2015年05月19日更新 ヒトと動物に共通するインフルエンザ感染症の概況 (更新4)

世界保健機関(WHO)から2015年5月1日付けで、鳥インフルエンザ感染症の概況が公表されています。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスのヒトへの感染

2003年から2015年5月1日までに、16か国から公式に鳥インフルエンザA(H5N1)感染者840人が検査にて確定診断されたことが公表されました。このうち、447人が死亡しています。

2015年3月31日の更新以降に、エジプト(13人)と中国(1人)から死亡者1人を含む14人の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症患者が新たに検査で確認されたことがWHOに報告されました。

エジプトから報告された鳥インフルエンザA(H5N1)患者13人のうち、9人は3月に、残る患者は4月に発生しました。患者はエジプトの8つの異なる行政区域から報告されました。13人の年齢幅は3歳から58歳、中央値は31歳で、10歳未満の患者が23%を占めています。わずかに女性の方が男性よりも感染しやすくなっています。死亡者は1人だけで、残る患者は回復し、退院しています。患者は全員が家禽もしくは家禽(原文どおり)との接点があり、全ての患者が入院し、全員が繰り返し抗ウイルス薬による治療を受けました。

全てのインフルエンザウイルスは時間とともに変異しますが、予備検査の段階では過去に発生した分離株と比べて、これまでにエジプトでの患者と動物から分離した限られた数のウイルスに重大な遺伝子変異は見つかっていません。しかし、さらに詳しい分析が続けられています。

これまでの5か月と比べて、前回のリスク評価以降、エジプトから報告された鳥インフルエンザA(H5N1)の検査確定患者数は減ってきています。過去の数か月を通してみれば、これまでには患者数の減少傾向は明確ではありません。家禽における流行の減少、公衆衛生上のリスクに対する関心の高まり、季節要因など、いくつかの要因が合わさっているようです。エジプトにおける死亡患者の割合は、他の国での割合よりも、特に小児において一貫してより低くなってきています。

中国では、雲南省から鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染者1人が報告されました。そこでは、先月2人の患者が発見されています。患者は病気から回復しました。しかし、発症の前の家禽との接触について分かる報告はなされていません。

OIEが受けた報告によれば、インフルエンザA(H5N1)、A(H5N2)、A(H5N3)、A(H5N6)、A(H5N8)といったさまざまなサブタイプのインフルエンザA(H5)が、最近、西アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米の鳥から検出されています。これらのインフルエンザA(H5)ウイルスは、ヒトに感染を引き起こす潜在性があるものの、これまでのところ、インフルエンザA(H5N1)とウイルスとA(H5N6)ウイルスのヒトへの感染を除いて、インフルエンザA(H5)の他のサブタイプのヒトへの感染は報告されていません。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
報告された患者は散発的とみられています。また、これらの国の風土では、ウイルスが家禽の間で土着していることが知られています。鳥インフルエンザウイルスが家禽に流行しているときには、散発的にヒトへの感染または小さな集団感染が、感染した家禽やウイルスに汚染された環境、特に家庭で家禽と接触する人々の間で起こり得ます。それ故、さらなる散発的な患者が発生しても予想外でありません。

動物からヒトへの感染者数の増加が、過去数か月にわたってエジプトから報告されていますが、これらのインフルエンザA(H5)ウイルスは、現在、ヒトとヒトの間で簡単に感染伝播することはありません。したがって、地域集団レベルで感染が広がるリスクは低く、リスク評価は変わりません。

ヒトに感染するリスク要因および軽症患者がいるとすれば、潜在的役割への理解についてさらに研究を進めることが必要です。動物からヒトへのウイルス感染力の変化に現在の状況が何らかの役割を果たしていると考えるならば、より深い理解のために動物とヒト両方からのウイルスの分析をさらに進める計画が必要とされます。

2015年3月にエジプトに派遣された高官レベル合同調査団の声明とその調査団の報告書の要旨を、以下のサイトで見ることができます:
http://www.emro.who.int/egy/egypt-news/upsurge-h5n1-human-poultry-cases-may-2015.html

最近まで動物における鳥インフルエンザA(H5)を経験することのいなかった地域での、この疾患の急速で大規模な流行に伴い、公衆衛生分野で警戒の必要性が高まっています。公衆衛生に対して影響を与えるウイルスの伝染性と病原性の変化を起こしたときに、ヒトでの感染をいち早く発見するために、サーベイランスが強化されるべきです。

非季節性のインフルエンザウイルスによるヒトへの感染

●中国での鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染
WHOへの報告によれば、死亡者261人を含む鳥インフルエンザA(H7N9)感染者657人が検査で確認されています。最近報告されている患者の大半は、生きた家禽が売られている市場を含む、感染した生きた家禽やウイルスに汚染された環境との接触機会と関係しています。インフルエンザA型(H7N9)ウイルスは、患者が発生している地域での家禽とそれらが飼われている環境から検出され続けています。過去にヒトから分離されたウイルスと比較して、最近の患者から分離されたウイルスに大きな遺伝子変異は認められていません。これまでの情報では、ヒトとヒトの間で簡単に伝播するものでないことを示唆しています。

出典

WHO.Influenza at the human-animal interface, Monthly Risk Assessment Summary.
Summary and assessment as of1 May 2015.
http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/Influenza_Summary_IRA_HA_interface_1_May_2015.pdf?ua=1[PDF形式:457KB]