10/06/17 第4回新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム議事録 第4回新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム(議事録) 1.日 時:平成22年6月17日(木)18:00〜20:18 2.場 所:厚生労働省 共用第7会議室(5階) 3.出席構成員:新垣構成員、岡崎構成員、小川構成員、河崎構成員、田尾構成員、高木構成員、 直嶋構成員、中島構成員、長野構成員、西田構成員、野村構成員、広田構成員、福田構成員、堀 江構成員 4.議 事 (1)地域精神保健医療体制について (2)その他 5.議事内容 ○福田精神・障害保健課長 定刻となりましたので、ただいまより第4回の「新たな地域精神保 健医療体制の構築に向けた検討チーム」を開催いたしたいと思います。本日も構成員の皆様方に おかれましては、大変御多忙のところ、またお暑い中、御参集をいただきまして誠にありがとう ございます。  前回に引き続き、進行役を務めさせていただきますので、よろしく御協力のほどお願いをいた します。  本日は、足立政務官のほうからは、直前ですけれども、欠席という御連絡をいただいておりま すので、御報告をさせていただきます。  また、小川構成員、ちょうどおいでになりました。あと、野澤構成員は遅れるということで御 連絡をいただいておりますが、御参加をいただける予定です。佐久間構成員は、本日御欠席とい う形で御連絡をいただいておりますので、御報告をさせていただきます。  また、皆様方には現在議事録等の確認をしていただいているところでございますが、議事録が ホームページに掲載される形での公開になりますので、予め御了解くださいますよう、改めまし てお願いをいたしたいと思います。  それでは、早速ですけれども、議事のほうに入らせていただきたいと思います。本日の議題は、 前回に引き続きまして、「地域精神保健医療体制について」といたしております。前回の検討チー ムにおける論点とそれに対して構成員の皆様方から出されました御意見等を事務局で取りまとめ ましたので、まずはその説明を事務局からお願いをいたしたいと思います。 ○林課長補佐 それでは、本日資料を御用意いたしております。本日は前回に引き続いて地域の 精神保健医療のあり方について、更に議論を深めていただく場にいたしたいということで、まず は前回の論点と前回いただいた御意見の概要、そして更にそれを踏まえて論点を少しブレークダ ウンして、更にもう少し具体的な論点ということで列挙したもの、こういったものを資料として 御用意をいたしております。それを踏まえて、更に本日議論を深めていただけたらありがたいと 思っております。  それでは、資料を1枚おめくりいただいて1ページ、論点「(1)精神障害者の地域生活支援のた めに必要な機能」の「1.精神疾患の特徴を踏まえて、地域で生活する当事者や家族の支援のた めに、どのような機能が必要か」、こういう論点を前回お示ししておったわけですけれども、更に 少しブレークダウンとしたものとしていくつか列挙をしております。  ●医療と生活支援の両方が重要であり、また、これらが一体として届く仕組みが必要ではない か。  ●サービスの必要性が高いほどサービスが届きにくいことから、必要な人にサービスを届ける 仕組みが必要ではないか。  ●状態が変わりやすいことから、臨機応変にサービスを提供できる必要があるのではないか。  ●問題が複雑であったり、問題が見えにくいため、分かりやすい仕組みと、課題に総合的に取 り組める機能が必要ではないか。  ●当事者の自尊心や希望を尊重した支援が重要ではないか。  ●家族への支援が重要ではないか。  こういったことでございます。  「2.支援のために必要な機能を提供するに当たって、現在の提供体制において、次のような 課題があるのではないか」ということでございます。  ●支援体制が入院を中心としている。  ●過去の体験などから精神医療への不信があるが、本来は支援を求めている人たちがいる。  ●多くの地域で地域生活を支える支援の提供体制が乏しい。  ●医療と生活支援が分離しており、どちらか片方(特に医療のみ)しか提供されないことが多 い。  ●保健所などの相談機関が実際に問題を解決することが難しい。  こういった課題、前回までの御議論からも出ているのではないかと思います。  次に「3.支援のために必要な機能を構築するためには、どのようなサービスが必要か」。  具体的なものとしては、  ●当事者や家族が何に困っているか十分に表現できない状態でも、保健医療福祉にわたる相談 支援が提供できるサービスが必要ではないか。  ●できるだけ入院せずに在宅生活を継続するために、アウトリーチが必要ではないか。  ●状態の変化に臨機応変に対応しつつ、医療と生活支援を一体的にマネジメントし、サービス を提供できる体制が必要ではないか。  といったことであります。  3ページ、「論点(2) サービスの提供体制のあり方」についてであります。この部分についても、 前回多くの御意見をいただきました。論点として、少しかみ砕いたものとしては、「1.精神疾患 の特性を踏まえ、地域生活における、医療から生活にわたる相談支援・ケアマネジメントやサー ビスをどのような体制で行うことが効果的か」という論点に関しましては、  ●様々な提供主体が、患者の特性と地域の実情に合わせてケアマネジメントやサービスを提供 すべきではないか。  ●生活支援を提供できる体制の充実が必要ではないか。  ●医療を受ける患者に生活支援が届くよう、アウトリーチ、相談支援・ケアマネジメント等を 医療との密接な連携のもとに行う体制が必要ではないか。  ●アウトリーチなどのサービスの拡充は、地域移行や病床数の適正化などを含めた、精神保健 医療体制の改革の一環として取り組むべきではないか。  こういった論点とさせていただいております。  「2.精神障害者の地域生活支援のためのアウトリーチ(訪問)の提供主体について、どう考 えるか。併せて、担当地域(キャッチメントエリア)についてどう考えるか」。  ここにつきましては、  ●保健所、医療機関、訪問看護ステーション、相談支援事業所、地域活動支援センターなどが 様々な提供主体が、ニーズに応じて協力してアウトリーチを行うべきではないか。  ●患者の生活の場においてサービスが提供されるよう、地域の実情に応じて、自治体ごとに、 計画的にアウトリーチ体制の確保を図るべきではないか。  4ページ、「3.精神障害者への支援体制における、医療機関の位置づけについて、どう考える か」。ここにつきましては、更に具体的な論点として、  ●地域で生活する患者にとって、医療の観点からのアセスメントを行うとともに、症状の変化 に応じた治療を行うため、医療機関の役割は重要ではないか。  ●医療を受ける患者に生活支援が届くよう、アウトリーチ、相談支援・ケアマネジメント等を 医療との連携のもとに行う体制が必要ではないか。  こういった論点を挙げさせていただきました。  「4.精神障害者への支援体制と、各障害に共通した支援体制との関係について、どう考える か」。これにつきましては、  ●各障害に共通した支援体制が、精神障害者にも活用しやすくなるようにすべきではないか。  ●一方、精神疾患の患者や、精神疾患にまだ気づいていない患者の特徴に配慮すると、保健医 療の場においても質の高い支援体制を確保することが必要ではないか。  こういった論点としております。  「5.保健所や市町村の位置づけや今後の役割について、どう考えるか」。ここにつきましては、  ●精神疾患の患者や家族からの保健医療福祉にわたる相談に効果的に対応するとともに、患者 や家族の住まいから身近な場での対応を高める観点から、引き続き検討が必要ではないか。  ●公的機関の人員の増加は現実的に難しいということを踏まえて、民間との一層の連携体制を 構築するべきではないか。  このような論点といたしております。  5ページ目、「論点(3) マンパワーの確保・財政負担について」、論点として挙げておりました のは3つでございますが、「1.精神障害者の地域生活支援、特にアウトリーチによる支援やケア マネジメントに当たる専門人材を、どのように要請するか」、これに関する具体的な論点として、  ●保健師・精神保健福祉士等が精神障害者へのアウトリーチを含む地域生活支援に従事するた め、専門人材の養成を進めるべきではないか。  ●なお、医療機関における業務の重点が入院から地域に移ることと併せて、医療機関の人材が 地域で活用できるよう養成・再教育を進めるべきではないか。  「2.アウトリーチの体制構築に必要なマンパワーの規模はどの程度か。マンパワーをどのよ うにして確保するか」。  ●支援の必要なものの発生頻度、現場での実践の状況、病床の減少等を踏まえて、必要なマン パワーの規模について検討する必要があるのではないか。  2つ目については、先ほどの1.のところと同じであります。  「3.財政負担について、どのような仕組みを活用できるか。また、どのような公費負担が必 要か。  ●診療報酬や障害福祉サービス報酬、地域生活支援事業の予算など、既に法定化されているよ うな枠組みをできるだけ活用しつつ、既存の枠組みで給付できないサービスを提供したり、医療 機関の機能の転換と併せて取り組みやすくするような仕組みを検討するべきではないか。  このような論点を挙げさせていただきました。  この論点を前回の御意見を踏まえて、更に詳しく資料として出させていただいておりますが、 このような御意見、論点を踏まえて、最後6ページに「アウトリーチ支援実現に向けた考え方」 という資料に基本的な考え方、具体的な方向性のたたき台といいますか、事務局としての案を列 挙をさせていただいております。  まず基本的な考え方として、  (1) 「地域で生活する」ことを前提とした支援体系とする。 (2) アウトリーチ支援で支えることができる当事者や家族の抱える様々な課題に対する解決を、 「入院」という形に頼らない。 (3) 当事者・家族の医療に対する信頼を築くためには、最初の医療との関わりが極めて重要で あり、医療面だけではなく、生活面も含め、自尊心を大切にする関わり方を基本とする。  こういった基本的な考え方でアウトリーチの支援を行っていくべきではないかということであ ります。  そして、その実現のための具体的な方向性、進め方といたしまして5つ列挙をいたしておりま す。  (1) 当事者の状態に応じた医療面の支援に加え、早期支援や家族全体の支援などの生活面の支 援が可能となる多職種チームであることが必要。 (→医師、看護師に加え、生活面の支援を行うスタッフを含めた体制づくり) (2) 財政面、地域における人材面の制約も考えると、できる限り現存する人的資源を活用する とともに、地域支援を行う人材として養成することが必要。 (3) 入院医療から地域精神保健医療へ職員体制等を転換する観点から、アウトリーチ支援の実 施を、医療機関が併せて病床削減に取り組むインセンティブとすること望ましい。 (4) 地域移行、地域定着を進める観点から、「住まい」の整備を併せて行うことが必要。 (5) 各障害に共通した相談支援体制との関係を明確に整理し、障害福祉サービスや就労支援に 向けた取り組みも円滑に利用できるようにすることが必要。 こういった考え方を列挙いたしております。 この検討チームは取りまとめをするというような趣旨のものではございませんけれど、この考え 方について、更にこの場で御議論を深めていただいた上で、概ね御賛同いただけるということで あれば、今後の予算要求や今後の施策の道しるべとして事務局としても皆様方の御意見、そして こういった考え方を受けとめていきたいと考えております。  資料としては以上でございます。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございました。ただいま説明のありました論点の部分に ついてのそれぞれの御意見、そして最後のページですけれども、「アウトリーチ支援実現に向けた 考え方」、こういった一連のこの資料に関わる部分につきまして、前回同様引き続き、皆様方から 御意見を、一応前回いただいた意見を基にして資料を整理してございますので、更に足りない部 分、趣旨が十分に伝わってない部分、更に強調すべき部分、いろいろあろうかと思います。また、 文にしてしまうと、本当にこのところが担保されているのか、大丈夫かというような確認をした い部分とか、そういったところもあろうかと思います。そういった点につきまして、忌憚のない 御意見をいただければと思っています。  前回、私の進行の不手際もありまして、全員の方に必ずしも御意見をいただけなかったもので すから、まず最初、前回、十分に御意見いただけなかった方から御意見をいただいた上で、また 皆さん全員に御意見いただくような形で進めさせていただきたいと思います。  それでは、まず田尾構成員、いかがでしょうか。 ○田尾構成員 御指名ありがとうございます。こうやってまとめていただくと、何となくまとま った話がなされているのだと思うのですが、前回までの私の印象では、大きく2つの議論が交錯 していたような印象を持っています。先週、岡崎先生がおっしゃったように、過去の歴史に関し ては国が一定方向を明確にして、これからの未来に向かった精神保健医療のことを考えていくべ きだという考えで、その考えには基本的にはみんな同意するのだけれども、過去の負の遺産とい うか、精神科病床問題の解決の方向性に一致を見ないと、次が進めなというところで議論が堂々 めぐりしているような印象を受けました。  今回この会議の中では、民間の精神科病院の院長・先生たちも、病床を削減することにも御同 意いただいていると理解しました。それでよろしいかと思いますが、よろしいですね。それで、 その方法の問題だと思うんですが、先日の構想会議の提案もそうですし、我々も広田さんも繰り 返しおっしゃっていますけれども、精神科医療にかけられている医療費は、精神疾患の国民の発 生率というか、かかる人が5人に1人だという多さから考えると、入院も外来も非常に安いです。 そのため十分な医療が行われるような体制になっていないと思っています。だから入院患者さん を削減するといっても、精神科医療費にかかっている医療費全体をそこで減らすということは、 それには皆さん反対だと思うんですね。  それには精神科特例を廃止して、一般医療と同じに入院費に関わる医療費を上げて人員配置も 医療の質も上げていきたいと私は考えているのですけれども、現在精神病院で働いている人たち の雇用も守り、入院への人員配置はもっと厚く、それから十分ではない外来にはもっと人を手厚 く配置できるようにしていきたいと考えていると。特に特例廃止に関しては、ここにいらっしゃ る皆さん方の一致した考えだと考えてよろしいでしょうか。これは後で確認させていただきたい と思います。  河崎先生が何度もおっしゃっていたことですけれども、例えば医療費が上がっても、病院の収 入のお金が変わらなくても、病床を削減したときに、今の患者さんが行くところがないと。その ための方策として病床を社会資源に転換したらという御提案なのかというふうに受け取ったので すけれども、東京でも病院の建替えはピークを過ぎたかと思います。少し前までラッシュでした。 今ある病床を守り、アメニティを上げて入院患者さんのニーズに応えようとした結果なんですね。 この病床を維持した建替えを許したのは、まさに私は国だと、政策の間違いだと思っています。 多くの経営者が多額の負債を抱えてしまった。病床の社会資源への転換を、もし経済的な観点か らの活用というふうにお考えだったならば、これは病床を減らす上で建設などにかかった費用に 関しては、国が私は何かの形で保証を考えるべきだと思っています。国の政策でここまで精神科 病床が増えてきた。それを維持するために建替えをしてきた。その前提に立って、経営的に投資 して借財を抱えたわけですから、その借財は国の方針がはっきり病床削減を打ち出した段階で何 らかの手当があってしかるべきだと思っています。  例えば、そういうことが可能だとして、これも仮定の話ですけれども、それでも精神科病院の 社会資源への社会復帰施設(旧社会復帰施設)の転換が必要なのかどうかということなのですが、 敷地外福祉サービスに関するある種の不安が私たちには非常に根強くあります。敷地内住居から 退院請求が出たというような笑い話のような話が現実にあります。私が知っている病院でも、法 外の共同住居を敷地内につくって、そこの入所者は全てデイナイトケアに通います。土日に訪問 看護しますといった例があります。病床から外しても、敷地内住居を認めると永遠に病院の経営 に貢献するような固定資産としての位置づけを強いられるのではないかというような不安がある んですね。  先週、河崎先生がおっしゃった退院支援施設も、地域移行型ホームも基本的には有期限ですね。 期限が守られて運用されるならば、私は一過性の敷地内の社会資源というのはあってもよいと思 っているんですね。ただ、新垣先生のところなどは宿泊型自立訓練として生活訓練施設をいち早 く移行させていらっしゃいますし、そういう運用もされているところもある。ただ、以前、私、 厚労省の方に伺ったところ、就労移行とか自立訓練は将来にただ一度だけ、2年に限った利用と 言い切ったのに対して、退院支援施設に関しては、2年も超えて延長することが可能だというよ うなことを聞いたような気がするんです。そうなるとさっきのような不安が出てくるんですね。  先生たちは地域に社会資源がないとおっしゃいますけれども、ある地方へ行ったときに、病院 立の社会資源しかなくて、私はPSWに、なぜ自分たちでつくらないかと聞いたら、病院ににら まれると言うんですね。つくっても、利用者の紹介は見込めないといった言い方をする。  私は18年前に「巣立ち会」を立ち上げましたけれども、当時はまだ病院にいました。最初は任 意団体、今でいうNPOみたいな形で、彼ら役員は当時の病院長を含めた病院職員半分、家族会 の家族半分というような構成でつくりました。病院立とすると、どうしても制限が出てくるので、 組織にすることにはこだわりました。でも、それでも病院からの支援は非常に手厚くしてもらっ た。つまりそのことで私が動きやすいような配慮をしてくれたのですね。財政的な負担はかけな いようにしましたけれども、それ以外の点では随分いろいろ助けられました。6年ほど前に、私、 病院をやめましたけれども、密な連携体制は今でも続いているし、今の院長先生も支援してくれ ています。今では東精協の理事をしていらっしゃる多くの先生たちも支持してくださっている。  本当に患者さんのための社会資源が必要ならば、別に敷地内でなくても、病院立でなくても、 社会資源を増やしていく方法はあるのではないかと思うんですね。先週、佐久間先生がおっしゃ っていたように、病院でスタッフ・人材を育てて地域へ送り出すというようなことをもっとやっ ていただきたい。病院の職員に地域で応援するからやってみないかと聞いていただければ、やり たいという職員はたくさんいると思うんですね。  繰り返しになりますけれども、病床削減して病院の収入は減らない、そういう診療体系にする。 それから、先行投資として建物などにかかったお金は国が保証を考える。その上で、病床削減し 地域移行するに当たって、どんな社会資源のあり方がいいのかということは、例えば福祉計画み たいなものも地域にありますし、今度自立支援協議会が改正法案で法制化されたと思いますけれ ども、個々の病院単位ではなくて、それぞれの地域で利用者にとって患者さんにとって一番いい 方法を、市区町村の地域のテーブルの中で考えていくというようなことはできないのでしょうか と、お願いとも意見ともつかないようなことを1つ先週言いたかったので言わせていただきたい と思います。  それから、病床問題についてはそうですけれども、負の遺産だけではなくて、こうしたある種 の悲劇が起きなくて済むために、打って出るという策も必要なんですね。まさにこの会議がその ためにあると思っているのですけれども、巣立ち会では、昨年から早期支援を始めています。こ れから発症するかもしれない人、発症間もない20代から30代の人たちへの支援体制をどんなふ うにしていくかということは非常に緊急で重要な課題だと思います。早期支援はやってみて思い ますけれども、本当に支援を必要としている人が大勢います。ですのに、この大切な時期にほと んど誰からの手助けもなく放置されているというのが現状だというのが実感です。  広田さんは医療の犠牲者を出すのではないかということを非常に懸念されていますけれども、 実際その状況に置かれている人たちは非常に困っています。しかも支援がなくて追い詰められて いる。早期の支援では、私たちのような医療機関には属さないけれども、支援できるような立場 の人間、広く保健と呼ばれるようなシステムがあるといいのではないかと私は思っています。  相談依頼は教育機関や家族、御本人というところからあります。発症して病院の治療を受けて いるけれども、就学、就労、そういうことがうまくいってないというような相談もあるし、家族 に多いのは閉じこもっていてどうにもこうにも病院に連れて行きようもない。助けてくれる人も いないという相談があります。教育機関からは、今、この子を病院に連れて行ったほうがいいの だろうか、あるいは今かかっている医療機関でいいのだろうかというような、そんなような相談 もあります。とにかくこの時期の支援の特徴は、こちらから出かけて行くというようなことが大 切かと思っています。  今回、話題になっているアウトリーチという支援ですけれども、このアウトリーチの対象者と いうのは若者に限りませんが、非常に重要なサービスの形だと思っています。ただ、長野先生が おっしゃっていたように、医療が自分の病床を維持しながらこれをやるというのは非常に危険な ことだと思いますが、病床削減という前提のもとに是非是非広げていってもらいたい。対象の特 性に応じて、医療保険の対象になるアウトリーチと、保健サービスのような、医療保険の対象に ならないような人たちとに大きく分かれるのではないかと思いますが、是非来年度の予算にもう ちょっと積極的にモデル事業として取り入れていってほしい。今年度も早期支援、危機介入のモ デル事業は一応ありましたけれども、箇所数の設定や見込み予算額というのは私は不十分だった と思っています。  今回、この会議は予算の時期に合わせられているので、実は少し期待していたんですね。もっ と大きなことができるのではないかというすごい期待をしていたのですけれども、3回過ぎてみ るとあまりそうでもないなと思ってきていまして、もうちょっと現実的なお願いをしたほうがい いかなということで、アウトリーチのモデル事業をきちんとつくってほしい。医療保険でやれる 内容のものと保健サービスに属する医療保険にのらないものというような二本立てで考えてほし い。それは特別対策費や既存の定着支援、そういうものの中に何となく滑り込ませるとかという ことではなくて、きちんと見せる形からして、これをやるぞというような形で十分な予算額もや るぞという意識、姿勢も見せていただきたいと思います。  それから、もう一つ、国がこういうモデル事業をやるときに、都道府県にもっと事業実施をす るように積極的に働きかけてほしいんですね。要綱ができないだとか、そういう手順の問題もあ るかと思いますけれども、本当に実施したいと国が思えば、根回しするだとか、非公式にでもで きるようなことがあるのではないかと思うんです。制度をつくるのが国の大きな役割です。その 円滑な実施に向けてももう少し工夫と努力をしてもらいたい。現にこの早期支援、機会によるモ デル事業は、今年度決まったところはありますか。それは後で教えてください。  というようなことです。以上です。 ○福田精神・障害保健課長 どうもありがとうございます。 ○林課長補佐 今年度まだ決まったというような手続上の状況ではないですけれども、今年やる ということで聞いているところはいくつかございます。 ○福田精神・障害保健課長 精神科特例のことはもう少し後のところで御意見を皆さんからいた だこうかなと思っておりますが、そのような形で進めさせていただきたいと思います。ありがと うございます。  新垣先生、お願いします。 ○新垣構成員 ありがとうございます。田尾さんが精神科の病院を減らしていいですか、精神病 院全体ではなくて、私個人であれば、地域に必要な分のものがあればいいのかなと思ってはおり ます。前回話せなかったのでしたためてまいりました。  私、民間の精神科病院の院長として運営しておりますけれども、精神科分野を専門としている 多くの職員、それと多くの精神障害者が利用している、私たちが運営している精神科病院が真に 適切で、その地区で有効であるという、そういう集団になるためのロードマップ、具体的・現実 的に示してほしいと考えています。今ある精神保健サービスを全て御破算にして新たな仕組みを ゼロからつくり直すというのはあまり現実的ではないと考えます。今ある精神科病院は地域精神 保健医療、福祉の資源であるととらえていただいて、ロードマップを構築してもらう必要がある と思います。  これまでの議論で、利用者を中心とした医療と生活支援のそれぞれが切れ目なく、境目なく提 供されることが望ましいのは十分理解しています。その上で現在の精神保健医療のサービスから 望まれる今後新たな地域精神保健医療体制と言いかえてもいいのですけれども、変化するための ステップとして精神科医療の範囲と精神保健福祉の範囲を示し、それぞれを充実させる視点が必 要だと考えます。現在の精神科病院の働きを医療財源からの活動と福祉財源からの活動に分け、 その組み合わせとして、当面の間でもいいのですが、精神科病院が両方の活動で運営できるよう な仕組みをつくってはどうかと考えています。  この場合、福祉系サービスの提供で十分に職員を養えるように手当てをしていただきたいと思 います。現在の福祉、自立支援関連はどうしても医療費から持ち出しが出てしまいますので、そ ういうことでは精神科病院がそちらのほうに移っていくことは難しいと思います。そういう医療 財源と福祉財源2つの面で活動できるようになる。そのことが、今ある精神科病院が医療に重点 を置いた病院であるとか、福祉に重点を置いた病院であるなどいくつかの選択肢、またいくつか のステップで表現できるようになると考えます。  私は内科系学会社会保険連合(内保連)の例会にもこの数年出席しておりますが、その席の中 で長期のリハビリテーションや地域生活定着支援、長期にわたり続ける必要がある福祉的色彩の 強いサービスを更に手厚くするために診療報酬を上げてくれという要望は他の診療科には到底理 解していただけません。医療と福祉の両方の活動を医療費を主体とした財源で賄う今の構造には 無理があり、次第に提供できる精神医療サービスは貧困なものになっています。  医療サービスの質の低下は精神科医学というものはあるのですが、精神医療の実践ではなく、 精神科と名乗っていても、福祉サービスしか提供してない、そういうような誤解を生んでいます。 実際に精神医療の質の低下は、精神科病院に入院中の患者さんは他科の病院の受診が制限され、 精神科以外の専門科医療が受けにくいという差別ともとれるような診療報酬が最近随分問題にな っていると思いますが、まだ、他にもデイケアは1つのユニットなので、一目で監督できるよう な体育館のようなところでやれというようなリハビリテーション活動を個別化させないような指 導が続出するなど、質の低下、もしくは福祉サービスであるというような観点の誤解が前提にあ ると思います。  丁寧にニーズに応えようとすると赤字になり、貧困な医療を提供したほうが経営が安定するよ うな診療報酬体系もあります。そういうわけで、税金から運営費への繰り入れ、補助金、モデル 事業などがない民間の精神科病院を疲弊させることをねらったやり方であれば、そういうことも いいのかもしれません。しかし精神科病院に勤めている専門職員を地域の精神保健の資源とする 考え方、またそれを利用している当事者が多数いるということを考えるなら、精神保健医療のあ るべき方向性をネガティブな表現ではなく、きちんと示すべきだと考えます。このままでは日本 に精神医学を提供する仕組みがなくなってしまうという危機感さえ覚えます。  さて、当検討会の主たる議題の「アウトリーチ」についてですが、これからの精神保健医療へ の考え方とこれまでの歴史的な長期入院者に対する考え方の2つに分けて考える必要があると思 います。精神科病院を運営している立場から、これまでの歴史的な長期入院者がアウトリーチに 至る前の長期入院者の退院についてのみ発言します。  長期入院者の退院が続くと、病院の収入は途端に減収になります。この話を持ち出すと、皆様 は当然であるという顔をしますが、敢えて発言します。当院でも退院促進をしております。退院 促進が進み、長期入院者が少なくなると入退院者数が増え、入院による収入は月々変化します。 今年の4月、退院者と入院者の数のバランスが悪く、ひと月の売上が一千数百万減収になりまし た。施設基準がありますので、入院患者さんの定数に対しての職員の配置が決まっていますから、 病院の収入というのはある金額から下がることはあっても増収にはなりません。その中で総収入 の約1割近い減収がひと月であると、経営担当、院長としてはびっくりします。1年続けば1割 の職員のクビを切らないといけなくなります。このようなことでは運営側も職員も退院促進から 腰が引けてしまいます。  精神科病院の治療構造を変化させるためには、変化を支えるための診療報酬上の配慮が必要で す。診療報酬改定の方向は、ただでさえ差別的に低い精神科病棟入院基本料を下げて、更に貧困 な精神医療現場をつくる方向ではなく、外来治療構造を評価する方向、すなわち休日、夜間など 危機的な状況に対応するような治療構造が成り立つ、その方向が望ましいと考えます。  以上、精神科病院は地域精神保健医療の資源であるとの観点からの意見です。  御清聴ありがとうございます。 ○福田精神・障害保健課長 どうもありがとうございました。  直嶋構成員、お願いします。 ○直嶋構成員 本検討チームに3回出席させていただいての率直な今の思いを述べさせていただ きます。  秋田県の8,500人の町の保健師をしておりますが、30年あまりの町保健師の活動から、いつも 住民のそばにいて感じることは、様々な困難、悩みを抱える多くの人々の中で、誰が、どんな人々 が一番家族だけでじっと長く耐え、悩み、生活しているかというと、それはやはり精神疾患を有 する御本人、家族だと痛感しております。そういつも思っているということはとりもなおさず私 自身がそれらの人々を長く支えきれていないということです。  でも人々は、いつもいつも頑張って頑張って暮らしています。躁うつ病で暴れる我が子を躁状 態のとき、何回も暴れる我が子を無理やり・泣く泣く病院に入れ、その子がやがて退院してきた とき、顔貌も全て変わり果てて、帰ってきたその息子を毎回毎回体力を回復させようと散歩に連 れ歩き、そのたびに回復させる母親がいます。統合失調の双子の姉妹を持つ母親は、今、70代後 半、娘の内職を手伝いながら、将来に希望はないといつもいつも話しながらも漁師の手伝いをし ながら、住みなれた我が家で3人で頑張って暮らしています。先日、中学校からずっと引きこも っていた20代の女の子が、工場に今度働きに出たんだよ、とうれしそうに報告に来てくれた40 代のお母さんがいました。  このように、地域の人々は、頑張って頑張って、ぎりぎりで何とかこの恵まれたいい地域で暮 らそうとしていますが、私自身は精神保健福祉士の資格を持ち合わせていません。保健師として、 町の皆さんのそばにいる者として、ただただ御本人、家族の話を聞いたり、生活保護など福祉係 につなぐ。そして時には家族や本人に同伴し受診や、そしてまた非難される行動ではあるけれど も、実際には入院をお願いするために精神科医を時どき訪れる、そのような保健師の仕事をして います。でもこれは恐らく私一人ではなく、多くの地方の市町村の保健師の実態であり、課題で あり、問題であると思っています。  今、当町では、まさに今週から2週間、早朝健診が始まりました。今日それで私は抜けること ができたのですけれども、その早朝健診のつらさや早起きは別として、町では特定健診の実施か ら始まり、国保加入者の特定保健指導の実施。そして秋田県は自殺率の高さ、がん死亡率も高率、 そして少ない子どもたちをしっかり支えるという母子保健、子育て支援の仕事、いろいろな仕事 の中でなすべきことがたくさん山積みです。  精神疾患に悩む御本人、御家族、それもやむなく入院させられてしまっている人々、地域で当 たり前に暮らしたいと思っている人々のために、今回サービス提供、マネジメントのこのような パターンが示され、先駆的な事例が示され、このようなことがこれから多くの地域で現実的なも のになってほしいと財政的にもマンパワー的にも弱体な町の一人の保健師として期待します。  それで最後に、私自身ができることはあります。精神疾患に対する偏見をなくすための住民へ の啓発、心のふれあいサポーターの継続支援の中に、精神疾患の知識、認知症の知識を組み入れ ること。いろいろなことをやっていくと必ず自殺対策推進の経験から、住民は必ず底力があり、 心を変えることもでき、動き出すことが絶対できると思います。勇気を持って、いつかきっと地 域が変わると信じて、微力ながら小さな町の保健師として精神保健にもしっかり向き合って努力 してまいりたいと思います。  ありがとうございます。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございました。  それでは、今までの論点、そして御意見に対しまして、また追加の御意見、新しい意見という ようなことも求めたいと思いますけれども、高木先生、お願いします。 ○高木構成員 先ほどからの意見を聞いていますと、財源をどうするかという問題が非常に大き いと思うのですけれども、財源については、福祉の財源をと言いますけれども、今の日本でこれ だけ医療と福祉の差がある中で、福祉の財源に期待するというのはちょっと甘い。つまり福祉は 税金ですから、財政出動という道はあまり期待できないですね。そうするとあと残っているのは 仕分けと埋蔵金です。仕分けというのは、この前も言いましたように、例えば本当に効果のある 治療がなされているのかということをきちんと検証していかないといけないわけですね。支援が なされているかということは。例えば前回、私はOTの件を言いましたけれども、500億ぐらいお 金が社会復帰の名目のもとに社会復帰がなされないまましていると。  この会議では全く今まで出ていませんけれども、薬の問題は非常に大きいと思うんですね。非 定形向精神病薬ということで、皆さん非常に期待しておられますけれども、もし期待ほどの効果 があるなら、今ごろもっと進んでいたはずですけれども、ただ、ひたすら医療費だけが増大して いっている。製薬会社が一番先に地域移行して、地域でいろいろ宣伝をしておるわけですけれど も、例えばセルメース3ミリを使うのと、ジブレキサ10ミリを使うのであれば、薬代だけで1か 月で10倍から50倍の差があるんですね。こういうものをきちんと検証して、つまり仕分けして いかないといけない。  仕分けの最たるものは、先ほどから精神病院は資源であると、私もそう思います。当然医療機 関なのだから資源の1つなのですけれども、それが果たして資源足り得ているのかということの、 病院ごとのちゃんと仕分けをしていかないといけないということですね。もちろん資源足り得て いるところもあると思います。しかし地域の中の資源としてあるべき病院としてはどういう役割 を病院が持てばいいのかというビジョンを病院はきちんと示してほしいですね。  病院の医療費が、私、少ない少ないというのを聞きながら、ふと思ったのですが、私が20年前、 単科の精神病院をやめたときには、大体一人当たりの入院医療費25万ぐらいです。今、療養病床 でも30万、普通OTやSSTをそこでやっていれば40万近くになる。そこに更に急性期病棟だ と60万、70万かかっているわけで、このデフレがずっと20年間続いていたときに、あるいは経 済成長率を3%としてずっと考えても、25万が今40万になっているというのは相当な増加なんで すね。それが増加足り得てないということは、きっと急性期病棟などをつくったときにその回転 をきちんとできてない。つまり急性期を支えるための病院として機能しきれてないという病院の ほうに問題があるのではないかと私は思っております。  つまり実際には医療費をどんどん上げていっても上げていっても、長期入院は減ってない。な ぜその長期入院が減らなかったかという反省がない中で、今の医療費が貧困だから、そこに医療 費を出すといっても、これはまたパイの奪い合いになるだけではないかと思っております。  以上です。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。  野村構成員、お願いいたします。 ○野村構成員 このアウトリーチ支援実現に向けた考え方につけ足して考えなければいけないと 思うことが4点ぐらいありますけど、なるべく短く話します。  第1点目は、アウトリーチを行う前に相談が入る窓口、それをどうするかということを私は非 常に心配します。相談というものは、今非常に相談がしにくくて、保健所に行ったり、市役所に 行ったりしておりますけれども、最初に心の不調を感じたときに、日本全国どこの地域でもすぐ に相談に行きやすい窓口がなければいけないと思うんです。これは気軽に敷居の低い相談窓口が 絶対に必要だと思います。これは精神疾患が発生したから行くとか、精神障害だから行くとかと いうのではなくて、一般の市民が心の変調を感じたときに国民の精神保健を守るという範囲です ぐに相談に行けるような窓口が必要だと思います。そこでは心理的な支援も行われるようにしな ければいけないと思います。ただの振り分けだけではだめだと思います。しっかり話を聞ける人 が窓口に相談員にいなければいけません。その相談員をどのように養成するかということが非常 に大事なことだと思います。  精神科の「心の電話相談」になりますと、リピーターという方がたくさんいらっしゃって、何 回でも電話をしてくるのだけれども、それでも満足できなくてということがありますけれども、 そういう方たちをどうやって自立させていくのか。電話に依存しなくてもきちんと自分で生きて いけるのかということも考えなければいけない。そういう相談窓口でもあると思います。それか ら、そこの相談窓口は自殺とか引きこもりの問題もそこできちんと取り扱うような相談窓口であ ると思います。  そのような国民の精神保健一般に関しては、相談窓口を国が責任を持って、ある程度のレベル を保ちながら、年々それが改善されて技術のレベルが向上していけるような相談窓口を日本全国 につくらなければいけないだろうということを感じます。その相談窓口に入ったいろんな情報を 基にして、要請があればアウトリーチのチームが出かけて行くというようなことが地域のあり方 としてはいいのではないかと思います。  今までは相談に行くと、精神病院に入れられてしまったりということがあるから行きたくない んだとかというのがありましたが、この相談窓口は入院には結びつかない。とりあえず話をする だけというような感じの相談窓口でいいと思います。そして、この悩みを聞いてもらえるとかと いうことの中から、例えば引きこもりの問題が出てきたり、自殺の問題が出てきたり、人によっ ては精神科を受診しなければいけない人も出てくると。受診をするときには、今までのように入 院というような形ではなくて、心が楽になるような、そういう治療を受けられる。心が楽になる 治療ということは薬だけではないんですよね。そこの病院とか診療所に行くとちゃんとお医者さ んから丁寧に話を聞いてもらえて、場合によっては薬なしで本当に精神的な、例えば認知行動療 法とか、心理的な支援だけで終わって帰ってくるということもあっていいと思います。精神科の 医療機関というものが、これから先はイメージを変えていって、心が苦しい状態が心が苦しくな くなって元気になってくるところだというような、そういう場所になっていたらいいと思います。 最悪の場合は入院もいいと思いますけれども、前にも出しましたが、医療機関に行ったときには、 きちんと患者さんの自尊心も大切に守られて、信頼関係が生まれて、そしてもう二度と行くかと いって帰ってくるようなところではなくて、通院を安心して喜んで行けるような、そういう医療 機関でなければいけないだろう。そこでは、行ったときに生活設計ということも一緒に考えてく れるようなところでなければいけないと思います。これからどうやって生きていくか。人生に破 綻しそうだけれども、それをどうやって乗り越えて普通の人と一緒に生きていくのかということ までも心配してくれる、そういう医療機関でなければいけないのではないかと思います。  それが相談窓口と医療機関のことについて述べました。  この相談窓口のレベルは、国全体の、あちこちにたくさんできると思いますけど、その質の確 保ということを国が責任を持たなければいかんだろうと思います。相談のあり方の評価も行わな ければいけないと思います。これをきちんと全国津々浦々に置いて、そしてアウトリーチチーム もそれと一緒に実施されていくということであると私は考えております。  第2番目の問題として、家族への支援ということをどう見るかということですけれども、家族 は何を願っているかというと、自分が楽をすることではありません。身内の病気をしている人が 生き方が健全化していくということだと思います。病気に悪くならないかということがあります が、それよりも病気を持ちながらも生き方が健全化される、安心できるということが本当に大事 なことだと思います。建設的な考え方、建設的な生き方ができていくということが家族の一番の 安心だと思います。目的もなく自殺ばかり考えていられると家族は大変です。それから、ストレ スがたくさんたまって、それをどうしようもなく自暴自棄になって、壁をぶち破ったり、ガラス を割ったり、家族に暴力を振るうようなことがあると家族は本当に困って助けを求めるのですけ ど、助けもどこからも来ないという状況ですから、まず本人が精神的にだんだん落ちついて考え 方がだんだん健全化されていくというか、生き方がまともになっていくということが一番家族に とってはありがたいことだと思います。それをどうするかということが、これは医療と地域の福 祉との仕事なのですけれども、まずそれを一番に願っております。  その中で生活を健全化するためには家族の役割も非常にあると思うんですね。その役割を家族 が果たしていくということは、家族が喜んですると思います。それがどういう役割であるかとい うことは家族にはなかなかわからないことがありますから、これは多職種のチームとかのアウト リーチの方とか、地域のいろいろな支える方たちと一緒に話し合いをしながらのことだと思いま す。  家族のレスバイトということがありますが、家族が疲れ果ててしまったり、あるいは病気にな ったりしたときに、例えばアパートに休養のためにそこに一時暮らすようなことがあったとして も、当事者の方は大体は家に残るんですね。当事者の方もどこかの施設にショートステイに入っ てくれるといいんですけれども、大体そうはならなくて、当事者がショートステイはしないから 家族が仕方がなくアパートとかシェルターとかに入るということになるんですけど、そのときに 残された人を誰が見守るかということで、家族はいつもレスバイトを利用できないんですね。家 族が休息しているときには、チームが見守って、巡回しながら、時どきその人を見に行ったり、 外から見るだけでもいいんですけれども、御本人と会話したり、食事を届けたりというようなこ とがあれば、その結果をレスバイトの部屋で休息している家族に報告していただければ、家族は 安心して休息ができるんですね。お子さん、1日何回見回って無事でしたよ、食事食べていまし たよ、そういう話があると家族は安心して休息できるということだと思います。  それから、家族が一番悩んでいることはもう一つあるんですね。親なき後の問題なんです。自 分が倒れて、あるいは死んでしまった後には、うちの子どもは誰が世話するのだろうということ になってくると、御本人は大丈夫と思っているかもしれない。でも親が死んだ後は自殺してしま う人もいるんですよね。孤独死、いつの間か自分の部屋で死んでいたりすることがありますから、 これをどうするかということなんですけれども、家族支援ということを考えてくださるのであれ ば、親が死んでしまった後はちゃんとチームが訪問して、時どき様子を見に行ったりして見守り ますから大丈夫ですよ。地域全体で責任持って、その人を支えますから大丈夫ですよということ を常に伝えて、これがアウトリーチの大事な役割ではないかと思います。親が死んでいなくなっ ても、アウトリーチチームがちゃんと見ますよ。  ただ、そこで問題になるのは入院のようなときに、家族が死んでしまった後、誰が保護者の役 をやるかということなんですね。後見人もいなかったときに、誰がその人を入院させるような処 置をとることができるかということです。兄弟がいれば兄弟がやるのでしょうけれども、保護者 制度は私たちは早くなくなったほうがいいと思っていますけど、兄弟がやるとしても、兄弟がい なかったりいろいろあります。それであっても、親が死んでも大丈夫、地域できちんと入院の事 態が起きたときにも対応することができるような地域の支援体制をつくらなければいかん。それ を家族が安心していられるような体制にしなければいけないと思いますね。このようなことが家 族支援にとっては非常に必要であると思います。  まとめますと、本人が生き方・暮らし方が健全化していくこと、そういう支援を本人にしてく ださること。その支える役に家族も入れていただけること。もう一つは、家族が疲れ果ててレス バイトのハウスなんかに避難したときには、あるいは本人の暴力のために家族が一時避難してと きには本人を見守る体制がアウトリーチチームに求められるのではないか。入院も含めてです。 それからもう一つは、親なき後についても、同様に親がいなくても、チームがちゃんとその人が 地域で暮らしていけるように責任を持って見守る。これがケースマネジメントを行って見守りを するということです。それが家族への支援ということについては考えられることです。  それから、3つ目は、評価委員会というものを各地域につくらなければいけないということで す。アウトリーチチームがどのような支援をしているか、あるいは相談がどのように適切に行わ れているかということをきちんと見なければいけない。こういった委員会をつくるに当たっては、 その中に必ずその地域の家族と当事者の代表を入れていただきたいということです。私はデンマ ークの学校の運営について調べたことがありますけれども、そこの学校では、18人の運営委員が いる中で6人が父兄(お父さん・お母さん)です。6人がその学校を利用している子どもです。 あと6人がその学校の先生とか地域の行政関係者です。学校の運営に3分の2ほど家族と当事者 が入っているわけです。普通の学校です。そのように評価委員会や当事者の支援に関する委員会、 会議には当事者と家族をたくさん入れていただかないと、例えばこの会議でも、私のような者が 一人、堀江さんもいらっしゃいますけど、二人で一生懸命。 ○広田構成員 私も一人。 ○野村構成員 当事者の方が一人いらっしゃる。それは少ないなと私は実に残念に思っておりま す。私のわかってないことはここには出てこないわけですから、堀江さんもわかっていらっしゃ らないことはここには出せないわけですから、広田さん一人しかいらっしゃいません。もう少し 数がいたほうがいいと私は考えています。  それから、最後ですけれども、今回は精神医療の問題がここでは中心ですけれども、この会議 が終わって、医療について予算がついたとして、地域の福祉、精神保健福祉というものが非常に これから問題になってくると思いますけれども、今のように、ただ行くということだけが定めら れていて、そこで行って何をするかということが非常に不明確であることが問題だと思います。 せっかくお金を使っているのであれば、そこに通う一人ひとりが、尊厳のある活動ということを 私は必要とすると思います。一人ひとりが計画をちゃんと立てる。自分の望みを持ってその望み を実現するための計画を真剣に一緒に考えてもらえて、そして一人の人として大切に扱われなが ら自分の生活を切り拓いていくという場所が地域に必要であると思います。社会にだんだん深く 結びついていくような方向性がないと、隔離されて、ある場所で毎日そこに通ってマンネリズム で内職だけ、時給200円だとか50円とかの内職だけをずっと一生涯やらされるなんていうのはと んでもないことだと私は思っております。これは一人ひとりがそこで活動することが大切にされ て、それがその人の生活をよくしていく、必ずよくなっていく。そして社会にとってもプラスに なっていくということをもっと国と社会が全力を傾けて、その人を社会によりよく結びつけてい く。その人の活力を社会の大切な活力として迎え入れていくということをもう少し真剣に考え直 さなければいけないと思います。そして一人ひとりの回復が、そこの福祉の事業所があれば、そ こに行けば、一人ひとりの回復か実現していくような、本当にみんなが喜べるような、そういう サービスをどのようにしたら地域につくっていけるかということをこれから考えていかなければ いけない。福祉の世界でも改革を行わなければいけないと考えています。  以上です。ありがとうございました。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。長野構成員、お願いします。 ○長野構成員 たくさんあるのですけど、少し絞ってさせていただきたいと思うのですが、まず 一番現実的な身近なところから、3ページの「サービス提供体制のあり方」の中のアウトリーチ の提供主体のところなのですが、ここに自治体・市町村という文言がないんですね。ここがとて も大事なことで、この前、保健所のことも少し言わせていただいたのですが、生活の場から離れ てしまったところでは機能しないです。  あとさっき直嶋構成員がおっしゃられたのですけれども、本当に市町村、例えば私たちの病院 で100人の医療スタッフ含めフルで動いて、NPOが50人動いて、作業所・シルビーですけど、 いろいろ入れていくと200人超えてフル稼働しているんですけど、市町村の精神担当はお一人で、 様々なことが兼務で、最近わからない方が多いんですけど、教えてもらえますかとおっしゃるの ですけど、もういいですよ、そんなにしなくてと言いたくなるんですね。全部一般財源として事 業が持っていかれているだけなので、いくら事業がたくさん国でつくられても、県でタイムラグ ができ、予算が取れず、市町村に来た時点ではその事業はいつの事業というのが本当の現場の現 実だと思うので、重点思考はいるのだろうと思うんですけど、全体の中でもちろん精神のことに も取り組まなければいけないという視点もありながら、かつ重点的にこれだけはやろうと。あれ もこれも、あれもこれもというのではなくて、これだけは市町村ピンポイントで今やるべきでは ないのというようなところを、財源とともに、マンパワーとともにやっていく仕組みが絶対必要 だと思うのですね。市町村じゃないと絶対だめで、その中にここにすぽんと市町村が抜けてくる 今の現実があるのかなというふうにちょっと思ったりして、文言として是非強く入れていただけ たらと思います。  今回、とりあえずひと区切りということなので、総論的なところなのですが、思いとして、ま ず新垣先生がおっしゃった、こうあるべきだ。精神科病院もどう変わっていいかがわからないと いうようなところはとてもあるのだろうと思うのと、どういうふうにプロセスを経ればいいかわ からないというのはとてもあると思うんですね。私たちも病床を減らすことは全く目的とせずに 地域支援しながら、要らなくなった病床を閉じるという過程の中で何をしてきたかというと、地 域サポートに関しては、変な話、やればできるのだと思います。そんなにやるか、やらないかだ と思っていまして、その中で、ある時期2年間ぐらいは1週間に1回ずつ試算をしていました。 試算表、経済的な試算ですね。  実はとても、そこの部分とかいろいろ問題があって、実は日本での診療報酬での前例も何もな かったものですから、考えるしかなかったので、スタッフは絶対、地域の精神保健資源としてス タッフは守らなければいけませんし、生活を守るという観点ももちろんあるのですが、要するに スタッフが減りました。地域で精神保健資源が減りましたというのは絶対ノーだと思っていたの で、財源移行も含めてかなり工夫をしてきました。そこがもう既に平成15年、16年のころのこと だったりとか、今ももちろんやっているのですけど、だんだん薄れてきていて、逆にこういうノ ウハウはどんどん積み上げる。ロードマップが示されてノウハウが示されるということ、ヨーロ ッパ各国、世界各国を見ても20年かかっているので、とにかく早くスタートする。ただ、減らす ことが目的ではもちろんないので、支援をしながら一番適切にする。よく入院が悪だという論調 は今回もなしだと思うんですね。入院が悪では絶対ないので、私たちも入院という手段も使わな いとお支えできないことももちろんあるので入院も必要。だからどんな資源を使っても地域で暮 らすのをお支えするという意味で、適正に移行していく、そのロードマップは本当に示さなけれ ばいけないと思います。  あと、今回の記載の中で気になっているのは、最後のところで、「当事者・家族」というふうに 並列で書かれたり、もちろん違うことを前提で書かれているのは重々承知の上なんです。「当事 者・家族」と書かれているのですけれども、私たちが現場で支援をしているときに、当事者とい う言葉かどうかわかりませんが、御本人の希望と御家族に必要な支援とは相対することがほとん どではないかと思います。御本人に対する支援を私たちは中心でやるべきだと思うのですけれど も、そのときに御家族への支援がおざなりになっているという今の日本の現状もあるので、御本 人への支援と御家族への支援は全く分けて施策化したりとか、全く分けて考えないと御本人の不 利益になってしまう。ここは本当に大事なところなので、御本人の支援を中心にやりながら、御 家族への支援もしっかりやるという完全に分けた考え方が前提にあった記載だということは確認 をしておけたらなと思います。  アウトリーチなのですけれども、さっきの早期支援と少しあるんですが、私たちもアウトリー チをずっとやらせていただきました。地域に出させていただくというか、私たちのテリトリーの ところから御家庭に行かせていただくというプロセスというのは本当に大変で、行かせていただ く。御本人が「入っていいよ」と言うまでは玄関も絶対足を踏み入れません。まず御家族から相 談があったら、御本人にまず私たち行くよということを伝えていただいて、御本人が「来ていい よ」と言ってくれるまで5年も10年もかかる場合ももちろんあります。  私も、昨日ちょうど行っていたんですけど、10年前から相談に乗っていた方、なかなか御本人 「うん」と言ってくれなくて、私は人格障害だと思っていたら、訪問してやっと会えたら発達障 害の方だったりとか、やっと会えるという感覚なんですね。どんどん、ずけずけ踏み込んで行く ようなアウトリーチはやっぱり慎まなければいけない。私もちょっとメタボでかなり危ないです けど、保健師さんがいきなり、「あんた、太っていたから指導に来た」と言われると、余計なお世 話だと拒否をします。何とかして言い負かします。そういうことがアウトリーチの中で起きない ようにしながらも、けど、やらなければいけないので、そういう節度というか、そこはなかなか センスというか、ないとできないだろうと思います。  ちょっと時間いただくと、先日、ある看護師さんが、よそからアウトリーチ始めたいというこ とでうちに来ていただいたときに、訪問先のところにお通夜のちょうちんが立っていたんですね。 うちのスタッフはすぐそこに踏み込まずに、すぐ引き返して、どうなんだろう、地域で情報をと ってそっと見守るということをするんですけど、来ていた方は、何で行かないんですか。何か困 っていたら困るんじゃないですか、という話なんですね。けど、その地域で暮らす方の生活の場 を医療が荒らさないという視点というのはすごく大切なので、それは医療だけではないです、も ちろん福祉も保健も全く同じなのですけれども、そういう慎重さも必要だという中で政策をちゃ んとやっていかなければいけない。  早期支援は、特にお話聞いていると、早期支援をどうやるか、どういう早期支援が必要かとい う具体的なエビデンスがほとんどないというのが実際、薬物療法に頼りたくなります。私もスク ールカウンセラーから10年つき合っている方とかいっぱいいらっしゃるんですけど、中には統合 失調症かなと思っていた方が全然違っていて、結婚して元気に暮らされている方もいらっしゃる し、そうかな、違うかなと思っていて、そっと見守っていた方が、発症された方ももちろんいら っしゃるし、たくさん経験する中で早期支援の若年のときの予想というのは意外と当たらなかっ たりもするので、早くに薬物療法、薬物療法となってしまったりとか、支援のエビデンスがない 中で早期支援がスタートする場合にかなり慎重にやらなければいけないということももちろんち ゃんとしておかなければいけない。 ただ、早期支援は必ず必要になってくるので、そこも踏み込んでいかなければいけないし、非常 に行動とバランスが、今とても問われるというか、100か0かじゃなくて、バランスとりながら、 ちょっと進んでみて、反省して下がってみて、進んでみて下がってみてという施策が時間をかけ て、けど確実に前に進む施策が要るというのが今の現場の現状だろうと思うので、そういうこと をいっぱい感じていることはたくさんあるので、またどこかで具体的にあらわせていけるといい かなと思ったりしながら、ただ、このままでは、とにかくいけないので、今日最後だと思うので、 何とかもっと自分が病気になったときに、どこの地域に行っても安心して面倒見てもらえるよう な、そんなところに本当になればいいなと思っています。  以上でございます。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。堀江構成員、お願いします。 ○堀江構成員 野村さんと私は親友なのですが、今日聞いていると、微妙に違うところがあると いうのがよくわかります。それでこれからもいろいろな検討会では当事者も家族も複数いないと、 無理があるということを考慮してください。  まず、精神疾患特性について思うところを申し上げます。世田谷で見ていますと、デイケアと か地域生活支援センターとか、他の自治体に比べれば数にしても水準にしても高いのだと思うの ですが、にも関わらず、数回利用すると使い勝手が悪くなってくる。うまくつき合いきれない。 サービス機関を転々と回っていって、最後は家に引きこもってしまう。私たちのグループの方た ちでもほとんどの方が家に引きこもっていらっしゃる。  それは何なのかという話なのです(専門家の育成と評価システムの話です)。精神疾患特性を持 っている人たちはとても感受性が豊かで感覚が過敏といってもいいくらいの人たちが多い。何と か社会の中で役に立ちたいと思って生きてきた。しかし幼いころから、どうも頭の中にちょっと 故障箇所があり、皆と一緒に付き合うのがつらい、つらいと思いながら発症までいく。そしてそ の後、病院に入って、過鎮性になるほどに薬を飲まされて、何とか退院できるようになって、よ し、これから一生懸命やって社会参加しよう、そういうつもりになられる。  そこで会われる人たち、精神科や福祉の専門家なんですけれども、この人たち何とかならない かと私は思う。おせっかいなまでに社会適応の価値観を押しつける。社会はこうなっているのだ から、こうなりなさいよ。だんだんにこうなっていくのですよという押しつけ方をする。(親もや って来ましたから、)それは実感としてわかるのですが、でも、それでは良くならないということ について、若いスタッフの方たちはほとんど知らない。そのために平気で学歴の話をしたりする。 ちょうど思春期になったころに罹患された方たちは、そのことで大変つらい思いをしているのに、 目の前でもって職員同士でその学歴の話なんかされたら、精神的虐待です。それだけで具合悪く なっちゃう。そういうような非常に無神経な職員たちが多いのです。  配布された資料に、当事者本人の自尊心を大切にというふうに書かれているし、私もそうだと 思うけれども、それはどういう「自尊心」でしょうか。自分たちが社会に参加して、今の社会に 適合できていくという意味での自尊心なのでしょうか。そうでない形で、しかし一人ひとりが持 つ自尊心というものを一番大事にしていく。当事者の気持ち、幸福になりたいという気持ちを一 番大事にして寄り添っていくという職員になってほしいと思うのですが、そのためには、私はこ ういうふうに自尊心を大切にという話ではなくて、もう少しはっきりと、福祉でも、医療でも、 保健でも、サービス機関は必ず当事者・家族たちによる評価のシステムを入れ込むことが必要だ と指摘すべきだと思います。当事者や家族たち、または地域の住民たちから見て、こんなに利用 者がしょっちゅう変わっていくなんておかしいじゃないか、従来の事業は供給側のニーズ主軸で はなかったのではないのかということがはっきり分かるぐらいの評価の仕組みを入れることが必 要です。あらゆる精神疾患に対するサービス事業には当事者・家族のニーズを主軸にする評価シ ステムを事業の設計段階から入れるべきというのが第一の主張です。  2つ目は家族のニーズについて申し上げますけれども、先月世田谷では、発達障害の講座をや ってみたのですが、同時期、区報に5つのセミナーや講座がみんな発達障害だった。これは大変 です。統合失調症と診療されて長期間経った。幻聴・幻覚・妄想があったら全部統合失調症です ね、という時代があったのだと思うのです。今はそうではなくて、発達障害とか、いろいろな診 断が出てきはじめている。  問題はその次でして、家族のほうから言いますと、「それは誤診・誤処方だったのね」という話 になるのです。誤診・誤処方に対して先生たちが、どういう治療方法をお持ちになっているのか が不明です。減薬をすれば増薬したのと同じように必ず副作用が出てきます。(しかも副作用は10 年、20年出てくることもあるのです。)それから、向精神病薬を一定限度超えて(最終的にはゼロ を目指して)減薬すると必ずすごいフラッシュバックが起きてきて、つい十数年前の思い出なん かがパッと今目の前で起こっているかのように起こるわけです。そうしますと、非常にテンショ ンが上がるというか、怒り・恐怖があふれかえっちゃう。そういうときにどういう対処の方法が あるのか。私のところは漢方薬だとかいろんなことをやりますし、もう一つ、そういうときは体 じゅう痛がっています。指先を少しもんでも飛び上がるほど痛がる。首も痛い。脇も痛い。私は だから足の指などをもんであげたりしながら、カッカカッカと怒っているのを、これ、つらいよ な、と言いながらこうやってやらざるを得ないのです。もちろんそれだけで解決はしません。そ ういう誤診誤処方の患者の減薬指導を日常から診ていける医師は、今ほとんどいません。  これから先、減薬や治療の仕方を変えていかなければならないということがどんどん起こるの ではないか。そのときにどうするかといいますと、まずガイドラインをちゃんとつくる。ガイド ラインをつくって、その責任を専門家は負ってください。これまでの明らかな間違いの場合責任 を問われるというような科学水準を持ってほしいということです。  さらに、最適臨床研究所のようなもの。結局家族や当事者たちが一生懸命になってやっている ことは、地域臨床が家の中で起こっているわけですから、そういうことについて最新の研究をし てほしい。それは国立の研究所の中にぽんとつくればいいのではなくて、まさに地域で当事者・ 家族のニーズを主軸に据えて、医療改革をされているような医療機関の中に、地域生活重視の国 立最適臨床研究所をつくって全国いくつかで研究・技術開発をやっていく。それを全国水準とし て引き上げるものにしていくということが必要だと思います。これが第二の主張です。  最後に、家族たち無償の介護者の問題です。私は先ほど長野さんから言われたように、当事者 と家族とは明らかに違うと思っています。私は6月7日に、家族など無償の介護者のためのケア ラー連盟を発足しまして、共同代表になっているのです。当事者は当事者としてのニーズがあり ますが、家族の側にもそれと異なるニーズがあって、そのニーズに対して社会がもっとサポート していくべきだと思っています。  今回の参考資料に認知症の問題がありましたので、認知症に触れてお話します。これもまたお 医者さんの悪口を言う気はないのですけれども、私の友人たちは年齢が年齢ですから、親御さん たちを送った経験のある方たちが多いのですが、病院に認知症の親を入れると、あっという間に ベッドにぐたっと寝ただけの、目が半分死んだような感じになってしまう。親はこんな顔じゃな かったのに、と驚くのです。同時に病院の職員が、まるで患者さんを自分たちの施設の付属物・ 材料のような言い方を平気でされた。それまで我慢に我慢を重ねていたけれども、あまりのこと に引き取ったという方が複数いらっしゃいます。その病院はかなり有名な精神病院ですけれども、 これから先、認知症の問題についてかなり重要な問題が含まれていると考えています。  併せて、6月7日のときに介護されていた若い方でしたが、これはお子さんが親御さんを見た のですけれども、その方がこういう経験をお話になっていました。介護のために、遅刻、早退を 繰り返す。そこで不況下のために解雇をされてパートになった。パートになったのだけれども、 電話がしょっちゅう入ってきて、それで職場に迷惑をかけるということで結局やめざるを得なく なって、その方は介護の申請から、通院の付添いから体調管理から、身体介護から、家事から、 昼夜逆転から不眠からというふうに、自分のことなんかもちろん何もできないという状態に追い 込まれて、当然ご自分の体も不調で、病院に行ったらば、すぐ入院しなさいと言われたけれども、 入院のしようがないというような事態になっちゃった。そういう事態であるけれども、認知症の 親のほうはトイレだ、御飯だ、ここが痛いという要望ばかりを言うと。介護保険があるから安心 だというふうにずっと思ってきたのだけれども、気がついてみたら実際には介護者になるとみん な経済的にも困窮せざるを得ないという状態になっていますという話でした。  介護は終われば終わったで、十何年の間のブランクから仕事につけないという問題が起こって しまいます。こういうことは、福田先生がおっしゃっていたように、今、日本人の5人に1人が 精神疾患を経験するということになると、ほとんど家族・介護者がいるわけで、5人に2人か、 3人はそういうことに巻き込まれているという状態であるわけですよね。それにも関わらず家族 については何にもサポートがされていないだけではなくて、実態調査さえされてない。実数が地 域の中でどのくらいいるかさえわかってない。わかっていなければ対策の打ちようもないという、 『無告の民』の状態にある。  そこから考えますと、家族など無償の介護者についてはまず実態調査をちゃんとすることにつ いて、厚労省のどこの部になるのかわかりませんが、早く実態調査をして、家族支援の施策にち ゃんと入れ込む、そのためのきっかけを新年度の予算にモデル的にでも入れてほしいと思います。  長くなりました。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。  河崎構成員、どうぞ。 ○河崎構成員 一番最初に、田尾さんのほうから御質問のような形だったと思うんですが、病床 削減について、特に病院関係者として同意するのということの問いかけだったと思っております。 確かに今日の田尾さんのお話の中にもございましたが、しっかりと診療報酬上の担保があり、そ して地域への移行の、今ここで話が出ていますアウトリーチ等に関しても、その体制をしっかり 組んでやっていけば、多分必ず病床削減という方向に進んでいくのは間違いないのだろうと思っ ております。ですので、病床削減まず反対、病床維持というような姿勢では全くないということ だけは御理解をしておいていただきたいと思います。  それともう一点は、その際に、民間の精神科病院だけではなくて、公的な病院も含めてですが、 やはり精神科の入院医療というような形で関わっている医療施設全般にこれは関係してくること だと思います。そうしますと全国の中で、1,600程度の入院の医療機関があるのだと。そういう医 療機関そのものがそれぞれの地域の特性、あるいは病院の特性、これは様々だろうと思います。 そういう様々な病院がどういう形で病床を削減し、地域で当事者の方たちを支えていくという体 制をつくっていくのかということには、早急にアウトリーチということに関してはモデル事業を しっかりとやっていっていただくということが大事なことだろうと思って今聞いておりました。 特に前回に4つのパターンが提出されていましたですよね。あれはそれぞれメリットがある、デ メリットがあるというような形にはなっていましたが、現状の中では4つのパターンのどれか1 つに統一するという考え方を私はする必要はないと思っています。ですから、それぞれどういう 特性のパターンが有効なのかというのは、これも地域によっても違うでしょうし、地域の社会資 源のあり方によって随分変わってくるのは間違いございません。ですので、来年度の予算要求の 中で、このモデル事業を実現をしていくということを是非推進していただきたいし、その際には いろんな選択肢ができるような、そういうモデル事業であってほしいと思っております。  それともう一点ですけれども、敷地内の施設に関して田尾さんのほうからもお話がございまし た。これに関しましても過渡的にもそういうようなものがあれば、より地域移行が推進しやすい、 そういうようなツールとして考えていくことはあるのではないかと思っております。ですから、 このあたりも全般的な障害福祉サービスのあり方と関係してくるかもわかりませんが、医療で行 うのか、福祉で行うのかというようなことのより詰めた話の場合に、そういう施設をどう考えて いくのかということと関係しながら、より詳細な検討が必要なのかなというふうには思っており ます。  以上です。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございました。もし差し支えなければ、もう一点、これ はあり方検討会でもずっと議論になっているのですけど、精神科特例について、もし現時点で。 ○河崎構成員 これも現時点で精神科特例と呼ばれている医師数の48対1の問題が多分一番大 きいのだろうと思いますが、現状の精神科医師の状況等から見て、これをすぐに一般並みの16対 1へ持っていくということは現状では多分不可能な話だろうと思っています。ですからこの問題 も病床削減をどのように実現していくのかということと連動して特例の問題を解決の糸口を具体 化していくということになるのではないか思います。  例えば、構想会議でしたですか、その中にもございましたけれども、あの中にも一気に特例の 廃止というような記載ではなかったと私は理解しております。現状を踏まえながら、その方向に もちろん進んでいくということに関しては全く異論はございません。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。中島構成員。 ○中島構成員 何か眠くなってきたというか、皆さん非常に長く話されるものですから、しかも まとまったお話をされて、これは何か検討チームというより、何か演説会みたいになっておるな という印象を持っております。  それで、堀江さんの発言を聞きながら、若干医者を刺激しようと思って言われたのだと思うん で、少しだけ申し上げておきますけど、このアウトリーチということについても、岡山県ではも う既に35年前からこれをモデル的に徹底してやったことがあるんです。県立中央センターという ところでやりました。ただ、これ10年か15年くらい非常に光り輝いていて、みんなそこから大 きな影響を受けたんですね。だけど、なぜ失敗したか、今、数年前になくなったのですけど、こ れはアンチ入院ということを徹底して掲げて、精神病院と対立構造の中で頑張ったんですね。そ のことは当初は正しかったんですけど、長くは続かなかったということなんです。  もう一つ、広汎性発達障害について、東京ではこのごろ、そんなことを言っておるのか、東京 は遅れておる、田舎やなと思ったのですけど、岡山ではもう十数年前からこういうことは常識で す。こんなことを今さら言っておるようではいけません。話にならん。これは徹底して早くやっ ていただきたいというふうに思いますね。それが第1です。  私も演説しますよ、もうこうなったら。  2つ目は、アウトリーチというのは地域精神保健医療福祉の1つの代表、サンプルとして言っ ているわけですよね。だから地域での生活をもっと大切にした医療・保健・福祉というものをこ こでどんと行きましょうということなんです。だから地域精神保健医療福祉ビッグバンと言った のでは格好がつかないから、アウトリーチ・ビッグバン・プロジェクトをついにこの検討チーム は立ち上げることになりました、こういうふうに国民に対してメッセージを出してほしいんです。 このメッセージ性というものは非常に大切なのではないかということであります。  4つ目、あまり言うとわからないようになりますから、最後に、これは後から反論されそうな んですけど、アウトリーチというものはここでビッグバンさせよう、地域医療をビッグバンさせ ようとしている以上は、病床削減目標というものを設定せずにやるのはかなり弱々しいんですね。 これ以上申しません。今回はそのことは検討課題に入ってないということですので結構でござい ます。だけど、ただ、アウトリーチということが病床削減のインセンティブになると。 ○広田構成員 日本語でお願いします。 ○中島構成員 すみません、それは書いておる、ここへ、インセンティブと。 ○広田構成員 日本語で、わかりません。 ○中島構成員 何というか、刺激剤みたいなものになる。こういうふうに言われているわけです けど、そのためには、それを地域資源である精神科の病院が行う場合には、その精神科の病院の 内容についての機能についての徹底した仕分けを行ってください。これがポイントです。いいで すか、病床数について、私は一言も触れておりません。アウトリーチをモデル事業としてやる病 院については徹底した内容の仕分けをやってほしい。現実に精神科の病院の中にはなくなったほ うがいい病院もあるんですよ。これは事実です。これは民間だけではありません。公立にもあり ます。私はそういうことで差別するつもりは全くありません。  そういうことですので、入院促進になりかねないような、長野先生がおっしゃっていましたね。 入院を促進することになりかねないようなアウトリーチではいけませんということですから、そ の点を是非よろしく、病院の仕分けとそしてアウトリーチの促進というものを同時にやるという ことで、これが正しいビッグバンのあり方であります。  以上。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。では福田構成員、お願いします。 ○福田構成員 もう最後ということですので、基本的というか、基礎的というか、そういうこと を3点申し上げたいと思います。  第1点目は、こういうことを考える場合に中期的、あるいは長期的なプランをきちんとつくっ て、それを明示する必要があるということです。このアウトリーチの問題につきましても、中期 的・長期的なプランの中に位置づければ非常にすばらしいことになると思いますし、逆にここで 取り上げたけれども、その先、どうなるかわからないということであれば、その意義は大きく減 ってしまうと思うんですね。実際に進める場合にでも、アウトリーチを行おうと思えば人材を異 動したりとか、場合によっては建物を変えたりということが必要でしょうから、そういった意味 でも中期的・長期的なプランをきちんとつくる。それを明示するということは絶対必要であると いうことを強調したいと思います。  そうした場合に、ロードマップということがいつも問題になりますけれども、ロードマップで 一番大事なことは、目的地をはっきりさせておくということだと思います。目的地がはっきりし てないようなロードマップはあり得ないですね。ですからどういった着地点、到着地があるのか ということをはっきりさせた上で、その上で中期的・長期的なプランをつくって、それを全国民 にわかるように明示するということを是非実現すべきだと思います。  そうした例の1つとして、私は第2回目に「こころの健康政策構想会議」の提案ということを 御説明させていただきましたけれども、あれは単に我々が考えたというだけではありませんで、 大臣からの求めがあってつくりまして、それを提出したものですので、これが今後どういう取扱 いになるのか、私は事務的なことはよくわかりません。後で教えていただければと思いますけれ ども、是非そういった形で中期的・長期的なプランをつくるということを是非実現すべき、それ が第1点であります。  第2点目としては、それと関連して、そういったことを行うため、政策決断というか、それも 国民にわかりやすい形で明示していただきたいと思うわけであります。こういった例えばアウト リーチを今後も推進していくといった方針を厚生労働省、国、精神・障害保健課としてとってい くのであれば、それを国民がはっきりわかるという形にしていただかないといけない。我々現場 の人間にとっては、ここに予算がついたからこういう方針なのかと、あるいは診療報酬がこうい うふうに改定になったからこういう方針なのかというふうに推測といいますか、場合によっては 妄想かもしれませんけれども、そういうことをせざるを得ない形になっています。ですからそう ではありませんで、その中期的・長期的なプランに基づいて、具体的にこういった政策をとるの だということが国民にも当事者にも家族にもはっきりわかるという形に是非すべきだろうと思っ ております。  第3点目は、当事者・家族の意見を十分に酌み取るということが前回から出ていますけれども、 これを是非実現できるようなシステムをつくっていただきたい、つくるべきだと思います。今、 このチームが16名ですけれども、その中で当事者、あるいは元当事者といったほうがいいかもし れませんけれども、お一人ですね。 ○広田構成員 元じゃない、今も患者だから、簡単に決めないでよ。 ○福田構成員 そうですか、はい。それから御家族が2人です。ですけれども、例えば当事者の 方にお一人の方だけに頼るということは申し訳ない。当事者でも男性もいれば、女性もいる。若 い方もいれば、お年の方もいる。病気についても統合失調症の方もいればうつ病の方もいる。多 彩です。御家族でも同じでして、子どもさんが病気という方もいらっしゃるでしょうし、兄弟の 方が病気という方もいらっしゃる。あるいは親御さんが病気という方もいらっしゃる。ですから、 そういう方の意見をお一人の方、お二人の方だけに代表してくれというのは無理な話であると思 います。  具体的には、例えばこのチームに当事者の方に更に2人入っていただく。 ○広田構成員 2人以上。 ○福田構成員 今のにプラス、広田さんにプラスして2人入っていただく。更に御家族の方にお 一人入っていただいて、全部で6人、3人ずつ6人入っていただければ、19分の6で30%超えま す。例えばそんな形にすれば、いろんな形で当事者・家族の意見を酌み取れる。当事者の方には、 疲労しやすくて、例えば毎週、毎週の会議に出席することは難しいという方もいらっしゃるかも しれません。そういう方の場合には、例えばお二人を組みにして、どちらかの方に出ていただく、 そんなことは恐らく国の委員会では前例はないかもしれませんけれども、精神障害者の特性を考 慮したという点ではそういった配慮も必要かと。そんな形にして具体的な形で、当事者・家族の 声をきちんと酌み上げられるような、そういったシステムをつくるべきだと、是非次の委員会な り、チームからはそんなふうにやっていただきたいと思っています。  以上のように、中期的・長期的なプランをつくって、それをきちんと明示する。2番目は、政 策を決断したら、それを国民、当事者・家族、医療関係者、そういったものがはっきりわかるよ うに明示していただくと。3番目は、当事者・家族、その方たちの意見を酌み取ることができる ように、きちんとシステムとしていいますか、委員会なりチームの持ち方として工夫するという ようなことが必要だと思っております。  以上です。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。その他、岡崎構成員。 ○岡崎構成員 今、福田先生が、基本的なことをおっしゃったので、あまりつけ加えることはな いんですが、2番目の政策決断というところについて、これが非常に重要だということをお話し したいと思います。  前にも発言で触れたことがあるのですが、いろんなことが精神保健、精神医療の改革を進めて いく上で、決定的に不足しているのはこの政策決断と思うんですね。その前提としては、当然精 神保健、精神科医療の問題がどれぐらい政策的に重要なのかということをしっかり前提とすべき だろうというふうに思うんですが、その点については、幾人かの方も触れられたかもしれません けれども、病気による国民への負担、最近は「DALY(ダリー)」という指標でよく表されてい ますけれども、それによると、全ての疾病が国民に与える負担の約4分の1がヨーロッパ諸国、 日本においても精神疾患によるものだということが明らかになっていますね。このことはなかな かあまり触れられないんですけれども、行政の中でも、是非これをはっきりさせていただいて、 したがって、精神疾患というのは、政策的に優先すべき病気なのだということをはっきりしてい ただきたいと思っているんですね。これがないと、なぜそんなに力を入れるのだということがは っきりしませんから、そこをまず押さえないといけないと思います。  そういったことが、今日まとめていただいたアウトリーチ1つやるにしても、なぜそこに力点 を置いてそういうことにお金をかけるのだということもはっきりしないからであります。そこの ところを是非はっきりさせていただきたい。先ほど高木先生、中島先生が触れられたように、病 院・医療機関がなぜ必要か、何をやっているのかということの仕分けといいますか、流行語でい えば、そういうことはしっかりやる必要がありますけれども、更にそれをやって、なおかつお金 をかけて精神保健医療をしっかりやっていかなくちゃいけない理由はそういう重みがある課題だ からというふうに思うんですね。  これは私の解釈で、まだ議事録等できていないので正式なあれではないと思いますが、七者懇 という精神科医療の関係の7団体の会議がございました。そこで私どもの「こころの健康政策構 想会議」の提言についても議論いただいて、確かに全部意見が一致しているわけではありません けれども、その政策決断というのを求めていくという点で一緒にやっていこうということが話し 合われたわけですが、そういったことからもわかるように、医療関係者は大きな方向として、そ ういったことがちゃんとやられるならば改革していけるという可能性について一致してやってい るわけでございます。したがって、是非この点をここにおられる、残念ながら政務官はおられま せんけれども、障害保健福祉部、あるいは精神・障害保健課の皆様がしっかり取り組んでいただ けることを願いたいと思います。  私どもは先ほど申したDALYのような指標で見ると、精神障害のことを扱う部局が課にとど まっているというのは非常におかしいと思うんですね。部ないしは局に上げるべきだと思ってい ます。おべっかじゃなくて、本当にそうです、実現していくには。使う予算の額も違うでしょう し、そういったことも含めて、これを大きく考えて実現していかないとなかなかここに挙げられ ているアウトリーチ1つにしても、内容をしっかり持って実現するにはなかなか難しい課題だと 思いますので、是非そういったことも含めて、私どもも努力しますし、当該課の政府の方々も是 非努力いただければというふうに思っています。  以上です。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。広田構成員、残り15分なので。 ○広田構成員 前回も3分と言われました。皆さん盛んに当事者が少ないと言う割には長くお話 になって、私は精神障害者になる前に民間企業の営業をやっていましたし、精神医療の被害者に なってからも民間企業の営業をやっていますが、この会議は民間企業ではつぶれるということで、 国民、国民と出ますけど、国民は理解できない業界の話に終始していると思います。  私の2ページの発言で「ソフト救急の機能があれば、通報につながらなくてもよいケースが多 くある」と書いてあるんですけど、この前も私自分の資料をここに早く来て刷って出しているん ですけど、全く皆さんお読みいただいてないということが今日の発言でよくわかったということ も含めて、民間企業で勤まらない人が医療や福祉に集まっちゃうのだというのを日ごろから感じ ていますから、今日もそう感じざるを得なかったということで。この前に、住宅施策、ショート ステイ、レスパイトケア、本人・家族のピアサポート。それから、警察の現場、昨日も夜中の12 時40分に行きましたら、こういう方もおられました。  80歳の方で、「家の中に知らない人が3人いる。犬が2匹いるから、おまわりさん何とかして ください」ということで、おまわりさんは何もできなかったということで、私は「どうしたの」 ということで、「携帯電話持って110番するから、一緒に行きましょう」と警察から歩いて3分の 家に行ったら、がちゃがちゃ鍵がたくさんあって、自分で外せないので、私が鍵をあけて中に入 って、「どこに他人がいるんですか」と言ったら、「あそこ」と言うから、入って行って、「誰もい ないわよ」と確認をして、「犬はどこですか」と言ったら、「この机の下」と言うから、そこのふ たをあけてみたら、毛皮が敷いてあったということで、本当にこれから、この間も警察で講演し ましたけど、「孤独」という名の認知症が増え、「孤独」という名のうつが増え、社会現象化し、 社会不安化し、社会病理化し、それを田尾さんがおっしゃるように、全てこの精神保健医療福祉 の業界がサポートするとなれば、日本の国は全部その職種にならなければいけないぐらい不安を あおっているのが、今日は少ないマスコミですけど、そういうふうな中にいて、本当に戦後育ち の私から見れば、今、幸せなうちに住んで、毎日、毎日、寝るとき、朝起きて幸せだなと思って いますが、住宅政策とかそういうものは外して、アウトリーチもいいですけど、さっき高木先生 がデフレの話をされていたけど、もともと精神医療が、お金が安いというところからスタートし て、それで他も上がってなくて、追いついたデフレならいいけれど、他との格差はやっぱり依然 としてあるという中で、同じ業界の医者としては、勇気があるという見方もあるのかもしれませ んけど、家族によって精神医療の被害者になり、精神医療の遅れによって精神医療の被害者にな った者として、きちんとこの国に住む全ての人々が医療に行ったら安心して、よかったと。おな かが痛くなって、家族が救急車を呼んで、盲腸を手術したら治ってよかったと思えるように、精 神医療に行ってよかったなと思えるような医療を保障するためにもきちんとしたペイは支払うべ きだと。きちんとした医療が前提ですけど。  そうすると、病床削減とか特例とか、社会的入院の問題ですよ。国民に訴えるアウトリーチな んかしても、おかしいと思います。そんなこと国民に言ったってわかりませんよ。国民にはもっ とわかりやすく、この国には北朝鮮よりも多い、国内の拉致被害者が20万人もいる。その人たち を救出するためには、小川忍さんの意見ではないけれど、隔離収容施策を決済して、国が謝罪す るぐらいの意気込みで、日精協も全自病協も全ての1,600の病院関係者が、それこそ私たちも加 担しましたぐらいの、そういうものを国民に示さなければ、国民、国民と言ったって、やっぱり 業界の話だというふうに思います。  そういうふうな流れの中のアウトリーチであるべきで、ただ単にアウトリーチ、予算来年とり ますからお願いしますという話ではないのではないかと思いますし、また、ここのところが、私 とっても気になったんですね。「アウトリーチ支援実現に向けた考え方」というところで、一番最 後、6ページ目です。具体的な方向性ということです。具体的な方向性で1番目、「当事者の状態 に応じた医療面の支援に加え、早期支援や家族全体の支援などの生活面の支援が可能となる多職 種チームであることが必要」(→医師、看護師に加え、生活面の支援を行うスタッフを含めた体制 作り)というんですけど、私、何本もさっきから電話かかってきていますが、全部社会資源の紹 介でかけてくる電話です。社会資源が増えれば増えるほど、危機介入相談員でボランティアの広 田和子は忙しくなるというぐらい、自分のところでみんな困難事例を解決できない。それをもっ ともっと増やしてどうするのと。それを国民にどう訴えるのということで、人間が地域の中で暮 らすときに、私、商店街から30秒ぐらいのところに住んでいますが、そんなものが来るよりも、 歩いて行って199円ののり巻き買ってきて食べるほうが大事だし、例えば風邪を引いて、お薬を とれなくなったときに持ってきてくれる人が大事ですということで、ここの多職種チームである ことがわからない。  私、この間、自分が引っ越して、前々回かいつか言いましたけど、「障害者の障害者による障害 者のための引っ越し」だったんです。それは本当に引っ越し屋さんも驚くぐらいきれにできたん です。ところが親しい人に頼んだら、その人が業界の人連れてきたら、いわゆる自己決定を無視 して、どんどん物は増えたけど、大きなゴミも残った。私の自己決定を無視して。まさに多人数 で来て、本人は不安になっちゃって、どうなっちゃうの、私のこの引っ越しはということですか ら、多職種でやる場合には本人が一番信頼できる人が来てくれれば十分です。複数で来てもらっ ては困るということを、引越を通して学びました。でも、コンシューマーとしても危機介入相談 員としても、仲間が「専門家はわかっていない」とよく言います。その気持ちも理解できます。 往々にして専門家は自己満足になっている。  私の3DKのうちでも複数来られたら、私疲れちゃう。本人が一番信頼できる人が誰か一人来 てくれる。私自身も危機介入の相談を夜中までやって、警察や救急隊の現場やいろんなところへ 行きますが、私を支えてくれる人はプライベートでいるわけですよ。そういうことが大事で、本 当に本人不在にどんどこどんどこ行っちゃうことが多過ぎますから。  それから、家族の不安というのは、これは別に精神障害者の家族ではなくても、不安になった ら誰も不安なんですよ。私はこの厚労省の委員になってから、だんだん元気になってきたんです よ。それはなぜかというと、まず、委員になる前母が亡くなって、時間が経つほど元気になった。 去年は非常に不幸な亡くなり方ですが、問題を持った弟が亡くなったんです。すごく悲しみまし た。でも悲しみが癒えたら元気になったんですね。だから家族と距離をとっています、私、ふだ んから。家族の支援がなくて、私は家族と離れている。いわゆる世帯分離を早い段階ですること が、結果として警察絡みの強制入院も防げることもあります。  ここで聞いていると、本当に救急隊や警察の現場や、私、引きこもりの事例も出していますけ ど、とにかく親が騒ぎますから行きます。何々と呼び捨てにすると喜んで出てくるわけですよ。 お母さん御飯つくって、二人で食べるわけですよ。それであるとき、本人に電話して、「もし、あ なた田舎で急病人が出て、お父さんとお母さんが田舎に10日間ぐらい行っちゃって、冷蔵庫の中、 空っぽで、あなた5,000円とか1万円机の上に置いてあったら、餓死するの」と言ったら、「餓死 はしない。スーパーで買ってくる」こういうことですから、親は、獅子の親は子を谷に落とすじ ゃないけれど、子どもとの距離感を持てないと、日本の家族は。囲い込まなければならない保護 者制度とか、文化がいろいろありますから、大変なことはわかるけど、欧米のように、早い段階 から障害を持っても持たなくても自立するという考え方を持った住宅政策もやらないと、本当に いつまで経っても、私みたいに母が亡くなったときに御遺体を見ながら、「ああ、ほっとしたわ」 というようなことが多いんですね。  それと、さっき親が死んだ後、自殺という話出ましたけど、私が関わっている中では、親が亡 くなった後の自殺はあまり聞いたことありません。家族との関係の中で悩み、家族との関係の中 で暴れさせられ、家族との関係の中で死んでいった仲間がたくさんいるということですね。  アウトリーチをやるのもいい、目的は国内の拉致被害者を救出し、病床を削減し、そして差別 的と言われる精神科特例を廃止し、それからデフレと言われようと何と言われようと、きちんと、 誰もが精神疾患になったときにかかれる、そういうふうな精神医療が必要だし、やたら何か今日 認知症がここへ出ていましたから、私はこれは前半のやりとりで、後半はこのチームで、認知症 をやるのかなということで、そのときには、さっき言っていただいているように、当事者をたく さん入れてほしいということで、是非是非国民の議論をするためには、もっとわかりやすく、国 民に向けて訴えるべきことを絞らないと、小さなこといくつ打ち上げ花火してもだめだし、もっ とみんなが前向きにポジティブに生きていかなければ不安になっていたら何もならないし、この 国はいつも言っていますが、昨日も言っていましたよ、横浜市内のある親しい区長が。「国及び地 方自治体の借金が900兆にもなっている」と言っているんです。  保健所、保健所と出てきますけど、前にも言っていますが、統廃合した厚生労働省が、保健所 と容れるんですが、現状では自立支援法の事務の煩雑さで保健所の仕事はなってないという現状 なんですね。ですからやっぱり行政も、私たちも社会の中がどう起こっているか、どう起ころう と精神保健医療福祉へ持ってきて、相手の人生を不幸にするような人は持って来ないで、私のよ うに、かつての六本木ベルファインにディスコに踊りに連れていくとか。 ○中島構成員 広田さん、まとめよう、ぼちぼち。 ○広田構成員 まとまっていますよ。 ○中島構成員 まとまった、終わり。 ○広田構成員 終わりじゃないの。そういうことで、もっとわかりやすい論議をしないといけな いということで、当事者、当事者と言いながら、当事者がないがしろにされていて、私はああい うふうな茶々入れるおじさんがいてもやり返せるけど、やり返せないで、そのまんま入院しちゃ う当事者もいるわけですよ。 ○中島構成員 私はやり返せない人には言わないの。 ○広田構成員 そういうことですから、全ての国民が当事者です、これから。木倉さんだってわ かんない、認知症になる。話し相手を持ったり、お風呂に行ったり、予防が私は大事だと。早期 発見、早期支援とか、早期治療という前に、さっき堀江さんが言ったように、私だって、2ミリ の薬を減らすのに1年かけているわけですよ。そういう現状だから、自分の子どもや自分がなっ たという視点でやらなければ、当事者・広田さんだけでなくて、全ての人がいろいろな精神疾患 になるだろうし、グローバルに、前向きに、それで少ない財源をどう使っていくかということで やってもらいたいということで、私はこれは前半戦の最後なのかなというふうに認識して出て来 ました。 ○高木構成員 ちょっと誤解があるんです。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございました。議事の進行もありますので、一応8時15 分くらいを目途にしたいと思っています。その前に認知症の話を少しあれするのと、今後の進め 方のことについても御説明させていただきたいと思っていますので、今までおっしゃってないこ とで要点を、あと御発言されてない方、何人かいらっしゃるので、そして最後に高木構成員とい う形にもっていきたいと思います。  小川構成員、西田構成員、そして高木構成員で、大体あの時計御覧になりながら、あと最後調 整していただければと思います。 ○小川構成員 せっかくモデル事業を進めていくということですので、是非都道府県に丸投げ、 あるいは都道府県は実施主体に丸投げというのではなくて、これまで各地で取り組まれている経 験をみんなで共有する。例えばワークショップのような形で、都道府県の担当者、実施主体にな るであろう関係者の皆さん方が集まって、経験を踏まえた交流や情報交換等の場を是非持ってい ただきたい。また、今年は無理だけれども、次の年だったら都道府県の中で手を挙げられる実施 主体が出てくる可能性もありますので、そういう方々の参加もできるように、是非予算の中でも 組んでいただけると、次年度に向けての広がりも生まれてくるのではないかと思います。  そういう中で、また情報を公開していく。もちろん個人情報は開示できませんけれども、そう いう取り組みがいかにされているかといったことも是非情報を共有できるように、進めていただ きたいというのが1つです。  2つ目、最後ですけれども、各論はいろいろ意見はあると思うんですけれども、「こころの健康 政策構想会議」の提言、私は大筋あの方向できちんと進めていくべきではないかと思います。法 律の名称はともかくもロードマップをつくっていく、そういう取り組みは是非やっていただきた いと思っています。これは皆様方が差し支えなければですけれども、この検討チームの総意、あ るいは大方の意見として、大きな方向性について賛成が得られるのであれば、この検討チームの 思いを長妻厚生労働大臣を始めとする政務三役の皆様方に是非伝えていただけないかと私は思う んですけれども、この辺は皆様方の思いがありますでしょうから、その辺は福田課長のほうで是 非聞いていただけないかと思います。  以上です。 ○福田精神・障害保健課長 西田構成員、お願いします。 ○西田構成員 今の小川先生のお話と続きますけれども、モデル事業ということが先ほどから出 てきておりますが、このモデル事業というものについても、単年度でつけて、次の年から方向性 が変わったということで終わってしまったり、モデル事業というものができて、それがおりてき たときに非常に現場では使いにくいモデル事業費だったりすると、名目としてついても、非常に 本質的に使いにくいという状況が発生すると、効果的なサービスの構築というのは非常に難しく なるということがあると思うんですけれども、せっかくこういう形で、もしモデル事業が仮に行 える場合には、そういった現場の実施にしやすい形で事業が展開されるようなモデル事業でなけ ればいけないと1つ思います。いつも人件費では非常勤しか使えないとか、いろんな縛りで、現 実的にはそれが使いにくいという状況がいろんなところから聞かれますので、そういう状況では 非常にもったいないことになってしまうということを懸念しています。  もう一つは、モデル事業を進めていくに当たっても、こういう方向で政策が動いていきますと いうような意思表示がはっきりしないと、誰もやはりそれに安心してチャレンジしようという人 も出てこないと思うんですね。そういう意味でアウトリーチだけ部分的に切り取って、これを政 策的にやりましょうということではなかなか難しいですから、先ほどから出てきているように、 中長期的な改革戦略というものをきちんと政治的な意思としても示していただいて、その中でこ のアウトリーチのモデル事業ないし、そういった取り組みが盛り上がって推進されていくことが すごく重要ではないかと思います。  それから、モデル事業も、先ほど小川先生の話にありましたけれども、やりっ放しではなくて、 きちんと効果が検証されるような仕組みでモデルがいろいろな形で展開されていくことが必要で、 イギリスの改革でもそうでしたけれども、最初はいろいろな形があっていいと思うんですね。そ れが経験を経て、こういうものが非常にいいらしいというものが収れんしていくような形の設計 をして展開していく必要があるだろうと思います。何でもかんでも「アウトリーチ」という名前 で乱発するのではなくて、ある程度最低限当事者・家族から見て、こういったコンポーネントは 落とせないというものをしっかりととらえた上で、そういったサービスのモデルが実施されてい く必要があるだろうと思います。  これで最後にしますけれども、いずれにしても、長妻大臣も繰り返しいろいろな場所でお話さ れておりますが、精神疾患というものの社会的な経済損失というものがどれぐらい大きいかとい うことを早急に出さないと、例えば財務省に対して、こういう問題があるから、ここは必要なん だという話になってくるわけですが、大臣も経済損失について、ある研究所に委託して、今、お 願いしているという話がありますが、それが例えば、そういった予算要求していくときの時期に 間に合う状況でその作業が進んでいるかどうかということを1つお伺いしたいのと、岡崎先生の ほうからもお話ありましたけれども、そういった社会的な大きな損失につながっている精神疾患 に対してきちんと優先的に投資をしなければいけないという根拠を同時につくっていかないとア ウトリーチ事業に関しても途中で途切れてしまうような、そういう状況になってはいけないと思 って、是非経済損失の計算についての状況について、事務局のほうから教えていただければと思 います。 ○福田精神・障害保健課長 そちらのほうは後でお答えします。高木構成員。 ○高木構成員 広田さんの誤解があるので解いておかんといかんのですが、私は精神医療の医療 費を少なくしていいとは言っていません。医療費が全然伸びていない中、精神病院だけは実はち ゃんと伸びている。 ○広田構成員 同じだったの。 ○高木構成員 同じかどうかわからないけど、そこだけ伸びていると。また、更にそこにお金が 行くようなことだけをするのは、これは泥棒に追い銭ということだと、そういうことです。  それと、今日の話の中で、まだ人材の問題が出てなかったので、一言申し上げたいのですけれ ども、今、人材を教育して地域で動ける人材をつくって、それから地域の支援を始めましょうと いうようなことをやっても、まずは地域でどう動けばいいかということを教えられる人は今の日 本の精神医療の状況の中でいません。例えば自尊心を大切にする関わり方というのは、私は生活 とかその人の人生を承認する関わり方だと思いますが、これまでの医療者は、医療につなげるこ とだけを考えた関わり方をしてきた。だからどういう関わり方が自尊心を大切にする関わり方な のか、これを教えられる人はいません。  こういうのは、実際に地域に出てみて、何もないところからでもいいから始めて、そこで覚え ていくしかないんですね。うちのスタッフたちもみんな地域に出てきて、やってみて、初めてわ かったと。そうすると、今まで10年間病院で疑問持たずに働いてきた人でも、徹夜で付き添うよ うになります。自分たちの仕事が新しいことをやっているということでおもしろくてたまらない と。自分たちが本当に人の支援を、本物の対人サービス支援をやれているという自信を持てるん ですね。ですから古い言葉ですが、見る前に飛べと。順番を待っていては仕方ないです。どんど ん地域に出られるチャンス・機会をつくってもらわないといけないですね。これを制度がやらな いといけない。  それとそういう制度を、更に人材も含めて、時間をかけてじっくりという意見が、先ほどから 出ていますけれども、もちろんじっくり考えるのは大事ですけど、物事というのは変わるときは どこかで大きく飛躍するんですね。これはイギリスでも、イタリアでも同じだと思います。とこ ろが日本ではイギリスやイタリアもできているその形だけ見て、こういう形になっています。こ れをじっくりつくりましょうとやっちゃうんですね。今、どうなっているかなんていうのは別に 学者じゃなくても見たらそんなものわかるんです。だけど、そこをどういう経過で、どこに力点 があって、大きな飛躍があって現実が変わったのかということこそ研究者の方は研究してほしい し、厚生労働省の方も見てきてほしい。  モデル事業に対しては、うちは包括型は既にモデルもくそもなくやっています。何度も言うよ うに、経営的にも成り立っていて、皆さん給与も病院時代より高いんですね。ですから包括型に ついてモデルつくるとか云々とかいう前に、1年間どなたでもいいです。一緒に働きに来てくだ さい。受け入れますので、よろしく。 ○福田精神・障害保健課長 ありがとうございます。  先ほどの西田構成員の質問については、自殺・うつのプロジェクトチームの中で現在研究調査 をしております。いわゆる研究者のほうに試算をお願いしている。時期については未定ですけど、 なるべく早く出していただくようにお願いをしているという形で、そちらのほうは自殺・うつの プロジェクトで、また追って報告をすると、そういうような見込みになっているということであ ります。  いろいろと、今、貴重な意見を伺いまして、論点の中で、今おっしゃられた点というものをま た引き続き追加をさせていただき、そういった留意点が多々あるということを前提といたしまし て、最後のページにありますが、「アウトリーチ支援の実現に向けた考え方」、こういったことを 踏まえて、これから予算折衝等々に頑張っていきたいというふうに思っておりますので、そこの ところは御了解いただければと。  あと、ちょっと次、今後の進め方との関連で、参考資料をまず御説明させていただきたいと思 いますので、既に冷房が切れていますけれども、もうしばらく御辛抱いただければと。 ○林課長補佐 では手短に、参考資料を御説明させていただきます。1枚おめくりいただきます と、「認知症患者の医療・介護の連携とその課題」ということで、特に入院医療と関わる課題につ いて記載をしております。  【必要な機能】として〈診断〉、そして医療・介護にまたがる〈ケア〉、〈入院医療〉という部分 がございます。  【主な対応】として様々なことが行われております。  そして大事なのはその下の【課題】のところでございます。入院医療のほうを右から見ていく と、専門医療の提供、身体合併症への対応、精神科病院への「社会的入院」を再度発生させない。 こういった課題、他にも多々あると思いますけれども、一番大きなところはこういったところだ と思います。  この課題に取り組むためには、入院医療以外の場でも医療、介護、真ん中のところに書いてあ りますけれども、「介護保険施設等の生活の場の確保と適切な医療の提供」、「認知症に対応した外 来医療・介護保険サービスの機能の充実」、これらの充実は、入院医療を要さない者が入院を継続 しないためにも重要であると。ここの部分については、前のあり方検討会の報告にこのような課 題があるということを御指摘いただいております。  また、あり方検討会の中でも、認知症の将来の入院患者数について空欄のままになっていると いうことでありまして、ここの部分が残された大きな課題の1つであると認識をしております。  また、皆様から御指摘のある精神病床のあり方を考える上でもここの部分は避けて通れないと いうことであります。  スケジュールとしては、精神・障害保健課ないしはこの部だけで取り組める問題ではございま せんで、この真ん中のところ、介護保険施設、介護保険サービスということに関して申し上げま すと、24年度からの第5期介護保険事業計画、そしてまた24年4月の診療報酬、介護報酬の同時 改定、こういったスケジュールを見据えながら、非常に急いで取り組んでいくべきであると考え ております。  したがって、こういった課題を優先的な課題ということで、今後やっていく必要があるという ことで、また、どういう場でどういう持ち方をするかということに関しては、皆様からも今日い ろいろ御意見ありましたし、今いらっしゃる方々多くに御協力いただくとともに、また認知症に 関連する方々、当事者・家族の方も含めて検討していただく必要があると思いますけれども、そ ういったことが重要な優先的な課題であるという認識をまずお伝えをさせていただきたいと思い ます。  以上です。 ○福田精神・障害保健課長 皆様方からまず1つ大きなロードマップというか、目標を定めたロ ードマップが必要と。それはみんなそう思っているんですね。ただ、それには議論のタイミング と、それからあくまでも政策判断ですので、政策が判断していただかなければいけないという部 分があります。  そういった中で、私どもが今何をできるかというふうになってまいりますと、まず1つは、サ ービスがどこに届いていないのかというところでアウトリーチの議論をさせていただいたわけで すが、第1回の検討チームのときにもお話申し上げましたとおり、我々の事務方の課題認識とし ては、今、申し上げましたように認知症でございますとか、それから、病床のあり方、これは次 の検討課題であるというふうに認識をしているわけです。  一方で、今、御説明申し上げましたように、今後の介護関係の様々な事業、法制整備、いろい ろなものが今議論の準備が進んでいるわけでありまして、そういったところに対して、精神科病 床とかも含めて、精神科医療でどう関わっていくのかというところの議論は、事務方としては早 急に始めなくてはいけないと今認識をしております。  そういった中で、検討の場としてどういう場があるかといえば、一番可能性としてあるのは、 この場を活用しながら議論を進めていくということになるのだと思っておりますけれども、この ところ、皆様方からいただいた御意見というものをまた政務のほうにもお伝えをいたしまして、 政務と相談をした上で、また次の機会をなるべく早く持っていきたいと。そういった意味では、 まず優先順位として、まず認知症の議論を十分に、認知症と精神科医療の関わり方、この部分を 次に議論としてさせていただけたらいいなということを事務方としては考えているという状況に ございます。  ということで、この部分について、何か御意見、御質問もしございましたら、お受けしたいと 思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。 ○広田構成員 最初にこの話を受けたときとだんだん話がずれていくので、私の頭の悪さかもし れないんですけれど、認知症というのは最初にスタートしたときから出てくる予定だったんです か。 ○福田精神・障害保健課長 認知症について、最初の1枚紙の中に、今後の課題として位置づけ はしております。ただ、どういう方向性、どのタイミングというところまでは、これは秋以降の 検討課題としてお示しをしているという形でございます。 ○広田構成員 何か日本医師会がすごく認知症に対して精神科病床を温存したいという考え方を ちょっと聞いたことがあるので、そういう政治的なものだったのかなと思ったけど、そこは言え ませんよね、事務局は。はい、結構です。 ○福田精神・障害保健課長 その他、御質問ございますでしょうか。 ○中島構成員 この会は、特にまとめはないと、そういうことなんですね。 ○福田精神・障害保健課長 まさに貴重な御意見と思いをいろいろいただいた。ただ、これは非 常に大事なことだと私ども思っていまして、これをきちんと整理をした上で、いろいろなところ にぶつけていくというところが大事だと。今回、人数少ないという形ではありましたけれども、 御家族の方2人入っていただき、当事者は当初もう一名の予定でしたが、いろんな事情で今1名 になっておりますけれども、少なくともそういうことで、当事者のお声をお聞きすると。更には その前段階として、例えば構想会議で大勢の御家族・当事者の方の意見を踏まえたもの、それを ベースにして議論が進んでいるという部分もございますので、そういったニーズ把握をきちんと しながら、それに対応するサービスをきちんと議論していこうという、そういう場として、先生 方にいろいろとお知恵をいただいたということでございます。  基本的な考え方は、今日の資料にありますけれども、論点とその御意見という中に集約をさせ ていただいて、その中でいろいろと留意点等を教えていただいたことについては、これを参考に しながら各方面と意見調整、意見交換には活用させていただくという形で整理をするという形で ございます。そういった意味では、報告書とかまとめという形ではありませんけれども、皆さん 方の御意見という形はちゃんと記録に残して、今日いただいた意見も含めて整理をしたものが最 終的な資料として、またホームページのほうには掲載されるという形で、それをベースにして、 我々のほうも関係部署との協議には使わせていただくと、そういう位置づけであるというふうに 御理解をいただければありがたい。 ○広田構成員 いつごろ校正が来るんですか、原稿が。 ○福田精神・障害保健課長 なるべく早くやりますので、そこのところは我々を信じていただい てというところかなということでございます。  では冷房も切れて暑くなってまいりましたので、以上をもちまして、大変遠方からの先生方も 含めまして熱心に4回にわたる御議論いただきました。「新たな地域精神保健医療体制の構築に向 けた検討チーム」を、これをもちまして終了させていただきたいと思います。大変御多忙の中、 どうもありがとうございました。 (了) 【照会先】 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課企画法令係 電話:03-5253-1111(内線3055)