環境・エネルギー対策

水道事業におけるエネルギー対策

1.水道施設における地球温暖化対策

 令和2年10月26日、第203回臨時国会の所信表明演説において、菅義偉内閣総理大臣は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言し、「地球温暖化対策計画」の見直しを加速するよう指示がなされました。
 また、日本は令和3年4月に、2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013 年度比)を目指すこと、さらに高見に向けて挑戦を続けることを表明しています。その後、この新たな削減目標も踏まえた「地球温暖化対策計画」(改訂)が、令和3年10 月22 日に閣議決定されています。
 水道事業におけるCO2 排出削減目標は、「地球温暖化対策計画」において「上下水道における省エネルギー・再エネ導入 水道事業における省エネルギー・再生可能エネルギー対策の推進等」として、2030 年度21.6 万トン-CO2削減(2013 年度比約5%)の目標を掲げています。
 水道事業は、全国の電力の約1%を消費するエネルギー消費(CO2排出)産業の側面も有しており、エネルギー消費削減に向けた省エネ等対策の促進、利用エネルギーの再生可能エネルギーへの転換などが求められます。

2.省エネルギー・再生可能エネルギー設備の導入促進施策

 水道事業の脱炭素化推進事業として、「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」のうち「水インフラにおける脱炭素化推進事業」にて、水インフラ(上下水道・ダム等)における脱炭素化に資する再エネ設備、高効率設備等の導入に対する財政支援を行っています。

令和6年度建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業予算[906KB]

3.導入促進施策を活用した事例

 水道事業における導入促進施策を活用した事例として、以下のような事例があります。
     
出典:環境省ホームページ (https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/jirei.html
 

4.エネルギー対策に係るこれまでの調査結果について

 厚生労働省では、水道事業におけるエネルギー対策に係る調査結果として、これまで以下の調査を行っています。

 再生可能エネルギーに係る対策に関して、全国 1,500 以上の水道事業者等を対象に、水道施設における小水力発電の導入候補地の選定や導入規模等を調べる“ポテンシャル調査”「水道施設への小水力発電の導入ポテンシャル調査」(平成28年3月)の結果は、こちら。

 省エネルギーに係る対策に関して、水道事業者等における対策の参考となるよう水道事業におけるCO2削減方策を整理し、全国の水道事業においてこれらCO2削減方策を実施した際のCO2削減ポテンシャルを推計する等を行った「脱炭素水道システム構築へ向けた調査等一式」(令和2年6月)の結果は、こちら。

5.脱炭素社会の実現に向けた水道事業の新たな取組

 水道事業における脱炭素化の実現に向けては、これまでの対策とは別に新たな取組も必要となります。その取組の一つとして、仮想発電所事業への参画が挙げられます。仮想発電所事業とは、水道施設における調整力を活用して電力消費時間帯をコントロールすることで、系統全体の電力需給調整として活かす事業です。今後、再エネ等の変動発電の割合が多くなるにつれて、より電力需給調整能力のニーズが高まることが見込まれることから、水道施設の新たな活用方法、水道事業の新たな収入源となることが期待されます。

 脱炭素社会の実現に向けた水道事業の新たな取組は、こちら。[685KB]

 ※仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant=バーチャルパワープラントの略)とは、
  対象とする地域にまるで大きな一つの発電所があるかのように電力を安定的に供給できる仕組みのことです。
  需要家側の電力使用量の増減ポテンシャルや蓄電池、自家発電設備等のエネルギーリソースを束ね、適切に遠隔
  ・統合制御させることで、電力の需給バランス調整に役立てることができます。この調整力が、あたかも電力需
  給バランスのために稼働する一つの発電所のように機能することから「仮想発電所」と呼ばれているものです。
  この「仮想発電所」は、負荷平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の供給などの機能とし
  て電力システムで活躍することが期待されています。
   水道事業者等においては、浄水池の調整能力(貯留量)を活用し、ポンプ設備を部分的に稼働・停止させるこ
  と等で電力消費量の調整力を生みだすことができます。その調整力をアグリゲーターアグリゲーターへ提供する
  ことでVPP事業へ参画することが可能です。
 

水道事業における環境対策

1.廃棄物・リサイクル対策

 水道事業における環境対策の一環として、浄水発生土等の産業廃棄物の有効利用(リサイクル)は、事業全体における環境負荷低減に向けた重要な取組です。厚生労働省では、各都道府県、各水道事業者等において、廃棄物の発生抑制や有効利用の取組をお願いしています。

 廃棄物・リサイクル対策における浄水発生土の有効利用率等については、こちら。[409KB]

2.高濃度ポリ塩化ビフェニル(PCB)の早期処理

 高濃度ポリ塩化ビフェニル(PCB)については、高濃度PCB廃棄物及び高濃度PCB使用製品(以下「高濃度PCB廃棄物等」という。)の保管・所有の実態調査、期限内の処分が推進されており、変圧器やX線発生装置等の電気工作物に使用されているほか、橋梁、洞門及び排水機場においてPCB塗料が使用されている事例が確認されています。
 そのため、厚生労働省では、各都道府県、各水道事業者等において、事務連絡「高濃度ポリ塩化ビフェニルを含むコンデンサー等が使用された機器の所有の有無の確認及び早期処理について(周知)」に基づき、自ら(出先機関等含む。)が保有・管理する施設等から排出されうる高濃度PCB廃棄物等の網羅的な把握・調査に努めていただいているところであり、高濃度PCB廃棄物等の処分期間内の確実かつ適正な処理に向けて協力をお願いしています。

「高濃度ポリ塩化ビフェニルを含むコンデンサー等が使用された機器の所有の有無の確認及び早期処理について(周知)」については、こちら。[230KB]

 また、低濃度PCB廃棄物等についても、適切な把握、保管、処理をお願いしています。

 

 

水道分野における脱炭素(補助事業等)に関する説明会

今後の更なる脱炭素の推進を図るべく、各水道事業者及び水道用水供給事業者(以下「水道事業者等」という。)を対象に「水道分野における脱炭素に関する説明会(以下「説明会」という。)」を令和5年4月17日から令和5年5月12日まで開催しました。説明会では、水道分野における省エネルギー・再生可能エネルギーの取組の紹介のほか、これら設備導入等における補助事業等について説明しました。説明会で使用した資料を掲載していますので、各水道事業者等におかれては、資料の内容を参考に、より一層の積極的な脱炭素の推進に御協力をお願いします。

【資料】
説明会資料一式[7.5MB]


「水道分野における脱炭素(補助事業等)に関する説明会」にて頂きました「上下水道・ダム施設の省CO2改修支援事業」及び「公営企業債(脱炭素化推進事業)」に関するご質問について、回答を以下にまとめましたので、これら補助事業等をご使用される際は、ご参考ください。
【Q&A】
質問と回答一覧[177KB]

水道分野における脱炭素に向けた研究成果

1.水道システムのCO2 削減ポテンシャルの推計とその手順の提案

 水道事業体における現状の電力使用量を把握するとともに、消費電力の分析等を行うことで、エネルギー対策によるCO2 排出量削減ポテンシャルの推計を行っています。また、この結果を踏まえ、他の水道事業体が水道システムに応じたCO2 削減方策の選定とCO2 削減ポテンシャルの推計をする上で参考となるよう、電力使用量等の情報の収集方法からCO2 削減ポテンシャルの推計に至る一連の手順の提案を行っていますので、参考としてください。
 なお、本研究の一部は、厚生労働行政推進調査事業(厚生労働科学特別研究事業)において実施しています。
 「水道システムのCO2 削減ポテンシャルの推計とその手順の提案」(令和6年3月)の報告書はこちら

お問い合わせ先

厚生労働省 健康・生活衛生局 水道課 技術係

TEL:03-5253-1111(内線4030,2983)