を行うことが多いということで、我が国でもこのような頻度やクオリティを備えた測定データを、特に微生物の汚染が高いような水道原水を中心に蓄積することが、今後は望ましいと考えております。

3-5に示しているのは、微生物の浄水処理工程において細菌の除去あるいは不活化の過程を継続的に測定した例です。リスク管理というよりはむしろ工程管理の意味合いが強いのですが、これも特定の浄水場において、一般細菌、従属栄養細菌、大腸菌群や大腸菌をそれぞれ継続的に調査されている。これらのデータにより、各浄水処理プロセスの中で、どの程度除去・不活化の能力が変化しているか明らかにできます。そういう意味では、これも非常に貴重なデータであると言えますし、個々の浄水場で処理能力に関するこういったデータを溜めていくことで、先ほど示したような定量的なリスク評価の基礎データとして活用できることになりますので、各事業体でデータを溜めていただくことが望まれると考えています。以上が国内外の存在状況等に関する報告です。

7ページ以降から少し話題が変わりまして、お茶の水女子大学の大瀧先生からの情報提供です。微生物に対する消毒による不活化能力の評価を行うに当たって、過去の研究では、どのような種類の大腸菌を使っているか、あるいはどのような培地や測定方法を使っているのか、そのことが不活化実験に及ぼす影響は如何という観点から、1980年代以降から最近までの文献を網羅的に調べたものです。

 大腸菌は御存じのとおり、糞便汚染の指標としてかなり長いあいだ使われており、これまでに国内外の浄水処理プロセスにおいて塩素消毒あるいはオゾン処理等の不活化効果を調べる場合にも、多くの場合は大腸菌が用いられています。しかしながら、4-2を見ていただきますと、61種類の大腸菌遺伝子を検査したところ、それぞれの大腸菌で僅か20%しか共通の塩基配列を持っていない。ほかの80%は他の大腸菌には見つからない配列であることが指摘されています。

 そうしますと、消毒剤による不活化効果を考えるときにも、実験に使用した大腸菌の種類によって効果の高低が変わってくるだろう、もしかしたら不活化の作用機序じたいも異なる可能性があると言えるわけです。

 実際の例としては8ページです。これは異なる大腸菌の菌株を用いた場合に、UVの波長ごとの不活化処理後に可視光によって光回復を行った場合の濃度変化の違いを示したものです。図16の左側にあるNBRC3301株に関しては、いずれの波長においても光回復が見られていますが、右側のNBRC13965株では、光回復が見られないことになります。異なる株を採用するだけで、同じ条件で実施した紫外線処理後の可視光による光回復効果について、全く異なる結果を導くことになります。この不活化あるいは光回復のメカニズムは、大腸菌の菌種によって異なっている可能性があります。

 過去20年以上の文献において、どのような消毒実験で、どのような大腸菌が使われているかまとめたのが、9ページの表2です。

 実のところ、使用されている大腸菌の菌株にあまり統一性はないと言えます。代表的な菌株としては、K12とか、 E.coli C E.coli Bがよく挙げられていますが、特定の菌株が選択されている訳ではないようです。ただ、その中でもK12株の割合が多いようですので、今後はK12株を選択することが、統一的な評価方法とするために望ましいのではないか、さらに、水処理プロセスにおける消毒効果を評価するの大腸菌の株として、特定の標準株を定めるところまで進めてはとのコメントも頂いております。

10ページ以降は、大腸菌の測定法に関してです。これは大瀧先生が以前から取り組まれているご研究でもあるのですが、10ページの最初の所を少し申し上げます。

 水道配水管中の大腸菌の測定で、異なる培地を用いた結果、濃度に差が生じるという報告があります。これは塩素による損傷を受けた大腸菌がコロニー形成能力を回復できるかどうか、培養に使用する培地によって異なってくるということです。2種類の培地のうち、ペニシリンが入っているほうが、318倍回復する能力が高いということで、塩素による不活化効果の評価が、その後の培養に用いる培地の種類によって異なってしまうことが指摘できます。

 これまでの研究で、大腸菌の測定方法にどの程度違いがあるのかをまとめたものが、12枚目の表3です。用いた培地の種類として、選択培地あるいは非選択培地か、表の一番右側の列に示されています。割合としては、選択培地を用いた論文のほうが多いことになります。非選択培地を用いると大腸菌かどうかの判別が難しいという実用上の問題もあるのですが、選択培地を用いることの影響に関して、選択培地は特定の大腸菌のみを増殖させるために、界面活性剤や抗生物質を入れています。そのため、12枚目の下から10行目ですが、塩素やオゾンといった酸化剤を用いた消毒により、大腸菌のようなグラム陰性菌の細胞外膜への酸化反応を通じて外膜が変質し、その結果、グラム陰性菌であっても培地中の界面活性剤の影響を受けて増殖阻害が生じることになり、選択培地を用いると、コロニー形成能の失活の影響がより強く現れてしまう評価になるとのことです。

 このような差を生じることは、消毒効果を評価するに当たって、更に危険側の評価となってしまいますので、特に選択培地を用いた実験に関しては、その解釈に留意が必要であるとのご意見です。

 実際の例として、13枚目以降に、主に大瀧先生のこれまでの研究成果が載っておりますが、具体的に選択培地と非選択培地によってどのような差が出るのか示されております。図17は、塩素消毒を施した大腸菌に対して、様々な培地を用いて培養方法を変えてみると、非選択培地は「TSA」と書いてあるものですので、◆のプロットですが、それよりも選択培地であるデソキシコレートあるいはコンパクトEC(C-EC)のほうが、不活化速度が有意に高くなっています。ですので、塩素消毒による不活化実験をした場合に選択培地を用いることによって、不活化速度を実際よりも高く見積もってしまう可能性があると示されております。

 同様のことは、図18のオゾン処理についても言えまして、これも非選択培地と選択培地の結果を比較してみますと、不活化速度の差が塩素の場合よりもかなり顕著である。非選択培地を用いた場合、ほとんど横軸上にプロットされており、オゾン処理による影響をほとんど受けていません。選択培地を使ってしまうと、かなり不活化効果が高いと評価されます。つまり、ほぼ全ての大腸菌が増殖能力を維持したままであって、不活化効果はほとんどないはずなのに、選択培地を用いてしまうと、オゾンで99.9%不活化されたという評価になりかねず、この誤認は非常に大きいと指摘されています。

 その一方、14ページは紫外線消毒の場合です。紫外線に関しては、選択培地あるいは非選択培地という培養方法の影響はないというのが、図19、図20です。紫外線消毒は不活化のメカニズムが核酸の損傷によるため、細胞外膜の損傷や、細胞内の酵素など、培地の種類によって影響を受けないということが端的に示されております。

15ページは二酸化塩素です。これは先ほどの話に戻りまして、多くの大腸菌は二酸化塩素による消毒後も増殖能力を維持したままであり、不活化効果は非常に小さいものの、コンパクトEC培地で評価してしまうと、有意に濃度が減少しているという誤った評価になる恐れがあります。

 以上、過去の研究を参照して、大腸菌に対するオゾンや二酸化塩素等による不活化効果の評価を行う場合、それぞれの過去の論文がどのような大腸菌の菌株を使っているか、あるいはどのような培養法で評価をしたかというところに立ち返ってみないと、評価を誤る可能性があることに気を付けなければいけないということ、また、今後、消毒効果の評価実験を行う場合には、その点に十分留意した上でデータを溜めていく必要があるだろうとの御提案を頂いたということです。

 続いて16ページです。これは東大の春日先生からの提供です。培養法とは異なる方法、フローサイトメーターを用いて、全菌数および生菌数の時間変動を浄水処理工程において評価したという試みです。フローサイトメーターを使って極めて短時間のうちに現存している細菌を把握する。それを工程管理等にも活用することが提案されております。

 御存じのとおり、一般細菌では24時間、従属栄養細菌は7日間の培養が必要となり、リアルタイムに細菌の濃度を追跡することは不可能ですし、その培養法でコロニーを形成できる細菌は、全細菌のうちたかだか数パーセント程度であるということも重々知られております。そこで、フローサイトメーターを活用することで、迅速かつ正確に現存する細菌数を測定し、細胞の膜損傷性を指標にした生菌および死菌の判別を用いて、オゾン-生物活性炭処理を用いた高度浄水処理工程を対象とした、前塩素処理の実施前後における菌数の測定を行いました。

 特定の浄水場で原水、凝集沈殿、前段ろ過、オゾン、生物活性炭、後段ろ過、浄水までの各工程水を採取し、全菌数の測定にはSYBR Green I 染色、生菌と死菌の判別にはPI染色を用いています。

 結果が18ページです。上半分が前塩素処理の実施前後における生菌と死菌の両方を合わせた全菌数の時間変動です。左側が前塩素処理の実施前、右側が前塩素処理の実施後となります。下半分が生菌数で、これも左側が前塩素処理の実施前、右側が塩素処理の実施後となります。

 前塩素処理の実施前の時点での原水及び浄水の全菌数を比較すると、1.2×106cells/mLから5.6×103cells/mLに減少し、浄水処理全体で全菌数としては2.3log程度の除去率であることが確認されております。

 各工程における平均の除去率は凝集沈殿が36%、前段ろ過が27%、オゾンが96%、後段処理ろ過が82%となり、後半のプロセスであるオゾン処理や塩素注入を伴う後段ろ過での除去率がかなり高いことが言えます。

 その一方で、生物活性炭ろ過の後はオゾン処理後に比べて2.6倍ほど全菌数が増えているということで、従属栄養細菌等を含む細菌が生物活性炭から流出していることが確認されております。

 生菌数については、全菌数全体に占める生菌数は、おおよそ623%となっております。凝集沈殿および前段ろ過の生菌の除去率は、全菌数と余り変わらず、それぞれ49%と39%、その一方でオゾン処理水や後段ろ過水、浄水中は、ご覧のとおり定量下限値以下です。フローサイトメーター自体、余り細菌数の定量下限は高くなく、1,000cells/mL程度ですので、それより下の濃度の細菌は測れないことになります。このような限界はありますが、生菌自体はオゾン処理以降、ほぼコントロールできていると判断されます。

 フローサイトメーターを用いた測定では、極めて短時間にそれぞれの処理プロセスでの微生物の除去性能をリアルタイムに把握することができるということで、定量的な微生物リスク評価のデータの蓄積に際して、このような測定方法の活用も考慮できるだろうということを、結論として頂いております。

 最後の話題です。これは私ども保健医療科学院での検討です。高濁度原水が発生した場合に凝集処理が不良になる場合を想定し、私どもの小型浄水処理実験プラントを用いて、クリプトスポリジウムの除去性および感染リスクの評価を実施いたしました。

 御存じのとおり、集中豪雨などに伴う非常に濁度の高い、有機物濃度の高い水道原水の処理に対して、中小の事業体が苦慮しているケースが各地で多く見られており、さらに、クリプトスポリジウム等が高濃度で含まれるような原水が浄水場に入ってくる事態も懸念されます。

 ここでは浄水処理実験プラントを用い、凝集不良や沈殿不良といった、浄水処理能力が低下した状況が生じた場合に、まず二段凝集処理によってどの程度まで原水中の濁度およびクリプトスポリジウムの除去ができるか検討をいたしました。

 さらに、凝集沈澱および砂ろ過によるクリプトの除去性に基づいた、感染リスクの低減効果を試算いたしました。ここでは、砂ろ過水を浄水として直接飲用した場合と、砂ろ過水に対してさらに紫外線処理を適用した場合の両方について、感染リスクの比較をいたしました。

20ページの図24に示した小型実験処理装置を用い、原水としてカオリンとベントナイトをそれぞれ半量ずつ混合した濁水を調整し、クリプトスポリジウムオーシストを模擬したトレーサー粒子を添加しました。

 また、採水箇所としては図25に示すように、原水、凝集沈殿の後の沈殿水、シナリオによっては砂ろ過の直前に二段凝集剤を添加した上で、最終的なろ過水を採取しています。

 細かいシナリオの説明は省略させていただきますが、表5のようにRUN1からRUN7まで原水や運転の条件を変えて、原水濁度を最大1000度まで変動させるシナリオ、濁度一定で通水するシナリオ、RUN3は傾斜板の除去により沈殿不良を生じているシナリオで、RU4RUN5に関しては、凝集剤の注入率を不十分として、濁質が漏えいしやすいシナリオを設定しています。なお、RUN5に関しては、凝集剤として通常のPACではなく、超高塩基度のPACを用いており、これは濁度の凝集性に優れると言われています。

 また、クリプトスポリジウムの感染リスク評価に関しては、砂ろ過水を直接飲用する場合と、その後に仮想的な紫外線消毒を施して飲用する場合に関して比較を行っています。

 特に、高濁度の原水が浄水場に流入し、浄水処理の不良が起こる場合には、紫外線の照射効率自体も低下する可能性が考えられます。具体的には22ページ以降ですが、仮に紫外線消毒プロセスでの照射量として10mJ/cm2 が確保されているところに、紫外線吸光度が高い砂ろ過水が流入することで紫外線の透過率が低下し、クリプトの不活化効率が下がることが想定されます。初歩的な検討になっているかもしれませんが、表7のように砂ろ過水の紫外線吸光度と、紫外線によるクリプト不活化率との関係を推定し、紫外線処理によって何logまで不活化が達成できるか計算しています。クリプトの摂取による感染確率はHass式を用いております。原水中のクリプトスポリジウムは1L当たり100個とかなり高濁度に存在する状況を、非加熱飲水量は1L/日を設定しています。

 結果を示すと、様々な条件の中で、凝集沈殿から砂ろ過に至るまでのクリプトスポリジウムの除去率として、おおよそ5logから6log程度という値が得られております。表8の中央に示しているのが濁度のlog除去率、右側がクリプトスポリジウムのトレーサー粒子のlog除去率です。

 実際に浄水場において濁度管理をする理由の一つとしては、濁度除去と、クリプト除去との間に相関があるためと思うのですが、24ページを見ていただきますと、図27の凝集沈殿における濁度のlog除去率が横軸、クリプトスポリジウムのトレーサーのlog除去率が縦軸ですので、濁度と比較してクリプトの除去率はおおよそ同程度か、やや優れることになります。

 図28が、砂ろ過における濁度の除去率、クリプトの除去率ですので、これも先ほどと同様に、濁度と同程度あるいはそれ以上にクリプトのトレーサーは砂ろ過の過程で除去されていることが判断できます。ですので、濁度の除去性をモニタリングすることで、ある程度、クリプトの除去率も予測可能であると言えます。

 ただ、気になる結果となったのが25ページ以降の超高塩基度PACを用いた検討です。実際に砂ろ過での除去率を比較すると、超高塩基度PACのほうが従来型PACよりもやや低い結果です。特に、図29に示されているのですが、RUN5の高塩基度PACを用いた二段凝集において、濁度の除去率よりもクリプトの除去率が低い場合があります。高塩基度PACは濁度の制御には優れるのですが、クリプトのオーシストが相当する直径5μm付近の粒子の除去は余り得意ではない可能性があります。このことは、高感度微粒子計を用いた粒径分布の測定結果からも確認されており、濁度全体は適切に除去できていても、クリプトが残留する場合があり得るかもしれませんので、これは今後更に検討したいと考えています。そのようなところを図29,30に示しております。

 最後に、得られたデータを基に感染リスク評価を行ったのが27枚目、28枚目です。米国EPA等の目安となっている年間の感染確率が10-4 を超えるような結果を、イタリック体で示しております。

 今回想定した原水中のクリプト濃度100個、飲用水量1Lという条件下では、浄水処理全体で要求されるLog除去率としては、おおよそ6.5log以上の除去が必要となり、6.5logを下回る大半のデータに関してはいずれも感染確率は10-4 を超えるとの計算結果になります。

 ここに紫外線処理を付加すると、感染確率はどのように変化するか、28ページに示しております。砂ろ過水の紫外線吸光度については、ほとんど紫外線の照射を妨害しない程度であると言えます。若干、RUN6RUN7のような、ほとんど処理が行われていないような過酷なシナリオでは紫外線吸光度が上昇するのですが、少し凝集沈殿および砂ろ過の処理性能が低下したぐらいでは、ほとんど紫外線の照射効率には影響を及ぼさず、3.6log程度の除去率は確保されるとの結果です。すなわち、仮に凝集沈殿や砂ろ過で処理性能の低下が起こったとしても、後段に紫外線照射を追加することで、たいていの場合は、健康リスク上問題のない程度までクリプトの感染確率は落とすことができるだろうと。今回はそのような試算結果となりました。

 結論の所は重複しますので割愛させていただき、最後に「おわりに」と書いております部分ですが、このように紹介して参りました諸外国において導入が進みつつある微生物リスクの評価手法を、我が国の水道行政や水道事業の水質管理などの実務にどのように適用していくか、今後の課題であろうと考えております。

 具体的には、先ほど申しましたように、健康リスクの面で問題となるような指標微生物やウイルス等のモニタリングデータを個々の浄水場で蓄積していく、また、各浄水場の処理過程における除去能力の変動をモニタリングしてデータを溜めていくことで、各浄水場でどこに微生物リスク上の問題や原因があるか、どこの処理プロセスで微生物リスクの制御が可能であるか見えてくるかと思います。そのような科学的なエビデンスに基づいた、微生物に係る水質管理手法に今後展開していくことが望ましいのではないかと、今回まとめさせていただいたメンバー一同も考えている次第です。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。ちょっと長かったのですが、著者の四先生は研究班の中で、それぞれ別のテーマについてご担当頂いております。かなり広い範囲の内容になっていますが、コメント等、委員の先生方からご発言をお願いしたいと思います。ございませんか。

 

○五十嵐委員

 フローサイトメーターのところでお聞きします。フローサイトメーターは測定する水の量が非常に少ないと思いますが、この治験では縦軸の全菌数が非常に多く、濃い濃度の試料を測定していると思います。実際のフローサイトメーターの使い道ですけれども、今は多分、除去性能の評価で使っていると思いますが、これを原水の監視というところで使うことができるのかどうか。つまり、もしかしたら菌数が少なくて原水の監視は使えないのか、その辺はどうなのでしょうか。

 

○島崎委員

 そうですね。今回、対象としているのは全菌数あるいは生菌数ということで、かなり幅広い菌に関してモニタリング対象としております。多分、これは染色剤の種類によって特定の菌のみを測ることもできるかと思いますが、先ほど申したとおり、定量下限が1mm当たり1,000個程度というところがありますので、特定の細菌にターゲットを絞って、フローサイトで測るのはなかなか難しいだろうと思います。原水の監視もそうですし、処理工程の中での工程管理的な使い方もひとつあり得るかなと思っています。

 

○遠藤座長

 確認ですが、定量下限ですか上限ですか。

 

○島崎委員

 下限ですね。

 

○遠藤座長

 下限ですか。定量下限、そんなに多くないと拾わないのですか。

 

○島崎委員

 そうですね。1,000個以上ないと出てこないです。

 

○遠藤座長

 ほかにございませんか。

 

○国包委員

 いずれも19ページの6番目の項目の所で2つあるのですが、1つは、クリプトレーサーを加えたということですけれども、これは21ページの表にある全てのケースについて。

 

○島崎委員

 そうですね。説明が漏れてしまったかもしれませんが、19ページの下から3行目にありますとおり、1L当たりでかなり高濃度となる105 106 個入れています。これは除去率が4log5logとなると、それぐらいの数を入れないと最終的に顕微鏡でカウントできなくなりますので、最大100万個/Lまでの濃度で入れています。少し補足すると、原水の濁質としてカオリンとベントナイトを相当入れていますので、クリプトレーサーが5μm程度の微粒子に占める割合は高々数パーセント程度です。従って、クリプトレーサーを添加することによって濁度成分の構成に影響を与えることは、それほどないだろうと言えます。

 

○国包委員

 もし全部で入っているということであれば、それはそれでいいのですが、例えば20ページの図などでその辺りのことが明確でなかったので、確認させていただきました。もう1点、続けてよろしいですか。同じ19ページから書かれている濁質のカオリンとベントナイトのことですが、粒度分布のデータなどはないでしょうか、あると非常にいいと思ったのですけれども。もし今からでも後追いでデータが取れれば、あるといいと思います。

 

○島崎委員

 希釈した模擬原水は、高感度微粒子計で粒度分布を測っていますので把握はできています。それでは実際の原水と比べて、粒度分布にどの程度差があるかということになると、なかなか難しいと思われます。原水の場所によって、かなり粒径の構成比は異なるかと思うのですが、およそ、カオリンとベントナイトを11で混合してフミン質を添加すると、国内の河川水原水に比較的近い性状の模擬原水になるとの知見がございますので、最近、当方らの実験にて採用しております。

 

○国包委員

 少なくとも原水というか、もともと使ったカオリンとベントナイトの精製度合いというか、作り方によって粒度が全然違ってくるだろうし、そのことによって結果がまた随分違ってくるだろうと思います。そういった意味で、元の材料について基本的なデータを押さえておくといいなと思って、お尋ねした次第です。もし可能であれば、今からでも取っていただければと思います。

 

○島崎委員

 分かりました。ありがとうございます。

 

○遠藤座長

 ほかに、ございませんか。

 

○片山()委員

 感染研の片山です。6ページのウイルスの存在状況について教えていただきたいのですが、これは検出方法は何を使っているのですか。

 

○島崎委員

 私も直接は聞いていないのですが、確かリアルタイムPCRをお使いであったかと思います。

 

○片山()委員

PCRですね。

 

○島崎委員

 はい。

 

○片山()委員

 分かりました。そうしますと縦軸の単位ですが、「ウイルスの個数」という表現にしてしまうと誤解を招くことがあります。

 

○島崎委員

 個ではなくてコピーですか。

 

○片山()委員

 ゲノムコピー。

 

○島崎委員

 ゲノムコピーですね。そうですね。これは確かにおっしゃるとおりだと思います。

 

○片山()委員

 この値が、すなわち感染性の粒子の数を意味しないというところですね。

 

○島崎委員

 そういうことです。

 

○片山()委員

 東京大学の片山です。例えば27ページの表9で原水中のクリプトの濃度は100で、飲用水量1Lということでされていますけれども、一応、確認したいのは、前半のほうで御説明のあったオランダのほうでは、この濃度は原水の濃度を測定していて、それで濃度分布を与えて計算されていますよね。

 

○島崎委員

 そうだと思います。

 

○片山()委員

 ですから、ここで出てきている感染確率の持っている意味と、オランダのマイクロリスクで言っている10-4 というのは、直接の比較は難しいというか、どのあたりを注意してこの数字を見ればよろしいのでしょうか。

 

○島崎委員

 おっしゃるとおりで、これは完全に点推定でリスク計算を行っています。オランダで先ほど紹介したQMRAspotソフトウェアでは、モンテカルロシミュレーションで原水中の各病原指標菌等の濃度や、浄水処理の各プロセスの処理能力もすべて、変動幅を持って計算しているはずですし、その計算結果による10-4 ですので、オランダのほうが相当厳しい値になると思います。こちらは点推定ですので、過酷な条件までは押さえられていないですから、危険側の推定になっていることもあるかもしれません。また今回、log除去率の平均値で計算したところがあります。今後の課題としては、このような実験データを少し溜めて分布形を考慮した区間推定の方法で、よりオランダのようなやり方に近いような推定をやっていくことが課題だろうと思います。

 

○遠藤座長

 どっちに傾くのですか。オランダのデータと先生がおやりいただいたものと比べると、どちらの方向に傾くデータになるのでしょうか。

 

○島崎委員

 恐らく私どものデータが危険側だろうと思います。

 

○遠藤座長

 危険側にですか。

 

○島崎委員

 はい。

 

○片山()委員

 ただ、例えばRUN6とかRUN7というのは過酷な条件というより、あり得ない条件に近いというところで、実際に浄水場が破綻しているような状況に近いと思います。そういう状況の中でのリスク計算というのは、ほかの条件と同列に比較しなくてもいいのかなと思うというのが1つと、あと原水中の濃度がこれだけ常時高いということを仮定して計算しているということは、安全側に計算しようという値を与えに行っているのだろうというのはありますが、一方で、除去に対して変動を与えないというところは、それなりに危険側の要素が入っているのだろうと思います。

 私がこの質問をしたのは、このデータを基に紫外線を入れることになること自体はいいと思いますが、その際に紫外線を入れたから100パーセント安全だという議論で、実際のリスクを計算しているわけではないですから、6.5-Log以上取れれば絶対安全だという議論にならないように、リスクベースの議論で持って行けるような形で議論できればいいと思いました。

 

○島崎委員

 片山先生がおっしゃるとおりだと思います。最後のほうで申しましたように、紫外線導入等に限りませんが、リスクベースに基づいてどれだけリスクを低減できるかというところから、それぞれの処理プロセスの良し悪しを評価していくところに、今後、展開していくのがいいと思います。

 

○遠藤座長

 ほかに、ございませんか。

 

○泉山委員

28ページの表10の読み方ですが、除去率がRUN1の所(最上段)は2.9と出てきます。これは凝集沈でんと砂ろ過でもって除去率が2.9だったということ。

 

○島崎委員

 そうですね。前のページの表9と同じ除去率ですので、凝集沈でん・砂ろ過の合計値として、この除去率ということになります。

 

○泉山委員

 分かりました。2.9-Log取れましたと。その後(その行の右)に紫外線の不活化があって3.6が取れて、合計すると6.5-Logですか。

 

○島崎委員

 そういうことです。

 

○泉山委員

 除去なり不活化なりできたということで、EPA6.5-Logの除去に達しているので、ここの(その行の右の)感染確率のところはイタリックでなく、よかったということでいいでしょうか。

 

○島崎委員

 そういう試算となります。

 

○泉山委員

 分かりました。この凝集沈でん・砂ろ過の除去率、例えば1-Log取れた、2-Log取れた、それから紫外線の不活化率で3-Log取れたみたいな、そういうLog除去の考え方を、現場の水道の浄水処理の場所で導入できたらいいのではないかと考えていたのですが、いかがでしょうか。

 

○島崎委員

 それは、先ほどの話とも通じるところですが、例えばクリプトの現行指針で0.1のろ過水濁度が確保できたことと、クリプトが100%除去さているということとは、必ずしもイコールではないと思います。原水のクリプトなり他の病原微生物の存在状況に応じて、また、浄水処理の各プロセスでの除去率等も変わってきますので。オランダでは実際に感染確率10-4 未満を確保するために、各浄水場のプロセス全体で何ログ除去が必要という目標を、各浄水場が設定している。それと同じことが日本でも可能であるか、あるいは現状にそぐわないかどうかはさておき、各々の浄水場が各浄水プロセスについて、どの程度の微生物の除去能力を持っているのか、例えばLog除去率を指標として把握し、水質管理や運転管理に活用していくのが、今後の方向性としてはあり得ると考えているところです。

 

○泉山委員

 よく分からない部分があったのですが、オランダですと各工程でのLog除去率があって、それを足し算していって合計で何Log取れたということをしていて、日本でもそういうことができたらいいのではないかと、そういうことでいいでしょうか。

 

○島崎委員

 そうです。

 

○泉山委員

 分かりました。ありがとうございます。

 

○遠藤座長

 除去率の足し算ついてはWHOのガイドラインに、足し算の基となるデータがあったのではないかと思います。ああ云ったものも参考にしつつ、我が国でもどういうものがオプションとして可能なのか独自で検討していく必要があるだろうと思いますし、是非ともやっていただきたいと思います。それでクリプトの対策が前進すれば、喜ばしいことだと思います。是非、御検討いただけたらと思います。ほかにございませんか。

 

○片山()委員

 ここではオランダのことばかり触れられているので、一応、アメリカについてもログ除去率を足し算的に加える。今のこの計算に比較的近い形で、普通の処理であれば3-Log取れているけれども、原水のクリプト濃度に応じて追加処理をしなさいというふうな、今のLong Term 2 Enhanced Surface Water Treatment Ruleというのがあって、それでもクリアに単純足し算でやっている。オランダのほうは、それぞれの浄水場でファージの除去率とかを実測したデータに基づいて、この浄水場のこの処理ならとやっていますけれども、例えば日本の場合は浄水道施設設計指針など、処理に対してきめがしっかりしているものですから、この処理であれば、これだけの除去ができますよとなります。上水道施設設計指針のこの条件を満たせば、ウイルスは何ログ除去、クリプトは何ログ除去という数字をピタッとはめ込む何かがあれば、即座に実行可能なことだという気がします。ただ、その数字を当てるのは難しいと思いますけれども。

 

○遠藤座長

 これに関してはWHOでも議論があったところだったと思います。オプションを追加することによってログ除去率を加算して考えるという考え方については、特に抵抗はないと思いますが、厚労省として何かお考えをお持ちですか。

 

○吉崎係長

 現在は、研究ベースということで御意見、情報を頂いている中で、日本は全国一律濁度0.1度以下で管理していますが、定量的なリスク評価の考え方をまとめることができれば合理的な施設になるところもあるので、検討を進めて行く中で、そういう考え方もありかなと考えています。

 

○遠藤座長

 分かりました。ほかにございませんか。

 

○橋本委員

 同じく23ページ辺りで、リスクの話ではないのですけれども、凝集沈でんで特にRUN1RUN2で濁度をだんだん変えていった。高濁度でリークがあるかなと思うと逆で、高濁度のほうがクリプトなんかの除去率も上がってくると、そういうふうな解釈でよろしいでしょうか。

 

○島崎委員

 時間経過は表の上から下に流れております。つまり原水濁度を5度辺りから開始して急激に1000度近くまで上げて、また徐々に落としていくという流れですけれども、実験の最初の時点では、あまり砂ろ過が成熟していない状況にあったと言えます。ですから実験開始当初のデータは、リスク評価にあまり供するべきでないデータであったといいますか、少し通水して砂ろ過槽が十分成熟しているような状態から始めるべきであったのでしょうが、今回はいずれも洗浄直後のスタートアップの時点であり、濁質が漏洩しやすいような状況でした。本来、実際の浄水場であればスロースタートの採用などにより、通水初期の濁質の漏洩を抑制しております。半面、スロースタートを考慮していないような運転管理を実施している所では、こういった初期の漏洩はあり得るかもしれません。

 

○橋本委員

 この注入率は、濁度に対応して入れられた。

 

○島崎委員

 そうです。このRUN1RUN2に関しては、それぞれの濁度に最適な注入率でそれぞれ入れております。

 

○橋本委員

 分かりました。表5に書いてあるものですね。

 

○島崎委員

 表5です。

 

○遠藤座長

 今後とも御検討いただきたいと思います。ほかにございませんか。

 

○五十嵐委員

 ちょっと話は変わるのですが、7ページからの不活化実験における大腸菌種のことですけれども、文献調査でいろいろな大腸菌が使われていると。そのときに日本では単離保存されているのがK12であり、1つに統一したほうがいいのではないかという意見だったと思います。ちょっと私は微生物のことは分からないのですが、消毒剤によっては、大腸菌種はいろいろな抵抗性を示すものがあると思います。その消毒法によって最も抵抗性がある大腸菌種について、いろいろ持っていたほうが安全性という意味ではいいのではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。

 

○島崎委員

 そうですね、難しいところではありますが、先ほど言った安全側の議論からすれば、少し抵抗性の強い菌種を指標菌とするのは大いにあり得るだろうと思います。ただ、今回、この点で少し問題にしているのは消毒剤の作用機序、特に細胞の外膜への影響というところで、だいぶ菌種によって違うという話であろうかと思いますから、例えば同じ消毒剤の同じようなメカニズムを示すであろう二酸化塩素あるいは遊離塩素など、横断的な比較をする際に同じ菌種を使っていないと、まずいだろうということかと思います。そこで先生がおっしゃるように、正にリスク評価に使う場合であれば、より抵抗性の強いものを選択的に選ぶ。そういう戦略は大いにあり得ると思います。

 

○遠藤座長

 黒木先生、今のことについていかがですか。

 

○黒木委員

 菌は株によって個性が非常にあるということは、生物ですから当然のことですけれども、株によって消毒剤に対して抵抗するもの、抵抗しないもの、いろいろあると思います。例えば1つの株を使って、これを物差しにして今後決めましょうということをしてしまうと、まずその株を維持するのが非常に難しいという問題があります。菌は培養すればするほど、どんどん変容していきますので、一番最初のものと何回か継代したものが違うものになる可能性もあります。ですから、その辺の管理をどうするのか。管理が徹底していれば大丈夫という考え方もありますが、なかなかそれも難しいということがありますし、その物差しをどういうふうに決めるか。幾つか考え方があると思いますが、とにかくいろいろな株を使って調べてみて、その結果を総合的に判断して例えば消毒の効果を判定する。物差しを決めるよりも、むしろ考え方を決めておいたほうがいいのではないかという気はしています。

 

○泉山委員

 多分、2つの話がごっちゃになっていて、1つは安全側を取るために抵抗性の高い株で実験をする必要があるということと、もう1つは複数の実験を比較するために基準の物差しを1つ用意しておいて比較をしたいという話と、2つ混ざっていて、だから複数の株で実験したらいいのだろうと思います。クリプトスポリジウムみたいに配布が非常に難しいものとは違って、大腸菌のほうがまだ入手が可能だと思います。そういう複数の株でもって検討しておけば、後からの比較も可能になるということだと思います。

 

○遠藤座長

 株種を明らにした実験をしておけば、後で比較ができるということだろうと思います。必ずしも1つ物差しを決めることが唯一の方法ではないということだろうと理解しました。ほかにございませんか。時間も迫ってまいりました。よろしいですか。島崎先生からはかなり多量な情報をご提示いただいたので議論しきれないところもありましたが、本件に関しましてはまた別の機会にコメントを寄せていただけたらと思います。

 次に移らせていただきます。次は資料4で、原水を対象としたクリプトスポリジウム等の検査法について、橋本委員から御説明をお願いいたします。

 

○橋本委員

 橋本です。よろしくお願いいたします。原水を対象としたクリプト等の検査法ということで、まだ準備段階と言いますか確定的な話が何もないのですが、こういうことをやってみましたという話題提供になればと思って、遠藤先生のほうと実験させていただきましたので、そこのお話をさせていただきたいと思います。

 副題として、MPN法を用いた水道原水のクリプトスポリジウム定量の試み、とさせていただきました。1.背景ですが、今、現行のクリプトスポリジウムの試験法というのが、どちらかというと浄水からクリプトが出てきたときに、そのクリプトスポリジウムが本当にクリプトスポリジウムであるかどうかということの定性的な部分、定性性という部分に重点を置いてデザインされたものだと考えられます。一方で、定量性という意味に関して考えると、水源であれば水源の中で原虫数の変動、それから試験方法中での回収率、その他諸々、いろいろな変動要因があって、そういう変動要因がある中で1個、2個というようなクリプトの数を数える方法を取っています。

 実際には、このMPN法を導入することで全てが解決するという話でも何でもないのですが、MPN的な考え方をクリプトに入れることで、試験方法の一部分については、現在、点推定的に行っているクリプトの定量というものを、もう少し幅を持ったMPN値を中心としたような確率分布で求められるようなものにならないかということを、最終的な目標として実験を行っています。

 具体的にどういうことをやっていくか。2.検討項目ですが、具体的にどういう方法を想定しているかということです。2ページの資料1と書いてある所に写真があります。最終的にクリプトスポリジウムの試験で顕微鏡観察を行うわけですが、このような25mmの円形のメンブランフィルター上に、最終的な産物をトラップして顕微鏡で観察する方法を取っているわけですが、このときに用いるフィルターに、このような格子角のフィルターを用いることで、今、大腸菌とか嫌気性芽胞菌の試験などに用いられているMPN的な発想で数を想定することができないか。具体的に言いますと、それぞれの区画の中のクリプトの数があった区画、陽性区画の数を数える。クリプト自体の数を数えるのではなく、陽性区画の数を数えることを想定して検討しています。

 今、何を行ったかというと、一番最初に基本的なことですけれども、クリプトがそもそもこの格子角と言いますか、メンブランフィルターの上で均一に分散するかどうかが一番大きな問題で、それの確認を行いました。いろいろとデータはあってここに細かく出ていますが、結論としては分散性の確認ということで、クリプトレーサーはちょっと比重が重いですけれども、これを用いて確認したところ幾つかの条件、例えば界面活性剤を入れるとか、ろ過する前に10分間静置をしてあげるとなど、テクニカルなことは少々必要なのですが、そういうことを行うことで割と均等に分布するのではないかということが、今のところ分かっています。これを実際のクリプトでこの後に試したり、実際のMPNでない方法で用いた場合の整合性のデータを取らなければいけないのですが、今のところクリプトレーサーなどでやるとうまくいくというのが、結論として得られています。

 例えばMPN値を算出するとどうなるかですが、2ページの(2)で、こういうイメージです。例えば10Lの濃縮物をこのフィルターでろ過をしたときに、これは区画が、それぞれ円形のフィルターですから円形のフィルターを四角に区切っています。これは3mm角ですが、3mm角の部分と不完全な部分がどうしても出てきてしまいます。完全区画と不完全区画のそれぞれの面積を求め、これから例えば例1として陽性区画の数が、この完全区画に1ついて、不完全にはいなかったときに、どう表現されるかというと、従来法ですと当然1個、例えば10Lの試験であれば1/10Lという結果になるわけですが、MPN的に求めれば1.02MPN/10L、信頼区画が求められて0.14-7.3、同様に、例えばこれが不完全区画に1個いて、完全区画にはいなかったときには1.10、こういうような、ある程度幅を持った区間推定的な定量値を求めることができるようになるということです。

 それのために幾つか、実はまだまだ検討しなければいけないことがあって、どういうフィルターを用いたらうまくいくのか。フィルターの今言った完全区画、不完全区画という括りを、どういうふうに処理するのか等々、いろいろと考えなければいけないのです。3ページ3.MPN法で何がでるのか?ですが、基本的に言いますと、定性性というものから、もう少し定量性にシフトしたような検査法が作れるのではないか。それで全てが解決するわけではないですが、そういうところが1つです。

 もう1つ重要なところとして、格子状のフィルターを使うということで複雑な操作性という所ですが、顕微鏡観察をするときに格子があることがとてもガイドになり、かなり見やすくなる。視認性が向上してどこを見たか、どこを見ていなかったか容易に判定できるようになる。もう1つは、陽性区画数を計数するというところで、他にもいろいろ検討しなければいけないのですが、例えば現在のクリプトスポリジウムの試験方法では、微分干渉像等を用いて内部構造を確認する。若しくはdapi染色等で内部構造を確認したりなど、細かなことをして同定をするという操作を取っているわけです。可能性としてですが、例えば抗体染色とビーズ法と2つの抗体で異なる抗原性を確認した上で、クリプトの細かい構造までは見ないのだと。区画の中に蛍光粒子が1個あったか、なかったかだけを判定するという方法にしてあげることで、かなりこれは操作性に関して容易化できるのではないか。ほかの部分も細かい部分は詰めなければいけませんけれども、そういう可能性があるのではないか。こういうところが大きく改善されるのではないかと考えています。

 そのほか、MPNを用いることで統計的な処理が、もう少しできるようになるのではないか。例えばQMRAみたいなところに用いるような変動幅を持ったもの、あくまでもここで考えられるのは試験方法上の変動部分ですが、試験方法がもう少し簡易化できることで、例えば原水の調査をもう少し大量頻回に行うようになって、変動の分布が分かるようになるといった改善がされる可能性がある。まだまだ方法論としてできていないので、できるかどうかという可能性ではあるのですが、こんなことが考えられています。こういうところを検討したという話題提供です。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 

○船坂委員

MPNで測るというのは分かるのですが、この格子付メンブランフィルターへ持って来るまでの操作で、実サンプルの場合だといろいろな障害物、夾雑物が入ってきますので、そういうものの除去とか、そのあたりのところはまだこれからですか。

 

○遠藤座長

 まだこれから検討というところですが、浄水の検査であればクリプトであるかどうかということの確認は、絶対的に必要となります。一方、原水での検査で必ずしもそこまでの精度は求めなくても良いのかも知れません。それで、今後の問題ですが、クリプトあるいはジアルジアであることの判定は、先ほどの説明にもありましたように免疫磁気ビーズ法と免疫蛍光抗体法を組み合わせて、すなわち2種類の違った抗体で共に陽性となったことを根拠としては如何かと云うことです。特異性の高い免疫反応を重ねることでより高い精度が得られるものと考えている訳です。尤も、その前提条件として免疫ビーズ法で用いられる抗体と、染色に用いる抗体が互いにオーシスト壁の異なった特異抗原を認識していることが必要となります。

また、今ご検討いただいている方法では微分干渉顕微鏡観察が無くなりますので、検査の簡便化も期待されます。

 

○船坂委員

 要するに確定していない段階で拾うということですか。

 

○遠藤座長

 クリプト等の検査法に関して当初示された方法では、推定値と確定値という分け方がなされていたのですが、当時はここで説明されたような発想ではありませんでした。ご検討いただく過程で複数の特異抗体により選択されたものを(限りなく)そのものと判断して良いかについてもあらためて検討いただくということです。

 

○船坂委員

 まだよく分からないですが、今の方法と比較すると、どこが簡便かということと、もう1つは検出率が高くなるのではないかということを懸念するのですが、そのときの対処法をどうするかということはどうでしょう。

 

○遠藤座長

 検出率が高くなるというのは、どういう意味でしょうか。

 

○船坂委員

 クリプトだということを、今、確認しているではないですか。

 

○遠藤座長

 はい。

 

○船坂委員

 確定の段階まではやらなくて結果を出すという話を、今、お聞きしたのですが、この点はどうなのですか。

 

○遠藤座長

 それは私が答えるべきものではなく、研究が進み、結果が示されたあかつきに、総意としてその結果が受け入れられるものか否かによるのだろうと思います。ただ、検査法とはいわば約束事ですから、新しい検査方法で提示された結果が広く受け入れられるものであればその段階で「宜しい」と云うことになるのではないでしょうか。

 

○船坂委員

 実際、原水でやっていただいて、どのような結果が出るかということですよね。

 

○遠藤座長

 はい。新たな判定基準が受け入れられるものかについても検討していただこうということです。

 

○船坂委員

 分かりました。

 

○遠藤座長

 橋本先生、何か追加することがありますか。

 

○橋本委員

 検出率のことですが、恐らく原水でかつての推定値的な判定をしていくと、確かに検出率は高くなる可能性があると思います。例えば内部構造のないようなものについて、今、ネガティブというふうに出している。そのあたりのことは、これはあくまで原水ですから、原水の場合は、どれだけのクリプトがいるのかという濃度分布をはっきりさせることがとても重要なので、原水で出てきたことが危ない、危なくないという話ではなくて、どういう原水の濃度レベルなんだということを把握するためには、検出率が上がってもそれは問題ないのではないか。そのことのリスクよりも、しっかりした原水の濃度レベルが分かることのほうが、有用性が高いのではないかと考えます。もちろん、原水イコール浄水のところ、塩素消毒のみのところは浄水として考えなければいけないのですが、原水に関してはそういうふうに考えるべきではないかと思います。

 

○船坂委員

 そうですね。多いか少ないかということになるのですが、そういうようなことで言うと、今まで説明を受けた検出された施設が翌年もまた検出されるというような実態が出てきて、その検出率が高くなり、そういう原水で検出されたというのが出てきたときに、行政の対応まで我々が考えることでないから分かりませんが、そういうことまで検討する必要があるのかなという気がしたのです。

 

○遠藤座長

 例えば、それは先ほど島崎先生にご説明いただいたような除去率の足し算などの考えとも組み合わせてより安全な方策を考えていくというのが本来のあり方ではないかと考えております。そもそも、水安全計画は原水の汚染度(量)を知った上で、それに対応した浄水処理を行うことを企図したものと理解しております。MPNの導入は汚染の定量的な把握に繋がるもので、水安全計画に沿ったものであると考えております。

 

○黒木委員

 この紹介していただいた検査法のいいところは、簡便性だと思います。検査法一般にですけれども、簡便的なものをやるとどうしても数値的な信頼性というのは幅が出てきてしまう。その数値そのものに幅が出てきてしまうということがあると思いますので、これはあくまでもスクリーニング的に使うことにして、回数を重ねて、より多くのデータを集めることができるという考え方で使うことも、ひとつの使い方かと思います。

 この方法とは別に、確定すべきところは確定するということで、今まで使われている確定をきちっとする方法を使って、実際の数もきちっと把握しておく。そういう二本立てで行うという考え方もあると思います。その確定をするための検査というのは、それほど回数をやる必要はないと思います。普段、これを使うのであれば、できるだけデータを多く蓄積するために、回数を重ねていくという使い方ができるのではないかと思います。懸念しているのは、こういう簡単な方法だけが普及してしまって、本来、確定をしなければいけない検査法が廃れていってしまうのが心配するところですので、それは二本立てできちっと技術を確保しておくことが必要だと思います。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 

○島崎委員

 初歩的な質問ですが、実際、このフィルターに試料を載せるときに、私どものクリプト試験法研修でも重視される点と思いますが、あまりフィルターの端のほうに載せて外側にこぼれてしまわないように、できれば中心のほうに載せてろ過をすることがあろうかと思います。今回のMPNの前提としては、フィルター全体に均一に試料が行くことが前提と思いますが、あまり慣れていない方がフィルターの中心部に集中して試料を載せた場合は、MPNとしては少し値が高く出てしまう可能性があり得ると考えてよろしいですか。

 

○橋本委員

 まず今回の方法ですが、例えば、はっ水のリングを作って試料を盛るというやり方ではなく、本来のフィルターの使い方でファネルを使い、そこで均一になるようにということを意識してろ過しています。だから、ろ過面積がある意味で増えますし、先に染色してしまえばいいのですが、フィルター上で染色するのであれば抗体の量が増える可能性があります。そういう方法ですので、多分、今までやられている方法でやると恐らく間違いなく値としては高くなるか、若しくは脇に寄ってしまえば低くなるということがあると思います。

 

○遠藤座長

 ご議論いただいたような具体的な問題は今後の課題として、ご検討いただきたいと思います。時間が迫ってきましたので次に移らせていただきます。資料5を見ていただき、その他の議題として、「水道において特別なエボラウイルス対策が必要でない根拠について」、ちょっと変わったタイトルですが、片山先生、御説明いただけますか。

 

○片山()委員

 この資料、もともとは東京都水道局の依頼を受けて作成していたものです。最初の論点としては、エボラウイルスというのが扱いにくいウイルスで、BSL4というクライテリアを満たしていないといけないので、そういう意味では実験データが存在しないこと自体はそのリスク自体を意味しないということで、使える実験データはないけれども、それはしようがないですよということが最初に書いてあります。

2つ目は、それでも限られた中で今までの知見として少しありますが、ものすごく安定だという根拠はないということを2つ目に書いています。

3つ目に塩素の有効性についてということで、日本で水道の安全性を考える場合には、ここが重要なポイントになるかと思います。1つの傍証として、WHOのエボラウイルスのガイドラインにおいては塩素消毒をやると。ただ、これは吐物とかの拭うという操作のときの塩素ではあるのですが、それでもそこで書かれている濃度と、例えばノロウイルスについて普通にガイドラインというか指示が出ている濃度というのは、さほど大きな差があるわけではなくて、病気の重篤性あるいは感染防御の必要性という意味で考えた場合に、大して差がない扱いを受けているということもあります。あとウイルス学的に言えば、エンベロープという脂質を外に付けているウイルスと、脂質のないウイルスであれば、脂質のないウイルスのほうが塩素耐性が高い。あるいは水中の安定性が高いということが知られていて、エボラウイルスはそういう意味ではエンベロープがありますので、比較的弱いタイプのウイルスであるというふうにも言えます。その2点から、水道の塩素等においても十分に不活化されるようなウイルスであると考えていいだろうと結論づけています。これが大体の論旨です。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。感染研の片山先生、ウイルス学的な見地からコメントはございますか。

 

○片山()委員

 特にありませんが、さほど恐れるほどのこともないかなと思います。インフルエンザと同じような感じですね。エンベロープのウイルスですので、基本的には割と耐性のないウイルスということですから、水環境中でもかなり不安定なものとして捉えていただければよろしいかと思います。

 

○遠藤座長

 他にどなたかございませんか。大見得を切って、恐るるに足らずというのも憚られますが、思ったよりも不安を持たずに済みそうであるという理解でしょうか。我が国にまだ入って来ているわけでもないですし、万々が一のときにはということだろうと思います。それでもこのぐらいの対応が取れていれば、少なくとも水道水に関しては安全が担保されているだろうということは、これで御理解いただけるだろうということで、我々も一安心ということだろうと思います。ほかにございませんか。それでは、ないようですので、事務局から御連絡がありましたらお願いいたします。

 

○服部室長補佐

 ありがとうございました。本日の議事録につきましては、後日、メールで送らせていただきますので、委員の皆様方におかれましては御確認のほどよろしくお願いいたします。

 

○遠藤座長

 よろしいですか。それでは、本日の会議を終わらせていただきます。ありがとうございました。


(了)
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