ダイオキシン類による健康影響等の調査結果について

―大阪府豊能郡美化センター等廃棄物焼却施設関係労働者―

厚生労働省は、中央労働災害防止協会に「清掃作業従事者のダイオキシンばく露による健康影響に係る調査研究委員会(ダイオキシン健康影響調査委員会:委員長 高田 勗)」を設置し、廃棄物焼却施設労働者の健康影響について調査を実施している。

今般、平成19年度に実施された一般廃棄物焼却施設1施設の廃棄物焼却施設労働者及び大阪府豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査の血液中ダイオキシン類濃度の分析結果等を報告する。

1. 一般廃棄物焼却施設1施設の労働者20名の血液中ダイオキシン類濃度は平均「23.5pg-TEQ/g lipid(調査当時のTEFで算出、現TEFで算出したものでは18.8pg-TEQ/g liquid)」で、過去の調査結果とほぼ同様であり、また、平成16年度に環境省が行った一般住民の測定値と同程度であった。

2. 豊能郡美化センター関係労働者の血液中ダイオキシン類濃度は、調査を始めた平成10年度の値から年々減少してきており、平成19年度調査の値は平成10年度調査の値の30.9%となっている。

3. 医師による皮膚視診等の結果からは、豊能郡美化センター関係労働者及び全国2施設の廃棄物焼却施設労働者のいずれもダイオキシン類のばく露によると疑われる所見は認められなかった。

(参考)

○ ダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)及びコプラナーPCBをいう。

○ 1pg(ピコグラム)とは、1グラムの1兆分の1の質量である。

○ TEQとは、測定されたダイオキシン類の量を、最も毒性が強い2,3,7,8-TCDD(四塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン)の毒性に換算して表したものである。

○ TEFとは、TEQを算出する際に、各異性体の濃度に乗ずる係数である。

○ /g lipidとは、(血液中の)脂肪1グラム当たりのことを表したものである。

照会先:労働基準局安全衛生部化学物質対策課(内線:5515,5516)


(別添)

調査結果概要

1 全国の廃棄物焼却施設労働者の健康影響調査(平成19年度)

(1)調査対象者

一般廃棄物焼却施設1施設の労働者20名を調査対象とした。

(2)血液中ダイオキシン類濃度

廃棄物焼却施設労働者20名のうち、血液中ダイオキシン類濃度の分析が可能な20名の血液中ダイオキシン類濃度は、旧TEQ値(調査当時のTEFで算出したもの。以下同じ。)での平均は、23.5pg-TEQ/g lipid(最小値8.5 pg-TEQ/g lipid、最大値52.9pg-TEQ/g lipid)、現TEQ値(平成20年4月1日に施行されたTEFで算出したもの。以下同じ。)での平均は、18.8pg-TEQ/g lipid(最小値7.0 pg-TEQ/g lipid、最大値42.6pg-TEQ/g lipid)であり、環境省の一般環境における血液中ダイオキシン類濃度の調査結果※とほぼ同様の値であった。

※「平成16年度ダイオキシン類の蓄積・ばく露状況及び臭素系ダイオキシン類の調査結果について」

施設別の労働者の血液中ダイオキシン類濃度(単位 pg-TEQ/g lipid)

(旧TEQ)
  対象者数 検査項目 平均値 最小値 最大値
施設A 20名 ダイオキシン類合計 23.5 8.5 52.9
PCDDs+PCDFs 13.2 6.1 33.5
(2,3,7,8-TCDD) (0.9) (0.5) (2.0)
コプラナーPCB 10.3 2.2 24.5
(現TEQ)
  対象者数 検査項目 平均値 最小値 最大値
施設A 20名   ダイオキシン類合計 18.8 7.0 42.6
PCDDs+PCDFs 11.3 5.3 28.3
(2,3,7,8-TCDD) (0.9) (0.5) (2.0)
コプラナーPCB 7.5 1.6 19.6

※ ダイオキシン類合計の平均値は、PCDDs、PCDFs及びコプラナーPCBそれぞれの平均値の和である。

(3)皮膚視診

受診者において、ダイオキシン類による塩素性ざ瘡様皮疹は無かった。

(4)まとめ

本調査の結果、調査対象者に焼却施設内作業に基づくダイオキシン類ばく露によると思われる健康影響は認められなかった。

2 豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査(平成19年度)

(1)調査対象者

豊能郡美化センター関係労働者のうち、焼却炉関連設備内に立ち入って作業に従事する者(12名)及び焼却炉関連設備内作業の支援は行うが焼却炉関連設備内には立ち入らない者(12名)のうち本人が希望した者15名を調査対象者とした。

なお、対象者は現在、焼却作業に従事していない。

(2)血液中ダイオキシン類濃度

調査対象者の血液中ダイオキシン類濃度は、旧TEQ値での平均は、70.2pg-TEQ/g lipid(最小値14.8 pg-TEQ/g lipid、最大値275.3pg-TEQ/g lipid)、現TEQ値での平均は、56.9pg-TEQ/g lipid(最小値11.8 pg-TEQ/g lipid、最大値230.1pg-TEQ/g lipid)であった。

また、平成10年度から連続して受診している11名の血液中ダイオキシン類濃度の平均値は、平成10年度261.0 pg-TEQ/ g lipid から年々減少してきており、平成19年度調査の値は80.5pg-TEQ/g lipid(いずれも旧TEQ値による)で、平成10年度調査の値の30.9%となっている。

図 血液中ダイオキシン類濃度の経年変化

(3)皮膚視診

皮膚視診では、ダイオキシン類のばく露によると思われる塩素性ざ瘡様皮疹は認められなかった。

(4)血液・生化学検査

血液・生化学検査の結果、基準値の範囲を超えた者も認められたが、ダイオキシン類ばく露による直接的な影響とは考えられない。

(5)まとめ

今回の調査の結果からは、ダイオキシン類ばく露によると思われる健康影響は認められなかった。


(参考)

○皮膚視診については、労災病院の皮膚科医師により次の点を中心に診察を行った。

[1] 過去の事例からダイオキシンによる皮膚症状として予測される「ざ瘡様皮疹」の有無

[2] 対象者から訴えのあった皮膚症状

[3] 露出部分に見られた皮膚症状

○血液・生化学検査については、以下の25項目について行った。

赤血球数(万/ul)、白血球数(/ul)、ヘモグロビン(g/dl)、ヘマトクリット値(%)、血小板数(万/ul)、総蛋白(g/dl)、アルブミン(g/dl)、総ビリルビン(mg/dl)、GOT(IU/l)、GPT(IU/l)、乳酸脱水素酵素(IU/l)、アルカリフォスファターゼ(IU/l)、γ-GTP(IU/l)、ロイシンアミノペプチダーゼ(IU/l)、クレアチンキナーゼ(IU/l)、アミラーゼ(IU/l)、総コレステロール(mg/dl)、HDLコレステロール(mg/dl)、中性脂肪(mg/dl)、血清鉄(μg/dl)、尿素窒素(mg/dl)、クレアチニン(mg/dl)、尿酸(mg/dl)、血糖(mg/dl)、HbA1c(%)

○リンパ球機能検査については、リンパ球を分離し、PHAによるリンパ球幼若化検査、CON-Aによるリンパ球幼若化検査、NK細胞活性検査、モノクローナル抗体によるリンパ球表面マーカーの解析(CD3,CD4,CD8,CD4/CD8比,CD19,CD56)を実施した。

○ 一般住民の血液中ダイオキシン類濃度の測定結果例

一般環境における住民の血液中ダイオキシン類濃度(単位 pg-TEQ/g lipid)

対象者数 平均値 最小値 最大値
264名 24 1.1 90

平成16年度環境省調査より


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