10/02/16 第43回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録 第43回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日 時 平成22年2月16日(火)10:00〜11:00 2 場 所 厚生労働省専用第21会議室(17階) 3 出席者 [委 員]  市川委員、市瀬委員、臼杵委員、勝委員、小林委員、 鈴木委員、高橋(均)委員、高橋(寛)委員、布山委 員、林委員、松本委員、宮本委員、室川委員、山川委 員       [事務局] 八田勤労者生活部長、畑中勤労者生活課長、            瀧原勤労者生活課調査官、鈴井勤労者生活課長補佐        4 議 題   平成22年度の付加退職金の支給率について 5 議事内容 ○勝部会長 定刻になりましたので、ただいまから第43回「労働政策審 議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会」を開催いたします。本日 は西村委員が欠席です。本日の議題は、平成22年度の付加退職金の支給 率についてです。中退共事業においては、昨年度、一昨年度と不況により、 資産運用について大きな評価損が出たのはご承知のとおりです。それを受 けて、来年度の付加退職金の支給率をどのように設定するかという問題が あります。まず、事務局から説明をお願いいたします。 ○畑中勤労者生活課長 資料1は、累積欠損金の現状です。3頁に表とグ ラフがあります。現在の累積欠損金は、平成20年度末において3,49 3億円と膨れ上がっております。これは、今部会長からお話がありました ように、サブプライムローン問題、リーマンショックを契機とした短期的、 急激な株式市場等の悪化によるものです。    かねてから累積欠損金解消計画がありましたが、その累積欠損金解 消計画の累積欠損金目標残高が折れ線グラフに直線で書かれております。 当初の累積欠損金目標残高と、現在の積み上がってしまった累積欠損金残 高との差は、現状で1,929億円という巨額になってしまいました。    こうした状況の中で、これまでの累積欠損金解消計画について今後 どう考えていくのか、ということも議論の題材になるのかと思います。付 加退職金の問題を考えるに当たり、その辺りをどうするかというところが 議論になるのかと思います。ここについては、先般ここ1、2年の経済変 動が非常に急激で、かつ、短期的なものであったということもあり、仮に 現在目標から1,929億円下回っている状況を前提にし、これまでのペ ースで解消を図っていくことになると、解消年限がさらに延長されるとい うことです。現在のところ、平成29年までにこの累積欠損金を解消しよ うという計画になっておりますけれども、仮に現在の3,493億円を前 提に考えていくと、平成29年からさらにプラス11年ぐらいかかってし まう状況があります。    一方、平成29年までになんとか3,493億円を解消していこう、 かなり無理してもやっていこうということになると、現在の年度ごとの達 成すべき運用利回り、現在は2.2%と計画上はなっておりますが、これ を約1%上げて3%台に年度ごとの達成すべき運用利回りをやっていかな ければいけないことになります。これも、私どもの中退制度は、まず安全 性を考えなければいけないという状況を考えるとちょっと無理があるので はないかということです。    非常に難しい状況の中で、今年度の付加退職金をどう考えていくか ということについて、事務局の考え方をお示ししましたのが資料2です。 平成17年3月において、「中小企業退職金共済制度の運営改善に関する 意見書」を取りまとめていただきました。これによると、利益が出た場合 の180億円は累積欠損金の解消に優先的に充てる。180億円の2倍の 360億円までは累積欠損金、180億円を累積欠損金に充てて、その後 を付加退職金に回していく。360億円を超えた場合には利益の2分の1 を付加退職金に充てていくということが、平成17年3月における利益配 分のルールでした。これに基づいて、今年の付加退職金をどう考えていく のかということです。    現状では、5頁の※のところですが、今年度の生ずる利益326億 円、これは安全率を見込んだ利益ですので、実際はもう少し上になる可能 性はあります。安全率を見込んだ利益として326億円になっております。 平成17年の意見書でのルールによると、180億円を累積欠損金に充て、 あとの146億円を付加退職金に回すというのが従来のルールに則った利 益配分になります。    先ほど申し上げましたように、非常に累積欠損金が巨額に積み上が っている状況の中で、この辺りをどう考えていくのかということが大きな 問題です。事務局からのご提案としては、解消目標額を1,929億円を 上回るだけの累積欠損金が積み上がっている状況というのは、平成17年 3月の意見書を取りまとめていただいた時点においてはあまり想定してい なかった事態ではないのか。これだけ短期間に、急激に欠損金が積み上が ってしまうということは想定の範囲を超えていたのではないかと考えてお ります。    それであれば、こうした異常な事態において、少なくとも今年度に 関しては特別にこのルールを適用せずに、全額利益を累積欠損金に回して はどうかというのが事務局としての考え方です。この辺りについて忌憚の ないご意見をいただければと思います。 ○勝部会長 ただいまの説明についてご意見、ご質問をお願いいたします。 説明の中で、今年の生ずる利益の見込みが326億円となっています。実 際はもっと増大する可能性もあるというお話でしたが、安全率を見込まな い場合にはどのぐらいの利益になるのか数字があれば教えてください。 ○鈴井勤労者生活課長補佐 3月分の運用利回りでマイナス5.19%を 見込んでおります。額にして約600億円です。 ○勝部会長 600億円マイナスを見込んでいるということは、それより もさらに上がるということですね。 ○鈴井勤労者生活課長補佐 安全率を見込まない場合の当期利益は、約9 00億円ということです。 ○勝部会長 約900億円の、プラスということでよろしいのですか。 ○鈴井勤労者生活課長補佐 はい、そうです。 ○勝部会長 それも踏まえて何かありますか。 ○鈴木委員 今回はこれだけ欠損というか累積が上回るということです。 確かに100年に1度の金融危機です。ひょっとしたら良くなる可能性だ ってなきにしもあらずです。平成17年の2分の1、360億円より上回 ったものをまた2分の1というのを決めた背景は非常に重いわけです。今 回は340何億円出ていて、いままでは2分の1、180億円は累積欠損 金に、その外の部分については付加退職金にということでやってきたはず だと思うのです。    例えば、今回300何億円を全部累積欠損金に充てますよと。その 目安的なものはどうするのだと。例えば500億円利益が出たとしたとき に、それも全部累積欠損金に充てますということになるのか。何百億円だ ったらこうだと。その辺を見たときに、累積欠損金がこれだけあって、こ うだからこうです、というところを示してもらわないと。いやいや、今年 は360億円にいっていないから、その部分は累積欠損金に充てようでは ないかということなのか。500億円も出ていたときにどうするのだ。そ ういうところはどのように考えているのかを聞きたいです。 ○畑中勤労者生活課長 あくまでも今回の事務局の考え方としては、利益 が326億円だからということではなくて、資料1の3頁をご覧いただき たいのですが、累積欠損金の目標残高を1,929億円上回るような形で、 これは当初平成17年の意見書が出て、その意見書に基づいてこの累積欠 損金の解消計画を作ったわけです。    平成17年の意見書を作った時点では想定していないような事態だ ろうという認識です。それであれば、あまりにも目標残高からの上回り方、 当初の計画からの乖離の程度が非常に激しいという状況に鑑みて、こうい う状況であれば一時的に配分ルールを適用しないという形で処理してはど うか。あくまでも今年度の特別な措置ということで考えていただければと 思っております。    事務局としても平成17年の意見書の重みというか、これはかなり 議論を尽くして作られたものだと認識しておりますので、この意見書のル ール自体は基本的にあまり変えたくないと考えております。ただ、意見書 を作ったときの状況からあまりにも逸脱している状況ですので、そういう 事態があるのであれば、その解消をまず図ったほうがいいのではないかと いうことです。端的に言えば、目標残高より1,929億円上回るという 程度があまりにも大きいところに着目し、今年度は累積欠損金に全額充て てはどうかという考え方です。 ○鈴木委員 それはわかるのだけれども、何を基準にして考えていくので すかということを示してもらいたい。1,929億円出ているから今回は ということなのだけれども。例えばほんの少しだと、それでもということ にするのか、その辺のところは。 ○畑中勤労者生活課長 その辺りは非常に累積欠損金の残高というものが、 もちろん計画ですので若干上回ったり下回ったりというのはあります。平 成17年の意見書を作ったときに、ある程度想定しているような範囲のも のであれば、当然平成17年のルールに基づいて配分すべきだと思います。 ただ、今回のような1,929億円という金額というのは、やはり想定の 範囲とはちょっと言えないのではないのか。 ○鈴井勤労者生活課長補佐 平成17年の意見書の考え方には大きく柱が 2つあります。一方の柱は累積欠損金を計画的に解消していく、もう一方 の柱は2分の1ルールも踏まえて付加退職金を支給していくという2つの 考え方です。いまの段階では、累積欠損金の計画的な解消という一方の柱 が崩れてしまっている以上、機械的に当時のルールを適用することは難し いのではないかという考えに基づく提案です。    それでは、どういうときに片方の累積欠損金の計画的な解消という 柱が崩れているかという、その具体的な基準はなかなか難しいと思うので す。累積欠損金の前年度末の残高、今後の金融情勢等いろいろな要素を勘 案して決めるべき話だと思います。基準の明確化は難しいと思うのですが、 それが必要であれば慎重に議論する必要があって、いま拙速にこの場で決 められる話ではないのではないかと思います。 ○松本委員 基本的なところをお尋ねいたします。今回全部累積欠損金の 補填に充てる形にしたときに、例えば退職金で100万円貰える方がいて、 付加退職金で従来だといくらになるのか。金額が多いから残そうとか、金 額が少ないからいいのではないかという話でもないのですけれども、その 辺の痛みの部分を教えていただければと思います。 ○鈴井勤労者生活課長補佐 0.4%ぐらいですので、100万円貰える 人ですと、その年の分が4,000円ぐらいです。 ○高橋(寛)委員 2分の1ルールを決めた平成17年のまとめというの は、かなり重く受け止めております。いま提案のあったようなことになる と、平成17年のルールをもう一度考え直さなければいけないことになり ます。いまの時点で提案されたことはなかなか受け入れ難いということで す。 ○臼杵委員 平成17年のときはまだここにおりませんでしたので事情は よくわからないのですけれども、基本的には先ほど課長補佐がおっしゃっ たように2つあって、1つは3頁のグラフのように累積欠損金を減らして いくことが1つの眼目で、もう1つはそれを超えて余裕があれば、それを 超えた部分については半分を付加退職金に回すという理解をしております。    そういう意味でいくと、このグラフを見ると、計画自体が既に全然 意味のないものになっている感じが拭えません。本来であればもう一回解 消計画を作り直すことも必要なのかという気がしております。ただ、それ はそう簡単には、私のように後から来た者が言えることであるのかもしれ ませんし、なかなかそうではないということなのかもしれないです。あと は、ここの青い線のとおりに累積欠損金を減らしていくということと、付 加退職金を払うという、どちらをどうウエイトしていくかというと、そこ は判断の問題になってくるのだと思うのです。平成17年のものにあまり ここでこだわるのはどうかという気がいたします。    ただ、いずれにしてもこれだけの累積欠損金を抱えているというこ とであれば、まずはそれを解消していくのが、制度の健全な運営という点 から見れば必要なのかなと。そうは言っても1%の約束した利回りは払う わけですから、その1%をいまの金融情勢からすれば、きちんと払うとい うことはかなり評価していいのではないかと思いますし、そういう意味か らすると、先ほどの課長補佐のお話ですと、最終的な利益は、場合によっ ては900億円ぐらいになる可能性もあるということなのかもしれません が、その900億円あるいは1,000億円であっても、とりあえず今年 度に関していえば、累積欠損金の解消に充てるほうが制度の健全な運営と いう点からいいのかと思います。    来年度以降その点については、もう一度平成17年の計画どおりに するのかどうか。あるいは冒頭ご説明がありましたように、当初の予定ど おり平成29年までということになると3%に利回りを上げなくてはいけ ない。これは、今の金融情勢等から考えると相当厳しい目標ですので、逆 に累積欠損金解消計画をもう少し先送りするということも含めて考えたほ うがいいのかなというのが私の意見です。 ○小林委員 平成17年のところで2つの柱があって、1つは健全化で、 もう1つは勤労者のほうにベネフィットを与えるということがあると思い ます。いま大変な状況になっているということで、制度の健全化を重視す るのであれば、累積欠損金の解消に充てていくことが考えられると思いま す。    これがいろいろなリスクをはらんでいて、中長期的にどのようにそ のリスクを評価していくのかというか、累積欠損金の解消の見込みについ てどう評価していくのかという難しい問題があると思います。いまは1, 929億円と非常に大きな目標との乖離があるということですが、そこの ところで平成17年に決めた原則を諦めてといいますか、そこをやらずに 全額解消に充てることにしたときに、非常に長いスパンで考えると、今年 付加退職金をある一定の額貰える人たちが貰えず、その人たちにとっての ロスが生じてくるということだと思うのです。    ですから公平の観点に立てば、巨額の累積欠損金が生じたからとい って、その年度の人たちのベネフィットを取ってしまってもいいかという 重要な問題があると思うのです。そこのところをどのように考えるのか。 健全化と、勤労者のベネフィットの部分とのバランスをどう考えるのかと いうことだと思うのです。いま私は回答を持っているわけではないのです けれども、この件についてはもうちょっと慎重に考える必要があるのでは ないかと思います。 ○畑中勤労者生活課長 いま計画のお話がありましたけれども、事務局と しての考え方としては、今回累積欠損金が積み上がった原因というのが、 あくまでも短期的な金融動向、一時的に急激な変化というか、短期的な金 融動向でありますので、この累積欠損金解消計画は平成29年度までの長 期の計画ですので、その長期の計画自体を、今回短期的に変動があったと いうだけであまりに急いで計画の年限を延ばすというのは適当ではないの かとも考えております。    一方で、目指すべき運用利回りをいまの2.2%を3%に引き上げ るのもなかなか厳しいのかと思っております。主に解消計画の中身という のは、目標年限と、達成すべき運用利回りの2つになっています。その2 つとも直ちに変更というのはいかがなものなのかという感じはしておりま す。    ルールについてもご意見をいただきましたように、このルールとい うのは累積欠損金の解消という安全性の確保の問題と、付加退職金の支給 という労働者の利益と、これをどのように調整していくかということで作 られたルールです。これ自体も基本的な考え方自体は、議論の末決められ たことでもありますので、私どもとしてもできるだけ維持していきたいと 思っております。その上で、今回この1、2年の特別な状況に対応する、 今年度の特別な措置という形で今回ご提案したということであります。基 本的な考え方自体を、いまの時点で変更するのは若干問題があるかと事務 局としては考えております。 ○瀧原勤労者生活課調査官 小林委員からお話がありましたベネフィット の件なのですが、これはまさにおっしゃるとおりで、現在の人のベネフィ ット、将来の方のものとをどのように勘案するか。これについて平成17 年のルールというのは、平成16年度末の累積欠損金を計画的に解消する というもので、これは、いま一気に返してしまうと、当然その人たちに負 担をかけて、将来の人のベネフィットに回すことになるので、そこはある 程度均らす必要があるだろうということで、平成29年度までという長期 的なスパンで見ていこうという考え方で進めたものであります。    今回は特別な状況と判断しましたのは、確かに1,929億円とい う計画を超えた部分に対して、いまの方のベネフィットをなくして将来に 回すというのは、いまの人の不利益を認めるような形になるわけです。一 方で、今回1,929億円が発生したのが、昨年、一昨年の急激な赤字と いう状況でした。    そうすると、その時点の中で昨年、一昨年の方の1%の利回りは保 障させていただいています。でも、実際の運用的には1%を大きく下回る ような運用で回っていました。今年度どの程度プラスが出るかわかりませ んけれども、経済的に見たら昨年、一昨年のマイナスの反動でプラスが出 ているのではないか。ここ2、3年で見たら、比較的真ん中辺りだったの かもしれないのだけれども、今年について言えば昨年、一昨年のリバウン ドが出ているような状況ではないか。    そうすると、今年の方のベネフィットという見方もありますけれど も、ここ2、3年を平均化すると昨年、一昨年はマイナスの運用だったけ れども1%を保障しました。ですから、今年うまくプラスに出たとしても、 それは昨年、一昨年の分を差し引きするという形で1%のラインよりプラ スの付加退職金は今年度についてはゼロという考え方はあるのではないか というものです。今年は大きく計画を上回って赤字が多いということは、 ここ2、3年の中の状況で生まれたものだという判断ができるのではない かというのが事務局としての考え方です。 ○山川委員 これまでの議論ですと、3つの選択肢があると。平成17年 3月に立てた原則どおりとするという選択肢と、その原則自体を見直すと いう状況ではないかという選択肢と、もう1つは提案のような一時停止と、 それのどれを選ぶかということです。これまでの説明で聞いているのは、 今回は非常に特別で、短期的、一時的な現象で、かつ予想外であったとい うことです。    私は金融関係の専門家ではないので、いちばん最後の資料のベンチ マーク収益率等から見て、今年のこのような現象は特別な事情である、あ るいは将来の金融動向からしても、原則を変えるまでには至らないほどの ことである。しかし一時停止が必要である。そういう市場の評価として、 説明にあるような短期的な一時的な現象で特別であるという説明の判断の 根拠はどういうことになるのでしょうか。 ○畑中勤労者生活課長 金融状況からしても、この1、2年の状況をベン チマーク収益率などをご覧いただいても、非常に大幅に低下しているとい う金融情勢であるのかと思っております。    そういう意味では経済状況として、ここまでのマイナスというのが 特別だということはある程度言えるのかなと。もちろん来年以降の予想は なかなか難しいのでありますけれども、またベンチマーク収益率などをご 覧いただいても、平成21年では回復してきておりますので、1つには一 時的な現象なのではないかと考えております。 ○山川委員 平成20年度と平成21年度では極端な差が生じているみた いなのですが、そういうことから一時的な現象であると判断されていると いうことでしょうか。 ○畑中勤労者生活課長 そうです。平成19年度、平成20年度というの は大幅な下落が短期的に起こったということではないかと思っています。 ○勝部会長 これは、リスク資産をどれぐらい抱えているかということに も依存すると思うのです。金銭信託で相当持っているということだと思う のです。今回でなくてもいいのですが、その中身がなかなか見えにくいと ころもたしかあって、もしそういう資料として、株式で何パーセントだと か、外国株式が何パーセントだとか、金銭信託のポートフォリオの資料が ありましたら是非教えていただければと思います。 ○畑中勤労者生活課長 概略を申し上げますと、私どもは自家運用と委託 運用の2つです。全体で約3兆3,000億円と考えますと、自家運用で 1兆9,000億円ぐらい、委託運用で1兆3,000億円という中で、 自家運用のほとんどが国債です。自家運用1兆9,000億円のうちの1 兆4,000億円ぐらいが国債ということで、安定した運用を目指してお ります。委託運用の1兆3,000億円のうちの1兆円が金銭信託です。 この金銭信託がいろいろ変動が出てきています。    株式などの比率で言いますと、主に国内債券というと国債が大きな ものになりますが、配分としては国内債券が79%、国内株式が10%、 外国債券が5%、外国株式が6%ということで、主に国内株式とか外国株 式が変動の非常に大きなものになっております。 ○臼杵委員 金融情勢についてはいろいろな見方があると思います。本当 に短期的、一時的なものだったかどうかというのは誰もわからないという のが正直なところであります。24頁のベンチマークにあるように、平成 15年度は国内株式の収益率が51%、平成17年度も国内株式の収益率 は47.85%と、これも短期的、一時的なものだったかもしれないわけ です。そういうときに、なぜ短期的、一時的ということが判断されなくて、 今回だけ短期的、一時的ということが言えるのかどうかというのはよくわ からないところであります。    要するに株を持っている限り、こういうことはこれからもよくある のだと考えたほうがいいのかと思っています。なるべくリスクを落として、 目標利回りを下げてでも累積欠損金が解消でるような方向に持っていくの が、健全な運営ではないかと思っております。できれば平成29年にこだ わらずに累積欠損金を解消するようなことをもう一回考えてもいいのかと 思います。それは、いますぐにというのはなかなか難しいのかもしれませ ん。    今年もたぶん良いでしょうし、来年も良いかもしれませんけれども、 だからといって、それがずっと続くかどうかは誰も保証できないわけです。 とりあえずは先ほど申しましたように、確かに今年の付加退職金は出ない ということは、ある意味で不利益なのかもしれませんけれども、平成16 年度、平成17年度辺りは出ていたと思いますので、そういうことも考え て、今年は累積欠損金の解消に回してもやむを得ないのかというのが私の 意見です。 ○高橋(均)委員 いまのようなご意見もあるのですが、事務局としての 提案は平成17年3月に決めたことに沿って、これからもやっていきたい と。しかしながら単年度に限って言うと今回は特別だと。平成17年3月 の基本的な考え方は踏襲するのだという理解でよろしいのですか。 ○畑中勤労者生活課長 はい。あくまでも平成17年3月のルールを基本 的には守っていきたいと。今年度は特別にそれを外すというような考え方 です。 ○高橋(均)委員 誰もわからないのはそのとおりで、私も経済は全然わ かりませんけれども、プロだってわからないわけです。しかし、平成16 年度末というのは累積欠損金が2千何百億円あったわけです。その中であ の方針を決めているわけです。累積欠損金をだんだん減らしていくという 目標数値に近いところであれば、それは平成17年のルールでやっていく。 しかし、それにあまりにも懸け離れているので、今回に限ってはというふ うに事務局の提案を理解しているのですが、理解の仕方はそれでよろしい のでしょうか。 ○畑中勤労者生活課長 はい。あくまでも目標残高を大幅に超えてしまっ ておりますので、まずはこの計画の水準に戻したいという考え方です。 ○市瀬委員 いちばん最初の鈴木委員のお話で、今回は100年に1度と いうことで、今回だけはというのは認めていらっしゃるように思われます。 その基準がまた来年も再来年も累積欠損金がこういう形で出ないとも限ら ないわけです。株式を持っている以上、ここ1、2年はよくてもと。その ようになると、例えば範囲が、いまの大幅にという、その大幅というのが 曖昧であって、予定よりも10%ぐらいとか、その辺の基準は考えておい たほうがいいのではないかと思うのです。 ○畑中勤労者生活課長 そこの基準をいまの時点ではっきりしてしまうと、 また新たなルールという形になってしまうのかなと。 ○市瀬委員 大幅となると、労側の方たちも、どこがという基準、今回だ け一時的なもので1年とか2年というのは認めてくださるかもしれないの ですけれども、その辺が200億円なのか300億円のブレなのか。その ブレがどのぐらいまでであれば、例えばこれよりも10%ぐらいであれば、 いまのようにこういう形で半分の平成17年のルールを適用するのか、そ の辺のことはここで議論しておいたほうがいいように思われます。 ○高橋(寛)委員 今年度だけ付加退職金がゼロというのを受け入れると は一言も申し上げておりませんので、お間違いのないようにお願いいたし ます。 ○市瀬委員 はい。そういうことなのですけれども、いまのご意見を伺っ たので、それはやむを得ないかなというようなご意見になるような感じが したのです。ただ、それがずっとというのでは絶対に納得はされないと思 うのです。ここよりも10%とかその辺はわかりませんけれども、そこま でのときであれば上回っても、平成17年度のに重きを置いて、こういう 形でするかとか、その辺はお話させていただいたほうがいいのではないか と思うのです。 ○鈴木委員 逆だったらどうするのですか。累積欠損金は何もないと。5 00億円出たと、180億円は内部留保で貯めるのかということにするの ですか。 ○高橋(寛)委員 運用利回りとの関係もあります。 ○鈴木委員 そうです。 ○畑中勤労者生活課長 逆とおっしゃいますと。 ○鈴木委員 例えば累積欠損金は何もないと。360億円の利益が出たよ と。 ○畑中勤労者生活課長 累積欠損金は全くない、解消されたという状況で すか。 ○鈴木委員 そうです。それでも180億円は準備金として残すという形 にするのか。 ○畑中勤労者生活課長 これは、あくまでも累積欠損金がある前提での計 画なり意見書なので。 ○鈴木委員 それはわかります。 ○畑中勤労者生活課長 ですから、累積欠損金がなくなったら通常どおり というか、累積欠損金があるので180億円等のルールというのがありま すので、当然解消された場合にはルールの見直しということもあると思い ます。 ○鈴木委員 なるほど。 ○山川委員 いまのご質問は、累積欠損金がある状況で、平成20年度末 がマイナス1,929億円だったのですが、例えばプラス1,929億円 だったらどうなるかというご質問かと思うのです。 ○畑中勤労者生活課長 大幅に累積欠損金解消を上回ったということです ね。その場合に、それでも累積欠損金に回すのかということでしょうか。 ○山川委員 平成17年3月のルールをそのまま適用するのか、あるいは 多少付加退職金を上乗せということもあり得るのかということかと思いま す。 ○畑中勤労者生活課長 ここのところは確かにいろいろな考え方があるの かと思います。基本的に累積欠損金の解消のためのルールですので、まず はそのルールに従って解消して、その解消額を上回る部分は付加退職金に 回すということなのかなと。あくまでもこれは累積欠損金目標残高を大幅 に上回っている状況がこの問題だと思っておりますので、逆の場合であれ ば、思ったよりも進んだと。累積欠損金の残高より大幅に下回ったと。平 成18年度はこのグラフのような状況になったわけです。こういう状況で あれば、当然そこはそういうものを想定してルールも作られているのかと 考えております。 ○高橋(寛)委員 今年度だけは付加退職金をゼロにしましょうと。平成 17年にまとめられた意見書のルールは尊重しましょうと。ところが、平 成17年にまとめられたルールを尊重してもらいたいのです。今回付加退 職金がゼロですと、それはルールになる。同様な状況ができたときには付 加退職金ゼロという状況が約束されるわけです。平成22年の話合いはそ れでOKだったではないか。それでは同じようなときが出たら、平成22 年と同様の状況だから付加退職金はゼロということがルールになります、 それは困ります。 ○勝部会長 先ほども話がありましたけれども、来年度ベネフィットは取 ってしまうことになるということなのですが、その年の運用の状況によっ て、毎年毎年付加退職金が違ってくるということは、逆の意味での公平性 が欠如することも考えられるかと思います。    もう1つは制度の健全な運営というのがいま非常に重要になってき ています。いま3兆円の残高で3,000億円、10%の累積欠損金が出 ているというのは非常に危機的な状況だということを事務局の方がおっし ゃっているのかと思うのです。    平成17年のルールについては、平成22年度だけではなく、先ほ ど市瀬委員からもお話がありましたように、今後も付いて回る問題ではな いかとも考えられます。先ほど山川委員が3つのオプションがあると言わ れましたが、原則、そのルールを見直すか、それを一時停止するものなの か、この辺も踏まえて事務局において少し議論を整理し、取りまとめ案を 作成していただけますか。その上で次回の部会で報告していただきたいと 思います。 ○臼杵委員 いまの勝部会長のまとめで全く異議はないのですけれども、 なんとなく1つ気になりますのは、もし平成29年度までに解消するとい うことになると、先ほど3%に利回りを上げなければいけないというお話 がありました。それが運用のほうにプレッシャーになって、余計に株を買 うとか、リスクを取るというようなことになるとちょっと困る。だから、 運用のほうのことも考えながら、ポートフォリオのことも考えながら、そ の辺は検討していただきたいと思います。 ○勝部会長 いまの要望も入れていただきまして、次回の部会で少し整理 していただければと思います。次に、先般行われた事業仕分けについて事 務局から報告をお願いいたします。 ○畑中勤労者生活課長 昨年11月に、勤労者退職金共済機構に関しての 事業仕分けがありました。これは、直接本日の議題に関わることではあり ませんが、勤退機構という、この制度の運営主体に関わることであります ので、一応ご報告だけさせていただきます。    事業仕分けでは2つの指摘がありました。1つは勤労者退職金共済 機構に対する運営費交付金を廃止せよという指摘です。この理由は、勤退 機構には4兆円もの運用資産があるので、それの運用をうまくしていけば、 運営費交付金は従来30億円ぐらいですので、その30億円ぐらいは賄え るのではないかという発想でした。    基本的に多くの独立行政法人が運営費交付金で運営しているという 状況があります。また、中退制度が国の制度であるということをしっかり 担保していかないといけないという意味でも、運営費交付金の廃止はいろ いろ問題があるところであります。    私どもとしては、運営費交付金廃止ということであれば、その代わ りとして国としての制度を担保していく意味で、制度運営についての一定 の支援はまた別の何らかの形でやっていく必要があると考えております。 従来、運営費交付金の30億円は一般会計から支出しておりましたが、新 たに労働保険の特別会計から約15億円、これは運営費交付金の約半額に なりますが、これについて事務的経費の補助という形で、勤退機構に対し て補助したいと考えております。これによって国の制度としての担保をし ていきたいと思っております。    事業仕分けで問題になった2点目は、機構本部ビルの移転について の問題です。機構本部ビルというのは、私どもの中退制度において不動産 の資産として勤退機構のビルを所有しておりますが、これのあり方につい て今年度までに結論を出すようにと言われております。この点については、 仮にこの資産を売却するということも考えられるわけですが、売却をして 金銭に換えて、その金銭を運用したときの利益。いま勤退機構が事務所と して使っておりますけれども、その事務所として賃料相当の利益が出てお ります。それとの比較衡量をしっかりやった上で結論を出していきたいと 考えております。 ○勝部会長 よろしいでしょうか。 ○鈴木委員 その他で未払いの件です。前回のときに、どういう状況にな っているのだと、その額的な部分を含めてクリアにしていくということで した。その辺の部分についてはどのような経過になっていますか。 ○畑中勤労者生活課長 いわゆる未請求問題に関しては、次回しっかりと いまの現状について、勤退機構のほうから、この場でご報告をしたいと思 っておりますので、ご了承いただければと思います。 ○鈴木委員 わかりました。ということは3月の頭ということですか。 ○畑中勤労者生活課長 はい、次回の3月にご報告したいと思います。 ○勝部会長 いまの点について、ほかにはよろしいですか。よろしければ、 本日はこれで終了いたします。最後に本日の議事録署名委員として、宮本 委員と布山委員にお願いいたします。本日は、これにて散会といたします。 どうもありがとうございました。  照会先:厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部 勤労者生活課 企画係 (内線5376)