10/6/14 第2回機械譲渡時における機械の危険情報提供のあり方等に関する検討会議事録 第2回機械譲渡時における機械の危険情報提供のあり方等に関する検討会                   日時 平成22年6月14日(月)                      14:00〜                   場所 経済産業省別館1020会議室(10階) (照会先)厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課      〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2      TEL 03-5253-1111(内線5486,5504)      FAX 03-3502-1598 ○安達副主任中央産業安全専門官 定刻になりましたので、第2回の検討会を始めたいと思 います。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。第2 回の検討会ですが、畑委員は所用でご欠席となっております。労働安全衛生総合研究所の梅 崎委員も欠席というご連絡をいただいておりますが、学識経験者として同研究所を代表して 参画していただいておりますので、本日は斎藤研究員が臨時委員として参加しております。 ○斎藤臨時委員 梅崎の代わりに出席させていただいております。あくまでもオブザーバー として出席している斎藤です。よろしくお願いします。 ○安達副主任中央産業安全専門官 では向殿先生、よろしくお願いします。 ○向殿座長 お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。まずは事 務局から、資料の説明をお願いいたします。 ○安達副主任中央産業安全専門官 それでは資料の確認をいたします。配付資料が5点、参 考資料が2点あります。1枚ものの議事次第の次に、少し分厚い「第1回検討会議事録」が あります。資料2として1枚紙で、「リスクアセスメントの普及状況」という資料がありま す。資料3として「残留リスク情報の提供事例」ということで、3-1、3-2の2点の事例を 添付しております。資料4として、「第1回検討会の議論を踏まえた論点整理」という資料 が出ております。資料5として、「検討会報告書骨子(案)」という1枚紙があります。あと は参考資料として2点あります。これは前回の資料と同様のものですが、「検討会開催要項」 が参考資料1です。「参集者名簿」として、参考資料2を添付しております。 ○向殿座長 今日は資料4がメインテーマですが、まずは資料1と2について、事務局から ご説明をお願いいたします。 ○安達副主任中央産業安全専門官 資料1は前回の議事録です。各委員におかれましては、 短時間のご確認をどうもありがとうございました。この資料は少し分厚いので、こちらでは 詳細にご説明しませんが、資料4の「論点整理」で、前回出た主な資料は反映させておりま すので、そちらでご確認いただきたいと思います。  続いて資料2をご覧ください。ポンチ絵が書いてある「リスクアセスメントの普及状況」 という資料です。こちらは現在のリスクアセスメントの普及状況についてご説明したもので す。上に大きく円が3つあります。これは厚生労働省が平成17年に調査をした、労働安全 衛生基本調査結果に基づくものです。この中で規模別のリスクアセスメントの普及状況が調 べてあります。調査年度は少し古いのですが、規模別の実施状況の傾向として見ていただけ れば結構かと思います。300人以上の事業場は、数としては非常に少ないのですが、この規 模でいきますと大体51%、50人以上300人未満の事業場規模においては25%です。あと、 事業場数として最も多い労働者数10人から50人未満の事業場においては、20%弱という 規模別の状況になっております。  左下にもう1点、直近の実施状況をもう少し詳しく調べたものがあります。こちらは全国 50人以上の事業場のうち、私どもの第一線機関の監督署において4,000数事業場に対し、 個別にリスクアセスメントの実施状況を調査したものです。調査結果を見ますと、「リスク アセスメントを実施している」と回答したのが38.1%、「実施を準備中」が14.2%、「実施 予定」が25.6%、「予定なし」が22.1%となっております。以上のことから、特に「実施準 備中」と「実施予定中」を合わせたものが、全体の大体4割を占めております。この層が今 後リスクアセスメントに取り組むことによって、一層の災害減少が見込めます。今回の制度 化に当たっては、こういった層へのアプローチをどうするかということも、念頭に置く必要 があると考えております。 ○向殿座長 資料1、資料2をご説明いただきましたが、よろしいですね。40%以上はこれ からやろうとしているところですので、非常に有効ないい時期だと思います。それでは資料 4の「論点整理」です。資料3にリスクアセスメントのいろいろな提供例があります。これ は資料4の中で説明するのですね。これは前回と同じで、第1と第2の2つのグループに分 かれています。第1の中に論点1から論点5まであります。まずは資料4について、また安 達さんからご説明をお願いいたします。 ○安達副主任中央産業安全専門官 前回、非常に活発なご意見をいただきましてありがとう ございました。また、前回の検討会終了後も、多くの委員からいろいろなご意見をいただき ました。時間の関係上、十分反映し切れていない部分もあるかもしれませんが、ご容赦いた だきたいと思います。  第1の論点としては、「機械の危険情報の提供のあり方」ということで、論点を細かく5 点に再整理しております。後段の論点の第2は、「機械の危険情報の提供制度の効果的な運 用について」として3点の論点があります。まずは「提供のあり方」の5つの論点について ご説明したいと思います。  1つ目の論点は、機械メーカーが機械ユーザーに機械の危険情報を提供することが、機械 ユーザーにとってどのように効果的又は有効なものであるかということです。ここで「検討 の方向性」と書いてあるのは、前回の議論でおおむねコンセンサスが得られたものや、さら なる議論が必要と思われた点を抽出しております。1つ目としては、機械ユーザーのリスク アセスメントに必要な情報である、機械の危険情報を適切にユーザーに提供した結果、ユー ザーにおいてリスクアセスメントが行われるならば、労働災害の減少効果が見込めることか ら、機械の危険情報の提供とユーザーからの新たなリスク情報などのフィードバック、この 相互のリスクコミュニケーションを進めることが効果的であることがまず確認されました。 この点については、コンセンサスが得られたと考えております。一方、施策として展開する には、この情報がユーザーにとって効果的なものであり、かつ実効性が確保されることが必 要とされました。情報として十分であるか、十分に使いこなせるものか、そういったご意見 があったかと思います。  「主な意見」ということで、議論のうち主な意見を抜粋しております。アとして、詳細な 情報を提供しても労働安全衛生法第28条の2を実施する上で有効に活用できるものか、ユ ーザーが十分に使いこなせるものであるかを見極める必要があるというご意見がありまし た。イとして、ユーザーの特性です。これは事業場の規模や実施能力を踏まえて、実効性の あるものとする必要があるとされました。資料2にあった規模別の実施状況も、少し念頭に 置く必要があるということだと思います。ウとして、提供された情報についてはユーザーで 活用されなければ意味がない、ユーザーの具体的なリスク低減に寄与できるものでなければ ならないという話もありました。エとして、国際比較についてご意見がありました。EUの ような機械の流通規制の観点からではなく、労働安全衛生法の枠組で考えることにも留意す る必要があり、単純に真似をすることはできないということであったと思います。  2頁です。論点の大きな2は、機械ユーザーがリスクアセスメントを実施する際に必要な 情報とは何かということでした。「検討の方向性」として、1番目では非常に多様な意見を いただきました。論点1で述べたとおり、有効に活用されるためには、まず情報を使用する ユーザーの特性にも配慮する必要があるというご意見でした。2番目として、リスクアセス メントにこれから取り組もうとするユーザーに対しては、このような情報の入手が取組の契 機となるだろうというご意見です。あと、総じてユーザーのリスクアセスメントに必須の情 報とは何か、つまり次の論点である残留リスクの範囲等を明らかにしておくことが必要であ ろうというご意見でした。3番目として、こういった必須の情報と、ユーザーの要求に応じ た必要な情報を区分し、使用目的に応じた提供が行われるようにすることも効果的ではない かというご意見がありました。4番目として、仮にメーカーの企業機密に係る情報がユーザ ーにとって必要となる場合には、当事者間の契約等に基づいて、提供する情報の範囲を決定 することが適当ではないかというご意見がありました。5番目として、こういった情報の程 度論と言いますか、範囲のお話があった中で、このような取組を展開する際に先進的な機械 メーカー等については、別途、「機械包括安全指針別表第5」に基づく全般的な取組の推進 を図っていくことも、当然言うまでもなく、段階的に全体の底上げを図っていく必要がある のではないかというご意見でした。  「主な意見」です。1つ目として、リスクアセスメントに必須の情報というのがありまし た。必須の情報としては、まず情報の内容を少し絞り込んだらどうかというご意見がありま した。一方で、「機械包括安全指針別表第5」の項目すべてを提供すべきではないかという ご意見もありました。この点については、指針では警告ラベル等の多様な提供を許容してい るもので、ここでは論点4にある提供の方法、情報の一覧性といったものを検討していると いう違いにも、留意する必要があるというご意見でした。必須以外の情報等は、要求された ら提出するという整理もあるのではないかというご意見もありました。メーカー・ユーザー 双方のニーズに応じ、2段階又は複数段階の提供もあるのではないかというご意見もありま した。  2として、本質的安全設計方策が講じられた危険源の情報の取扱いについても、多くのご 意見がありました。アでは、メーカー段階で本質的安全設計方策が施されたリスクについて は、許容できない残留リスクがないということであるならば、一義的に提供の必要はないと のご意見が多くありました。一方、そのリスクのハザードを提供すべきという意見もあり、 これについては無条件に提供するのではなく、ユーザーのリスクアセスメントに必要である との要求に応じ、開示していくのが適当ではないかというご意見がありました。  3頁です。2の本質的安全設計方策にかかわる部分で、企業機密にかかわる情報である場 合、当該情報が必要であるならば守秘義務を締結するなど、当事者間の契約の下で提供すべ きであるとのご意見がありました。なお、本質的安全設計に係る部分であっても、ユーザー に危険源の情報を伝える必要がある場合もあるものの、一律に提供することまでは要さない のではないかというご意見もありました。本質的安全設計方策が施された箇所の危険源情報 が必要になる場合は、機械の修理・保全をする場合が考えられるが、当該作業はメーカーが 担う場合とユーザーが担う場合があることにも、留意する必要があるというご意見がありま した。  大きな3番としては、用語の定義です。本検討会では「機械の危険情報」とか「残留リス ク」という用語が使われておりますが、この用語の適否やその意味する範囲について、いろ いろな意見がありました。適切にその趣旨が伝えられるものとすることが望ましいとのご意 見がありました。これらが論点の2つ目です。  4頁です。3つ目の論点としては、いまの論点2に関連するのですが、機械の危険情報の うち、残留リスク情報として必要な項目は何かということでした。「検討の方向性」です。 1つ目として、法第28条の2に基づくリスクアセスメント指針においては、機械ユーザー のリスクアセスメントの実施に当たり、機械メーカーから使用する機械設備に係る危険性又 は有害性に関する情報を入手するよう求めています。機械ユーザーのリスクアセスメントに 必要な情報である残留リスクについて議論をしたところ、さまざまなご意見が出されたとこ ろです。  2つ目として、残留リスク情報の作成プロセスは危険源に対し、メーカーが防護措置を講 じ、残ったリスクは何かというケガ・疾病に至るまでのストーリーを作成していくこととさ れたところです。ここでユーザーが必要とする情報というのは、JIS等に定義があるとおり、 危険源の危害のひどさと、その危害の発生確立を組み合わせた情報とされました。一方で、 この具体的な情報は何かということも、また議論を深めていく必要があるというご意見でし た。  3つ目として、残留リスクの必須の情報の範囲としては、現行のメーカーの取組事例から 見て、例えば対象とする作業を運転作業、点検・保全作業など、ユーザーにとって優先順位 の高いものを必ず含めるという整理ができないか、また残留リスクに基づき、ユーザーが行 うべき防護方策のうち、安全防護、付加的防護、個人用保護具の使用に係る情報も必ず含め るという整理ができないかといったご意見もありました。  4つ目として、ユーザーの実効性を確保するという視点に、引き続き配慮することが必要 であるというご意見でした。  途中ですが、ここで資料3をご説明したいと思います。前回、残留リスクの範囲について 議論をしたところ、具体的な提供方法のイメージが湧かないというお話がありました。資料 3-1と資料3-2は各種調査研究の取り上げられたリスクアセスメントの実施事例をピックア ップしたものです。ですから、この事例が良いとか悪いということではなくて、イメージを 持っていただければと考えております。  まず資料3-1です。これは鉄鋼業B社が情報提供を受けたリスクアセスメント事例です。 鉄鋼業のユーザーであるB社がメーカーからNC加工機を購入した際に、どのような情報 をもらったかというものです。具体的に2頁をご覧ください。「残留リスク情報の詳細」で す。これは実際にユーザーに提供した情報です。これが十分か不十分かということは別とし て、メーカーの方でどういった作業にはどういった危険があるか、どういった注意事項が必 要で、どのような回避方法が必要かという形で情報提供をしたという事例です。ユーザーに おいては作業手順などに反映して活用したというようになっております。  もう1点は資料3-2です。これは合板を切断する切断機へ材料を投入するロール機のよう な投入機の残留リスク情報です。いろいろな機械のリスクアセスメントのやり方を見ていま すと、このシートは割合よく使われているシートです。左から危険な動作あるいは危険状態、 危険事象、リスクを見積り、あるいは低減させたプロセスが書いてあります。そして右端に ありますように、残留リスクの回避の方法といった一連のものが、メーカー段階で実施され ています。  こういった取組で、実際の残留リスク情報にはどういうものがあるかというと、資料の3 枚目をご覧ください。この投入機の残留リスク情報を抜粋したものがこちらです。例えば上 から4つ目の運転中の作業においては、装置のフレームに身体がはさまれる恐れがある。回 避の方法としては、危険区域の安全柵の設置とか、別の項目では耳栓等保護具を付けて作業 を行うとか、ユーザーにおける作業管理に必要な情報が出ております。各種調査研究におけ る事例のシートの中では、1枚目、2枚目のようなメーカー段階でのシートを作るケースが、 かなり一般的に見られるところです。  こういった実際の取組事例なども見ながら、資料4に戻って、「主な意見」です。この辺 りは非常にたくさんのご意見をいただきました。1つ目として、リスクアセスメントの実施 に当たっての必須の残留リスク情報の項目です。アですが、ユーザーが必要とする情報とは JISの定義にもあるとおり、機械源の危害のひどさ、その発生確立を組み合わせた情報では ないかというご意見です。  2として、一方で危険源情報をどう考えるかということです。例えばパワーショベルは、 それ自体が重いとかパワーがあるという危険源があります。こういった危険源自体を提供す るかどうかということで、危険源とするかリスクとするかという話もありました。残留リス クについては、危険源に対しては危ないのである防護措置を講じたが、リスクが残っている という災害発生シナリオを書いていくことだろう、というご意見もありました。こういった 取組については、メーカーとユーザーが議論し合うことが必要であるというお話がありまし た。危険源で見ると、すべてについて記載するのは難しいのではないかというご意見もあり ました。ユーザーが知り得ることが困難なリスクについては、メーカーが提供可能な情報で あるならば、当然提供すべきであるというお話もありました。  5頁です。リスクのレベルの話もありました。アの危害の大きさにより、提供すべき情報 か否かの分類ができないかという考え方については、リスクの大きさによらず、情報提供を してほしいというご意見がありました。また、この意見については実効性を保つのは難しい のではないかというご意見もありました。リスクに関しては、危害の大きさと危険源の大き さを混同してはいけないというお話がありました。例えば鉄粉が飛んでくるようなものにつ いては、身体に当たる場合と目に当たる場合と重篤度が異なる、つまりユーザー段階でリス クが異なることから、メーカー段階においてどこまで情報を求めるかということも考えてお かなければいけないというご意見でした。ウの講ずべき方策の内容については、ユーザーに おけるリスクの見積もりに応じて変わり得ることから、特定することはできないが、想定さ れる保護方策を提供することは効果的であろうというご意見でした。  (3)は危険源の情報についてです。残留リスクではなく、危険源の大きいものは情報と してほしいというご意見がありました。発生頻度が極めて小さくても発生する恐れがあり、 頻度はユーザーで決定される理由によるというご意見でした。この意見についてはユーザー における安全を確保するために、メーカーは合理的なアシストを行う必要があるとのご意見 もありました。危険源自体の大きさでいきますと、エネルギー、速度、有害性などに応じて 区分できるのではないかというご意見でした。  2の実効性の確保については、若干重複になりますが、アとして、情報提供はユーザーに おける機械労働災害防止のために行うものであり、その目的にかなった内容であるかを、ま ず精査する必要があるのではないかというご意見でした。イとして、ユーザーが効果的に活 用できるものとする必要があるのではないか、ウとして、設計者が行うリスクアセスメント はユーザーから事前に与えられる情報量、例えばユーザーにおける使用状況・頻度によって、 その精度が向上するのではないかというご意見でした。  3はハザードの種類についてです。安全関係のハザードのみならず、エルゴノミックス系 などの労働衛生の観点からの中長期的に発病するリスクをどう考えるかというご提案があ りました。現在はあまり考慮されていないが、発病すれば重態となる恐れのあるものもある。 一方で、すべてのハザードに対処することはなかなか困難ではないかというご意見もありま した。  6頁が論点4です。これはどのように情報提供すべきかというものです。「検討の方向性」 ですが、どのような危害がどのような時に発生するか、どのような対応が必要かという情報 を明瞭に一覧できるものにすることが、ユーザーにとって使いやすいとされました。この点 については特段、ご異論はなかったかと思います。ただしイメージしにくいので、普及に際 しては具体的な例示をすることが必要であるとされました。  「主な意見」です。1の具体的な提供方法のアでは、イメージしにくいので例示する必要 があろうと。特に簡潔明瞭のみならず、どのような危害がどのようなときに発生するか、ど のような対応が必要かという情報を、明瞭一覧できるものに融合するというイメージが、な かなかしにくいというご意見でした。あと、フォーマットについてのお話もありました。限 定的なものではなくて多少柔軟なものにして、使いやすい雛形を与えておくことが良いので はないかと。この雛形には必須のものが記入できるようにしておく必要があるというご意見 でした。  (2)として情報の一覧性、別途交付ということでした。危険情報をバラバラではなく、 一覧表の状態が使いやすい、取扱説明書と別途にという位置づけは、現場で使いやすいもの であり、かつ現場でも紛失しにくいということに留意する必要があるということでした。ウ としてアンケート結果から、ユーザーにて残留リスク情報を受け取ったという認識されない ケースが多いことから、ユーザーが明確に認識できるような示し方が必要であり、取扱説明 書とセットにする場合で一覧性を確保し、わかりやすい所に添付するとよいのではないかと いうご意見でした。  7頁の2は、情報提供が必要となる場面です。アとして、機械の新規譲渡時のみならず、 実際の機械の流通というのは、中古品や海外からの輸入品の取扱いもあります。これは今す ぐということではなかったかと思いますが、一定の整理が必要であろうというご意見でした。 イでは、機械にすべての段階、製造、設置、運搬、廃棄などにかかわる事業者がすべて法 28条の2の義務対象となるならば、すべての段階で情報が必要とのご意見がありました。  8頁が論点5です。機械の危険情報が提供されるべき機械はどのようなものかという、機 械の範囲についてでした。これは総じて検討の方向にありますが、リスクアセスメントの促 進、ひいては労働災害防止という目的に照らして、基本的に労働現場で使用される機械が、 ユーザーに譲渡される場合を考えればよいのではないかというご意見でした。意見として、 除外すべき範囲があるかどうかというところでは、アとして、EU機械指令においても除外 されている機械があり、対象機械としては、そのことも考慮する必要があるのではないかと いうご意見でした。括弧内にその例示が書いてあります。イとして、労働安全衛生法令で規 定されている特定機械等は、除外できるのではというご意見がありました。  2番目が、労働安全と消費者安全の観点についてです。アとして、主として一般消費者の 用に供する機械等とのデマケについては、労働安全のために労働者が使う機械に限ると考え られる、また、厚生労働省の施策であるので、労働安全衛生法での範囲で考えるべきであり、 制度の運用の効率化も考慮すべきであるとされました。イとして、一般消費者向けではなく、 B to Bの契約下で納入される機械が主となるのではないかというご意見がありました。参 考1では化学物質のMSDSの法条文を参考に書いてあります。ただし書きにありますよう に、化学物質のうち、主として一般消費者の生活の用に供される製品というものは、この限 りでないということで除外されているという状況です。大変駆け足の説明で恐縮ですが、大 きな5つの論点でした。 ○向殿座長 「論点整理」をまとめた資料4の第1グループと第2グループとあるうち、い ま第1グループの話をしました。それでは一つひとついきましょう。まず1番、機械メーカ ー側がユーザー側に機械の危険情報を提供することは、機械のユーザーにとってどのように 効果的又は有効的かという話です。これについて、何かご意見等はありますか。よろしいで すか。ここで言っていることは、メーカー側からユーザー側にちゃんと機械の情報をいただ ければ、ユーザー側のリスクアセスメントは非常に効果的にできるし、労働災害を減らすこ とができると。逆に言うと労働災害というのは、現場で得たいろいろな情報をメーカー側に フィードバックすることによって、お互いにリスクコミュニケーションがうまくいくだろう という内容ですね。これは明らかに有効だろうと思って、我々は一生懸命やってきているわ けで、あまり提供の仕方が悪いと使ってもらえないということは注意すべきだというのは聞 いています。どうですか、折角ですから。 ○高岡委員 1番とは直接関係がないのですが、前回の検討会が終わってから考えたことで す。この場というのは、事業者あるいは労働者の立場での検討会ですから、こういう論点の 整理でいいと思うのです。しかし残留リスクを提供するメーカー側のメリットを考えておか ないと、有効に提供されないのではないかと思います。私は法律家ではないのでよく分から ないのですが、例えば残留リスクを明示したことによって、その対応がメーカーからユーザ ーに移るということが明確であれば、メーカーは残留リスクを提供しやすくなると思うので す。そうでなくて、いくら提供してもメーカー側に責任が残ってしまうのであれば、それは メーカーにとってあまりメリットがないので、残留リスクの明示ということに積極的にはな らないのではないかと思うのです。その点も少し考えておく必要があるのではないかと思い ます。 ○向殿座長 いままでの論点はユーザー側に、労働災害を減らすためには有効であるから、 是非機械メーカー側も協力してちゃんと出してくれ、それについては法律である程度規制す るというか、明示するから従いなさいというイメージだけれども、いまのお話は、出す機械 メーカー側にとってもメリットというか、喜んで出すようにするためには、残留リスクはこ こだと明示したならば、それに従っておきた事故その他についてのメーカー側の責任は、あ る程度軽減されるとか、そういう法律的な対応をしっかりしていれば、メーカー側も喜んで ちゃんと出すだろうということですね。 ○高岡委員 そういうことだと思うのです。 ○向殿座長 これは弁護士の話とか、きっといろいろな話が出てくるでしょうね。 ○佐藤委員 私もメーカーなのですが、メーカーとしても都合の良すぎる話のような気がし ますね。ですから、もう少し考える必要があろうと思います。 ○石坂委員 リスクコミュニケーションというものが、ここの根底にはあるわけです。どう いうときにリスクコミュニケーションがあるかというと、まず理想的に言えば、購入交渉時 においてユーザーがきちんと安全条件を提示できるようになっていけば、いちばん理想的な わけです。それでメーカーがその条件に合わせて、こうだよ、でもその機能をやるとどうし てもこれだけのリスクが残ると。しかしユーザーのほうが、生産に必要だからその機能は是 非入れたいと。例えばそのリスクに関して、少し高いリスクがあるとすれば、労働者を教育 して資格を与えた人だけに使わせようかなとか、いろいろなバリアを設けて、そういうこと が起こらないように施すから、やはり提供してほしいという形で合意がなる。そこのやり取 りが一種の契約交渉時のリスクコミュニケーションです。  今度は実際に物を作って引き渡したとき、「譲渡時」と言っていいでしょうか。それが最 終的にやった結果として、こういう残留リスクになりました、契約時の交渉からちょっと修 正が加わりますが、こうですよと。そうすると、そこでリスク情報が本当に相手に引き渡さ れるわけです。これは杉本先生がよく言われることですが、リスクコミュニケーションでリ スク情報を伝達するということは、「責任の伝達」なのだと。譲渡時に情報を渡してそれを 受け取ったということは、そのリスクで我々はやりますよということなのです。  前回、中災防の委員会で出されたもので、リスクアセスメントをしなくても情報はほしい と。もらっているうちの6%ぐらいしかやらないということは、厳密に言うと本当は非常に 厳しい危険なことなのです。そこをもらっておいて何もアンサーバックもしないで、そのま まだったら、それはもう了解したことになりますから、現場で事故が起こったときに、「こ れは機械の責任だ」と言って民事訴訟になっても、何もリアクションがなかったではないか、 これはもうユーザー側がそれを是としてOKしてしまったということになってしまうと思 うのです。そういうことは不幸なことです。  ただ、情報を多く与えておけば、ある意味、メーカーはそれでもって責任を果たして相手 に受け渡したことになるので、身を守るわけです。その代わり、メーカーにとって出したく ないいろいろな性能にかかわる情報も出てしまうから、そこの兼合いがあるでしょう。これ はどちらが良いか悪いかではなくて、単にメリット論でいけば、メーカーにとってはそうい う責任の引渡しができるし、ユーザーもいっぱいもらうということは、それだけ責任を引き 取ることでもあるのです。ですから、そこのこともよく認識しながらやる。使いもしないの に、いろいろな情報を持っても放置するということは、ユーザーにとってもあまりよろしく ないことです。やはり実効性のあるものにするということが、メーカーとユーザー双方にと って、メリットのある情報の引渡しだろうと私は思うのです。  ここのメンバーは高岡さんにしろ宮川さんにしろ、ユーザーとしてはある意味では理想的 な、よくやっているトップクラスのユーザーの立場でしょうから、よりシャープな高度な情 報をもらえれば、それをしっかりと活かす術があるし、体制もある所です。しかし多くの場 合がそうでないとすると、そういう問題もよくよく考慮しながら、やはり実効性のある情報 の引渡しを考える必要があるというのが、私の意見です。  蛇足ですが、リスクコミュニケーションで言えば、前回ここにも資料がありましたように、 ユーザーのほうに引き渡された後、稼働後のいろいろな不具合発生などの情報、危険事象の 問題あるいは想定外の事象ということも含めて情報をフィードバックすれば、よりメーカー とユーザーの間で安全の向上につながる、いいコミュニケーションだと思います。譲渡時の 問題で言うと先ほどのことがあるので、実効性という部分ではそういうことも少し念頭に置 く必要があるだろうと思います。 ○宮川委員 いま石坂さんが言われたように、コストの面も含めて、やはりメーカーがやっ たことの妥当性を主張することでしょうね。先回もお話いたしましたが、本質的安全まで下 げたようなところも含めて主張するというメリットはあると思います。それから当然、メー カーも労働安全衛生法第3条第2項の適用を受けるわけです。安全配慮義務を果たしたと主 張する根拠になるということは間違いないと思うのです。そこは明確にしておかなければい けない。先ほど石坂さんが言われた実効性というところが、私はうまく理解できなかったの です。一生懸命リスクアセスメントをやっているから、そういう所はきちんと情報を出して もいいだろう、そうでない所は適当にというような表現で言われたら、若干意見があるので すが、そういう意味ではないですよね。 ○石坂委員 違います。実効性というのは、別なニュアンスも1つあるのです。厚生労働省 という政府がこういう制度を作ると、それが本当にちゃんと回っていることが必要でしょう。 その法律を出しただけで後は知らないということになると、やはりそれは無責任だろうと。 通達や指針もそうです。そういうことが本当にちゃんと回っているように動かし得るのか、 そういうものを作ってやったけれども、実際には行われないと。つまり実効性というのは、 実際に行う意味での実行性もあるだろうと思っているのです。もう1つは、「有効」の「効」 のほうです。情報提供したものが本当に使われる情報になるのか。 ○佐藤委員 結局、日本を考えると、機械安全に対してユーザーとメーカーのどちらが理解 しているかです。ユーザーというのは、日本国内にしかいないわけですよね。そこがいつも 言うことです。根本的に機械安全の醸成が必要だ、足りないというのは、いまの日本のメー カーというのは、ほとんど輸出が多いわけです。輸出をしていると、どうしても機械安全と いうのは避けて通れない。ですからメーカーというのはある程度、残念ながらユーザーと比 べると、機械安全に対する認識が非常に高いわけです。今日出ていらっしゃるユーザーさん は一流企業ですから、全然問題ないのですが、特に中小企業云々ということも後ろのほうに 書かれていましたので、そういう実情を考えると、情報は全部与えました、それでいいので すねというような無責任なことは、実際問題として石坂さんが言われたように、非常に実効 性がないという感じがします。ですから、その辺をもう少しきちんと配慮する必要があるで しょう。 ○向殿座長 おっしゃるとおりですね。先ほどはたまたまユーザー側としてメーカー側のこ とをおもんぱかって言われたけれども、逆に言うとそんなに情報をもらっても、「後の責任 はユーザー側」と言われたらユーザーは、「じゃあ、要らないよ。はっきりさせないでくれ。」 と、当然逆手に出てきますからね。そうではなくて全体を上げようという話のところで、い まの話を表に出すとなると、なかなか難しいことになりますね。 ○宮川委員 佐藤さんも石坂さんも言われたように、やはり情報を提供するだけではなくて、 使いこなせるようなアプローチが必要であり、つまり「使いこなせる情報ソフト」が必要とい うことです。 ○石坂委員 そういうことです。 ○向殿座長 本来、そういうことですね。それに対して厚生労働省がちゃんと定着するよう に努力してほしい、という石坂さんの話も入っています。私が国際会議でISOの機械安全 規格が出来たときのデータを見ると、メーカー側の責任とユーザー側の責任をちゃんとはっ きりさせたいというのがバックにありました。そしてメーカーがやるべきことをやって合意 したならば、ユーザー側はそれをちゃんと受け取って自分の責任でやってくれと。それで事 故が起きた場合は、合意したところの先まで、メーカーまで戻らないようにしようというの がバックにあったと、私は議論をしていて思ったのです。ただ、日本でそのまま使えるかと いうと、日本国内ではそう簡単ではないと思っています。メーカー側とユーザー側が非常に 密着してお互いにコミュニケーションができる、ある意味ではいい環境にあるので、そこで リスクコミニュケーションをしながら、お互いの労働安全を上げていこうというところに主 要目的があるように私は思います。どうですか。 ○安達副主任中央産業安全専門官 高岡委員の先ほどのご指摘に、責任の移動を法制化とい うお話がありました。 ○高岡委員 いやいや、法制化とまでは言わないですが、メーカーのメリットがどこにある かというのを考えておく必要があるかなということです。 ○安達副主任中央産業安全専門官 わかりました。確かに労働安全という視点の中でそのこ とを法制化というのは、なかなか難しいと思うのですが、やはりこの制度を動かしていくメ リットというものは、当然考えていかなければいけない。その点は第2の論点として、また ご議論いただきたいと思います。 ○向殿座長 いろいろな問題点があって、考えるべきことはたくさんあるけれども、メーカ ー側が危険情報というか、残留リスクをちゃんとユーザー側に提供するということは、日本 の労働安全も含めて、機械安全も含めて、大変いい方向であるということは、皆さん意見が 一致していると思います。その中で考えるべきことはいくつかあります。責任の話、その法 制化の話になると、そう単純ではないのではないかという感じがしますね。その場合には契 約で、残留リスクは本当にこれでいいのかという合意をお互いにするという話になって、た ぶん非常に難しい問題が起きると思うのです。ただいまの議論の中で論点1に関しては、効 果的、有効的なやり方で、こういうことに注意しながらやりましょうと。特に中小企業など も含めて使いこなせるかどうかという視点は、大変大事だということですね。ちょっと中途 半端な気もしますが、方向性としてはこの辺でいいですか。 ○石坂委員 あと、資料2で先ほど安達さんが言われたことですが。 ○向殿座長 「普及状況」ですね。 ○石坂委員 今回の情報提供というのは、あらゆる事業規模の全体のと言うよりも、平成 21年の下の円グラフのうち、「実施予定」25.6%、「実施準備中」14.2%の層を、よりリス クアセスメント実行に向かわせることが、当面非常に効果的であると。こういうところに焦 点を当てることも一つあるというニュアンスだったように、私は受け取ったのです。もっと 議論をしないうちにそういうことを言うのは別として、折角この資料2が出たので、そうい うように見ているのですが、安達さん、そういうことで理解してよろしいのでしょうか。 ○安達副主任中央産業安全専門官 別の調査においても、リスクアセスメントを実施してい るユーザーとしていないユーザーの労働災害の年千人率の比較などがあって、例えば、実施 していない方が発生率が2倍程度あるとか。 ○向殿座長 ユーザーでリスクアセスメントをやっているほうが、グッといいというデータ もありますからね。 ○安達副主任中央産業安全専門官 リスクアセスメントをしているということは、もちろん 安全に対する理解が高いということもあるのですが、全体を引き上げるということもありま すし、いま石坂委員から言われた、「実施準備中」のユーザーの背中をうまく押すというの も、政策としては非常に効果的だと思います。 ○宮川委員 感覚的な話で申し訳ないのですが、この背景(資料2のリスクアセスメント普 及状況)について。日本の労働災害の多くは、中小企業で占められると言われています。そ れは間違いないのです。大企業は少ないと言われています。しかし逆に個々の事業場単位で 見ますと、例えば1年間に1件も災害を経験したことのない事業場の数はというと、残念な がら大手企業高岡さんの所も弊社も、1年に何件かは経験しているでしょう。 ○高岡委員 経験しています。 ○宮川委員 この辺のクラス(300名以上50名未満)になってくると、10年に1件な どとなってきて、特にここら辺(50名未満)になってくると、おそらく20年に1件とい うイメージになってくるわけです。先ほど佐藤さんが「機械安全の意識が低い」と言われた けれども、その背景が実はこの点にあるのです。その背景を打破するためにリスクの概念で 考える必要があるということです。  リスクアセスメントの話を頼まれるときに「トヨタのような程度の高いリスクアセスメン トの話はしてくれるな。宮川は中小企業を相手に、豊田労基協会でリスクアセスメント推進 委員会をやっているだろから、その話をして欲しい」とよく言われます。この発言に対して 私はいつも言っているのです。先回も言いましたが、「リスクアセスメントというのは、災 害の発生のプロセスで行うものです。このプロセスで災害が発生することは大企業も、中小 企業も、零細企業も、父ちゃん母ちゃんの家内企業も変わらない」と言います。ですからア セスメントのプロセスはきちんとやろうねと。見積もりのレベルは情報量などによってバラ つきがある。しかしアセスメントのプロセスがしっかりしていれば、議論をすればある程度 通じる部分があるのです。災害発生のプロセスで見るということです。こういう言い方をし てはいけないのですが、災害の経験が少ない人たちに対しては、やはりきちんと災害の発生 過程で見るということのほうが重要だと思うのです。どうでしょうか。 ○高岡委員 危険源の明確化に重きを置くべきだということですね。 ○宮川委員 そういうことです。どういうようにして災害が起きているかということです。 ○高岡委員 それはやはりメーカーからの情報が重要だということですね。 ○向殿座長 確かにここの見方はそうです。大きいほうがリスクアセスメントをちゃんとや っているとは言うけれども、従業員が多いから、事故に遭う確率も高くなっているという話 ですよね。中小のほうは人数が少ないから、何年に1回というか、10年に1回しか起きな い。そういう意味では経験していないということになります。 ○宮川委員 極端な話、死亡災害などが起きて労災防止指導等で企業に行きますと「創業以 来初めて起きました」と言うのですが、その創業が大正年代の場合もあります。トヨタ自動 車の創業より古いのです。 ○向殿座長 全体的にリスクアセスメントは非常に重要だと。中小もどこも変わりなく、全 部必要だという意見は非常にごもっともです。ただ、やり方としては大手に対するリスクア セスメントの内容の話と、中小に対するやり方とでは、少し焦点を変える必要があるという ことですか。 ○宮川委員 ベース(アセスメントのプロセス)は一緒だと思います。ベースは変わらない ということです。 ○佐藤委員 そういう意味では、日機連の機械安全リスクアセスメントの調査のときに、イ ギリスなどの先進国に調査に行ったことがあります。HSEで「5 steps to risk assessment -CASE STUDIES」というリスクアセスメントの実施例というか、どういうようにするの かという中小企業向けの簡単なガイドがあるのです。そういったものを作って配布すれば、 そういう所の底上げには非常に役に立つのではないでしょうか。その辺が日本でいちばん欠 けているところです。大企業はISO 12000でも読んでいればみんな分かるわけです。 ○向殿座長 リスクアセスメントは非常に重要で、中小も大手もない、特にベースはほとん ど同じだと。ただ、中小などにはガイドをちゃんと親切に作って、導入の手助けをするとい う視点が大事だということですね。わかりました。この点については、大体この辺でよろし いですかね。  では論点の2に行きましょう。機械ユーザー側がリスクアセスメントを実施する際に必要 な情報とは何か、何が必要かということです。先ほどのお話を聞いてみると、この中の分け 方は必須であるような情報と、ここまでは要らないのではないか、場合によっては付加的な 情報ではないかという話もここには入っています。情報を使用するユーザーの特性も十分に 考えろと書いてありますね。これについて何かご意見はありますか。 ○宮川委員 先回もお願いしましたが、リスクは残留リスクだけではなくて、「別表5」の 情報がほしいのです。例えば法第28条の2でもリスクアセスメントをやって、まずは法律 を遵守して、それ以外に必要な措置を講じろと言っているわけです。異論があったら高岡さ ん、また後で意見を言ってほしいのですが、ユーザーは何をやるかというと、まずはこの機 械が法律に適合するかどうかです。そのためには何が要るかというと、まず法律は特定機械 とか、機械ごとに適用している部分がありますから、それに該当するか該当しないかという ことです。クレーンに該当するのか、エレベーターなのか、プレスなのか、あるいは、危険 物乾燥設備なのか、一般の乾燥設備なのかということを判断しなければいけないのです。そ うすると、構造や性能などの情報も欲しいわけです。  また、使用上の制限というのもあります。法律の中には、作業内容によって法規制してい るものもありますので、どういう人たちにどういう作業管理が必要かという様なことを検討 し、決定しなければいけません。安全防護についても、特定機械の絡みになるのでしょうけ れども、検定を受けている安全装置かどうか、防護の機能がこれで本当にいいのかどうかと か。リスクに関係なく法律が適用されますから、法対応の観点からは残留リスクの情報は関 係ないのです。安全プレスも法律が適用されるわけです。安全プレスは、極めて低いリスク の低いプレス機ということでいいですよね。しかし法律は適用されるわけです。  もう1つは、どこかに散りばめられているのかもしれないけれども、別表5にはない危険 源に関する情報が欲しいのです。これは先回、高岡さんとも言ったことです。危険源につい ては法律の中にも、はさまれたとか、感電だとか、爆発火災だとか、全設備に適用される項 目が結構あるわけです。衛生関係でも有機溶剤を使うとか、全部設備に適用されるわけです。 ですから、どういう危険源があるのか、そこから適用される法律は何なのか、必要な就業制 限をどうするのかです。また、就業制限の中でも知識・技能だけではなくて、健康管理面で の就業管理もしなければいけない。難聴やじん肺などを見るとそうなってきますので、そう いうことをやっていかなければいけないのです。そうすると、やはり残留リスクだけではな くて、危険源情報がほしいのです。  2点目は許容不可能であり物的リスク低減策を講じて許容可としたリスクも、ユーザーと して妥当性確認のためにほしい。そして残された防護できないリスクは人でカバーしなけれ ばいけないので、やるべきルールを決めなければいけないというのが3点目にあります。も う1つは、安全防護の機能を維持しなければいけませんので、そのニーズ、必要性、そのや り方を決めるために、やはり防護装置の情報はほしいわけです。私たちユーザーとしてやら なければいけない主な項目は、この4点ぐらいあるので、それはやはりきちんと分かるよう に情報をもらわないと、ユーザーとしてはたまったものではない。「メーカーさんから情報 提供がなかったから知りませんでした。やりませんでした」と言ったときに、厚生労働省や 労働基準監督署が許してくれるかといったら、そうではないですから、ここのところはもう 一度ご確認いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○向殿座長 もっと出せ、出すべきだということですね。 ○宮川委員 きちんと出してほしいということです。 ○石坂委員 基本的には理解できるのですが、こう思うのです。いまは2項の話をしている けれども、3項にも全くある話です。要するに、今回は残留リスク情報をきちんと伝えよう ということです。3の2番目にありますように、ここでユーザーが必要とする情報とは、JIS 等の定義にもあるとおりの危険源の危害のひどさと、その危害の発生確率を組み合わせた情 報とされたと。つまり、ある程度考慮すべき残留リスクについて残留リスクとしたときに、 残留リスク情報はそこにかかわるハザードのことまで言及しないと伝わらないものは当然 入るのです。ですから「ハザードは全部出せ」という言い方ではなくて、「残留リスク情報 として出せ」と言えば、自ずと必要なハザードは入るのだろうと思うのです。そういうよう に私は理解します。 ○宮川委員 先回も言ったかと思うのですが、メーカーはメーカーのシェアの中で標準的な 範囲の中で前提条件を決めてリスクアセスメントをやって決めていきますよね。それで、こ れぐらいならば許容できるし、可能ですということでいけますよね。ところが受けるユーザ ーとしては、自分たちの職場の実態に合わせて、本当にそれが許容できるかどうかを決めて いかなければいけないのです。そのときは、やはり先ほど言ったような仕様や性能などの情 報がないと、その適否の判断というのができないのです。どこで判断するのか、何をベース に判断するのか。 ○石坂委員 私に言わせると、そこまで情報がほしいのなら、購入時にそういう要求をきち んとやって、契約のときにやっておくべきではないですか。 ○宮川委員 いまは機械包括安全指針をベース検討しているから。機械包括安全指針もスペ ックに関するもの、使用上の情報に関するもの、防護に関するもの、そして残留リスクと分 けて、その残留リスクの中での話をしているのです。 ○石坂委員 そうです。ですから残留リスクとして情報を出さなければいけない。出せば関 連するハザードは当然説明しないと、リスク情報が説明できないのです。 ○宮川委員 それは当然あります。しかし、それが本当に許容できるかどうかということを 判断しなければいけないわけです。 ○石坂委員 それはそうです。情報をもらったのだから。 ○宮川委員 そのときにそういう情報がほしいわけです。ですから先回、高岡さんも特に危 険源情報についてはほしいとおっしゃったのです。 ○石坂委員 要するに、そうではないと思っていたけれども、そういうものが危険になるか もしれないから、別途、また全部詳しくやりたいから、情報を出せという話になってしまう でしょう。 ○宮川委員 「詳しくやりたいから」という言葉が、私はよくわからないのですが。会社と して受入れ可能かどうかということを判断するということです。 ○石坂委員 私はいま、法律に準拠してそういう話をしようと言うから、指針でも何でも残 留リスク情報を流しなさいと言っているわけです。 ○向殿座長 その前にいっぱい出すべきで、最後に残留リスクを書くと。それだけでは駄目 だと。 ○石坂委員 そういうことです。 ○高岡委員 この問題は、やはり本質的な問題だと思っています。安達さんから説明してい ただいた資料の「残留リスク情報の詳細」とか、「リスクアセスメント評価表」を改めて見 ると、このメーカーは相当やられていますよね。よくやられているのですが、例えば、残留 リスク情報のB社が提供を受けたものを見ると、「全作業中で床で滑るとか、障害物につま づきケガをする、機械の周辺はきれいに清掃しておいてください」と記載されていて、これ らは機械そのものではないのです。「機械の周りをきれいにしておけ」と言っている。これ はすでに労働安全衛生規則544条に、作業場の床面は滑り、つまずきなきこととあります よね。  その次に、「運転前に刃物を取り付けるときには、他人が刃物の回転動作をしてしまって 手を切るとか、切断をするなどの重傷事故を起こすから、作業の表示をして他人が刃物の回 転操作を行えないように、警告板等を用意してください」と。これも労働安全衛生規則107 条に、錠を掛けたり表示をしたりという規則があるわけです。こういう法律に決まっている ことまで記載しないといけないのかということを考えると、私はここまでは必要ないのでは ないかと思うのです。実際に刃物とかワークとか、重いものが危険源としてあったり、ある いは騒音とか切削音とかそういうものがここに書いてありますし、給電の充電部とか残圧と かも書かれていますので、こういった情報がもう少し定量化されて記載されていれば十分で はないかなと思ったのです。  また、リスクアセスメント評価表を見ると、例えば運転準備のところで吸着ベルトの使用 確認中に、材料と吸着ベルトの間に手を挟むと。このメーカーが採用した方法は、注意マー クを貼るということになっています。残留リスクの回避方法としては、「手を吸着ベルトの 下に入れないようにしてください」と書いてあるのですが、これは国際安全規格で言えば手 が入らないようにカバーをするとか、そうでないといけないのです。この評価表や残留リス ク情報を見ると、改めてもう少し明確にしておかないと、メーカーとユーザーの間のリスク 情報の受渡しはできないのではないかと思ったのです。これは相当レベルの高いメーカーだ と思うのですが、それでもこういう情報だというところに問題があるのかなと思います。 ○向殿座長 たぶん、現実はこうなのです。 ○高岡委員 そう思います。 ○石坂委員 私がこの事例を見て思ったのは、メーカーがこういうリスク情報を出すときに あらゆることを想定して、自分たちは考慮したと言うためにいろいろウォーニングを出した りしますが、一目でわかるようなことだって書いておくと。それはメーカーが身を守る立場 で過剰なまでに出す情報と、本当にユーザーがユーザー側でリスクアセスメントをする必要 のある情報は、少し違うと思うのです。逆に言うと、例えば刃が出ている所を、刃が出てい るから危険ですよと言われなかったから、ちっとも知らなくてケガをしたなどということは 本当にあるのかと。そんなものは、物理的に刃があるとか狭い所に手がいくとか、現場でリ スクアセスメントをやるような話ですよね。  そういうことでもちゃんと出す必要はあると思いますが、要するに何がわからないかとい うと、目に見えて形状から明らかに危険源やリスクもさることながら、パワーが大きいとか、 電子制御関係で高圧電源があって、通常のメンテナンスで外したときに、そこに触わると大 変だよということがわからない。そういう所は、目に見えてそこは危険だということがわか らないわけです。あるいは、そこのスイッチを切ったり、安全に立ち上げるときの操作方法 はロジカルなものですから、そのロジカル情報を提供してあげないと、普通の人はわからな いだろうと。  先ほどレーザーと言ったのは、そういうレーザーパワーがあって、普通は何も問題ないの だけれど、うっかり反射する金属などを挟んだら、そこから光が反射して目に入ったという ことがあるかもしれない。そういう意味での情報はきちんと出さないと、ユーザーはわから ないから出さなければいけないけれど、角があるからとかいうのは、それは出さなければい けないけれど、そういうものも何から何まで事例として出さなければいけないというのは、 今回の趣旨から言うと良い例でもないなと思います。 ○安達副主任中央産業安全専門官 念のため申し上げますと、この事例の精度がどうかとい うのは事務局としては問いませんで、是非イメージを持っていただきたいということです。 この事例を選んだのは、ユーザー側で何をしたらいいかという物語風に書いてある部分もあ りまして、前回のご議論ではユーザーが使いやすいという視点がありましたので、この中身 は別として、どういう項目が必要であるかを考えるのに参考にしていただければと思います。 ○森戸主任中央産業安全専門官 資料3-2で、最初の2枚はメーカーが作ったもので、この メーカーのものがそのままユーザーに渡っているのではなくて、3枚目のものがユーザーに 渡っているということです。したがって、メーカーのほうで再評価が「可」となったものに ついては情報を提供せずに、「不可」、いわゆるメーカーとして危険が残っていると判断した ものを伝えることになっているというのが1つです。  また、メーカーは回避方法を提案しておりますが、これはユーザーが必ずやるのではなく て、ユーザーはあくまでリスクアセスメントをしなければいけません。もちろん、メーカー 段階で安全な機械となるのがいいのですが、必ずしもそうではないので、ユーザーがリスク アセスメントを行う際には、改めてユーザーが危険の大きさと頻度とを自分なりに評価し、 リスクレベルを決定し、対策を考えていくことになります。したがって、ここにはでてきま せんが、ここにカバーを設けようということが当然ユーザーのほうでなされることになりま す。それに必要な情報として、こういう危険があるということをユーザーに伝えるとご理解 いただければと思います。ここで全部完結して、この回避方法をユーザーが行うのではなく、 ユーザーはこれを元に、リスクアセスメントを自らやるというのが前提になっているという ことで見ていただければと思います。 ○宮川委員 残留リスクという意味について確認したいのですが、これは許容可能なリスク なのか、不可能なリスクなのか。 ○向殿座長 これは不可能ですが、一応出したのです。 ○宮川委員 不可能ですよね。不可能なのだけれど、使用上の情報で措置を委ねたものが残 留リスクということですね。この事例の中にはリスクがないのです。これは許容できないリ スクだけれど、いわゆる防護レス状態で、技術的な手を打てないから、使用上の情報に委ね るがどうですかということで議論ができなければいけない。その為にはリスクがないといけ ないのです。これはリスクがない。 ○高岡委員 リスク評価がないということですか。 ○宮川委員 リスクレベル評価がないということです。 ○向殿座長 こちらに提供するほうですね。メーカー側から見ると、ちゃんと評価して不可 能な所だけ出したわけですね。 ○宮川委員 まずこちら(資料3−1)のほうですね。さらに言うと、先回確認をお願いし た災害のストーリーで網羅的にやろうと言ったときに、例えば刃物の取替え云々とあります が、機械のリスクアセスメントから言うと、たぶん主軸の危険源に暴露されることを言って いるのでしょう。主軸の危険源に晒される作業は、刃物の取替えだけではないですね。ワー クのセット、測定だってありますし、溜まった切削くずを清掃する作業もあります。たぶん、 刃物の取替えよりもこれらのほうが頻度が高いはずなのです。そういうもののリスクは一体 どうなっているのか。  あるいは、同じ動力にしても、モーターがあり、動力伝達部があり、主軸があります。主 軸はリスクが高いからそれなりに防護しました。でも、動力伝達部やモーターは高い所にあ るし、接触頻度も少ないため、リスクが低いから、色彩表示による注意喚起措置としました、 ということがわからなければいけない。  主軸以外にも、人から接触するのではなくて、危険源が人に接近して暴露されるケースが ありますね。切削くずが飛んでくるとか、刃物が接触して飛んでくるとか、それに対して防 御装置はどういう防護をしているのか、たぶん、カバーを付けているのだろうと思うのです が。カバーを付けて、インターロックが付いているような付いていないような記述がありま す。もし仮にインターロックが付いていて、作業中に常時インターロックが機能していて、 他人の誤操作防止ができるのであれば、他人の誤操作防止の表示は要らないのです。だから、 一つひとつきちんと見て、メーカーは実際やっているのです。やらないと設備など作れるわ けがないので、だからその情報は外に出してくれればいいのではないかと思っているのです。 先ほど石坂委員が言われましたが、メーカーは実際やっているのだから、それを出せばいい のです。 ○石坂委員 だから、リスク情報というのはそういうことでしょう、と言っているのです。 ○宮川委員 だから、まとめ直すというよりも、これそのものを出してくれればいいのでは ないかなと。先ほど言ったように、これが防護レス状態で許容できないリスクについて防護 策を講じたもの、使用上の情報に頼ったものを出してくださいと言えば、情報の提供の仕方 としてはこれ(資料3−2)でいいのではないかなと。ただ、このリスクアセスメントの内 容は、機械のリスクアセスメントはこんなことはできるわけがありませんので、これは間違 いなく大いに問題があります。そういうことでいいのではないかと思うのですが、違うので すかね。 ○向殿座長 どうですか。要するに、D社のこういうパターンで出てくると、これはリスク のレベルがわからないということですね。 ○宮川委員 議論もできない。 ○黒澤委員 残留リスクという言葉に捉われると、そうなってしまうのです。アセスメント をして、だんだんリスクが低減させるということを考えていくわけですね。最後は対策を講 じますから、リスクが減っていって、最後は管理的手法でやったり、いろいろやり方がある わけです。リスクを低減していく方法には、機械的な手段もあるし、管理的な手段もあるし、 あるいは人間工学的な手段もあるし、さまざまなのです。  「本質的安全」という言葉がありまして、ここにも事例が挙がっていたのですが、人間の 本質的安全というのは、小さい人が作業しやすいように合わせる、あるいは大きい人には大 きいように合わせる。こういうものを本質安全的だと言っている人もいるのです。ですが、 私に言わせれば「本質的安全」とは少し違うなと思っているのです。「本質的安全」という 言葉をそういう意味合いで使う方がたくさんいるのです。つまり、グラスでも何でもいいの ですが、体の大きい人は大きいグラスを使えばいい、小さい人は小さいグラスを使えばいい という考え方なのです。機械の使い方にはそういう考え方があるのです。サイズに合わない ものを使うと危険だという考え方があり、そのことを「本質的安全」と言っているのですが、 それは本当の「本質安全」とは違うと私は理解しています。用語の概念が変わり、その辺で 混乱が起こっているという感じがあります。 ○向殿座長 ここでは、明らかに本質的安全はハード的な手を打つと。あとは管理に任せた という表現があるわけです。 ○斎藤臨時委員 リスクアセスメントのこのような表が情報として提供されると、非常に理 解が得やすいという話なのですが、1つは宮川委員がおっしゃるように、そのような条件で というのはわかるのですが、それは残留リスクというよりも、むしろメーカーが行ったリス クアセスメントの前提条件、簡単に言うと、どういう使用を標準として考えて、どんな人で どんな環境で使うという前提でアセスメントを行って、いま市場に出している状況にあるの かを説明しろと言っているのだと思うのです。確かにそれは残留リスク、あるいは使用上の 情報だと思うのですが、より突っ込んで、自分たちがやったリスクアセスメントの想定条件 を説明してくれと。なぜかというと、現場に行ったときに、ユーザーは自分の環境で自分の やり方で改めてやるからだと思うのです。  もう1つは、このリスクアセスメントですが、出ているのは抜粋だと思うのです。現実に 1台の機械でも、NCだったらこんな量で収まるわけがないのです。これが50頁とか100 頁という桁で、下手をするとキングファイルとか、何冊分といった状況になると。すべてそ の情報を、何か1つ欠けてもあれだと思いますので、果たしてどのように提供されるのかと いうのを、1つ情報として是非ご認識いただきたいと思います。リスクアセスメントは、た ぶん現実にこんな量では済まないと思うのです。 ○黒澤委員 この表は現場で現実にリスクアセスメントをやる方法なのです。一覧表の形に まとめています。これはこれでいいのですが、これをユーザーにそのまま提供しても役立た ないと思います。ユーザーと言っても、特に大企業で暇な人がたくさんいる所は、じっくり 読んで内容を点検しますが、中小企業ユーザーにとっては、こんなものを出されたら、かえ ってありがた迷惑で、混乱が起こってしまうのです。大変なことなのです。そういうビジネ ス環境がほとんどの中小企業の現状です。 ○斎藤臨時委員 確かに、これを読み取るのに当然の知識と経験がある程度ない人、つまり リスクアセスメントできる人がこれを読まないと解釈できないと思いますし、また誤解を生 む可能性が非常にあると思います。 ○向殿座長 ユーザーにもリスクアセスメントをやってもらおうということで、いま話をし ているわけです。これだけの情報をもらったのでは、ユーザーでも何をしていいかわからな いと。ここに書いてあることはやるにしても、どのぐらいのレベルだということはわからな いですね。 ○黒澤委員 特に、中小企業でもメーカーとしての対し方と中小企業のユーザーとしての対 し方とあるのですが、中小の機械メーカーは一生懸命やっているのです。技術者として、ま た設計者としてやっているのですが、設計者はものすごく忙しいのです。図面から取扱説明 書まで自分で全部書いているのです。だから、大変な作業をやっておられるわけです。中小 企業の機械メーカーですと、実際は数10人しかいないのです。そういう人たちの中で設計 者は5、6人いて、その人たちが分担してやっておられるわけです。取扱説明書からマニュ アルからいろいろ作りますね。それだけで手一杯で、とても細かいところまでやっていられ ないと。残留リスクを提供してくださいと言われたときには、中小メーカーの場合は対応は 難しいと思うのです。その点の配慮が必要です。 大企業の機械メーカーの場合は割と量産 的な機械が多いので、丹念にやっています。例えばNCパンチプレスなどは大量に売れてい ますから、安全マニュアルで危険情報の開示は必ずやっています。立派なマニュアルができ ています。マニュアルの中には、残留リスクとは書いていませんが、こういう使い方をして は危ないですよとか、こういう使い方をしては駄目ですよと書いてあるのです。それは説明 的に書いてあるだけで、すべて残留リスクなのです。残留リスクと謳っていないのだけれど、 実態は残留リスクのことを説明しているということです。 ○向殿座長 それを残留リスクの表としてまとめようという話になっているのですが、「不 可」と書いてあるものだけ、ある意味そういう感じですね。 ○宮川委員 確認させてもらったのは、初期段階で、要するに防御レス段階で許容できない ものについては、防御したものも含めて出しましょうと。ただ、それだけだったら、前回言 ったのは労働衛生関係の難聴等といったものが出てこないものだから、リスクは低いのだけ れど、難聴低減の為にサイレンサーを付けたとか、安全衛生上何か措置を講じたというぐら いのものはせめて出してねと、あとは聞かれたらわかるようにしておいてねと。レベルとし ては。それでどうなのかと。 ○斎藤臨時委員 そもそも視点として、1つは法にすでに規定されていることに対して情報 が必要だという観点は、いままでなかったと思うのです。それをここで同様に扱いべきなの かなと。別に扱うべきではないかと思うのです。 ○宮川委員 それは前回も言ったように、今回の対象のジャンルとは違うけれど、機械に関 する情報としては別表5の情報をもらえば、そういうものも担保できますよということを言 ったのです。 ○斎藤臨時委員 もちろんそうなのですが、私が言いたいのは、もしそういうものがあるな ら、それこそ早急に法整備すべきであって、法の準拠に必要な情報をメーカーからもらわな いと準拠できない状況があるのでしたら、別に対応すべきだと思うのです。ここでは、おっ しゃっているようにもっと大きい包括支援での話ということで。 ○宮川委員 要するに、リスク低減ですね。 ○斎藤臨時委員 リスク低減の話ということです。ただ、法に準拠するのに必要な情報とい う視点は非常に重要だと思ったので、逆にいままで語られていなかったものですから。 ○向殿座長 必要なのは、ユーザーがリスクアセスメントをするときに、どういう情報が必 要かという話になったときに、どこまでメーカーから出してほしいと。宮川委員の立場から 言うと、もともと危ないものはメーカーが手を打ってリスクを下げたとしても、どういうも のがあって、どういう手を打ったかぐらいは出してくれと。それがユーザーにとっては非常 に役に立つし、改良するのにも役に立つと。 ○斎藤臨時委員 それを聞いて、許容リスクというものがはっきりしていないことによって いると思うのです。それはあくまでも自主的という意味を込めて、自分で決めるものなので す。果たしてユーザーが許容できるレベルに、メーカー側でしてもらったのかどうかを図る、 あるいは改めて考え直すということをおっしゃっているのだと思うのです。それが、もしこ のレベルなら全員がいいという、はっきりとした数値が決まっているならば、もはやそこで の疎通は必要ない。ところが、メーカーが言った標準のところで禍がっています。これは残 りましたという話をした、その区分けもよくわからない。説明してほしいというところも含 めると、全体を見たいという話になると思うのです。 ○宮川委員 メーカーは、先ほども言ったように、メーカーのシェアの中で標準的な前提条 件を設定してやっているのだと思うのです。だから、メーカーはその標準の中である程度許 容可能なリスクを見積もってやるのでしょう。そうでないと設計できませんので、それはや ると思うのです。労働安全衛生法は使用者の責です、まして自分の従業員がケガをするわけ ですから、本当にこれでいいかと。ひょっとして、メーカー側の標準より外れたところに自 社の職場環境があったならば許容できない場合があり、別の措置を講じていかなければいけ ないので、最終的には使用者自身で決めなければならない。そのためには、メーカーの前提 条件がある程度判らないと、それは判断できない。 ○斎藤臨時委員 それ以前に、どういう対策で、どこまでのレベルで減ったのかという情報 がほしいという話ですかね。そのときに、これは外れているのだから、たくさんお金をくれ と言えば払わなければいけないし。だから、ここに書いてある「不可」は、すでにメーカー の判断基準で決めた「不可」で、この「不可」がカットされたものが本当にカットになって いるのかどうかも知りたいという話だと思います。 ○石坂委員 いま労働安全衛生法を改正して、第28条に則っていろいろ指針が出て、そう いうものを円滑に、より効果的に回していくにはどうするかという枠組みの中での議論だと 理解しているのだけれど、それと離れて、もっとこうなったら世の中いいんだよね、という 論議に入れば、私もそうだと思うことは多々あるわけです。それで冒頭に、つまりこれは法 律の問題ではなくて、リスクコミュニケーションが理想的に行われるのは、購入交渉時にユ ーザーのほうもしっかりと要求の条件を出し、条件における安全使用を要求し、ユーザーが それはできないとかできるとか言ってやると。それが国際の規格などで言うAccessibleで はなくてTolerableな状況ですね。それはいろいろな条件の中でTolerableであるところを 決めていくわけです。  ところが、日本ではほとんどそういう環境にないから、Tolerableである状況を設定する ことができていないわけです。そうすると、ユーザーがそういう条件を出してこないから、 メーカーはある想定をしてリスクアセスメントをせざるを得ないわけです。そうすると、残 留リスクのことがあって、これが大きいときには、先ほど私が言った3項の少し先のことを 言えば、どういう頻度だとか何とかというのは、メーカーがこう設定したということを残留 リスクがあるとある程度、そのときの説明は我々はこういう頻度と設定したと、あるいはこ ういう人が使うということは設定したと、ハザードはこうだよということを説明せざるを得 ないでしょうと。そうすると、そういうことで残留リスクとして大きいと見たのですねと受 け取れば、ユーザーは「実際は違うんだけどな、うちはこういう条件でやるのだけど、それ でやり直してみましょう」という齟齬がある。  でも、それだと必要な情報の内乗りしかこないから、宮川委員が心配されるように少し枠 を広げて、ユーザーが実際やる条件でやるともっとリスクが大きくなってしまうこともある かもしれないから、そこをどうするかという問題はあるのですが。 ○向殿座長 それは、宮川委員と同じことを言っているのです。 ○石坂委員 だから、出してくれなければ、メーカーの条件で出したのだから、ユーザーが どう使うかの条件が違うから、チェックし直すためには。 ○宮川委員 だけど、そこをとことん出せという話に行くのか、どういうところでこの程度 だったらそうだなというところで折り合いを付けるかの話なのです。 ○向殿座長 石坂委員が先ほど説明した話と、言っていることは同じではないですか。 ○佐藤委員 その辺は契約上の問題で、何もかもが最初から全部出したって、ありがた迷惑 なところがあるので。 ○向殿座長 判断基準としては先ほど言ったように、必要に応じて出す必要があると。言っ ていることは同じということはわかりました。そうすると、どこまで出すかという話になる のですが、あまり出しても有効性もないだろうし、無駄だろうし、出したくない所もあるか もしれないという話になるし、もらうほうとしては自分のリスクアセスメントが有効な情報 がほしいということで、この論点の落とし所はどこなのか。 ○井上委員 「労働災害の重大さ」とあるところの、労働災害の発生確率の基準が、メーカ ーとユーザーで実際変わってくるのではないかと思います。この表の中でも、同じ項目でも ユーザーとメーカーで評価が変わってくる可能性があるのかなと、いま話を聞いている中で 思ったのです。その辺をある程度統一した判断、基準が必要なのかなと、ここで思っていた のです。今後細かく決めていかなければいけないことかもしれませんが、その辺が必要なの かなということが1つあります。  また別の話なのですが、例えばこれをユーザーがメーカーからもらったとして、ここまで もらったら、実際ユーザーがリスクアセスメントをしなければいけないのですが、ここまで もらったら本当にするのかなと。たくさんの情報をもらって、自分に合わせてという、先ほ どの話の繰返しになりますが、実行性というところまで入れると、やるのかなというのが疑 問に思うところがあります。 ○宮川委員 いま判断基準を決めなければいけないみたいな話をされましたが、判断基準を 決めるというか、そもそも「リスクアセスメント」という言葉は最近使われましたが、言葉 がないときからリスクアセスメントをやっていましたよね。最近、豊田労基協会会員の中で よく話すのは、飛行機が墜落したら死ぬと。何で飛行機に乗るのかというと、落ちる確率が 低いからですよね。確率の程度を組み合わせて、危ないけれど、この危なさなら許容できる と。最初の程度と確率をリスクと定義をして、この危なさならいいかというところを、ガイ ド51の「安全」という言葉で定義している。昔は、危なさを評価して語るプロセスが全部 主観的、情緒的、曖昧にやっていたのですが、リスクという言葉を用いて、災害のストーリ ーに従って評価し、語ることを決めたわけです。そして、もともと許容リスクは人によって 違うから、会社の中だって新入社員とベテランと職制と、ひょっとしたら社長とも違うから、 お互いに話をしてリスク認識を共有化しましょうと。今回問題になっていることは、メーカ ーもユーザーも含めて議論をして、リスク認識を共有化しましょうということで、共通認識 を得られる状況をリスクコミュニケーションが図られている状況と言うのではないかとい うことです。  リスクの定義で何が新しいかというと、いちばん新しいのは確率のところなのです。程度 は大体昔から似たようなものです。いままで、安全を確率で語ることはタブー視されていた のです。 ○高岡委員 そうですね。 ○宮川委員 「確率の話をすると「お前何を言ってるんだ」ということで、語れなかったの です。今は確率を勘案して語ろうではないかと。その確率はと言ったら、危険状態や危険事 象の発生確率であり、且つ回避の可能性であり、これを見てやるのだということです。資料 3−2を見ると、全部古いままのリスクアセスメントになっていて、これでは危なさの語り ができない(主張できない)なということです。  こういうことですから、時間がかかる。特に時間がかかるのは災害の程度です。これはド クターだって難しいです。せいぜい3段階ぐらいです。重傷か軽傷か、真ん中を取って中程 度かぐらいです。休業か不休か、休業か障害か等、ドクターに判断しろといっても無理です よ。ドクターも判断しないですよ。そういうことを要求しているのです。そこで時間がかか るのです。 ○向殿座長 そうすると、議論としては、宮川委員の立場から言うとどのぐらいのレベルを 出したらいいとお考えですか。 ○宮川委員 前回から言っていますように、災害の危険源は何なのか、その危険源はどこに あるのか。先ほど言ったように、上にあるのか下にあるのか、どこにあるのか。その危険源 を主語にして危険状態がある。そのときにどんな危険事象が起きるか。逃げられるのか逃げ られないのか。ケガの程度。そのストーリーで、メーカーが分析、見積もった情報をいただ ければいいでしょう。メーカーだって経験していないものもあり、経験していないものは 我々が追加すればいいし、我々が経験していないものはメーカーから教えてもらえばいいし、 結論から言えばそれでいいのではないかと思います。 ○向殿座長 それは、全部やると相当の数になりますよと。そこで、どこで切るかという話。 ○宮川委員 そのときに、先ほど言ったような1つの判断もありますよと。 ○向殿座長 問題はどこで切るかという話ですよね。 ○安達副主任中央安全専門官 資料4の2頁だと思いますが、「検討の方向性」の3の必須 である情報とユーザーの要求に応じた情報、いまの実効性の話と確率のところは、最終的に はある程度折合いをつけなければいけないのかなというのが1点です。  「主な意見」の1のアの「一方」という所ですが、機械包括安全指針別表第5のすべての 項目を提供すべきという意見があった点については、指針では警告ラベルとか取扱説明書と か、教育で何とかしてくれといった方法で、何かしら提供すると。これは厚生労働省として も別表第5の取組の旗を下ろすわけではありません。ただ、論点4で検討する提供の方法で 情報の一覧性とかユーザーですぐ活用できるものということも重ね合わせて、法第28条の 2につなげるということで、両方うまく共存するのか、一対一で同じものでやるのかという 視点も出てくるのかもしれません。これが必須かどうかということと、少しリンクしてくる のかなと思います。 ○向殿座長 こう見ると、論点2で大事なことは、前に言われたどこで切るか、どのレベル を出すかという話になるのですね。そうすると、3の必須である情報とユーザーの要求とい うのは、あるレベルでこれ以上出してくれという場合は契約などでやる可能性がる。しかし、 最低限はここは出しましょうというときは、はっきりしましょうと。基本的にはそれでいい のではないかと思うのです。  では、どこまで出すかと言ったときに、私の知っているリスクアセスメントの表は、1つ の機械だけでも何十枚になっていますが、それを出部出されて、ユーザー側としては危険源 として、その危険源で許容不可能なところまで至るような危険源は、一応全部出すと。それ に対してどういう手を打ったかを出して、メーカー側が想定した条件内で、残ったリスクは こうですよというのを出すというぐらいでいいのではないかと思うのですが、妥協案として どうですか。 ○高岡委員 世の中全般に通じる規定にしようとすると、2段階にせざるを得ないと思うの です。斎藤委員がおっしゃったように、このリスクアセスメント評価表を受け取って使いこ なせるユーザーは相当少ないと思いますから、ここで残留リスクとして抜粋しているレベル で十分だと思うのです。  ただし、この中で欠けていることは、騒音と言っても何デシベルなのかわからないし、ス テージと言っても何メーターなのかわかりません。納入後見ればわかりますが、それは設計 段階ではわからないですね。  重大だなと思うのは、リスクアセスメント評価表の9で、運転中の材料供給車が、ローラ ー駆動用チェーンに袖口が絡み、腕まで巻き込まれると。カバーを付けたので、「可」とし ているのです。「可」なので、ここの残留リスクには載ってこないのです。でも、これは保 全のときにカバーを外せば、当然袖口が巻き込まれますから、それは載せないといけないな という具合のものです。 ○佐藤委員 運転中だから載っていないのでしょう。 ○高岡委員 そうなのですが。 ○佐藤委員 左の項目の、もっと下にある。 ○高岡委員 でも、この抜粋の中には載っていません。 ○佐藤委員 これは一部だから、全部ではないから。 ○宮川委員 許容できないリスクについて、防護策を講じて許容しましたと。最初のリスク アセスメントの結果を出してくれれば、高岡委員のいまの解になるのです。 ○高岡委員 それがあればいいのですね。 ○向殿座長 だから、確かにどこまでかは条件によって違うけれど、大事なことは、この危 険源で不可になる可能性があるのならば、一度出していただいて、メーカーとしてはこうい う手を打ったから、ないですよ、ありですよと、それでいいのではないかと思うのです。細 かいものを出してもしょうがないから、本当に大事な、第1レベルで。 ○高岡委員 それでやってみて、お互いにユーザーもメーカーも賢くなってきたら、やり取 りをする中で、石坂委員が言われたようにリスクコミュニケーションの中で、だんだんとレ ベルが上がってくるのではないかなと思います。 ○佐藤委員 そういう話ができるのは、大変いいと思います。 ○宮川委員 逆に、それに向かっていろいろなことをやっていかなければいけない。だから、 いまやれないからやらないのではなくて、それに向かってやっていくことが大事だと思うの です。 ○高岡委員 これを受け取ったら、騒音と言っても何デシベルですか、という質問が交わさ れると。 ○石坂委員 それは、そのデシベルを出さないと駄目ですね。 ○向殿座長 そういうことで、この辺は一応2段階ぐらいにしておいて、最低限必要ないま 言ったようなものは出していただくと。それ以上出したい場合は、契約とか、メーカーごと、 ユーザーごとの交渉ということにしましょう。時間がなくなってしまうので、論点2に関し てはこれぐらいでよろしいですか。     ( はい ) ○向殿座長 それでは、論点3にいきましょう。いまのと連携しますが、機械の危険情報の うち、残留リスク情報として必要な項目は何かということです。これはいまの話とほとんど 同じですが、いかがですか。宮川委員が前から主張されていたのは、事故におけるプロセス をちゃんと明らかにしてほしいということですが。 ○宮川委員 そうです。何のためにリスクアセスメントをやるかというところの、いちばん 重要なキーワードなのです。危険源の同定と言っても、ピンとこない。先ほど言ったように、 災害は大企業も中小企業も零細企業も関係なく、リスクの定義に従って起きる話なのだから、 この手順で考えましょうと。  私が現場でよく言っているのは、現場でこの手順で考えることを絶対やりなさいと。あと の見積りは、赤信号もみんなで渡れば恐くないと。悩んだ時は上の人が決めなさいと言って います。高岡委員の所や弊社などは情報量がたくさんありますから、結構リスクを高く見積 もるケースはあります。中小企業へ行けば、我々からすれば高いリスクだけれど、中とかそ れ以下に見積もるケースはあります。でも、それはしょうがないのです。その会社の中でみ んな知らなければ。レベルアップは世の常ですから、そこは長い目で見て、レベルアップす るようにしていきましょうと。  リスクの定義で見るということは災害を語るということで、リスクを語るということはそ ういうことなのだということは共通認識しておかなければいけないし、リスクコミュニケー ションはメーカーとの間でも共通しておかなければいけないルールだと思うのです。野球と かゴルフで交流試合ができるのは、道具が一緒でルールが共通だからなのです。いまの状態 は、機械は共通なのだけれど、ルールがないのです。そこのルールをきちんとしましょうと いうことです。 ○向殿座長 これは先ほどの議論とほとんど同じで、まず危険源をはっきりさせなければい けないと、これは当然です。プロセスで言うと、頻度もあるし、ケガの状態もあるし、逃げ られるかどうかというステップで話をしていけばいいと。そうすると、いちばん大事なのは どういうケガになるかという、ひどさは非常に重要なファクターで、それに対して頻度が出 てきたら、逃げられるかどうかという確率の話が展開されていくわけです。それで残ったリ スクはこうだという話、それを評価して、こういう手を打って、またこう残りましたという のがリスクアセスメントの情報だとすると、前の結論のとおりもともと危険源で人が死ぬよ うなもの、かなりひどい被害になるようなものについては全部出してくれと。いま言ったス テップを、メーカーがやったリスクアセスメントのストーリーはちゃんと示して、どういう 残留リスクが残ったかを出してくれという、先ほどの話とたぶん一致するのだと思うのです が、これについてはどうですか。 ○高岡委員 もう1点は、残留リスクと判断した根拠ですね。何をもって残留リスクだと評 価したのかを明示してもらわないと、ユーザーとしては使えないと思うのです。シビアリテ ィは高いけれどポシビリティが低いからなのか、シビアリティは低いけれどポシビリティが 高いからなのかによって、相当対策は違ってくると思いますから、何をもって許容可能とし たのか、そこは明示しないといけないと思います。 ○向殿座長 そうすると、例のマトリックスを明らかにしてみたり、その状況を出さない限 りわからないわけですね。 ○宮川委員 高岡委員が言われたのは、見積もったリスクの妥当性の話だろうと思うのです。 許容可能かどうかとはまた違うのです。 ○向殿座長 リスクのレベルというか、それを出した根拠でしょう。 ○宮川委員 はい。 ○向殿座長 根拠というのは、定義によると頻度と確率と、ひどさと確率とすると、どうい うときリスクレベルIIにしたか、どういうときIIIにしたかというベストマトリックスの表み たいなものを明らかにしてもらって、それでうちはIIにしました、IIIにしましたというのを 示していただければ、ユーザーとしてはありがたいという話ですね。 ○宮川委員 リスクの妥当性を高岡委員が言われているならいいのですが、許容かどうかと 言ったら、これはそういう話ではなくて、ある意味においてはベンチマーキングの話なので す。いろいろなものに比べてこんなものですよと、こういうことを言われているのだと、そ の整理をしたと。 ○向殿座長 高岡委員が言われているのは、妥当性ですよね。 ○高岡委員 妥当性もありますが、許容可能かどうかを判断するのは、別に社会的な線引き があるわけではなくて、それはメーカーが判断することですよね。ですから、メーカーが何 をもって判断したのかということが必要なのかなと思うのです。もちろん妥当性も必要です が。 ○向殿座長 リスクアセスメントのステップを考えると、リスクIIIは許さないけれど、リス クIIはOKということをメーカーが決めなければならない。 ○高岡委員 許容可能かどうかの線引きをIIに置いているのか、IVに置いているメーカーも あるかもしれません。それを明示する必要はあるのかなと思うのです。 ○宮川委員 それはまさにこういうプロセスで私は判断したのですと説明してもらえばい いし、CEマーキング認証の本質的な精神はそこなのではないですか。 ○井上委員 労働安全衛生法からは外れてくるかもしれませんが、自動車を買った場合、ど んなリスクがありますかという情報をもらうかどうかという話が、具体的に機械に置き換わ っただけだと思うのです。実際自動車が事故を起こした場合、いろいろな事故の状況がある のですが、全部情報を開示するかどうか、それは路面状況にもよるし、天候もあるし、その ときに履いていた車のタイアの状況とか、最初から付いていたタイアでないものに履き替え ていたからとか、いろいろ原因があると思いますが、そういうのを渡しなさいという話が大 きくなってきつつあると思うのです。その中で、1つ前の話ですが、必須な情報かそれ以外 の情報かというところ、例えば交通ルールを守らなかったらというところから始まって、交 通ルールを守っても事故は起きるはずなので、その辺の中身で具体的に言ったときに、本当 にどこまで譲歩するのかは、私の中で身近な例で車かなと考えていたところはあるのですが、 それ1つ考えても非常に難しい。道路を走るだけではなくて、いろいろな所で使われるもの が全部包括されているような案件なので、たぶん皆さん悩んでおられるところだろうと思い ます。具体的に1個の機械だけで見ていっても、ものすごく難しいなというところがあると 思います。 ○向殿座長 ある意味、それはあえて覚悟でやっていて、機械の場合は危険源というところ からそれをやる。しかも、ユーザーはその1つだけではなくていろいろな機械を集めてきて、 自分でラインを組んで、また新しいリスクができてということを考えていますので、マッチ したものに対してどういう危険源があるか、リスクがあるかがわからなければ、組み合わせ たときにまた新しい危険源が出るのかよくわからない。だから、その情報がほしいというの がストーリーの中の流れですね。 ○森戸主任中央産業安全専門官 資料3-2の中で、危険詳細、危険の対象、危険状況、危険 事象、被害の状況とあって、その次にリスクの見積とありますが、これについては先ほどあ りましたように、ユーザー企業によっていろいろ違うかもしれないという話がありました。 そうなると、リスクアセスメントをするときに、この情報が本当にユーザーにとって必要な のかどうか。ユーザーが判断するものというのであれば、参考にはするのかもしれませんが、 必ずしも必須とは言えないのではないかと思います。ユーザー企業の中でも、リスクアセス メントのときには当然使用者側と労働者側が危険のひどさをどのように見るのかは、相互の 話合いの中で決まってくる部分が非常に大きいと思うのです。ですから、メーカーに義務を 課すのか課さないのか、必須のものにするのか、参考にくださいとするのか、制度として設 計する際には非常に大きなことになるのです。  ここではあくまで、ユーザーがリスクアセスメントを事業場で行う際に本当に必要な情報 はどんな情報ですかというところは、しっかり制度として押さえて、追加するものはメーカ ーとユーザーの間で、契約の中で話し合っていただければと思います。そのように考えてい ただいて、どこまでが必要なのかについてご議論いただきたいと思います。 ○向殿座長 おっしゃるとおりで、いままでの議論はどういうことを言っているかというと、 メーカー側がどのような根拠でこういうリスクを「可」とか「不可」にしたかを知りたいと。 そうすると、どういう条件でということを知らないと、結果を見たって我々のと違うから、 メーカー側の条件がどうで、どういう根拠で残留リスクがこうだと判定したかを知りたいと すると、これが出てくるとものすごくわかるというのが、いままでの流れですね。当然、ユ ーザー側はこれをこのまま使う気はないにしても、メーカーはどういう根拠でリスクIIとか IIIとしたのかを知りたいと。どういう条件の使用状態を想定してやったかを知りたいと、そ れに役に立つという話ですね。 ○宮川委員 そうですね。リスクアセスメントをやるとしたら、メーカーもこれだけ見て、 ユーザーも同じような点数を付けるとか、そういう話をしているわけではないので、メーカ ーの妥当性とか設定要件とか、妥当だったらそれはそれでいいわけで、違う所があったら議 論してやっていくという話なのです。 ○向殿座長 森戸主任の意見は、そんなに違うのならば、こんなに細かいことを出す必要は ないだろうということですね。 ○森戸主任中央産業安全専門官 必須とするかどうか。 ○向殿座長 必要である必要はあるか、ないのではないかということでしょうね。必須かそ うでないかに分けたときに。 ○高岡委員 必須なのは、抜粋の残留リスク情報をもう少し定量化して、わかりやすくした ものが必須だと思うのです。 ○向殿座長 その辺だと、かなり動きやすいですね。 ○佐藤委員 たぶん、そういうところではないですかね。本当は、ユーザーとメーカーと、 どの評価基準を使ってやるかを契約時に決めておかないと話がまとまらないので、両方で話 し合って決めて、承認して納めるということをしないと。 ○向殿座長 わかりました。 ○宮川委員 困るのは、メーカーの立場でなければわからないところがあるのです。事故の 発生確率とか、そういうものはメーカーでないとわからないわけです。 ○向殿座長 その情報は知りたいですね。 ○宮川委員 それはないとわからないですよ。 ○向殿座長 それはそうですね。 ○宮川委員 それはメーカーでないとわからない。リスクアセスメントを導入した初期の頃 は社内のメーカー的立場にある生産技術部の連中もこの点が判らなかった、最近は言わなく なりましたが、そういう議論が出てきました。いま言った事故の発生確率とか、そういうこ とはメーカーでないとわからないだろうなと。 ○向殿座長 宮川委員がおっしゃるのは、発生の確率みたいな情報は、必須としてあったほ うがいいということですね。 ○宮川委員 もう1点、資料3-2で「危険対処者」と書いてありますね。これはいいのです が、メーカーの立場で言うと、これはいけないのではないか。項目はいいけれど、不十分な のです。前回も問題になりましたように、製造段階、運搬段階等廃却までに各段階があるわ けです。それも含めてメーカーは決めるわけです。例えば、トヨタでも、トヨタ標準でロボ ットにはホークガイド(フォークリフトのフォークを差込む治具)を付けてもらうようにし ているわけです。メーカーがロボットの生産工程の中には積出工程があって、ホイスト付ク レーン等が設置され、クレーンを使用して積出しています。しかしユーザーの現場に行った ら、ロボットが行う作業は、昔は手作業でやっているわけですから、そこにはホイスト付ク レーンなんか無くて、フォークリフトを使用して降ろすわけです。従って極めて不安全な危 ない状態ですね。この為トヨタでは、トヨタの安全仕様としてフォークガイドを付けようと いうことをトヨタ標準で決めましたがが、こんなものは本当に許せるかみたいな話はあるわ けです。  メーカーは製造から廃却までの各段階を考慮してリスクアセスメントを行い、その結果と 措置について、情報を提示しなければならない。関わりのない段階の事業者からは、この段 階では不要だからと言って仕様変更やコスト低減を求められるケースがあると思う、その時、 こういう理由で仕様、構造としたとしゃべらなければいけないのです。そういうものがある ので、ただ危険源情報だけでは不十分で、どういう根拠で見たのかというのがないと。だか ら、逆に言えばメーカーは困るのです。 ○高岡委員 宮川委員がおっしゃったメーカーでなければわからない情報というのは、例え ばB社が提供を受けた残留リスク情報の詳細という表があって、そのいちばん下に「保守 点検及び異常のときに、NC装置の暴走により機械が暴走し、不用意な事故になる」とある のです。これを言われると、ユーザーとしてはものすごく困るのです。レベルの高いユーザ ーであれば、このノイズ耐性は何ボルトなのですかと質問したり、自分の工場のノイズを測 定したりできますが、そこまでレベルの高いユーザーは数少ないと思いますから、中小企業 でこれを言われてしまうとお手上げですね。暴走することはわかっているのだけれど、暴走 するかもしれないですよと言われてしまうと、非常に困ると思うのです。 ○向殿座長 そうすると、また元に戻りますが、資料3-2にあるように、頻度やひどさはあ る程度出していただかないと、ユーザー側としては情報不足で、自分のリスクアセスメント がちゃんとできないと。だから、必須として頻度やひどさは入れてほしいと。 ○石坂委員 それはユーザーがリスクアセスメントをやるという意思がはっきりして、その 求めに応じて提供する必要があるとか、提供する努力義務を負うとか。いまはユーザーだっ て努力義務で、必須ではないですから。それに対して、少なくともメーカーの責任として最 低限このぐらいの情報は、有無を言わさず提供しなさいと。でも、それ以上ユーザーがやる 気で、そういうことまで遡ってしなければわからないというのだったら、その求めに応じて 提供すると。 ○向殿座長 そこは一致しているのですね。最低限何がというところでもめているわけです ね。 ○石坂委員 そうです。そこの最低限をあまり広げてしまうと、それだったらユーザーも努 力義務ではなく絶対にして、全体の体系としてそういうふうに組み立てないと、ちょっとお かしいという気もするのです。 ○黒澤委員 重篤な災害が想定されるということが、アセスメントをする最大の理由だと思 うのです。もう一方で、頻度が多くて、小さなケガだけれどたくさん起こるということも、 現実問題としてあるのです。両方の面があって、どちらが良し悪いということはないのです けれど、優先するのは重度の災害でしょう。死亡災害とか、それにつながるような災害はい けないということですから。 ○向殿座長 それも大体一致しましたね。重篤なものから始まって、そのときに必須条件と して、メーカー側は頻度とか、ひどさは大きい順から出すと。確率に相当するもの、逃げら れるかどうかということで相当する情報を、必須情報として入れるか入れないかというとこ ろに絞られてきましたね。 ○宮川委員 そうですね。あと、一瞬の間にどんなアクセスをするかは、当然メーカーでな いとわからないケースがありますから。高岡委員が言われたことも、ある意味では重要なこ とだと思います。 ○安達副主任中央産業安全専門官 必須かどうかということでご議論いただきまして、あり がとうございました。繰り返しになりますが、機械包括安全指針がありまして、これを全体 的に取り組んでいくという旗は決して下ろすわけではありません。今回は、その中でも次の 論点4がありますが、提供の方法がありまして、いろいろな形で本指針の取組を進めていく 中で、さらにユーザーが取り組みやすいというか、使いこなせる情報として、一覧性をもっ て出すということです。  一覧性という情報を考えると、どうしてもある程度情報量が限られるので、先ほど井上委 員からありましたように、分厚いものが出たら、すべて対応できるかということもあります し、レベルに応じるという話もあるかもしれませんが、一覧性を念頭に置いて、論点4のほ うもご議論いただければと思います。 ○向殿座長 いまは、どこまで出すかはUnknownなところがありますが、最後に一覧表と 一覧性をもって出すことを考えると、あまり細かいものを出してもしょうがないので、論点 4にいきましょう。  論点4ですが、残留リスク情報の機械の危険情報は、どのように機械ユーザーに提供すべ きかということです。これは先ほどの話だときっちりしたフォーマットというよりは、少し 柔軟性のある使いやすいひな形を与えておくこと、明瞭に一覧できるものということで、あ る意味では取説とは別個に作って添付しましょうというところまでは、大体一致していると 思います。 ○安達副主任中央産業安全専門官 先ほどの予備的調査の中の意見で、もらった中小事業者 の感じでいくと、何をすぐやればいいのかわかるものが欲しいと。そういった意味では、一 覧性とか優先順位の高いものは、必ず入れておかなければいけないなというご意見もありま した。 ○黒澤委員 私も一覧表を添付するのは非常にいいことだと思います。ただ、一覧表にする には機械の種類を区別して、それによってリストアップしていかないと駄目だと思うのです。 例えば、プレスならプレスの機械、旋盤なら旋盤と。いろいろな機械があります。また一品 料理的な機械もありますから、一台あるいは一セットしか造られない機械もあり、それぞれ 特徴があるのです。ですから、機械機種ごとに一覧表を想定してかからないと、まとめて一 緒というわけにはいかないと思います。プレスはプレス、旋盤なら旋盤、マッシングセンタ ーとかです。機械の種類に応じて仕分けをしてまとめていかないと、一覧表といっても何で もかんでもみんな載せると、大変なことになってしまうという感じがします。機械の種類に よって危険情報はかなり違うのです。 ○佐藤委員 その件は、私も全く賛成です。先ほどのHSEの話ではありませんが、ケース スタディ的に、それぞれ機種によって特徴が違うということがあるので、できるだけ多くの 事例というか、参考例という形で提供しないと、ユーザーとしても理解しにくいのではない かという気がします。 ○向殿座長 機械の特色を作り出そうと。 ○石坂委員 ただ、どのぐらいまで機種の細かさでどのように整備していくかは、少し気が 重くなりますので、私がやるわけではないかもしれないけれど、大変だなと思います。結局、 いままでの議論は取説に折り込まれたいことでは埋もれていってしまうし、抜けもあるかも しれないから、そこを危険情報としてリストアップしましょうという精神に戻るしかないの ではないかと。そうすると、それなりにそれぞれの機種に合って、それぞれのやり方で出さ れると。  そういうことを回していくうちに、だんだんいろいろな業界ごとにリスクアセスメントの ガイドが整ってきて、やれるようになってくるのではないかと思います。そうなっていれば いいというのは大賛成なのですが、できるかなと。 ○佐藤委員 実際問題として、それ以前にそういうことを受け入れる姿勢がユーザーにある かどうかのほうが重要なのです。その姿勢が、まだ日本ではユーザーにないのではないかと いう心配があるわけです。ですから、今回は譲渡された機械という話になっていますね。本 当は譲渡されていない、いまある機械でリスクアセスメントの練習をしなさいという指導を するべきだと思うのです。新しい設備を入れないと、それはやらなくていいよと言っている ようなもので、それはおかしいのではないかと。時限でここまではいいけれど、これ以後は 既設の、イギリスの例ではたしかそうなっていたと思うのです。2015年からは、既設の機 械もリスクアセスメント云々という話をしないと、すれば底上げができるのだと思います。 その辺で、古い機械で練習ではないですが、そういう指導が国としても必要ではないかと思 います。 ○向殿座長 これは別の視点で定着させるという意味で、どこまで必要なのかと。 ○佐藤委員 そうしないと、いまいろいろやっていますが、せっかくやって出しましたとい っても、「これは知らないよ」と「ああそうですか」と受け取っただけで終わりのようなこ ともありますから。 ○石坂委員 今回の議論からは外れますが、日機連も中心になって、13個別業界でメーカ ー側としてのリスクアセスメントガイドを作ったわけですが、いま何がないかというと、ユ ーザーの事業場側の本当に役立つリスクアセスメントガイドはないのです。だから、それな りにやっていると。意欲的な所は宮川委員にご講演いただいてご指導いただくというような、 そこまで意欲的な所は、高岡委員のようにずっと以前から進歩に合わせて社内体制を整えて きた所はできるのですが、これからどうしようという所はどのように取りかかっていいか。 そういうことを考えるコストというか、そこは非常にハードルが高くて、もう少しうまい促 進策が必要なように思います。 ○向殿座長 少し話があった定着させるという意味では、また別途考える必要があると。い ま論点4で必要なのは、残留リスク情報を機械ユーザーにどのように提供すべきかというこ とで、一覧表はいいけれど、これも度合いですが内容の細かさという話になって、機械ごと に変えなくてはいけないということになると。そうすると、しょうがないから共通に必須項 目と、あとは機械ごとに変えてもいいという分かれ方しか、ここでは答えが出てこないと思 います。最低限必要なのはこれとこれであると。あとは機械ごとに業界で検討したり、実習 や実験を通しながらだんだん決めていくという話になるのだと思います。 ○宮川委員 A規格、B規格ではないですが、要求事項は一体何なのかと、おおむねの要求 レベルは何なのかというものがまずあって、一覧表にできるものは一覧表にしていくと。そ ういうことなのではないかなと思うのです。 ○向殿座長 一覧表を作るとすると、全部共通のA規格に相当する必須項目と、あったほ うがいいというもの、あと個別のものということを考えたほうが、一覧表でもいいでしょう というのが皆さんのご意見ですね。  それでは、論点5にいきましょう。今度は、機械の危険源情報が提供される機械は、要す るにどこまでやるか、どういう機械までやるかということです。また、残留リスクは調べた けれど、ないものはないと書くか。残留リスクはありませんと書いてあったら恐いですね。 ○宮川委員 それはないでしょう。メーカーは書かないでしょうから。 ○向殿座長 しかし、何も書いてないと、やったのかやっていないのかわからないので、や った結果がないのか。 ○石坂委員 メーカーもそういうことは書かないでしょう。 ○宮川委員 「許容できないリスクはありません」とか、「最低条件をクリアする危険源は ありません」とか、そういうことは書いたほうがいいですよね。 ○向殿座長 書いたほうがいいですよね。やったけれど、いまのところ見つかっていません というニュアンスで。「絶対ありません」だと、これは何が起きるかわからないから。 ○佐藤委員 「以上」みたいなものですね。終わりと。 ○向殿座長 そうですね、何もなければ「以上」と。それから、どのような機械をどこまで やるべきか、要するに特定機械というか、決まったものだけにするのか、作業の現場で使う ものはすべてという話だと、EUの機械指令とか、ある意味では機械包括的安全基準と言っ ているからには包括的に、作業の現場で使う機械は全部対象にしようと考えていいのではな いですかね。 ○斎藤臨時委員 この範囲で除外すべきという意見で言うと、機械包括安全指針が根底にな ったとするならば、機械包括安全指針は限定していないので、これに当てはまると。それが 対応しているのと、クロスするとなれば、すべての機械ということになるかと思います。 ○向殿座長 これはいいと思います。残留リスクがない場合は、いま言ったように「絶対あ りません」などと書くのは非常に難しいので。何と書くのか、当方のリスクアセスメントで 言うと、「注意すべき残留リスクが見つかりませんでした」と。 ○宮川委員 「許容不可能なリスクはありません」とか、「大きなケガを生ずるような危険 源はありません」とか。 ○向殿座長 いまのところ見つかりませんでしたと。 ○黒澤委員 肯定的な表現をされるといいと思います。積極的にやったけれど、見出せませ んでしたと。そういう表現なら受け入れられるのではないですか。 ○向殿座長 ということで、第1については大体議論は終わったことにします。第2ですが、 時間がだいぶ迫ってきましたので。 ○安達副主任中央産業安全専門官 それでは、資料4の9頁です。大きな論点の第2という ことで、「機械の危険情報の提供制度の効果的な運用について」ということです。各委員か ら寄せられた意見を簡単にまとめてありますので、ご紹介します。また次回までにお気づき の点があればお願いします。  1つ目としては、メーカーの取組み促進方策ということで、いろいろご意見をいただきま した。イにありますように、人材の養成、特に中小企業に対するコンサルティングのような 支援、ウにありますように、論点4にあった情報提供の必須事項を決めること自体が有効で はないか、また、ガイドライン作成のお話がありました。  2つ目は、ユーザーに求められる取組み・支援等です。主な意見ですが、イにありますよ うに、「ユーザーからも積極的にメーカーに対し情報を要求していくことが必要であろう」 ということです。これは、おそらく必須項目以外の項目が該当するのではないかと思います。 また、ユーザーにおいても人材の育成、あるいは機械安全の妥当性を評価できる人材に対す る認定制度というか、全体的な底上げを図る必要があるのではないか。ウにありますように、 「機械発注時にユーザーサイドから安全使用をメーカーに提示する」とか、こういったコミ ュニケーションを進めることが提案されております。  10頁です。3つ目の論点ですが、想定していないリスクに対する対応ということでした。 現行では、なかなかユーザーからメーカーへ情報をフィードバックすることが行われていな いのではないかというご意見もありました。そこで、例えば行政が持っている「労働者死傷 病報告書」のようなデータを、データベース化することが望まれるとか、ここには書いてあ りませんが、災害発生情報以外にヒヤリ・ハットといった情報も、機械災害の設計段階の情 報として役に立つのではないかというご意見もありました。  時間の関係上、簡単にご説明しましたが、またお気づきの点があれば、次回以降お知らせ いただければと思います。 ○向殿座長 いまの議論でもかなり出ていますね。特に中小企業のメーカーがやる気になる ような促進策がないかということで、いくつかご意見が出ているということです。また、ユ ーザー側も慣れていないユーザーがたくさんいますので、人材の育成も含めて必要な支援策 は何かということで、いくつかご意見が得られたと。  最後に、フィードバックについては先ほどコミュニケーションという話が出ていましたが、 大事なのはそこだと思います。いかにユーザー側のいろいろなヒヤリ・ハットも含めて事故 情報を設計側にフィードバックするか。行政側もうまくデータを集めてという支援策が必要 だという意見ですね。何かこれ以外にありますか。 ○宮川委員 石坂委員がおっしゃったように、実効性については、まさにここでキチンとし ておかないと、いろいろな制度をつくっても屋上屋を重ねるようなもので、情報を出したっ てきっと処理するには、人の問題はものすごく大きいので、いままでやってきたこと(リス クアセスメントの展開に関して)も含めて、ちょうど良いタイミングだと思うのです。いま までは違いを説明しなければいけないから、手法論を中心にやってきたと思うのです。それ はしょうがないのです。  では、本当に何のために何をやるのかというところを議論していかなければいけないし、 いままでの再発防止型の安全施策を、リスクアセスメントという未然防止型に切り替えたと きに、どういう見方をするのかと。前回、安全状態、安全行為と言っていましたが、これは 再発防止型で、未然防止型で見ると不安全状態は許容不可能なリスクよる災害とか、不安全 行為は、合理的に予見可能な誤使用による災害とか、そういう見方、表現をしないといけな い。冒頭の説明の中で、安全装置の欠陥による災害とありましたが、欠陥だって許される欠 陥と許されない欠陥があるのだとか。また安全衛生マネジメントシステムとリスクアセスメ ントは別個という雰囲気があります。こうした面での整理も必要であり、2つの見方がある ような気がするのです。 ○石坂委員 例えば、何か事故が起こったときのフィードバックの仕方だって、単に事故原 因をやって、再発防止というのは従来もやってきたことなのですが、今度のリスクアセスメ ントで「リスク」というものを入れたのは、将来起こるかもしれないことに対して予防的に、 事前に抑えるということ。それでも事故が起こったということは、どうして予想できなかっ たのかというところの反省に戻らないと、このシステムの改善にはならないのです。だから、 こういうものをやっていくときのやり方は変わってくるはずなのです。1つひとつそういう ものを整理しておかないと、次のステップにグレードアップする必要があると思います。 ○向殿座長 これはユーザー側もメーカー側も、行政側もそうですが、再発防止から未然防 止へという話ですね。それから、リスクベース、リスクでものを考えるという思想的な転換 がここで起きていると。そのための潜材育成もきちんとしないと、民間も追いていけなくな ってきているところがあると思います。 ○石坂委員 それから、だんだんわかってきたことは、そういうやり方とかガイドでも何で も、そういうことをしてやり方を普及させる努力をもっとしないといけないですね。 ○宮川委員 本質的なところは、何のためのリスクアセスメントかというところがわからな いと、情報処理はできないのです。メーカーからのヒアリング結果のコメントを見ても、ほ とんどわかっている様には思えない。 ○向殿座長 そうですね。まだいろいろあるかと思いますが、是非いろいろご提案を出して いただいて、ルールは作ったけれど、ザルにならないように、実効性のあるものにするよう にやりたいと思います。  それでは、資料5が残っております。報告の骨子案ですが、これもご説明をお願いします。 ○安達副主任中央産業安全専門官 資料5をご覧ください。第1回、第2回でご議論いただ きましたので、第3回には報告書をお出ししようと考えておりますが、大体こういう形で考 えています。  1は「はじめに」です。2としては「機械安全に係る現状と課題」、災害の発生状況とか、 今日お示ししたリスクアセスメントの実施状況、あるいはアンケート調査等から見た現状と 課題のようなものを浮き彫りにしていきたいと思います。  3で、今日ご議論いただいた論点整理を書き込んでいきたいと思います。今日も実効性の お話や情報の範囲などいろいろご議論いただきましたので、ここをまとめていきたいと思い ます。事務局でとりまとめて、後日、事前に資料をお送りしたいと思います。  4としては「今後の課題」ということで、少し長期的に見ていかなければいけないような 課題もまとめていきたいと思います。以上です。 ○向殿座長 どうもありがとうございました。こういう形で、次回辺りにまとめた提案をこ こで議論していただく予定です。よろしくお願いします。  進行が下手で、もう10分オーバーしていますが、かなり本質的な議論もあったと思いま すので、是非いろいろ提案していただいて、次回のまとめの報告書の中に、今日の意見も含 めて入れていただきたいと思います。次回の予定は、7月5日ですか。 ○安達副主任中央産業安全専門官 皆様から日程をいただきまして、全員のご参加は難しい かもしれませんが、7月5日(月)15時から17時を予定しております。 ○向殿座長 どうもありがとうございました。事務局に進行をお返しします。 ○安達副主任中央産業安全専門官 長時間ありがとうございました。本日の議事録も後日ご 確認をお願いしたいと思います。今日の資料1の議事録につきましては、今週中には厚生労 働省のホームページにもアップする予定ですので、まだご確認が終わっていない方は、お気 づきの点はあとで事務局までお知らせ願いたいと思います。  それでは、大変長時間ありがとうございました。第2回検討会はこれで閉会いたします。