ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医薬・生活衛生局が実施する検討会等> 大麻等の薬物対策のあり方検討会> 第3回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」議事録

 
 

令和3年3月16日 第3回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」 議事録

医薬・生活衛生局

○日時

令和3年3月16日(火)16:00~18:00

 

○場所 

非公開
 

○議題 

「再乱用防止と依存症対策」


○議事録

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第3回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を開催させていただきます。
  委員の先生方には、大変御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
  本日の資料につきましては、お手元のタブレット端末に入っておりますので、御確認ください。
  それでは、以後の議事進行は鈴木座長にお願いいたします。
○鈴木座長 本日の議事は、お配りしている次第に沿って進めさせていただきます。
  最初に、事務局より、検討会における連絡事項をお願いいたします。
○事務局 事務局から申し上げます。
  本日の検討会の出席者につきましては、12名全ての委員の先生方に御出席いただいております。なお、太田委員、嶋根委員及び舩田委員におかれましては、ウェブ形式で御参加いただいております。
  続いて、連絡事項を申し上げます。本検討会は公開とさせていただきますが、会場への入場制限につきましては、従前どおりとさせていただきます。
  また、会議の議事録の公開につきましても、従前どおりとさせていただきます。
  以上でございます。
○鈴木座長 それでは、議題に移ります。
  まず、監視指導・麻薬対策課長から「再乱用防止と依存症対策」について説明をお願いいたします。
○監視指導・麻薬対策課長 私のほうから資料1について御説明いたします。今日は法務省にもお越しいただいていますので、私のほうからは簡潔に説明させていただければと思います。
  2ページでございます。覚醒剤事犯における再犯者率の推移ということですが、覚醒剤事犯の再犯者率は13年連続で増加しており、令和元年で過去最高の66%となっています。再犯者というのは過去何らかの薬物を使用し、検挙されたということでして、必ずしも覚醒剤ではなくて大麻・麻薬も含めてということですが、いずれにせよ覚醒剤事犯の再犯者率が増えているということです。
  次に3ページです。こうしたことにつきましては、第1回でも少々御説明いたしました政府全体の第五次薬物乱用防止五か年戦略、これの目標が5つあるうちの2で、薬物乱用者に対する適切な治療と効果的な社会復帰支援による再乱用防止ということで、具体的な施策を進めているところです。
  4ページ目に移らせていただきまして、後ほど法務省から詳しく説明があると思いますが、再犯防止推進計画というものにおきましても同様の施策が打ち出されているということです。
  5ページですが、再乱用防止施策は、いろいろな角度からいろいろな主体が取り組んでいるところですが、私のほうからは麻薬取締部の取組を紹介させていただきたいと思います。地方厚生局麻薬取締部に再乱用防止支援員ということで、公認心理士や精神保健福祉士等の非常勤職員の方を配置しております。
  左の下で、具体的に何をしているかということですが、例えば断薬プログラムの提供とか、地域資源へのパイプ役、家族等へのアドバイス、こうしたことに取り組んでいるということです。
  また、様々な施策は後ほど法務省や依存症対策推進室から説明をいただきたいと思います。
  次に6ページ目から、麻薬中毒者制度について簡単に説明させていただきたいと思いますが、7ページです。麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬中毒者制度という制度がありまして、医師の麻薬中毒者の届出ですとか、措置入院、そういったものが規定されています。
  具体的には真ん中の1)ですが、医師は、診察の結果、受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、その者の氏名等を都道府県知事に届ける義務があったり、2)は措置入院ということで、そういった方がいらっしゃったときは、麻薬中毒者医療施設に入院させて、必要な医療を行うことができるという規定が麻薬及び向精神薬取締法にあります。
  この仕組みの現状です。8ページですが、件数は左端に数字がありますが、届出、措置入院とも非常に低調でございまして、特に措置入院に関しては平成20年以降ございません。これにつきましては、下のほうに書いてありますが、平成11年の精神保健福祉法の改正に伴って、精神障害者の定義で薬物依存症も対象とされたということで、現行は、重複して措置の規定があるというところです。
  9ページに移って、詳細な項目の比較をしておりますが、同じ仕組みがあったり、異なる仕組みがあったりするのですが、一番下のところを御覧いただくと、年間件数ということで、今申し上げましたとおり、麻向法のほうは平成20年以降報告がないという実態ですが、精神保健福祉法による措置入院は年間約7,000件程度あるということで、基本的にこの仕組みの中で薬物の中毒の方についても措置入院がされているというのが実態ということです。
  10ページは参考ですけれども、精神保健福祉法における措置入院の概要を整理したものですので、後ほど御参照いただければと思います。
  最後に、刑の一部執行猶予制度について、11~12ページになりますが、簡単に説明させていただきます。
  基本的には法務省の所管なので、私が御説明するのも僭越ではございますが、刑の一部の執行猶予制度ということで、平成28年6月に施行されたものですが、真ん中にございます「裁判所が、3年以下の懲役・禁固を言い渡す場合に、その刑の一部について、1~5年間、執行を猶予することができるとする制度」です。例として書いてありますが、本来、懲役で実刑3年を科すべきところ、実刑を2年に短縮をして、残りの1年部分を猶予部分として、3年間の執行猶予とする仕組みです。<対象>と下の四角にありますが、初入者ですとか、薬物使用等の罪を犯した者で初入者を除く方、こうした方が対象として適用されているということです。
  日本では、こういう一部執行猶予制度があるわけですが、13ページは国際的にどういう提言・提案がされているかということです。委員から御紹介もあったので、国連の例として少し御紹介いたしますと、一番上の赤線のところですが、刑務所の過密状態の解消や囚人の基本的な人権を守ることを目的として、刑務所への収容に代わる案が提案されていまして、特に代替策を検討すべき集団として、薬物の使用者ということが挙げられております。これらの集団に対する代替策として、非犯罪化ですとか、ドラッグコートといったものが提案されているということ、これは2007年の国連のハンドブックに記載があるということです。
  ちなみに、過密状態ということですが、私は担当ではないので正確ではないかもしれませんが、日本の刑務所は大体入所率が現在50%超ぐらいで、国際的には200%以上というところもあると聞いておりまして、そういう過密状態の国があるということも現実にあるということです。
  真ん中から下ですが、これは平成28年に開催された第3回国連麻薬特別総会において「世界的な薬物問題に効果的に対処するための共同コミットメント」というものが採択されまして、7つほど勧告がされたわけですが、赤線の4番目「薬物と人権、青少年、女性及びコミュニティ」というところで「収監された人々に対する薬物使用障害の治療へのアクセスの強化」ですとか「刑務所の過密状態と暴力の解消を目的とした措置の実施」という項目が含まれた勧告が採択されたということです。
  今、ドラッグコートと申し上げましたが、14ページです。アメリカなどで、ドラッグコートという仕組みが具体的に制度化されているということでして、薬物専門裁判所として、犯罪行為を裁くのではなく、その行為の根本原因を治療・除去するということによって、問題解決を図ることを目的とするとされております。
  仕組みですが「刑務所に収容される代わりに、裁判所の監視の下で社会生活を続けて、定期的に出廷し、薬物検査を受けて、治療プログラムに参加することで、薬物を使わない生活を身につける」ということです。
  具体的には下のほうに図で描いていますが、罪を犯して逮捕、起訴されて、その次に、裁判の選択というのは御自分でできるということで、通常の裁判のルートに乗っかっていくのか、あるいはドラッグコートということで、今ほど申し上げた治療プログラムへの参加というルートに乗っていくのかということを選択できる仕組みになっておりまして、一番下ですが、2014年現在、アメリカに3,057か所設置されているということです。
  私からは以上です。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  続きまして、法務省大臣官房、保護局及び矯正局から「法務省における取組」について説明をお願いします。
  なお、この際、第2回検討会で委員から質問があった薬物検査キットについても併せて説明をいただきます。よろしくお願いいたします。
○法務省大臣官房 法務省大臣官房秘書課企画再犯防止室です。本日はよろしくお願いいたします。
  薬物依存のある者に対する法務省における取組といたしまして、冒頭に私のほうから再犯防止施策における薬物依存対策の位置づけというものを簡単に御説明申し上げます。
  その後、矯正施設における取組、保護観察における取組の具体的な内容を矯正局、保護局からそれぞれ御説明を申し上げられればと思いますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、資料1枚目をお願いいたします。こちらは政府における再犯防止施策の現状として、再犯防止推進計画の概要を簡単にまとめたものでございます。資料中段の左にありますとおり、再犯の現状としまして、犯罪をして検挙された者、全体に占める再犯者の割合というものが48.8%と極めて高い率となってございまして、犯罪を減らすためには再犯者を減らすという取組が不可欠というような状況になってございます。
  また、再犯防止に向けた取組の課題として、中段の右側に書いてございます。これまで再犯防止は、もっぱら刑事司法関係機関が中心となって取組を進めていたという状況がございましたが、例えばこの検討会でも課題となっております、薬物依存のある方への対応というところ、特に保護観察対象者への対応というところを見ましても、長期的な息の長い支援体制の構築というものが不可欠ということでございまして、こうした取組の中には、やはり刑事司法関係機関のみではなかなか限界があるというような状況がございました。
  こうした状況を受けまして、下段でございますが、平成28年12月に「再犯の防止等の推進に関する法律」が成立しまして、翌年、再犯防止を推進する総合的な計画としての「再犯防止推進計画」というものが閣議決定されました。この検討会には、本検討会の委員をされておられる先生も構成員として入っていただいているような状況もございます。この結果が、政府として再犯防止を推進するための必要な施策を5か年の計画で盛り込むものとなってございます。
  次のページをお願いいたします。こちらは再犯防止推進計画の概要ということで、その内容を概括的に整理したものでございます。再犯防止推進計画は7つの重点課題というものに対応するため、115の施策が掲げられているものでございます。このうち特に薬物依存に対応した内容としましては、2つ目の柱の「保健医療・福祉サービスの利用の促進」といったところに掲げられております。具体的な施策としては、115のうち14が薬物依存に対応するための取組となっている状況でございます。
  こちらに書いてございますとおり、刑事司法関係機関と保健医療・福祉関係機関との連携の強化、あるいは薬物依存症の治療・支援機関の整備、自助グループを含む民間団体への支援、これに加えまして、薬物指導体制の整備等々が書かれているところでございます。中長期的な課題も含めて、これらのものを総合的に進めていくといったものが、再犯防止推進計画で掲げられているというような状況でございます。
  簡単でございますが、総論は以上でございます。
  引き続きまして、矯正施設における薬物依存対策ということで、矯正局のほうから説明をお願いいたします。
○法務省矯正局 法務省矯正局です。よろしくお願いいたします。
  続きまして、矯正施設における薬物依存対策について御説明いたします。
  初めに、口頭で薬物事犯者の状況について御説明申し上げます。令和元年中、新たに矯正施設に収容された者は、刑事施設で約1万7,000人、少年院で約1,700人おります。このうち薬物事犯者の大多数を占める覚醒剤事犯者の割合は、刑事施設で約25%、少年院で約3%を占めております。また、先日行った調査の結果、令和2年に刑事施設に入所した受刑者約1万7,000人のうち、罪名に大麻取締法違反を含む者は、新受刑者全体の4%弱であることが分かっております。
  次に、資料に基づきまして、薬物事犯者の処遇について御説明いたします。
  まず、左側を御覧ください。刑事施設では現在、麻薬、覚醒剤、大麻等のその他の薬物に対する依存がある者に対し、断薬への動機づけを図り、再使用に至らないための知識やスキルを習得させるとともに、出所後も継続的に治療や援助を受ける必要性を認識させることなどを指導目標として、特別改善指導「薬物依存離脱指導」を実施しております。この指導は、平成18年、刑事収容施設法の施行に伴い開始されたものでございます。
  その後、先ほどの説明にありましたが、平成28年度に施行された刑の一部執行猶予制度の趣旨を踏まえ、平成29年度に現行の形、すなわち個々の受刑者の問題性や再使用のリスク、刑期の長さなどに応じて、認知行動療法に基づく3種類のプログラムを組み合わせた形を実施しております。
  また、女子受刑者は男子と比べて覚醒剤事犯者の割合が10%程度高く、女子の覚醒剤事犯者には心身の疾病やDV等の被害経験など、薬物依存からの回復を困難にする問題を抱える者が多いという実情にあることを踏まえ、令和5年度までの5箇年計画として、札幌刑務支所に女子依存症回復支援センターを立ち上げ、出所後の支援と直結した指導の実施などを目的としたプログラムを施行しております。
  次に、資料の右側を御覧ください。少年院でも、認知行動療法の考え方に基づいた薬物非行防止指導を実施しております。少年院の特徴として、薬物使用の背景には家族関係の問題があることや、少年の立ち直りには家族の協力が不可欠であることなどを踏まえ、保護者用のプログラムも実施していることが挙げられます。
  なお、刑事施設において、覚醒剤事犯者で刑務所に入所して、その後刑務所を出て、2年以内にまた覚醒剤等で再入した人の割合ですが、平成28年は18.7%であったところ、平成30年は16.0%と少しずつ落ちているという状況にございます。
矯正施設については以上でございます。
○法務省大臣官房 引き続きまして、保護観察における薬物事犯者への処遇ということで、保護局からお願いいたします。
○法務省保護局 法務省保護局観察課です。よろしくお願いします。
  私のほうからは、保護観察における薬物事犯者の処遇ということで、御紹介をさせていただきます。
  制度の基本的な説明について、後ろに参考資料を添付させていただいておりますので、後ほど御確認いただければと思います。
  まず、保護観察は、指導監督といいまして指導的な処遇と、補導援護といいまして援助的な処遇の両方を担っております。
  まず、指導監督の部分として実施しているものでございますけれども、資料にありますとおり、中核をなしているのが薬物再乱用防止プログラムというものでございます。これは本日御出席の松本先生に監修していただいて、SMARPPをベースにしたワークブックを使用しており、ワークブックを使用した教育課程と簡易薬物検出検査の2つを一体のものとして運用するものになっております。
  資料にありますとおり、コアプログラム、ステップアッププログラムというものがございまして、コアプログラムといいますのが全5回で構成されております。ステップアッププログラムはコアプログラム終了後に月に1回、継続的に保護観察所に出頭させ、実施していくものということになっております。
  令和元年におきましては、このプログラムの開始人員は3,498名ということになっておりまして、一部執行猶予制度の開始により、実施対象者が急増しているという状況です。
  このプログラム以外に、自発的な意思に基づく簡易薬物検出検査というものも並行して実施しております。これについては、令和元年の実施件数が6,633件ということになるわけですけれども、これは最初に平成16年から自発的意思に基づく簡易薬物検査のみで制度化いたしまして、その後に処遇プログラムというものを平成20年から実施しております。
  次に補導援護ということで、援助的な側面ということでございます。これに関しては、地域連携ガイドラインが策定されております。これに基づいて、何よりもやはり重視しているのは、地域の関係機関による支援につなぐことでございます。その状況をグラフに示しておりまして、まず、保健医療機関等による治療・支援の状況ということなのですが、ここでいう保健医療機関等は、精神保健福祉センター、保健所、精神科医療機関などを指しております。
  この状況なのですが、薬物事犯の保護観察対象者のうち、保健医療機関等に関わって支援を受けた人の数ということを年度統計で示しております。一部執行猶予制度が施行されたのが平成28年の6月であり、刑務所での処遇を経て社会内処遇、保護観察に移行してくるのが平成29年からですので、平成28年というのが、言ってみれば制度施行前の数と実績という形になっております。見ていただくと分かるとおり、制度施行後には、関わりを持って支援を受ける人の割合も増えているところでございます。とは言いましても、薬物事犯者全体の7%程度ということになりますので、まだまだ十分とは言えない状況になります。
  ちなみに、令和元年度の薬物事犯保護観察対象者数というのが、8,096名という母数になっておりまして、そのうちの7%、566人という状況になっているということです。
  隣の円グラフなのですけれども、これは都道府県別で左のグラフを示したものでして、これは医療機関などの所在についての地域の状況ということではございません。都道府県別の状況ということなのですけれども、薬物事犯者のうち、地域支援を受けている者の割合というのが、地域によって関わりに差があるということが示されていて、これも課題ということだと思います。
  次のページなのですが、民間支援団体による支援等の状況ということで、まず、更生保護施設ということですけれども、これにつきましては平成25年から一部の更生保護施設を薬物処遇重点実施更生保護施設ということで指定して、専門スタッフを雇用して処遇を実施しているという状況です。これも実績が伸びておりまして、令和元年では856人ということになっております。これは全て入所者ということになります。
  また、下のグラフはダルク等の回復支援団体、これは入所も通所も計上しておりますけれども、ダルク、マック、またNAなどの自助的組織、支援団体の支援を受けた人の数ということです。この状況につきましても、令和元年はやや減少しておりますけれども、一部執行猶予制度の発足以来、実績が伸びているといったような状況です。
  続きまして、前回、委員から御質問があったということですので、この場で回答させていただきたいと思います。委員からは、保護観察所では薬物検査を実施していると、その薬物検査においては数種類の薬物が検出できるようになっているということで、この中に大麻も入っているはずだと、大麻には使用罪がないので、大麻を使用していることが分かった場合に、どのような取扱いになるのか。また、合成麻薬、合成THC由来のものを検出しようとしているのか、どのような内容のもので、何を目的としているのかという御質問がございました。
  これにつきまして御回答させていただきたいと思うのですけれども、まず、保護観察所で使用している検査キットというのは、あくまで簡易検査でありますので、大麻に関しましては、植物由来であるか合成麻薬であるかといった精密な鑑定ができるものではございません。他の覚醒剤などの薬物に関しましても、風邪薬などに含まれる類似成分に反応してしまう可能性もありますので、この簡易検査で陽性になったことのみでは規制薬物を使用したかどうかは判断できないという性格のものであります。
  このため、簡易検査で陽性が出た場合は、対象者に対して、捜査機関に出頭して精密な検査を受けるように促しまして、これに応じない場合は保護観察所から捜査機関に通報するということとしております。
  この検査は、検査日時をあらかじめ定めて、その日に陰性を出すということを短期的な目標として取り組んでもらうという検査になっておりますので、そもそも陽性を検出することを目的としてはいないのですけれども、それでも規制薬物に該当するものに陽性反応が出た場合は、再犯におよんでいる疑いがあるということで、捜査機関に任意出頭させるか通報するという扱いをしているという事情がございます。
  例えば覚醒剤など使用罪がある薬物の場合は、捜査機関でも陽性反応が出れば、もうそれで逮捕、検挙されるということになるわけなのですけれども、大麻の場合は使用罪がございませんので、やはり捜査機関で陽性が出た場合に罪に問われない結果となる事例も実際にございます。ただ、これは覚醒剤などでも、簡易検査で陽性反応が出て、本人が使用を認めていても、捜査機関の検査で陰性になる場合などもございます。こういった場合には、医療機関での治療を勧めたり、出頭させる頻度を上げるなどして、保護観察による指導を強化する扱いとしているといったのが実情でございます。
  長くなりましたけれども、以上です。
○法務省大臣官房 法務省からは以上でございます。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  続きまして、障害保健福祉部依存症対策推進室から「薬物依存症対策について」の説明をお願いいたします。
○依存症対策推進室 厚生労働省の依存症対策推進室です。よろしくお願いいたします。
  私からは、薬物依存症対策につきまして御説明申し上げます。
  お手元の資料3で御説明をさせていただきます。1ページでございますけれども、依存症対策の全体像となります。依存症対策としてアルコール、薬物、ギャンブル等の依存症対策全体のスキームとして、このような形で行っております。
  平成29年度から、このような形で対策を進めさせていただいており、中ほどにございますように、地方自治体、都道府県、指定都市におけます地域での支援ネットワークの構築をどう進めていくかを中核に行っているところです。そこで核になりますのは、医療体制、相談体制ということで、依存症の専門医療機関、そして、依存症の専門的な相談拠点、これをまずは各自治体において設置していただくことが重点課題となっているところです。
  そうした拠点を通じて、各地域の様々な関係機関に対しても人材養成等を行っていただき、各機関が連携する形で支援を行う体制を各地域で築いていただくことを行っているところです。これを国としても財政的に支援させていただきますとともに、左側にございますように、こうした各地域の取組を専門的な見地からサポートする機関として、全国拠点機関というものを設置しているところです。薬物の関係につきましては、国立精神・神経医療研究センター「NCNP」に行っていただいているところです。こちらの機関を通じまして、全国の関係の人材についての研修等を行っていただいております。
  続いて、2ページでございますが、各地方自治体での、こうした依存症対策の取組を総合的に支援するための予算事業として、ここに掲載したものがございます。やはり各地域で切れ目なく相談から治療、回復支援に至るまで、御本人や御家族のニーズに対応していくために、関係機関が緊密に連携した形で支援体制を築いていただく必要がありますので、それに必要な様々な支援メニューを掲げさせていただいているところです。
  続きまして、3ページ以降で、今御説明いたしました依存症対策全体のスキームを活用して行われております薬物依存症対策の動向につきまして、簡単に御説明申し上げます。
  1番のところにございますのが、相談体制・医療体制ということで、先ほど御説明申し上げました拠点整備の状況でございます。平成30年度以降の状況を表形式でまとめさせていただいておりますが、この間、各自治体でも御努力をいただく中で拠点整備が進んでいるところです。都道府県・指定都市全体で67自治体ございますが、相談拠点につきましては今年度末、ほぼ全ての自治体におきまして、精神保健福祉センター等を中心に、こうした拠点整備が終了すると見込まれているところです。
  それから、2番のところに、薬物依存症関連の人材育成ということで、全国拠点におきまして各地域の人材養成をするとともに、また、それを受けまして、都道府県等で全国拠点での研修修了者を中心に各地域の人材の研修を行っていただいているところです。
4ページにつきましては、保健所と精神保健福祉センターでの依存症関連の相談の状況でございます。薬物につきましては赤の棒グラフで示させていただいております。令和元年度でいきますと、右側でございますが、精神保健福祉センターでは5,900件程度、薬物関連での相談を受け付けられている状況です。
  次に、5ページで、依存症関係の受診の動向でございます。NDBで、医療保険のデータを用いて3依存の受診動向を見てございます。薬物依存の関係は真ん中の欄でございますけれども、外来で1万人程度となっているところです。
  6ページにつきましては、先ほど御紹介いたしました依存症対策の全国拠点機関、全国センターにおきまして、情報発信、情報提供の取組をやってございます。ポータルサイトを設置しておりまして、その中でも、現在整備を進めている専門の相談窓口、あるいは専門の医療機関が、身近な場所ではどこにあるのかを、マップ等も活用した形で広報している状況です。
  7ページにつきましては御参考でございますけれども、各依存症専門医療機関に指定されたところでは、年間の新規の受診患者、または入院患者の動向がどうであったのかにつきまして、全国拠点に御報告いただく形になっております。そうしたデータを通じまして、男女・年齢別での基礎的な分析もさせていただいているところです。
  続きまして、8ページでございますが、薬物依存症の方に対する治療回復プログラムの普及というところです。先ほども名前が出てまいりましたけれども、SMARPPという形で標準化された集団での認知行動療法が近年確立されてきたところです。これを精神保健福祉センター等におきましても治療回復プログラムとして、実践が拡大しているところです。
  また、こちらのSMARPPにつきましては、薬物依存症の集団療法として、下段にございますように、平成28年度から標準化された形で行われたものは、診療報酬上で評価をする形になっているところです。
  続きまして、9ページの4番のところでございますが、薬物依存症患者の御家族に対する支援というのも、御本人への支援と同じく重要でございます。精神保健福祉センター等におきましては、家族に対する心理教育プログラム等を実施しております。
  それから、5番目でございますが、自助グループ等の民間団体への支援につきましても、国から支援をさせていただいているところです。国からの直接支援は、左側にございますような全国規模で活動する民間団体に対して行いまして、右側にございますように、各自治体の中で、地域で御活動されている民間団体に対しましては、自治体のほうで御支援される場合に、国からの財政支援を行う形になっております。各地域で御活動される民間団体のミーティング活動などに対しての支援を、国として、間接的な形ではございますが、行わせていただいております。
  続きまして、10ページで、依存症に関しての普及啓発というところでございます。薬物依存症をはじめ、依存症の治療等につきましては、上のほうの枠囲いで2つ目の○のところにございますように、やはり依存症に対する偏見、差別というものがあり、それが依存症の当事者、御家族が適切な支援にしっかりと結びつくことを妨げているような点があるだろうというのが基本的な認識でございます。そうした点を踏まえまして、そうした偏見、差別を解消し、円滑に支援に結びつく環境整備をしていくため、こうした普及啓発をしっかりとやっていく必要があると考えているところです。
  そこでのキーとなるメッセージは、一番上の○のところにございますように、薬物依存症をはじめ、依存症は適切な治療や支援を受ければ回復が可能な疾患である、病気であるということでございまして、こうしたことを粘り強く様々な媒体を通じて普及啓発をさせていただいているところです。
  10ページにはSNS等を活用したものを紹介させていただいております。
  11ページを御覧いただきまして、上のほうに普及啓発イベント等を紹介しております。その中では、回復者の方にも登場いただき、お話もしていただく形でございます。
  それから、11ページの下段のところにシンボルマークというのも、依存症対策の関係で最近新しく作らせていただいたところです。これを治療・回復の応援の意思表示の象徴として、これから広く展開していきたいと考えております。一見すると蝶々のように見えるわけですが、これを横につなげていくとハートマークが現れるというのが、このデザインの趣旨でございまして、依存症の支援を考えていきますと、やはりつながり、社会とのつながり、人とのつながりということが、非常に重要であるということで、それがメッセージに込められているところです。
  12ページ以降につきましては、依存症の普及啓発のリーフレットの例ということで掲載させていただいておりますので、後ほど御参照いただければと思います。
  説明は以上でございます。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  それでは、法務省と厚生労働省からの説明について御意見や御質問がございましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  □□委員、どうぞ。
○□□委員 御説明どうもありがとうございました。
  幾つか御質問なのですけれども、まず、監視指導・麻薬対策課の資料の中で、麻向法の麻薬中毒者制度というのが7ページにありまして、8ページを見るとほとんど稼働していないという状況の中で、これをカバーできるような制度が、9ページで精神保健福祉法にありますということで、これだけ動いていないのであれば、そっちに集約してしまってもいいのではないかなと思うわけなのです。
  ちょっとお伺いしたいのは、10ページのところで、精神保健福祉法の入院に関するこの精神障害者とか、この辺の定義とかの関係で、何か精神保健福祉法のほうではカバーできないような事情というのはないのかというのをお伺いしたいと思います。例えば、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症というので、麻薬中毒者というのは全部カバーできるのかとか、あとは自傷、他害の恐れがない場合は、措置入院はできないということになると思うのですけれども、それで実務上は差し支えないのかとか、その辺の何か課題があるのかないのかというところを教えていただければと思います。
○鈴木座長 では、事務局のほうからお願いいたします。
○事務局 麻向法と精神保健福祉法の関係の御質問がありましたが、先ほど御説明申し上げましたとおり、8ページにありますが、平成11年に、精神保健福祉法の改正で、精神障害者の定義で薬物依存も対象になったということで、基本的には重複だという理解でございますので、そういったことでカバーされていると考えております。
○鈴木座長 よろしいでしょうか。それでは、続いてお願いいたします。
○□□委員 法務省の保護観察の薬物事犯者の処遇という資料で、皆さんの御説明で、この依存症の対策は自治体の役割がやはり大きいということだったと思うのですけれども、この右下で都道府県ごとの状況というので30%以上のところもあれば、10%未満というところもあって、かなり状況に違いがあるのですけれども、これの率が高いところと低いところがどういう理由でこれだけ違うのかというような分析とか検討とかをされていれば、そのあたりをちょっと教えていただければと思います。
○法務省保護局 ありがとうございます。この高いところといいますのは、やはり地域の受け皿というか、そういったものが整っているところが必然的に高くなるといったところですし、また、特に30%以上のところなどは、例えば受刑中から、出所後に医療機関で診てもらう予約を取れるようにしていたりとか、そういった受け皿があり、そして、連携の仕組みもしっかりと整えられているというような状況がございます。また、なしとか10%未満とか、こういうなかなかつながっていかないところといいますのは、やはり地域の受け皿が整っていないというところもございまして、連携の状況や地域の状況といったところで、こういう状況になっているのかなと考えております。
○鈴木座長 よろしいでしょうか。
○□□委員 ありがとうございます。そういう違いがあるということであれば、自治体間でそういう情報を共有して広げていくという活動を、やっているのかもしれないですけれども、してもいいのかなと思ったところです。
  最後に、これは確認だけです。社会・援護局さんの資料の中で、近年の依存症患者数の推移のNDBのものがあるのですけれども、薬物依存症が平成28年から平成29年でものすごく伸びているというか、数が多くなっているのですけれども、これは何か理由があるのですか。集計の仕方が違うとか、そういうことなのでしょうか。あと、平成30年と令和元年でどうなっているかというのも、もし数字があれば教えていただければと思うのです。
○依存症対策推進室 質問の件、ありがとうございます。平成28年、平成29年の間での個別の状況というのは分かりませんけれども、先ほどご説明したSMARPPが集団療法として認められたということもございますので、外来の計上については、そういったところも要因としてあるのだろうと推測としてはございますけれども、その寄与分がどれぐらいか、分析まではできてございません。
NDBのデータについては、これ以降のものは現在ございませんので、これが最新でございますけれども、また中身の分析はさせていただきたいと考えてございます。
○鈴木座長 よろしいでしょうか。
  それでは、□□委員のほうから質問があるようですのでお願いします。
○□□委員 ありがとうございます。
  監視指導・麻薬対策課さんのほうの資料の中で、再乱用防止の支援員についてのお話があったと思うのですが、この規模と実際に支援を受けている人数が分かれば、直近のものでも結構ですのでお教え願いたいと思います。
○鈴木座長 それでは、事務局からお願いします。
○事務局 支援員は各部によってまちまちなのですが、大体全国で約20人弱ぐらいでございます。支援の対象者も、実際は拒否をされる方もいらっしゃるので、そういった方を除いて、令和元年は全国で30名程度ということでございます。
○□□委員 ありがとうございます。
○鈴木座長 それでは、ほかにいかがでしょうか。
○□□委員 □□と申します。
  私は、監視指導・麻薬対策課のほうの御説明にありました13ページの薬物犯罪で収監された人々への治療に対する考え方のところで、非犯罪化とかドラッグコートが提案されてきたということで、その次の14ページに、アメリカにおけるドラッグコートというものの例が記載されております。これについては日本において、今後こういったものができるのか、またはそれができないので、今現在、ドラッグコートに代わるような先ほどご説明いただいた支援員だとか、プログラムだとか、そういったものが代用されているのかという点について教えてください。
○事務局 これは裁判の話ですので、もともと私どもで資料を提出しているのも若干僭越な部分があるのですが、ただ、日本でそういう制度がないということで、法務省というよりは我々で紹介させていただいたということです。現時点では申し上げるまでもなくこういう制度はございませんし、どういう検討がされているかというのは、私はつぶさには承知しておりませんが、現時点ではないですし、すぐにこのような仕組みが導入されるということは聞き及んでいないということでございます。
○鈴木座長 それでは、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 □□と申します。
  意見と御質問を1つなのですけれども、先ほどあった刑の一部執行猶予という部分でも、日本で行われている刑の一部執行猶予で私が感じているところでは、諸外国に比べて、ほかの医療とか福祉的観点というのがかなり少ないのかなという感覚があります。刑を受けた方が一部の部分を執行猶予されて、ダルクないし家庭に戻られていくというような形があって、ほかの論文などでも、アメリカにおいて、大麻の使用者で、捕まってドラッグコートに来られた方たちが、嗜好用の大麻が合法化されている国だとすごく、それによって混乱が社会の中で起こっていたりということも論文の中で書かれているのを見ました。それを見て、私自身が、やはり処罰よりも治療を選べることというのが、どうしても私自身当事者なので、必要だとは感じておりますし、社会の中で包括された環境で、薬物事犯の方が逮捕されたとしても生活を続けていけるようなことができるのが、持続可能なもので、誰一人取り残さない社会なのかなと感じています。
  質問なのですけれども、法務省さんの4ページのところです。保健医療機関等による治療支援の状況で、7%の方が保護観察を受けながら治療につながっているという、精神保健福祉センターさんというような話があったのですけれども、プログラムを受けているのか、それともコホート調査みたいな形の電話連絡のみなのかみたいな割合というのが、どれぐらいなのか聞きたくて質問させていただきました。
○法務省保護局 ありがとうございます。先ほど、この県別の状況で申し上げるのを失念してしまったのですが、まさにこの精神保健福祉センターではVoice Bridges Projectを都道府県ごとにやっていただいているところと、やっていただいていないところがあるので、その点で、やっていただいているところは相当つながっている状況を確認しております。その点でかなり差が出ているというところもございます。
  精神保健福祉センターで、どういう関わりをしていただいているかということですけれども、今のVoice Bridges Projectなどは、何年間も、保護観察の対象になっていた人たちを電話連絡で個別にサポートするというような活動をしていただいていますし、また、精神保健福祉センターでもSMARPPを実施しているようなところもありますので、そういったところですと、グループワークに参加したりといったような状況がございます。
  ちょっと割合までは把握しておりません。この中に保健所も入っていますし、あと、麻薬取締部の支援も混ざって計上しております。
  以上です。
○鈴木座長 それでは、□□委員、お願いします。
○□□委員 質問ではないのですが、先ほどドラッグコートについて質問が出ていたので、少し私なりに知っているところをお話しさせていただきたいと思います。
  これはアメリカの制度ですけれども、簡単に言うと、いわゆる普通の裁判というのは、弁護側と逆の立場がいて、裁判官がいてと、そういうシステムになるわけですが、ドラッグコートはこの三者が当事者をめぐって、どういうプログラムをどこで受けさせようかということを協議して、そういうプログラムを受ける施設に委託する、コートオーダーということになりますけれども、そういう制度です。
  それが可能なのは、そもそもアメリカには、これまた日本にないので想像しがたいかと思うのですけれども、治療共同体という薬物からの回復を目指す回復施設というものが、30年前から既に2,000施設以上あるわけです。そういうところがあるものですから、いわゆるダイバージョンという言い方をよくされますけれども、本来であれば刑務所が本流としますと、それに対する別の流れということでダイバージョンなのですけれども、治療を優先して、そういうところにコートオーダーという裁判所命令で処遇してもらうという制度だと思います。
  これはいろいろな国を私なりに見て、やはり現在というか、今日的に一番理にかなっているのではないかと私は思っています。そういう意味ではぜひ、これは私的意見ですけれども、日本の場合もやはり場当たり的な政策ではなくてグランドデザインというのを持って、どういうシステム、どういう体制をつくるために、何が足りなくて、何をどうするのだという組み立てで、考えていく必要があるかと思います。残念ながら日本の場合、ずっと私はこれを言っているのですけれども、最大の問題は刑務所に代わる受け皿がないのです。それが最大の問題です。
  以上です。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  それでは、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 ありがとうございます。法務省の方にまず質問があります。
  再犯防止推進計画、資料の2ページ目に、海外における拘禁刑に代わる措置も参考にした再犯防止方策の検討ということが書いてあります。これは具体的に法務省では、現在どのような方策を検討されているのか。今話題に挙がっていましたドラッグコートがそれなのか。ここについて確認をさせていただければと思います。
○鈴木座長 お願いいたします。
○法務省大臣官房 ありがとうございます。法務省のほうからお答えします。
  今、委員から御指摘いただきましたとおり、確かに海外における拘禁刑に代わる措置というものを参考にした再犯防止方策ということでございまして、当然先ほど御紹介いただいたようなものも含めて、いろいろと検討を進めなければということでございますが、いかんせん施策的な制度のみならず、いろいろと法律も含めて係る部分も多く、簡単な結論が出ないというところで、いろいろと思案しているということで、なかなか現状において具体的にこういうものを検討して進めておりますというところまで、申し訳ございません、ちょっとお示しできる材料がなくて恐縮でございます。
  ただ、検討すべき項目として、委員の先生方に先ほど来御指摘いただいているような観点も含めて、特に薬物依存のある方の対応というのはいろいろと論点があると思っておりますので、鋭意検討を進めているというところが、大変申し訳ございませんが、現状でし得る答えかなというところでございます。申し訳ございません。
○□□委員 ありがとうございました。拘禁刑に代わる措置となれば、法律の改正を含めて、いろいろなことを検討していかないといけないと私も認識しています。いずれにしても拘禁刑に代わるような、そういったサポート支援的なものが必要であるというような意識を持たれているということは分かりました。
  2点目なのですが、これも法務省への質問です。大麻取締法違反で検挙される方が年々増加している。これはこれまでの検討会でも様々なところで出てきました。大麻取締法違反で検挙されている方の中で、刑務所ですとか、保護観察上での処遇の対象になっていない方というのは、大体全体の何%ぐらいなのでしょうか。なぜこういうことを伺うかというと、私の感覚では、多くの方は処遇の対象になっていない。つまり、再乱用防止の支援を受けていないのではないかと思っているからです。
○鈴木座長 お願いいたします。
○法務省矯正局 御質問ありがとうございます。最初に矯正局から答えさせていただきます。先ほど申しましたとおり、刑事施設の新入所者のうちの約4%が大麻取締法違反該当者なのですけれども、矯正施設における薬物依存対策の表の対象者のところに、麻薬、覚醒剤、その他薬物に対する依存があるものと書いてありますとおり、基本的に大麻取締法違反者でも依存があれば全て薬物依存離脱指導の対象者となっております。
  申し訳ございません、具体的に何パーセントが外れているかという数字までは出せないのですけれども、この薬物依存離脱指導については、薬物で入ってきた人の95%以上の者が出所までに受けているという結果が出ております。受けていない人たちというのは、施設の中で頻回に規律違反を繰り返したりですとか、精神状態が不安定でグループワーク、じっと座っていることができない人などが外れていると認識しているところでございます。
  以上です。
○鈴木座長 ありがとうございます。
  □□委員、よろしいでしょうか。
○□□委員 ありがとうございました。となると、大麻取締法の中で処遇の対象になっていない方については、また後日教えていただけるという状況でしょうか。大麻取締法で検挙された方の中で、例えば初犯の方ですと、保護観察もつかず、刑務所にも行かないという方に関しては、処遇の対象から漏れているように思うのです。ですので、初犯者を対象としたようなプログラムが、例えば麻薬取締部ですとか、福岡県などでもそういった取組が行われているわけなのですが、現在、検挙されている方の中で、刑務所にも行かない、保護観察の対象にもならない方は、大麻取締法違反で検挙された方の何%ぐらいでしょうか。
○法務省矯正局 申し訳ございません、法務省ではそのデータは持っておりません。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  □□委員、お願いいたします。
○□□委員 □□です。
  法務省の保護局の方に1つ質問と、あと幾つかコメントがございます。
  保護局のほうから保護観察における薬物再乱用防止プログラムの説明をいただきましたけれども、仮釈放者の場合、以前は仮釈放の保護観察期間が6か月以上ある者しかプログラムの対象になっておりませんでしたが、現在でもそれはまだ続いていますでしょうか。といいますのは、覚醒剤関係の受刑者は刑期がそんなに長くないので、保護観察期間が6か月以上ある者は極めて少ない、全体でも保護観察期間が6か月間未満の者が80%を占めていますので、極めて一部の者しか6か月以上ではないと思うのですけれども、そのあたりを教えていただけますでしょうか。よろしくお願いします。
○法務省保護局 その点につきましては、現在もこの薬物再乱用防止プログラムの受講を義務付ける対象にしているのは、仮釈放期間6か月以上の仮釈放者ということになります。ただ、一部執行猶予で仮釈放になる人は、当然仮釈放期間は非常に短くても対象にしているという状況でございます。
○□□委員 ありがとうございます。ただ、一部執行猶予ができて、一部執行猶予の対象になった者はいいのですけれども、今でも覚醒剤事犯者の45%ぐらいは普通の実刑になっています。そうすると、仮釈放にならないと、社会に出てからの保護観察が受けられないことになりますが、その人たちの保護観察期間は、恐らくほとんど6か月未満なのではないかと思います。この中にも依存に対する処遇・治療が必要な者がいると思うのですけれども、なぜ6か月以上の者に限定しているのでしょうか。プログラムは基本的に3か月が1クールぐらいだと記憶しているのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
○法務省保護局 これにつきましては、制度発足当初に6か月以上という形で設定したというところなのですけれども、これは統計的に6か月以上の人のほうが再犯というか、仮釈放の取消し率が高かったといったようないろいろな事情もありまして、それで、6か月以上ということで設定をしておるのですけれども、御指摘のとおり、それ未満の対象者のほうが多いということは確かにそのとおりでございますので、その点は引き続き検討課題であると認識をしております。
○□□委員 ありがとうございました。
  ちょっと時間がないようなので、もし時間があればコメントさせていただきます。
○鈴木座長 ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
  □□委員、どうぞ。
○□□委員 どうもありがとうございました。私も保護観察における薬物再乱用防止プログラムのところで1つ質問があります。基本的なことで恐縮なのですが、私は保護観察の対象になった薬物事犯の人というのは、このプログラムを受けているものだと思っていたのですけれども、全員が受けているわけではないということなのでしょうか。治療の支援が7%、プログラムの開始人員も3,498人ということだと、先ほど来、委員の先生方もおっしゃっていましたけれども、支援を受けていない人の方が多いというのが実情なのでしょうか。
○法務省保護局 実はそういうことになっておりまして、保護観察付全部執行猶予者の場合ですと、裁判官によってこのプログラムを受講することを特別遵守事項に定めるのが相当であるとする意見が付される場合とそうでない場合があるものの、かなり高確率で保護観察中に守らなければならない特別遵守事項としてプログラムを受けるということが設定されますので、そういった対象には全てということになるのですけれども、仮釈放者の場合ですと、先ほど申し上げたとおり、一部執行猶予者以外の仮釈放期間が6か月に満たない人というのはプログラムの受講を義務付ける対象に今現在していませんので、対象にならない人はいるということでございます。
○□□委員 それは本人が希望していないから受けられないということではなくて、制度としてそうなっているということでしょうか。
○法務省保護局 制度としてそのようになっております。
○□□委員 これを変えることは可能なのですか。
○法務省保護局 これにつきましては御指摘をいただいたとおり、検討課題であると考えております。
○□□委員 ありがとうございます。
  あと1点は、質問ではなく、御説明をお聞きしていて思ったことなのですが、麻取には再乱用防止支援員という方がいらして、同じ厚労省の中でも依存症対策は精神・障害保健課がやっている。障害保健福祉部の資料の1ページで、「全体像」と書いてあるのですけれども、この中には麻取の部分が入っていないですし、法務省さんでやっていらっしゃる刑務所の中でのプログラムや保護観察がどうなっているか、保護観察なしの執行猶予を受けた人がどうなっているかが入っていない。多分これは同じの図の中で落とし込まないと全体像が全然見えないと思うのです。それぞれのその部署で私たちはこれをやっていますというのは分かるのですけれども、国の施策としてトータルでどのようになっているのかというのが全然見えないなと感じました。
  それぞれの役所で、「私たちのところではこうやっていますけれども、そこから漏れている人は分かりません」ということでは不十分で、国の施策として、どこが音頭を取ってグランドデザインを描くのかを考えることが大事だと思います。
  以上です。
○鈴木座長 誰もこれに答えられないと思いますので、そういう御意見があったということを留めておきたいと思います。
  それでは、時間もちょうど予定の時間になっておりますので、続いて委員からの発表に移ります。
  松本委員から「再乱用防止~『需要低減』のための地域依存症支援~」について、説明をお願いいたします。
○松本委員 私のほうから、再乱用防止に関しましてお話をさせていただきたいと思います。再乱用防止という言葉は個人的にはあまり好きではなくて、いかにも取り締まり的な言葉という感じがしていまして、私としては依存症回復支援と言いたいのですが、一応、会議の趣旨に合わせてこの言葉を使っております。
  次をおめくりください。冒頭にお示ししているグラフなのですが、これは私が所属している薬物依存研究部が、1987年以降ほぼ隔年で全国の入院病床のある精神科医療施設、全体で1,600施設ほどありますが、そこに対して、調査年の9月から10月の2か月間に、外来もしくは入院で治療を受けた全ての薬物に関連して何らかの精神医学的な健康被害が出てきた方たち、そのようにして精神科の治療を受けた方たちの患者さんのデータを全部集めていただいて、それで、このグラフは主な乱用薬物ごとに分類して、その経年的な推移を見ています。
  一瞥すると分かるように、この青く塗った部分は覚醒剤なのですが、覚醒剤が一番大きなエリアを占めています。我が国の精神科医療における薬物依存症の治療の現場では、覚醒剤が一番問題になっているということが分かるかと思います。
  次をおめくりください。しかし、多分日本国内に存在する薬物・覚醒剤の問題を抱えている方たちのうち、精神科医療で治療を受けている人はごく一部です。その大半は恐らく刑事施設で処遇を受けています。刑事施設の中で、覚醒剤依存症と思っている方たちは様々な処遇をされていて、また、法務省の中でもいろいろなプログラムをやられているのですけれども、そのプログラムが悪いと言っているわけでありません。ただ、刑務所という環境は果たして回復に役立っているのかということなのです。
  ここでは2つの論文を示しております。1つは嶋根委員の研究なのですけれども、刑務所に入れば入るほど、薬物の問題の重症度の尺度がどんどん高得点化していくのです。中でも、その家族との関係とか、仕事とかという人とのつながりに関わる点がどんどん悪くなっていって、刑務所に入るたびに孤立が深まるという報告です。
  もう一つは千葉大学の羽間先生の研究です。覚醒剤で捕まって刑務所に入り、仮釈放で出てきて保護観察所に関わり始めた方たちが、その後、地域の中で再び覚醒剤を使って、また刑務所に戻ってしまう、このことの予測因子を調べたものです。そこから分かるのは、刑務所に入れば入るほど、つまり、長く入れば入るほど、数多く入れば入るほど、再犯のリスクが高まってしまう。その一方で、むしろ仮釈放を長くして地域で処遇したほうが再犯防止には役立つかもしれないというようなことが分かっています。ただ、精神科医である私からすると、この研究結果で、一番深刻な知見は、薬物の問題とは別に何らかの精神疾患が合併している方ほど再び捕まって刑務所に戻りやすい、つまり、病気の人ばかりが刑務所に蓄積してしまっている、という事実です。これはかなり厳しい現実を示しています。
  次は、やはり薬物依存研究部と法務省の共同研究のものなのですけれども、全国の刑務所の中で、覚醒剤取締法違反で服役している方たちが、小児期にどのような逆境的な体験をしているのかを調べたものです。御覧のように、彼らは本当にいろいろな苦労をしています。そして、この逆境的な体験が多ければ多いほど、薬物問題も重症化していくのです。だから、実は何度も何度も再犯を繰り返している方たちは、個人を罰して個人を社会から排除すればそれでいいのかというと、むしろ社会全体の被害者としての側面もあるのではないかということを示唆するデータだと思います。
  次は再び病院調査のデータに戻ります。2012年から忽然と赤い部分が表れて、2014年にさらに大きくなって、その後、小さくなっている薬物があります。これ何かと言うと危険ドラッグです。この危険ドラッグなのですけれども、これは規制強化が功を奏して、包括指定をはじめとした様々な規制強化によって入手できない状況になって、表向きは問題は沈静化していっているのです。しかし、本当にこれでハッピーとなっているかどうかということなのです。この規制強化が行われた2013年、2014年の中で、医療の現場で何が見えてきたか。
  まず、皆さんから向かって左側のほうのグラフなのですが、全国8か所の薬物依存症の専門病院で、この3年間で治療を受けた危険ドラッグ関連障害の患者さんたち864名の分析で分かったのですが、実は、年次が進むにつれて、意識障害やけいれんといった神経内科的な症状がどんどんひどくなっているのです。規制を強化すればするほど中身がやばくなってきて、命に関わるような症状が出ている。
  それから、右側のグラフです。全国の救命救急センターでの調査なのですが、規制が厳しくなった後のほうが、救急搬送される危険ドラッグ使用者の患者さんたちの身体合併症が深刻になって、死亡事例も出ているということなのです。
  歴史的な様々な薬物で明らかにされていますが、一般に規制を強化すると、市中に流通する薬物純度が高くなったり、有害性が増すことが知られています。最もわかりやすい例が、米国における禁酒法の時代です。規制されると、密輸の便や少量で十分な効果を得ることを求めて、市中に流通するアルコール飲料のアルコール濃度が高くなり、さらには、製造技術の粗雑さからメチルアルコールが入るようになってしまったりということがありました。実は日本でもこれと同じようなことがあったということです。
  さらに次のスライドをご覧ください。依存症専門医の立場からすると、これが一番深刻だと思うのです。危険ドラッグを使って何らかの症状が出て精神科治療を受けた患者さんのなかで、依存症の診断に該当する人、すなわち、自分の意志ではもうコントロールできない状況にある人の割合は、規制が強化された2年間のあいだに有意に増えていたのです。対象群として、同じ時期の覚醒剤の患者さんを見てみると、依存症に該当する人の割合には特に変わりがありません。
  何を言いたいかというと、こういうことです。もちろん供給の低減、規制強化や取り締まりは大事です。けれども、違法化しても、犯罪者となる危険を顧みずに薬物を使う人がいるということです。そうした人こそが依存症に罹患している人なのです。つまり、供給の低減と同時に、需要を低減すること、薬物を欲しがる人を減らすこと、すなわち、依存症の治療をする、回復支援をすることが大事なのです。
  ちなみに、規制強化をして危険ドラッグを使わなくなったのだけれども、では、それで10代の子たちは危険ドラッグ、もう薬物と縁が切れたかというと、そうではなくて、我々の病院調査で10代のデータだけをピックアップしてみると、実は危険ドラッグが手に入らなくなった今、最近若者たちが一番使っているのは、大麻でも危険ドラッグでもなくて、市販薬なのです。そういうことを考えてみると、本当に取り締まっても取り締まってもどんどんどんどん次から次へと捕まらない薬物が出てくる現状を、まず我々は把握しておかなくてはいけないでしょう。次々に依存対象を換えながら薬物を使い続ける行動の背景にある問題、すなわち、心の問題をどう解決するのかが真のターゲットではないかと思います。
  さて、この需要低減=依存症治療を目的として、私自身は2006年からこのSMARPPという依存症集団療法のプログラムの開発に着手してきました。そもそも私が薬物依存症の治療に関わったのは25年前です。その当時、日本国内でちゃんとした薬物依存症の治療プログラムらしきものを持っている医療施設というのは、国内に私の知る限りは3か所しかありませんでした。医療者の中でというか、精神科医の中で薬物依存症の患者は非常に忌避されておりました。ですから、どこの医療機関も、どの医者も診てくれません。嫌だからです。たまに違法薬物の依存症患者さんが受診し、薬物を使ったと告白をしようものならば、あたりまえのように警察に通報しているありさまでした。このように、受け皿も専門医もきわめて乏しい状況の中で、何とか短期間のトレーニングでもできるプログラムを開発していこう、それがSMARPP開発の動機でした。
  直近の段階では全国の医療機関の44か所、それから、全国に69か所ある精神保健福祉センターのうち47か所でこのSMARPPを使っていただいていて、平成28年から診療報酬の改定でも算定の対象にしていただいております。
  いろいろな効果検証をやってきているのですが、最初に我々が着手したのは、法務省の矯正局のほうの関連機関における検証です。播磨社会復帰促進センターというPFI刑務所で、このプログラムを受ける前の待機期間を対象群として、介入することによってどのような変化があったか、もちろん刑事施設の中ですから「再使用の有無」をアウトカムにできませんが、評価尺度上で非常に好ましい変化が得られることが確認されました。
  それから、皆さんから向かって左側なのですけれども、まず、私が勤務する国立精神・神経医療研究センター病院で治療を受けた患者さんの転帰調査です。プログラムを終了して1年経過した時点で、その1年後の状況を見てみると、7割が以前よりも薬物使用様態が改善しており、4割の者は1年間完全断薬を達成していました。同様の先行研究が国内にないので、優劣を比較するのは難しいのですが、アルコール依存症患者に対する治療転帰研究と比べると、かなりすぐれている結果が出ています。そして右側の図を見てください。この研究では、SMARPPが、従来の薬物依存症治療(医者が単に診察するだけ)よりも治療のドロップアウトが少なく、ダルク等の民間団体、あるいは自助グループにつながる人が多いという結果が確認されています。
  次のスライドです。実は、これが最も大事なことだと思うのです。このプログラムを使って当事者に関わることで、これまでの、「薬物依存症の患者は怖くてやばくて、もう本当に絶対会いたくない、招かれざる客だ」と思っていた医療者の認識が変化するのです。つまり、医療者の、薬物依存患者さんに対する苦手意識が軽減し、「自分にもできることがある」という自己効力が高まるのです。つまり、単に研修会で座学の勉強をたくさんするよりも、SMARPPを介して当事者と会うことが一番の教育になるのです。その意味で、SMARPPはいわば教育ツールとしての機能も持っています。
  次に、先ほど来少し法務省の保護局の方からも触れていただきましたVoice Bridges Projectについても少し説明しておきたいと思います。刑の一部執行猶予制度が2016年6月から施行されました。これまで刑務所を満期で出た方というのは、出所直後に薬物を再使用してしまうことが少なくありませんでした。だから刑務所に入ったことがほとんど意味がないと言われる状況の中で、実刑部分を短くして保護観察をつけ、地域でプログラムを提供する、というのは一歩前進だと思っています。
  しかし、刑務所出所直後の次に再使用が多いのは保護観察終了直後なのです。やはり薬物依存症は、糖尿病と同様の慢性疾患として継続的なアフターケアが必要になってきます。そこで、保護観察の後にも、強制力がない中でゆるゆると地域の社会資源につながっていただくために、精神保健福祉センターにお願いして、あくまでも希望者だけなのですけれども、本人に定期的に電話をかけて、近況に関する情報収集とともに、対象者の困りごとに相談・対応するというサービスを提供して頂いています。その中で、対象者から「薬を使ってしまった」という告白があったとしても、決して警察に通報せずに、もちろん、保護観察所に知らせることもなく、あくまでも守秘義務を優先して、地域の中で様々な地域の関係機関と連携しながらサポートをしていく、というプロジェクトです。
  この定期的な電話を介した声かけは、3年間継続します。なぜ3年間かというと、一部執行猶予の保護観察期間は2年が一番多かったので、1年プラスして3年としたのです。現在、このプロジェクトは全国の精神保健福祉センターの20か所、全体の約3分の1弱のところで展開されています。
  現時点ではプロジェクト継続中なので、確定的な結果を言うことはできませんけれども、このプロジェクトをやって分かっているのは、やはり2年半ぐらいから薬物再使用のリスクが高まるということです。その意味でも、刑務所から地域に出て、ある程度時間がたったときに、本人が困ったときにどうサポートできるか、安心できる支援者がすぐ身近にいるのか、ということがとても重要なのだと思っています。
  さらに、もう一つ、保護観察開始1年以内で再使用する人は少ないのですが、それでもなお1年以内に再使用してしまう人はどんな人なのか見てみると、単身で生活していたり、ほかに相談できる人がいなかったり、それから、これはびっくりしたのですが、身体障害者手帳を持っている方なのです。日々の日常生活に非常に苦労していて、なかなか自助グループにも行けない、ダルクに入寮するにしても、「車椅子はうちではちょっと無理……」みたいな感じになって、非常に孤立しやすい方たちなのです。
  ただ、このプロジェクトにつながっているといいのは、こういった方たちが1年以内に再使用しただけではなく、その後、精神保健福祉センターのプログラムにつながっている、という点です。さらに言えば、このプロジェクトをやることによって、精神保健福祉センターの職員と保護観察所の職員の対話がすごく増えて、とても司法と保健医療福祉との連携が、何か自然な形で広がっていくことが分かっています。
  このような努力をする中で、薬物依存症を抱える人たちの治療や支援へのアクセスは徐々に改善しています。先ほど来厚生労働省の依存症対策推進室の発表の中でも、ナショナルデータベースにおける薬物依存症患者数が平成29年から増えていることが触れられていましたが、おそらくそれは確かなことだと思います。我々の全国の精神科病院調査でも、年々、報告される薬物関連精神疾患患者数が増えているからです。このことは、決して薬物問題が蔓延していることを意味するものではありません。というのも、医療につながる患者数は増えていても、「過去1年以内に薬物使用がある」患者の数はずっと横ばいだからです。むしろ、今まで医療にアクセスしなかった薬物依存症の人たちが医療にアクセスするようになり始め、しかも、その中で一定程度やめられている、という事実を示していると考えるべきでしょう。
  なぜこうした事態が起きているのかというと、政策や社会の変化が影響しています。恐らく厚労省の依存症治療拠点の事業は正式には2017年からですけれども、その助走期間みたいなものが2014年からちょこちょこ始まっていました。2016年にSMARPPの診療報酬の加算が追加されて、あと、我々専門家や支援者、薬物依存症者家族が連帯して、芸能人の薬物事件報道に対する異議の声をあげたり、それから依存症対策推進室が実施する依存症啓発イベントで、国民に広く「依存症は回復できる病気」「1回やったら人生おしまいではなくて、回復できるのだ」というメッセージも出していただいたことも、よい影響を与えていると思います。
  私自身は2015年から薬物依存研究部の部長を務めさせていただいておりますが、それまでの臨床経験の中でずっと思ってきたことがあります。それは、薬物依存症の治療そのものは決して難しくないのです。難しくしているのは、当事者の方たちが社会全般に広がるスティグマを内面化させて、自分自身に対するスティグマを抱えていることです。これが治療や支援へのアクセスを阻み、治療の中断を促進しているのです。したがって、いたずらに規制を増やし、「犯罪者」という烙印を押すよりも、むしろこうやって治療・相談支援につながる人を増やすことこそが真なる保健政策ではないか、と私は考えています。
  これは最後のスライドになるのですけれども、ハームリダクションという言葉を皆さんも聞いたことがあるかと思います。よく有識者と言われる方が間違った説明するのです。薬物問題が蔓延している欧米の国が泣く泣くやっている苦肉の策だと言っているのですが、これはとんでもない誤解です。むしろこれは薬物に関する保健政策や個別支援実践の倫理学なのです。単に規制を追加して、犯罪者を増やせばそれでいいという問題ではないのではないの、ということなのです。
  そもそも薬物犯罪というのはあらゆる犯罪の中でかなり若い犯罪、新しい犯罪です。今の薬物の規制法の根っこになっている1961年の麻薬単一条約には、前文に、人類の健康と福祉を鑑みてと書いてあるわけで、その意味で、薬物問題は本質的に健康問題、保健問題です。やはり孤立させないとか命を守るといった観点は大事です。とはいえ、海外でやっているような注射器の交換とか、あるいはブプレノルフィンやメサドンといった代替的薬物療法が日本に必要とは思わないですし、合法化や非犯罪化の議論というのもなかなか世論がついてこないところもあると思います。
  では、何をしたらいいのか、実はあると思っています。しかも、今すぐできるし、新規の予算がなくてもできるものが2つあります。
1つは、やはり治療・相談支援の場での守秘義務の徹底です。できれば政府としてそのことを国内の医療者に通達を出してほしい。私が薬物依存症の臨床を始めた当時、多くの精神科医が患者さんの薬物使用の告白に対して警察に通報していました。今、依存症専門医はまずそれはしませんけれども、一般の精神科医は通報する人がちらほらいます。それから、救命救急センターのお医者さんは結構な割合で通報しています。通報がいけないというわけではありません。そもそもが犯罪である以上、通報か守秘義務優先かを医師は裁量できることになっています。しかし、本人や御家族に回復のための社会資源に関する情報を伝えずにただ通報するのは、医療者として本務を果たしているとはいえない。白衣でコスプレをした捜査員といわざるを得ないでしょう。
  あと、先ほど来お話があった麻薬中毒者の届出です。事務局は、精神保健福祉法による措置入院とほぼ重複していると言っていましたが、重複ではないです。過剰な人権制限となってしまっているのです。麻薬中毒者台帳にリストされると、ずっと、もうほぼ永久に、年余にわたって監視・監督されるわけです。刑事処分よりもはるかに長期です。もちろん環境浄化みたいな、通常の精神保健福祉のスキームにはない機能もありますが、その一方で、当事者の医療アクセスを明らかに抑止してしまうところもあるのです。
  薬物依存症は、精神保健福祉法に明記されたれっきとした障害であり、医療における扱いはその文脈で行われるように、麻薬中毒者制度の抜本的な見直しをすべきです。そして、医療者、特に医師が刑法に定められた守秘義務を遵守し、安心・安全な治療・相談の場を確保すること、これはもう立派なハームリダクションであると思っています。
  それから、最後に、予防啓発のコンセプトを変えていく必要があると思うのです。やはり乱用防止啓発の美名の下に、当事者や御家族とかが嫌がるような啓発をするというのはおかしいと思うのです。さっきも申し上げたように、そもそもが保健政策です。感染症などと同じ健康問題なわけです。
  例えばHIVとかハンセン病の当事者の人たちが嫌がる感染予防の啓発を許されるかというと、それはあり得ないわけなのです。そして、今この薬物依存の予防啓発のキャッチフレーズについても、当事者や御家族や支援者がみんな嫌がっているのだけれども、いまだこれが続いているというのは、やはりこれは国として考えていく必要がある。このことも強調して、これは大事な依存症の回復支援の項目であるということを最後に付け加えて、私の発表を終わりにしたいと思います。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  それでは、ただいまの松本委員からの発表について、御意見・御質問がございましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。
  また、本日の全体を通して御意見や御質問がございましたら、その点もお願いいたします。いかがでしょうか。
  □□委員からまずお願いします。
○□□委員 松本先生らしい発信力のあるプレゼンテーションだったと思いますが、どうも先生には危険ドラッグの話が御理解いただけていないとずっと私は思っていまして、規制をすればするほど危険なものが出てきたとずっと言われているのだけれども、実は私は当時からずっとその問題に関わっていた人間なので、少し説明をさせてください。
  どういうことかというと、皆さん御存じの池袋の事件というのは2014年です。この乱用期というのは大体2011年くらいから始まったと私は見ていますけれども、いわゆる法の網をかいくぐる薬物としては3回目ぐらいの波だと考えています。その間、何が一番制度的に変わったかというと、法の網をかいくぐる薬物について、指定薬物制度というものを敷いたわけです。最初の指定薬物制度を敷いたときに、第2回目の乱用は事実上ぱたっと終わりました。終わったと思っていたら、それから4、5年して、まさに3回目が来たわけです。
  2回目も3回目も、いわゆる規制薬物の構造式を若干変えて売るというやり方は同じなのです。ところが、3回目は本当にすごい勢いで突然登場した感じでして、脱法ハーブという言い方で来たわけです。そのときは本当に構造式の規定でいたちごっこが起きたわけですけれども、規制強化によってそういう事態になったわけでもなければ、危険なものが急に増えたわけでもありません。最終的に池袋の事件が起きたときには、出回っているものは玉石混交なのです。どんどん危険なものが出たと言われるのだけれども、皆さんびっくりされるだろうけれども、実際に東京都で買い上げ調査をやったら、検査の結果単なる水だった、単なる小麦だった、そういうものもあったのです。
  何しろ玉石混交。同時にどうしても報道というのは事件として、事故として、大きく報道されるから、ついついどんどん危険性が増しているように感じるかも分かりませんが、実際は、とにかく多種多様で、それこそ海外に司令塔の人がいて日本を攻撃しているかのような、サイバー攻撃に近かった印象です。1つの商品に、4種類、5種類と薬物がまぜ込まれていて、当然それは危険だろうと思うのですけれども、本当に大変な時代でした。これは規制強化したからそうなったというよりは、供給側の最後のあがきみたいなものでして、あるものは何でも出してしまえというような状況だったと私は思っています。そういうことで、禁酒法を出されてもあまりにもピンと来ないのでして、ちょっとその辺はいかがかなと思います。
  あと、使用者に何をもたらしたかということなのですが、2014年にはいわゆる意識障害が増えた、痙攣が増えた、横紋筋融解症が増えた、まさにそうです。だけれども、それは何でそうなったかといったら、私が今言ったような状況になっていたのだと思います。危険な薬物だけがどんどん出たわけではありません。私はある意味で確信を持ってそれを言いたいです。そのあたりのことを少し先生にも考えていただきたいと思います。
  あと、治療的なことについて言いますと、細かいことは幾つかありますけれども、大体大筋こんなものだろうと、松本先生の頑張りが随分出ているなと思います。
  それから、最後にハームリダクションです。これは曲者の言葉なのです。専門用語というのは文字どおり取ってはいけないことがあると思います。例えば依存という言葉です。依存というと、人間関係の依存を考えて、WHOによる依存の定義というのは誰も知らないわけです。あれは薬理作用があってこそ初めて依存と言えるわけです。
  実はハームリダクションというのは、これは要するに政策的実践です。始められてもう30年以上たつわけです。これはHIV感染の拡大予防として始まったという本質があります。確かにハームリダクションという概念自体も拡大はしているけれども、HIV感染のためにというものは必ずついている。だから、これはHIV感染拡大防止のための薬物対策であって、もともと薬物対策のための対策ではなかったということは押さえておく必要があると思います。どういうわけか、日本ではそれを文字どおりハームリダクション、つまり、害を減らすという捉え方で薬物の政策の中で語られる方がいるのだけれども、これは世界的には、本質的には、HIV感染の拡大防止という中での話だということは、押さえていただきたいなと思います。
  以上です。
○鈴木座長 松本委員、どうぞ。
○松本委員 危険ドラッグに関しては、本当に僕らは日本中の精神科医療機関から集まるデータを解析しながら、かつ自分自身もたくさんの危険ドラッグの患者さんの治療を担当しながら、そして、いろいろな治療施設の専門医と共同研究をしながら、ひしひしと肌で感じ、その感覚をデータで確認してきたことなのです。だから、そこのところはかなり確信を持ってデータを出しています。指定薬物部会などの会合の席で、官公庁が用意した情報を眺めて論じるのとは、そもそもの次元が違います。池袋の事件も、2回目の包括指定の後から起きていますよね。もう我々にとって、2014年の大体3月4月ぐらいから外来の状況が全然変わりました。そこのところはやはり肌身に感じているということは強調しておきたいと思います。
  それから、ハームリダクションに関してはおっしゃるとおりです。少なくとも歴史的な当初は。しかし今、国際ハームリダクション学会の議論はもうそこから離れています。今、HIVは死なない病気になりました。その中で、そこで培った様々な人権意識みたいなものが、ハームリダクションの専門家たちの中でどんどん広がりを見せているのです。それは臨床的に非常に有用な概念であると思っています。
○鈴木座長 ありがとうございます。
  □□委員、どうぞ。
○□□委員 2人で言い合っても何もいいこともないのですけれども、申し訳ないです。ただし、はっきり言いたいのは、池袋の事件は2014年6月なのです。規制の例として、包括指定を敷かれていますが、これは政策の重要な一部にすぎません。非常に効果がありました。だけれども、どうしてそこまでこんなに危険ドラッグが使われたかということが重要です。
  指定薬物制度による規制は、1回目と2回目で大きく内容が変わりました。1回目のときには、供給サイドに対する規制だったのです。使用者に対する規制がなかったのです。当時はそれでも問題は収まりました。ところが、4、5年たったら、ばーっと使われて、一気に池袋につながる事件になっていくのです。
  その中で、1回目の指定薬物制度の欠陥の一つとして、個人に対する使用罪、所持罪というものがなかったという反省がありました。そこで、2回目の指定薬物制度では、使用者サイドへの罰則をつけたのです。2か月後に池袋事件が起きるというタイミングの悪さはありましたが、使用罪、所持罪の効果が出て、12月までにはほとんどの問題が解決しました。
  そこで、我々の教訓としては、若い方を中心に、使用罪というものがないと、ついつい興味本位で薬物をやってみたいなとか、これまで大麻をやったことないけれども、捕まらないなら合成カンナビノイドをやってみたいなとか、そういう方が予想外に多かったのだという教訓があります。それが使用罪というものができたら、一気に減っていった。当然供給側に対する規制ということもありますから、両方でうまくいったのだと思いますけれども、池袋の事件が6月とすれば、12月にはほとんどこの問題は解決したのです。劇的でした。ということで、規制などはないほうがいいわけですが、規制がないと何が起きるのかということを、私たちは危険ドラッグで学んだのだと、私は思っています。
  ここで、話は飛びますけれども、この会議でそれが主目的かどうか分かりませんけれども、大麻です。大麻使用罪がないという話があって、そこで私の意見を言わせていただきたいと思います。現在、規制薬物の使用罪で有罪になった方は、初犯の場合にはほとんどの方が執行猶予です。ところが、執行猶予と言われても、これは前科がつくのです。
  前科というものは大変な問題でして、いわゆる再乱用、再犯という見方からすると、松本先生のデータにもありましたけれども、前科の回数が多ければ多いほど社会復帰が遠のいてくのです。そうすると、当然でしょうけれども、なるべくならば前科というものをむやみやたらにつけるものではない。
  これを薬物依存症者で考えた場合にどうなるか。例えば大麻です。大麻の場合には覚醒剤と薬理作用も随分違うわけでして、それと同等の処分はいかがなものかと当然思いますけれども、逆に今、規制薬物の初犯者に対しては、執行猶予なのですが、前科がつく。前科がつくと社会復帰は難しい。非常に単純な図式です。それだったら、大麻の場合、これは私の一つの提案なのですけれども、使用罪をつくる。ただし、初犯の場合には前科をつけない。前科がつかない処分に処す。
  そのときに重要なのは、これは社会・援護局の資料にあったのですけれども、全国の精神保健福祉センターです。あと全国2か所くらいで相談拠点をやっていただければ、全国の全ての精神保健福祉センターが相談拠点になるのだと私は見ていますけれども、そうなってくると、いわゆる使用の初犯者は、精神保健福祉センターの治療プログラムを受けなさいという、まさにダイバージョンが可能になります。いわゆる司法の今までの流れとは違って、まずは治療的に対応する道を義務づけることが可能になります。しかもこれは前科にするのではない。そういう考え方が必要なのではなかろうかと考えています。
  これは刑法体系上、非常に大変なことなのかも分からないけれども、私は大麻という問題を考えたときには、日本は大麻の場合には、若い人たちが手を出すわけです。たまたま好奇心でやったら、前科がついて一生が無駄になるということも、ないわけではない。ということで、全ての薬物に妥当とは簡単には思いませんけれども、少なくとも大麻については前科のつかない処分措置、そういうことを厚労省と法務省が一緒になって考えていただきたい。今日は、これを言いたかったということです。
  以上です。
○鈴木座長 ありがとうございます。
  では、事務局のほうからお願いします。
○事務局 危険ドラッグについては、本来第1回の資料できちんと御説明すればよかったのですが、特に御用意していなかったので、また事実関係をよく整理して御紹介させていただきたいと思います。
○鈴木座長 ありがとうございます。
  ほかに御意見はいかがでしょうか。
  □□委員、お願いします。
○□□委員 本当に御丁寧な講演をありがとうございます。
  麻薬中毒者届出制度について1つ確認させてください。麻薬製造業者の弊社におきまして、がんの患者さんへの適応で、医療用麻薬を発売した当初、医療用麻薬を使いたいのだけれども、2週間たったら必ず麻薬中毒者として届け出ないといけないので、医療用麻薬は患者に投与しにくいみたいなことを、ある病院の薬剤部の先生から言われたのです。そんなことはないと思うのですけれどもと言ったら、いや、うちは自動的に、2週間医療用麻薬を処方すると薬剤部の薬局長がこれを出してくださいというのが過去に通例であった、と聞いています。
  それで、実は5年ほど前に、ある先生から、「最近麻薬中毒者届は出さなくてよくなったのか」という質問が私のところに来たのです。そういえば最近臨床の現場からその話は聞いていないなと思って、各方面にいろいろ聞いたのですが、なかなか分かる方がいらっしゃらなくて、WHO方式を日本に最初に取り入れられた先生にお聞きしたら、「実はそれは私の時代にやめてもらった」ということでした。その先生曰く、「医療用麻薬でも2週間ぐらい投与したらもう麻薬中毒でしょう」みたいなことを当時の係官かどなたかに言われて、当時治験者の先生方はそれを忠実に実施されたということでした。当時そういう通達があったのか分かりませんが、実際にそういった事実があったか、本日御臨席の医師の先生方もそういったことをもし御経験されているのだったら、ちょっと教えていただきたいなと思ったのです。
○□□委員 多分、これは監視指導・麻薬対策課の方が過去の資料を調べていただかないと分からないと思うのですが、今そんなことがあったら、もう緩和医療の現場は大混乱ですよね。そのくらいしか分かりません。
○□□委員 過去の話なので確認のしようがないのですけれども、このように法規制に関わる制度を誤って理解されてしまうと、必要とされる医療用麻薬のそういった適正使用にもブレーキがかかってしまう事があるので注意が必要であるということをコメントさせていただきました。
○鈴木座長 それでは、□□委員、お願いします。
○□□委員 御報告ありがとうございました。
  私自身、ダルクという場所で働かせていただいているので、守秘義務というところで私が考えたことで意見を伝えさせていただきたいのですけれども、ダルクみたいな民間施設では、薬物の再使用というのを一つの大きな契機と捉えています。もちろん国内法律では犯罪ですけれども、本人が薬物をもう一度やめたいと思うタイミングでもあるし、また治療から外れてしまうというタイミングでももちろんあります。なので、本人が使ったということを言えることはとても大切なのではないかなと思っています。
  その上で、覚醒剤と大麻というところもあるのですけれども、覚醒剤で今、一部執行猶予制度というのがありまして、先ほどほかの委員の先生からもあったように、全員がやはり治療に乗れていないという部分があって、現在8,000人近くの逮捕者がいらっしゃって、その半数ぐらいの大麻の逮捕者の方がいらっしゃって、もしも先ほどみたいな使用罪という話が出たときに、やはり全員が同じレールに乗るのはとてもおかしいなと思います。ちゃんとアセスメントして、その方が本当に治療が必要なのか、もしくは依存になっているのかということです。大麻の依存症というのが、私は依存症という観点というか、概念はあるのかなというのも一つ疑問には思っています。
  最後なのですけれども、予防のことに関してです。今、覚醒剤とか大麻についての予防について、厚労省並びに「ダメ。ゼッタイ。」という形で一次予防、二次予防、三次予防という形が開かれていると思うのですけれども、大麻の情報提供というのが、やはりすごく偏りがあって、国民の皆さんは大麻=麻薬なのです。大麻には産業用大麻もあって、今回話されている医療用大麻もあって、食品用の大麻もあって、嗜好品として今日本では法律で規制されているTHCの大麻があって、これが全て同じように国民の人が思っていたら、情報がちゃんと発信できていないのではないかなというのは、国としてどうなのかなというところを強く感じています。
  なので、食品大麻CBDが売られているところで、それ食べちゃった子供がもしいて、大麻を食べたの、みたいになって怒られたらすごくかわいそうだし、そういうスティグマというか偏見になってしまうと思うのですけれども、産業用大麻の方も栽培者がすごく減っていらっしゃるとおっしゃっていた中で、THCがゼロの種子がヨーロッパにあって、それを輸入できないで困っているということもあったりするのを聞いたことがあるので、大麻は一つと思われている理解を、本当に危ないものはこれなのだよ、というのをしっかりと国としてお伝えしていくことが、子供たちというのはインターネットとかを調べてしまえば分かると思うのですよね。
○鈴木座長 松本委員への質問かどうかちょっと整理しないと、どうしましょうか。
○□□委員 そういう予防啓発に向けて、しっかりとした情報提供を国としてもやっていっていただきたいという要望という形です。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  それでは、□□委員のほうから御質問があるみたいですので、お願いいたします。
○□□委員 ありがとうございます。
  質問というか意見です。先ほど□□委員のほうから御質問があったことと関係するかと思うのですけれども、日本の場合は大麻の自己使用を除くと、規制薬物の使用とか所持が違法化され、犯罪化されているうえ、検挙された場合にほとんどの者が起訴されています。覚醒剤の場合、証拠不十分とか嫌疑不十分という場合は除いてですけれども、ほとんど90%以上が起訴されている。大麻でも65~66%ぐらいが起訴されています。
  起訴されるのですけれども、覚醒剤の場合はほとんど、先ほど□□委員からもありましたが、初犯の場合はほとんどが全部執行猶予になるのですけれども、そのうち9%以下しか保護観察がつきません。犯罪化され、起訴され、有罪となり、前科がつくのに結局処遇には全く結びついていないという状況があります。
  これは大麻についてもそうです。大麻の場合も起訴猶予率というのが高く、この部分は刑事手続からは外れるのですけれども、起訴された者については、さらに覚醒剤よりも全部執行猶予の割合が高くて、ほとんどの者が全部執行猶予で保護観察がついていません。犯罪化され刑事手続に乗り、結局有罪になって刑罰が科せられるのですけれども、全部執行猶予になってそれで終わりという、これは非常に大きな問題だろうと私は思っています。
  先ほど国連の話も出ていましたけれども、先週、京都コングレスという国連の犯罪防止刑事司法会議がありまして、厚労省さんが出られたかどうか私は伺っていないのですけれども、そこでも薬物依存に対する刑罰以外の代替措置に関するセッションがありました。先ほど日本でどれぐらいそういったものが制度化に向けて検討されていますかという質問がありましたけれども、やはりその席上でも、例えば訴追段階でのダイバージョンとして、手続から外して、その代わりに治療に向けるとか、いわゆる条件付起訴猶予ですけれども、そういうものとか、それから、保護観察つきの執行猶予とか、そういったものが奨励されていました。
  しかし、日本の場合には条件つき起訴猶予はありません。私はこういったものを導入すべきだと思っているのですけれども、割と反対が多くて導入されておりませんし、それから、全部執行猶予になっても単純執行猶予が大半で治療には結びついていない。要するに、犯罪化されていても刑罰だけ科して治療には結びついていないという、このことが再乱用というか再犯につながってしまう大きな背景になっていると思います。
  それから、先ほどドラッグコートの話が出ましたけれども、日本の正式な司法の立場での見解は別に示されていませんけれども、アメリカの場合はこういう問題解決型裁判所というのがいろいろありまして、特に薬物の場合は、裁判所の裁判官が薬物の処遇を受ける命令をしておいて、1か月に何回とか定期的に呼び出して治療の経過報告を聞いたりするといったように、裁判所が処遇に積極的に関わっていくというケースワーク的なことをやっています。これは日本の裁判の運用と非常に違うところで、ここら辺がドラッグコートの日本での導入が非常に難しいと取られている一つの原因ではないかなと思います。
  それから、日本で法的にできないことの一つとして、ドラッグコートの場合は、再使用をした場合、これはスリップとかとよく言いますけれども、再使用した場合、州によって違いますけれども、2回までとか3回までは再使用をしても、それを訴追しないということが認められているのです。日本の場合は、先ほどもいいましたけれども、ほとんど薬物犯罪は起訴するという方針を採っていますので、こういう運用ができません。ドラッグコートを設置しても、再使用をしたら訴追をして、結局実刑を科すしかないということになってしまうという、ここら辺の運用がかなり日本の法制度と違うところだろうと思います。そういうこともあって、日本での法制化というところにかなり障害があると思われているのではないかと思います。
  このように、日本では薬物の使用とか所持が犯罪化されていて、刑事手続に乗らざるを得ないけれども、乗った後に処遇とか治療に結びつけていくところが非常に弱いというところが問題だと思っています。
  以上です。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  続きまして、□□委員、お願いします。
○□□委員 松本先生、発表ありがとうございました。コメントと質問がございます。
  資料15ページに書いてあります守秘義務に関しまして、私も全く同意見です。やはり患者の立場に立ってみれば、正直になるということが依存症からの回復支援で重要なときに、守秘義務が優先されないとなかなか正直になれない。通報されるような場面ではなかなか正直なれないのではないかなと思っています。
  一方、医療サイドからしてみると、医療者が患者さんの違法薬物の使用を知ったときに、警察に通報しないと何らかの罪に問われてしまうのではないかということを心配して、ある意味で、自分の身を守るために通報するというようなケースもあるのではないかなと、何となく想像をしております。やはり国がこの守秘義務についてガイドラインというか、こういった方針でやっていきましょうということをしっかりリーディングしていただくことが重要ではないかと思っています。
  また、私は青少年の薬物使用に関する研究もやっておりまして、これは教育現場でも全く同じことが言えます。例えば中学校や高校、大学などで薬物問題を抱えた子たちが保健室などに相談に行ったときに、現場の先生方が、警察に通報したほうがいいのかということで悩んでいる方も大勢いらっしゃるのではないかと思っていますので、教育現場における守秘義務についてもしっかり議論していく必要があると思っております。これはコメントです。
  質問に関しては、松本先生というより精神・障害保健課への質問でございますが、資料の8ページ目に、SMARPPなどの依存症の集団療法の診療報酬について載っています。平成28年から診療報酬化されたということは、これまで薬物依存症治療の受け皿が少ない中で、受け皿を増やすきっかけとなるという意味で、すばらしいことだと思うのですが、算定の要件のところを見てみますと、治療開始日から起算して2年を限度とすることが書いてあるのです。
  これは松本先生の発表にもありましたけれども、依存症の回復支援というものは、やはり長期的に考えていく必要がありますし、ある意味、糖尿病ですとか高血圧のような慢性疾患と同じように支援していくことが重要であるということが共通理解であると思うのです。そのような中で、なぜ2年と上限が決まっているのかということについて教えていただければと思います。
○鈴木座長 お願いします。
○依存症対策推進室 御質問、ありがとうございます。私どもで本日御用意した資料の中でも、SMARPPの診療報酬上の評価を掲げさせていただいたところです。この点につきましては、□□委員も御案内のとおり、医療保険の中での対応でございますので、中医協の場での御審議があった上でこういった評価が、まずは平成28年度になされたということかと存じます。その際、まさにそれまでの間のエビデンスに基づいて、こうした形での評価が認められたものと承知をしてございます。
  また、こういったSMARPPの取扱い、集団療法の取扱いというものが今後どうなっていくのかにつきましては、まさに中医協の判断というところかと存じます。そこでの御議論に資するような形でのエビデンスの集積は、各先生方にまた御尽力いただく必要があると思いますし、また、それに応じて、私どもとしてもしっかり連携した形で取り組ませていただきたいと考えております。
○□□委員 ありがとうございました。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  それでは、□□委員のほうからお願いいたします。
○□□委員 ありがとうございます。ただ、時間が足りないので端折ってお話しします。最初に松本先生のプレゼンテーションに関して、それから全体を通して、今後のために少しコメントさせていただきたいと思います。
  一つは、ハームリダクションという用語ですけれども、プレゼンテーションにあった使い方は理解できました。ただ、□□委員の御指摘にありましたように、ハームリダクションという言葉は、さまざまな国で、さまざまな場合に、定義なしに勝手に使われているところに問題があると考えております。そもそも、例えば、私がアジアに赴任していたときにAsian Harm Reduction Network(AHRN)という組織とコンタクトがありましたが、そこのサイトには今でもHIVを防ぐために、と明記してあります。日本で、あるいは先進国では、治療が可能になっても、他のさまざまな国ではそうではないところが多くありますので、一言コメントさせていただきました。
  いろいろな国での薬物状況を見て、このように考えてきました。やみくもに規制を厳しくすればいいかというと、そういうものではないと、逆に弱くすればいいかというと、そういうものでもないと考えています。
  この検討会の今後の活動等のために一つ、条約に関してコメントをさせていただきたいと思います。1961年の麻薬に関する単一条約があります。この条約に至るまで100年あまりの進化があったわけですけれども、それは全て国際犯罪組織との戦いでありました。犯罪組織というのは、抜け道があると、そこを突いてくるわけです。したがって、ユニバーサルに、普遍的な条約の適用が必要だと常に考えております。
  その中で、単一条約は、1972年の議定書で改正されました。主な目的は、条約の規定遵守を担保するため、国際麻薬統制委員会(INCB)の権限、義務、機能を強化したことですけれども、もう一つ重要な改正がありました。第38条です。これが薬物乱用に関する条項です。
  もともと第38条は「薬品の中毒者に対する措置」としか書いてありませんでした。中毒者の治療保護及び厚生のための便宜というだけしか規定されていなかったわけですけれども、改正の結果、タイトルそのものが、「薬品の濫用に対する措置」と変わりました。「薬品の濫用の防止に特別の考慮を払い、薬品の濫用の防止並びに濫用に陥った者の早期発見、治療、教育、後保護(英語正文ではアフターケアです)、更生及び社会復帰のため、あらゆる可能な措置を採り」と改正されました。
  日本は、しっかりと、政府も民間も合わせてこの方向に進んできたわけですけれども、先進国の中では、そうやってこなかった国が多くあるように見受けられます。
  したがって、世界の潮流がこうだからといって、日本も追随することは正しくないと考えております。その中で、先ほどの松本先生のコメントの中に依存者、あるいは家族が嫌がる啓発は、とありましたが、それは具体的にどこを指しておられるかお聞きしたいところですけれども「ダメ。ゼッタイ。」運動というのがあります。
  この「ダメ。ゼッタイ。」について、一言だけ付け加えさせていただきたいと思います。これはそもそもかつて日本では「覚醒剤やめますか、人間やめますか」といったスローガンというか、呼びかけなどがありましたが、ほとんど全てが、不幸にして薬物を乱用し始めてしまった人たちに向けてのことでした。それだけでは駄目なのだと、予防しなければ駄目だというので、始めていない人に対して、特に若者に向けて、できた言葉なのです。例えば、あたかもお母さんが子供に「それはやってはダメよ!」とさとすように言う言葉です。依存に陥ってしまった人たちに対して呼びかけしただけでは、依存症の問題は解決できません。これは別の話でありまして、松本先生が先ほど具体的に指摘されたことは検討する必要があると考えております。
  同時に、予防に関して用語が正しく使われることは、これからの若者たちのためにも不可欠だと考えております。今後、もう少し詳しいことは、これ以降の検討会でお話しさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
○鈴木座長 ありがとうございました。
○法務省保護局 時間が迫っているのですけれども、一言だけ補足説明をさせてください。前半で、保護観察中の対象者で6か月未満の仮釈放者については、処遇プログラムを義務付けられていないということで、何もやっていないみたいな印象になってしまったと思うので、これだけ補足させていただきたいのですけれども、もともと薬物検査を定期的に実施して、プラス面接指導をするという制度から始まりまして、その中で、平成20年から一部の対象についてプログラムとしてテキストを用いた指導と薬物検査を義務付けて実施するという形態にしております。
  ですので、今現在も残刑期が短い人については、処遇プログラムという形ではないのですが、薬物検査と面接指導というような形での処遇はしておりまして、処遇プログラムの年間実施人員が、実人員で5,000人ぐらいやっておりまして、薬物検査と面接ということで2,000人以上の対象を処遇していますので、かなりの部分はカバーしているのかなと思っております。ただ、プログラムの今後の展開については課題と捉えておりますので、御理解いただければと思います。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  それでは、予定の時間になりましたので、本日予定されておりました議題は以上となりますが、最後に、事務局から何かございますでしょうか。
○事務局 次回、第4回の日程につきましては、また正式に追って御連絡申し上げますが、テーマとしては「医療用麻薬の適正使用」ということで考えておりまして、委員のほうからプレゼンをお願いしたいと思っております。
  また、委員から、大麻にもいろいろ用途があるという御意見もございまして、次回日程が合えば、医療用大麻を研究されている外部の先生にお越しいただいて、お話もいただこうかと思っています。
  あと、委員から予防啓発の話もありまして、ちょっと消化不良に終わってしまっているところがありますので、次々回ぐらいで、こちらでも資料を整理して、お示しさせていただければと考えております。
  以上でございます。
○鈴木座長 ありがとうございました。
  それでは、以上をもちまして、第3回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を閉会いたします。御協力、誠にありがとうございました。
 

(了)

医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課
直通:03-3595-2436

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医薬・生活衛生局が実施する検討会等> 大麻等の薬物対策のあり方検討会> 第3回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」議事録

ページの先頭へ戻る