10/06/30 第12回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録 第12回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専 門委員会 ○日 時 平成22年6月30日(水)13:00〜15:00 ○場 所 中央合同庁舎7号館 12階 共用第2特別会議室 ○出席者 【委 員】永井委員長、位田委員、梅澤委員、高坂委員、澤委員、鹿野委員、中内委員、中畑委員、 町野委員、水澤委員、武藤委員、山口委員 【オブザーバー】青井、内田、末盛、福田、松山 【事務局】阿曽沼医政局長、医政局研究開発振興課事務局 ○議事 1.「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の改正案に対する       パブリックコメントについて     2.「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の改正案について     3.その他 ○永井委員長 ただいまより「第12回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専 門委員会」を開催いたします。まず、事務局より出席のご確認をお願いします。 ○事務局 委員の先生方におかれましては、ご多忙なところご出席いただき誠にありがとうございま す。お手元の委員名簿をご覧ください。本日の出席をご確認させていただきます。本日は、佐藤委員、 西川委員、本多委員がご欠席とのご連絡をいただいております。全委員15名のうち、12名の委員がご 出席の予定となっております。過半数を超え、本会議が成立していることをご報告申し上げます。ま た、本日の会議の席上には、本委員会の下に設置されますWGの委員の候補の先生方が、オブザーバー として着席しておりますことをご了承ください。  まず初めになりますが、ヒト幹細胞臨床研究の改正案を取りまとめまして、パブリックコメントの 募集にまで至ることが出来ております。まず、阿曽沼医政局長から、お礼のご挨拶をさせていただき ます。 ○阿曽沼局長 本日はお忙しいところ、お暑い中をお集まりいただきまして、大変ありがとうござい ます。今回が第12回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会というこ とで、昨年の5月以来約1年間にわたり、委員の先生方に熱心にご審議、ご参画いただきまして、心か ら御礼申し上げたいと思います。永井委員長をはじめ委員の皆様方には大変お忙しい中にもかかわら ず、熱心な議論をいただきまして大変ありがとうございました。  このヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針は、平成18年7月に策定をされまして、その後の科 学技術の進歩あるいはヒト幹細胞の取扱いに関する社会的な状況の変化などを勘案して、必要に応じ 見直しを行うこととされておりました。指針の策定以降、ヒト幹細胞臨床研究を取り巻く環境は、急 速に変化しました。iPS細胞のような我が国初の幹細胞技術が登場し、また、さらに治療法のない難治 性疾患への新規治療法開発などへの臨床応用には、国民の皆様方からも強い期待があるのも事実です。 そういう中で、早期の指針の改正が求められておりました。さまざまなヒト幹細胞の臨床研究に対応 するように、改正指針の策定にご尽力いただきまして、今日お手元にありますように、パブリックコ メントに至りますような改正指針案を取りまとめていただきました。私ども行政当局といたしまして も、大変感謝を申し上げたいと思います。  こういう環境の中で、再生医療の臨床研究を一方で推進をするところと、また一方、安全性と倫理 性を確保するという命題と、両者のバランスに配慮しながら、適切な臨床研究の実施を図っていかな ければならないと思っております。厚生労働省としては、研究補助金などを通じてさらなる支援をし ていくとともに、大変困難な課題ではありますが、改正指針案を是非最終的に取りまとめて進めたい と思います。先生方におかれましても、引き続きそれぞれのお立場でご支援をいただきますことを心 からお願いを申し上げまして、簡単ではありますが、お礼のご挨拶とさせていただきます。ありがと うございました。 ○事務局 本日、阿曽沼局長は執務のため、途中で中座をさせていただくことになりますが、ご了承 いただければと思います。  本日の委員会は、カメラ撮りは冒頭の挨拶までとさせていただいております。撮影はここまでとさ せていただき、カメラ等はご退室のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○永井委員長 ありがとうございました。続きまして、配付資料の確認をお願いします。 ○事務局 配付資料につきまして、ご説明いたします。1枚目の議事次第にありますように、議事次第、 座席表、委員名簿、資料1から5までを用意しています。ドッジファイルにまとめられております参考 資料1から10と、過去の専門委員会での配付資料は、机上にのみご用意いたしております。過不足等 がありましたら、お知らせいただきますようお願いいたします。 ○永井委員長 ありがとうございます。前回の第11回委員会で、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関す る指針の新旧対照表(案)について、ご議論をいただきました。今回は、改正指針の告示に向けて、 まとめのご議論をお願いしたいと思います。本日の議論の進め方について、事務局よりご説明をお願 いします。 ○事務局 資料1は、前回の委員会の主な意見としてまとめています。また資料2は、パブリックコメ ントの意見をまとめています。それぞれについてご説明をし、その後に皆様のご意見をいただきたい と考えております。また資料3にはヒト幹細胞のうち、臨床研究に関する指針の新旧対照表があります ので、そちらのほうもご参照ください。  まず、資料1について、事務局から説明します。前回の第11回専門委員会で出された意見をまとめ ております。  1つ目、ヒト幹細胞臨床研究の対象とは、病気やけがで失われた臓器や組織の再生を目的とするもの である、再生医療に限定するものであるということに定義づけられています。そこで、GVHDに対する 間葉系の幹細胞などの特殊な治療についてはどのようになるか、といったご意見が出されています。 そういった個別のものに関しては、さらに事務局又はこの関係委員、研究者等と検討しまして、Q&Aに て解説をしていくという内容です。  次に、ヒトiPS細胞を用いる臨床研究は、提供者に移植、投与を行う場合に限り実施されるものとす る、という書き方をしていました。これについて、さまざまな委員のご意見がありまして、iPS細胞に 関して自己細胞だけでなく、同種の細胞も指針の対象としたほうがよいのではないかといったご意見 もありました。つまり、同種のiPSについては、ある程度限定された要件の中で1対1のときにまず開 始するべきではないかといったご意見がありました。安全性を考えますと、自己よりも同種のほうが セルバンクのような形で、しっかり安全性を評価して研究を進めていくほうが、むしろ安全ではない かというご意見もありまして、自己のiPSのみならず、同種のほうもなんとか取り入れていくというご 意見が出ました。  その中で、事務局としては、さまざまな意見を取りまとめた上で、パブリックコメントに出させて いただくことといたしました。意見の取りまとめに際し、委員からの意見が少なく、パブリックコメ ントには僅かな修正のみで提出しています。そちらについて、資料2で詳しくもう一度説明します。  死亡胎児から採取されました幹細胞については、今後の検討課題だろうといったご意見がございま す。  「ヒト幹細胞臨床研究は、適切な実験により得られた科学的治験に基づき、有効性・安全性が予測 されるものであり、治療により得られる利益が不利益を上まわる」まで詳しく書くという内容のとこ ろを一部、「安全性・有効性が予測されるもの」というような書きぶりに修正しています。  また、第2章の1の1は、原則として、移植又は投与されるヒト幹細胞は、動物実験等を用いてその 有効性が十分期待され、作用機序も明らかにされること、ということを記載していましたが、こちら のほうは、作用機序が十分検討されていればそれで進めていくしかないだろう、完全に明らかにする ことは難しいだろうといったご意見で、事務局のほうで修正しています。  「被験者に生じた健康被害の保険その他の補償の措置」という書きぶりについて、補償というのは 当然必要であるといった意見でしたが、記述については配慮が必要ではないか。その根拠としては、 ヒト幹細胞臨床研究というのは治療法がない患者の治療の意味合いが強く、ボランティアという意味 があまり強くないので、保険というのを前提に出すのはあまりよろしくないのではないかといったご 意見がありました。こちらの書き方が「保険その他の」と書くのではなくて、補償の措置は明らかに 記載していただく形で、その中身についてはさらに詳しく検討した上、Q&Aなどで詳しく解説をしてい こう。もちろん保険商品その他については、しっかりとQ&Aなどに記載はしていくといったご議論でし た。  「研究責任者は、特に自己細胞以外の同種細胞、又はヒト以外の動物に由来する材料等を使用して 共培養を実施する場合においては、その危険性について十分把握しなければならない」ということに ついて、フィーダー細胞を用いるとき、特に注意が必要であるということで、書きぶりを修正してい ます。  また、こちらで修正されました案をパブリックコメントに、4月30日から6月4日、改正案に対す る意見募集ということで、さまざまな方からの意見をいただいています。それは資料2にあります。計 24名から延べ53件の意見をいただいております。こちらを事務局のほうで取りまとめています。最終 的には本日の議論、皆様のご意見をいただいた上で、パブリックコメントの回答を改めて公開する形 にしています。  取りまとめたものを順番に説明します。今回の新旧対照表をご覧いただきたいと思います。目次に ついて、誤字があったというご指摘がありまして、事務局で修正をしています。  第1章の第3「適用範囲」について、このヒト幹細胞臨床研究の指針は、第4に規定する対象疾患等 に関するものであって、第5に規定するヒト幹細胞等を疾病の治療を目的としてヒトの体内に移植、投 与する臨床研究を対象とする。つまり、がんに対する免疫療法、免疫細胞療法というのは再生医療の 目的としてはいないので、適用外なのでしょうかといったご質問がありました。これについては、本 委員会の中でも既に議論されておりますが、再生医療を目的とする指針であるため、がんの免疫療法 というのは今回の指針では対象外であることを明らかにしましょうというご意見でした。ですから、 対象外と考えています。  次の○は、自家再生・細胞医療に関しまして、この委員会とは別に、医政局と医薬局で開催してお ります「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」というのがありまして、そちらで再生・細 胞医療についてその枠組を議論しています。昨年度3月30日末に、『医療機関における自家細胞・組 織を用いた再生・細胞医療の実施』という通知が出されまして、そちらのほうとヒト幹指針の関係が わかりにくいのではないかということでご質問をいただいています。『医療機関における自家細胞・ 組織を用いた再生・細胞医療の実施』というのは、原則として、医療機関において実施される自家細 胞を用いた再生・細胞医療の実施に関する要件をまとめたものです。原則として、ヒト幹細胞臨床研 究を行うときには、まずヒト幹指針のほうを優先的にご確認ください。複数医療機関で共同で診療を 行う場合には、そちらのほうの指針も当然適用されますという回答です。  第1章の第5「対象となるヒト幹細胞等」です。末梢血から得られた末梢血単核球は、末梢血造血幹 細胞を用いることを目的としない限り、「ヒト幹細胞及びこれを豊富に含む細胞集団」ではないと考 えてよいかというご質問ですが、原則として、ヒトからただ採取された、特に誘導などで生前に採取 された末梢血単核球というのは、ヒト幹細胞を豊富に含んでいるとは考えられない。ですが、幹細胞 が多くないような単核球といったものも、培養などの調製工程を経た場合には、ヒト幹指針の対象と なり得てくるということです。たとえ分化した細胞でも調製を行う場合には、ヒト幹細胞等に含まれ ます。  第5の1の(2)細則の1は、3件のご意見がありました。ヒトのES細胞に関しては、今回は今後の検 討を待つことを示しています。しかし、そういったヒトES細胞を用いる臨床研究は、早急に進めてい くべきであろうといったご意見があります。その理由は、特にアメリカをはじめとする先進国では、 まずES細胞を用いた臨床研究が第1に想定されていて、2カ所の施設からFDAに申請がされている段 階である。こういった海外の動向に後れを取ることは問題があろうといったご意見でした。  本委員会の中の議論としては、ヒトES細胞を用いる臨床研究というのは、本指針の対象となること をまず含めていくということで、現在問題点としては、ヒト胚の臨床利用に関する基準。これは基礎 研究のヒト胚を用いる基準しかまだありませんので、臨床利用に関する基準というのをつくりまして、 その基準に実際に適合したES細胞を用いて臨床研究を推進していこうと想定しております。こちらに ついては、これから先端の技術に遅れないように、着実に進めていくことを予定しています。  細則の2は14件ありました。当面はヒトiPS細胞を用いる臨床研究は、提供者に移植、投与を行う 場合に実施されるものするということですが、ご意見としては他家移植も含めていく。ほかの患者に 投与する場合も、含めていったほうがいいのではないかといったご意見がありました。これは、さま ざまなご意見がありまして、かなり詳しいご意見をいただいています。自家移植についてもまだ検討 課題があろうというご意見もいただいています。次に、同種(他家)の移植の場合というのはまず必 要だろうということで、特に自家移植では治療ができない患者というのが当然おります。あとは、同 種のiPS細胞を用いた場合には、さまざまな患者に治療ができるということで、一度樹立されてしまう と、ほかの多くの患者を助けることができる。また、それも低コストで治療することができるといっ た、将来的な有用性についても皆さんからご意見をいただいています。そのほか、遺伝疾患として、 遺伝性のものは自己の細胞を使っても治療には役に立たないだろうというご意見がありました。この 際、同種のほうをなるべく進めていく必要があろう。自家では対応できないものもあろうといったご 意見をいただいています。  しかし、同種の細胞を用いた場合、いくつかの検討課題があろうといったご意見があります。これ は、同種では常にあり得ることですが、感染症の問題。ほかの人の感染症は、当然感染することはあ りますといったこと。そういったことについては、現在では大体解決されているところもあろうとい うような内容です。  現在の事務局の対応としては、iPS細胞を用いる臨床研究について、まず本委員会では臨床応用が最 も間近であろうと考えられている「提供者に移植又は投与を行う場合」を想定して議論して、指針の ほうに組み込む手筈で進めてきています。同種のiPS細胞を用いるという研究を否定する意味ではあり ませんが、まだ十分な議論がなされていないといったことがあります。今回、こちらの指針の改正案 として提出していますのは、「原則として、ヒトiPS細胞を用いる臨床研究は、提供者に移植又は投与 をおこなう場合に実施されるものとする」というふうに、事務局では修正をしています。したがって、 もちろん同種を完全に否定するものではあり得ない。当然必要であるが、まだ残る議論があろうとい うことで、こちらのほうも早急に議論した上で進めていくような手筈を整えております。  第5の1(3)、採取時に既に分化しているヒト幹細胞等の対象です。採取時に既に分化している細胞、 調製して得られた細胞・血球というのは、若干わかりにくいところがある。その意味として、「ヒト 幹細胞」という定義と、「ヒト幹細胞等」という今回の対象となる定義に、当然若干のずれがある。 今回のヒト幹指針では、ヒト幹細胞だけではなくて、ヒト幹細胞以外の分化した細胞を調製した細胞 というのも、当然危険性が問題視されることもありまして、指針の対象としています。ですから、今 回はそのような細胞も含める。この言いぶりにつきましては、分化した細胞から作ったiPS細胞のこと だけを指すわけではなくて、分化した細胞を調製して、また分化した細胞を作ったような場合、具体 的に言いますと、例えば皮膚の細胞を培養して表皮を作るような研究、もしくは口腔粘膜の細胞を培 養して、角膜の上皮を作るような研究は、分化細胞から分化細胞を作っていますので、そのような研 究については本指針の対象に入ります。  第5の2、胎児の臨床研究というのは、今後の検討課題であると認識しています。  第2章の研究の体制です。全臨床研究において、作用機序が明らかにされていること、動物実験によ る造腫瘍性の懸念が否定されるという安全性を確保することは当然であろうということです。しかし、 研究を進めるためには、いちばん下にありますが、ある程度研究者の良心や現時点での科学的妥当性 を基準として、個別に判断して進めていくほうがいいのではないか、といったご意見をいただいてい ます。  これに対しては、まさにそのとおりだと思いますが、現時点での科学的妥当性を基準として、個別 の臨床研究ごとにそれぞれ審査をして進めていく形となっています。研究者の良心を基準とするとい うのは現時点では難しいと思います。  採取、移植、投与ごとに、インフォームド・コンセントを受けなければならないという表現につい て、自己移植の場合は採取すること、移植、投与すること、それぞれに同意を取る必要はなく、採取 から移植、投与までの臨床研究をすべて1つにして、インフォームド・コンセントを取ることができる ようになっています。また、その説明については、説明者がそれぞれ分かれる必要はなく、1人ですべ ての研究をしてもよいとなっていて、柔軟に運用ができるような形になっています。  第1の1(5)、患者団体等の意見を公開の場で聴取可能にするための仕組みづくりと、該当臨床研究 の審査前又は審査中に、厚生労働省の審議会や委員会などにおいて、患者団体からの公開ヒアリング を実施するように要望します、というご意見がありました。これについては、それぞれの施設の倫理 審査委員会等というのは、それぞれの施設で作られた内規によりまして、参考人のご意見を聞くこと は可能になっています。それは、それぞれの研究機関にご確認いただくしかない。  当省におきましては、厚生科学審議会科学技術部会というのは公開で行われています。ただし、ヒ ト幹細胞臨床研究の審査というのは、原則として審査委員会は非公開で行われております。その患者 団体等の意見を聞くといったことについては、個々の臨床研究の審査の際の検討課題とさせていただ きたいと思っています。  研究者等は、新規のヒト幹細胞を用いる臨床研究を実施する場合には、多領域の研究者等との十分 な検証を行い、患者団体等の意見にも配慮しなければならない、というところにもう少し具体的に 「安全性・有効性に関する十分な検証」という記載にしたほうがいいのではないかといったご意見が ありましたが、検証内容が安全性・有効性だけでなく、ほかのものも含まれており、特に生命倫理な ども入っていますので、検討内容を限定することは考えていませんと書いております。  第1-1(6)、個人情報保護についてです。利用目的の変更、第三者への提供などについて、多岐にわ たりまして個人情報保護の除外規定というのが記載されています。それら、個々の項目について、ど ういったことを想定されてこの項目が書かれているかといったご質問がありましたが、こちらは全部 説明を書くのがなかなか難しいので、差し支えなければ事務局にお問合せいただきましたら、こちら のほうで検討して回答し、それぞれ個々の回答をさせていただきます。また、その内容に関して、 「個人の情報を得ることが困難であるとき」という表現があります。「本人の同意を得ることが困 難」という意味は、連絡がつかないときか、もしくは本人が同意をされないとき、本人が拒否したと きを想定しているのかという質問がありました。こちらは、「本人の同意を得ることが困難であると き」は、連絡がつかないということで、「本人が同意しない」もしくは「拒否した」ときには、もち ろん除外規定には当てはまりません。  第1-3(5)、実施計画書は、ほかの研究者による監査が必要である。これについては、ヒト幹の臨床 研究の場合には、さまざまな機関の審査、中央の審査等が組まれていまして、十分な体制が整備され てあるだろうという認識です。  第1-3(5)細則2に、「研究機関」等の記述というのがあります。その例示として、病院並びに大学 病院を想定した例示がなされています。この「研究機関」として、ベンチャー企業や製薬会社という のが、調製を行う場合というのも今後はあり得ることを考えて、そういった例示も付けてはいかがだ ろうかといったご意見をいただいています。現段階としましては、ヒト幹臨床研究を実施する機関は 病院や大学医学部が多いことから、その例示を用いています。  大きな問題点となりますが、7頁の第2章第1の3(6)で、健康被害の補償についてのご意見をいただ いています。提供者に対しましては、「健康被害に対する補償の有無」というのを伝えておく必要が ある。被験者に関しては、被験者の健康被害の補償のために、必要な措置を明らかにしてくださいと いう補償の義務化ということになっています。この補償についてご意見があったのが、民間の保険と いうのは現時点では適応外というものが多いのではないか。なんとか、法的な補償制度というのを作 っていただけないかといったご意見をいただいています。また、「臨床研究に関する倫理指針」に横 並びにすることになりますと、健康被害の補償のためには、保険その他の必要な措置を講じておかな ければならないということを明記すべきであろうといったことが、ご意見としてなされています。  なお、臨床研究に関する倫理指針の書き方ですと、責任者の責務というところに「医薬品・医療機 器を用いる(体外診断を除く)介入研究は『被験者に生じた健康被害の補償のための保険その他の必 要な措置』を、その他の介入研究は、健康被害の補償の有無」というのを研究計画書に記載するとい う書きぶりになっています。こちらについて、今回の改正案では準じて記載をしています。公的な補 償でということについては、皆さんのご意見を取り入れまして、今後引き続き検討する必要があると いう認識です。  第1の3(8)、研究機関の公開について、データベースには患者一般、国民一般がアクセスは可能な のでしょうかということで、答えはウェブサイトから閲覧可能です。医学の進歩が遅れないように、 倫理審査委員会で適切に審査してほしいということですが、そのようにお願いしております。  第3章、提供者の人権保護です。角膜の再生医療の場合、インフォームド・コンセントや海外から得 られた角膜を使っているときのインフォームド・コンセントについての疑義がありまして、そちらの ほうには個別症例について適合性の判断をしていくしかないといった回答になります。  第1の6は、是非皆さんのご意見をいただきたいと考えています。「手術等で摘出されたヒト幹細胞 を利用する場合においては、1から4までに従って、手術を受けた患者又は代諾者からインフォームド ・コンセントを受けなければならない。なお、手術等が、ヒト幹細胞の採取の目的を優先して行われ ることがあってはならない」。つまり、採取の目的で手術をしてはいけないということが明記されて います。これについて、ご意見として、採取が十分安全にできる手術に関しては、禁止すべきではな いのではないかといったご意見がありました。自己の場合には、幹細胞を採取する手術はいいのでは ないかというご意見がありましたが、現在の指針では、自己の場合に関しましては手術ができるとい う書きぶりになっています。  もう1点は、ドナーに不利益がない場合には、ある程度の手術ならば可能としたほうがいいのではな いか。特に、現在のヒト幹細胞の臨床研究では、例えば皮膚の切除といったものも今後想定されてく ることになったときに、こういった手術を禁じているというのは若干問題があるのではないかという ことがありまして、こちらの書きぶりについては今回、皆様のご意見を是非いただきたいと考えてい ます。  第4章の第1「調製段階における安全対策」です。1つ目は、最終調製物の評価方法についてのご意 見がありましたので、こういったものはこれから取り入れていきましょうということになります。次 の○も、皆様の認識をはっきりさせてご意見をいただきたいと考えていますが、今回の指針案は、調 製工程において、複数の提供者からヒト幹細胞を「同一室内で同時期」に扱わないと記載されていま す。以前のヒト幹指針の場合は、同時に「同一区域内」で取り扱わないという書きぶりになっていま して、どちらのほうが実際には適切かといったことを議論していただきたい。室内と区域と、どちら が大きいかというところも人によって認識が違うところもありますが、その認識をはっきりさせてい ただいて、適切な用語を選択していただきたい。是非、これはご意見をいただきたいと考えています。  第1の4は、調製工程における試薬については、既に用いられている試薬について評価が必要かとい うことですが、これについては、実際に臨床研究を行う際に、十分その品質が担保されるものがあれ ばという考えでおります。  第6章の見直しも、ご意見をいくつかいただいています。幹細胞研究というのは急速な進展がある。 5年というスパンで次の指針の改正をやっていては間に合わないのではないか。2、3年という書きぶり にしたほうがいいのではないかといったご意見がありました。こちらの書きぶりを確認していただく と、本指針の見直しは、施行5年はもちろん待たずとも、科学技術の進歩、ヒト幹細胞の取扱いに関す る社会的情勢の変化等を勘案して見直しを行うことがまず大前提としてありますので、特に年数につ いては5年と限定しているわけではありません。  最後は「その他」として記載しています。iPS細胞を大変期待しているというご意見がありました。 臨床研究を早期に進めていただきたいといったこともあります。さらに、今回指針の改正を行ってい ただきましたが、このような指針の改正というのは継続的に検討する必要があるだろう。指針改正が 行われたあとも、しっかりとしたフォローをして、指針の適合性なども見ていく必要があるのではな いかといったご意見があります。こちらは再生医療の推進という観点から随時検討を行っていくとい う内容です。資料1に関しては以上です。 ○永井委員長 ありがとうございました。ヒト幹細胞の臨床研究に関する指針の改正案に対して、既 に多くのご意見をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。なお、ヒトiPS細胞を用いる臨 床研究について、自己iPS細胞から実施するという表現に対しまして、多数のご意見をいただいていま す。第1章第5の1(2)細則2です。これらのご意見また委員の先生方のご意見を伺いまして、事務局 と相談の上、修正案を作成しております。それを少しこちらからご提案させていただきたいと思いま す。  まず、パブコメ案は、『当面は、ヒトiPS細胞を用いる臨床研究は、提供者に移植又は投与を行う場 合に限り実施されるものとする』となっていましたが、修正案は「原則として、ヒトiPS細胞を用いる 臨床研究は、提供者に移植又は投与を行う場合に実施されるものとする」。提供者以外に移植又は投 与を行う場合は、予め次の事項に対する方策が十分に検討されていなければならない。(1)個人情報の 保護。(2)インフォームド・コンセントと同意撤回。(3)提供者の権利。(4)最終調製物の安全性の評価。 (5)中間調製物の評価です。これらの事項を踏まえて、修正案としたいということですが、この点につ いて委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。中畑委員どうぞ。 ○中畑委員 4、5は言ってみると、自己細胞についても同種の細胞についても、当然安全性を担保す るためには共通事項ではないかと思うので、この書き方だと自家の場合は最終調製物の安全性の評価 をしなくてもいいというような読み取り方もできますので、これは別の表現の仕方に変えて、4、5に ついては両者に共通の、このiPSを用いて行われる臨床研究においては共通の事項である。安全性を担 保することはまず大事であるということで、これはいまのような形での分類ではないほうがいいので はないかと思います。 ○永井委員長 書きぶりの問題で、趣旨はそういうことだと思いますので、そのように修正したいと 思います。位田委員どうぞ。 ○位田委員 私は前回の委員会は休んでいましたので、パブコメを作られたときの最終決定の意図が 必ずしもよくわかっていないのですが、パブコメ案は当面はというか、法律用語では「当分の間」と いう言い方をしますが、要するに当分の間、自家移植に限るのだという決定を一応されたわけですよ ね。それを今度は原則としてとなると、自家移植だけではなくて他家移植もいいのだと。先ほどのご 説明だと、これから議論をして完全に認めるかどうかを検討していくというお話でしたが、この書き 方だと自家移植でも他家移植でも、特に他家移植の場合にはこの1、2、3、4、5が検討されていれば、 いますぐにでもできるという書き方なので、そういうふうに理解をしていいのかという問題と、もし そういうふうに理解をすると、パブコメ案で出されていた、自家移植であれば、いまのところは問題 がないだろう。他家移植はまだ少し不安があるので、もう少し後に回そうということだったかと思い ますが、その判断は覆したというか、他家移植はいまからやってもいいという判断に変わるというこ とで理解してよろしいでしょうか。つまり、科学的にそういう状況にきているという判断がなされる のかということです。 ○永井委員長 私の意見ですが、順番としては自家が先であろうということです。他家の場合には特 に感染の問題もありますので、より厳しい安全性は求められると考えられます。しかしながら、実際 に自家では不可能な病態があるということをどう位置づけるかということで、今回はそういうことも 視野に入れて、予め準備を進めていくことは十分考慮に値するのではないかということで、このよう な提案をしています。 ○位田委員 時間的に、まず自家細胞をやって、そのあと他家細胞をやるという趣旨ではないと理解 してよろしいですか。 ○永井委員長 病態により、初めから自家移植が不可能な病態があるということをどう我々は受け止 めるかという問題だということです。 ○位田委員 その場合には、一般的に他家移植を解禁するという趣旨ではないと理解してよろしいで すか。 ○永井委員長 可能であれば、まずは自家移植から普通は研究者は始めるのではないかと思いますが、 それはいろいろな病態によって事情があろうかと思いますので、その辺は十分これからもいろいろな 会議の中で検討されるのではないかと思いますが、この点はむしろ委員の先生方からご意見をいただ きたいと思います。 ○山口委員 前回の委員会で、一応パブコメで出された案というのは出されたと思いますが、その議 論の中では必ずしも、これに統一されていたわけではないと私は理解しています。同種であっても、 きちんとバンキングをして、そのバンキングした細胞に関してウイルス安全性をやれとか、そういう のを徹底的にやれるのであれば、むしろそちらのほうが適正ではないかと、私たちはそういう意見だ ったのですが、そういう複数の意見があって、ただ、きちんとまとめることができなかったので、パ ブコメとしてはこういうパブコメで出した。パブコメから出てきた中にやはり、同じような意見を出 されるパブコメもあった。したがって、最終案としては永井先生の出していただいた案があった。い まのこの時点でも、話をお聞きして、それぞれ認識に差があるなと思ったのです。私は必ずしも同種 が自己よりも安全性が非常に低いとは認識していなくて、自己の場合にはもちろんその人からの感染 因子はその人にしか戻りませんので、そういう1点は確かにそうかもしれません。ただし、同種の場合 にはバンキングして、そのバンキングした細胞に関してウイルス安全性を徹底的にやることができま すよね。それで保存しておいて、必要なときにそれを分化あるいは誘導したものを保存して使える。 そういう旨の安全対策が取りやすいのではないか。  自己の場合には非常に時間もかかるし、その人にしか戻しませんから、実際に必要になった人に、 相当な期間培養とかをしてから初めて入れるわけですね。そうすると、すべてに適用できるわけでは ないし、安全対策も培養工程そのものが、必ずしも完全なウイルス安全性とか担保できるわけではな いので、大本の細胞由来のウイルスと安全性に関しては、確かに1つの同種の型からスプレッドするリ スクはありますが、同種の場合、感染をきちんと評価できるというメリットもあります。その辺はバ ランスを考えて、もう1つはどういうふうなベネフィットにある治療に用いるかということを考えて判 断すべきではないかというのがおそらく経緯でした。 ○位田委員 いま、委員長と山口委員のご説明で大体了解しましたが、そうであれば、自家移植が原 則で、他家移植が例外だという取扱いではなくて、むしろ自家移植も他家移植も対象とする。ただし、 他家移植についてはこういう条件が認められる場合に限るとか、そういう書き方のほうが本来だろう と思います。この書き方だと、原則は自家移植なので、他家移植は例外的な措置になっていて、しか しその例外的な措置の条件がここに5つ書いてありますが、中畑委員もおっしゃったように4や5は自 己移植でも同じ話ですし、ちなみに個人情報の保護もインフォームド・コンセントと同意の撤回も自 家移植でも同じなので、3番目だけが違う。これは、安全性云々の話ではありませんから、もしサイエ ンティストの方々がいまここで同意されるのであれば、両方とも解禁をしますと。ただし、他家移植 については自己移植よりも、もう少しサイエンティフィックに限定をした条件を付けたほうがいいの であれば、それを具体的に書くほうが本来の形だと私は思います。 ○高坂委員 私も、いまの意見を伺っていまして、両方をまず解禁していいのだろうと思います。他 家と自己の違いのいちばんの問題点は、おそらく免疫応答があるかどうかという点だろうと思います が、それ以外の安全性という面においては、先ほどウイルスを持ち込むという話がありましたが、両 者にそれほど大きな差はないと思います。前回の幹細胞指針を作ったときに、実はその両者というの はあまり区別をしていなくて、両方を認めている。確かに現実的には委員長がおっしゃったように、 申請されてくるものはほとんどが自己であったことは事実ですが、あえて前の指針でも他家と自己と いうものをア・プリオリに自己でなければいけないということを規定しているわけではないのです。 ですから、今回のことについても安全性の問題とか、以前の指針のことを考えてみますと、iPS細胞に ついても、一応両者を原則として認めるということでよろしいのではないかという気がいたします。 ○中畑委員 私の意見としては、自家と同種に差をつけるべきではないということで、現時点で、い かに安全性を担保した細胞から出発するかということが問題なので、パッとした形での差をつけるべ きではないという意見を寄せたわけです。最終的に、自家のほうが多少有利だというのは、先ほどの 感染症の問題とHLAの適用の問題ということで、感染症については、先ほどから出ているように、むし ろ培養の過程やそうした当事者に伴う感染症のリスクのほうがずっと大きいのではないか。それは前 回でも議論になったと思います。HLAについても、HLAを適用したままスタディしていけばいいのでは ないか。それも大きな障害にはならないだろう。やはりこのときのiPS細胞の場合は、造腫瘍性がない かどうかというところに返り、しっかり検討して、細胞の治癒とかこの過程構成のないiPS細胞、すな わち非常に未分化な状態のiPS細胞が分化をいつまでも残してしまうことをいかに否定するかとか、あ と、患者にとって本当の意味で、必要な細胞に分化することがきちんと担保されているかどうかとか、 あるいは染色体に異常がないかとか、いくつかそのiPS細胞として備えていなければいけない要件とい うのがあるので、むしろその安全性という点で、そちらのほうをある程度書き込んで、自家と他家と を区別しないほうがいいのではないかというのが私の意見です。 ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。あるいは、事務局からその辺の考え方について、何かご意 見はありますか。 ○事務局 確かに、安全性についてはこれからサイエンスが進むに従って、まだ議論をしなければい けないところがあろうというのは、委員会の中で認識は一致しているということだと理解しておりま す。しかし、問題としては、自己も他家も皆さんがおっしゃいますように、開始するときには差はな いだろうということですが、他家の場合は1対1から1対2、1対3、さらに当然有用性を示す限り、数 が広がる。対象が広がって、大変有用性が出てくるだろうというのは、それもそのとおり皆さんのご 意見ですが、ベネフィットが出てくると、逆にそのリスクの拡散というのも大変大きいことになりま す。私たちが考えていたのは、他家の場合は自己と違って複数に広がってくる観点から、どのように 臨床研究を進めていこうかということを、安全性を確認するには一気に始めるのではなくて、まず1つ 目から始めて、じっくりと進めていくという進め方について、是非ワーキングなどで議論をしていた だきたいと考えています。その検討項目としていくつかの内容をさらに検討した上で、それから同種 は広げていくべきであろうということで意見を調整していたところです。 ○永井委員長 他家の場合には、必ずしも1対1ではなくて、1対10や1対100もあり得る。そこのリ スクをどう考えるかということも1つのポイントだと思います。 ○位田委員 そうすると、また先ほどの問題に戻りますが、これは数値を出されれば、この文言だと 両方一遍に進めていいという話になるのですが、いま、他家移植のほうも1例であれ、2例であれ、少 ない数の症例かもしれないけれども、他家移植のほうも進めていいという状態に、もうあると考えて いいのか、まだ少し早いということなのか。 ○永井委員長 安全性が担保される限りにおいては、始めていいわけです。 ○位田委員 ただ、いまの事務局のお話では、これから安全性の問題がまだまだというお話があった ので。 ○永井委員長 それは、常にどういうときでも安全性の問題はありますので、それをしっかりチェッ クして進めてくださいということです。 ○位田委員 いまの段階で、他家移植もスタートできる状態にあると。もちろん、すべてのケースで はないですが。 ○永井委員長 ということで、事務局はよろしいですか。 ○事務局 自己と同種を進めていくような形で、調整させていただきます。 ○高坂委員 この修正案については、こういった5つの条件を入れなければならないということは、む しろ誤解を招いてしまうと思います。先ほども申し上げましたように、大部分のものについては自己 であり、他家であり、同じ条件ですから、こういったものがみなされていれば、他家もOKという書き ぶりはまずいと。 ○永井委員長 全体にかかるようにする。そうすると「原則として」をどうするかですね。もう、そ れも取ってしまうのか、これを残しておくか。 ○高坂委員 個人的には、「原則として」は外しても同じ条件で、両方を認めるべきだと思っていま す。 ○中内委員 私は、以前からこの細則は不要だと思っています。一般的に、皆さんはなんとなく自家 よりも他家が安全と考えられているかもしれませんが、これは逆もあり得るわけです。1つは、先ほど 山口委員がおっしゃったように、他家のほうがきちんとした安全性確保が可能であるということもあ りますし、iPS細胞の場合は造腫瘍性があるわけですが、そのときに完全に免疫機能を発揮できない。 自己の移植のほうが他家より危険である可能性も十分にあると思いますので、そういう観点から考え ても、自家と他家を区別する必要はないと考えます。  もう1点、段階的にやってもいいのではないかと、いつも行政担当の人は言いますが、原則としてと いう文言でもこれが入っていると、非常に長い期間の研究期間とお金がかかるこうした研究をやって いくのに、iPS技術が一般化するために産業応用は非常に大事だと思いますが、通常の企業はまず研究 を始めないと考えます。少し医療とは離れるかもしれませんが、そういう観点から、本当にiPS技術を 臨床応用して患者のために使おうというのでしたら、企業参入することが必要であるにもかかわらず、 それを阻害してしまう可能性も高いと思います。そういう観点からも、こういった細則は弱いのでは ないかと考えます。 ○梅澤委員 同種・他家の場合の有用な対象疾患として、多くの難病があります。自己の細胞を使用 した場合は何の効果もありませんので、同種が必要になってくると考えています。有効性といった観 点からも同種をお認めいただければと考えています。 ○永井委員長 いま有効性というのは、なかなか言えないですよね。有効性のある可能性があるとい うことですか。 ○梅澤委員 現時点では動物実験においては可能性があると考えています。 ○永井委員長 澤委員。どうぞ。 ○澤委員 皆さんの発言と私も同じなのですが、3頁の回答案にありますように、「もっとも臨床応用 が間近であると考えられる『提供者に移植又は投与を行う場合』を想定して」ということ自体に、既 に認識が十分ではないのではないかということすら感じますので、この回答案のここに明記されるこ とも、あまりよろしくないのではないか。 ○永井委員長 どこですか。 ○澤委員 資料2の3頁の下から6行目です。こういうことを回答の中に限定して書いていることにも、 少し勇み足というか思い込みのように、回答する側からしてこういうふうに限定するのは、いかがか というふうにも見えてしまう。ですから、たぶんパブコメ回答から見たら、こういうことを、こちら 側が逆に限定すると見られてしまうので、先ほど来の意見からしても、この文章は適切ではないと考 えます。 ○鹿野委員 前回も議論がありましたが、私も、自己と他家を科学的な意味とか、ベネフィット的な 意味で区別するのは、あまり意味がないと思っています。ただ、事務局から先ほどご説明がありまし ように、1対1で限定されて使われるものではなくて、1対複数に使用されることで何らかのリスクの 広がりが懸念されると、もしそういうメッセージとしてこの細則を付けるのであれば、3頁のパブコメ の提案にあったような、より慎重にという姿勢を注意喚起したほうがいい気がします。ただ、パブコ メのご提案ですと、先ほど中畑先生からもご指摘がありましたように、そぐわない部分もあるかと思 いますので、書き方は変えたほうがいいかと思います。 ○永井委員長 いまの点、いかがでしょうか。いきなり1対複数という使われ方が行われた場合には、 リスクが大きくなる可能性があるということだと思います。 ○山口委員 感染が広がるという意味でのリスクは、確かにあるのだろうと思います。鹿野先生がお っしゃったように、この提案も1つの案ではあるかなと思いますが、例えばこれを入れてという話の前 提で言うと、「適当な観察期間を経て」という文章が入ってしまうと、かなり大変な話になってしま うので、それは抜かないといけないと思います。要するに安全性を確認するには相当な年月がかかる わけで、慎重にやるというスタンスは、例えば検査をきちんとやっておくとか、そういう意味合いで は私はいいと思いますが、必ずしもここの回答のところでは、すべて飲み込まないほうがいいと思っ ています。 ○永井委員長 さっきの原則としてというのは、そういう意味が少しあったのです。いきなり複数で 広がらないようにしたほうがいいのではないかと、そういう気持が入って「原則として」になってい るのですが、こういう慎重にという趣旨が含まれれば、「原則として」というのは要らない可能性が ありますね。 ○高坂委員 いずれにしても、これは二重審査になるのだと思いますから、そういったところは中央 の審査会のときに十分ご覧になっていて、たぶん、一度に複数人に投与することは、まずあり得ない と思います。おそらく最初は1例か2例で、まず安全性のところをきちんと見ますという申請が、たぶ ん出てくると思います。それを我々が懸念しているように、一度に10例やりますという申請が出てき たときには、審査会のほうできちっと指導していくことで対応していけば、よろしいのではないかと 思います。 ○永井委員長 位田委員、どうぞ。 ○位田委員 要するに安全性・有効性という観点からして、もし仮にリスクが自己移植より少し大き いということであれば、新旧対照表の21頁の例えば「採取段階における安全対策等」として21、22、 23頁以下、25頁までかかる「調製段階における安全対策等」で、他家移植の場合には、ここに書かれ ているよりも厳しい条件があれば、そこに書き込むのだろうと思うので、第1章の第5の1(2)の細則 にいろいろ書く話ではないのだろうと思います。有効性の問題でもし何か条件があるのであれば、本 則のほうにそれは書き込む話だろうと思います。  21頁の第2の「採取段階における安全対策等」、これは安全性の問題です。21、22、23頁の「調製 段階における安全対策等」が、25頁まで書いてありますので、その辺で他家移植の場合には、こうい う条件を満たしましょうというのがあれば、こちらで書く話なのだろうと思います。   ○永井委員長 それは研究計画の立て方の問題でもあると思います。そうすると単なる調製の問題だ けでなく、研究計画、治療計画で、一度に100名を最初からというのはやめたほうがいいというのは、 調製の話ではないような気がするのですが、いかがでしょうか。 ○位田委員 私はどういう条件が加わるのか、そこははっきりわからないのですが、そこまででない とすると、何らか別の情報が加わるとすれば、それは本則のほうに書いておくべきかと思います。単 に原則としてというだけだと、どこまでが原則で、どこからが例外として認められるのかというのは、 少なくともこの指針を見ただけではわからなくなりますので、現場の当事者の方は困るのではないか。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○澤委員 私、位田委員のおっしゃったことに賛成というか、この21頁の第2の採取段階における安 全対策等以降が、これまでの指針では、ほとんど1314号に準じてという書き方を、詳細な形で書き込 まれていますけれども、これは自己、他家の両方を鑑みて書いています。先ほど鹿野委員がおっしゃ ったように、元来、そこに差があるわけではない。その観点から、もともと1314号もそういう考えで、 ただし、わかりやすくするために自己と他家を分けましたけれども、こういうふうな安全性のところ とか、ドナーの部分については多少違うけれどもという考え方で、これは書き込まれていると思いま す。ですから、プロトコール云々とか、最初に一度に云々ということの議論とは別に、もう一度、先 ほどの話のように、他家の場合に安全性基準をどうするかを見た上で、それで十分ではないかと考え ます。 ○永井委員長 論点は、調製の問題と研究体制の問題と、両方あるということですね。 ○澤委員 そうですね。ですから調製の問題は、他家で十分だろうと思います。 ○永井委員長 研究の実施体制のところで、少し原則を述べておく必要があるのではないかと。 ○澤委員 そこも原則を述べるのか、むしろ原則を述べるのでなくて、その審議の中でされるのかと いうことかなと思います。あまり原則をというのを書き込むのは、いかがなものかというふうに思い ます。 ○永井委員長 しかし、iPS細胞はどのような細胞かわかっていないのです。奇蹟の治療法だと思って いる人もいるかもしれませんが、未知の細胞で、腫瘍になるかもしれない細胞だということを、我々 はまず認識しておかないといけない。今週の『ネイチャー』に出ていましたね。タイで骨髄の幹細胞 を腎臓に入れていたら、見たこともないような腫瘍がたくさん出てきたという報告もあるわけです。 ○中内委員 ここで議論しているのは他家と自己の間での安全性の違いを述べているのであって、い ま先生がおっしゃったような例でしたら、まさにきっと他家のほうが安全ではないかと私は思う。で すから、ここで話さなければいけないことは、自家と他家の間で安全性に違いがあるかどうか。 ○永井委員長 安全性のリスクの拡散という意味です。ですから、1人に限定していくのか少ない人数 に限定するのか。自己か他家ではなくて、少人数か多人数かという問題です。 ○中内委員 それは少人数で最初はやるというのは、皆さん当然と考えておられるでしょう。いきな り始めから何百人を対象にやる人はいないと思いますので、それはいいと思いますけども、それをガ イドラインとして、5人以下とか10人以下と書けるかというと、書ければそれでいいと思いますけれ ども、それができないのだったら審査会で審査して、先生がおっしゃるように適切なプロトコールか どうかを見るのが、いちばんいいのではないか。実際、それ以外に例えば位田先生がおっしゃるよう に、検査項目として他家の場合はこれを追加して、これがよければオーケー、そういう簡単なもので はないと思います。ですから、プロトコールというか、研究計画をきちんと見ることが大事だと思い ます。それは文章として書くよりは、そのときの委員会によってきちんと判断していただくのが、い ちばんいいのではないかと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○武藤委員 私もいまの中内委員の意見に賛成です。他家移植の場合に起こる、この5項目あるうちの 1つが違うというのが、提供者の権利の問題となっていますが、これについてもインフォームド・コン セントの中できちんと書いてあるかどうかについて、審査をしていただければいいのではないか。原 則として指針に書くのは難しい論点のような気もしますので、そういった点も併せてブロトコールの 判断というのは、いかがでしょうかというのが私の意見です。 ○永井委員長 町野先生、いかがですか。 ○町野委員 すみません、遅れたり出たり入ったりして、あまり付いて行けないと思いますが、私、 いまのご議論は所々しかピックアップしていないけれども、どうして自己と他家を分けるか、それが かなり最初から問題だったのではないかと思います。永井委員長がおっしゃったとおり、要するにど れだけたくさん使われ、いろいろな人に使われるかという問題だとすると、他家でも1対1対応はあり 得るわけですし、そこがいちばん問題になるのではないかと思います。  そう考えますと、その点のリスクが問題だということですから、あまり両方を区別せずに、むしろ そこら辺のことを考えたような細則で、おそらく今のご意見でいくと十分にそれを考えたということ ですから、私は中内委員の言われるとおり、これは取ったほうがいいのではないかと、むしろ思って います。 ○水澤委員 私も結論から言うと、区別はあまりしなくてもいいのかなと思います。議論としては 「原則として」という言葉とか、そのほかの言葉で「趣旨」ですね。委員長がおっしゃったように、 リスクの拡散をできるだけ最小限に食い止めるといったことを、こういう短い文章でできるかどうか という問題だと思いますが、なかなか難しそうだというのが実感です。したがって個々の審査の段階 で、それをきちっとやるほうがよろしいのではないか。多くの場合、ほとんどの委員はこの問題をよ く認識してシェアしていると思いますので、審査の段階でうまくできるのではないかというのが実感 です。 ○永井委員長 そうしますと、この「原則として」というのは除いて、注意事項は全体にかかるよう に記載することにしましょうか。 ○位田委員 先ほど委員長がおっしゃったように、調製とか安全性の問題でなく研究体制であるとす ると、新旧対照表の7頁の第2章で「研究の体制等」とありますが、その第1の1(2)で、いま赤字で いろいろ入っていますけれども、ここあたりにもし書くのであれば何か書き込めるかなという気はし ます。書かないで研究計画ごとに審査をするのだというのであれば、それはそれで構わないと思いま すが、留意事項として書くのであれば、この「原則として」云々と赤で書いている部分、もしくは細 則のところで書いている部分は、いま見ても留意事項のような気がしますので、細則の場合には特に こういうことに留意すべきであると書いておけば、念が入っていいかなという気はします。 ○永井委員長 高坂委員、どうぞ。 ○高坂委員 いまの位田委員のおっしゃったことですが、7頁の研究の体制のところで「原則として」 と赤字でずっと書いていること自身が、相当の注意喚起だと私は思います。これを見て一般的な研究 者であれば、当然、最初は安全性を見るのだなということで、1例か2例やっていますという判断があ るわけです。それをもし最初から10例といった話になれば、それは審査会で見ればいいことで、ここ にそれを更に加える必要は私はないと思います。 ○中内委員 私も位田先生の案に基本的に賛成です。細則をなくして、かなりよく検討されていると 思いますけれども、もし必要があればここに足す。例えば他家の場合は少数例から始めるとか、あま り具体的な数を書くのは難しいのですが、そういうことを書いておけば、いきなり何百人という計画 が来ても対応できるのではないか。 ○永井委員長 実際にはそこになるのだろうと思うのですが、まだiPS細胞は少し夢のような話が先行 していますので、臨床応用の際には安全性について気を付けないといけないということを、この委員 会としては注意しておかないといけないと思います。 ○事務局 今までの皆さんのご意見では、自己、同種iPS細胞を区別するというのは、あまり大きな論 点ではないということですね。修文案を出していただきましたが、iPS細胞を用いる臨床研究について、 自己と同種を区別する記載は変えていくべきということで皆さんの認識が一致したと思います。それ とiPS細胞に関しては、まだまだいろいろな懸念事項はあるということ。なお事務局として、資料4に いろいろ意見が出た中のいくつかの項目を、特にiPS細胞に限らずいろいろな多能性幹細胞については、 若干の議論が必要と認識しており、そちらをWGでしっかり議論していく手筈を、現在整えています。 研究を止めるという意味はないのですが、これから若干の議論をして、それをもう一度この委員会で コンセンサスを得たいと思っています。特にiPS細胞は、新しい大変期待の持てる細胞であるだけに、 逆に慎重に、さらに一歩進んだ議論をしたいと考えているところです。  iPS細胞の使用方法について、どちらの場所に書いたほうがよいかですが、細胞のところに、特別素 晴らしい細胞という意味も含めて書き込んで、あと、いくつか検討討項目があることだけ明らかにし て、それが検討されたらそういった細則は省いていくというような準備段階です。初めから抜いたほ うがいいというご意見もあるのかもしれませんが、議論した上で抜いたほうがいいのではないか。も ちろん議論ばかりしていても始まりませんので、なるべく短期間に、数カ月のうちに議論を終えて、 その意見をこの委員会のほうにまた上げさせていただき、進めていきたいと考えています。 ○高坂委員 これだけ議論して、いま、この委員会の中で他家と自己というのはなくてもいいという 結論になっているわけですから、それをどうして更にWGでやる必要があるのですか。 ○事務局 自己と同種は一緒にすべきという認識です。 ○高坂委員 それは、いまの議論というのも、自己と他家については結論が出ているわけです。それ は明らかに修正をかけろということでよろしいのでしょう。 ○事務局 それは当然、そのとおりです。ただ、iPS細胞については、こういう項目だけ議論しましょ うということだけは、明示させていただきたいと考えています。 ○中内委員 いまの話は、細則を残すという想定のもとに、WGで細則の内容を検討する。しかし、今 までの議論では細則はなくてもいいという方が私は多いと判断しているのですが、そうなると、せっ かくWGを作っていただいたので、むしろ細則よりも他家と自己を考えた場合に、他家の場合に限って 何か注意しなければいけないことがあるかどうかを、検討していただくのはどうでしょう。 ○永井委員長 いまの細則と言われるのは、何章の細則ですか。 ○位田委員 新旧対照表の5頁です。これを、いま修正しようと言っているわけです。第1章の第5の 1(2)の細則2を修正しようという案が出ているので、これは自己移植だけに限定するということなので、 自己も他家も一緒にやるとすれば、この細則は要らなくなるというのが中内先生の案です。 ○永井委員長 (2)の2というところですね。この辺、細則は自家と他家は区別しない。全体的に少数 例で慎重に始めていくという方向だと思いますが、よろしいでしょうか。ここの細則の赤の部分は削 除するということですね。それから「提供者に移植又は投与を行う場合に実施されるものとする」と いう、ここもなくなるという理解でよろしいですか。  もう1つ非常に重要な議論があり、8頁の9、第3章の第1の6、手術等で摘出されたヒト幹細胞を 利用する場合、手術等がヒト幹細胞の採取の目的を優先して行われることがあってはならないと、こ れは旧来からの制約があったわけですが、ここをどう書くかについてご議論いただけますか。   ○梅澤委員 細かいことかもしれないですが、β細胞の移植等で、この指針の適用の範囲に入ってし まいますか。もし入ってしまうと、今までは規制されていなかったものが、規制される形になってし まいます。これはもしかしたら例外なのかもしれないですけれども。 ○永井委員長 単なる臓器移植ではなくて、幹細胞移植になりますか。 ○梅澤委員 臓器移植の扱いであれば、委員長のおっしゃるとおりです。臓器移植という扱いであれ ば、それで結構です。確認させていただきました。 ○永井委員長 ランゲルハンス島の移植ということですね。 ○梅澤委員 はい、臓器移植という範疇だと思います。 ○永井委員長 ほかに、いかがでしょうか。特に手術目的、要するにドナーの立場の方が出てくるわ けです。そうするとパンチバイオプシーもいけないということになりかねません。 ○位田委員 新旧対照表の21頁の第3章の第1の6ですが、「なお、手術等が、ヒト幹細胞の採取の 目的を優先して行われることがあってはならない」ということですから、本来、手術することがある 程度決まっているけれども、その手術をする時に、本来の目的の手術をある意味では蔑ろにして、幹 細胞を取るという方向であってはいけないという話ではないでしょうか。当然、ドナーから幹細胞を 取るときにはそれなりの手術が要ります。これは手術をしてはいけないと書いてあるわけではない。 つまり幹細胞を取るために手術をしてはいけないと書いてあるのではなくて、何らかの別の理由で手 術をするのですが、その時に本来の病気の手術ではなくて、幹細胞を取る目的で、例えば手術の時期 を早めるとか、そういうことがあってはいけないという意味の、優先して行ってはいけないという話 なので、優先してということは、AとBがあって本来ならAが目的だけれども、Bを優先してはいけな いという話なので、ここのパブコメに対する回答が若干違うかなと私は思います。そうでないと他家 移植なんていうのは基本的にできなくなってしまうと思います。 ○澤委員 私は外科医の立場からも、いま位田委員がおっしゃったとおりだと思って、そもそも解釈 していました。手術適用を細胞を取るために変えてはいけないと、それはおかしいです。そういう書 きぶり、意味合いだと。ただ、細胞を取るための手術をしてはいけないということが、こんなところ に明記されていたら細胞治療は全く進まないし、そこはリスクベネフィットですので、ベネフィット を考えて他に代替治療がないために細胞治療を取るのに、その細胞治療を取るための手術をしてはな らないということであれば、誰も細胞治療はできなくなりますから、ここは前者の手術適用を細胞治 療を優先するために変えてはいけない、という読み方でいいのではないかと考えました。 ○中畑委員 私もそういう解釈でいいと思います。骨髄移植、骨髄バンク肝移植、実際は麻酔をかけ て骨髄を取ってやっているわけですけど、そういうことまで全部否定されてしまうことになりますの で、もともと予定されていた手術で患者さんのために行う手術を、細胞を取るということで変更して はならないという解釈だったら、当然、論理的にあり得ると思います。そういう解釈でいいと思いま す。 ○武藤委員 指針の文章なのに、解釈に悩むというのはあまりいいことではないと思いますので、先 ほど澤委員からご提案いただいたように、もうちょっと明確な書きぶりに変えるというのは、いかが なものでしょうか。 ○永井委員長 事務局、何か提案はありますか。 ○事務局 是非、ご意見をいただきたいところです。 ○永井委員長 現行のガイドラインがそうなっているのですね。別にいま、そういうふうにしたとい うことではなくて。 ○町野委員 やはりこれ、かなり変えなければいけないと思います。これを見ますと、提供を受ける 場合は、まず最初に死体が出てきて、その次に手術に際して取ったときについでに取れるというのが あるから、それ以外は取れないかのようにこれは読まれてしまいますので、それでこういうパブリッ クコメントの時のこれが出てきたのだろうと思いますから、どのような場合に提供を受けることがで きるか。要するにソースの問題ですから、それをある程度明確に書くことによって、これができる。 これはおそらく前のほうで、一般的に生きている人からもらうときはこうしなさい、インフォームド ・コンセントをちゃんとしなさいという話があって、次に死体があって、そして手術の時に、こうい う時は取れますよという話で、そういう順番で並んでいるのだろうと思います。そこをもうちょっと 明確にしていただけると、理解が可能だろうと思うし、こういう誤解が生じないだろうと思います。 ○永井委員長 澤先生、何かいい書き方はありますか。 ○澤委員 これはよく見ると、6番で「手術等で摘出されたヒト幹細胞を利用する場合」と書いていま す。ですから、その場合においては確かに手術適用を変更してまで優先すべきではないという、先ほ どの文言でクリアではないか。それ以外の手術等で摘出されたヒト幹細胞を用いるのではなくて、元 来、細胞治療を目的として手術をする場合は、その限りではないという解釈だと思うのです。 ○永井委員長 文章を言っていただけますか。 ○澤委員 文章を考えます。どこかで入れるべきなのですけど。 ○町野委員 ここで時間を取るのも何ですが、この死体の場合の5と手術の場合の6を入れ替えること で、かなり明確になるように私は思います。生きている人からいただく時は上のほうからきて、その うちの1つの例が手術の際にもらう場合があると。次に死体の場合というのは、要するに死んでいる人 ですから、その人自身の権利という問題では直接はないわけです。だから、それが次に付加的なもの として最後に来る。ただ単純に入れ替えるだけですから、それほど大変な作業ではないと思います。 ○永井委員長 手術等が、ヒト幹細胞の採取の目的を優先して行われることがあってはならないとい うことが、ちょっと誤解を招くというので、そこをどう書いたらいいのかということです。 ○町野委員 いまのようにすれば、生体からいただく時については一般原則があって、ただし、その 中で手術の時については生体からついでにいただくことはできるけれども、要するに幹細胞をもらう ためだけに、手術をすることはあってはならないということで、収まると思います。 ○高坂委員 中畑委員がよく覚えていらっしゃるかもしれませんが、この6の「手術等で摘出されたヒ ト幹細胞を利用する場合」というのは、これを作ったのは、おそらくたまたま手術をして余剰の組織 が出たときに、そこから幹細胞を調製させてくれないかという趣旨だったのです。ですから、いまの 議論とは少し違っていて、iPS細胞の場合には当然、そこで手術をして取らなければいけないので、こ こは修正をかけたほうがよろしいと思います。 ○水澤委員 この第3章全体の文章が、本来のiPS細胞のソースを確保するときに、手術もあり得ると いう形でずっとなっていると思います。いま、おっしゃったように死体と手術を入れ替えた上で、い まは6番で今度は5番になると思いますが、「なお手術等が」というところを澤委員がおっしゃったよ うに、例えば本来予定された手術の適用が変えられるとか、この文章だけ工夫すれば、入れ替えるこ とによって問題は解決するように思います。 ○永井委員長 この手術に少し限定を付けるわけですね。 ○水澤委員 そうです。 ○永井委員長 なお、本来予定されていた手術等が、これこれの目的で採取の目的のために変更され ることがあってはならないと。 ○水澤委員 適用をということです。 ○永井委員長 手術の適用、「本来予定されていた手術等の適用が」ですか。 ○澤委員 いま、いろいろ聞いていると、「なお、手術等が本来の目的の手術の適用を変更して、ヒ ト幹細胞の採取の目的を優先して行われることがあってはならない」、そこに挿入すればいいと思い ます。「手術等の適用」という「等」を入れるほうがいいかどうかは、ちょっと私はわかりません。 「手術の適用」はわかります。 ○永井委員長 位田委員、ちょっと全部を、最後の詰めですから。 ○位田委員 「なお、手術等が」、ここまでは一緒です。「本来の手術等の適用を変更して」という のを挿入して、その後は今のままで「ヒト幹細胞の採取の目的を優先して行われることがあってはな らない」、だから挿入する部分は「本来の手術等の適用を変更して」という言葉を入れる、それでい いでしょうか。 ○永井委員長 「手術等が」が重複してしまって、読みにくいように思います。 ○位田委員 では「手術」を取って、挿入するのは「本来の適用」と言ってよろしいですか、「本来 の目的」と言ったほうがよろしいですか。「本来の適用を変更して」と。 ○永井委員長 「本来の適用を変更して」というのを、「手術等が」の後に入れると、それで整理が 付くのではないかということですね。 ○位田委員 「本来の適用」と言うほうがいいのか、ちょっとそこはよくわからない。 ○澤委員 適用のほうがいいと思います。目的は同じだと思います。手術すべきか、すべきでないか というのは、その重症度とか早くやらないとかそういうことは適用という言葉で、目的は同じでも、 する、しないということですね。 ○永井委員長 そこは、そのようにさせていただきます。ほかに何かご意見はありますか。例えば第4 章第1の1、調製工程において取違え防止策として、「同一室内」で同時期に扱わないと記載すべきか、 「同一区域」と記載すべきか、こういう問題がもう1つ事務局から出されています。第4章第1の1を ご覧ください。 ○梅澤委員 パブリックコメントは、取違え防止のためにもともとのQCの中で、細胞を同一空間の中 で取り扱わないことによって限ることで、取り違えを防止するという、非常に必要な規定だと考えて いますが、それが同一室内になってしまうと、一見、規制が強化されたというふうにも思われます。 もしインキュベータが全く別にあれば、取り違えの確率は極めて低いと予想します。そういう書きぶ りであるもともとの同一区域、空間という意味の書きぶりのほうが、私としては適切なのではないか と感じています。いかがでしょう。 ○永井委員長 いかがでしょうか、ここは。 ○高坂委員 梅澤委員の意見に賛成です。ES指針のときにも、今までは人を部屋単位で規制をかけて いたのですが、原則的には例えばクリーンベンチ単位、あるいはインキュベータの単位で混在させて はならないということを明確にすれば、取り違えというのは起こってこないと思うので、ここは若干、 緩和してもいいのかなという気はしています。 ○永井委員長 同一区域でですか。 ○高坂委員 同一インキュベータ内で混ぜてはならない。 ○永井委員長 同一区域と扱わないと。 ○高坂委員 あるいは同一クリーンベンチです。 ○山口委員 確かに取り違えの問題もあるのですが、もう1つ交差汚染の問題を考えて、例えば同じ人 が2つの細胞を同時期に使ってはいけないとか、細胞治療GMPの中ではそういう趣旨で書かれています ので、空間を区別するだけが必要なのかは、また別問題だと思いますし、それは合理的にやればいい と思いますが、趣旨としては取り違えと交差汚染の両方を担保しないといけないところだと思います。 この中に書きぶりとして、原則としてと、ただこういう手段を取ることによって交差汚染も防げるの であれば、それはそれで取り入れることだと思います。 ○永井委員長 どういうふうに書けば、よろしいですか。例文をもってお願いしたい。 ○山口委員 ちょっと考えます。 ○鹿野委員 いわゆるGMP的な考え方でいくと、面積的な範囲としては区域のほうが広く、室内のほう が狭いという感覚になりますので、区域と室内の定義というか、意味を明確にしておかないと混乱が 生じると思うので、それも併せてご検討いただければと思います。いま山口委員がご指摘になった部 分もありますので、法令、通知等を確認して、その辺の整合性をとって記載するように検討してくだ さい。 ○永井委員長 あとで、これはまた最終的な文章を後ほどでもお寄せいただければと思います。 ○山口委員 永井先生のほうまで。 ○永井委員長 最終的に調整したいと思います。そのほか全体を通して、いかがですか。 ○位田委員 細かいことですが、見直しについての質問に対する回答案で、まとめ案のいちばん最後 の10頁です。「本指針の見直しは、施行後5年を待たずとも、科学技術の進歩、ヒト幹細胞の取扱い に関する社会的情勢の変化等を勘案して」、指針では「必要に応じ」というのが入っていますので、 ここは「必要に応じ」と入れておいたほうが。何もなければ5年見直しで、そうでなければ必要に応じ て1年でも2年でもやるという趣旨が、もともと入っていますから、「勘案して必要に応じて」と書く ほうがより最適かと思います。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。 ○武藤委員 私も細かいことですが、いまの資料2の8頁の第1の8で、倫理審査委員会に関する適切 な審査の要望というのがあります。これは回答案で「厳格かつ公正な審査をしていただいておりま す」と確約していますが、それであればそれでいいかと思いますけれども、していただいているし、 かつ、今後もそのように働きかけるとか指導するとかいうことで、見守るような文言を入れていただ くほうが、お書きになった方の希望する答えになるのではないかという気がしました。 ○永井委員長 これは、そのように記載させていただきたいと思います。ほかに、いかがでしょうか。 ○中畑委員 さっきのWGというのは、どうなるのか。iPS細胞を例えば検討すれば、安全性をどう担 保すればいいかということについて、iPS細胞もこれから臨床に向けての指針とかは、どっちかという ことになりますので。 ○永井委員長 まだいろいろなご議論があると思います。進め方のところについて事務局から、いま の点ご回答いただけますか。 ○事務局 全体的な進め方だけ順番にお話させていただくと、いま、ご意見をいただいて、さらに変 更のご意見をいただいた上で、確認した皆さんの意見も正確に反映させた上で、改正試案というのを 最終案として作成し、7月8日に改正される厚生科学審議会科学技術部会に報告する予定にしています。 その後、具体的な告示の作業を進め、改正指針というのを発出していく形になって、告示の時期とし ては8月中に告示できればと考えています。  今までいろいろな意見がありましたけれども、資料として提出したのが過剰なものだったかもしれ ませんが、いくつかの問題点がまだあろうというところで、特にES細胞細胞についてはまだ全然議論 が進んでいないところですので、そういったところをメインに、先ほどご指摘のあったWGについて、 記載事項についての議論が必要あるかないかという判断をしていただければいいですので、それをな るべく短期間に進めた上で、最終的にES細胞の指針も含めた部分改正というのを、最終的にもう一度 予定しています。ES細胞の臨床研究、もしくは必要があれば同種または複数の患者さんに対して、iPS 細胞を投与するような臨床研究についての懸念事項とか、書き込む、書き込まないは別にして、議論 した上で進めていくという想定でいます。 ○中内委員 パブコメにも意見があるみたいですが、今回、ヒトiPS細胞を対象としたガイドラインと なっていますけれども、世界的に見ると、安全性の面からはヒトES細胞を使った臨床研究のほうが進 んでいるわけです。日本だけあえてiPS細胞というのはわからない。いろいろな事情があるのでしょう けれども、もしWGができているようでしたら、ヒトES細胞の臨床研究についても是非、検討していた だきたいです。よく考えられているとはいっても、一応、先ほどの細則にあった、自己と他家の移植 に関してもう少し細かく考えれば、修正すべき点、あるいはチェックすべき点もあるかもしれません。 そういうことを是非検討していただきたい。 ○永井委員長 おっしゃるとおり、ES細胞についてはほとんど基盤ができていません。そこをまずワ ーキングで取り上げて、こちらに意見を上げていただくことが重要なミッションではないかと思いま す。 ○梅澤委員 永井委員長のおっしゃるとおりだと思います。まずこの課題の順番として、WGでもし検 討いただけるとしたら、1枚めくってES細胞の課題で1.、2.、3.とありますが、特に3.がもしFDA等 で承認されたときに、個人輸入といった可能性も否定できませんので、いま委員長がおっしゃったと おり、議論の順番についてもご検討いただけたら非常にありがたく思います。 ○高坂委員 ES細胞の議論を早くしていかなければいけないと私も思いますが、WGでやっていただく ときに、文科省のES指針で相当議論をやっているところなのですが、例えば最初の個人情報のことな んかも含めて、そちらのほうの委員の方で、例えば位田先生はお忙しいと思いますが、町野先生とか、 そちらにも入っている方がいらっしゃるので、是非、そういった方も入れた上で議論したほうが、早 目に進むのではないかと考えます。  もう1点は、このWGの検討事項の中で倫理的な問題というのは、幹細胞だけに関わる問題ではなく て、広く臨床研究指針にも非常に関わってくるところなので、そういった意味で特に個人情報の保護、 いわゆるインフォームド・コンセントのところでは包括同意、あと匿名化の問題といったところを、 きちっと議論していっていただければありがたいと思います。  提供者の権利についてですが、いま、ここで議論するのが妥当かどうかというのは問題ですが、将 来的にもこういったものは重要になってくるので、今すぐWGで検討する必要はないのではないかとい う気がしています。そういうことで是非、WGでしっかり議論していただきたいと思います。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。そうしますと、このWGについてはご承認をいただけますでしょ うか。委員のメンバーとして資料5をご覧ください。今日、実は既にお見えになっていただいていて、 京都大学iPS細胞研究所の青井先生、国立医薬品食品衛生研究所の内田先生、京都大学再生医科学研究 所の末盛先生、明治学院大学の辰井聡子先生、今日はご欠席です。医薬品医療機器総合機構の福田恵 理子先生、先端医療振興財団の松山先生ということで、この委員候補の先生方をお認めいただければ と思います。そしてWGで検討内容、指針として、さらに追加すべき点などが出てきましたら、それを 整理した後に本委員会で引き続きご議論いただくということで、9月あるいは10月ころの開催で、こ の委員会を予定しています。これが、これからの予定です。 ○梅澤委員 WGからこのような検討課題について、この委員会のほうに、いつごろ中間的なご報告み たいなものがいただけますか。事務局としてはいつごろをお考えになっていらっしゃいますか。 ○永井委員長 事務局からどうぞ。 ○事務局 いま予定しております日程は、7月、8月にそれぞれ2回ずつ予定しています。議論の内容 にしても、日程は代わると思います。 ○高坂委員 お願いしたい点ですが、文科省のES指針もかなり密接に関連してくることなので、その 中から1人WGに入れられたほうが私はよろしいと思います。この中で4人ぐらいの委員がメンバーで すが。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○事務局 どなたか自選、他選がありましたら。いま現在予定しているのが、7月14日をまず第1回 目ということを想定しています。あと日程の調整をした上で、時間の融通のきく方がよろしいのです が。 ○町野委員 法律関係の人は、私はこれ以上必要がないと思っています。むしろ臨床だとかそっちの ほうの研究者の方が入られたほうがいいのではないかと思います。 ○高坂委員 研究者ということであれば、ESが専門でいらっしゃる中内先生がいらっしゃいます。 ○永井委員長 なかなかこの場では「ノー」と言えないでしょうから、また改めて事務局から打診さ せていただきますので、そのときはよろしくお願いしたいと思います。  まだいろいろな課題があるかと思います。いかがでしょうか。少し残った時間で、これは是非訂正 したほうがよろしいという点がありましたらご意見をいただきたいと思います。 ○位田委員 先ほど今後の予定をおっしゃいましたけれども、8月中にこの改正指針は告示をされると いうことですよね。こっちはiPS細胞を中心にした改正ですが、もしWGの結果が例えば9月ぐらいに 出るとして、今年中にもう1回改正があるという理解でよろしいのでしょうか。 ○事務局 意見がまとまると考えていますけれども、その準備とか審査もありますので、また数カ月 かかってしまいますから来年度になるイメージです。 ○位田委員 質問したのは、iPS細胞の部分も変更するのであれば、たぶん現場が混乱すると思います し、ES細胞を加えるのであれば今はES細胞は除いているわけで、これはあまり問題ないかと思います が、あまり時間をおかずに改正をやってしまうと、かえって現場の人が対応に困ると思いますし、倫 理委員会のほうも困ると思うので、もし近々にもう一度改正ということであれば、何らかの形でもう 少し早くするか、この改正の告示をもう少し後にして、一度に改正するほうがいいのではないかと思 いますけれども。 ○事務局 iPS細胞に関しては、今度は細則の議論をするという対応がなくなりましたので、iPS細胞 に関しては大きく変わらないという認識でいます。ですから、あとはES細胞が付け加わると認識して います。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。時間になりましたので、本日、いただいた委員の皆さんのご意 見を更に反映させて、指針の改正案とさせていただくことにします。また、さらにお気づきの点がご ざいましたら事務局のほうにお寄せいただきたいと思います。事務局より今後の予定についてご説明 をお願いします。 ○事務局 今後の予定は先ほどの説明のように、指針の改正をなるべく早く進めていく。ES細胞につ いても順次付け加えていく予定です。最後に、厚生労働省医政局研究開発振興課の佐藤室長から、ご 挨拶を申し上げます。 ○医政局研究開発振興課 佐藤でございます。本来でしたら研究開発振興課長の千村がご挨拶を申し 上げるところですが、別件で急な用がございまして私からご挨拶申し上げることになりました。ご了 承いただければと思います。  今日、さまざまな議論をいただきました。12回にわたり、大変ご熱心な議論をいただいたところで ございます。そのことに関しまして、まず厚く御礼を申し上げたいと思います。今日、いくつか宿題 等もいただいたかと思いますが、事務局としても今後、引き続き幹細胞臨床研究が適切に行われます よう誠心誠意努力していきたいと考えているところでございます。引き続き、今日お集まりの先生方、 あるいは関係者の方々のご指導、ご協力をお願いしまして、また、これまでのご尽力に改めて御礼申 し上げまして、簡単でございますが課長に代わりまして感謝の言葉とさせていただきます。ありがと うございました。 ○永井委員長 私のほうからも委員の皆様方に、改めて御礼を申し上げたいと思います。ありがとう ございました。それではこれで本日の、第12回専門委員会を終了させていただきます。ありがとうご ざいました。 照会先:医政局研究開発振興課 田邊(2590)