09/09/14 第41回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録 第41回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日 時 平成21年9月14日(月)14:00〜15:40 2 場 所 経済産業省別館1042号会議室(10階) 3 出席者 [委 員] 市川委員、市瀬委員、臼杵委員、勝委員、 高橋(均)委員、高橋(寛)委員、 布山委員(代理:新田氏)、林委員、松本委員、 宮本委員、室川委員、山川委員       [事務局] 八田勤労者生活部長、畑中勤労者生活課長、            瀧原勤労者生活課調査官、鈴井勤労者生活課長補佐        4 議 題 (1) 部会長及び部会長代理の選出について (2) 中小企業退職金共済制度の現況及び平成20事業年度決算について (3) 特定業種退職金共済制度における退職金額に係る利回りの見直しの    検討について (4) 建設業退職金共済制度における検討の課題について (5) 「中小企業退職金共済制度の加入対象者の範囲に関する検討会」報告書 について(報告) 5 議事内容 ○畑中勤労者生活課長 定刻になりましたので、ただいまから第41回「労働政 策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会」を始めます。  本日は委員の皆様の改選後初めての当部会の開催となりますので、部会 長が選任されるまでの間、勤労者生活課長の私、畑中が議事進行をさせて いただきます。本日は、小林委員、西村委員、鈴木委員、布山委員が御欠 席でございます。布山委員の代理としまして新田秀司様に御出席いただい ております。また、高橋均委員は所用により、途中で御退席と伺っており ます。  それではまず、当部会の委員となられました皆様について、名簿の記載 順に沿って紹介をさせていただきます。まず臼杵政治委員ですが、少し遅 れていらっしゃるようです。新任の勝悦子委員でございます。小林麻理委 員、西村万里子委員は本日は御欠席です。山川隆一委員です。本日は御欠 席ですが、鈴木辰男委員です。高橋均委員です。高橋寛委員です。林裕司 委員です。宮本礼一委員です。市川隆治委員です。市瀬優子委員です。本 日は御欠席ですが、布山祐子委員です。本日は代理の新田秀司様に御出席 いただいております。松本房人委員です。室川正和委員です。勝委員は、 これまで御活躍いただきました伊藤庄平部会長の後任として御参加いただ いております。  次に、事務局の紹介もさせていただきます。夏の異動で勤労者生活部長 に八田が就任しております。勤労者生活課長に私、畑中が就任いたしまし た。どうぞよろしくお願いいたします。事務局を代表いたしまして、まず 部長から一言御挨拶を申し上げます。 ○八田勤労者生活部長 八田でございます。今日はお暑い中を御参集いただき まして、ありがとうございます。委員の皆様方には、勝先生には今回新た にということでございますが、他の先生には引き続きこの難しい課題につ きまして、御審議のほどよろしくお願いいたします。去年の今日までは、9 月等についての悪夢の日といえば、September elevenだったわけでござい ますけれども、ちょうど1年前の9月15日にリーマンショックがありまし て、9月11日とは違う意味ではございますが、また新しい大きな悪夢が発 生いたしました。それから御覧のように日本経済は、おそらく、かつてこ れ程の急落は経験したことはないのではないかというぐらいの急落をいた しまして、それが今日、これから御報告をする、そして御審議いただくテ ーマにも色濃く反映をしております。  そういう厳しい状況の中で、先が明るいのが少し見えてきたかなと、ま だ、ただ安心できないという中で、我が国は先般の選挙の中でいよいよ政 権交代という大きな変化も起きてまいります。その中で、私どもも引き続 き一所懸命皆様方のサポートをさせていただきますので、引き続き御指導 御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。  ○畑中勤労者生活課長 それでは引き続きまして、議題(1)にございます「部 会長及び部会長代理の選出について」に移らせていただきます。部会長の 選出につきましては、お手元の資料1−1「労働政策審議会令」の第7条 第6項に、「部会に部会長を置き、当概部会に属する公益を代表する委員 のうちから、当該部会に属する委員が選挙する」となっております。審議 会令上「委員」とは、労働政策審議会の本審の委員を指しております。当 部会におきまして、「公益代表たる本審の委員」でいらっしゃるのは、勝 悦子委員お一人ですので、審議会令の規定により勝委員に部会長をお願い することとなります。それでは、以後の議事進行につきましては勝部会長 にお願いいたします。 ○勝部会長 いま御指名いただきました、明治大学の勝と申します。実は私、 この部会に数年前まで所属しておりまして、利回りの改定であるとか、あ るいは剰余金の配分とか、いくつかの構造変化を見てまいったわけですが、 先ほど部長からも話があったように、1年前のリーマンショック以降急激 な運用環境の変化ということで、この中退共を取り巻く環境も非常に大き く変化しているかと思います。微力ではございますが、少しでも貢献でき ればというふうに思っています。どうぞよろしくお願いいたします。  では次に、部会長の代理の指名に移らせていただきます。部会長代理の 選出につきましては、お手元の資料1−1にございます労働政策審議会令 第7条第8項に「部会長に事故があるときは、当該部会に属する公益を代 表する委員又は臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、そ の職務を代理する」という規定がございます。この審議会令の規定に基づ き、委員改選前から当部会の部会長代理をされておりました山川委員を、 引き続き部会長代理に指名いたしたく存じます。山川委員どうぞよろしく お願いいたします。  それでは、議題(2)の説明に移らせていただきます。議題(2)にご ざいます「中小企業退職金共済制度の現況及び平成20事業年度決算につい て」を事務局から説明をお願いしたいと思います。 ○畑中勤労者生活課長 それでは、お手元の資料2を御覧いただきたいと思い ます。2−1「中小企業退職金制度の現況」。1枚めくりますと、中小企 業退職金共済制度の現況の一覧表がございます。まず「新規加入状況」で す。20年度が2万1,827人、一般が1万5,482人、建設業が6,269人とい うことで、経年的に見てまいりますと、やはり新規加入状況は徐々に減っ てきているという状況が窺えるかと思っております。  「在籍状況」ですが、こちらも20年度におきまして全体で56万7,354 人、一般の中退については37万3,774人、建設業につきましては18万7,756 人。これは、会社・事業社数になりますけれども、やはり経年的に減少傾 向にあるということがおわかりいただけるかと思います。  ただ、被共済者数については20年度が579万5,396人、特に一般が295 万1,352人ということで、若干一般中退が19年度に比べると被共済者数と いう点では増えておりますが、これはおそらく適格退職年金からの移行の 方々が要因となって、若干被共済者数が増えているということではないか と推測されるところであります。  次の頁は、退職金等支給状況です。20年度件数として40万4,223件とい うことで、19年度に比べましてやはり増えております。これは、定年退職 者の増加というのが要因ではないかと考えられるところです。  次の頁の4は、一般の中退の平均掛金月額で、20年度は9,296円です。 ご案内のように、一般の中退の掛金は法律で5千円〜3万円の間で決まって おりますが、平均は9,296円ということです。5「特定業種退職金共済制 度の掛金日額の状況」は、310円、300円、460円とここ数年変わっており ません。6「資産運用状況」ですが、20年度が4兆1,789億円ということ で、19年度に比べて全体としてもやはり資産状況が悪化しているわけです。 一般だけ見てみましても3兆3,056億円ということで、前年度よりもやは り運用状況が悪化しているという状況です。建設業についても然りです。 ここ1、2年の経済環境の悪化が、こういったところで現れていると考えて おります。  次が、一般中退の資産の運用状況です。平成19、20事業年度の平均運用 利回りは、平成19事業年度は−2.95%、平成20事業年度が−4.88%とい うことで、かなり平均の運用利回りが悪化している状況です。  次が建設業退職金共済事業における資産運用状況ですが、やはり平成20 事業年度の平均運用利回りで、給付経理においても−2.33%、また特別給 付経理でも−3.03%ということで、やはり利回りが悪い状況になっており ます。  次が清酒製造業退職金共済事業における資産運用状況。こちらも平成20 事業年度の平均運用利回りは、給付経理はやはり−1.88%になっています。 特別給付経理につきましては、実は100パーセント国内債券で運用してい るということもあり、1.13%になっております。  林業の退職金共済事業、こちらもやはり平均運用利回りが平成20事業年 度は−0.12%になっております。  資料2−2ですが、勤退機構の決算の概要です。次の頁に総括的な貸借 対照表と損益計算書がございますが、4つの事業をまとめてありますので、 それぞれの事業について御覧いただいたほうがよろしいかと思います。次 の頁が、一般の中退の貸借対照表と損益計算書になっております。損益計 算書の下を御覧いただきますと、当期総損失が1,930億円の損失が出てお ります。このおかげで、上の貸借対照表の繰越欠損金合計のところも、や はり3,486億円ということで欠損金が増加したわけです。  次が建設業の貸借対照表と損益計算書ですが、損益計算書の当期総損失 が373億8,100万円の損失が出ております。このおかげで、利益剰余金も やはり減少いたしまして、現在は485億円という形になったわけです。  清酒製造業の退職金共済事業ですが、こちらは逆に1億1,600万円の利 益が出ております。実はこれは、損益計算書の運用費用等と掛金収入等の ところで、運用費用等が1億6,700万円に対して、運用収入等が5,700万 円ということで、実質的には運用で損失が出ております。しかしながら、 責任準備金戻入が約6億2,600万円ございましたので利益が出たという状 況です。貸借対照表のところで、清酒については利益剰余金が現在11億 4,300万円ございます。  最後に林業退職金共済事業です。損益計算書の総損失が1億3,700万円、 繰越欠損金も14億9,100万円ということで、やはり欠損金が増えた状況で す。資料の説明は以上です。 ○勝部会長 ここまでのご説明について、何かご意見、ご質問等はありますか。 ○高橋(寛)委員 4枚目、3「退職金等支給状況」です。建設業1件当たり の支給金額がデコボコしているのですが、清酒、林業がかなり少なくなっ て、その前の資料の2「在籍状況」をご覧いただくと、契約者数も被共済 者数も随分減っております。この辺の原因についてどのように捉えられて いるのか、もしわかったらお聞かせください。 ○畑中勤労者生活課長 共済契約者数の減少については、経済環境の悪化とい ったところが大きな原因かと推測しています。退職金額の減少傾向は、確 かに清酒、林業、この辺りは減少傾向にはありますが、この辺りの要因は 正確なところはまだ分析できていません。 ○高橋(寛)委員 支給金額が減少しているのは、掛金納付月数が短くなって いると思うのです。それはとやかく言うことはないのですが、3の(注2) を御覧いただいても、例えば林業だと、昨年は退職金受給者の平均掛金納 付月数は、124月だったものが101月になっているということです。労働環 境、就業条件、業界自体がどうなっているのかは、精査したほうがよろし いのではないかという思いがします。 ○畑中勤労者生活課長 今御質問の点については、いま一度よく調べて回答し たいと思います。 ○勝部会長 このほかに何か御質問、御意見等はありますか。一般中退は平成 20年度で欠損金は3,486億円と、これは総資産の大体10%強の数字だと思 うのです。これは利回りが相当悪かったということがあるかとは思うので すが、2年ぐらいで急激に損失が増えたという理解でよろしいですか。 ○畑中勤労者生活課長 ここ2年ぐらいで増えている状況だと思います。全般 的にそういう状況かと思います。 ○勝部会長 それまではたしか当期損益という形で、プラスでしたよね。 ○畑中勤労者生活課長 そうです。 ○鈴井勤労者生活課長補佐 平成17年度と平成18年度については、着実にプ ラスになり解消が進んでいたところですが、平成19年度と平成20年度で 欠損金が増えてしまったところです。 ○勝部会長 ほかに御質問、コメント等はありますか。次の議題に移らせてい ただいてよろしいですか。議題(3)ということで「特定業種退職金共済 制度における退職金額に係る利回りの見直しの検討について」ですが、こ れについて事務局から御説明をお願いします。 ○畑中勤労者生活課長 お手元の資料3を御覧ください。特定業種退職金制度 の利回りの見直しの検討の一連の資料ですが、資料3−2から御覧いただ きたいと思います。「特定業種退職金共済事業給付経理における財政状況 の推移」の資料です。「建設業退職金共済事業における退職金額に係る利 回り等の推移」という表がありますが、こちらで累積剰余金の推移を御覧 いただきたいと思います。上が給付経理ですが、平成18年度に累積剰余金 821億円ありましたが、平成20年度において351億円に減っています。こ の間の運用利回りの悪化が、こうした累積剰余金の減少という形で現れた ものです。  次の頁、清酒製造業の状況です。平成20年度の当期損益金ということで、 こちらが1億1,500万円の利益が出ている形になっています。これは責任 準備金の積下ろしによる利益で、そのおかげで累積剰余金も8億円から9 億円に増えている状況です。  林業の退職金額の利回りの状況です。平成20年度の損益は−1億3,800 万円ということで、累積欠損金も1億円増えて15億円という形になってい ます。以上が、累積剰余金、累積欠損金の状況です。  資料3−3を御覧ください。「ベンチマーク収益率の推移」です。これ はベンチマーク収益率の推移ということでグラフが出ています。外国株式、 外国債券、国内株式、国内債券、それぞれの収益率の推移です。これを御 覧いただいてもおわかりのように、平成20年度において大幅な収益率の悪 化が窺えるところです。  資料3−4です。こうした経済状況を受け、私どもは将来推計について 推計のやり直しを行ったところです。本日は、推計をやり直した結果につ いて御説明申し上げたいと思います。  予定運用利回りですが、御案内のように、現在、建退共については2.7%、 清酒については2.3%、林業については0.7%です。それぞれ推計に当たり その前後、例えば建退共であれば3.5%と2.0%、清酒であれば3.0%と 1.5%、林業については1.0%と0.5%という形で仮定の利回りを設定しま した。さらに、3「運用収入」についても、3つの経済シナリオで推計を 行ったところです。それぞれメインシナリオ、楽観シナリオ、悲観シナリ オ、この3つで推計を行ったところです。  推計結果については、次の頁から詳しく載せています。表の見方は、建 退共の将来推計ですが、メインシナリオを前提とすると、例えば2.0%の利 回りでやってまいりますと、平成21年度以降はすべて単年度で黒字が出て いくという形です。同じくメインシナリオであれば2.7%であっても、平成 21年度以降は黒字と。ただ、3.5%にすると、平成22年度以降は単年度で 赤字が出てくるといった推計になります。また、いちばん下の悲観シナリ オを御覧いただくと、2.0%であれば平成22年度以降は黒字になりますが、 現行の2.7%では平成23年度まで単年度の赤字が続き、平成24年度から単 年度の黒字になっていくといった状況があります。また、悲観シナリオで あると、3.5%に上げると、単年度の赤字が続いていくといった状況があり ます。  清酒の将来推計です。メインシナリオですと、1.5%であれば平成21年 度以降は単年度の黒字、2.3%も平成21年度以降は単年度の黒字になりま すが、3.0%であると平成22年度以降も単年度の赤字になっていくと。清 酒の場合の悲観シナリオで見ると、1.5%であれば平成22年度以降は黒字 ですが、2.3%、3.0%であると単年度の赤字が続いていくといった状況で す。  林業です。林業についてもメインシナリオであると、0.5%、0.7%、1.0%、 いずれにおいても平成21年度以降は単年度の黒字になりますが、悲観シナ リオで御覧いただくと、0.5%、0.7%であれば単年度の黒字ですが、1.0% であれば単年度の赤字になるといった将来推計になったところです。その 次の頁以下はいま申し上げたところを詳しく表にしたものですので、こち らは説明を割愛します。  資料3−1は「検討に当たっての論点」をまとめたものです。建退共で すが運用状況です。退職金額に係る利回りが2.7%ですが、運用利回りは平 成19年度が−0.56%、平成20年度が−2.33%ということです。また、財 政状況についても、821億円あった累積剰余金が、この2年間で351億円に 減少したといった状況があります。  こうした状況を踏まえて、利回りに関しての事務局としての考え方です。 こうした経済状況の中ではある程度現状程度の累積剰余金、351億円ですが、 この程度の累積剰余金を確保しておくのが望ましいのではないかと思って います。ということを考えると、単年度で均衡する水準でないとまずいの ではないかと。先ほどの悲観シナリオを御覧いただくと、大体2.7%であれ ば、悲観シナリオにおいても最初の2,3年間は単年度で赤字になります が、5年間を通して概ね均衡していくという水準かと思いますので、現行 の2.7%を維持するのが望ましいのではないかと事務局としては考えてい ます。  清酒です。こちらの運用状況は、現在、運用利回りが2.3%ですが、運用 状況としては平成19年度が−0.14%、平成20年度が−1.88%ということ です。ただ、清酒については、財政状況として9億円の累積剰余金があり ます。実は清酒の資産規模が大体63億円あり、それに対しての累積剰余金 が9億円ということです。かなり資産に対しての累積剰余金の規模が大き いと、1割以上の累積剰余金ということです。建退だと、大体8,600億円 ぐらいの資産に対して480億円ということですから、それに比べて累積剰 余金が大きいということを考えると、清酒についてはメインシナリオを前 提として運用を考えてもいいのではないかと思っています。先ほどの表を 御覧いただくと、メインシナリオにおいて単年度欠損金を生じない水準と すると、2.3%という現行の水準が適当ではないかと考えています。  最後に林業です。林業についても、0.7%の利回りに対して運用状況とし ては−0.12%です。しかも林業については15億円の累積欠損金があり、な かなか欠損金の解消計画のとおり推移していない状況を考えると、累積欠 損金の解消を進めると。それには単年度で利益を出していかないといけな いということになるわけですが、悲観シナリオを前提とすると0.7%であれ ば何とか利益が出ていくと。0.5%であれば確かにもっと利益は出てくるわ けですが、0.7%はかなり利回りの水準としては低い水準ですので、それ以 上下げるということになると、制度としての魅力も損なっていくのではな いかと考え、現行の0.7%を維持するのが適当ではないかと事務局として考 えたところです。 ○勝部会長 特退共それぞれについての現状、3つのシナリオに基づく将来推 計、事務局の考え方と3つお話があったと思いますが、ここまでの御説明 について何か御意見、御質問はありますか。  3つの経済シナリオは、どういった予想に基づくものですか。つまり、 例えばGDPは何パーセント、認定は何パーセントなど、そういったものに 基づいてそれぞれ債券、株式等の数値を出したものか、この辺の経済シナ リオのベースが何かを教えていただければと思います。 ○鈴井勤労者生活課長補佐 機構は金融機関に運用を委託しており、その委託 運用先の3社にこのあと5年間の経済状況を予測していただき、それで推 計をいただいた期待収益率と標準偏差を基にメインシナリオを作っていま す。委託先が推計した国内債券、国内株式、外国債券、外国株式という4 資産の期待収益率の平均をメインシナリオにしました。  悲観シナリオについては、まず、期待収益率とリスクという2つの要素 を基にして、どの程度の収益率がどのような確率で起こるかについて正規 分布を作成しました。一般に正規分布では生起する事象が、期待収益率を 中心に標準偏差の−1倍から+1倍の中に約68%が収まることになっていま す。逆に言えば、それより収益がよくなる場合と悪くなる場合がそれぞれ 16%ずつということです。収益は相当よくなる場合が絶対に起こらないと いうふうに設定すると、相当悪くなる場合が5年に1回発生するという確 率分布になります。将来推計は今後5年間を見通して作成するものですが、 その5年間のうち4年間は通常の変動の範囲内で、1年は運用が相当悪く なったということを想定したのが悲観シナリオです。楽観シナリオについ ては、これと逆に相当悪くなる場合が発生しないものとして、今後5年間 を見通して、そのうちの4年間は通常の変動の範囲内で残り1年が相当よ くなるということを想定したシナリオです。 ○高橋(寛)委員 ただいまの議題について検討をするということで、いつご ろお決めになりますか。 ○畑中勤労者生活課長 事務局としては、今日いろいろ御議論いただいた上で、 次回において最終的には決定していきたいと考えています。 ○高橋(寛)委員 11月ごろ、12月ごろですか。 ○畑中勤労者生活課長 10月下旬ぐらいにできればと思っています。 ○勝部会長 これは毎年やっているということですか、それともある一定期間 のですか。 ○畑中勤労者生活課長 利回りの検討は5年に一度ということで、ちょうど今 年が特退共の利回りの見直し時期となっています。 ○勝部会長 追加資料等でも、何か必要なものがあれば言っていただいても構 いません。何か御質問、御意見はありますか。 ○山川部会長代理 質問というか、こう考えてよろしいのかということです。 いまの御説明ですと、シナリオは客観的な経済状況や金融市場などの状況 で決まるかのようにも思えるのですが、そうなると制度ごとにこのシナリ オを取ると決めることをどう考えるかです。そこは経済状況のほかに剰余 金や欠損金などの状況も照らして、その制度についてどの程度リスクを方 針としてとり得るかも考えられるので、例えばある程度リスクが取れる状 況にあれば楽観というか悲観的ではない方向に行くし、リスクがいろいろ 厳しいと思うということ、いろいろな政策的なことを考えれば悲観的な方 向を取ると。シナリオのどれを取るかは、政策判断としていろいろな状況 によって、したがって制度によっても異なり得ると、そういう理解でよろ しいですか。 ○畑中勤労者生活課長 はい、おっしゃるとおりです。今回、考え方の中でメ インシナリオを取ったのは清酒だけです。清酒については、先ほども申し 上げたように資産に対しての累積剰余金の規模が相対的に大きいものです から、ここはある程度リスクを考えてもいいのかということで、悲観シナ リオではなくてメインシナリオを前提に考えたわけです。 ○勝部会長 これは次回に、この案で審議して決定するということでよろしい ですか。                  (異議なし) ○勝部会長 その次の議題に移ります。議題(4)の「建設業退職金共済制度 における検討の課題について」ですが、これについて事務局から御説明を お願いします。 ○畑中勤労者生活課長 資料4が建退共の検討の課題についての資料です。こ の問題についてもここ3回ほどご議論をいただいてきたと承知しています が、議論の状況についてお手元の資料4−1ということで、これも前回お 出しした資料、基本的には前回お出しした論点の整理のペーパーではあり ますが、またここに付けています。  部会の共通認識として、これまでの3回の議論の中でほぼ共通の御理解 を得られたと思っているのが、累積剰余金の発生要因です。累積剰余金の 発生要因として、一方で勤続期間が短かったことによる退職金の不支給の 問題、これが累積剰余金の発生要因ではないかという議論もあったわけで す。こちらは累積剰余金の発生要因というものと、いま申し上げた勤続期 間が短かったことによる退職金の不支給と、直接の要因ではないのではな いかと。それと切り離した議論をしたほうがいいのではないかといったこ とについては、ほぼ前回までのところでご理解いただいたところかと思っ ています。  なお、累積剰余金の発生要因としては、論点の2ポツ目に書いてあるよ うに、平成15年の将来推計において見込んでいた運用利回りと実際の運用 利回りとの差ではないかといったところです。  それぞれの賛成意見、反対意見が2頁で書いてありますが、この中で前 回の資料から1点付け加えたところが「現行制度の考え方・趣旨」の2つ 目のポツです。一般に退職金の性格は、制度を解釈することより導かれる ものであると。退職金の性格というところから、逆に制度設計の結論を得 るのは難しいのではないかと。これは前回、山川部会長代理からご指摘の あった点を論点としてここに付け加えたところです。その他賛成意見、反 対意見、これまで出てきたところを整理したところです。  いまほど申し上げた新たに付け加えたところで、退職金のもともとの制 度についての制度趣旨というか、これについて確認する意味で資料4−2 を付けたところです。「建退共制度の創設の経緯」ですが、制度創設は昭 和30年代後半です。経緯としては、建設業を魅力ある職場とすることによ り、数多くの若者を入職させて長く定着させることが必要と、そういう認 識のもとに業界としての退職金である本制度が創設されたということです。  「建退共制度の趣旨」は、以上の創設の経緯から、職業的生涯を通じて みれば、建設業という1つの業種に専属的に就労している労働者について 設けられた、業界退職金共済制度であるということです。  「不支給期間がより長いことについて」は、対象従業員が建設業で従事 する期間が一般の中小企業退職金共済制度における常用労働者の一企業に おける勤務期間に比較して、通常はより長期間であると考えられることか ら、不支給期間を一般の中小企業退職金共済制度より長くするとともに、 これによる差額を長期勤続者に振り向け、その優遇措置を講じたというと ころです。  こうしたことから「建退共制度の機能」としては、この制度は建設業を 魅力ある職場とすることによって、建設業界としての技能労働者の定着促 進の機能を果たすことが期待されていると思っています。参考4−1以下 も前回までに提出した資料ですので、説明を省略します。 ○勝部会長 この議題についてはすでに3回ほど御議論されていたと聞いてい るので、いま御説明にあった追加部分も含めて何かご意見、ご質問があれ ばお願いします。 ○林委員 前回も前々回も申し上げて、すでに聞き飽きた方もいらっしゃるか もしれませんが。先ほどの資料にあるとおり、建退共の平均支給額が大体 93万円、109月という数字が出ていました。その辺が平均だとすると、制 度の想定としては20年、30年長く勤めた人が有利になるという制度の性格 だと思うのですが、実際、10年前後で退職金をもらう方が圧倒的に多い、 これは現実の数字だと思います。  その中で、これは厚生労働省から前回出された資料にもありましたが、 例えば1年分の証紙を貼るためには平均して1.5年ぐらい働かなくてはい けない、そういう実態があるわけです。そうすると、2年分の証紙を貼る ためには実際に最低でも3年ぐらい働かないと対象にならない。昨今、特 に建設業は仕事がないので、この制度はたしか退職金の支給算定が1ヶ月 で21日分ですよね。証紙21枚分で1ヶ月とみなすということです。例え ば、いまうちの組合員の平均を取っても、平均で働いているのは大体、月 10日ぐらいです。それはまた倍になってしまうわけです。  これは全体の数字で明らかですが、建設業の就業者数のピークは1997年 (平成9年)、このとき685万人いました。バブルが崩壊してからしばら くはまだ建設業は、産業は成り立っていたわけですが、今年6月現在も506 万人、おそらく8月、9月には500万人を割るだろうと。ものすごい率で 離職しているわけです。入口、つまり建設業産業を魅力あるものにしよう ということでいろいろな運動をしたりしているし、また室川委員のところ と話合いなどをしてできるだけ多くの力を得ようと思っていますが、現実 は現実で、本当に1年間で30数万人の人が建設業を離れていくと、こうい う実態があるわけです。  そうすると、現実の不安を解消する、老後の不安よりも現実の不安を解 消する。建設業を離れたときに建退共があることを思い出して、もちろん 建設業を辞めるということで建退共の受給理由になるからあるわけですが、 そこら辺がどんどん建設業界に入ってから離職するまでの期間が短くなっ ていることが現実にあるので、不支給期間についてももう少し、いま24ヶ 月ですが、それをせめて12ヶ月ぐらいの割に縮小していただけないかとい うことです。  今日、私はたまたま持ってきたのですが、これはうちの組織で作ってい るパンフレットですが、2種類あります。ここにきちんと情報公開しなく てはいけないわけですから、「24ヶ月分の証紙を貼らないと退職金は出ま せん」と書いてある。これを見た人が「何だよ」と入らないというケース があるのです。この間も各県でヒアリングをしたら、結構多いらしいので す。  特にこれは一人親方用のパンフレットですが、これはどういうことかと 言うと、自分で掛金を払って自分で退職金をもらうという制度です。例え ば、自分が23ヶ月だと15万円弱ぐらい持ち出したけれども、結局、一銭 もないというのは、あまりにも理不尽ではないかということを含めて、建 設業退職金制度は魅力があるということは、実は室川委員のところと同じ 団体に入っていますが、日本建設業団体連合会が今年4月に「建設技能者 の人材確保・育成に関する提言」を出され、このままでは建設業は崩壊し てしまう。近い将来、建設業は産業として成り立たなくなる恐れがあると 書いてあり、その中の重点項目として「建退共制度の拡充」が入っており ます。業界の方も建退共制度をもっと拡充して一層魅力ある制度にしてい こうという趣旨で、全くその趣旨は同じだと思うので、是非とももう一歩 踏み込んで、不支給期間の見直しについても御検討いただければと思って います。 ○室川委員 いま林委員からお話がありましたが、建設業界における状況は林 委員と同じ認識だと思っています。最近の公共事業の大幅な削減、それに 伴い地方の財政状況も非常に逼迫しており、公共事業は大変削減されてい る状況です。そのような状況の中で価格競争が非常に激化して、経営的に は利益率が非常に減少しており、危機的な経営状況にあるという状況です。 全建の会員企業だけ見ても、ピーク時には3万3,000社あったものが、直 近では2万1,000社まで会員企業が減っている状況です。  そういう状況にありながら、先ほど林委員からもお話がありましたよう に、労働者の福祉の充実ということでいままで経営者としても努力をして きたわけで、それなりの成果を上げてきていたのではないかと思っていま す。業界を取り巻く環境は非常に厳しいものでありますが、今後とも労働 者の福祉向上のためには、是非ともこの制度が安定的に運営される制度に していかなくてはいけないのではないかと思っています。  つきましては、林委員のこともありますが、揚げ足を取るわけではない ですが、掛金は労働者負担ではなくて経営者が払っているという理解でよ ろしいですか。そうですね、雇用保険みたいに労使で折半しているという 意味ではないですね。そういう状況です。今後も優秀な技能労働者を確保 して生産性を向上していくことを考えると、いま大幅な改革をするのでは なくて、今の制度でやっていくのが妥当ではないかと思っています。 ○高橋(寛)委員 事業主が掛金を納めるにしても、事業主の方は我が企業に 入ってきた方に対して払いたいのであって、2年以降、計算でいうと24ヶ 月以降働いている皆さんに、総じて業界の皆さんに原資をばら蒔きたいと 思っている人は少ないと思っています。当然、私たちは労働組合ですから、 林委員も言いましたが、格差があり過ぎてしまって、これからずうっと雇 用が継続、昭和30年代以降、東京オリンピック以降はものすごい建設業が 旺盛でしたので、そうであればいいのですが、いまみたいに非自発的に辞 職をせざるを得なければならない方、こういう方のところに、例えば建設 ですと1年間で310円×250日分、これが掛捨てになってしまうのです。大 体24ヶ月だとこの倍になってしまう。つまり、一時金でもいいから7万円、 8万円、1年間分は大切な費用で、それは本人に渡って、これが非自発的 か自発的かはまた別問題にして、本人に渡って生活の足しにしなければい けないと私は思っています。  そこで、建設業界に24ヶ月以降、在籍できるという担保があればいいの ですが、いまはどうもそういう状況ではない。1993年以降、市区町村の財 政投資は半分になっているのです。おっしゃるとおりその中で公の契約は 単価が随分下がってきて、実は林業もそうです。年収で平均200万円です。 業界から去っている人が多いのです。それにもかかわらず、生活できなく て、仕事がなくなって辞めなければいけないことになってしまうのです。 そこに2年間、建設業でいうと3年間いなければもらえないというほうが、 非常によくない。建設業界にとっては、間口を狭めている。要するに魅力 のない業界になっているのではないかということは、いままでも申し上げ てきたとおりです。受け取り方が違えばいろいろあるでしょうが、私ども はそのように考えています。  ですから、例えば退職金制度がありますと、24ヶ月分証紙を貼らなけれ ば、つまり3年間あなたはこの業界に在籍しないと退職金が出ないのです よと言ったときに、業界に果たして入ってくるかという思いもあります。 以上です。 ○室川委員 高橋委員のお話もわからないわけではないのですが、経営者とし てみれば少しでも雇用の維持というところに努力をして、長くいてもらっ て、まず経営が安定した上で、なおかつ退職金制度も安定した制度として ある中で、やはり長期に業界に留まってもらうという、当初のこの共済退 職金制度というものを、しっかりやっていかなければいけないのではない かと思っています。いま高橋委員がおっしゃるような議論は、退職金共済 制度で議論するのではなくて、もう少し、非自発的に辞められた方であろ うとも、退職に係るところの生活補償的な意味合いでの制度ということで、 議論をすべきではないかと思います。 ○勝部会長 先ほど室川委員が言われたように、掛金は企業が負担するという ことで、例えば退職金の掛金給付月数の緩和は、かなり企業の経営上にも 影響が出るというようにお考えだということですね。 ○室川委員 はい。 ○高橋(均)委員 支給を短くするしないは、別に企業の経営の問題とは関係 ないでしょう。 ○室川委員 それは、いまある剰余金なりで賄う制度にしていけばそうかもし れませんけれども、仮に長期に働いた方の給付を手厚くするという制度を 守りながら、不支給期間を短くするということは、それなりの財源がたぶ ん必要になってくるのです。その分はどこで賄うのかという議論になるの ではないでしょうか。即掛金にかかわらないで、財源が賄えればいいです よ。 ○松本委員 いずれにしましても財布が1つで運用している話ですので、当初 のできるだけ長く能力を持っている方に働いてもらう、そのために手厚く するという考え方でこの制度を前向きに回していきたいという考え方と、 短くしてでも入る人をたくさん入れようという考え方と、本来はやはり前 者のほうではないかなという気がいたします。こういう経済情勢になって いて、財源がいっぱいあればいろいろな考え方ができるかと思うのですが、 なかなかこういう状況ですと、どっちを優先させるかという部分を取るべ きではないかなという気がします。 ○宮本委員 私どもの業界は建設業と直接関係はありませんが、高構造のビル ですとか、橋の橋梁、建材のサッシ、建具などを作っている業界です。製 品を供給していいものを作ってもらうということで言えば、良質な労働力 が安定的にそこに雇用される会社、企業があってほしいと思っています。  一方でこの制度は、労働の尊厳とか公正なワークルールという観点から 言うと、最低限の制度といいますか、確保する部分だろうと思います。さ らに、その企業にとって優秀な労働力を確保するということになれば、お そらくこの退職金制度ではすまないわけで、2階建、3階建の企業年金制 度だとかいろいろな退職金制度があっていいと思います。そういう意味で 言うと、一番ベースになる部分ですから、多様な雇用形態とよく言われま すけれども、裏返して言えば日雇派遣だとか、そういうような人たちもた くさんこの業界にはいらっしゃる。そういう人たちの雇用あるいは生活を 守るという立場で言えば、やはり財源は一方であるかもしれませんけれど も、さらにこの制度をいいものにするための検討は、しっかり進めていっ てもらいたいと思っています。 ○高橋(寛)委員 前回のこの部会でもそんな話があったのでしょうか。法律 的には清酒、林業も含みますので、例えば換算日数も平成12年の改正以降、 就業実態を見て改正したのですが、議論もおそらくしていない状況なので はないかなと思います。先ほどもそうなのですが、昭和30年代後半ですと か、平成12年ですとか、就業実態、形態、働き方、法律も変わってきます ので、これは建退だけで済まない問題だと思っていますので、別な議題と してもう1回議論したほうがいいと思います。以上です。 ○山川部会長代理 いまの話とも若干関連いたしますが、資料4−2の2枚目 にある、趣旨と機能のところの3「不支給期間がより長いことについて」 という説明の中で、建設業対象の従業員が、これは建設業界でということ だと思いますが、そこでの従事期間が一企業の勤務期間、これは業界では なくて企業ということで、若干比較が難しいかもしれませんが、「通常は より長期間であると考えられる」と出ております。これは随分昔の話なの で現在どうなっているか。もし何かデータがあれば調べていただきたい。  先ほど来議論がありましたが、差額を振り向けるということですから、 逆に言えば、いわゆる不支給期間を短くすれば、もし掛金が一定であると すれば差額を振り向けるという措置はとらない。そういう選択をすると、 どちらの方向になるのか。掛金を上げるという選択か、上げないで分配を 変えるという選択にするのか考える必要があるということでしょうか。  それともう1点、もしわかればということなのですが、その2枚あとで す。林委員からお話があった、12ヶ月の更新が実態は18ヶ月と。そのお話 と先ほどのお話が直接同じことなのかどうかわかりませんが、その関係で 就業日が違ってきている。これは手帳の更新に時間がかかるという全く事 務的な話なのか、あるいは就業日自体の減少によるのか、その辺りも原因 がもしわかるのであれば教えていただきたいと思います。2点ほど実態が わかればと思っております。 ○畑中勤労者生活課長 いま、山川委員からのご質問で、1点目と3点目の実 態としてどうなっているのか。的確な資料があるのか、いまの段階ではは っきりしませんが、なるべくこの実態がわかるような資料を探したいと思 います。  2点目のお話ですが、不支給期間を短くすれば、それだけ長期勤続者の 方に振り向けている分は、当然いまの状況ですと低くせざるを得ない状況 ではあります。かつて不支給期間を3年から2年にしたことがあるわけで すが、そのときは実は経済状況も結構よくて、長期勤続者の方の支給を減 らさないで基本的に維持するか、むしろプラスになるぐらいで、不支給期 間も短くするといったような、運用利回りとの関係にもなると思うのです が、そういうようなことができた状況があります。  私どもも、事務的にいちばん気になっておりますのは、この制度で10年 以上勤続した方というのは、確かにだいぶ減ってはきているのですが、そ れでも20万人ぐらいの方がいらっしゃいまして、その方の既得権というか、 期待利益をあまり簡単にはなくすわけにはいかないのかなということが気 になっています。もう少し経済状況がよければ、たぶんその辺の利益を損 なうことなく、短くするということはできるのかなと思います。いまの状 況ですと、どうしても下げないといけないというような状況がやはりあり ますので、その辺りは検討が必要かと思います。 ○勝部会長 データについてはまた提示していただくということなのですが、 先ほど山川委員から質問がありましたように、12ヶ月の証紙が18ヶ月以上 要しているというのを事実として書いてあるわけですけれども、具体的に どういうことなのか。先ほど林委員からも御説明があったと思うのですが。 ○畑中勤労者生活課長 私どもも実態がよくまだわかっていなくて、確かに平 均すると、私どもの計算でも1枚一杯になるのに大体18ヶ月ぐらいだとい うのが、計算上はやはり出てくるのです。その実態というのが、たぶんい ろいろな要因があるのかなと思うのですが、建設業の現場に出たり、ある いは違う仕事に行ったり来たりとか、やはり不況も影響しているのかなと も思いますし、平均するとそういう実態というか、私どもの計算でもその ぐらいになっています。人によってとか地域によってもだいぶ違うのかな と思うのですが、要因がはっきりわかるかどうか、できるだけある程度わ かる資料を探してみたいと思います。 ○林委員 これは私どもではなくて、先ほど申し上げたように日建連の緊急提 言の中に入っていますが、公共工事の場合は、まず100パーセント証紙カ ウント全体で工事を請け負いますからいいのですが、民間工事における建 設業の、証紙を企業が自ら買って労働者のために貼ってあげるというケー スは、ものすごく少ないのです。例えば実際そこの事業所で働いていても、 そこの事業所が建退共の契約者になっていなければ支払われないわけです。 だから民間工事中心でやっている人ほどきついです。  もう1つは、実際に日常的に、大きな現場は別ですけれども、小建の現 場だと、雨の日は作業中止です。土曜日なんかはほとんど働いていますけ れども、それでもなかなか月21日というのは、大変な稼働日数だというふ うに御理解いただければと思います。 ○勝部会長 ほかに何かございますか。これも次回取りまとめるということで しょうか。 ○畑中勤労者生活課長 次回、何らかの結論を出していきたいと思います。 ○臼杵委員 すみません、遅れまして申し訳ありません。いま山川委員もおっ しゃったことと重複するのですけれども、基本的にはいまのような財政状 況であると、短期のところをもう少し早くから支給するということになる と、長期のところはどうしても財政上のバランスはカットしなくてはいけ ないのかなというような感じがします。そのときにたぶん問題になるのは、 いま課長がおっしゃったように、既得権の問題。短期と長期のバランスと いうのは、どちらかというと制度ができたときは、長期雇用で功労のあっ た人を優遇するという形の制度だったと思うのですが、現在の状況がどち らかというと、早く辞めざるを得ない、失業手当といいますか、失業保険 的な色彩をもう少しこの制度に持たせるかという議論になるのかなという 気がしています。以上です。 ○勝部会長 ほかにありませんか。これについてはかなりもう既に過去3回、 いろいろな意見が各委員から出ているとは思うのですが、追加的に何か発 言されたい方がいらっしゃいましたらお願いしたいのですが。 ○畑中勤労者生活課長 高橋委員がおっしゃったように、確かにこの問題は建 退だけではなかなか整合性がとれない問題があります。実は24ヶ月という のが法律に書かれておりまして、これが特定業種退職金共済制度全体で24 ヶ月ということになっております。もし建退だけということになりますと、 法律改正の中で建退だけ12ヶ月と。と言いますのは、当然法制的に、では ほかはなぜやらないのかという、建退共と林業とどう違うのかとか、その 辺りが、国民にきちんと説明できるような状況にならないといけないとい う問題が確かにあります。そういう意味では建退共だけの問題で完結する ものではないというのは、御指摘のとおりでございます。 ○勝部会長 ほかの特退共に関しては、そういった要望は特にないということ でしょうか。 ○畑中勤労者生活課長 この議論がもともと出ましたのが、一昨年に閣議決定 されました整理合理化計画の中で、建退共については累積剰余金が多いと。 その要因として、不支給期間が長いのではないかということが指摘されま した。実はその点は、累積剰余金と不支給期間の問題というのは、よく考 えてみるとあまり直接リンクはしていないのですけれども、そういうよう な指摘があって検討が始まりましたので、林業や清酒については特にこの 議論はまだしていない状況です。 ○高橋(寛)委員 次回に何らかの結論を出さなければいけないということは、 さらにいまのことも含めて検討しようではないかという結論もあると思う のです。林退も清退も掛金日数ですとか、1日の掛金ですとか、利回りなど が違って、運用も細かいところでは違っていて、委員がおっしゃるように、 もう1回データをしっかり出した後、単年度のデータでは駄目なのでしょ うけれども、議論しなければいけない課題だと思っております。以上です。 ○勝部会長 いろいろ御意見もいただきましたので、これは次回、取りまとめ ということになりますけれども、いま議論になったように、ほかの特定業 種の制度とも非常に大きくかかわる部分でありますので、慎重に検討して いくということかと思います。  それでは次の議題に移らせていただきます。議題(5)の「『中小企業 退職金共済制度の加入対象者の範囲に関する検討会』報告書について」で す。これについて、事務局から説明をお願いします。 ○畑中勤労者生活課長 お手元の資料5を御覧ください。この中退共制度の加 入対象者の範囲の問題ですが、経緯から御説明申し上げます。現在、中退 共制度につきましては、従業員が加入対象ということにもちろんなってお りますが、従業員の定義というものがありません。現在は労働基準法が適 用される労働者の範囲と同じに扱っておりまして、同居の親族のみを使用 している事業主については、同居の親族については労働基準法の適用を除 外されておりますので、そのパラレルで中退共制度についても、同居の親 族のみ使用されている場合には、やはり中退共制度の適用除外というよう な扱いになっています。  この間、非常に中小企業をめぐる雇用・経済情勢が悪化したということ で、中小企業の方々を中心に、退職後の生活保障の問題がかなり強く指摘 されるようになりました。そうした指摘の中で、同居の親族といっても一 般の労働者と同じように給料をもらって、また社長の指揮命令の下に働い ているのではないかと。そういった中退制度の適用があってもいいのでは ないか、といったような御指摘もいただいたところであります。  こうした御指摘を背景にしまして、今年の4月から「中小企業退職金共 済制度の加入対象者の範囲に関する検討会」を明治学院大学の笹島教授を 座長といたしまして、専門家の方々に集まっていただいて議論を重ねたと ころです。今般、その議論の結果が報告書という形で出されましたので、 資料5につきましては、その報告書の概要をお付けしました。  早速ですが資料5−1を御覧ください。報告書のポイントがカラーのペ ーパーで1枚付いています。議論の「背景」ですが、先ほど申し上げまし たように、中退共制度の対象は「従業員」に限られると。中退法において 従業員の定義はなくて、事業主との間に使用従属関係にあるもの。○の2 つ目ですが、労基法においては、同居の親族のみを使用する場合には適用 されない。中退共制度においても同様に適用がないというように取り扱っ てきました。ただ、中小企業を含む雇用・経済情勢の悪化という中で、現 在加入対象とされていない方の中に、中退法における従業員と同様の働き 方をしている者が少なくないのではないかという指摘があった。こうした 背景から検討を始めました。  この検討会におきまして、実際にアンケート調査をしました。同居の親 族のみを使用している場合であっても、本当に普通の従業員と同様の働き 方をする者が数多くいるのか、という観点からのアンケートです。真ん中 に書いてありますように、多くの同居の親族の方が、仕事の内容・方法に ついて、事業主に具体的な指揮命令を受けている。事業主の指揮監督の下 で行う労働に対して報酬が支払われていると。事業主自身と同程度か、そ れ以上の労働時間にわたり就労しているといったようなことが、アンケー トからも明らかになったわけです。  こうしたアンケート結果を踏まえまして、この検討会におきましては、 他の労働関係法令との関係できちんと整理ができて、かつ実務上の問題も 整理ができれば、一定の範囲で現在対象から外れている親族の方々につい ても、中退法上の従業員と同じ扱いをしていいのではないかといったよう な議論になったわけです。  「他の労働関係法令との関係」ということで考察がされております。端 的に言うと労働基準法がその代表的なものですが、やはり、それぞれの法 律の趣旨・位置づけによって、その適用対象が決まるべきものではないの かということで、同居の親族のみを雇用する事業であっても、使用従属関 係にある従業員であって、その加入により福祉の増進等に寄与するのであ れば、中退共制度の適用対象とすることが適当ではないかと報告書では述 べられております。  「実務上の課題」としましては、加入時等における使用従属関係の把握 がきちんとできるかどうか、あるいは退職の事実の確認というのがきちん とできるかどうか。こうした課題が整理できれば、適用対象を広げてもい いのではないか。また小規模企業共済制度というものがありまして、こち らはいわゆる事業主本人の退職金制度ですが、一方で小規模企業共済制度 の加入範囲の拡大といったことも、同じように並行して議論になっており まして、これとの重複が生じないように制度をきちんと運用することが重 要である。逆に言うとそういう運用ができるのであれば、適用対象を広げ てもいいのではないかといったようなご指摘をいただきました。  結論としましては、こうした整理の下に、同居の親族のみを使用する事 業に使用される者であっても、使用従属関係が認められる者については、 中退法の「従業員」として取り扱うことが適当であるといったようなご報 告をいただいたところです。私どもとしましては、この報告を基に、今後、 関係省庁等とも調整などを行っていきたいと考えております。 ○勝部会長 ありがとうございました。いまの報告書のポイントについて何か ご意見、ご質問があればお願いいたします。現在はそういった対象者とい いますか、親族の場合は入っていないということですよね。 ○畑中勤労者生活課長 同居の親族であっても、ほかの従業員と一緒に働いて いる場合は労基法の対象となりますので、その場合は中退法も適用になっ ております。 ○宮本委員 ここにも書かれているように、大変多くのこういうケースがある のだろうと思っております。ここに「実務上の課題」として2個記載され ていますが、たくさんの対象になるような方々がいらっしゃるということ であれば、その手続きとか、運用上この制度の公平性をしっかりと担保す るという裏付けが必要ではないかと思います。 ○新田氏(布山委員代理) これは今回、同居の親族のみを入れるということ で、例えば掛金の税制上の扱いというのはどうなっているのですか。例え ば青色申告ですとか控除の問題ですとか、それに言及がないような気がす るのですが、そこら辺はいかがですか。 ○畑中勤労者生活課長 今回、中退共制度が適用になるということとした場合 には、やはり1つには税制の優遇ですね。いま普通にも税制の優遇をして おりますので、少なくともそれはしないといけないと考えています。ただ、 いま掛金助成のようなこともやっていますけれども、そこまでするかどう かというのは、ちょっと判断を要するところなのかなとは思います。 ○新田氏(布山委員代理) 同居の親族ということなので、場合によっては控 除をされている場合もあるなという気がしたのです。そうすると、それと の兼合いがどうなるのかなというのが、ちょっと気になったものですから。 ○勝部会長 それは今後、具体化される過程でいろいろ検討されるということ でしょうね。 ○畑中勤労者生活課長、具体的に税制の扱いということになりますと、財務省 との協議とかになってきますので、いま御指摘のような問題がもしあれば、 その辺の整理が必要になってくるのかなと思います。 ○高橋(寛)委員 これをどういう審議経過で考えればよろしいのでしょう。 いきなり関係省庁との協議というようにはならないと思うのですが。 ○畑中勤労者生活課長 これについては、今回こういう中小企業の方々の中か ら、こういう中退法の適用範囲の拡大というような指摘があって、それを 受けて検討を始めた。この報告書というのは1つの方向性が出ております。 ただ、1つの考え方の整理ではあると思うのですが、実際こういう方向で 調整すると言っても、いろいろな課題があるのかなと思っております。一 応今回は、指摘を受けていろいろ条件が揃えば、こういった問題点、使用 従属関係の確認とか、こうしたような実務的な問題点が整理されるといっ たような条件の下に、中退法の従業員として取り扱うということが適当で はないかという報告書が出たということですので、実際こういう実務的な 整理が本当にできるのかどうかというところは、今後詰める課題と思って おります。 ○高橋(寛)委員 ということは、今日は報告がありましたという報告ですか。 ○畑中勤労者生活課長 そうです。 ○高橋(寛)委員 報告がまとまりましたという、こういうことを議論してき て、こういう報告があり、今日それを報告したと。 ○畑中勤労者生活課長 そういうことです。 ○高橋(寛)委員 次回ですとか、次々回にということではないわけですね。 ○畑中勤労者生活課長 そうですね。 ○高橋(寛)委員 いろいろなことを精査をしながら。 ○畑中勤労者生活課長 こういう方向できちんとやっていくかどうかというこ とも含めて、一応課題というのが出されておりますので、本当にこうした 課題がきちんとクリアできるかどうか、これを見極めたいなとは思ってお ります。 ○勝部会長 ほかにどなたか質問御意見、いかがですか。 ○臼杵委員 いま課長からお話があったとおりなのですが、皆様の御指摘のと おりでして、実際に働いている実態があるのかどうか、給料というものが ちゃんと払われているのかどうか。先ほどもお話にありましたが、扶養者 になっていないのかどうか、ちゃんと独立をしているのかどうか。その辺 のことは、これからどうやってそれを確認をしていくかを議論していくと いうことで、とりあえず方向性としては認めてもいいのではないかと。  いまの話は報告書の後ろの資料5−2に報告書が付いていますが、特に 8頁辺りに具体的にどうやって雇用関係の認定手続きをするか。例えばイ に、税務申告書類等により、実際に労務の対価の支払いがあるかどうかを 確認するかとか。本当に辞めたのかどうか、退職金規定もないわけですし、 いつの間にか辞めたということかもしれません。まだ働いているから掛金 を出したいのだけれども、実際としては辞めているとか。そういう人もい るかもしれないわけです。そういうのをどのように確認するかというとこ ろが非常に大きな課題で、それについては厚生労働省だけではなくて、当 然掛金を損金に落とすということになれば、財務省とも、本当にそれがき ちんとできるかどうかを確認する。そういう条件が揃えば認めていくとい う方向でいいのではないか、というのが報告書の趣旨です。 ○山川部会長代理 労働基準法と、理屈の上では必ずしも同一に取り扱う必要 はないと。例えば監督署が、同居の親族だけの事業に入っていくのが妥当 かどうかとか、そういった趣旨が適用除外のところに含まれていたと思い ますので、必ずしも同一に取り扱う必要がないとは思いますが、一方でな かなか実態が把握しにくいですとか、掛金助成をすると、その対象とすべ きだという政策判断もあろうかと思いますので、いろいろ考えるべきこと はなおあるかと思います。これは何か答申というか、審議会としての手続 きはいずれ行った後に、プロセスとしては予定されているということなの でしょうか。 ○畑中勤労者生活課長 実は中退部会の審議事項がどういう範囲なのかという 問題もあるのですが、非常に議論が必要であるというような話であれば、 やはり審議事項として取り上げないといけないのかなとは思うのです。加 入範囲の問題といっても、どちらかというとかなり運用的な問題なので、 あまりこの辺りまで審議ということで、事務的には率直に言いまして、か なり運用的な問題と思っておりましたので、正式な審議事項ではないかな とは思っていたのです。ただ、何を審議事項にするのかというのは、本当 に何もきちんとしたものがありませんので、こういった問題も重要なのだ というお話であれば、きちんとこれを審議事項として取り上げるのが適当 ではないのかなと思います。ただ、事務的にはそういう整理ができればや らせていただくし、なかなかその辺が難しければやらないという形で、処 理をさせていただくつもりではありました。 ○山川部会長代理 まずは様々な面で検討していくという方向ではあるのでし ょうか。 ○勝部会長 これはそもそも要望がかなり強かったということで、こういった 報告書が作られたということでしょうか。 ○畑中勤労者生活課長 かなり中小企業の方々からの要望が強くありました。 ○勝部会長 ほかにございませんでしょうか。よろしいでしょうか。特にない ようであれば、本日の議題に関する議論はここまでにしたいと思います。 本日御議論いただきました特定業種退職金共済における退職金額に係る利 回りの見直しの検討、建設業退職金共済における課題の検討、これは不支 給期間関係も含めるものですが、この2つにつきましては、本日を含めて 4回にわたり議論を進めてまいりました。これまでの検討で、概ね現段階 での各委員の御見解も出揃ったのではないかと考えております。つきまし ては、次回の部会において、当部会としての取りまとめを行いたいと思い ます。事務局から御説明をお願いします。 ○畑中勤労者生活課長 取りまとめにつきましては、特に建退共の問題につい てはいろいろ御意見が分かれているところではありますので、そういった ことも踏まえまして、何らかの考え方の整理なり取りまとめを、部会長と 相談しながら事務局としての案を作成した上で、次回お示ししたいと思っ ております。引き続きよろしくお願いいたします。 ○勝部会長 次回の日程につきましては、追って事務局からご相談させていた だきたいと思います。予定の時間より20分ほど短くなりましたが本日はこ れで終了と。 ○高橋(寛)委員 お願いがありまして、一般中退及び特定業種もそうなので すが、未請求問題の対策がどうなっているのか、次回お示しいただきたい と存じます。特退のホームページを見ますと、建退で共済加入の企業名が 出るようになっていまして、清酒、林業、あるいは一般中退は、私の記憶 が間違っていなければ、納期は9月だと思っていますので、期待してお待 ちしていますので、是非よろしくお願いいたします。以上です。 ○畑中勤労者生活課長 いま御指摘のあった点は、次回御報告したいと思いま す。 ○勝部会長 ほかにはよろしいでしょうか。それではこれで終了としたいと思 いますが、本日の議事録の署名委員は、高橋寛委員と市川委員にお願いし たいと思います。本日はどうもありがとうございました。  照会先:厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部 勤労者生活課 企画係  (内線5376)