10/06/25 第4回審査支払機関の在り方に関する検討会議事録 10/6/25 第4回 審査支払機関の在り方に関する検討会議事録 (1)日 時:平成22年6月25日(金)10:00〜12:00 (2)場 所:ホテルはあといん乃木坂 3階312号室 (3)出席者:粟生田委員、足利委員、飯山委員、岩田委員、遠藤委員、齋藤委員、 高田委員、高橋委員、田中委員、長谷川委員、村岡委員、 森田委員(座長)、山本委員、横倉委員、渡辺委員、高智オブザーバー、 山口ゲストスピーカー        〈事務局〉        外口保険局長、唐澤審議官、神田総務課長、吉田保険課長、伊藤国民        健康保険課長、佐藤医療課長、矢田保険システム高度化推進室長 (4)議事内容 ○森田座長 皆さん、おはようございます。それでは、ただいまから「第4回審査支払機 関の在り方に関する検討会」を始めたいと思います。  まず、本日の委員の出席状況につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。 ○吉田保険課長 おはようございます。事務局、保険課長でございます。  本日は、委員全員の御出席をいただいております。  なお、会場が若干狭くて申し訳ございません。よろしくお願いいたします。 ○森田座長 本日は、ゲストスピーカーとして、国家公務員共済組合連合会虎の門病院の 山口徹院長に御出席いただいておりますので、御紹介いたします。ありがとうございます。  山口院長におかれましては、既に当検討会でも配付されました支払基金の「審査委員会 の在り方に関する検討会」の座長として報告書をとりまとめられました。本日は、審査委 員会の在り方に関する検討会の座長として報告書とりまとめに当たっての御感想や、そも そも審査についての御認識などについて御発言をいただき、その後、議論に参加していた だくこととしております。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、早速ですが、議事に入ります。本日は、審査に関する議論の第2回目という ことで、「審査の質の向上、査定率の差異などについて」議論をお願いいたします。  まず、事務局より説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。 ○吉田保険課長 事務局でございます。  お手元の資料の、まず1と2を御確認いただければと思います。資料1が、これまで過 去3回の御議論をいただいた資料を項目別に整理をさせていただいたものであり、このう ち、本日は特に資料1の1ページ、1の(1)のロと書いてございます点、2ページ目の ハと書いてございます点、3ページ目のニ、ホ、この辺りを中心に御議論いただければと いうことで事務局は準備をしてございます。  資料2を御確認ください。今、申し上げましたような全体のテーマの位置づけの中で、 本日は特に「審査の均一性の確保」について御議論をいただければということで、議論の 整理をさせていただいております。資料2の1ページ目に全体の構成を書かせていただい ておりますが、大きく3つの柱プラス1つという形になってございます。前3つが審査に 関することで、お手元の資料2の1ページの下の箱にございますように、3本柱のうちの 1つ目は「審査の均一性に影響を与えている要因」ということ。1つ目の○が、特に審査 基準の問題。めくっていただきまして2ページ目にわたりますが、2つ目の箱といたしま して、審査委員の皆さん方によるルールの適用に関する論点。3ページ目、3つ目の問題 として、この会議でも御発言ございました、そもそも審査に当たっての誤りのない適正な レセプト、どのようなレセプトが出ているかという点が小項目としての3つでございます。  審査の大きな2つ目の柱といたしまして「審査の均一性の確保のための手法」というこ とで、3ページ目の1つ目の箱にございますのが、基準の統一という考え方。4ページ目 にございますのは、審査委員の先生方の医学的な判断を均一化するためにどういうやり方 があるのか。そして、5ページ目に、誤りのない適正なレセプトを御提出いただくような 環境整備にどんなことがあるのか。  そして、5ページ目でございますが、審査に関する3つ目の問題として「査定率の差異 の原因、査定率の評価」というテーマを掲げてございます。この3つ目の柱につきまして は、お手元の資料の中にございます参考資料2、縦表でございますが、「審査支払機関の 査定率等の比較」ということで、都道府県別に支払基金及び国保連について、関係資料を とりまとめてございます。  特に参考資料2の1ページ目及び一番後ろのページには、これまでこの場でも「査定率」 という言葉を議論する際に、本当に同じ数字、同じ定義によって議論しているのかという 問題提起もございましたので、査定率とはそもそもどういう数字なのかというのを整理し た表を、イメージではございますが、付けてございます。  また、参考資料2の後ろから2枚目には、この場で前回御議論のありました支払基金及 び国保連との間で審査委員1人当たりの査定の件数、あるいは点数について、少し年次的 な動きもまとめさせていただいております。  アジェンダでございます資料2に戻っていただければと思います。以上のような事実関 係の資料も用意させていただいた上で、資料2の5ページ目、3番目の柱でございますが、 「査定率の差異の原因、査定率の評価」を掲げさせていただいております。  それから、資料2の6ページ目、最後でございますが、3つの審査に関する柱につけ加 えて、「審査データの公開・活用に関するその他の論点」ということで、論点を1つ挙げ させていただいております。これにつきましては、お手元の参考資料3という横のレジュ メを御確認いただければと思います。参考資料3として、審査基準の公開、レセプトデー タの活用について、これまで、この場でも御議論ありましたようなものを、事務局なりに 整理をさせていただいております。公開及び活用というテーマについて、大きく2つの切 り口、柱があるのではないかと私どもは考えております。この参考資料3の1枚目、2枚 目にわたりまして、基本的には1つ目の柱として、審査の質の向上を図るために審査基準 等を公開するという切り口。2ページ目でございますが、その審査の結果として把握され たレセプトデータを疫学調査などでの活用という、審査機関が保有するデータを更に広く 活用するという切り口。少し頭の整理をするために、2本、柱を分けてございます。  戻っていただきまして、参考資料3の1ページ目、審査によって得られたレセプトデー タを審査基準等に活用するための公開についても、まず支払基金を例に挙げさせていただ きますと、審査基準、あるいは審査のルールを公開しているということで、どのような現 状があるかということで、3点、ア)、イ)、ウ)と挙げてございます。  ア)としてございますのは、オンライン請求が行われた際の受付・事務点検について、 既にコンピュータ上のチェックロジック、ASPというシステムが活用されていること。 これについての資料が別添1として後ろに付いてございます。  イ)として「医科電子点数表」という形で、算定ルールを明確化する観点からの取組み、 その手引きについて、別添2として後ろに付けてございます。  3つ目、ウ)として、この会でも御議論ございましたように、審査が今、どういう形で 取り扱われているかということを透明性を高めるためにということで、審査上の一般的な 取扱いにかかわる事例を既に公表されております。それが別添3として、多少分厚くなっ てございます。  支払基金では、このような3つ、事務点検のASP及び電子点数表、そして審査の事例 については、ホームページにおいて、そこからダウンロードできるという仕組みで公表さ れていると承知をしております。  また、個別の審査について、その結果がどのように保険者、あるいは医療機関の方々に 返っているかということもこの場で議論になりましたので、その関係の資料、事実関係を 別添4として付けさせていただいております。  同じような切り口から、国保連、国保中央会側の取組みとして3つ御報告をさせていた だきます。  1つは、チェックロジックについて、国保側は、本年7月を目途に公開という形で今、 取組みが進んでいるという点。  国保側の2つ目、イ)としてございますように、画面システムという国保連における取 組みの特徴が1つございますが、その算定ルールについて、23年度中にチェック内容を中 央会が公開するということで今、予定されているという事実。  そして2ページ目のウ)にございますが、審査の取扱いを統一すべき事例については、 現在、中央会が国保連からの情報をもって配布しておりますが、22年度から国保連側も公 開するという取組みを進めておられることを御報告申し上げます。  大きな柱の2つ目としまして、疫学調査などにレセプトデータを活用するという取組み につきまして、2ページ目から3ページ目に向けて書かせていただいております。支払基 金側、国保連側共通の話として、ナショナル・データ・ベースという取組みを進めており ます。ナショナル・データ・ベース、NDBと書いてございますが、レセプト情報の提供 についてという事実を1つ書かせていただくとともに、本資料の後ろには、これに至るま でに過去の検討会が行われたことについての報告も付けさせていただております。  審査支払機関共通の取組みとして、NDBに次ぐ2つ目の取組みとしては、お手元の参 考資料3の2ページ目の下の方にございますが、既に「社会医療診療行為調査」でありま すとか、あるいは「メディアス」と通称されております「医療費の動向」に関するデータ の公表に審査支払機関からいただいたデータを活用させていただいている。  あるいは3ページ目でございますが、それ以外にも、公費負担医療実施機関部局への情 報提供でありますとか、支払基金、あるいは国保連、中央会におかれましては、それぞれ 関係自治体への情報提供などが行われているという事実を整理をさせていただいておりま す。  私どもの関係資料については以上でございます。 ○森田座長 ありがとうございました。  続いて、本日の議題の支部間差異、国保連間の差異について、支払基金東京都国保連か らの資料の提出がありますので、それぞれ簡潔に御説明いただきたいと思います。 ○足利委員 支払基金でございます。  お手元の資料3−1でございます。2点ございまして、「審査委員会の機能強化のため の新たな方策」と「レセプト交換による支部間差異の調査」。それから、資料3−2では、 私どもから審査の関係での要望をこの場をかりてさせていただくということでとりまとめ をしておりますので、簡単に説明をさせていただきます。  1点目は、また後方、本日のゲストスピーカーでいらっしゃいます山口先生からもお話 をいただきますが、私どもで設置をしました「審査委員会のあり方に関する検討会」、2 ページに出ておりますが、ここでの検討を踏まえまして、支部間の差異に関する指摘をい ただいております。これを踏まえて、私ども、現在の枠組みの中でできる限りの対応を講 じていくということで対策を今、講じようとしているところでございます。指摘としては、 これから新しく支部間の差異を発生させない。それから、従来からある差異につきまして も、できるだけ解消を図っていく。それから、保険者からの提起が多いことを踏まえて、 保険者からの指摘事項についての検討体制の整備、それについてスピード感をもって臨む ということでございます。  具体的な対応の方策としましては、7ページでございます。今月からでございますが、2 2年の6月から、審査に関する相談窓口の設置、診療科別の専門分野ごとにワーキンググ ループを設けまして、個別の具体的な医学的判断の分かれる部分について、専門の審査委 員の先生方に集まっていただいて見解を作成していただくものでございます。具体的には、 9ページのワーキンググループの設置ということで考えております。現在、それを進めて いるところでございます。  その他、これまで各都道府県ごとに審査委員会で審査をするということで、どうしても そういう差の調整が行われにくいということから、委員長間のブロック別の会議を持つで すとか、あるいは、小さい支部では専門の診療科の先生がいらっしゃらないというところ では、ほかの支部の専門医の審査委員の方に対して相談をかける体制を整えていく。これ が11ページです。  それから、医療顧問ということで、これまで常勤の審査委員でいらした方を、より本部、 支部との連絡調整の職務に従事をしていただくということで、医療顧問という形で新たに 設置をしております。これをこれからもっと強化をしていこうということで、13ページが その配置の今後の予定、それから、現在の配置状況でございます。169人配置をする予定 にしておりまして、現在63人でございます。  それから、支部間差異の実態を把握をするということで、レセプトの交換をしまして調 査をしたところでございます。これまでなかなか実証するデータが乏しいということを踏 まえまして、原審査査定点数率の高い支部、低い支部、それらの支部間でレセプトをコピ ーを取りまして、それぞれに審査委員会で審査を行っていただく。それから、第三的立場 で、別の審査委員会でもそれぞれのレセプトをチェックをしていただくと、そういうこと を行ったところでございます。  お断りですが、17ページで、このレセプト交換の件につきましても、先般お配りをして います検討会の報告書の中にも資料として載せてございますが、査定率の違いがある。し かしながら、その大きさは、全体のレセプトの98.85%は原審査及び再審査で査定されて いない、点数でも99.75%は査定されていない。そういう残りのものの中でのこういう差 異ということをあらかじめ御承知おきいただきたいということでございまして、18ページ にあるような形で、山口支部と福岡支部と、それぞれ8,700枚ずつを抽出しまして、お互 いに審査をしてみたということでございます。  23ページは、同じレセプトを、山口支部のものを福岡支部がやってみると、点数では8. 2倍とか、そういった実態。24ページは、福岡のものを山口、そして千葉でやると、こう いう状況になっているというものでございます。  25、26ページで見ますと、グラフで見ますと、かなり差が生じていることになっている わけでございます。  現在、私ども、これを受けまして、具体的にどういう事項について、検査ですとか、投 薬ですとか、それぞれあるわけでございますけれども、その詳細な内容の違いについて、 更に調査を行っておりますので、詳細な結果を御報告できるには、もう少し時間をいただ きたいと思っております。  34ページ以降に評価ということで載せてございます。3支部の審査において、査定の実 績などが異なっているということで、差があるということでございます。  35ページ以降ですが、例えば、山口支部のものを見ますと、山口は本来の審査委員会期 間中に審査委員の先生方が審査をする。しかし、福岡に持っていっていますので、福岡で は主任の先生ということで、通常の審査の担当の割り振りとは違う形で行っているという ような、どうしても模擬審査ということになっておりますので、通常のレセプトの審査と は異なる条件下で行われていることを御留意をいただきたいということでございます。  36ページにございますように、引き続き詳細な追跡調査といいますか、更なる分析を行 っているということでございます。  それから、資料3−2でございます。「支払基金としての要望」ということで、電子レ セプトが急速に増加をして、既に8割を超しているという状況になっているわけでござい ますけれども、それに伴って、私どもとしては、よりよい審査を行うためには、これまで の紙レセプトを主体とした、いろんな記載の在り方ですとか、そういったところを電子レ セプト本位へ転換をしていただく必要があるんではないか。1ページ目には「(1)電子 レセプトの記録条件仕様の見直し」ということで、問題点として、今ございます電子レセ プトの記録条件の仕方、仕様については、今までの紙レセプトのものをそのまま置き換え ているということで、コンピュータのチェックが不可能であるということが少なからず存 在をしております。例えば、適用ということで、テキストで入力することになっているわ けですけれども、そうなりますと、なかなかコンピュータチェックができないといったこ とですとか、別個独立に記録するような加算項目と基本項目との関係ですとか、こういっ たことを電子レセプトの記録条件仕様として策定をしていただきたい。  それから、2ページ目でございますが、「(2)レセプトの記載要領の見直し」という ことで、これまた紙レセプトを中心にこれまで設定をされている。例えば、薬価が175円 以下の薬剤の投与につきましては、主傷病から判断できるものにつきましては、傷病名を 記載しなくてもいい。これは、手書きの時代ですと煩雑であるということであったかと思 うんですが、そういったことがそのまま電子レセプトに置き換えられるということでござ いますと、なかなか効率的なシステムチェックができない。3ページ目の「(3)傷病名 の統一」ですとか、そういったところについて、電子レセプトにふさわしい形に置き直し ていただきたい。  それから、「2.レセプトのやり取りの電子化」の「(1)オンライン請求保険医療機 関等の再請求の電子化」ということで、これまではそういう場合にはオンラインと紙媒体 の両方になっているわけでありますけれども、オンラインの部分についてはオンラインで ということにしていただきたいということです。  4ページでは、保険者の皆さんがレセプトの受取りの電子化をお願いしたいわけでござ いますが、保険者等の範囲を明確にしていただきたい。 もう一つ、私どもの業務の中で、審査をするに当たりまして、いろんな施設基準、例え ば、入院基本料7対1とかございますが、当該医療機関がそれを取っているか、取ってい ないかということで、入口のところで審査になるわけでありますけれども、例えば、診療 報酬改定の際に、タイミングが間に合わないと機械によるチェックができないという問題 がございます。  同じく保険医療機関の指定に関する情報提供についても迅速にしていただくことで、私 どもの審査をより効率的、効果的に行うことができるということで、御要望をさせていた だくものでございます。  それから、1点だけ、前回、私どもの東京支部にお越しいただいた折の説明を若干訂正 させていただきたいと思います。職員なり審査委員が担当をどれぐらいのクールで変わっ ているかというお尋ねがございまして、3年と答えたと思うんですが、1年の誤りで、1 年交代で分担替えをしているということでございます。  併せて、国保連に参りまして、2画面の審査ということで、なかなか使い勝手がいいと いうことで拝見をしたわけでございますけれども、私どもも平成24年に機器の更新の時期 を迎えますので、それに向けて、よいものは取り入れていこうということで、2画面審査 の体制を今、検討中でございます。それを報告させていただきます。  長くなって恐縮ですが、以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。続きまして、東京都国保連からお願いいたします。 ○飯山委員 それでは、資料4をごらんいただきたいと存じます。「国保連合会間の差異 について」ということで御用意しております。  1枚めくっていただきまして1ページでございますが、国保連合会の間でも、都道府県 によって査定率の差異がございますので、その要因として考えられる事項ということで記 述してございます。国保連といたしましては、先ほどの基金のような実態調査を行ってい ませんので、現状で考えられるのはこういうことかなというものでございます。  まず最初、国保連間における審査委員数、職員数及び経験年数などによる審査体制の差 が考えられると思います。特に審査委員の数もございますし、2年に1度の改正がござい まして、その改正のときに新しく加わる先生が多い場合には、審査にふなれな方が当初い らっしゃいますと、しばらく査定率が下がるというような事象も出てございます。  それから、各審査委員の審査における判断の幅などの要因による差ということで、この 前から議論がありました抽象的な部分、審査委員の判断による部分について、それぞれの 個々の先生方、あるいは審査委員会の持っている今までの経験等から、非常に厳しい判断 をされるところと、医療の内容を考えられるところと、どうしてもそういう差は出てまい りますので、そこが傾向的に続きますと、判断の幅が連合会によって異なるという事例が 発生しているんではないかと考えられるところでございます。  それに対してどうしているかということでございますが、2回目の私どもの御紹介の資 料でも、2ページと3ページの資料については御紹介しております。同じことの繰り返し になりますけれども、2ページにございますように、できるだけ審査の地域格差の解消を しようということで、審査の実態を把握するために、同じ事例につきまして判定事例を収 集しております。2ページの1つ目の○に書いてございますように、344事例を17年度〜 21年度にかけて収集しておりまして、これにつきまして、調査の結果を各国保連合会に周 知いたしますとともに、70%以上の国保連合会が同じ判定をしているものにつきましては、 これを基として、国保連としてできるだけ統一的な審査基準にまとめていきたいと考えて おります。そういう努力をしている最中でございます。  続いて3ページにまいりまして、今、申し上げました地域格差解消のための調査は、こ のページにございますように5年ごとに再評価をするつもりで調査を行っているところで ございます。  その事例の1つとして、4ページに、17年度、18年度から、70%以上収斂している事例 ということで、入院時・術前(検査前を含む)検査としてHBc抗体価検査を認めている かどうかという調査をいたしましたところ、「認めていない」「原則認めていない」が89. 4%ございました。そういうことで、審査基準の暫定といたしまして、入院時・術前(検査 前を含む)検査としてHBc抗体価検査を認めない、こういう方向で審査を統一できない かということでお知らせをしているところでございます。  非常に簡単でございますが、国保連として、差異の解消について、こういうふうに考え ているということを申し上げました。 ○森田座長 ありがとうございました。  続きまして、先ほど御紹介いたしました本日のゲストスピーカーでいらっしゃいます山 口院長に10分程度御発言をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山口院長 虎の門病院の山口でございます。発言の機会を与えていただきまして、あり がとうございました。  私は「今後の審査委員会のあり方に関する検討会」の座長を務めさせていただきました が、その内容につきましては、今、足利委員からお話がございました。この検討会に参加 させていただきまして一番の感想は、支部間差異とか、審査会の現状、問題点を示すデー タが公表された点が非常によかったんではないかと思います。それから、支部間差異等に ついての今後の方針についての大きな方向性が示された、そこも非常によかったのではな いかと思います。  ただ、私は立場としては、特に入院診療を担う大きな病院の立場でもありますし、また、 学会の保険委員長とか、あるいは日本医師会の疑義解釈委員、あるいはDPC、MDCの 班会議等にも出席させていただきましたので、学会からの立場で見させていただきますと、 この検討会で主に取り上げられました項目は、保険者からいろいろ指摘されております事 項が多くて、学会、あるいは診療の現場でいろいろ問題になっております事項についての 検討は少し足りなかったのではないかという印象を持っております。  しかしながら、現在の実際の診療現場と、保険で決められているいろんなルールとの間 には大きな乖離がございますけれども、その乖離を埋めるような形で審査委員がいろいろ 御苦労されているのだということを、実感として非常に強い印象を持ちました。その意味 で、私はこの検討会で非常に多くのことを学ばせていただいたと思います。  本日お話しさせていただきたいところは、実際にこの審査委員会、あるいは審査委員の 先生方がご苦労されている色々なことの中で、診療のルールに従って審査が行われている というふうに勿論理解をいたしますけれども、その審査のルールそのものが実際の現場で 行われている医療とかなり大きく乖離しているというところのお話を主にさせていただき たいと思います。  日本の保険医療のシステムから言うと、実際の診療を担っている医療機関の役割は当然 大きいわけです。そこにも書かせていただきましたけれども、国保連合会の役員の名簿を 拝見いたしましても、診療担当者の名前はありませんし、支払基金の理事会も4者構成と なっておりますけれども、病院の代表者はそこにはないわけであります。この検討会でも、 拝見させていただくと、病院団体の代表は極めて限られているわけでありまして、病院で の実際の診療を担当している人の声が是非こういうところに届いてほしいと思うわけであ ります。  病院の方からしますと、診療に関する査定の3分の2は入院診療に関する査定でありま す。確かにレセプトの数から言いますと、わずか2.2%ですけれども、査定される額の大 きさから言いますと、入院診療というのは非常に多いわけであります。そうしますと、そ の分、査定に伴うことに関しましては、診療を担当している主治医、受持医にいろいろ負 担が行くわけでございまして、現在の医師の過重労働につながっているのではないかとい う視点も是非持っていただきたいと思うわけであります。  『診療点数早見表』という、保険診療ルールを解説した、有名な本がございますけれど も、過去3回の改訂でどうなったかと言いますと、測ってきましたが、3回前には厚さが 2.8cm、今回の改訂で実にそれが3.5cm、ページが927ページから1,223ページ、3回の 改訂で約32%ページ数が増えています。どんどん電子レセプトになり、何かすごく楽にな るような話でありますけれども、現場の診療担当医師と保険請求の事務方にとっては、負 担はどんどん増えているわけで、決して負担が軽減されているわけではないというところ を是非御理解いただきたいと思います。  それから、いろんな審査委員の先生方は、個々の医療の個別性、そして裁量の余地を尊 重して審査をされているという御苦労をよく理解いたしましたし、是非そのことをキープ していただきたいと思っています。審査の先生方が、例えば、療養担当規則や、薬剤の効 能効果をそのまま機械的に適用したとすれば、現在の実際の臨床には非常に大きな混乱を 来すことになります。  私の専門は循環器内科でございまして、特に冠動脈の狭いところに冠動脈ステントとい う金属製のメッシュを入れて治療する、心筋梗塞とか狭心症の治療が専門でございました ので、私に絡むようなお話をさせていただきます。皆さん御存じのアスピリンという薬は、 鎮痛剤として既に100年前につくられた薬であります。この薬が痛み止めではなくて抗血 栓薬、血管を詰める血栓を予防する効果があることが、1980年ごろには大体確立をいたし ました。今、アメリカなどでも言われていることは、狭心症があるような人には、一律60 歳以上はアスピリンを一生投与しなさい、これが我々循環器内科医の今や常識であります。 しかし、これが抗血栓薬として、いわゆる二課長通知によって認められたのは2000年であ ります。実際に臨床的に我々が認識してから約20年遅れました。  では、その間ずっとアスピリンを処方していた循環器内科は皆査定されていたかという と、それはそれぞれの現場の審査委員の先生方の判断でずっと認められてきておりました し、現場でアスピリンがじゃかじゃか切られて困るという話はありませんでした。そこに はやはり審査委員会なり、審査委員の先生方のそれなりの判断が現場の医療を維持してい たのだと思っています。  私が先ほどお話ししました冠動脈ステントという金属を冠動脈内に入れますと、治療と して非常に効果的なんですけれども、金属の異物を入れますので、血栓ができる可能性が あります。その血栓を防ぐ薬として、当初はワーファリンという薬でやっていましたけれ ども、最初の1か月ぐらいの間に5%ぐらいの血栓性閉塞が起こるということがありまし た。1990年代の中ごろに、それに代わるチクロピジンという薬が抗血栓薬として非常に有 効であるということに気付かれ、比較試験が行われまして、血栓性閉塞率がワーファリン が5%、チクロピジンがほとんど0%に近いという結果が明らかとなりました。それを堺 に、ステントを入れた後の治療としての抗血栓薬はチクロピジンにがらっと変わったわけ であります。  当然、ステント後はチクロピジンにしなければいけないとなったんですが、このチクロ ピジンが抗血栓薬、ステント後の治療薬として認められたのは2007年であります。後でち ょっとお話しさせていただきますけれども、いわゆる55年通知によって、これを是非認め てもらいたい、学会が初めて出した要望の中で、ようやくこのチクロピジンが支払基金で の審査情報提供検討委員会で認められたのが実に2007年であります。約10年遅れていた わけであります。もし薬の効能効果に従って削られていたら、日本の実際の医療の現場で は大混乱を来したということになるわけであります。  そういうことを考えますと、審査の現場で審査委員の先生は御苦労されていると思いま すけれども、その背景には実際の臨床と保険診療ルールとの間にかなり大きな乖離がある ということであります。是非それを縮小するような方向で御検討いただきたいと思うわけ であります。  地域によって、支部間差異と呼ばれるようなものがあります。かなり大きな要因は、各 地域におけるローカルルールと言われて、各地域で決められている取り決めが1万を超え る数ある点です。そうしますと、当然、地域によって、ある程度の差があることは避けら れないだろうと思います。そういう意味では、中央でルールを統一するような方向での検 討がどうしても必要ではないか。各地域の判断が独立しているというのではおかしかろう し、特に学会等の現在の医療はどうあるべきかということに取り組んでいる組織と検討を、 意見を交換する場を是非設けていただきたい、と切実に思うわけであります。  それから、もう一つは、社保と国保で審査の基準が違うことがございますが、臨床の現 場では、患者さんに、あなたは社保ですか、あなたは国保ですかと聞いて、それで治療を 分けているわけでは全くありません。どうして同じ治療が片方で認められて、片方で認め られないのか、現場の医者としては当然納得が行かないわけであります。どういうやり方 がいいのかわかりませんけれども、その判断基準はやはり同じものであってほしいと願う のは当然であろうかと思います。  そういう意味で、是非、中央でルールの解釈、あるいは診療ガイドラインとの不整合な どを検討するような仕組みをつくっていただきたいと思います。先ほど支払基金でそうい う取組みをされるというお話を伺っております。ただ、そういう検討が審査委員会の中だ けで行われるのではなくて、しかるべき学会と、しかるべき病院の診療担当者と話し合う 機会をルーチンなシステムとして取り上げていただきたいと思うわけであります。  是非学会の意見を聞いていただきたいというところがあるわけですけれども、先ほどの 支払基金で、いわゆる55年通知に従って、学会等からの要望が審査情報提供検討委員会で 検討されるようにようやくなりました。しかし、初めて学会がそれなりに、医学薬学上公 知だと、そんなことは当たり前だというところで出した要望の中で、2007年に認められた のは553事例中47事例、8.5%、2009年に認められたのは826事例中33事例、4%に過 ぎません。学会として聞きたいことは、なぜこれが認められなかったか、ちゃんと説明し てほしいということであります。それぞれの学会がそれなりの理由をつけて出した要望だ と思うんですが、わずか4%しか認められなかった。実際の現場の医療と保険審査が乖離 している原因には、その辺の認識の差にもあるんではないかと思うわけであります。  最後に、学会からもう一つ、診療ガイドラインについて一言申し述べたいと思います。 診療ガイドラインに対する誤解があるのではないかという話であります。私は日本循環器 学会という学会の理事長を務めさせていただきました。そのときまでは、ガイドラインは 学会員しか見られないという格好になっておりましたけれども、これは広く専門外の先生 にも見てもらうのが当然だということで、これを公開いたしました。循環器学会はガイド ラインを学会の中で一番たくさんつくっております。現在、46のガイドラインをホームペ ージ上に公開しております。  公開して、どういうことが起こったか。ガイドラインというのは、もともと基本的にエ ビデンスに基づいて、有効で、かつ標準的な診療情報を提供するものでありますけれども、 これ以外にやってはいけないと言っているわけでもないですし、すべての人がそのガイド ラインに沿って治療できるわけでもないわけでありまして、そのガイドラインを標準的な ものとして、それを参考にし、医師と、受ける患者の認識、あるいは患者の価値観等も考 慮して、検討して実際の医療が行われる、これがあるべき姿だと思います。しかし、平成 20年度から診療報酬改定の留意事項に「ガイドラインに沿って」という言葉が急にどっと 増えました。「ガイドラインに沿って」というただし書きがついている項目が平成22年度 の改訂でも23項目ありますが、そのうち6項目は循環器関係であります。ガイドラインを 公表したら、どっと増えたのではないかと言われているわけです。  先ほど私がお話ししました冠動脈ステント留置術、KコードのK−549ですが、経皮的 冠動脈ステント留置術、その近辺のカテーテル治療には、単に「ガイドラインに沿って」 ではなく、「ガイドラインに沿って行われた場合に限り算定する」となっています。これ は明らかにガイドラインというものをよく御存じない人の書かれた言葉ではないかと思う わけであります。ガイドラインに沿わない場合には医療として認めない、こういう話です から、これは医療の現場の認識とは全く異なるものであります。そして、この経皮的冠動 脈ステント留置術のガイドラインというものは1998年〜1999年にかけてつくられたもの で、現在発表されているものは10年前のものであります。したがって、10年前の医療を やったら算定できるけれども、それ以後のやり方では算定してはならない。こういうふう にガイドラインが利用されているということは、非常に悲しい話であります。  これは特殊な事例かもしれませんけれども、現場の審査委員の先生が判断されるルール となるべきものの、薬の薬効にしろ、ガイドラインにしろ、決して現在のアップ・ツー・ デートな診療に全て対応しているものではないということを申し上げたいわけです。その 意味で、ある程度の差異が生ずるのはやむを得ないかと思いますけれども、是非、国保、 社保、あるいは地域間、支部間の差異をできるだけ統一する方向で仕組みをつくっていた だきたい、ということをお願いして終わらせていただきます。  ありがとうございました。 ○森田座長 どうもありがとうございました。  それでは、審査の質の向上、査定率の差異の論点につきまして、ただいまの事務局、支 払基金、東京都国保連からの説明、また、今、いただきました山口院長の御発言に対する 質問も含めて、御意見をお願いいたしたいと思います。どなたからでも結構ですので、御 自由に御発言ください。齋藤委員。 ○齋藤委員 山口先生には大変貴重な御意見をありがとうございました。  ガイドラインが非常に大きな問題であるというのは、まさに御指摘のとおりであろうと 思います。例えば、昨年度行われましたDPCの評価分科会でも、病院の機能評価の中に ガイドラインをどのぐらい使っているかということを入れてはどうかという議論があって、 結局、今回は見送りにはなったのですが、ガイドラインというものが非常な重みを持って いることは事実ですし、また、私自身も支払基金の審査をやっていたときに、議論が出る と、ガイドラインにどういうふうに書いてあるかということになって、よりどころにせざ るを得ないという現状があります。  御指摘のように、ガイドラインは10年遅れのものも多々あるということでございますが、 審査の場でよりどころにすべき学会の最新の知見、方向を何に依存したらよいのか。これ は審査委員たちが皆悩んでいるところで、結局、医学雑誌等に載せられているガイドライ ンがかなり金科玉条のスタンダードにならざるを得ないという実態があります。その辺、 現実的に、最新の学会の知見をどう審査に落とし込むかということについて、学会のお立 場から御意見いただければと思っております。 ○森田座長 では、お答えいただけますか。どうぞ。 ○山口院長 ありがとうございました。  例えば、循環器学会は46のガイドラインをつくっておりますけれども、ガイドラインが そもそもそういう使われ方をするという視点は欠けていたかと思います。ガイドラインを つくるときに、どういう立場でつくるか、必ずしも統一されていません。あるグループは、 理想的な医療はこの領域でどうあるべきか、という視点でまとめます。あるグループは、 欧米のデータも含めて、今ある最新のエビデンスは何か、という視点でまとめます。しか し、これは欧米人のデータであって、日本人のデータではない、日本人のデータから言え ることはどこまでだという立場でやるグループもあります。しかし、保険で通っているの はどうか、保険を最優先でリコメンデーションを書くグループもあります。したがって、 必ずしもガイドラインというのは、統一されて、こういうスタンスでガイドラインが書か れるということにはなっていません。ですから、この領域ではガイドラインでどう考える か、その都度、学会と話し合う機会を是非設けてもらいたい。ガイドラインの文面だけを とらえて、ここにこう書いてあるとかざすのではなく、意見交換の場を通じて適切に運用 されることを、是非お願いしたいと思います。 ○森田座長 ありがとうございました。長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員 山口先生には本当に貴重なお話をいただいて、ありがとうございます。  幾つか論点がありますけれども、ガイドライン関連した部分を確認させていただきたい と思います。最新の医療技術が日本で導入されるのは欧米より遅いと言われていて、ドラ ッグラグとか、デバイスラグとして言われているわけですが、やはり段階があると思いま す。  1つは、その機器なり薬剤が承認されるかどうかという承認手続の話です。  2つ目は、承認されたとしても、最初は適用が限定されている。学問的にはもうちょっ と違う病気にも使えるはずだと、この部分について、審査のところで何とかならないか。 実際にトータルの利益で考えると、非常にいい例もあったという理解でよろしいかと思い ます。  3つ目は、ガイドラインですが、私自身、ガイドラインの評価を1つの専門にさせてい ただいているんですが、ガイドラインに書かれていることはあくまでリコメンデーション なんです。だから、スタンダードでもないし、オプションでもありません。そこが誤解さ れると、変な使い方がされる。  先ほど10年前のガイドラインがいまだに流通しているではないかという話をいただき ました。EBM手法に基づいたガイドラインが日本で導入されたのはほぼ2000年以降で、 循環器病学会などは非常に積極的にお取り組みだと思うんですが、標準的な医療というも のを内外に周知させる。会員にはできるだけそれに基づいた形で、勿論、適用できるかど うかということは患者さんの個別性があるわけですが、基本的にはそれに基づいた治療を していただきたい。そういった意味で、学会の役割がかなり変わってきたと私自身は理解 しています。  ガイドラインとデバイスラグとかドラッグラグの関係から行きますと、通常はガイドラ インの方が、世界じゅうの知見に基づいて改訂されるんで、日本で実際保険適用されるよ りも早く情報が提示されることが多いと思うんです。したがって、ガイドラインが時代遅 れになるんではなくて、むしろガイドラインに書かれたことは診療に対して一定の根拠を 与える。しかも、それは日本で保険で認められるより早いというのが、多くの場合、我々 が経験することだと思うんです。  そうしますと、これは希望なんですが、ある技術が公知の事実かどうかというときに、 例えば、ハリソン内科学の教科書とか、数年置きにしか改訂されない。そういった教科書 に記載されたものは公知の事実として認められるのですが、逆に改訂スピードが遅く、数 年おきにしか改訂されません。ガイドラインの改訂スピードはもっと早いのが普通ですが、 ガイドラインで推奨される治療は、日本ではなかなか公知の事実として認めていただけま せん。むしろガイドラインの改訂に学会として積極的に取り組んでいただいて、それを公 知の事実として適用拡大等に生かすような仕組みの方が現実的、かつ建設的である印象が あるんですが、先生、それについてはいかがですか。 ○山口院長 サポートいただいて、非常にありがたいと思います。ガイドラインをつくる 立場から言いますと、新しい事実が目の前にたくさんあるわけですから、循環器学会でも 基本的な更新は5年となっていますけれども、1年毎にそれぞれ修正するところがないか、 それは全体の冊子としては変えないけれども、変更点はホームページ上には公開するとい う形でアップデートしていこうとなっております。そこで修正された点は、それなりに現 時点での合意が得られて、エビデンスのあることなので、それに沿った形で現場の医療が、 保険審査が認められてゆくという話であれば、是非そうあってほしいと思います。  しかし残念ながら現時点では、エビデンスに基づいた最新の診療をガイドラインに取り 入れると、このガイドラインのとおりやったけれども、保険で査定された、どうしてくれ るんだと学会にクレームが来るわけです。ガイドラインを書く方としては、是非書きたい んですけれども、現実には後ろの方にただし書きで書くとか、あるいは、これは現在は保 険では認められていないので、その使用に当たっては云々と、ガイドラインをつくってい る当事者としては忸怩たるものがあるわけであります。是非その点で、こういうガイドラ インを踏まえた、あるいは現在のエビデンスを踏まえた医療と診療報酬、あるいは審査と の間で意見を交換する場をちゃんとつくっていただき、長谷川先生が言われたように適応 拡大がされてゆくのであれば、ガイドラインもその線に沿ってまとめることが出来ると思 います。そういう形でガイドラインを尊重していただければ非常にありがたいと思います。 ○森田座長 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ、遠藤委員。 ○遠藤委員 山口先生、貴重な御意見ありがとうございました。  私は歯科で、口の中だけを扱っているわけですけれども、1口腔の中でも、歯科医学会 所属の主要学会でも20近くございます。ガイドラインがたくさん出てきますと、一般の歯 科の開業医の場合、全体を実際に見ますので、そうすると、ガイドライン同士がぶつかっ ているというか、ガイドラインを算定ルールにされてしまいますと、どちらを先にやるん だという問題が出てきて、それがまたルール化されておりますと、査定という形で出てき て、それが支部間差異、その判断ということにもかなり影響していると考えているんです。  実際、歯科の扱っている疾患は生活習慣に由来するようなものも多くて、患者の選択性 か非常に高いと思うんです。そうすると、診療の手順とか、そういったものも、患者さん の状態、患者さんの持っているお考えによって相当変わってきてしまうと思うんです。そ の辺がガイドラインの中で合わないということになると、それが査定の原因になっている。 しかも、それぞれの審査委員の方は現場におられますので、それの理解の差でその差が出 てくるということも多分にあるとは思っているんです。これは歯科の特殊な問題かもしれ ませんけれども、ガイドラインが、1つの疾患についてはそのとおりかもしれないんです けれども、いろいろな疾患が当然重なっていますので、それの中での調整というのが非常 に難しいのかなと思っているんですけれども、その辺は、医科の方はまた違うのかなと思 いますけれども、いかがお考えでしょうか。 ○山口院長 循環器学会は非常に広い範囲で46もガイドラインをつくっているというこ とは、診断から見たものと、治療法から見たものと、当然バッティングするような局面は いろいろあります。そういうふうにガイドラインが使われるということであれば、統一の ためのそれなりの検討がやはり必要だと思います。そういう意味で、これが今、問題だと いう提起をして、学会も含めた検討する場があるということであれば、いつでも取りかか れると思います。今は、そういう問題を学会の方から提起する場面も、場所も、窓口も、 なかなかないというのが現実ではないかと思います。 ○森田座長 どうぞ、横倉委員。 ○横倉委員 山口先生、今日はありがとうございます。  今の学会の方からの保険診療の話し合いの場を是非つくってほしいという御意見は、私 どもも全くの同感でございます。前回のこの会でお話ししましたように、私が福岡で審査 委員をしているときも、わからないところは常に専門のグループの先生方に教えを乞うわ けです。そのときの判断基準が、こういうガイドラインがベースになっていきます。会員 の先生方の多くは何らかの学会に参加をしているわけでありますので、その学会のガイド ラインにのっとって治療して査定を受けると、非常に大きなお怒りといいますか、患者さ んのためによい治療をしようと思ってやったことを保険で認めないということについても 批判を受けることがございます。そういうことで、学会や、特に病院団体の保険担当の先 生方の御意見をくみ取る場を是非つくっていただきたいし、私どもも一緒になってそれを やっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○森田座長 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。長谷川委員。 ○長谷川委員 私自身の考えを含めて、情報提供させていただきたいと思います。ガイド ラインはそもそも審査とか査定の目的でつくられたものではないんです。いきなりそれを 別の用途に使うというのはかなり無理があります。例外的に、イギリスはNICEという 組織が、これは日本で言う厚労省の外郭団体という形でお考えいただいていいと思うんで すが、NICEの一部組織がガイドラインづくりのコーディネートをして、そこで推奨さ れた治療法が実際に保険診療にするかどうかの判断の非常に有力な根拠になっています。 そういう例外はありまずか、そもそも目的が違います。  保険に関連したガイドラインの使い道としては、公知の事実かの判断があります。各国 のガイドラインを検討して、そこで推奨されていれば公知の事実として取り扱っていいだ ろうとするものです。  もう一点は、実際の医療が、ガイドラインが開発された時期とは大きく異なっているこ とを認識する必要があります。例えば、EBMの方法論は大体1980年代に確立したんです が、今、疾病構造が大きく変わっています。多くの方は複数の病気を持っておられて、非 常に複雑な状態像を呈するのが現実です。EBMの世界では、健康な方が単一の病気、障 害になったときに、並列関係にある幾つかの治療法のうち、どれがいいのかということを 選択するもので、EBMの手法は、それに有力な根拠を与えます。モデルとしては単純で す。今の医療の現場には必ずしも合っていない。したがって、30年前に比較してと理解し ていただいていいのですが、医療を行うに当たって1つの判断根拠にはなるけれども、限 界があるということも認識しないといけません。それを査定に使うにあたっては、やはり 大きな限界があることを我々は認識しないといけません。以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。山本委員、 どうぞ。 ○山本委員 山口先生、ありがとうございました。  薬の側の意見ですけれども、ガイドラインにつきましては、あくまでも診療のスタンダ ードといいましょうか、目安ということになるので、目安に従って診療した結果、査定を 受けるということがあるというお話でした。とすると、その先には薬が待っていますので、 そもそも診療がだめになると薬もだめになるということになります。先ほどNICEの話 が出てまいりましたが、NICEはたしか薬についても議論しているだろうと思います。 もしNICEのような仕組みをつくるのであれば、診療に伴って使える薬も念頭に置いた 議論を是非やっていただきたいと思います。というのは、薬の場合には使用上のガイドラ インを承認時の適応症とか薬価基準等によって、いわば国が決めています。保険診療では この薬しか使ってはいけない、あるいは適応症の言葉1つ変わると査定の対象になります ので、そういった意味では、ガイドライン以上にタイトに縛り込まれています。  先ほどアスピリンの例がございましたけれども、中身は同じでも、書類の書き方が違う と査定の対象ということになりますと、そもそもガイドライン以前の問題になってしまい ます。診療上、均一なということであれば、ガイドライン等含めて、診療上使う薬の中の 成分はどうなんだというところまで踏み込んで整理をしていただきたいと思います。55年 通知もそういった趣旨だと思っておりますので、薬の使い方につきましても、議論してい ただかないと、診療が進まなくなってしまうばかりか、ただ査定だけになってしまいます ので、そうした論点を是非残した上で均一化を考えていただきたいと思います。 ○森田座長 では、齋藤委員。 ○齋藤委員 学会の意見をどのようにして保険診療の場に反映させるかというのは、山口 先生から定義された大変重要な問題だと思います。現在、公的なルートとしては、私が今、 代表している内科系学会社会保険連合、内保連という団体と、外保連が2年に1度、診療 報酬改定に合わせて提案書を作成してお出しする。これを次の改定に反映させてください ということで、学会からの意見をとりまとめて、保険局医療課にお出ししているというの が実態でありますけれども、なかなかそれだけでは、山口先生が言われるような学会の、 特に最新の意見を踏まえた方向性というものは保険診療にフィードバックされないんでは ないかという思いがするわけです。そうしますと、内保連、外保連がまとめる提案書を超 えて、学会と保険診療を管掌する厚労省、あるいは審査の方々の意見交換の在り方という か、意見の反映の仕方に、何か提案というか、御指摘があれば、この場で伺えればと思う わけです。 ○森田座長 よろしくお願いいたします。 ○山口院長 実際、どう具体的な形で委員会を設定するのか。現在、行われていますのは、 例えば、審査委員会が、その地域における専門の先生にコンタクトを取って決めていく。 しかし、それでは地域間の格差はなかなか解消できないのではないか。その意味では、中 央に学会と審査の基準をめぐるような話し合いをする組織をつくっていただく。できれば、 社保と国保とは同じ判断基準であるべきだと思いますので、社保と国保を含めたところに、 学会も含めて、それぞれの専門領域別の問題点を検討する場、そういう場が中央にできて、 その統一見解が全国に伝えられていくという格好が、私が考えるところでは一番望ましい 形なんではないかと思います。 ○森田座長 ありがとうございました。どうぞ。 ○渡辺委員 足利委員と飯山委員が支部間の差異の問題をおっしゃったんですが、基金と 国保連との診療査定ルールというのか、ガイドラインというのか、その辺の取扱いについ て、わかりやすく、かつ簡単に御説明いただけますか。例えば、社保と国保が違うという 御指摘があったわけです。これについて、我々にわかりやすく、どういうルールでという ことを御説明いただけますか。 ○森田座長 お願いいたします。 ○足利委員 御質問の趣旨は、そういうのを統一するような枠組みというお問い合わせで すか。 ○渡辺委員 足利さんの資料の中で、学会のガイドラインと保険診療ルールの整合性につ いて云々という御説明がございました。そういったものをやっていくべきだと。これはよ くわかるんだけれども、今、山口院長から、社保と国保のルールが違うという現場からの 御指摘があったわけなんで、それについて我々はよくわからないから、せっかく足利委員 と飯山委員がいらっしゃるから、御説明いただけますかということです。 ○足利委員 わかりました。ルールといいますか、それぞれの審査委員会の、私どもで言 えば各都道府県単位にございます審査委員会、国保連は国保連で審査委員会があるという ことですから、それぞれで最終的に個別のレセプトの審査を行うに当たって、審査委員会 の判断が、具体的に、この治療、この検査、あるいはこの投薬について、私どもの審査委 員会はこれを査定をする、あるいは査定をしなくて原審どおりと認めると、そういった扱 いが、例えば、同じ県なのか、別の県かもしれませんが、まず私どもの支部の間でも、同 じと思われる事象について、査定なのか、原審どおりで認めるのかの違いがある。それは 私どもの支部間の差異でございます。  例えば、同じ県で支払基金の判断と国保連の審査委員会の判断が、こちらは査定で、こ ちらは原審どおりだよと、あるいはその逆であるとか、そういった取扱いの違いが現実に あるということでございます。それに対して、各支部においては、それぞれ審査委員会同 士で、年に数回そういった事例を持ち寄りまして情報交換をする。審査委員の先生方が情 報交換をして、意見交換をして、統一を図っていこうと、そういった取組みを各都道府県 単位で行っているという実態はございます。 ○飯山委員 まず、社保と国保で判断のルールが違うかということにつきましては、基本 的には、違うルールを持っているわけではないわけです。もともと根っこは同じなわけで すから、ことさら判断を変えるということはないわけでございます。ただ、実際には、こ れは国保内で言ってもそういうことだと思うんですけれども、1件1件の治療というのは、 個々の患者とその治療者との間で行われていることですから、全く同じというのはあり得 ないわけです。ほぼ似たような事例はたくさんあると思いますけれども、一つひとつ全く 同じということはあり得ませんから、それに対する判断がそれぞれ微妙に変わってくると いうことだと思います。その集積の結果として、これは認める、認められないということ が、それぞれの審査委員会の判断になってきますので、そこのところの違いは、私どもと してもそれぞれの判断を尊重するということで、これは一律的に右へ行け、左へ行けと言 うことはできないと思っています。そういったものを解消するために、先ほど申し上げま したように、同じような幾つかの事例について収集いたしまして、国保全体で7割以上同 じ判断をするような事例が出ていれば、それは統一的に全国でも同じように扱っていきた いと、そういう基準を示しているということでございます。 ○森田座長 私、よくわからないことを確認させていただきたいんですけれども、今、そ れぞれの審査について、全く同じ判断はないとおっしゃいましたけれども、先ほどござい ましたように、患者が社保で来るか、国保で来るかがわからないときに、お医者さんが診 察して、たまたまその人が社会保険であるとこういう結果になって、国保であると違う結 果になるということもあり得るということなんでしょうか。 ○飯山委員 結果といたしまして、同じような事例でありながらも、中身の違いに、どこ かに着目されて判断が分かれるということはあると思うんです。 ○森田座長 ただ、そこでの判断は、診察行為の判断ではなくて、保険の審査の方の判断 ということなので、そこがずれるということは、保険者の側といいますか、患者の側から 言うと理解しかねるところですが。 ○田中委員 資料1の2ページ目の上から3分の1ぐらいのところに、野球に例えればと いう話がございます。そこと関連する話だと思うんです。要するに、野球の審判はストラ イクゾーンに基づいて、審判が不慣れであってもすべて同じ判断をしていると言わんばか りのことが書かれているわけなんですけれども、実はストライクゾーンは決まっているん だけれども、投げるピッチャーの球質、スピード、変化、こういったものをどうアンパイ アが読み取るかというのは、アンパイアの差異があるわけです。審査役員の審査もこれと 全く同じことが言えるのではないか。  それから、支払基金と国保連合会というのは、これまでの議論の中でも、その体質の違 いというのは御理解いただいていると思います。要するに、審査ルールというのは、基金 は基金なりに、国保は国保なりに、都道府県間の均質性を求めて努力をしております。そ の際に、先ほど渡辺委員はルールづくりの基本的なことについても御質問だったと思いま すけれども、基金の場合は、多分、本部、支部の関係なので、本部の意向に沿ったルール というものがかなりきちんとしているんではなかろうか。  国保の場合、47県のそれぞれが独立している関係で、審査委員会のことについて47県 がそろって統一的なものをつくるということは非常に難しい要因があります。要因がある 中で、我々としても、そこは第三者から見たときにおかしくない対応をしなければいけな いんではないかということで、全国の審査委員会の会長を集めた協議会をつくっていまし て、こういう中で、お互い、審査についてのすべての問題について御議論願い、各県の審 査委員会の代表者たちが御了解いただいた範囲は統一的にやろうではないかと、そういう 仕掛けをつくっているということを申し上げているわけであって、それがどの程度落とし 込めるかというところは、審査委員会の協議会の会長先生たちの御意見を待つ以外にない、 そういう仕掛けであります。そういうことで、基金の組織的な体質問題等でルールづくり にも違いはありますけれども、基本的には同じようなことをやっているということを申し 上げたいと思います。 ○森田座長 どうぞ。 ○飯山委員 先ほどの御質問の件なんですけれども、すべてが1対1で整理できる関係に なっていれば、ぶれはないと思うんですけれども、どうしてもそうではなくて、例えば、 必要に応じとか、そういう判断が入ってくる部分につきましては、個々のケースに応じて 判断が違ってくるということはあり得ると思うんです。ですから、全部違うから当たり前 だと申し上げているわけではなくて、いろんな要素の上で申し上げているわけですので、 誤解のないようにお願いしたいと思います。 ○森田座長 失礼いたしました。余計なことを申し上げました。  では、岩田委員、お願いいたします。 ○岩田委員 素人的なことを申し上げるんですが、先ほど渡辺委員とか座長が言われたこ とと同じなんですが、国保の御説明の中でも、きちんとした査定の違いとかについて分析 をされていないということなので、私自身もよくイメージがわからないんですが、支払基 金は支払基金で、査定率については、内部においても相当大きな差があるということだと 思います。多分、国保の方でも相当差がある。国保全体で見た場合と、支払基金全体で見 た場合で、どの程度違うのか、どういうふうにぶれがあるのかということ自体が、私など はイメージがわからないので、むしろ支払基金の中で、福岡とどこかでやられているのと 同じようなもので、国保でも分析していただいて、何か差があるのかどうかというような、 ベースになるような情報がないと、どういう形でうまく運営されているのか、特に外から 見ていると全くわからない。きっと座長が言われたのも、医療は個別ですから、事例によ って判断が違うということはあり得るんだと思うんですけれども、想定からすると、ただ 単に支払基金と国保だけで違うという話ではなくて、国保の中でも別の先生が判断すると 全く違うことになり得るのかなと思ったりするので、どこを焦点に当てながら議論をする といいのかというのが全くわからない。そういう基本的な情報について、どなたにお願い していいのかわからないですけれども、今後の調査みたいな形でもいいので、何かベース になるような情報がいただけるとすごくありがたいと思います。 ○森田座長 高田委員は関連した質問ですか。どうぞ。 ○高田委員 座長や渡辺委員がおっしゃったのは、私ども保険者もいつも思っているとこ ろでございまして、今、岩田委員がおっしゃられたように、勿論、違うことが大部分だと 言っているわけではないんです。少しあるということが言いたいので、同じように来たと きに判断が分かれるというところが、先ほどのボールを投げるときの変化とか、こっちは レセプトで、要は結果で来ているもので見ているので、そのときにどうして違うんだろう なというお話なので、途中の球速とか、そんなのは正直関係ない話だと思っていますので、 そこのところは分けて、医療の質と、審査の内容というか、質というのは違うということ を分けて議論しないと、話がこんがらがってしまうなと思います。  それから、先ほどの件に関連しますと、診療ガイドラインとか保険診療ルールは、結局 は厚労省の方でまとめられておられるわけですから、先ほどのガイドラインの話も含めま して、審査機関につきましては、これで必ずというのが、法的な権限ございませんし、基 金の方も、ローカルルールが1万ぐらいあるということもございましたので、私ども保険 者としては、国民としても、同じようなときに違うというのはなかなか理解できない場合 もあり得るので、国保連の中央会と基金の本部で統一的に、ローカルルールを解消するた めに、協議会でもつくっていただいて、その中に厚労省も入っていただいて、忙しいとは 思うんですが、もっと汗をかいていただいて、その部分をなるべく少なくしていただけれ ば、勿論、グレーゾーンがあるというのは私どもも了解していますので、1か0ではない と思いますので、そういう部分をなるべく早目にやっていただくことが、国民にとっても 審査がわかりやすくなるのかなということでお願いしたいと思うんです。 ○森田座長 齋藤委員、お願いします。 ○齋藤委員 今の議論に関連しているんですが、審査はそれぞれの審査委員の個別の差が 出るのは当然です。だから、ヒューマン・ツー・ヒューマンのばらつきが出てくるのは当 たり前です。それから、審査される方が見る患者の病態もさまざまですから、そういう個 々の例についてのばらつきが至るところで発生するのは当然なんです。  私が病院の現場で痛感していたり、あるいは病院会のいろいろな先生方の意見を伺った りする中で問題になるのは、例えば、社保と国保では、全体として取り方が少し違うんだ というマスとしての意見なんです。アメリカの審判は高目のボールをストライクに取りま すねということをよくテレビの解説者などは言うわけですが、それに類したことが、社保 はここの領域をOKにしますねとか、国保はこの領域を多くマイナスにして切っています ねとか、エビデンスはないけれども、病院として、あるいは医療現場としての実感、診療 所の先生も痛感しておられると思いますけれども、そういう実態があるわけです。そのこ とが社保と国保の間にも実感として、ここは高目のボールを多くストライクに取っている ねというような現象、それから、地域によっても、社保の中でも、関西地区ではここの領 域は多くストライクを高目に取っていますねとか、そういうことはかなり周知の事実なん です。それはエビデンスはないし、比較したデータもないので、きちんと証明することは 困難なんですが、その部分について、少なくとも検証とか、さっき岩田委員言われたよう に、データを交互に変えながらブラインドで審査するとか、いろんな工夫があり得ると思 うんです。そういう努力が必要ではないかなということであります。 ○森田座長 長谷川委員からお願いします。 ○長谷川委員 社保のデータ、あるいは国保のデータを御提示いただいているんですが、 現実に差異はある。ただ、数字の解釈で気をつけないといけないのは、どちらも発現頻度 が非常に低いということで、このような場合に比をとると、結果が誇張されて解釈される 余地があることです。数倍の差異は大きく感じますが、総額・総件数に占める割合という のは実際には大したことはないということは気をつけなければなりません。  我々が認識すべきは、まず、47国保、あるいは社保の47都道府県ごとの支部でルール が違うかどうかです。ルールについては明示的にチェックすれば明らかになります。ルー ルに差異がある場合に、それを統一する仕組みがあるかどうかは別途検討する必要があり ます。  もう一つは、齋藤委員がおっしゃったように、医療というのは個別性があるし、評価者 も個別的なものなんです。だから、一定の差異は防ぎようがありません。ただ、それを放 置するような仕組みではだめで、差を縮小するような仕組みがあるかどうかは重要です。 それを縮小する仕組みというのは、結局、ルールについて、例えば、審査を行う先生に周 知する仕組みがあるかどうか、あるいは過去の事例が統計的に簡単に検索できるなど、判 断のアシストツールがあるかどうか、こういった形だと思うんです。その2つはやはり分 けて考えないといけない。残念ながら、御提示いただいた資料から見ると、今までルール の統一は多少なされてきつつあるのかなとの印象を受けます。幾つかの試みはあるのです が、現実には最近始まったことが多いので、データ的にも不十分であるし、そもそも今ま でそういった仕組み自体が組織的にはなかったのではないかなという印象を受けます。だ から、どのような仕組みをつくれば、こういった差異が長期的に解消するのかということ は我々がここで検討すべき大きな課題ではないかと思います。 ○森田座長 どうぞ、村岡委員。 ○村岡委員 私も最初のときに、国保と基金で審査の基準が違っていることがあるという ことで、そこを解消することが課題ではないかというお話をさせていただいたんですが、 私も保険者の立場ではあるんですが、医療機関にもおりましたので、医師からの要望では、 そういう実態があるから、この会ではそういう実態を解消するために是非取り組んでいた だきたいという声が出ておりました。基金、国保それぞれで審査の統一化というか、基準 づくりをやっているんですが、支部間格差、都道府県格差があるように、全体としての統 一性が取られていないところが一番の問題ですから、国全体として、社保、国保によって 受けられる医療の内容が違うということになることは解消すべきだと思いますので、そこ の統一化は是非、積極的に国が関与するなりして整理をしていくことが重要ではないかと 思います。  あと、査定率の問題ですけれども、査定率について、全体は出ていると思うんですけれ ども、私の認識が違っていたらいけないんですが、基本的にはこれはすべて審査委員会の 先生方が査定をしたということではなしに、最初の審査も含めて査定率が出ていると思い ますから、実際に審査委員の先生方が審査をしている部分は、この中のもっと低いパーセ ントになっていくだろうと思います。その辺りの現状の実態をそれぞれが分析をしながら、 そこの内容で、先ほど国保連合会からも言われました、都道府県によって違うところをど う整合性を取っていくのか、均一化を図っていくのかということが重要ではないかと思い ます。  韓国の事例でも出されておりましたけれども、韓国は統一的な基準を出して、医科だと か、薬剤、材料だとか、適応症だとか、そういったところで基準もつくられているという ことですから、基金、国保連合会、それぞれで基準をつくるのではなく、それを1つのも のにしていくことが重要ではないかと思います。  以上です。 ○森田座長 どうぞ。 ○横倉委員 今、査定率の話が出たんでありますけれども、統計を取られる査定率の中に は、資格消失後受診等々の資格要件で査定もされているパーセントも入っているのかどう か、お聞きしておきたいんです。 ○森田座長 これにつきましては、事務局から資料が出ていたと思います。査定率の概念 が揺れ動いているところがあるようですので、御説明をお願いいたします。 ○吉田保険課長 お手元の参考資料2「審査支払機関の査定率等の比較」というデータ。 先ほど岩田委員から「違いを調査すべきではないか」、あるいは村岡委員から「分析でき るのか」という問題提起がございましたが、今、事務局としてあり得るもの−これももと より支払基金及び国保連側からの御協力をいただいてまとめたものということで御報告を 申し上げます。  先ほど長谷川委員からお話いただきましたように、そもそもこの査定率、全体の中で、 どれだけのボリュームの話なのかということがあります。非常に小さい範囲での、感度の 高いというか、ときどきぶれの大きい数字であるということはまず申し上げなければいけ ないかもしれません。  参考資料2の1ページ目にございますように、今、横倉委員からございましたように、 レセプトが支払基金及び国保連、審査支払機関に上がってきた場合に、例えば、いわゆる 資格確認の問題などなどで、事務的にこれは違うよという場合には、審査支払機関の現場 においては、返戻という形で医療機関に戻して出し直しをお願いをしていると承知をして おります。ここで言えば、b件というものは、最終的に受付をしたa件から引いたものを 請求件数という形で言葉としてとらえて、その請求件数を分母にして最終的に請求どおり 決定及び査定をしたと、査定で言えばcという件数を割ってございますので、私どもが承 知をしている限りでは、今、お話のような事務的なものについては入っていないという理 解でございます。 ○神田総務課長 今、御指摘のあった資格喪失後受診というのは、基本的には被保険者デ ータと突合しないと確認できませんので、審査支払機関で被保険者データを持っていれば できますけれども、一般的には支払基金では、そういうデータをすべて持って突合すると いうことをしていませんので、基本的には保険者に戻った段階で保険者が突合している。 ただ、国保連では、被保険者データを保険者から委託を受けて持っておられるときには一 部突合ができていると理解しています。 ○吉田保険課長 済みません、そこがまず基本であります。その上で16ページをごらんい ただきますと、今、総務課長が補足申し上げましたように、次の段階という形になります。 そういう意味では、私、言葉足らずで恐縮でございますが、事務的におかしいものについ ては返戻という形で、16ページのように、次の段階まで考えたもので返戻がなされますけ れども、審査支払機関から査定されたもの、ここで言えばc件のもの、あるいは請求どお りされたもの、d件のものが、それぞれ保険者及び医療機関に返ります。返った時点で、 例えば、保険者の方から、今の資格確認のような突合の結果、あるいは縦覧点検などのよ うな保険者としての点検を行ったものについて、やはりこれはおかしいのではないかとい う場合には、その保険者からまた改めて審査支払機関にそのレセプトが返り、場合によっ て返戻という形で、事務処理問題はhという形でまた元に戻っていきますし、内容問題に ついては、またそこで御議論いただいて、再審査という形で結果が出てくる。それは保険 者の方から来るもの、あるいは医療機関の方から来るもの、だんだん複雑になってまいり ますが、ケースとしてはこのような流れになっておるというのが基本であります。先ほど の説明で「資格確認による誤り」については訂正いたしますが、その上で、査定率という 数字につきましては、返戻の部分は除いた形での請求件数という形になってございます。  その上で、この資料、冒頭の資料確認のときには、時間の関係もあり、はしょらせてい ただきましたが、8ページをごらんいただきますと、この会で当初から御議論があり、本 日も御議論いただいております支払基金間、あるいは国保連間という都道府県別の差異と、 社保と国保という差異、また、医科と歯科のデータもいただけましたので、それぞれにつ いて、8ページ目は件数ベースで、9ページ目については点数ベースという形で整理をさ せていただいております。  なお、その後、10ページ目以降は、既に前回以前に提出した資料を一部再掲させていた だいて、それに加えて審査委員お1人当たりの査定実績がどうなっているのかというのを 12ページ以降に、そして−繰り返しではありますが−前回御要望があった資料が15ペー ジでございます。  私どもとしては、この問題についてのエビデンスというのはなかなか取りにくうござい ますし、そもそもどういう形でというのはあろうかと思います。まず、ファクトとしてこ こまで押さえ、先ほど支払基金の方から御報告のあった、先行しての具体的なケースとし て「3支部によるトライアルとしてのサンプル調査」、そしてまた国保連の方は今後分析 が進められるということでありますので、そのような報告もいただきながら、より多面的 な御議論をいただく必要があるのかなと思っております。 ○森田座長 ありがとうございました。査定率の考え方はそういうことです。  村岡委員、どうぞ。 ○村岡委員 関連して御質問なんですが、先ほど私の発言の中で言わせていただきました が、職員がやる部分と、審査委員の先生方がやる部分は両方とも含まれていると理解をし てよろしいかということと、先生方がやる審査の部分が基準づくりというところでは問題 になるんではないかと思いますが、そういったものがこの査定率の中でどれだけあるかと いうことが区分できるのかどうか、そういったところを聞かせていただきたいんです。 ○森田座長 それでは、足利委員、お願いできますか。 ○足利委員 この査定率の数字には、村岡委員おっしゃった、職員が事前の事務的なチェ ックで査定とすべきものということで先生方に判断を仰ぐものも当然入っております。職 員が事前にそういう形で疑問を呈して査定に至ったもの、それから、職員が全然目を触れ ないでいったものの内訳は、前回、私どもから出させていただいております資料の8ペー ジで、原審査査定点数における職員寄与率というグラフを出させていただいておりますが、 その中で、職員があらかじめ、これは疑問であるということで査定に至ったものが69%、 職員が気づかずに、審査委員の先生方で査定に至ったものが31%、そういう円グラフでお 示しをしているところでございますので、参考いただきたいと思います。 ○森田座長 村岡委員、よろしいですか。 ○村岡委員 はい。 ○森田座長 どうぞ。 ○飯山委員 国保連におきましても、いわゆる審査事務共助の中で審査委員会から負託を 受けて点検しているものがございまして、これの部分、それから、付せんを貼付しまして 審査委員会に上げて審査委員に判断していただくというようなことで行っていまして、全 国的な数字は持ち合わせていないんですけれども、私どもの東京の場合には、事務補助が 多いときでは7割ぐらい行っているときもございます。毎月毎月変動していますので、年 間トータルを取ってみないとはっきりしたことは申し上げられませんが、5割〜7割ぐら いで変動しております。 ○森田座長 よろしゅうございますか。ほかにいかがでしょうか。粟生田委員、どうぞ。 ○粟生田委員 査定率の一覧表をいただいたんですけれども、これを見ますと、支払基金 の高いところから低いところの差が0.99とあったり、国保連合会からいただいている差は、 高いところで1.56、低いところで0.22という、非常に数値の差があるんですけれども、 保険者とか被保険者の立場になってみて考えると、これほどに差が出るものなのかなと、 数字だけ見ていくと感じてしまうんです。この中には、恐らく返戻ということで、差異を なくすような努力は十分されていることだと思うんですが、この差はいつになっても大幅 に出ていくものなんでしょうか。その辺を教えていただけるんであればお尋ねしたいと思 います。 ○森田座長 これはどなたにお答えいただくのがよろしいんでしょうか。では、田中委員、 お願いします。 ○田中委員 答えになるかどうかわかりませんが、いわゆる査定率というものは、同一連 合会でも、月々、年々によって変化があるわけです。どうしてそういう変化があるのか。 それから、他県間の資料も持っていますので、どうしてそういうふうになっているのか、 定量的な分析をしたわけではないんですが、審査担当の人たちに話を伺ってみて、こうい ったことかなと思っている点をお話します。  これまでも言われたことですけれども、やはり基本的には、審査事務に当たる事務審査 の職員や審査委員の数、経験年数、こういったものが査定率を説明する有意性が求められ るかということが1つ。  それから、取扱件数というのがそれぞれの県によって、職員、審査委員、それぞれ違う わけなんですが、こういったことが1つ。  それから、受け付けるレセプトが、紙で来るものと電子で来るもの、この割合、こうい った問題がどう査定率に影響があるのか。それから、紙であれ電子であれ、出来高払いで 請求されるレセプトと、いわゆるDPCレセプト、その割合によって査定率に影響があり そうな話があるんです。  ですから、ここで議論されていて、そういったことはどこかできちんと整理しなければ いけないと思いますので、我々国保サイドでも、いい機会でありますので査定率を説明す る説明指標をきちんと設定して、全県下のデータを取って、有意の相関度を検証してみよ うかと思っております。 ○森田座長 ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。高田委員、 どうぞ。 ○高田委員 先ほど支払基金の説明の中で、資料3−2の審査関係の要望という資料がご ざいましたけれども、これは私ども保険者も基本的に同じスタンスで要望していることで ございます。電子レセプトにはなっていますけれども、韓国なども電子レセプトですけれ ども、その中身が違うんです。日本の場合は、今の紙のイメージでつくるための電子レセ プトなんで、結局、審査機関の方も、審査しようにもなかなかチェックできない。こうい った部分は、つい最近、行政刷新会議の中で見直しを24年にするというお話があったと思 うんですけれども、そういった部分をもっとしていかないと、審査機関の方も難しいかな というところですし、その内容については、基本的に私ども保険者もお願いを上げていき たいということでございます。  それと、もう一件ついでに言わせていただきますと、電子レセプトの旗振りで、支払基 金、国保連は非常に御苦労されたと思います。この間の省内事業仕分けで、基金は仕分人 間からかなり厳しく責められておりましたけれども、これについて彼らを責めるのは非常 に酷であると、むしろ私どもは、それは急激に進んだわけですから、ありがたいことだと 思っていますので、1つだけフォローさせていただきます。 ○森田座長 ありがとうございました。  そちらから一斉に手が挙がりましたが、高橋委員から順番にお願いいたします。 ○高橋委員 もう既に意見がいっぱい出ていますので、繰り返しになってしまうんですけ れども、今日出された参考資料2の8ページと9ページに件数から見た査定率と、点数か ら見た査定率の数字が載っています。これは21年の4月から今年の3月までの審査分とい うことですけれども、12か月分のデータだけですから、それだけで支部間差異だとか、あ るいは地域間差異があると断じることは難しいのかもしれませんが、先ほど御意見もあっ たように、医療機関から飛んでくるデータの質によるとか、そういう話はありましたが、 個人別の要素とか、医療機関別の要素は、統計的にはランダムな話になるので、この数字 を見ていると、とてもランダムな要因で説明できるような差ではないと思います。支払基 金の中の北海道から沖縄の間を見ても、ごく一時的な、ランダムな要因でこんな差が出て いるというのでは、多分、説明できません。それから、国保と支払基金との間の差も、一 時的な要因で偶然出たというふうにはとても見えないんで、そこははっきり差異があって、 ごく一部の特殊な事情からということではなくて、何か癖のようなもの、はっきりした傾 向があると私は見ています。  それから、もう一つ、全体の数字を見て、査定率の数字自体は全体の診療費、医療費に 占める割合は小さいではないかという議論は確かにあるんですけれども、ただ、医療全体 を眺めれば、例えば、一番簡単な風邪引き、腹痛で査定の差が出るはずがないと思います。 そんなところでべら棒に医療が違うはずがないですから、そういった意味で、どうしても 査定の違いは入院のところで多く出てくるのは当然のことですし、逆に普通の医療で差異 が出るはずもないようなところのものを除けば、それはどれぐらいのシェアかわかりませ んけれども、入院医療のような複雑なところで違いが出ているということは、この数字は 実際にはもっと大きいと私どもは考えざるを得ないわけです。  しかも、もう一つつけ加えますと、査定の全体が統一化されると査定率が平均に収斂す るかと言いますと、そうではなくて、査定している部分がお互いに違いますから、査定さ れる集合の割合はもしかすると大きくなる可能性があるわけです。そうすると、金の話だ けしたくはありませんけれども、実質的にはかなり違いがあるとすれば、医療費にもはね る可能性があるんだろうと見ています。  そういった意味で、審査の均一性の担保についていろんな御提案がありますけれども、 支部間差異があるかないかの議論はもう終わっていて、これはあるということで、どうや ったら支部間、あるいは支払基金、国保連合会の間を埋めるかという、対策の議論に早く 移るべきで、勿論、やる場合に原因を究明することは大事ですけれども、幾ら中をほじく って、あれはどうだ、これはどうだとやっても、しようがないんではないかという気がし ております。 ○森田座長 ありがとうございます。それでは、齋藤委員、お願いいたします。 ○齋藤委員 社保と国保の問題は、病院の保険診療の現場で常に底流として重く流れてい る課題なんです。今日、ゲストスピーカーで来られた山口先生は非常に大きな病院で長く 病院医療の現場を踏んでおられるので、社保と国保の在り方について、何か感じておられ ることや御助言があれば、この際、是非伺いたいなと思います。 ○森田座長 それでは、山口先生、お願いします。 ○山口院長 やはり社保の方が、査定される側から言いますと厳しくて、国保の方がそう でない。例えて言えば、低蛋白血症にアルブミン製剤を、こちらは20本まで認められるけ れども、こちらは10本までしか認められないということで、片方ではばっさり査定される というような話です。この患者に必要だと判断してやった、この判断が間違ったと言われ るならしようがないけれども、判断は判断として、保険診療で認められるのはここまでで すと一律に査定される。では、保険で認められる診療だけやっていて、それで済めばよろ しいんですか、その為に治療がうまくいかない場合に社保が責任を取っていただけるんで すかと言うと、そういう話は聞いたことがない。非常に忸怩たるものがあるわけでありま す。そこのころは、細かく言うと限りない話だと思うんですが、少なくともルールは両方 で同一でないという点は一番の違和感があるところです。もう1点、審査のルールを診療 の側に知らせていただきたいという話をします。  審査で、特に事務的な手続については、事務方が一生懸命、チェックをされています。 しかし、それ以上に各病院は一生懸命、病院の事務方が提出するレセプトをチェックして いるんです。一生懸命にチェックして出したにもかかわらず、更にチェックをされ査定さ れる。査定されるルールが診療側には十分知らされていないからです。せっかく電子レセ プトになりました。システムチェックができると言います。そのシステムチェックをする ソフトを全病院に配ってくれればいいだけの話なんです。そうすれば最初のチェックは不 要になるわけです。病院としては、チェックされるようなレセプトを出したくて出してい るわけではないんです。それがチェックされるかどうかがはっきりしないから、いいと思 って出したらチェックをされた。何故だということで、やりとりをしなければいけない。 これは保険制度全体からみれば、非常にばかげた、無駄な話だと思うのです。是非ルール を、公開できるルールはできるだけ公開する。そうしたら病院の段階でチェックできるん です。そこのところの議論をしないで、査定率が高いの低いの、どちらが妥当だという話 をしても全く意味がないので、特にこれから電子化に向かっているんですから、チェック のためのソフトを配っていただくというのが一番よろしいかと思います ○森田座長 ありがとうございます。本日の議論の整理をしていただいたような感じがい たします。 もう時間が大分押してまいりましたが、ほかに御発言ございますか。どうぞ。 ○高智オブザーバー ありがとうございます。前回、私の方から、ちょっと言いにくいこ とだったわけですが、「3割の効率化分レセプト」について御質問させていただきました。 これは裏返しますと、重点審査の状況はどうなっているのかということにも置き換えられ ることだと思いますが、国保連でもこのように重点審査、あるいは意図的に省略している 部分があるのか、あるいは効率的な審査の一環として今まで培ってこられたことがござい ましたら、是非、御披瀝いただけたらありがたいと思います。それが先ほどのご意見にも ありましたように、被保険者の方等にもなかなかわからないんではないかという点に対す る理解にもつながることだと思いますので、お願いしたいと存じます。 ○森田座長 飯山委員、コメントをお願いします。 ○飯山委員 国保連も基金と同様にレセプトの区分けを行っています。ただ、その中でも、 これは私どもの事例で言いますけれども、例えば、7万点以上の点数については重点的に 見ようということで、内部で重点化しております。重点化という意味は、専門科ごとに中 身をかなり濃く見るということで行います。この体制を取ることが、実は限られた審査委 員の中では非常に難しいところがございますので、なかなか厳しいところがあるんですけ れども、このところを努力をしている最中です。勿論、もっと高点数になれば、中央会で 全部見ていただくことになっておりますので、そこら辺のめり張りはつけているつもりで おります。 ○森田座長 よろしゅうございますか。どうぞ。 ○足利委員 先ほどの山口先生の問題提起、この場での皆さん方の問題提起ということに なるのかもしれませんけれども、できるだけルールを統一して公開でということではござ いますが、1つ、私どもの検討会の中でこういう議論が確かに出ております。そういう基 準を公開すべきという意見につきましては、やはり医療の標準化につながる、あるいは適 正レセプトの提出につながるんではないかという肯定的な意見と、さはさりとて、医療は 個別具体的に行われることから、個別個別のケースに応じての判断があり得るということ で、それを一律のルールということにしてしまうと、この場での意見もあったと思うんで すけれども、基準ぎりぎりで、例えば、20本なら20本、みんな請求すればいいんだ、あ とは機械でチェックしているんだから、そこまで全部認められるんだということになって しまうと、それはかえって適正化につながらないんではないか。そういう議論もございま して、私どもの検討会の中では、ルールの基準の公開については見解が分かれたというこ とでとりまとめをしているところでございます。  それから、1点つけ加えさせてもらいますと、今日の事務局のとりまとめの中でも、冒 頭、審査の均一性に影響を与えている要因ということで、今日の資料2でございますけれ ども、保険診療ルールによる要因ということで、審査委員会ごとの審査基準の相違の是非 ということから始まっておりますけれども、これはこの場でも出ておりますように、そも そもルールの面で相当程度裁量の余地があるということから、どうするかということも、 先ほどの例で言いますと、答申のない方も全部一律にするんだというようなことまではな かなか難しいんだと思いますけれども、そもそもそういう問題があると、療養担当規則に おける扱いですとか、点数表における扱いの例とか、そういったこともきちんと踏まえて いただきたいというふうに要望させていただきます。 ○森田座長 ありがとうございました。  時間がまいりましたので、これくらいにさせていただきたいと思いますけれども、最後 に、私自身、個人的な形で印象といいますか、感想を述べさせていただきますと、私の専 門は社会科学ですけれども、そうした観点から見た場合、今回の差異の問題の1つは、ガ イドラインというか、ルールの在り方にあるというのは、冒頭の山口先生の御指摘から、 そのとおりだと思います。ルールといいますのはいろんな性質があるわけでございまして、 これは守らないと違法というか、いかんというミニマムの義務を定めたものと、これが標 準的であるという標準の場合には、それに合致していればよし、乖離した場合には一定の 説明の責任を要するというものと、更に言えば、理想を書いたものがあるわけでして、そ れは実現できればいいわけですけれども、できなくてもノーマルな状態である。そもそも ガイドラインというのがどういう性質であるかということをきちっと決めておく、それの 了解を取るというのは1つの重要な、差異を減らす要素になると思います。  もう一つは、ルールといいますのは、一般的にはミニマムの義務を定めるものですから、 変える場合には慎重な手続を経て、本当に必要があるかどうかを見極めなければいけませ んし、新しい義務をどこに設定するかというのは、これも相当慎重に対応しなければいけ ません。そのために、ルールを改定していくためにはどうしてもタイムラグが生じてしま います。今日のお話ですと、医学の進歩、技術の進歩に照らして見た場合に、ラグをどう やって縮小していくかという話と、もう一つは、ラグを縮小してフィードバックをしてい くための手続をどうするかという話で、意見交換の場も現実にはないというのは、ちょっ と私は驚いたんです。そういう意味で言いますと、そうしたガイドラインの性質と、ガイ ドラインのフィードバックをするための仕組みというものは、別途検討していただいた方 がいいのかもしれませんけれども、早急に考えていく必要があるのではないかと思ってお ります。  もう一つは、今日は差異の問題がどうして出てくるかということもお話ございましたけ れども、その場合に、統一が望ましいことは間違いないわけですけれども、それぞれケー ス・バイ・ケースの裁量で幅があることは仕方がないと思いますけれども、その幅が、統 計的に見てもそうですけれども、合理的な範囲におさまっているのかどうか、それは検証 していかなければいけないと思います。  もう一つは、審査に当たって、今もお話ございましたけれども、本当の医学的判断をす る部分と、それ以外の部分とあるわけでして、それ以外の部分にかかっているコストがも のすごく大きいという気がいたします。先ほどお話ございましたけれども、私もこの間、 拝見しましたけれども、統一のソフトを配って事前に処理をしていきますと、いろんな意 味での事務の合理化がかなりできるんではないかと思っております。なかなかできないの かもしれませんけれども、そういうことはあり得るのかなというのが私が持った感想でご ざいます。 高田委員、何かございますか。 ○高田委員 次回がたしか事務手数料の関係の議論ということだったので、事務局にお願 いをしたいんですけれども、国保連の方は各県の国保連ごとに手数料とかも出ていますし、 かなり低廉になっているのは承知しておりますので、基金の方に3つほど資料をお願いし たいと思います。支払基金の審査支払業務に係る、普通、これは民民の委託契約ですので、 業務実施体制がどうなっているかという一覧表と、これは当然、人数とか、人に対する業 務割合というか、業務工数、それと併せて、電子化になっていますから、電子化に対応し た業務フローがどういうふうに改善していったのか、こういうものの資料を1点。  2点目は、これは21年度で結構なんですけれども、事務手数料を21年度はじいたとき の算定根拠の考え方とその数字。それと、21年はちょうど決算も終わっていますから、そ の算定根拠に基づいて、21年、実際はじいてみたらどうなったかということ。  併せて、国保連は県ごとのがありますので、支払基金で支部別に事務手数料を、共通の システム経費などはレセプト数で案分していただけばいいと思うんですけれども、試算し ていただいたらどういう形になるのかなという3点の資料をお願いしたい。  あと、今回、山口先生がゲストスピーカーでいろいろお話しいただきましたけれども、 次回以降、またゲストスピーカーのお話があると伺っておりますので、私ども健保連の方 でも、審査委員として複数の支部を経験して、国保連の審査委員の経験もある先生推薦し ておりますので、是非その先生もゲストスピーカーに加えていただいて、いろいろ議論す る場を設けていただきたいなとお願いをしておきます。 ○森田座長 ありがとうございました。  それでは、予定の時間になりましたので、本日の議論はこれで終了とさせていただきた いと思います。  本日は、山口院長にはお忙しいところ、最後まで御出席いただきましてありがとうござ いました。また、議論でも大変参考になる御意見を伺ったと思っております。  それでは、今、次回以降についての御要望等もございましたけれども、事務局より次回 の日程等について御説明をお願いいたします。 ○吉田保険課長 事務局としましては、次回について、現時点でまだ委員の皆様方と調整 中でございます。本日、確定的な日程を申し上げられずに恐縮でございます。今までの調 整状況では7月には委員の皆様方の御予定がなかなか整わないかなと思っておりますが、 9月までを視野に入れて日程調整をさせていただきたいと思いますので、決定次第、御連 絡を申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○森田座長 それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。どうもありがとう ございました。またよろしくお願いいたします。 〈照会先〉 厚生労働省保険局保険課 03−5253−1111(内線3249) 厚生労働省保険局国民健康保険課 03−5253−1111(内線3265)