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2014年3月12日 平成25年度第1回水道における微生物問題検討会議事録

健康局水道課

○日時

平成26年3月12日


○場所

三田共用会議所C~E会議室


○出席者

遠藤座長 秋葉委員 五十嵐委員 泉山委員 片山(和)委員
片山(浩)委員 勝山委員 岸田委員 国包委員 黒木委員
船坂委員 (オブザーバー)島崎氏

○議題

(1)厚生労働科学研究「水道の浄水処理および配水過程における微生物リスク評価を用いた水質管理手法に関する研究」について(報告)
(2)クリプトスポリジウム等の検出方法(遺伝子検査法)に関する課題及び対応について
(3)最近の状況を踏まえたクリプトスポリジウム等対策の課題について
(4)突発的水質事故等による微生物に係る水質異常時の対応について
(5)その他

○議事

○上迫係長

 お待たせをいたしました。それでは、定刻となりましたので、ただいまより「平成25年度第1回水道における微生物問題検討会」を開催いたします。

 委員の皆様には、年度末の御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の出席状況ですけれども、現時点で10名の委員の方々に御出席をいただいております。なお、片山浩之先生は、途中から御参加されると聞いております。

 それでは、まず初めに、本検討会の開催に当たりまして、事務局を代表して、田中水道水質管理官より御挨拶を申し上げます。

 

○田中管理官

 厚生労働省健康局水道課で、昨年7月から水道水質管理官を務めております、田中でございます。

 委員の先生方には、年度末の非常にお忙しい時期にもかかわらず、この検討会に御参加をいただいておりますことに、感謝申し上げます。

 水道における微生物問題検討会は、水道水の安全を確保する上で、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物、その他の病原生物の混入が脅威となっていることを踏まえまして、微生物分野の課題を専門的立場から御検討いただくために、水質基準逐次改正検討会の微生物分野を扱う分科会として設置されているものでございまして、あわせて、微生物に係る水質事故があった場合の対応についても、科学的側面から御助言をいただくとしていているものでございます。

 この検討会では、平成22年から23年にかけまして、クリプトスポリジウムなどの新しい検査方法について検討を行ってまいりました。その成果を踏まえまして、平成24年3月に水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針のための検査方法を改正することができました。改めて、当時、精力的に検討に参加いただきました先生方に御礼を申し上げます。

 さて、本日の検討会では、検査方法の検討を終了してから、初めての開催となります。本日の議題は、平成22年度、23年度の検討時のような、個別具体的なものではなく、測定や指針の運用に関する最近の状況を踏まえて、今後の対応の方針を確認いただくことが主となりますが、その中では、おそらく今後の対策のあり方全体についても、お考えをお述べいただくこともあるのではないかと思います。本日の会議の議題の範囲で、全てを対応することはできないかと思いますけれども、我が国における今後の水道の微生物対策を考える上で、参考とできればと思っておりますので、種々お教えをいただければと思っております。

 水道を取り巻く状況は、国内に関しても、海外のものに関しても、どんどん動いております。厚生労働省におきましても、そういった状況を踏まえて、水道の安全対策の検討を進めてまいりたいと考えておりますので、先生方には、お持ちの御知見、御経験をもとに御意見を賜りますよう、お願いをいたしまして、簡単ではございますが、挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願いいたします。

 

○上迫係長

 マスコミの方々におかれましては、恐縮ですが、カメラ撮りは、会議の冒頭のみとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、初めに事務局の紹介をさせていただきます。

 先ほど御挨拶申し上げました、田中管理官です。

 豊住室長補佐です。

 佐藤係員です。

 私、上迫でございます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、委員の先生方の御紹介をさせていただきます。後ろのほうにつけております、参考資料2をご覧ください。

 国立保健医療科学院統括研究官の秋葉委員です。

 国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部長の五十嵐委員です。

 国立感染症研究所寄生動物部主任研究官の泉山委員です。

 国立感染症研究所客員研究員の遠藤委員です。

 国立感染症研究所ウイルス第二部第一室長の片山和彦委員です。

 神奈川県内広域水道企業団飯泉取水管理事務所所長補佐兼水質管理担当主幹の勝山委員です。

 国立保健医療科学院主任研究官の岸田委員です。

 元・静岡県立大学環境科学研究所教授の国包委員です。

 神奈川県衛生研究所微生物部長の黒木委員です。

 一般社団法人全国給水衛生検査協会技術参与の船坂委員です。

 また、本日は、オブザーバーとしまして、国立保健医療科学院の島崎上席主任研究官にも御出席いただいております。

 引き続き、本検討会の座長の選出に移ります。

 事務局としては、前回まで座長を務めていただきました、遠藤先生に引き続きお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

 

○上迫係長

 それでは、これ以降の議事進行は、座長の遠藤先生にお願いいたします。

 遠藤先生、こちらのお座席にお願いいたします。

(遠藤委員、座長席へ移動)

 

○上迫係長

 遠藤先生、一言、御挨拶をいただけますでしょうか。

 

○遠藤座長

 座ったまま失礼いたします。遠藤です。今日は1日よろしくお願いいたします。

 先ほど水道水質管理官の御挨拶の中でこの検討会の位置づけ、重要性につきましては、十分に御紹介いただきましたので、私から特に申し上げることはございません。早速、議題に入りたいと思います。

 今日は、特別にオブザーバーの島崎先生からの御報告もいただけるということで、時間も詰まっていると思いますので、早速議題に入りたいと思います。

 議題に入る前に、会議の公開の取り扱いについて、御確認させていただきます。

 厚生労働省水道課に設置する各種検討会は、個人情報の保護等の特別な理由がない限り、基本的には公開をすることになっております。このため、本検討会はこれまでに引き続きまして、会議を原則公開とするとともに、開催予定、委員の氏名・職業、会議資料及び議事録も同様に原則公開することといたしますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、引き続きまして、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

 

○上迫係長

 それでは、配付資料を確認させていただきます。

 前のお席の方々にお配りしております資料につきましては、資料ごとにホチキスどめをさせていただいております。後ろの方々は、一括してホチキスどめをさせていただいております。

 それでは、前から確認をさせていただきます。

 まず最初が議事次第になります。表裏、裏に配付資料の一覧がついてございます。

 次に座席表をつけております。座席表は現時点のものと少し変わっております。

 資料1-1、厚生労働科学研究費補助金事後評価用資料というものがございます。

 資料1-2、横長のパワーポイントの4枚が表に出ている資料でございます。

 資料1-1及び資料1-2は、島崎先生から御提供いただいでおります。

 次にA3の資料2がございます。遺伝子検出法で1(オー)シスト以下の定量値が出る理由とその取り扱いについて。これは岸田委員から御提供をいただいております。

 資料3、最近の状況を踏まえたクリプトスポリジウム等対策の課題についてでございます。

 資料4、突発的水質事故等による病原微生物に係る水質異常時の対応に関する考え方でございます。

 参考資料1、水道における微生物問題検討会運営要領。

 参考資料2、検討会の委員名簿。

 参考資料3、水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況についてを用意させていただいております。

 過不足等がございましたら、事務局にお申し付けください。よろしいでしょうか。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 資料等に不足がございましたら、事務局にその都度御連絡いただければと思います。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 まず初めに、厚生労働科学研究「水道の浄水処理および配水過程における微生物リスク評価を用いた水質管理手法に関する研究」について、島崎先生から御説明をいただきたいと思います。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 御紹介ありがとうございます。島崎でございます。

 この検討会に関連する話題提供ということで、平成23年から3年間行いました厚労科研に関しまして、今年度が最終年度ですので、研究成果を報告させていただきたいと思います。

 お手元に資料1-1、資料1-2がございますが、主に資料1-2のスライドで御説明させていただきます。これは先般開催されました、成果発表会の資料でございますが、枚数制限がありましたものに、少し補足をして用意させていただきました。時折、資料1-1の事後評価用資料にも戻りながら、進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず研究班でございますけれども、私が研究代表を務めさせていただきまして、そのほかに、京都大学の伊藤禎彦先生、お茶の水女子大学の大瀧雅寛先生、東京大学の春日先生、そして、国包先生の5名で進めてきたということでございます。

 本研究の背景や目的でございますが、御存知のとおり、我が国の水道では、塩素消毒を必ず行う、残留塩素を末端まで必ず保持する。また、水道法の中で、水道水中に病原生物、指標生物等を一切含まないということが義務づけられてございます。これにより、水道の安全性は確実に担保され、現在に至るまで、水道を通じた水系感染症の予防に大きな役割を果たしてきたことは間違いないということでございます。

 しかしながら、これらを遵守したとしても、科学的な面から、水道水の微生物リスクがゼロであるとは、はっきりとは申し上げられない。絶対のゼロであるとは言えないということでございます。その理由の1つとしては、クリプトスポリジウムのような、耐塩素性原虫の存在が大きいと考えてございます。

 そこで、この研究では、水道水質の安全性や快適性のさらなる向上、さらには水道水の信頼性を高めていくことを目的といたしまして、主に浄水処理あるいは配水過程の中で、どこに微生物リスクが存在するのか、その所在をできる限り定量的に明らかにする。また、そのリスクをできる限り下げていくために、どのような制御方法があるのか、水質管理手法はどのようなものであるのか、特に水道事業体への提案を最終的なゴールとして目指して、研究を進めてきたということでございます。

 スライドの3枚目でございますけれども、3年間の研究内容の構成です。

 右脇、四角い枠の外に記してございますが、第一に、諸外国の水道における微生物リスク評価手法の現状調査ということで、委員の先生方は御存知の方もいらっしゃるかも思いますけれども、この点では、オランダの取り組みが非常に進んでいるということを文献調査によって明らかにし、取りまとめをいたしました。

 次に四角い枠の中に入りまして、水道の水源から浄水施設、配水管網、末端に至るまでを対象とした中で、第二に、浄水場の浄水処理の過程を経る中で定量的微生物リスク評価、QMRAという手法によって、どのように健康影響度が評価されるか。浄水処理の能力のばらつき等によって、どのように健康影響度が変化するか。また、健康リスクを低減する上で重要な管理点はどこにあるのかということを、明らかにいたしました。

 第三に、浄水場から配水管網に至るまでの消毒に関して、特に、存在形態として浮遊状態ではなくバイオフィルム状になっている細菌に対して、適切な塩素処理の方法や条件、塩素耐性等を実験によって明らかにいたしました。

 最後に、配水の過程で実際に再増殖するような微生物に関して、できる限り個別の菌を単離した上で、個々の細菌の増殖特性や塩素に対する耐性といった生理特性を解析することで、いかに再増殖をコントロールできるかという方法を提示いたしました。

 主にこの4課題で構成されております。

 第一の諸外国の水道等に関することですが、これはスライドを用意してございません。縦長の事後評価用資料を1枚めくっていただきまして、2ページの右下「3 研究結果」をご覧いただければと思います。オランダを対象とした調査でございますけれども、EU諸国の中でも、とりわけ塩素消毒や残留塩素の保持に依存しない水道システムの構築に向けた、非常に独特な取り組みが進んでございます。現時点では、浄水処理での塩素消毒が全てオゾンやUVなどに置きかわっており、かつ国内全ての水道が残塩保持なし、残留消毒剤なしで配水されています。このため、特に給配水の過程での微生物による汚染防止や、微生物の再増殖の制御に着目した管路の衛生管理、配水の水質管理を実践しているという点は、大きな特色でございます。

 水質管理については、オランダは、EU飲料水指令よりさらに厳しい上乗せの基準が定められております。5~6行目ですが、特に注目すべきは、2001年に改正された水道法で、先ほど申し上げました、定量的微生物リスク評価、QMRAを導入しているという点です。

 具体的には、主に腸管系のウイルス、クリプトスポリジウム、ジアルジア等による水道水由来の病原微生物による感染リスクを、年間10 -4未満、すなわち給水人口1万人につき年間感染者1名未満とする、これが水道法の水質基準に明確に定められてございます。表流水を使用する浄水場や、病原微生物による汚染のおそれがあるところなどを中心に、水道水源の汚染状況、浄水処理過程での個々の病原生物の除去性能を踏まえた定量的評価を行っております。オランダ国内には、全部で1213箇所、表流水を水源とする浄水場があって、数が限られているので、このような取り組みができるという事情がございますけれども、このようにきっちり数値目標を定めている国は、オランダ以外にないということでございます。

 同じ資料の5ページ目の右下を見ていただきたいのですけれども、繰り返しになりますが、オランダでは、水質基準によって感染リスクを年間10 -4未満とすることを定めております。

 少し下の行ですが、ただし、オランダでは、全ての水道システムが塩素消毒を行わない、残留消毒剤に依存していない。また、気候や原水の条件も、我が国とは大いに事情が異なっている。このようなアプローチが、直ちに日本で取れるわけではないというところは、留意すべきであろうかと思います。

 もう一つ、近年の状況としては、世界保健機構(WHO)も、このような定量的な微生物リスク評価を活用した水質管理手法、並びに意思決定の手法を推進する方向にございます。飲料水のみならず、下廃水の再利用、レクリエーション水を対象とした調和的な水質評価手法として定量的微生物リスク評価手法を位置づけており、今年中をめどに、実務者向けのツールである Use of Quantitative Microbial Risk Assessment for Water Safety Management を公開する予定と聞いております。我が国においても、将来的に水道における微生物リスク評価をどのように取り扱っていくかに関して、このようなWHOあるいはオランダの手法は、大いに参考になると考えてございます。

 スライドに戻りまして、4枚目でございます。我が国の水道の文脈において、定量的な微生物リスク評価を行ったら、どのような結果となるかを紹介させていただきます。

 最初に京都大学の伊藤先生の研究グループでございますが、次世代型の浄水処理プロセスにおいて、カンピロバクターを対象とした微生物リスク評価を行った例でございます。某市の水道局に最適先端処理技術実験施設というものがございます。どのような浄水処理プロセスかと申しますと、凝集沈殿、急速砂ろ過、促進酸化、これはオゾンと紫外線処理です。陽イオン・陰イオン交換処理、最後に0.1mg/L程度の弱い塩素処理を行う。徹底的にカルキ臭を低減し、かつ化学的および微生物学的なリスクも徹底的に下げるアプローチで構成されているということです。微生物リスク評価にはこの実験施設等を活用いたしました。

 原水中の大腸菌の濃度、カンピロバクターと大腸菌の比、また、各プロセスにおける除去性、これは大腸菌を指標とした除去性でございます。非加熱飲水量、それぞれに異なる分布形を適合いたしまして、モンテカルロ・シミュレーションにより、10万回の繰り返し計算をいたしました。

 5枚目ですが、このような微生物リスク評価の結果を、次世代型の浄水処理プロセス全体を通じた総合的な不活化のlog数として、赤で示してございます。平均値として18log除去、すなわち18桁微生物濃度を下げることができる。カンピロバクターの年間感染確率は、2.7×10 11 と算出され、先ほどオランダの水質基準が10 -4と申しましたが、これと比べても相当低い、実質ほぼ0に近いような、非常に安全性の高い水が供給できる、そのような結果でございます。

 同じスライドの右下に、年間感染確率に関して、どのファクターが効くかという、感度分析をした結果がございます。原水中の E.Coli 濃度や、あるいは表流水中のカンピロバクターと大腸菌の比が大きいのですが、その次に浄水処理プロセスの中で性能に効いてくる箇所として、凝集沈殿が挙げられます。

 次のスライドを見ていただきますと、2つ目の○のところですけれども、特に凝集沈殿処理が効いたということに関しては、原水中の大腸菌の濃度は採水ごとの変動が非常に大きい。一方で、沈殿水中の大腸菌の濃度は、原水ほどの変動を持たないため、この処理プロセスにおける大腸菌の除去性能は、変動幅が非常に大きくなったということです。感度分析として、非常に影響を与える、寄与率が大きい部位であるということが、今回の解析では得られたということでございます。

 続きまして、現在、浄水場で主に行われている、通常の凝集沈殿、砂ろ過、塩素処理といったプロセスで、微生物リスク評価はどのようになるか、私ども国立保健医療科学院での検討結果をお示しいたします。

 ここでは、病原性大腸菌O157を指標として、検討をいたしました。スライドには載せてございませんが、このほかにクリプトスポリジウムも対象としておりまして、資料1-1には載せております。

 大腸菌O157の存在状況に関しましては、実際にA浄水場の原水を何回か採水をさせていただきまして、O157に特異的に反応するFITCの蛍光標識抗体によって染色し、顕微鏡観察を行いました。

 その後、凝集沈殿、砂ろ過実験に関しては、B浄水場の原水に沈砂を添加して濁度を10度、30度、100度に変えまして、無害の E.Coli K12株を用いまして、通常のジャーテストを行いました。ポリ塩化アルミニウムの添加量は、最適注入、あるいは、低注入により処理がうまくいっていないような状況の2段階を設定し、それぞれ比較をいたしました。

 塩素処理実験に関しては、実験室でのバッチ実験によって、 E.Coli K12株を最大15分程度塩素と接触させまして、Chickモデルによって、接触1時間後の不活化率を外挿して計算しております。

 8枚目のスライドでございますけれども、こちらの表に示しておりますのが、 E.Coli O157における健康影響度を最終的にDALYsによって評価した結果となります。

 原水濁度が10度、30度、100度、それぞれの濁度に応じて、濁度10度の場合は不十分なPAC注入率が10mg/L、最適注入率が25mg/Lとなります。

 原水中の大腸菌O157ですけれども、1L当たり4.88×10 、1mL中に、約50個となってございます。ただ、これはFITC染色で染まった数ということで、別途、呼吸活性をCTC染色という方法で確認してございますけれども、呼吸活性を持つものは1つもなかったので、おそらくすべて感染性はないと判断されます。しかし、ここではすべからく感染性を持つという、相当に安全側の仮定で計算をしているという点を、お含みおきいただければと思います。

 凝集沈殿、砂ろ過における除去率は、0.5logから4.12logの範囲です。塩素による不活化率が6.53logということで、これをそれぞれ掛け合わせますと、最終的な年間感染確率として、濁度10度、かつPACが不十分な10mg/Lの場合、1×10 -4を超える感染確率となりました。DALYsの値も、1.48×10 -4ということで、WHOの飲料水水質ガイドラインで推奨される1×10 -6を上回る可能性が示されたということです。本実験の前提として、原水中の E.Coli 濃度が原水濁度に依らず同じであるのですが、そのような条件では、原水が低濁度、かつ凝集剤の注入が不十分にとなる場合、 E.Coli が十分に除去されず、健康リスクが高くなるという結論になってございます。

 同じ検討を、クリプトスポリジウムに対しても致しております。また縦長の資料に戻って恐縮ですけれども、3ページ目の右のカラムの真ん中あたりにございます。クリプトスポリジウムの場合、凝集沈殿による除去率の範囲は、1.976.69logの範囲、クリプトスポリジウムによる年間健康影響度は、2.1×10 11 1.17×10 -6ということで、同様に原水濁度が低く、かつPAC注入量が不十分な場合、健康影響度は高くなることが、示されたということでございます。

 続きまして、またスライドに戻りまして、9枚目のお茶の水女子大学の大瀧先生の御検討でございます。バイオフィルム状になった細菌に対して、塩素消毒によってどの程度不活化効果があるのか、不活化のメカニズム等も含めて、検討していただきました。

具体的には、下の図でございますけれども、 Pseudomonas aeruginosa の人工的なバイオフィルムを形成しまして、真ん中にございます、アニュラーリアクターの中に設置して回転させ、所定の流速におけるせん断力を模擬しました。複数の流速に応じて剥離する菌体の量を評価し、また、剥離した Pseudomonas を回収して、それぞれ塩素消毒実験を行うことで、塩素耐性の比較をしたということでございます。

 回転数は毎分10回転から100回転の3段階に分けまして、流速としては0.0890.89m/sに相当します。

10枚目のスライドですけれども、そのような実験を行いますと、バイオフィルムは、真ん中の図に示されたような構造になっているということです。水色が塩ビ管の表面で、管内の最も内側に、非常に剥離しやすい、オレンジ色で塗り分けたバイオフィルムが存在しております。この部分は、塩素消毒による不活化速度も非常に速く、浮遊状態の Pseudomonas とほぼ同じ不活化速度が得られております。

 問題になりますのは、その1つ下、少し濃い青で塗ってございますが、この部分は不活化の速度が遅いということです。右上のグラフにございますけれども、流速が0.089 m/sで残留する部分で、青い線です。生物膜の中に塩素が浸透しにくい、不活化されにくい状況でございます。これは細菌自身に塩素への耐性があるということではなくて、主に細胞外物質であるポリサッカライド等が密に存在することによって、塩素が浸透しにくくなっていることが示されております。

 従いまして、水道の配水過程の中で衛生保持をする1つの方法として、所定の流速を水道の管内で保持することで、このような青い部分に相当するバイオフィルムをできるだけ形成されないようにする。もし形成されたとしても、ある程度の流速で管路内をフラッシングして除去することが、大いにあり得ると考えております。

11枚目のスライドですけれども、これは東京大学の春日先生の研究グループの御検討です。配水過程でどのように微生物が再増殖するのか、また、個々の微生物の増殖特性、塩素に対する耐性はどの程度であるかということを比較いたしました。

 2種類の実験を行いまして、まず、滞留が生じやすい給水栓に着目をして、24時間から4時間の範囲で段階的に水道水を滞留させ、水温、残留塩素、全菌数、従属栄養細菌数を測定したということでございます。

12枚目を先に見ていただきますと、横軸が経過時間で、上のグラフの縦軸が水温と残留塩素、真ん中のグラフの縦軸は全菌数と従属栄養細菌数を示しております。最初は24時間滞留させて20L放水する。16時間、8時間、4時間と徐々に滞留時間を短くしたところ、当初に24時間あるいは16時間滞留させると、水温は上昇する、残留塩素は極端に低下する。それに応じる形で、全菌数も従属栄養細菌数も増加するという推移が見えてまいります。これが8時間、4時間ぐらいの滞留時間になりますと、残留塩素も大分保持されますし、従属栄養細菌数や全菌数の増加もそれほど顕著ではない。特に水質変化が顕著に生じる滞留時間の境界値は、8時間から16時間の間にありまして、その程度、給水末端の水を止めておくだけで、主に水相の側で、浮遊状の細菌がこれほど劇的に増えるということが分かりました。

 次に、11枚目に戻りまして、具体的にどのような細菌が、どのような増え方をしているのか明らかにするため、主に屋外の公園等から給水栓10カ所を採水して水質調査をいたしまして、従属栄養細菌を単離し、最終的に異なる19の単離株を入手いたしました。

 各19株について、通常処理による浄水、あるいは高度処理による浄水の中での増殖特性、および、塩素消毒実験による塩素耐性を、フローサイトメータを用いて解析いたしました。

13枚目ですけれども、塩素耐性に関しましては、左側の図に示しておりますのが、単離された1~19の株です。点線の右にございます緑色の菌は、AOCの測定に使う標準菌株と E.Coli になります。それらと同程度、塩素によって膜の損傷を受けやすい、すなわち、死滅しやすい単離菌も存在するのですが、特に赤く塗ってある Methylobacterium 属や、 Mycobacterium 属は塩素に対して非常に強く、そのような細菌も存在することが分かりました。

 さらに、右側の図ですけれども、水道水中での最大増殖度を縦軸に、膜損傷性を横軸にとっております。特に図の右上にプロットされるもの、この図で言えば*になっている Methylobacterium 属の近縁の種ですが、塩素耐性が高く、かつ水道水中の増殖速度も非常に速い、そのような細菌が存在することが分かりました。

 一方で、右側の図に示しております最大増殖度の絶対量は、通常処理による浄水中よりも、高度浄水処理を行った浄水の中で、大幅に低下するということも確認できてございます。その意味では、高度浄水処理は、水道の水質を改善するだけでなく、配水過程での細菌の再増殖、特に塩素耐性が高い細菌の再増殖性を低減するという点でも、大きく寄与することが、改めて示されたということでございます。

 このような研究を通じまして、微生物リスクを低減する上で、どのような水質指標を用いるべきか、どのような水質管理手法があるかということを、最終的に本研究のまとめとしてお示し致しました。

 まず、水道原水中に病原微生物がどの程度まで存在しているのか。これをバックデータとして持っている水道事業体は国内にはほとんど存在しておりませんので、今後、データを蓄積する必要があると考えております。

 具体的には、病原性大腸菌、クリプトスポリジウム等の原虫、腸管系ウイルス、また、それらを常時モニタリングするわけにはいきませんので、適切な代替微生物によるモニタリングも必要になろうかと思います。

 浄水場の中では、特にクリプトスポリジウム等を意識しておりますけれども、懸濁物質がどの程度物理的に除去されるか、あるいは浄水場の中で、どの程度消毒効果が発揮されるか把握が必要と考えております。前者については、濁度、あるいはクリプトスポリジウムに代表される5μm付近の微粒子の除去性、後者については、消毒剤の注入濃度および接触時間の積であるCT値をいかに効率的にモニタリングするかが、挙げられるかと思います。

 浄水場から出た後の配水過程では、管路の微生物学的な清浄度に注目すべきと考えております。具体的には、残留塩素濃度もさることながら、管内の流速がある程度保持されているか、水の滞留を生じないか、さらには、従属栄養細菌の中でも今回お示ししたような塩素に対して耐性がある菌種の存在に関して、今後、実態調査等を進めていく必要があることを提言いたしました。

 水質管理手法としては、特に、浄水処理での懸濁物質の除去効果ならびに消毒効果、また、配水過程での微生物学的な清浄度を、いかに監視していくかが、今後の鍵になると考えております。

 ほぼ時間が来ておりますけれども、結論としては、本研究のこのような成果は、我が国で微生物リスク制御を軸とした水道水の水質管理を推進するに当たりまして、将来的な水質指標や、水質管理手法の立案などに際して、基礎的知見として活用できるのではないかと考えてございます。

 雑駁ではございましたけれども、以上、報告とさせていただきます。ありがとうございました。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見等がございましたら、お願いいたします。ございませんでしょうか。

 

○片山(和)委員

 1つ教えていただきたいんですが、スライドの12番の遊離塩素濃度は、縦軸に0~0.4まで示していらっしゃいますけれども、0.3の場合は300ppmですか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

0.3ppm、そのままです。

 

○片山(和)委員

 わかりました。ありがとうございます。

 

○遠藤座長

 他にございませんか。

 それでは、私から1つお伺いします。この研究で再増殖の話がございました。高度浄水処理の過程で再増殖を考える際には当然AOCが大きな要因になると思うのですが、高度浄水処理に伴うAOCの挙動はどのようなものなのですか。データをお持ちでしょうか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 今回の課題ではなくて、以前の研究課題で検討を行ったことがございまして、日本国内の高度浄水処理を入れている浄水場では、浄水のAOCのレベルとして100 µ g/ℓ未満です。場合によっては、50程度まで下がっているのに対して、入れていないところでは、表流水を由来とする場合に非常に高くて、200前後となります。オランダでは、50 µ g/ℓ以下が再増殖抑制の大きな目安であると聞いております。実際のAOC濃度は、さらに小さい値であったかもしれません。2030、地下水であれば5程度とか、そのような値になっていたかと思います。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 せっかくの機会ですので、御質問、御意見等はございませんか。

 

○片山(浩)委員

 リスク評価を定量的にされた部分について、お伺いしたいのですけれども、塩素不活化率をあらゆる条件で一定にしたというのは、どういうことでしょうか。あるいはこの数字を選んだというのは、どういう根拠なのでしょうか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 これは片山先生がお越しになる前に説明をしたか、定かではございませんが、基本的に塩素処理実験では実験データの数が十分に取れなかった事情により、平均値による不活化率を採用して点推定を行っております。また、短時間の塩素実験を長時間の接触に外挿したところがございますので、そういう意味で、この塩素不活化率は、それほど確度が高くない値であると考えております。

 

○片山(浩)委員

 あと、この結果をうまく活用したりすると、クリプトスポリジウムのリスク評価などにつなげたりできないのでしょうか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 同じようなやり方で、クリプトスポリジウムの評価をしておりまして、大腸菌と同様に、濁度が小さい、かつ凝集剤の注入率が低い場合にリスクが高くなっております。縦長の報告書3ページ目の右側の真ん中なのですけれども、 E.Coli とクリプトスポリジウムで、それぞれほぼ同じような条件で実験を行ってございます。水道技術研究センターのクリプトレーサーを使用し、凝集沈殿・砂ろ過の過程でのクリプトスポリジウムの除去率が1.976.69log、塩素処理では一切不活化されないと仮定して、DALYsの評価値としては、濁度が小さい場合、かつ注入率が低い場合は1.17×10 -6、高い場合には2.1×10 11 となりました。

 

○片山(浩)委員

 原水の濃度はどう与えたのですか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 原水は、10度、30度、100度で、浄水場の原水に、同じ浄水場の沈砂池から沈殿した砂をいただきまして、それを溶いてやりました。

 

○片山(浩)委員

 原水のクリプトスポリジウムの濃度レベルです。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 これも同じ浄水場から3年間の原水での測定データをいただきまして、平均値として与えました。報告書には詳細に書いてございませんけれども、クリプトスポリジウムに関しては、モンテカルロ・シミュレーションを行っております。

 

○片山(浩)委員

 研究でというよりは、実際の管理でと考えた場合、高濃度のクリプトスポリジウムの原水があるところでは、当然10 -6の値よりも、高くなる場所が出てくることがあり得るのですか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 そうですね。今回のシミュレーションの前提として、原水中のクリプトスポリジウム濃度はほぼ一定として与えて、濁度条件をそれぞれ変えてございますので、実際にそのような状況が起こりうるか、議論の余地があると思います。今回の検討でリスクが高くなるというのは、非常に清浄な原水に対して、突発的な何かの事故によって、高濃度の微生物汚染が生じる、そのような場合にかなり高いリスクが出るかもしれないということですので、この前提条件に留意すべきと思っております。

 

○片山(浩)委員

 実験装置というか、ミニ装置を使われていますね。あれはどこですか。例えばクリプトスポリジウムの本物とか、あるいは腸管系ウイルスとか、P2レベル、オートクレーブすれば死滅するようなものを添加した実験などは、今後、可能なのでしょうか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 科学院にもP2レベルの実験室がようやく整備されましたので、その中であれば、バイオセーフティ委員会に申請した上で、P2レベルの微生物を用いた実験も先々は可能であろうと思います。

 

○遠藤座長

 ほかにございませんでしょうか。

 ささいなことかもしれませんけれども、10枚目のスライドのところで、バイオフィルムがはげたり、はげなかったりという話がございました。この両者にあって、生物量のの量的関係はどのようなものなのですか。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 この厚みは定性的に表現しているのですけれども、1つ上のグラフを見ていただければ、バイオフィルムの剥離量が示されております。大変見にくくて申しわけございませんけれども、一番上の層が10 CFU/mLです。次の層が10 、もう一つ下が10 辺りということで、それぞれワンオーダーずつ異なる生物量が回収できました。これはあくまで3段階の流速という前提条件ではありますけれども、はがれにくいバイオフィルムの生物量は、10 CFU/mLの範囲にあったということです。

 

○遠藤座長

 飲料水にははがれやすいところの生物量が直接影響するわけです。そういう意味からすると、この辺の量的な関係がきちっと出ていると、データとしては使いやすくなると思いました。

 黒木先生、カンピロバクターなどは、日本では水道の寄与率というよりも、圧倒的に鶏肉などの食品の寄与率が高いような気がしますが、その辺について、何かコメントをいただけませんか。

 

○黒木委員

 カンピロバクターの感染ということでは、今、おっしゃったとおり、鶏肉からの感染が非常に多いです。鶏肉もそうですし、一般的に肉類からの感染が多いわけですが、例えば人がそれを排菌していた場合、それが便中に入っていて、その便によって汚染された場合、水道関係からということも、ないわけではないと思います。

 

○遠藤座長

 わかりました。ありがとうございました。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 その点に関して補足を致しますと、これは研究分担者の伊藤先生から前回の研究班会議のときにいただいた情報ですが、実際にオランダの浄水場のQMRAの中で、10 -4以下というオランダの基準を一番達成しにくいのが、カンピロバクターであるとのことです。オランダの浄水処理プロセスの中で、除去されにくいという事情があるようです。塩素消毒を使えば、簡単に下がるのですが、オランダでは一切使っていないので、コントロールしづらいようです。これはオランダ独特の事情でありますが、御参考までに申し上げさせていただきました。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。今後はこういった定量的な検討から、水質の指標であるとか、管理手段、管理ポイント等の検討がなされていかなければいけませんし、微生物問題検討会としても、新知見等を御教示いただきながら、強化をしていきたいと考えております。今日は本当にありがとうございました。

 それでは次に移らせていただきたいと思います。次はクリプトスポリジウム等の検出方法につきましてですが、遺伝子検査法が新たに検査法に組み込まれまして、使用可能となっております。そこで、遺伝子検査法に関する課題点について、少し整理していただきましたので、資料2を用いまして、岸田先生から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○岸田委員

 ありがとうございます。

 それでは、A3の資料2をご覧いただければと思います。

 先ほど遠藤先生から御説明がありましたように、対策指針の検査法として、遺伝子検出法が導入されてから、約2年経過いたしまして、その際に1つの問題点としまして、遺伝子検出法を実施したときに、定量値として、1オーシスト以下の値が出るという報告が幾つかございますので、その理由について整理させていただくとともに、その取り扱いについて議論させていただければと考えております。

 資料の上段に遺伝子検出法の作業フローを書かせていただいており、核酸抽出、逆転写、遺伝子定量という順番になりますが、各々の工程で、それぞれ定量値が過小評価される可能性がございますので、その理由について、御説明させていただきます。

 初めに左下の理由((1))になります。こちらは、サンプル、クリプトスポリジウム由来の理由ですけれども、1つの理由としまして、もともと水中に存在しております、原虫のRNA分子数が少ない可能性があるということでございます。

 説明いたしますが、感染動物から分離した直後の標準株につきましては、1オーシスト当たり約2万コピーのRNA分子が存在することがわかっておりますけれども、環境条件によっては、時間経過とともに、この分子数が大きく減少することがわかっておりまして、標準試料の換算係数、つまり1オーシスト当たり2万コピーという換算係数を使って計算すると、環境試料中のオーシスト数が少なく見積もられてしまうということがございます。こういったものが、理由の1つとして挙げられると思います。

 理由((2))といたしまして、核酸抽出や逆転写の効率が低いケースとなります。環境中に存在する核酸抽出や逆転写反応を阻害する物質を除去し切れないと、効率が低下いたしまして、定量値が低く見積もられることがございます。核酸抽出前のpHが中性付近でないときも、抽出効率が著しく低下することを経験しております。また、こちらの理由に関しましては、磁気ビーズによる精製や遠心洗浄を徹底することで、ある程度回避は可能であると考えております。

 理由((3))でございますが、今度は遺伝子増幅のほうです。環境中に存在するフミン酸等のPCR阻害物質が存在いたしますと、PCR効率が著しく低下いたしまして、蛍光曲線の立ち上がりが遅れ、定量値が低く見積もられることもあります。こちらは内部標準の利用である程度回避可能であると考えております。

((4))の理由といたしまして、通常、リアルタイムPCR法では、標準試料を使用いたしますけれども、こちらの濃度調整が正確にできないようなケースでは、定量値が過小もしくは過大評価されることもございます。標準試料を用いない絶対定量法も開発されておりますが、現状では装置が高価という問題がございます。

 理由((5))といたしましては、非特異反応が生じるケースということも、若干は考えられるかと思います。非特異反応が生じる、つまりほかの微生物のDNA等が増幅するような場合ですと、原虫由来のDNAと比べまして、PCR効率が低いために、サイクル数がある程度経過してから、蛍光曲線が立ち上がりまして、極端に低い定量値が出るおそれがございます。こちらに関しましても、塩基配列の解読で回避することができますけれども、作業が煩雑で、時間がかかるというのが欠点でございます。

 このように、さまざまな理由がございます。理由((1))((4))につきましては、定量値は減少するものの、定性的には問題なく陽性と判断できる理由でございます。しかしながら、理由((5))のように、現状、実績が少ないもので、偽陽性の可能性も否定できないことから、当面は平成24年の水道課長通知「検査方法の見直し等について」に記載しておりますとおり、浄水を検査するときには、速やかに顕微鏡検査法により追加確認を行う必要があるのではないかと考えております。

 短いですが、説明は以上で終わらせていただきます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 この件に関しまして、御質問、御意見はございませんでしょうか。

 現実問題として、遺伝子検査法がどの程度普及しているのかということも含めまして、資料等をお持ちの方がいらっしゃったら、教えていただければと思います。

 泉山先生、ございませんか。

 

○泉山委員

 検討してくださった自治体、水道事業体等のご協力いただいた皆様のおかげで、遺伝子検査法を使用可能となり、感謝しております。

 神奈川県にクリプトスポリジウムを研究されているグループがありまして、そこの話を聞いてみますと、遺伝子検査法の検討を始めていらっしゃる事業体があるということなので、突然、全ての検査法を遺伝子検査に切りかえるというものではないと思うのですけれども、徐々に検討していく、使っていこうという方向にあると理解しております。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 まだ始まった段階だと理解すべきだろうとは思いますが、今、岸田先生から御説明いただきましたように、1個以下のクリプトスポリジウムが陽性と出た場合の評価方法ですが、それをどどのように扱うべきかという点につきまして、御意見を頂きたいと思います。例えば遺伝子検査で0.1個、あるいは0.01個のクリプトスポリジウムに相当する遺伝子が出てしまった検出されたとします。それを陽性と扱うのか、陰性と扱うのか、あるいはそれを何個とみなすのか、その辺についての御意見はございませんでしょうか。なかなか難しい問題だろうと思います。

 

○黒木委員

 おっしゃるとおり、非常に難しい問題だとは思いますけれども、ある一定の条件を満たす、例えば一定の条件というのは、技術的なレベルが十分なところに達していることなどを考慮した上で、2万コピーに達しない場合にどうしたらいいかということになりますと、それは陽性と考えていいと思います。

 なぜかといいますと、((1))のところにあるように、環境中から検出されるクリプトスポリジウムの場合、排出されてから、かなり時間がかかっていて、オーシストそのものが弱っている可能性がありますので、そこでRNAの量が減っているということが十分に考えられます。そういったことを考慮しますと、たとえ2万に達していなくても、それは陽性と判定していいと思います。

 

○遠藤座長

 ほかにございませんか。

 開発者の泉山先生、御意見はございませんか。

 

○泉山委員

 遺伝子検査法で定量を行おうという場合、定量値が振れてしまうというのは、なかなか難しい課題だと思います。一方で、定性的な話になりますと、プライマーやプローブが正しく反応していて、検出結果が出るという意味において、定性的には正しく結果が出てくると思いますので、定量値がずれることはあっても、定性的にはクリプトスポリジウム陽性は陽性と、私は考えております。

 

○遠藤座長

 わかりました。

 両委員からはクリプトスポリジウムの個数は問わず、「陽性」と判定すべきであるとのご意見と理解しました。

 例えばもう少し数が増えてきたときに、例えば、遺伝子量として3個、5個分が検出されたときに、先ほどの意見を踏襲すれば実際の数はもっと多く計算される可能性もあります。その辺の数値の扱いをどうするのかということも、あわせて考えておく必要があるのではないでしょうか。

 1個未満の場合は丸めて「陽性で、数は問わない。1個以上出てきた場合、基本的には換算することのできる範囲で、何個に相当する遺伝子量が検出されたという表現をすればいい」と云うことでしょうか。数字がひとり歩きすると、つらいところもありますが、このような表現にすることで宜しいでしょうか。何らか方法で遺伝子の減衰係数の様なものを求めて相当数を算出をするとなると、これはこれでかなり大変な話になってくると思うんですけれども、岸田先生、いかがですか。

 

○岸田委員

 これまで日本全国の浄水場から水道原水等を集めて、検査をした経験から言わせていただきますと、顕微鏡検査法と遺伝子検査法の値の比率は、サンプルによって必ずしも一定ではないので、一定の換算係数をかけるというのは、難しいのではないかと考えております。

 

○遠藤座長

 そういたしますと、どのような扱いが宜しいのでしょうか。具体的にご意見がございますか。

 

○岸田委員

 非常に難しいところです。

 泉山先生からございますか。

 

○泉山委員

 遺伝子検出法は、顕微鏡法にどうしても引っ張られているものですから、オーシストの数として表現することを求められているのが、つらいところだと思います。将来的には、遺伝子検出法はコピー数で表現していくほうが、より正しいという気がいたします。

 

○遠藤座長

 確かにそれが現実だと思います。しかし、何コピーと言われても余り一般受けしないですね。また、基礎とすべきコピー数は2万コピーなのか、1万コピーまで下がったものとするのかという話もあります。それはともかくとして、数で表現してほしいというのが、一般的な要望ではないでしょうか。

 

○泉山委員

 今の段階では、オーシスト数として出してほしいというのは、よくわかります。将来的、5年先、10年先のこととしては、遺伝子検出法はコピー数という表現が妥当だという意味で、申し上げた次第です。

 

○遠藤座長

 わかりました。

 基本的にこういうものは、どうやっても分からないところといいますか、陰になってしまう部分があると思うので、かくかくこのような方法で遺伝子検査をして、その結果、「何コピーかの遺伝子が見つかった。それを、仮に2万コピーを1個分のコピー数とすれば、何個に相当する」というような、丁寧な説明をつけておけば、誤解はないと思います。いかがでしょうか。そんなところで御理解をいただけますか。

 この検討会の意見としては、1個未満の陽性の値が出ても、それは基本的に陽性と扱うということをもって検討会の意見としてまとめてよろしゅうございますか。また、1個以上であれば、上述のように丁寧な表現に努めることといたします。

 

(「異議なし」と声あり)

 

○遠藤座長

 ちなみに、片山(和)先生、ノロの場合はどうなっているんですか。ノロウイルスを対象とした遺伝子検査では、陽性、陰性の判定というのは、どのようになっているのでしょうか。

 

○片山(和)委員

 陰性コントロールに対して、明らかに上昇が見られた場合には、陽性と判断します。ノロの場合、遺伝子と粒子数の関係は、1粒子1遺伝子なので、簡単です。ですから、コピー量イコール粒子と思わしきものの量です。感染性かどうかわかりませんが。

 

○遠藤座長

 わかりました。ありがとうございました。

 ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

 

○豊住補佐

 検討会として、1オーシスト未満の定量値が出たときには陽性ということで、御意見をいただいたかと思いますけれども、先ほど岸田委員から御説明があったように、資料2の下のほうの囲みで書かれているように、浄水で1オーシスト未満であった場合には、水道課長通知にあるように、追加の顕微鏡検査法による試験をするということで、よかったでしょうか。

 

○遠藤座長

 それは当然です。例えば浄水で遺伝子検査をして、陽性になった場合は、数にかかわらず、顕微鏡検査で確認をするものと理解しております。現在、指導されているものを遵守することでよろしいですね。

 どうぞ。

 

○国包委員

 検査法のことはともかくとして、今のようなことですと、顕微鏡を使って検査をしたときに、非常に少ない場合、あるいはサンプルのとり方によっては、出る、出ない、どちらの結果が出てくるかわからないんです。片一方は、数は少ないんだけれども、陽性だと判定されて、顕微鏡検査で、万が一、1個もいないという場合には、最終的にどういう取り扱いにするのかということも、きちんと決めておく必要があると思います。問題がなければいいんですけれどもね。

 

○遠藤座長

 泉山先生、どうぞ。

 

○泉山委員

 遺伝子検出法で陽性が出ていて、でも、顕微鏡では陰性になってしまったという状況なのですが、オーシストが壊れていた場合、例えば形態的に壊れていて、顕微鏡ではオーシストとは識別できないような粒子が入ってきたときには、遺伝子では陽性だけれども、顕微鏡では陰性になることがあると思います。そういう不一致が出るおそれは、十分にあると思います。

 

○遠藤座長

 今、国包先生の御質問内容としては、不一致の場合、どちらをとるかという話ですね。

 

○国包委員

 はい。

 

○遠藤座長

 これまでの理解では、顕微鏡の結果に従い、顕微鏡で陰性だった場合、陰性と判定するように指導されているものと認識しております。

 

○豊住補佐

 私どももそういう認識ですが、本日の御議論を踏まえて、その辺りも考え方を変える必要があるかどうかということになりますが、いかがでしょうか。

 

○遠藤座長

 国包先生御自身は、どんなふうにお考えでしょうか。

 

○国包委員

 それはわかりません。

 

○遠藤座長

 私見ですが、このような取り決めはいわばルールだと思います。当面そういうルールで行きましょうとなっておりますので、今の指導内容を踏襲すべきと考えます。つまり遺伝子検査で陽性だった場合には、速やかに顕微鏡検査をして、それで陰性か陽性かを確認する。顕微鏡検査をもって、最終判定をするという形で、基本的に良いと理解をしております。

 泉山先生、どうぞ。

 

○泉山委員

 顕微鏡検査で形態が壊れているオーシストは、人に感染できない、壊れたものだと思いますので、顕微鏡的には陰性相当だろうと思います。

 

○遠藤座長

 当初より我々の共通認識だと思っておりますが、顕微鏡検査でオーシストの殻だけが出てきた場合、陽性と判断する。例えば浄水で、明らかにクリプトスポリジウムの殻と認識されるものが出てきたときは、陽性と判定することになっていますね。

 

○泉山委員

 おっしゃるとおりだと思います。そういう経緯だったと思います。

 

○遠藤座長

 どうぞ。

 

○片山(浩)委員

 今回の新たな論点になってしまうかもしれないのですけれども、検査頻度を上げるという方向もありだと思います。どういう計算のやり方をするかどうかはわからないですけれども、単なる陰性で1年後にまた測定というよりは、そういうことが出たら、検査頻度を年に4回に上げなさいとか、年に4回のペースで2回連続なら、毎月にしなさいとか、どういうアルゴリズムがいいかはわからないですけれども、検査頻度を上げるという方向のトリガーにするというのが、いいという気がします。

 これは大腸菌だったと思いますが、水浴基準の議論をしていたときに、昔、そういうアイデアとリスク管理がありました。どれだけリスクが守れるかという議論で、発表を聞いたことがありましたけれども、怪しい、あるいは超過しても、超過している期間が短ければ、安全な水浴場なので、そういう意味では、超過した瞬間に、次の試料を測定して、超過が取り消せるみたいな、そういう議論だったと思います。そうすると、超過していない期間が長くなるので、自動的にすぐにサンプリングすることになるだろうという議論でした。黄色になっている時期を短くさせるためには、もう一回、サンプリングをしなさいということです。青になっている期間を長くするという作戦をとらせるという、プレッシャーを与えるのがいいのではないかと思います。

 

○遠藤座長

 重要なご意見だと思います。現在、水道課から、同一水系の複数の浄水場で検査を計画する場合、浄水場ごとに時期をずらして検査をするように指導されているものと理解しております。単一の浄水場だと、年に1回ないし4回しか検査の機会ないけれども、3カ所の浄水場で時期をずらして検査すれば、その水系の毎月のトレンドが出てきます。これを浄水処理に反映させていく形にすると、必ずしも単一の浄水場が検査を増やさなくても、データの共有によってより確かな情報を得ることができるものと承知します。水安全計画の作成に当たってはたの浄水場との連携が有効かつ重要となるものと理解きたします、事務局からコメントをいただけますか。

 

○豊住補佐

 クリプトスポリジウムに関しましては、原水の検査が3か月に1回ということになっておりましてので、浄水のほうは、原水からの検出がなければ、特段されない状況になっております。原水のほうは、流域でうまく調整をしていただいて、カバーする頻度を上げてもらうということは、他の項目も含めてですけれども、やっていただくように推奨しているところでございますので、クリプトスポリジウムについても、同様であると思っております。

 先ほど片山委員からいただきました、モニタリング頻度を上げるトリガーにするというのは、PCRでの陽性があったけれども、顕微鏡で陰性であった状態において、頻度を上げて試験をすることを推奨するという趣旨ですね。

 

○片山(浩)委員

 そうです。

 

○豊住補佐

 わかりました。

 

○遠藤座長

 近傍の期間は、そういう圧力があってもいいですね。安全を担保するという意味では、しばらくの間は回数を増やしなさいとか、そういうことは特に有効だろうと思います。

 

○豊住補佐

 特に浄水から出る事業体がありますと、頻度を上げて、浄水の検査をしているのが実態でもありますので、こちらのほうで、また検討させていただければと思っております。

 

○遠藤座長

 分かりました。ありがとうございました。

 よろしゅうございますか。どうぞ。

 

○田中管理官

 ありがとうございました。岸田委員から御提供いただいた資料に基づいて、今、先生方から方向性をお示しいただきましたので、私どもとしては、こういう方向で判断をするようにということで、何らかの形で、全国の水道事業者なり、都道府県なりに伝えるという措置をとりたいと思っております。どうもありがとうございました。

 

○遠藤座長

 船坂委員どうぞ。

 

○船坂委員

 給衛協では、顕微鏡法の検査員の養成を行っています。数も増えていまして、効果も上げているんですけれども、今、話がありました遺伝子法は、会員の方も皆さんやりたいと思っていて、やっているんですが、精度を自分たちで確認できないんです。ポジティブコントロールが手に入らない。そういう意味で、国のほうで、何か提供していただくなりして、各機関において自信を持ってもらえば、もっと遺伝子検査法は進んでいくと思いますので、御検討いただきたいと思います。

 

○田中管理官

 ただいま船坂委員から御指摘いただいた点は、以前もこの検討会で御指摘をいただいた点だと理解しておりまして、私どもは決して忘れているわけではなくて、どういったことができるのか、今、各方面と相談をしているところでございますので、いつになるかはわかりませんが、何らかの形で、取り組みの状況について、御報告できる機会が来るのではないかと思っております。

 以上です。

 

○船坂委員

 ありがとうございます。

 

○遠藤座長

 よろしくお願いいたします。

 それでは、次に移らせていただきまして、最近の状況を踏まえたクリプトスポリジウム等対策の課題について、資料3を用いて、事務局から御説明をいただきたいと思います。お願いいたします。

 

○上迫係長

 それでは、資料3「最近の状況を踏まえたクリプトスポリジウム等対策の課題について」と、参考資料3をあわせて御説明させていただきたいと思います。

 資料3、本題に入ります前に、参考資料3、いちばん後ろに御用意しております「水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について」を簡単に御説明させていただきたいと思います。

 1ページ目の「1.調査内容及び方法」でございますけれども、対策指針に基づく施設のろ過または紫外線処理施設の整備や水源変更等による、クリプトスポリジウム等対策の実施状況等について、平成25年3月末の時点で、各都道府県を通じまして、調査を行っているものでございます。今回、その調査結果を、皆様に御紹介させていただきたいと考えております。

 2ページ目「2.対策の実施状況」をご覧いただきたいと思います。3ページ目の表-1で、具体的な数字を書いておりますけれども、概要をお伝えいたしますと、2ページ目の((1))((4))のとおりになってございます。

((1))全国の浄水施設、20,105施設のうち、水道原水のクリプトスポリジウム等による汚染のおそれがある施設、すなわち予防対策の必要な施設、これはレベル4とレベル3になりますけれども、7,254施設、全体の36%でございます。

((2))に書いてありますけれども、このうち4,874施設では、既に対策施設設置等の予防対策について、実施済みという状況でございます。

((3))、残る2,380施設は、対策施設設置等について検討中という段階です。このような施設は、簡易水道等の小規模な水道事業者によるものが多いと見ております。

((4))ですけれども、クリプトスポリジウム等の汚染のおそれの判断を行っていない施設、すなわちレベル未判定の施設は2,252施設ございます。ただ、これは平成21年度、前回の実績では、3,646施設あったんですが、大きく減少しているということで、レベル判定が一定程度進んでいると評価しているところでございます。

 ちょっと飛びますけれども、都道府県別の対応状況を御説明いたします。細かい数字は省きますけれども、7ページ目に日本地図が載っております。上が施設数の割合でございまして、下が給水人口を見ております。特に施設数ですけれども、未対応施設の割合は、都道府県によって大きく差があるといった状況になってございます。

 駆け足になってしまいますけれども、8ページ目をご覧いただければと思います。「(3)実施状況の傾向」でございます。

((1))については、先ほど申しましたとおりですけれども、レベルの不明施設は年々減少しまして、各レベルの施設数が年々増加しているといった状況になってございます。

((3))ですけれども、レベル4またはレベル3と判定された施設において、対策施設設置等の対応がなされた施設数は増加しておりまして、未対応施設の割合も、専用水道を除いては減少傾向にありますが、依然として、未対応の施設は残っているという状況でございます。

 また飛びますけれども、11ページ目をご覧いただけますでしょうか。クリプトスポリジウム等が検出されたことによって、給水停止等に対応した事例を紹介しております。

12ページの表-4をご覧いただきますと、最近ですと、平成24年度に群馬県の用水供給事業で、浄水からジアルジアを検出したといった事例がございました。こちらは感染症の患者はございませんでしたが、煮沸勧告を行ったものでございます。昨年2月でございます。

 また、平成25年度には、北海道で、原水及び浄水からクリプトスポリジウムが検出されたといった事例もございました。

 それでは、資料3に戻っていただけますでしょうか。資料3は「最近の状況を踏まえたクリプトスポリジウム等対策の課題について」です。これらの課題を踏まえまして、現行の対策指針の範囲で、どういった対応が考えられるのかといったことを確認させていただくという趣旨で、今回、御説明を差し上げようと考えております。

 課題についてですけれども「1.背景」をご覧いただければと思います。クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物については、御存知のとおりですが、対策指針を平成19年に策定しており、これに基づいて、水道事業者等において、対策を推進しているところでございます。

 対策指針は、同じホチキスどめをしております、参考1につけてございます。

 近年の状況ですけれども、平成8年6月に、我が国で初めての水道水に起因するクリプトスポリジウムによる感染症が埼玉県越生町で発生して以来、水道水中のクリプトスポリジウム等が原因と判明した感染症の発生事例は報告されておりませんでしたが、平成22年、千葉県成田市の貯水槽水道が原因と見られるジアルジア症が発生しております。原水からは例年100件程度検出されておりまして、また、まれではございますけれども、浄水から検出された事例も、先ほど御紹介しましたように、若干あるといった状況でございます。

 これに加えまして、参考2、いちばん後ろのページにつけてございますけれども、世界保健機関(WHO)が2011年に発行した、飲料水水質ガイドライン第4版で、クリプトスポリジウムの感染確率が示されておるわけですが、これは2004年に発行された第3版における数値よりも、大幅に高くなっている状況でございます。

 この数値を定量的にどう扱うかということは、今後もう少し精査が必要とか思っておりますけれども、思ったより、クリプトスポリジウムの感染確率が高かったという背景があるという状況でございます。

 本編に戻りまして、こうした状況を踏まえて、我が国においても、水道におけるクリプトスポリジウム等の対策をさらに充実することが、期待されているところだと認識しております。

 ページをおめくりいただきまして「2.対応」でございます。こちらは皆さん御存知のことかと思いますけれども、対策指針においては、施設整備について、以下のとおり規定しているところでございます。

 レベル4については、ろ過池またはろ過膜の出口の濁度を0.1度以下に維持することが、可能なろ過設備を整備することとなっております。レベル3では、濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備、またはクリプトスポリジウム等を不活化することができる紫外線処理設備、どちらかを備えるといった規定になっております。

 水道事業者の方々から、ときどき、濁度を0.1度以下にするようなろ過設備と紫外線の処理設備を併用してはだめなんですかという問い合わせを受けることがあるんですけれども、併用することはできます。そういったところを改めて確認しようというのが、今回の趣旨でございます。

 参考1の4ページ目の真ん中より少し下のところに書いておりますけれども「浄水処理の安全性を一層高めるために、ろ過池等の出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備と紫外線処理設備を併用することとしてもよいこと」とされております。ですから、水道事業体において、ここは慎重に対策が必要だということであれば、こういった併用ももちろん可能だということを、対策指針の中でもできるということでございます。

 これを併用するのが望ましいのかどうかということは、突き詰めていけば、先ほど御説明いただきましたQMRAとか、そういった話になるのかもしれませんけれども、当面は水道事業者等において、クリプトスポリジウム等について、適切に対処するために、引き続き対応指針において、これらの記述、多重防護の考え方を踏まえつつ、対策施設の検討を行うことが期待されるのではないかと考えております。

 長くなりましたが、以上でございます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 それでは、御意見、御質問等はございませんか。どうぞ。

 

○泉山委員

 1点確認させてください。レベル4の施設は、ろ過池またはろ過膜を使って、0.1度以下にするわけですけれども、そこにプラスして、紫外線装置を導入してもよいということでしょうか。

 

○上迫係長

 そのとおりです。

 

○泉山委員

 ありがとうございました。

 

○遠藤座長

 ほかにございませんでしょうか。

 今日、この検討会で、指針自体をどうしましょうという話ではありませんが、指針等にあるような問題につきましても、もし御意見がございましたら、御指摘いただければと思っております。

 どうぞ。

 

○片山(浩)委員

 紫外線を設置した場合と設置していない場合とで、遺伝子検査法にしろ、顕微鏡検査法にしろ、クリプトスポリジウムの出方は同じだと思うのですけれども、検査して、陽性あるいは実際にクリプトスポリジウム等が見つかった場合の対応は、紫外線がある場合とない場合で異なるのでしょうか。

 

○上迫係長

 非常に重要な御指摘だと思っておりますが、現時点の対策指針では、紫外線を入れている場合と入れられていない場合で、どうするべきかということは、はっきりとは書き分けていないのが現状だと認識しております。

 

○遠藤座長

 具体的に片山先生はどんな御意見をお持ちですか。これは実際にかなり難しい問題で、量的な問題もあるだろうし、その辺で何か御意見ございますか。

 

○片山(浩)委員

 個人的なあれですけれども、感覚的には例えば給水停止ではなくて、煮沸勧告にするとか、ランクは分けていいのではないかと思います。リスクとして、紫外線を入れると下がっているとみなすことは問題ないと思います。レベル4とレベル3で紫外線の対応が違うのは、忖度すれば、濁度が高くなったときに、効いていないというおそれがあるので、完全なものではないという立場での御議論かと思います。どこまでの濁度を許すかどうかは別にして、実際に濁度上昇して、異変が起きたということをキャッチしていない状態の中で、紫外線が常時有効であったという客観的な状況の中で、水が配られている、紫外線が当たっているとみなせるような場合、クリプトスポリジウムの陽性の取り扱い方が、紫外線がある場合とない場合で同じというのは、少し変だろうと思います。

 

○上迫係長

 ありがとうございます。対策指針をどうするかということも含めて、また検討させていただきたいと思います。趣旨は非常にわかりやすいと思います。

 

○遠藤座長

 この問題は、最後までついてくる問題だろうと思いますし、この検討会がそれなりの責任を持って、ある方向づけを答申する必要性もあると思います。ぜひ各委員にお考えいただいて、御意見を集約させていただけたらと思います。感覚的な問題でもあったりしますので、かなり判断の難しい問題なので、ぜひ皆様の御協力をいただいて、何かの形で答えを出していきたい、答申していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 ほかにございませんでしょうか。

 先ほど事務局からありましたように、微生物対策というのは、基本的にマルチプルバリア複数の防御処理をすることによって、安全性を高めていくという発想が重要です。我が国で、今、特に表立って議論されておりませんが、例えばクリプトスポリジウム対策で、急速ろ過と紫外線処理を併せて行う際には、それらの除去率を足し算して、総合的な除去率を出すという考えは、QMRAでは取り入れられている作業だろうと思います。

 このような観点からいたしますと、日本におきましても、ある処理を追加した場合にはその除去率足し算していくという評価の仕方をあわせて考えていくべきではないかと考えます。このような思考方法がインセンティブとなって、状況に応じたマルチプルバリアが普及していくということが重要なんだろうと思いますので、そのような形での御指導があってしかるべきだと思います。

 ところで、事務局としては、指針は今年中あるいは来年度ということではなくて、近々改定をしていくとか、手直しをしていくという御計画はありますか。

 

○田中管理官

 具体的にいつまでというものは特にございませんが、この検討会で御指摘いただいた点で、直すべき点があれば、しかるべきときに直していくことは、やぶさかではないと思っております。ただ、いつまでにどうするということについて、決めているわけではございません。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 よろしゅうございますか。どうぞ。

 

○秋葉委員

 資料3の初めの真ん中辺りで、100件程度検出されていて、浄水からも検出されている事例があるということですけれども、実際問題として、100件のうち、浄水を試験しているところは、原水でクリプトスポリジウムが出たということで、浄水もやっているんだと思うんですが、どんな理由で浄水をやっているんですか。全然関係なくやっているところもあると思います。どのぐらい浄水を測っているところがあって、検出された事例もあるということなんですか。その辺はどうなんですか。

 

○豊住補佐

 私どもが把握しておりますのは、各事業体さんですとか、自治体の方に、クリプトスポリジウムが検出されたら、御報告をしてくださいとお願いしておりますので、原水で検出されたら、浄水ではかるということをされますので、それをきっかけにして測られているもののみが挙がってきます。つまり、原水で検出されました、浄水で測ったら出ましたというのが挙がってくる、あるいは原水では出ましたけれども、浄水をチェックしたら大丈夫でしたというのが、挙がってきます。

 原水で測って出ていなくて、かつ浄水でも何かの理由で測ってみて、出ませんでしたというデータは、我々は把握できない状況になっております。もし御研究などで把握されている事例がございましたら、むしろ御紹介いただけると、今の秋葉委員の御質問のお答えになると思うのですが、少なくとも私どもが把握しているのは、そういうプロセスの中でいただく情報になっております。

 

○黒木委員

 今のお話は、原水イコール浄水のものも含めてということでしょうか。途中にろ過施設がなければ、原水イコール浄水になるわけですけれども、その辺はいかがでしょうか。

 

○豊住補佐

 原水イコール浄水という事例は、もちろん塩素はあると思います。そういう水道は考え得ますけれども、そのような場合には、原水からという御報告ではなくて、浄水もあわせて検出されたという御報告になるはずですので、それは浄水であるにもかかわらず、原水という形での報告にはなりません。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 1つだけ確認なんですけれども、最初に議論がございました、ろ過と紫外線の併用なんですが、これはレベル3だけという理解になるわけですか。レベル4は、そもそも紫外線は使えないので、併用はできないんですか。

 

○豊住補佐

 できます。レベル4は濁度0.1を達成できるろ過施設と言っているわけですけれども、対策がそこで止まってしまうので、加えて紫外線を、多段階バリアという意味で使うということを進めたいという趣旨でございます。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 わかりました。

 

○豊住補佐

 レベル3で、そのような対応をとっていただくことも、もちろん良いのですが、主にレベル4を念頭に置いております。0.1を満たせるろ過施設が前提としてあって、それに加えて、ということです。

 

○島崎先生(オブザーバー)

 了解です。

 

○遠藤座長

 どうぞ。

 

○片山(浩)委員

 先ほど管理官から見直しもあり得るとありましたので、特に緊急を要する話ではないかと思うのですが、長期的な視野でということで、少し述べさせていただきたいと思います。

 クリプトスポリジウムの対策というのは、各国同時並行的に、なおかつ隣のやり方をまねすることができないタイミングで出てきたので、それぞれのユニークな対策が出てきていて、その中で、日本の濁度0.1管理というのは、非常にユニークな方法で、なおかつ我々のこれまでの経験からは、一定の効果を収めていると評価をしていると思います。それが暫定指針からここまで来て、あまり大きく見直すことなく続いているということなんだろうと思うのですが、現実として、早急に対策ができたという意味では、非常に功績は大きいと思います。

 一方で、オランダが入れている10 -4のリスクは、定量的にリスクを評価して、感染リスクそのものを水質基準だと言っているとか、USEPAのように、原水のレベルに応じて、高度浄水を追加しなさいという指導を入れるというやり方のほうが、合理的と言えば、合理的だと思います。

 日本の場合、原水のクリプトスポリジウムの濃度に関係なく、濁度0.1を保ちなさいと言っているとか、もう一つは、0.1度にしたら、クリプトスポリジウムがとれるのかということに関しても、実際にはペナルティーというか、恐くて浄水の濃度を測定できないので、原水のレベルと浄水のレベルを比較するという、実際に0.1度を保ったら、どれだけクリプトスポリジウムのリスクを低減できているのかということを、浄水場側が自主的に検証しようにも、ほとんどできないようなルールになっている状況の中で、0.1度に保つということと、実際に出てきたら、給水停止を含めて、安全を確認してから給水を再開しなさいというルールは、説明が難しいルールなのではないかと思います。

 実際に0.1度にしたら、どれだけ除去できているか。よその急速砂ろ過法では、1logから2logかもしれないけれども、日本の0.1度を保っているろ過方式であれば、何logを認めていいですとか、それをやらないで紫外線を入れる。あるいはオゾン活性炭を入れているのだから、実際には濁度0.1度は保てていなくてもいいですとか、そういうさまざまなマルチプルバリアの中で、どれだけ安全を確保するかということに対する説明をもう少し自由にさせられるような、あるいはそういうものを組み合わせられるような形での対応が、紫外線も含めてあっていいと思います。

 

○遠藤座長

 今の御指摘の点もあわせて、御検討いただけたらと思います。

 あわせて言わせていただきますと、いかにしてクリプトスポリジウムの汚染を防止するかというところに、今、基本的なポイントがあるんですけれども、安全性という意味から考えると、クリプトスポリジウムの汚染の可能性がある、レベル3とか4については、浄水を2週間保存することが望まれるとされていますが、それが勧奨で終わっている。

 例えば食品の関係でいきますと、いわゆる検食という法律で決まっているシステムがあって、飲料水も食品の一部でもあるということを考えると、2週間程度置いておく必要があると思います。2週間というのは、クリプトスポリジウムの発症の可能性がある期間という意味ですけれども、その間の水は、積極的にとっておくことを、勧奨から義務に替えるべきではないかと考えます。水をとっておくことによって、クリプトスポリジウムの直接的な予防はできませんし、防止というものはできませんが、大きな集団感染等への防止には十分つながるものでありますので、その辺につきましても、指針の改定のときには、指導できるような形のものに変えていってほしいという希望を持っておりますので、あわせて発言させていただきました。

 ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますか。

 ありがとうございました。

 それでは本日最後の議題に移ります。突発的な水質事故等による微生物に係る水質異常時の対応について、資料4で御説明をいただきます。お願いいたします。

 

○上迫係長

 それでは、資料4「突発的水質事故等による病原微生物に係る水質異常時の対応に関する考え方」でございます。

 こちらは、微生物よりも先に、水質基準のほかの項目、主に化学物質について、検討が先行しているものでございますけれども、水質異常時に給水を停止することなく、摂取制限や煮沸勧告を伴いつつ、給水を継続するといったことについて、逐次改正の検討会などで議論を進めているところでございます。今回の微生物に関しても、そういったことができるかどうかということについて、自由にディスカッションをいただきたいと考えております。

 ちょっと時間が押しておりますので、端折りながら、説明をさせていただきます。

 後ろのほうになりますけれども、参考2を同じホチキスどめでつけております。同じ資料4の中の後ろのほうでございます。これは平成26年1月14日の厚生科学審議会で出させていただいた資料でございます。

 こちらは、先ほど申しましたとおり、主に化学物質について検討しているものでございます。逐次改正の検討会に出ていらっしゃる先生方については、繰り返しになりますけれども、簡単に説明をさせていただきます。

 「1.検討の必要性」でございますけれども、一昨年5月に利根川水系のホルムアルデヒドの前駆物質による水質事故が起きまして、これは浄水のホルムアルデヒドの濃度が上昇したといったことで、千葉県内の水質事業者が給水を停止するに至りまして、87万人の市民生活に大きな影響が生じたといったことがございました。

 この事故で原因になりました、ホルムアルデヒドなんですけれども、長期的な影響を考慮して、十分な安全係数を用いて設定されているものでございまして、要するに基準を超えたからといって、すぐに健康に悪影響を及ぼすかというと、そうではないといったものでございます。

 水道水は、飲用のみならず、炊事や洗濯、風呂、水洗便所などに使用されるものでございまして、利便性の確保に加えて、都市機能などの維持に不可欠であるということで、断水による影響も考慮しなければならないということでございまして、摂取制限等の対応を行いつつ、給水を継続することについて、選択肢として適切に判断するように、考え方を取りまとめたいと考えております。

 同じ参考2の2ページ、3.を説明させていただきたいと思います。

 給水継続の考え方の定義でございますけれども、突発的な水質事故等によりまして、水道事業者等が最善の措置を講じても、なお一時的に浄水中の有害物質の濃度が、基準値を一定程度超過する場合において、水道事業者等が低減化対策を講じつつ、利用者に対して、水道水の直接飲用を控える、飲まないでくださいと広報する、あるいは煮沸勧告をかけて、給水を継続するといったことを、摂取制限等を伴う給水継続と呼んでおります。

 1月のときの議論では、生活関連項目及び病原微生物に係る項目について、検討対象から除くとしておりますが、本検討会で議論しようとしているのは、まさに病原微生物に係る項目でございます。こちらで検討することにさせていただきたいと思います。

 摂取制限等を伴う給水継続の条件を幾つか示しておりますけれども、時間の都合がございますので、割愛させていただきます。

 それでは、資料の本編に戻っていただけますでしょうか。資料4、一番最初のページでございます。

 先ほど申しましたとおり、今回御議論いただきたいのは、病原微生物に関する摂取制限等を伴う給水継続について、そういったことができるのかどうかということも含めて、検討を行いたいと考えております。

 「2.病原微生物に係る項目への適用について」ですけれども、水質基準逐次改正検討会における検討においては、突発的な水質事故等により、水道事業者等が最善の措置を講じても、なお一時的に、浄水中の有害物質の濃度が基準値を一定程度超過する場合について、摂取制限等を伴う給水継続を可能とすることを提案しているものでございます。

 また、給水が継続される浄水は、誤って飲用しても、直ちに健康への悪影響を生じるものではないといったことを条件としております。摂取制限等が100%行き渡らなかったとしても、すぐに健康影響が出るといったものではないということを、条件としているものでございます。ここは病原微生物に適用しようとするときに、ネックになってくると思っております。

 この考え方を病原微生物に係る項目について適用しようとした場合、これはあくまで事務局による例示でございますけれども、以下のような論点が挙げられるのではないかと考えております。

((1))としましては、どういったケースが突発的な水質事故等による病原微生物に係る水質異常なのかということです。この季節は病原微生物が多いというのは、突発的とは言えませんが、どうしても事業者の努力の範囲を越えてしまうものがあるとします。そういったものは、一体どういうものがあるのかということで、例1、例2を挙げております。

 例えばですけれども、例1でいいますと、畜産排水の処理に不具合がありました。原水が病原生物により汚染されたと認められる。それで浄水から水質基準を超えるような大腸菌などが出た場合が考えられる。あるいはクリプトスポリジウムが出てしまったということが、考えられると思います。

 また、これは内的要因ではありますけれども、塩素注入機の故障により、消毒が不可能となった場合も、検討対象としてあり得ると考えております。

 もちろんこれ以外にもあると思います。

((2))としましては、((1))のような場合について、どういった対応が考えられるかということでございます。

 対応は最終的に事業者によって判断されるものと考えておりますけれども、例えば例1で、浄水において、病原微生物に係る水質基準を超過した場合であると、クリプトスポリジウムとか、耐塩素性病原生物がいるかどうかということは、確認しましょう。もしいなければ、消毒を確実にすれば、おそらく大丈夫であろうということで、塩素の注入量を増やした上で、摂取制限等を行いつつ、給水を継続するといったことがあり得ると思います。例えばそういったものがあり得るのではないかということでございます。

 例2のように、塩素消毒が不可能となった場合、健康への悪影響が生じる可能性があるので、摂取制限等が徹底されないと考えられるときは、やむを得ず、給水を停止するということになってしまう。そういった対応が考えられる。

 先ほど片山先生からもありましたけれども、例えばUVが入っているときに、クリプトスポリジウム等が出たら、給水を必ずしも停止しなくてもいいのではないかということも、この対応の1つに入り得ると考えております。

 これ以外にも論点や対策の方向性はあると思いますので、残り少ない時間ではありますけれども、御自由に意見をいただきたいと考えております。

 以上でございます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 それでは、御発言をお願いしたいと思います。

 泉山先生、ありますか。

 

○泉山委員

 水質の異常時に病原微生物が入ってしまったというのは非常に困った事態だと思うのですが、クリプトスポリジウムの話をしますと対策ができるので、例えばオゾンを入れるとか、紫外線消毒を入れるとか、あるいは膜処理を入れるとか、そういう対策があるわけです。ただ、費用がかかってしまう問題はあるのですが、こういう事態に陥ってしまう前に、対策ができるのであれば、対策をしてほしいと思っております。

 もう一つは、今、この資料をざっと見た範囲で、自治体の衛生の担当部局との連携について、書かれていなかったような気がします。万が一、病原微生物が水道水中に入ってしまった場合には、例えば県の衛生部、保健所、あるいは地方衛生研究所等に問い合わせをしていだいて、実際に水を飲んでいる方々が大丈夫なのかどうかということを、まず確認してほしいと感じております。クリプトスポリジウムの場合ですと、潜伏期間があって、直ちに悪影響が出るわけではないのですが、検査頻度の間隔が広いものですから、もし問題が生じているのであれば、不明の下痢症等が出ているのであれば、問い合わせていただければという気がいたしました。

 例えば感染症に関して、原因不明の下痢症が発生しているとか、そういう症候群のサーベイランスが導入されるようになってきていまして、ひょっとしたら、そういうところでも情報がとれるかもしれないので、御考慮いただけたらと思いました。

 以上です。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 

○上迫係長

 衛生部局との連携については、今後、微生物に係る新たな方針を示すことになった場合、そこは明確にしておきたいと考えております。現実としては、先ほどのお話にもありましたが、クリプトスポリジウムが原水から出た場合、健康被害がないかどうか、県を経由して確認をしておりますので、実際、そういったことはやられていると思いますけれども、先ほど申しましたとおり、そこはきちんと示しておくべきだと考えております。

 

○遠藤座長

 どうぞ。

 

○豊住補佐

 1点補足ですけれども、冒頭に泉山委員がおっしゃいました、施設的な対策、ハードの対策があるので、それをやった上でということですが、それは私どもも、化学物質について検討している中で繰り返し言ってきていることでもございます。

 お配りしております、資料4の参考2の1ページ目の2.をご覧いただきますと、水道事業者等は、常に飲用に適する水を常時給水することが求められているということで、4行目の真ん中辺りから、必要な監視体制、浄水設備の高度化、配管のループ化、配水池容量の確保、緊急連絡管の整備等により、浄水の水質を含め給水への影響を最小限にとどめる必要があるので、今般の検討は、このような措置の必要性を何ら変更するものではないと書いております。

 また、2ページの3.の(2)の((1))をご覧いただきますと、平常時において、しかるべき基準を満たせるような施設で管理を行っているという大前提のもとで、極めて特異的な状況で水質異常が発生したときに、どうするのかということを、今回、検討の対象にしているものでございます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 そういう意味からしますと、微生物を考慮しなければいけないような異常時というものは、どうやって発見され得るものなのかを想定する必要があろうかと思います。病原微生物汚染は通常の検査をしていても発見されるわけではありません。通常の検査で発見されてくる異常は大腸菌であるとか、あるいは塩素の注入量であって、病原体ではありません。これらの異常値からは微生物の混入を許しているかもしれないという状況の把握はできます。現行では突発事故を発見し得たとして、それが微生物と関連するかどのように判断すればよいかということでしょうか。

 一例として、膜処理施設における膜の破断などが考えられますね。膜の破断をどうやって検知するか知りません。当初、膜の導入にあったって、原水の状況によって膜には病原体の蓄積があり、破断するとそれが一挙に流れ込む可能性があるという話だったと記憶しております。

 資料に示されたものは、((2))の例1で、病原微生物の検査を速やかに行い、不検出が確認できれば、塩素を入れて、飲水の制限はつけるとしても、流せるのではないかとかと云うことが、現在想定している状況の範疇だと思ってお話を聞いていました。

 ほかに何かありますか。例えば大腸菌が出てしまったというのもそうでしょう。微生物に直接絡むような形での異常で、発見したときの対応の方法というのは、ほかにどういう状況が考えられますか。

 

○秋葉委員

 まず初めに、水質基準で常に測って、基準としてあるものは一般細菌と大腸菌です。ここに例が挙げられているんですけれども、一般細菌からいくと、水質基準のものと耐塩素性、つまりクリプトスポリジウムが出たというのは、全く違う話だと思っています。つまり大腸菌などが出ても、直接病原菌が出ているとは限らないわけですから、その場合には、もう一度、大腸菌類などを測って出なければいいとか、有害物質、化学物質の場合は、そういう話ではなかったですか。耐塩素性そのものが出てしまったものと、代替指標が出てしまったというのは、別の話になるというのが1つあります。それを同じ土俵に挙げてしまっていいのか。耐塩素性で浄水ではかるというのは、先ほども聞いたんですけれども、原水で出ていたから、こちらでも測るということですね。

 

○遠藤座長

 今のことをあわせて言えば、常に原水中にいるような状況で、大腸菌が出てしまった。大腸菌陽性であっても即クリプトスポリジウムにはつながりませんね。

 

○秋葉委員

 つながらないです。ですから、別物です。そのものが出てしまったら、やはり流してはいけないんです。

 

○遠藤座長

 浄水にクリプトスポリジウムが出たら給水は停止されるが、原水でクリプトスポリジウムが出たということです。

 

○秋葉委員

 ここでは、浄水においてと書いてあるんです。

 

○遠藤座長

 浄水の通常の検査で大腸菌が出てしまった。その場合、微生物学上のリスクをどこまで考えなければいけないかという話です。

 

○秋葉委員

 はい。

 

○遠藤座長

 そこで、給水続行に際しては耐塩素性微生物の検査を無条件につけるということでしょうか。ちょっと重いですかね。

 

○片山(浩)委員

 大腸菌は、実際問題として、塩素の有効性を見ているようなところもあります。例えば10 などの濃度があって、生き残りが1匹いたという話だったらともかくとして、普通はそんなことはまずなくて、塩素が入っていれば、大腸菌は出てこないというレベルになりますから、そういう意味では、大腸菌の検査というのは、万事うまくいっていることを確認する程度のことで、たまたま出たら、塩素がちゃんと入っているのかどうかとか、塩素のモニターなどが正しいのかとか、そういうところにフィードバックがかかる。現実に塩素の注入がしっかりしていることを確認したら、塩素を入れたら、そのまま給水するしかないというか、そこで止めてもあまり意味がないような気がします。

 一方で、クリプトスポリジウムというのは、塩素を入れることでは、片がつかないわけですから、そこの対応がパラレルに議論できるのかどうかというのは、私も少し気になります。

 

○遠藤座長

 一方で、クリプトスポリジウムのような耐塩素性微生物がいなければ、塩素を確認することによって、流すことは問題ないということは、言えそうだということなんです。そこで、クリプトスポリジウムなどの検査しなくても、塩素の注入量が確認される、あるいは濁度の0.1が確認されるだけで、即流してしまっていいのか、もう一段頑張ってクリプトスポリジウムまで検査しなければいけないのか、あるいは、それでは重過ぎるのかというのが論点だと思います。

 

○秋葉委員

 通常、基準をクリアしているということは、ろ過施設もあってという議論ですね。

 

○遠藤座長

 はい。

 

○秋葉委員

 わかりました。

 

○黒木委員

 塩素の問題で、大腸菌ということだと思うので、大腸菌が出たから、即クリプトスポリジウムという話にはならないです。もちろん大腸菌がなぜ出てしまったかという原因を考えた上で、クリプトスポリジウムをどうするかというほうに進まなければいけないと思います。クリプトスポリジウムが出る可能性が高いのは、大腸菌ではなくて、濁度のほうだと思いますので、急激に濁度が上がるようなことになった場合には、クリプトスポリジウムを考えるべきだということではないかと思います。

 浄水処理がうまくいかなくなってしまって、それまで出ていなかったものがいきなり出てしまった。特にレベル4のようなところで、濁度が上がったとか、浄水処理がうまくいかないということが起こった場合には、クリプトスポリジウムを考えるべきだということではないかと思います。

 突発事故の対応を考えるのであれば、こういう条件だったらどうしましょう、こういう状態だったらどうしましょうという、いろんな状況を考えて、それぞれについてどう対応していくかということを、想定してつくっておいたほうがいいような気がします。

 

○船坂委員

 そういう意味では、ここで書いてあるように、畜産排水の処理に不具合が発生したと、原因がはっきりしています。そういう場合には、クリプトスポリジウムも兼ねてやる。だから、発生原因が明確になっている場合には、それに応じた対処をする必要があると思います。大腸菌だけで捉えるのではなくて、原因がこういうふうに明確な場合には、クリプトスポリジウムまでやるということに、必然的になってくると思います。

 

○遠藤座長

 ここは、もう一回、立ち返りましょう。事務局からの投げかけは、1ページ目の2.の条件が満たされるような状況は、微生物学的な見地からあり得るかどうかという話です。そこのところの議論が必要です。つまり誤って飲用しても、直ちに健康への悪影響が生じるようなものでない状況が、微生物に関してもあり得るのかという話です。

 もしあるとするならば、それはどういうものなのか。場合によっては、少し時間をいただいて、個々の条件を洗い出してみることが必要なのでしょうか。

 その辺について、どう思いますか。どうぞ。

 

○五十嵐委員

 別のことになるのですが、事故が起こったということは、緊急に対応しなければいけないということで、クリプトスポリジウムだ、大腸菌だということを判定する間もなく、すぐに対応しなければいけないということになります。そうした場合にどうしたらいいかということを、まず考える必要があると思います。

 化学物質は長期的な影響を見て、たとえ流したとしても、消費者がどのような扱いをしても、あまり健康影響はないと考えられる。一方、病原体の場合ですと、流した場合、消費者がどういう扱いをするかわからない可能性があるので、誤った使い方をすると、病原体で感染してしまう可能性もあります。それも考えて、給水を継続していいのか、あるいは完全に止めるべきかということを考えたほうがいいと思いました。

 

○遠藤座長

 おっしゃるとおりです。

 どうぞ。

 

○豊住補佐

 整理をする意味で、追加の説明をさせていただきますが、今回、化学物質で給水継続についての検討する中で、海外事例を調べました。例えばイギリスの事例などを調べますと、基本的に水は止めず、もし微生物が検出されれば、それは煮沸勧告をしますという仕組みになっております。

 一方で、日本の場合は、例えば一昨年の事故の対応のように、基準を超えたら止めてしまうという対応をする事業体は、往々にしてあるだろうと推測されます。

 今、お配りしている、資料4の3枚目をご覧いただきますと、平成15年の課長通知の別添3がございます。

 「1 新基準省令の表中1の項から30の項までの上欄に掲げる事項」の(1)の下に、基準値超過が継続することが見込まれ、人の健康を害するおそれがある場合には、取水及び給水の緊急停止措置を講じ、かつ、その旨を関係者に周知させる措置を講じること。具体的には次のような場合が考えるとしています。

 イとして、水源または取水もしくは導水の過程にある水が、浄水操作等により除去を期待するのが困難な病原生物もしくは人の健康に影響を及ぼす恐れのある物質により汚染されているか、またはその疑いがあるとき。

 ロとして、浄水場以降の過程にある水が、病原生物もしくは人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質により汚染されているか、またその疑いがとき。

 ハでは、塩素注入機の故障とございます。

 取水、給水の緊急停止措置を行うような具体例として、このような挙げ方がされています。

 一方で、資料3の4枚目の裏をご覧ください。これが対策指針でございます。

 9ページの下の「○広報の実施」をご覧ください。これはクリプトスポリジウム症等が発生した場合の応急対応の中にある広報の実施ですけれども、ここをご覧いただきますと、クリプトスポリジウム等による感染症の発生状況から見て、水道が感染源であるおそれが否定できないと判断される場合には、水道事業者等は都道府県と協力して、直ちに水道業者に対する広報・飲用指導を行うとあります。

 昨年の群馬県のケースでは、感染症の患者は見られなかったわけですけれども、浄水からの検出がありましたので、煮沸勧告をし、給水は継続したという状況になっております。

 こういった事例を踏まえて、病原生物に係る基準値の超過ですとか、まさにクリプトスポリジウムが浄水から検出された場合、給水を継続するのか、あるいは即止めるべきなのかという議論になってくるわけです。現状では、こういう措置、通知などが示されている中で、水質異常時の対応として、化学物質だけではなくて、微生物を含めて、必要であれば、見直しをしなければいけないと思っているところでございます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 どうぞ。

 

○国包委員

 水質基準逐次改正検討会で、これまでこの議論をさせていただいている中で、私なりにいろいろ注文を付けたりしているんですが、それとの重複になるかもしれませんけれども、少しお話をさせていただきます。

 これまでもごもっともな御意見がたくさん出ましたし、その中で、お話もありましたけれども、そもそもどういったケースがあり得るのかということは、想定する必要があります。

 1つは大腸菌が検出されたというケースだろうと思います。日常茶飯事というのは、言い過ぎかもしれませんけれども、ときどき起きているのではないかと思います。昔の大腸菌群であれば、そうでした。

 横道にそれるかもしれませんが、遠藤座長からお話がありました、膜の破断とか、普通のろ過池で考えれば、ろ過池で濁度が0.1度を超えるというのが、膜の破断などにかなり近い状況だと思います。これは必ずしも直接的な病原微生物ということではないですけれども、どうするのかということがあります。化学物質と捉えるのか、微生物と捉えるのか、ろ過池の0.1度はよくわかりません。とにかく水質検査でそういったものが引っかかる。それも基準項目についてということが1つあります。

 もう一つは、クリプトスポリジウムとジアルジアだろうと思います。これは先ほども秋葉さんからお話があったように、基準ではない。その違いはやはり大きいだろうと思います。

 そういったケースを具体的に明確にした上で、何で継続して給水する必要があるのかということを議論する必要があると思います。ベースとしては、基準を超えてはいけないわけですから、継続するかどうかという判断はあるのかもしれませんが、基準を超えた場合、普通に考えれば、まずは止めなければいけない、止めろということになるんだろうと思います。

 ここから先は、さらなる議論なんですけれども、例えば大腸菌がちょっと超えたからといって、すぐに止めるというのは、合理的ではないです。今の日本の基準なり、この辺の規制の体系の中で、そういった状況に遭遇した場合の手続が明確に決められていないこと自体、私は非常に問題だと思います。

 ここから先はイギリスの例とか、アメリカの例とか、いろいろなお話がこれまでもありましたし、私自身はドイツの例も調べたりしているんですけれども、基準超過の場合は、健康被害が伴うかどうかは別にして、緊急の事態ですから、そういった場合、第1にここに連絡をとりなさいとか、泉山先生がおっしゃったような、感染症予防などの場合はまさにそうです。何か事があった場合、もう一度検査をし直してとか、あるいは継続するかどうかを見極めてということではなくて、まずはここに連絡しなさいとか、明確なアクションの指示が、規制としてあってしかるべきだと思います。その辺のところは、給水を継続するかどうか、煮沸勧告を出すかどうかという以前の問題として、規制の中でどうやって位置づけるのかというのは、考えなければいけないのではないかということを、前から申し上げているんです。

 あとは、必要性との兼ね合いですけれども、必要性がなければ、基準を超えれば、ばたっと止める。それが原則だとしてしまう手もあるのかもしれません。

 それと、原子力事故の際の摂取制限は、基準ではないということがありましたし、物に応じて、条件に応じて考えていく必要があると思います。

 ちょっと長くなりましたが、そんなことを考えております。

 もう一つ、どなたかからもお話が出ましたが、化学物質と微生物の違いは大きいですので、極端に言えば、化学物質は、硝酸を除いては、少しぐらい超えても構わないと思うんですけれども、微生物の場合は指標とはいえ、疎かにはできないと思っています。

 以上です。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 時間も超過してしまいましたが、これは今日結論が出るものではないし、検討会でもう少し議論を深めたいと思います。同時に、例えば厚生科学研究のどこかで、こういうことを検討することが必要だと思います。

 今、国包先生から御指摘があった点を踏まえて、微生物に関連して、整理をきちっとした上で、この検討会で議論を深めたいと思います。いかがでしょうか。

 泉山先生が入っておられる厚労科研の微生物分科会で、こういうことを検討していただいて、どういう状況があり得るか、そのときに検査すべきものはどうであるとか、そういうものを御報告いただくことも非常に重要かと思いますので、御留意いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、まとまりませんけれども、本日の議論を踏まえて今後とも検討していくということで、今日は収めさせていただきたいと思います。

 それでは、最後にその他といたしまして、事務局から御連絡等がございましたら、御説明ください。

 

○田中管理官

 先生方には、本日、時間をかなりオーバーしての議論、どうもありがとうございました。

 一部の議題に関しては、特に結論を出すということではなくて、第一歩の議論をしていただくという形になってしまって、十分御議論いただけなかったのではないかと感じております。

 それから、非常に幅広く、クリプトスポリジウムの対策についても、御意見を賜りました。

 指針に関しましては、いつ直すということについて、何かを決めているわけではございませんが、今日の御議論を踏まえて、必要な場合には、見直しも考えていくことになるかと思っております。

 今日、御指摘もありましたので、この検討会は、来年度も開きたいと思っております。時期に関しましては、私ども事務方で、今日の宿題を踏まえまして、ある程度こなした上でと考えておりますので、改めて御連絡を差し上げたいと思います。

 それから、本日の議事録等に関しましては、各委員に御確認をいただいた上で、公開したいと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

 

○遠藤座長

 以上をもちまして、本日の審議を終わらせていただきます。ありがとうございました。

 


(了)
<照会先>

健康局水道課水道

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