10/05/27 第9回社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会議事録 社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会 第9回議事録 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 第9回社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会 議事録 日時:平成22年5月27日(月) 16:00〜18:30 場所:厚生労働省 省議室(9階) 出席者:  委員   柏女委員長、松風委員、相澤委員、今田委員、大塩委員、大島委員   奥山委員、木ノ内委員、庄司委員、高田委員、豊岡委員、西澤委員   藤井委員、藤野委員、吉田委員  厚生労働省   香取大臣官房審議官、田河総務課長、藤原家庭福祉課長   杉上虐待防止対策室長、森泉児童福祉専門官 次第:  1. 開会  2. 議題    (1)最近の次世代育成支援等に関する議論の動向について    (2)社会的養護における施設ケアに関する実態調査(タイムスタディ調査)     について    (3)その他  3. 閉会 配布資料: 資料1  新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度の検討の状況     ・「子ども・子育て新システム検討会議」について     ・第1回子ども・子育て新システム検討会議     ・子ども・子育て新システムの基本的方向     ・子ども・子育て新システム検討会議作業グループ(ヒアリング)開催状況     ・次世代育成支援の構築に向けた検討経緯 資料2  社会保障審議会少子化対策特別部会におけるこれまでの議論のポイント 資料3  子ども・子育てビジョン(平成22年1月29日閣議決定) 資料4  平成22年度家庭福祉対策関係予算の概要 資料5  「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」社会的養護 関係部分について     ・地域主権改革 児童福祉施設(乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、情 緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター)の基準関 係について     ・児童福祉法(抄)     ・地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(抄)     ・地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案要綱 資料6  国立児童自立支援施設処遇支援専門委員会報告について(報告)     ・国立児童自立支援施設処遇支援専門委員会第1回報告ポイント     ・社会保障審議会児童部会国立児童自立支援施設処遇支援専門委員会の      設置について     ・国立児童自立支援施設処遇支援専門委員会第1回報告 資料7-1  タイムスタディ追加調査の概要 資料7-2  アセスメント調査票の項目とケア時間の相関 資料7-3  ケアの負担感とケアの内容 資料7-4  児童に関わらない業務を除いたケア時間の分析 資料7-5  保護者対応のケア内容の分析 資料7-6  母子生活支援施設のケア形態別・規模別の再集計 資料7-7  「母子生活支援施設」:経営主体別の再集計結果 資料8   平成20年度施設整備実態調査集計結果 参考資料1  タイムスタディ関係資料 参考資料2  社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に        関する専門委員会       ・社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に        関する専門委員会の設置について       ・児童虐待防止のための親権制度の見直しについて 参考資料3  保育士養成課程等の改正について(中間まとめ) 議事: ○藤原家庭福祉課長  定刻になりましたので、ただ今から「第9回社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員 会」を開催させていただきます。  委員の皆さま方におかれましては、お忙しい中をお集まりいただき厚く御礼申し上げます。  本日の委員会への出席委員は15名でございます。西澤委員は少し遅れて到着されると伺 っております。山縣委員、榊原委員は欠席とのご連絡をいただいております。  それでは、議事にお進みいただきたいと思います。柏女委員長、よろしくお願い申し上げ ます。 ○柏女委員長  あらためまして、皆さま、こんにちは。前回の開催が昨年11月の初旬でしたので、約半 年ぶりの開会ということになりました。この間、子ども・子育てシステムの再構築に向けて の議論が保育・子育て支援を先行して、どんどん進んでおります。その他に幾つかの懸案も あって、その対応も進んでいると伺っています。  本日は、その報告あるいは一昨年度から続けております社会的養護の分野の実態調査やタ イムスタディの結果の詳細な分析等について、途中経過の報告をいただいて、さらに今後そ れをどのように分析して、どのような提言に結びつけていったらよいのか。それらについて の中間的なご議論をいただき、さらに詳細を詰めていただくという形になろうかと思います。 2時間という限られた時間でございますけれども、皆さまのご協力によって実りある会にし ていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  はじめに、本日お手元にお配りしております資料につきましての確認を事務局からお願い したいと思います。 ○藤原家庭福祉課長  それでは、資料の確認をさせていただきたいと思います。大変たくさんございますので、 お手元をご覧いただきたいと思います。  まず資料1でございますが、新たな次世代育成のための包括的・一元的な制度の検討状況 関連ということで、「子ども・子育て新システム検討会議について」という表紙が付いてい るものでございます。資料2は「社会保障審議会少子化対策特別部会におけるこれまでの議 論のポイント」です。資料3は、1月29日に閣議決定されました「子ども・子育てビジョ ン」、資料4は平成22年度の家庭福祉対策関係予算の概要で、パワーポイントの資料です。 資料5は現在、国会で審議中であります地域主権関係の法律案です。「地域主権改革の推進 を図るための関係法律の整備に関する法律案」の社会的養護部分について、パワーポイント の資料と法律案の条文を付けさせていただいております。資料6は「国立児童自立支援施設 処遇支援専門委員会報告について」というパワーポイントの資料と、4月の初めに出されま した第1回報告書そのものでございます。資料7は枝番が付いておりますが、こちらはタイ ムスタディの関係でございます。資料7-1は「タイムスタディ追加調査の概要」、資料7-2 は「アセスメント調査票の項目とケア時間の相関」、資料7-3は「ケアの負担感とケアの内 容」、資料7-4は「児童に関わらない業務を除いたケア時間の分析」、資料7-5は「保護者対 応のケア内容の分析」、資料7-6は「母子生活支援施設のケア形態別・規模別の再集計」、資 料7-7は「母子生活支援施設の経営主体別の再集計結果」です。資料8は、また別の調査で ございますが「平成20年度施設整備実態調査」ということで、施設の設備面の調査を行い ましたので、その集計結果でございます。  この他に参考資料といたしまして「タイムスタディ関係資料」と付けましたのは、タイム スタディの調査票やケアコード等の本日ご議論いただく上で参照いただく関係のものでご ざいます。参考資料2として「社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方 に関する専門委員会」の関係資料で「委員会の設置について」また「親権制度の見直しにつ いて」という資料を付けさせていただいております。参考資料3は「保育士養成課程等の改 正について(中間まとめ)」ということで、3月24日に保育士養成課程等検討会がまとめら れた中間まとめの資料でございます。お手元の資料をご確認の上、不足等がある場合はお知 らせください。  また、本日は委員からご提出いただいた資料を机上に置かせていただいております。まず、 藤野委員から『「児童養護施設 養育単位の小規模化プロジェクト」「児童養護施設のあり方 検討プロジェクト」について』という表題がございます資料を、今田委員からは『平成21 年度児童関連サービス調査研究等事業報告書「乳児院の養育体制・機能に関する調査研究」、 大塩委員からは「児童福祉法の理念に沿った母子生活支援施設における最低基準の改正を」 という表題の資料を頂戴して配布させていただいております。  資料の確認は、以上でございます。 ○柏女委員長  皆さま、資料はございますでしょうか。  それでは早速、討議に入っていきたいと思います。本日は、議事を三つのパートに分けて 進めたいと思っておりますので、お諮りしたいと思います。まず、次世代育成支援や地域主 権に関する政府等における議論の動向について、資料を中心に説明いただいて、ご意見等を いただく時間を20分間ぐらい取りたいと思います。  二つ目が、先ほど資料のご紹介がありました国立児童自立支援施設処遇支援専門委員会の 第1回報告について説明していただいた上で、質疑を20分間程度。  そして残りが我々にとってはメインとなりますけれども、タイムスタディ調査等について の新たな集計・分析の関係について説明と討議で約1時間程度。  このような流れで、三つの柱で進めていきたいと思います。それぞれ20分、20分、1時 間程度ということで進めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○柏女委員長  それでは、そのように進めさせていただきたいと思います。  それでは、第1のパートについて事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお 願いいたします。 ○藤原家庭福祉課長  それでは、資料1〜5の関係を続けて説明させていただきます。まず、お手元の資料1を ご覧いただきたいと思います。『「子ども・子育て新システム検討会議」について』とタイト ルした資料でございます。昨年12月8日に閣議決定した緊急経済対策に基づきまして、幼 保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築について検 討を行うということで、そこにございますように行政刷新担当大臣、国家戦略担当大臣、少 子化対策担当大臣を共同議長といたしまして、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労 働大臣、経済産業大臣といった閣僚を構成メンバーとする検討会議が設置されております。  この本会議の下に作業グループがございまして、1枚めくっていただきますと体制図がご ざいます。作業グループは泉内閣府大臣政務官を主査として設置されております。この間、 10ページにありますが作業グループの3月以降の開催状況ということで、6回にわたりま して幼保改革の関係を中心にヒアリング等が行われているということでございます。  閣僚レベルの親会議につきましては、4月27日に第1回が開催されました。その親会議 におきまして議論がなされ、策定されましたものが4ページからの「子ども・子育て新シス テムの基本的方向」という文書でございます。この文書をご覧いただきますと、この「子ど も・子育て新システム」の基本的なものの考え方を「目的」「方針」また「新システムとは」 というところに書いてあります。政府の推進体制・財源の一元化、社会全体(国・地方・事 業主・個人)による費用負担、基礎自治体(市町村)の重視、幼稚園・保育所の一体化、多様 な保育サービスの提供、ワーク・ライフ・バランスの実現といった新システム。具体的には 5、6ページに記載がございます。  6ページをお開きください。「子ども・子育てを社会全体で支援する一元的な制度の構築」 ということで、事業ごとに制度設計や財源構成がさまざまに分かれている子ども・子育て支 援対策を新しい制度(システム)の下に再編成をしていくということです。その基本的なもの の考え方は白丸に整理がございますが、これがポンチ絵の形になっておりますのが7ページ の「制度設計のイメージ」でございます。こちらをご覧いただきますと、財源の一元化とし て基礎自治体が実施主体であるということ。地域の実情に応じて地域の裁量で施策を進めて いくというイメージ図になっております。申し上げましたように、これまでは幼保の議論を 中心に議論が進められており、社会的養護に関しましては、まだこれからという状況である と理解しております。  その関係で、スケジュールとしましては先ほどの6ページに戻りますが、新システムの関 係は平成23年通常国会に法案を提出し、平成25年度の施行を目指すということが先ほど の基本的な方向の中でうたわれているところでございます。  18ページには「子ども・子育て新システム検討会議」に先立った、さまざまな政権与党 の政策や他の閣議決定関係の流れ図がありますが、中段より下に「子ども・子育てビジョン」 がございます。これに関しましては、1月29日に閣議決定ということで、本日の資料3と して配らせていただいておりますので、その資料をご覧いただきたいと思います。こちらで 社会的養護の関係についてご紹介いたします。  10ページに、これはビジョンの本文に当たりますけれども、(8)の「特に支援が必要な子 どもが健やかに育つように」ということで二つ目のポツに社会的養護の充実ということが位 置付けられております。また、13ページ以下は「施策の具体的内容」という別添の資料に なりますが、21ページに「障害のある子どもへの支援」に続きまして22ページから23ペ ージにかけまして「家庭的養護の推進」「年長児の自立支援策の拡充」「社会的養護に関する 施設機能の充実」「施設内虐待の防止」が盛り込まれているところでございます。また、数 値目標に関しましても、32ページに社会的養護関係では小規模化の推進や里親の充実など の平成26年度に向けた数値目標が策定されているところでございます。以上が、資料1〜3 でございます。  資料4は「平成22年度家庭福祉対策関係予算の概要」ということで、小規模グループケ アの推進をはじめとしました今年度予算のあらましでございますので、後ほどご覧いただけ ればと思います。  資料5について、もう1点ご紹介したいと思います。これは地域主権改革関係の法案のあ らましでございます。「地方分権改革推進委員会」の勧告が昨年の10月にございまして、 児童福祉施設の基準について廃止又は条例委任するという勧告が出されております。地方分 権改革推進計画で12月に閣議決定されまして、最低基準に関しましては都道府県が条例で 定める。その際、(I)にございますが従業員の資格及び員数、居室の面積基準、また、懲戒 権の乱用禁止など利用者及び家族の人権侵害の防止等に関する重要な事項については、都道 府県は国で定めた内容に従って条例を定める「従うべき基準」という位置付けになりました。 それ以外の設備及び運営に関する基準に関しましては、国の基準を参考に、都道府県の裁量 で参酌の上、異なる基準を定めることができるという位置付けになっております。  この閣議決定を受けまして現在、国会で審議中でございます「地域主権改革法案」が衆議 院は通過し、今は参議院で審議されている状況でございます。施行は平成23年4月の予定 でございます。条文はお手元に新旧対照表を付けさせていただいておりますが、6〜7ペー ジが条文になります。45条が児童福祉施設の関係でございます。また、45条の2が里親の 関係になります。このような形で、現在法案が国会審議中であるというご報告をさせていた だきます。  資料1〜5に関しましては、以上でございます。 ○柏女委員長  ありがとうございます。ただ今の説明に関しまして、何かご意見・ご質問等がございます でしょうか。ありましたら挙手をお願いいたします。 ○藤野委員  全国児童養護施設協議会の藤野でございます。今、特に地方分権推進法の関係で説明があ ったように、資料5の6〜7ページにありますが、里親だけは厚生労働大臣が決めるという ことが残るという形になっていて、7ページの一、二、三という形で「従うべき基準」とし て残ったということになっているわけですけれども、非常に不安です。  というのは、先ほどの1月29日に閣議決定された「子ども・子育てビジョン」について は社会的養護はきちんと書いてあるのですが、新システムの方では幼保一元化が中心という ことで、とにかく国の動きがものすごく速いのです。それで現場は全くついていっていない 状況で、我々も議論をして「こうあるべきではないか」と思ったら、既に国会で通っている という状況です。  特に、細かい話ですが、今度国がつくる基準が、全国児童養護施設協議会が提出した資料 に書いておりますけれども、例えば職員の配置問題にしても、最低基準は6対1が基本で、 1.7対1とか2対1、3対1という形で最低基準が決まっているのですけれども、その後家 庭支援専門員等が付けられているわけです。  私が提出した資料の13ページに「児童養護施設のあり方検討プロジェクト」の配置基準 等についての全国児童養護施設協議会としての要望を出しております。その中で、例えば家 庭支援専門員は今、各施設に1名ずつ付いています。それから看護師が付くようになってい たり、心理療法担当職員が付くようになっていたり、そのようなものが含まれるのか、含ま れないのかということなど、いろいろなことが心配というか「従うべき」という条件は付い ていますけれども、市町村に全部下ろすと、それこそ各市町村・都道府県でバラバラになっ てしまう。現在でも東京都や横浜市などの、かなり裕福な所では、そういうものが付いてい るわけですけれども、その辺の格差がずいぶん付いてくるということで、例えば県外措置の 状況等にしても例えば鳥取県から東京都に措置しようとすれば、東京都の加算分を鳥取県が 払わなければ駄目だということで、結局はそれができないというような状況が現在でもある わけです。そのようなことを含めて、どうなのか。  それで、この専門委員会をずっとやってきていますけれども、その中で我々がいろいろな 議論をしている間に、そういう体制がどんどん進んでいるということに非常に危機感を持っ ています。  そういう意味で、例えば平成23年通常国会でこれに基づいて児童福祉法を変えるという ことですが、例えば社会的養護の部分については措置が今、残っているわけです。それを何 とか残すという意味でも、例えば児童福祉法の第2条「目的」の辺りに社会的養護が入らな いものかということ。まず、その辺の法的なことを何とかしなければいけないのではないか と思っております。 ○柏女委員長  ありがとうございます。それでは吉田委員、庄司委員、大塩委員の順で、ご意見・ご質問 をいただいた後で、事務局で対応できるものがあれば、まとめてお願いしたいと思います。 ○吉田委員  この地域主権関係でお聞きしたいのですけれども、今回「従うべき基準」と「参酌すべき 基準」が出てきます。これは閣議決定ということですけれども、当然その前提としては厚生 労働省から意見があったと思いますが、この区別をした、つまり人員の配置の問題、面積の 問題、人権にかかわる問題が「従うべき」で、それ以外のものは「参酌すべき」とした理由 はどこにあるのかということが、もしお聞きできればというのが一つです。  それから2点目は、地域主権法の法案の45条で厚生労働省令で定める基準というのが参 酌基準として予定されているということです。また、それを参照したということが必要であ るとされていますけれども、現在、この「参酌すべき」ものとしている事項の基準に関して は、どのようなものを考えておられるのかということです。  3点目は、同じ児童福祉関係であっても、藤野委員がおっしゃったように里親や障害分野 とではずいぶんこの「参酌」と「従う」の色合いが違うように思いますけれども、この辺り は種別の違いによるのかどうかということです。  もう一つは、今回のこのような経緯に至るところが、いきなり閣議決定で出てきましたが、 例えば今の全国児童養護施設協議会の意見でもありましたように、そういったところに対す るヒアリング等の手続的な問題がどうであったのか。  この4点についてお伺いしたい。 ○柏女委員長  ありがとうございます。続いて庄司委員、大塩委員、今田委員にお願いして、その後に総 括的にお答えをいただくという形にしたいと思います。  では庄司委員、お願いいたします。 ○庄司委員  私も藤野委員がお話しされたように、地方分権改革が進むと、これまで以上に自治体間格 差が拡大するのではないかという強い懸念を持っています。伺いたいことは、「従業員の資 格及び員数」で児童福祉施設に配置する」と書いてありますが、この「従業員」の定義を教 えていただきたい。常勤職員でしょうか。それとも非常勤職員・家庭支援専門相談員等を含 めた者でしょうか。 ○柏女委員長  続いて、大塩委員お願いします。 ○大塩委員  先ほど、藤野委員からもご発言がありましたけれども、地方に施設の最低基準が任せられ るようになってきますと、母子生活支援施設はたちまち危機的な状況になるということを非 常に強く危惧しております。  と申しますのは、本日配布させていただきました資料に「児童福祉法の理念に沿った母子 生活支援施設における最低基準の改正を」という大々的なタイトルを付けておりますが、母 子生活支援施設は児童福祉法の中にありながらも他の施設とは違い、入所のシステムが福祉 事務所に任せられています。そうすると、「子どもの最善の利益」というよりも、入所・退 所が母親主体になってきます。もちろん母親を支えていくことが大きな仕事ではありますけ れども、子どもの視点に立ったときに十分なケアができているかどうかということに非常に 格差が出てきていて、それが今後地方分権になり市町村・都道府県に最低基準が任せられる ようになってきますと、たちまち困ってしまいます。  具体的には、本日配布させていただきました資料の最後のページに厚生労働省とすり合わ せをさせていただいた「母子生活支援施設に関する最低基準と条例委任への対応について」 という資料の「全母協意見」として「参酌すべき」「従うべき」と付けております。  具体的なところで、どのようなことが起こってくるかといいますと、6ページをご覧くだ さい。実際に母子生活支援施設では何人の職員が働いているかという職員配置を最低基準に よる職員配置と加算による職員配置を並べておりますので、ご覧ください。その中で、平均 20世帯母子生活支援施設の最低基準で働いている職員は6人しかおりません。この6人で 365日・24時間の対応をしていくのは、ほとんど不可能な状態です。それに加算による職 員配置をして職員数が11人ということで大体24時間の宿直体制等をとっておりますけれ ども、これでも、なお足りない状況です。  そして、ここで特記すべきことは、母子生活支援施設の約40%の子どもたちが乳幼児で すが、その乳幼児の子育て支援を行う母子生活支援施設でありながら、保育士は最低基準の 中には加えていないのです。これは配置ができる基準ですから、保育士を配置していない施 設もたくさんあります。この最低基準がこのままの状態で都道府県に委任された場合、施設 自体が運営できない状態が起こってしまうということで、非常に危惧しています。ですから、 本当に真剣に最低基準を改正していって、地方に任せるのであれば、この低い最低基準を母 子生活支援施設だけではなくて、児童養護施設も乳児院もどこも改正して、子どもたちの育 ちが保障できるようなものに変えていかないと、とても子どもの育ちが守れないことを非常 に危惧しています。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございます。続いて今田委員、お願いします。 ○今田委員  乳児院の立場から申し上げますと、藤野委員がご指摘の点はまさに同感です。といいます のは、今でも自治体間の格差がかなり顕著に、我々の施設間でもあります。例えば心理職も 都市部では8割近い施設が置いているわけですけれども、それ以外ですと半数に満たない、 20〜30%のところもあります。それ一つをとっても、かなりの地域間格差がありますので、 これがまた先ほどご案内のような状態になってくると、ますます格差が開いていくのではな いかと懸念しています。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございます。今、現場の先生方を中心に地域主権改革関係の法案で最低基準に かかわることで非常に大きな不安感の表明がありました。また、吉田委員と庄司委員からも 幾つかの質問が出ています。それからもう1点、新システム検討会議と社会的養護との関係 についてもご質問があったと思いますので、それらについて包括的に事務局から回答いただ ければと思います。お願いします。 ○藤原家庭福祉課長  まず基準の仕組みの確認になりますが、この地域主権の法律の、先ほど45条をご覧くだ さいと申し上げましたが、「従うべき基準」は、国で定めた基準と違う内容の条例、それを 上回ることはあり得ると思いますが、国の定めた基準と違う内容の条例はつくれないという 性格のものです。「参酌すべき」というのは、これも先ほど申し上げましたが、国の示した 内容と異なる内容の条例を自治体でもそのような条例をつくることができるという内容で す。  その上で、吉田委員からもありましたけれども、どこでどのような線引きなのかというこ とで、45条にもありますが、人の資格や員数、部屋の居住面積、それから虐待の禁止、懲 戒権限の乱用禁止や秘密の保持など人権侵害の防止等に関する内容が最低基準の中にあり ますが、このようなことについては「従うべき基準」という位置付けです。要は「格差があ ってはいけない」という考え方の部分については「従うべき基準」という位置付けになって いるということです。  里親に関しましては45条の2ということで若干位置付けが異なっています。これは先ほ ど勧告の話を説明申し上げましたが、今回児童福祉施設についての勧告が出たことを受けて の法改正内容ということで、児童福祉施設についてこのような条例で定めるという仕組みの 内容になっていて、そこが里親と環境が違っているところです。  庄司委員から基準の人の関係で、常勤・非常勤という話がありました。基準の中身、国で 今後どのような厚生労働省令をというのは今後検討していく話ですが、現在の最低基準の世 界では常勤・非常勤でという書き分けにはなっていませんので、そのことは踏まえていくと 思っています。非常勤だから基準がないという話ではないのではないかと今現在この場では 思っています。  それから、母子生活支援施設の保育士の問題などを含めて、今の基準では足りないという お話が大塩委員からもありました。要は今この専門委員会でご議論いただいています、まさ しく子どもの年齢や状態に応じたケアをどのように実現していくのかという議論の中身を つくっていくことで、必要な人手をきちんと世の中に対して位置付けていこうということで 専門委員会での議論をお願いしているところです。この専門委員会の議論を進めていく中で、 どのような人の配置がということを示していく必要がありますので、今の地方分権の法律の スケジュールと、子どもの状態に応じたケアの中身をつくっていくというスケジュールは基 本的には別のものではないかと思っています。ただ、先ほど委員長からも「子ども・子育て 新システム検討会議」との関係というお話もありました。こちらの方は子ども・子育て全体 についての議論という広がりを持っているところでありまして、こちらの方のスケジュール 観とこの専門委員会のご議論は、きちんと踏まえて連動しながらという話になるのではない かと思っています。  十分なお答えになっていないところもありますが、以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございます。今の関係について、何か補足的に。藤野委員、どうぞ。 ○藤野委員  この会議で、要するに社会的養護のあり方ということを職員配置等の問題も含めて出して いくという話がありました。時間もありませんが、私の出した資料について提案したいと思 います。一つは全国児童養護施設協議会として去年から今年にかけて二つの作業委員会を立 ち上げてやってきました。一つは、児童養護施設の養育単位の小規模化推進プロジェクトと いうことで、何が必要なのかということを含めてここにまとめました。提言ということで、 一つはやはり職員配置の問題がネックになっていて、なかなか進まないということで、具体 的には6名単位の小規模グループケアをやろうとすれば、例えば労働基準法を守った形でや るということになると、6人に対して4.8人いないと労働基準法を守れないのが現実です。 それが難しいとすれば、例えば労働基準法自体に特例を設けるか何かしないと本当にできな いのです。今までは例えば住み込みでかなりハードな形でやってきたのですが、それが今の 社会情勢の中では、できない。人が集まらないなどいろいろなことで大変になっているのが 現実だと思います。ただ、そのような今の状況の中で小規模化を進めることはどうしても必 要なことですし、いろいろな提案をここでやっていますので見ていただきたいと思います。  もう一つの方の「児童養護施設のあり方検討プロジェクト」という報告書については、全 国児童養護施設協議会として全体としては今の最低基準の例えば1.7対1、2対1、4対1、 6対1を1対1、2対1、3対1という形にしてほしいと11ページに書いています。それか ら定員別でこのようにしてはどうかという細かいことも書いています。これについては今回 は概要版にしただけですので、近いうちにもう少し厚いものを皆さんに配れると思います。 特に児童養護施設のあり方検討の方でいえば、今の児童養護施設と乳児院との関係をどのよ うにするのか。あるいは情緒障害児短期治療施設と児童養護施設との関係はどうなのかとい う施設の再編に絡む意見も載せていますので、そのような意味でぜひ議論していただきたい。 後ほど調査データの議論もあると思いますが、今の国のペースやいろいろなことを考えると、 この専門委員会で社会的養護はこうあるべきであるということを出していかなければ進ま ないと思います。そのような意味で全国児童養護施設協議会としては、このような形で今の 段階では考えていますので、その辺の議論の参考にしていただきたい。特に今度の通常国会 での児童福祉法改正までには、ある程度のビジョンをつくり出すくらいのペースでお願いし たいと思っているところです。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。関連で、少し短くお願いします。 ○松風委員  地方行政の立場から少し発言させていただきたいと思います。地方で条令を策定するとい うことになりますと、条例を策定するに当たっての根拠をどのようにつくっていくのかとい うことが非常に重要になってくるわけですが、専門的根拠だけではなくて、財源の確保と支 出の抑制という枠組みに非常に影響を受けることになりまして、条例についての基準は非常 に低く抑えたものにせざるを得ないということが予測されます。非常に社会的養護に係る予 算というのは、先ほどの子育てのプランの中での社会的養護の位置付けを見ましても同様に 非常にマイノリティですので、予算の獲得について住民または議会にご理解いただくのは非 常に難しいのです。その中で、大きな流れとして地方で引き受けていくものが増えてくるこ とについては抗えない事実ですし、そのような方向になると思いますが、この中で財源の確 保について考えますと、例えば先ほどの参酌基準が今後のこの委員会での議論も含めまして、 措置費の基準に影響を与えていくものではないかと思うわけです。要するに措置費がどのよ うに定められていくのかというところが非常に重要で、法律にその基準を定めないというこ とになれば、措置費の基準といいますか措置費の費用については非常に流動的になるのでは ないかという危惧を持ちます。全体としての予算配分に非常に影響されるのではないかと考 えますと、地方から見ると財源が非常に流動的になるということを予測しなければいけない ことになるわけで、そうするとますます地方としてはあるべき論と現実論との間で矛盾を抱 えてしまうことになります。この専門委員会は社会資本の大幅な導入を図ることを目標に掲 げて議論を進めてきたと思いますが、そのことが非常に矮小化されてしまうのではないかと いう危惧を持っていまして、その点について今後どのようなことをしていったらよいのか。 この委員会としても、どのような影響力を持ち得るのか。または今後そのような地方から見 ての財源の確保、または措置費の確保についての考え方についてご教示いただきたいと思い ます。 ○柏女委員長  ありがとうございました。先ほどから、藤野委員をはじめ今後のこの専門委員会の役割等 についての質問が出ていますので、事務局からお願いしたいと思います。 ○香取審議官  審議官です。時間のこともありますので手短にお話しします。まず、最初からご議論にな っています地域主権戦略会議の関係ですが、まず私どもの基本的なスタンスは、全国一律に といいますか、最低限保障すべき水準は日本国どこでもきちんと保障されることができるよ うな形で、サービスの質なり基準を担保することが必要である。これは保育であっても社会 的養護であっても、老人であっても障害であっても同じなので、そのような考え方に立って います。  地域主権戦略会議との関係でいうと、まず論点は二つありまして、一つは基準は誰が決め るのか。決める権限は誰にあると考えるのか。もう一つは中身です。誰が決めてもよいので すが、決める中身はどのように考えればよいのかということです。前者の「誰が決めるのか」 については、基本的には自治体が決める。つまり自治体で決めることができないという理由 がないもの、どうしても国や県のレベルでやらなければいけないもの以外は基本的には地方 自治体で決めることにする。基本的にはそのような考え方です。その意味でいうと、例えば 今は省令や通知という国が決めているものについては決める権限は市町村、つまり条例で決 める。その意味では決める権限は条例にいく。そこはそのように基本的な議論をしています。  もう一つは、条例で決めるのはよいのだけれども、全くフリーハンドで自由に決めて良い のかということが次に問題になって、そうすると物事の中身によって、これは日本国中どこ でも最低限この水準はクリアしないといけない、つまりこれを下回る基準は条例で決めると いえども下回ってはいけないというものがあるでしょうと。ある程度それぞれの市町村の判 断で決めてよいものもあるでしょう。あるいは最後どうしてもといえば市町村の判断で決め てもよいですが、基本的には守ってくださいと。それを変えるのであれば、挙証責任は自治 体にありますという形で整理をする。この3段階があるでしょうという議論になっています。 この3段階それぞれに今の養護でいえば、省令ないしは通知で決まっているさまざまな基準 がどれにどのように当てはまるのですかという振り分けをしましょうという議論です。  今現在の議論はどうなっているのかというと、先ほど家庭福祉課長が申し上げたように、 人の配置や施設の面積基準のようなケアに直接かかわるもの、あるいは今の大臣の言葉でい えばナショナル・ミニマムにかかわるもの。これは文字どおりナショナルに決めるものなの で、決めるのは条例ですが中身は国が示したルールに従ってくださいということです。あと はどうしても自治体が自分の判断でといえば変えても結構ですが基本的には従ってくださ いというものとなっていて、ある程度は市町村の裁量でやっても構わない。ある程度は動か しても構わないというものが「標準」で、最後が「参酌すべき基準」という3段階で整理を することになっています。どこまでを「従うべき基準」にするかはかなり議論が向こうでも ありまして、基本的にはそのようなものはよほどのことがない限り認めないというのが地域 主権戦略会議の考え方で、それは自治体といえども直接住民から選ばれた首長と選ばれた議 員によって構成されている。直接それこそ現場で実際に子どもたちや老人たちを見て行政を しているのは自分たちだと。自分たちの方がいわば現場に近いところで判断をしているので、 その判断が信じられないというのは、自治体を信用していないということだという議論にな っています。先ほど申し上げたような考え方で我々は議論をしていますが、最終的に具体的 に何を基準に書くかはこれからの議論になりますが、今はそのような議論です。  もう一つはお金の話です。これはこことは別のところで議論されているのですが、今の地 方自治体、これは地方6団体ですから地方自治体の全体のご意見は、現金給付にかかわるも のは地方に裁量権が全くない。一律でこの金額を配りなさいというものなので、自治体には 裁量権がありませんから自治体は費用負担するいわれがないので全額を国で持ってくださ い。逆に現物サービスは、それこそ自分たちの判断・裁量でサービスを出すものなので、こ れは自分たちの責任でやります。従って全額地方負担で結構です。その前提で税源の移譲を してくださいというのが、今の地域主権戦略会議なり総務省の考えということになります。 本当にそれを全部整理できるのかどうかというのが実は一つの議論になっていて、お話のよ うに全額を地方財源でやるのは結構なのですが、基本的に一般財源化されたときに本当に財 源がついてくるのかどうかということもあって、一応全体としてはそのような議論になって いますが、個別のサービスの話になってくると、本当にそれでいけるかどうかということに なって、実は地方自治体の個別の首長の中にはさまざまなご議論があるという現実がありま す。  もう一つは、できるだけ個別の補助金ではなくて、一括で渡してくださいと。例えば高齢 者ならば高齢者についてさまざまなサービスがあります。認知症の人もいます。自立支援の 人もいます。さまざまなサービスがあります。施設もある。在宅もあるとなると、どのよう なサービスをどのように組み合わせて出すかは自治体の側である程度プロデュースします ので、総額としてお金をくだされば自治体の責任でやりますという議論になっていて、これ がいわゆる一括交付金の議論ということになります。この権限、最初のものは「義務付け・ 枠づけ」と我々は呼んでいますが、さまざまなルールについて国が義務付けをしたり枠づけ をしたりすることをどう考えるか。もう一つは今の「財源をどうするか」という話と一括交 付金の話は国の財源か地方の財源かをサービスの性質によって区分する。一応この三つの話 がセットで動いているということになっています。  長くなって恐縮ですが、もう1点非常に大事なことなのでお話ししておきたいのですが、 新システムの議論は、この三つそれぞれにかかわっています。財源をどのように保障するの かという話と自治体の裁量をできるだけ保障していくという話。もう一つは子どもなり子ど もを育てる家庭の立場から必要なサービスの中身と質をきちんと保障していくことをどの ように制度的に保障するかという議論をしていく。その中で、お話があったように社会的養 護の枠組みをどのようにこの制度の中で位置付けていくのか。基本的には1本の制度で仕組 んでいくことを考えていますが、お話があったように措置でやっている部分を同じような形 で一括交付金でできるのかどうかも大きな論点ですし、児童相談所その他基本的には県行政 でやっているものをどこまで市町村に下ろせるかという論点もありますが、他方では子ども 全体について必要な保障を一体化して行っていくという観点からすると養護のことを切り 離すのは、それはそれでおかしいという議論になりますので、その辺がこれからの議論の大 きな論点になっていくと思います。  そこで、実は今回の社会的養護のケアの議論ですが、我々もこの間社会的養護の制度がで きてから戦後50〜60年経っているわけですが、お話があったように現場のケアの体制が十 分かどうか。あるいは時代とともに子どもの状態や様子が変わる中で、それに対応した必要 なケアができているのかどうか。職員の専門性はどうなのか。さまざまな問題がある。正直 そこは我々も思っています。今回の社会的養護の専門委員会でお願いしたことの基本は、何 度も事務局からもご説明しているのでお話はおわかりのことと思いますが、どのような子ど もたちにどのようなケアが必要なのかというケアを標準化していく。それから客観的に誰に でもわかる言葉で語れるようにしていく。例えば職員配置を上げるという議論を我々がしま す。職員配置を2対1にしてくださいという要求をしたときに、3対1を2対1に上げると 何が変わるのですか。ケアの中身のどこがどのように変わるのですか。子どもたちのケアの どこがどのように良くなるのですかという質問が必ず来ます。財政当局からも来ますし、地 方自治体からも来ます。つまり私たちは一人一人の子どもがどのような問題を抱えていて、 どのような子どもに対してはどのようなケアが最適で、そのケアを実現するためには質と量 としてはどのようなサービスが要るのかということを、いわばここにいる皆さん方ではなく て、世の中の普通の人というか、先ほどの話でいえば実際にお金を出してくれる自治体や大 蔵省あるいはそのような人の配置をしている人たちにきちんと説明できる形でお示しする ことが実は必要なので、客観化するとか数量化するとか、あるいは具体的に何がどのように 変わるのかということを示す作業がぜひ必要で、そのためには、これは皆さんがご専門であ るならば釈迦に説法ですが、個別のアセスメントと、アセスメントによって問題が確定し、 問題点に対応した個別の1対1のケアの形が必要で、その量と質が職員配置や体制を具体的 に立証していくというプロセスを明確に示していくことが恐らく必要で、これがないと施設 類型がどうあるべきか、職員配置がどうあるべきかという議論をいくらしても、いわばエビ デンスがない議論になって、正直言ってこの状況下で我々もなかなか戦うことができないと いうことです。そういう意味で言いますと、タイムスタディはご承知のとおり、老人でも障 害でもいろいろな病院でもやっていますけれども、そういう意味ではベースの一番ベースの ところを我々は今つくっているということではないかと思います。私たちが想定していたも のよりも、この新政権の政策の動きは先ほど藤野委員がおっしゃったように速いので、我々 もスピードアップしていかなければいけないと思っています。その意味で言うと、ゴールで 我々はどのようなものをつくっていかなければならないのかということを念頭に置きなが ら、自分たちのやっていることをどのように証明していくのか、あるいは外に向かって訴え ていくのか。そのための通路を造っていくのだと。そのように説得力があるデータをどのよ うに取っていくのか。あるいは自分たちのケアがこのようにすることによって、このように 変わっていく、このように変えることが必要だからこのような職員配置体制や設備が要ると いう議論ができるような議論をぜひ積み上げていっていただきたいと思います。  これは他の例になりますけれども、例えば特別養護老人ホームでユニットケアをつくりま したが、あのときも4人部屋とユニットケアで個々の高齢者の行動がどのように変容したか、 時間の使い方がどのように変わったか、要介護がどのように改善されていったかという時系 列のデータをきちんと取る。これでケアがこのように変わる。このように変わることによっ て、このように自立が進むのでこのケアの方が優れているというデータをもって立証を行う ことがあって、実は初めて制度にできたということがあります。ぜひそのような形で説得力 のあるデータがつくれるようなツールをぜひご議論いただきたいと思います。少し長くなり ましたが、以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。この後、これらについてはタイムスタディの結果の概要をお話 しさせていただいた上で議論していくことになりますので、今の事務局のご説明についても、 またご意見もある方もいらっしゃるかと思いますけれども、次の議論に移っていってそこで また進めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。  それでは二つ目のパートにいきたいと思います。国立児童自立支援施設の関係について、 事務局から説明をお願いいたします。 ○藤原家庭福祉課長  資料6をお手元にお取りください。児童部会の下のもう一つの専門委員会になります「国 立児童自立支援施設処遇支援専門委員会」を昨年末に設置させていただきました。お手元の 資料3ページがその設置の趣旨と委員のお名前です。今から申し上げますのは、大変申し訳 ないことに国立児童自立支援施設である国立きぬ川学院におきまして、昨年8月に被措置児 童等虐待の事案があったということがこの専門委員会の最初の大きな課題になったという ことのご報告ですが、そもそも社会的養護専門委員会のご議論を経て、国会に提出し成立し ました児童福祉法の改正において被措置児童等虐待の対応の仕組みが法律上位置付けられ ております。都道府県におきましては、都道府県の児童福祉審議会が都道府県の児童福祉施 設の被措置児童等虐待に関して、県の本庁や児童相談所とともに第三者機関的な意味合いや 専門的な意味合いという形で対応、そしてウオッチという役目を果たす仕掛けになっており ます。  国立児童自立支援施設につきましても、やはり同じような仕組みが必要だということもあ りまして、今ご覧いただいております専門委員会は昨年の個別の事案への対応の専門委員会 ではなく、常設の専門委員会として二つの国立児童自立支援施設の処遇の内容を見ていただ くという位置付けです。  少し前置きが長くなりましたが資料6の1枚目に戻りまして、昨年8月15日に大変申し 訳ない事案が発生しまして、職員の処分またその内容の公表を11月に行い、この専門委員 会を設置しました。12月からかなり集中的に国立きぬ川学院におけるケアの課題をご討議 いただいたということです。全体的な見直しの方向性というところにありますが、児童自立 支援施設のケアは、大変難しい子どもがたくさんいる施設ではありますが、やはり基本的に 子どもの状態に応じたケアという個別の対応が必要となっている子どもが多くなってきて いるところで、こうしたものをしっかりとやっていくということ。そして、小舎夫婦制とい う形態でケアを行っているということは、大変優れた面もありますが、非常に寮の独立性が 強くてケアの内容が閉鎖的になるという面が今回の背景としてあるというご指摘もいただ きまして、寮運営を開いていくための組織としてのスーパーバイズ、そういった問題につい てご指摘をいただいたところです。  2ページの方に具体的に取り組むべき事項としまして、社会的養護専門委員会の委員方が ご覧になれば本当に基本的な事項ではないかとおっしゃるかと思いますが、ケースカンファ レンスの見直しや外部によるモニタリングの強化、また特に医療的な面でしっかりとアセス メント等も行って、医師や心理士等がチームで対応するような形を取っていくべきであると いう、かなり具体的な提言をいただきました。  4月2日に提言をいただきまして、以後国立きぬ川学院におきましては、処遇検討委員会 という学院としての検討の場を2週間に1回ぐらいのペースで今開いておりまして、そこに 先ほどご覧いただきました専門委員会の委員にも随時ご参加いただき、ご助言いただくよう な形で、ケアの内容の改善ということについて取組を進めているところです。詳しい内容に つきましては恐れ入りますが、5ページ以降をお読みいただければと思います。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。それでは、ただ今の説明に関しまして、ご意見・ご質問等があ りましたら、お願いいたします。  では吉田委員と高田委員、お願いいたします。そして奥山委員ですね。 ○吉田委員  今の国立児童自立支援施設の調査報告はよくわかりました。今、全国の都道府県に向けて でしょうか、こうした施設内虐待についての調査を開始されているということを聞きました が、その状況や調査の目的、調査内容をお知らせいただきたいのが一つです。  それから、国立児童自立支援施設処遇支援専門委員会から今回は国立きぬ川学院の件につ いての第1回目の報告が出ましたけれども、施設内虐待についての施設種別であってもよい ですし、児童自立支援施設であっても結構ですけれども、総体としての検証としての検証は なされるのかどうか。つまり、個々の施設・事件に限らず、もっと大きな視での検証もこの 委員会でなされるのかどうか。この2点をお聞きしたいと思います。 ○柏女委員長  それでは、同じように3人の方のご意見・ご質問をいただいた上で、総括的にお答えいた だく形で進めたいと思います。では高田委員、お願いいたします。 ○高田委員  報告書を読ませていただきました。正直な感想は少し甘いところがあるのではないかとい うことです。一番気になるのは、閉鎖性を生みやすい形態であった小舎夫婦制を抜本的に見 直すという書き方がどこにもなかったことです。先ほどのお話ですと、効果を測定していく ことはとても大事ですけれども、私たちのヒューマンサービスの場合は、リスクを回避して いくこともとても大事なことだと思います。そのために何が必要なシステムかということを やはり徹底的に考えていく上で、小舎夫婦制もしくは交代制を比較検討していくことを国だ からこそできると私は思っておりますので、もう少し強い論調であれば良かったとは思って おります。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では奥山委員、お願いいたします。 ○奥山委員  一つは、吉田委員がおっしゃっていましたが国としての検証の件をお聞きしたいのと、も う一つは全体の流れですけれども、「寮長」「副寮長」という言葉があちらこちらに出てくる のですけれども、夫と妻でどちらが副寮長になるのか。どのように決まっているのかがとて も不明なところだと思って読んでおりましたので。コメントです。 ○柏女委員長  ありがとうございました。ではご意見・ご質問の件について、何かありましたらお願いし たいと思います。特に吉田委員からは具体的なご質問が出ております。 ○藤原家庭福祉課長  児童福祉法を改正していただきまして、被措置児童等虐待の関係規定の整備。都道府県に おきましては被措置児童等虐待につきまして件数などを毎年公表するという仕組みができ ております。それを踏まえまして、私どもとしましても毎年度各県の状況を把握したいとい うことで、現在各県に対して調査をお願いしています。6月の半ばまでにご回答くださいと いうことで調査しておりますが、この場で調査票をお配りできる準備が今はありませんが、 どのような形で調べているかということはまたお届けさせていただきたいと思います。また 取りまとめまして、それは国全体として公表していくことを想定しているところです。  このお手元にある国立児童自立支援施設処遇支援専門委員会の機能は二つの国立児童自 立支援施設の処遇をかなり具体的に中まで入って見ていただく想定ですので、全国の児童福 祉施設の被措置児童等虐待の検証をこの処遇支援専門委員会でしていただくというお願い にはなっておりません。それをどのような形でというのはまた今後少し考えていかなければ ならないことではないかと思っております。  それから小舎夫婦制の関係につきましては、国立きぬ川学院に限らず、国立武蔵野学院に つきましても同じような形でずっとさせていただいているところです。それについて先ほど 交代制というお話がありましたけれども、今後、国立児童自立支援施設でどのようなケアが 必要なのかということは両学院共通の課題ということで、両学院でまたいろいろケアについ て協議していくような仕掛けも今これから進めようという話になっておりますので、そのよ うな中でも一つのテーマとしてご議論があると思っております。  寮長・副寮長につきましては、お手元の報告書の14ページの中でも、五つ目の白丸で寮 長が男性、副寮長が女性の役割分担について、特に国立きぬ川学院が女子の施設であること も踏まえれば、こうしたことについてもやはり議論が必要なのではないかという指摘もいた だいているところで、これも今後の検討の中のテーマにはあるということです。以上です。 ○奥山委員  ということは、この報告書では、寮長が男性で副寮長が女性ということは前提として「あ り」ということですか。 ○藤原家庭福祉課長  現在そのような運用がされていることを踏まえての提言ということです。 ○奥山委員  とても不自然な印象を受けます。 ○柏女委員長  では、西澤委員。 ○西澤委員  西澤です。今の議論でどうなったのかよくわかりませんけれども、小舎夫婦制を見直せと いうような質問の意図であったように思いますが、必ずしも小舎夫婦制であれば密室化する というわけではないと私は思いますし、児童自立支援施設は感化院や教護院の時代から歴史 的に言えば小舎夫婦制が持っている力をうまく使ってきた。今回はそれが機能しなくなった という点に焦点を当てていただかないと、小舎夫婦制だからとなると、これはもしかしたら 非常にミスリーディングが起こるかもしれないので、その点は今の議論できちんと指摘され ていなかったような気がしました。なぜ相澤委員が言われないのかと私は思ったのですが、 関係上言えないのかもしれません。それは少し気になりましたので。 ○柏女委員長  では吉田委員、お願いいたします。 ○吉田委員  全国の状況の分析に関してはこれからということですが、特に意識して見ているせいか、 施設内虐待のことで言うと、児童自立支援施設の記事が続いたように思います。これは個々 の施設の運営の問題としてとらえるだけではなく、やはり制度の問題もあるのではないかと いうことも考えると、やはりこれは全国的な意味での検証が必要だろうと思いますので、ぜ ひこれはお願いしたい。  もう一つは虐待の方で、各自治体で行われている検証の検証があります。検証委員会が適 切に検証できているかどうか。これはやはり実際に自治体で検証する立場からすると、とて も参考になる。そうした意味で、やはり施設内虐待の検証はとても難しいものがありますの で、検証方法について何らかのガイドラインとなるものを示すという意味でも、やはり全国 的な意味での検証が必要だろうと思います。例えばその中で、個々の自治体での検証結果を どう公表するかということも、とても大きな課題だと思います。例えば先日、東京都で施設 内虐待についての報告書が出ましたけれども、我々が手にできるのはごく表面的な数字でし かない。ですから、実際にそれを役立てるようにするためにはどうしたらよいかということ です。また、もう一方でプライバシーをどうしたらよいかということを含めて、やはり国レ ベルでの検証や公表の方法なども議論していただくという意味で、全国レベルの検証をぜひ お願いしたいということだけお伝えしておきたいと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。それでは相澤委員、お願いいたします。 ○相澤委員  言わないで済まそうとしたわけではありません。最後に皆さまの意見を聞いた上で、国立 の施設として発言させていただこうかと思っておりました。やはり、あってはならないこと が起きたということで、再発防止に向けて国立機関としては皆さまの議論を踏まえ、また専 門委員会の議論を踏まえてきちんと対応していきたいと思います。子どもの権利擁護、ニー ズというようなことを踏まえ、先ほど支援形態の問題が出ましたけれども、支援形態のみな らず、さまざまな観点から改善すべきところは改善していって、改善したものが逆に皆さま 方に役立つような内容であれば、それをまた還元していくことに結び付けていきたいと考え ております。全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  実は寮長・副寮長にこだわる理由がありまして、一つは先ほど高田委員がおっしゃったこ とにも多少通じるのかもしれませんが、女子の児童自立支援施設は性的虐待を受けた子ども がかなり多く入っているわけです。寮長・副寮長にこだわったのは、やはり男性優位という メッセージを与えている組織であるということが一つあると思います。  もう一つは、海外でも性的虐待を受けた子どもを里親が預かるのはとても大変なこととな っております。そうすると、性的虐待を受けた子どもの小舎夫婦制でのあり方を相当慎重に 考えなければいけないことは確かだろうと思います。では大舎制であればよいかというと、 そのような問題ではないと思いますけれども、やはり丁寧に考えていかなければいけない問 題だと思いまして発言させていただきました。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。この件についていろいろと貴重なそれぞれのご経験、あるいは 大局的な視点からご意見をいただきましたので、ぜひ厚生労働省としても受け止めていただ いた上で検討を進めていただきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは、三つ目の議論に移っていきたいと思います。タイムスタディ調査などの集計・ 分析の関係について事務局からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○藤原家庭福祉課長  お手元の資料7は枝番を振っております。今からご説明するのは資料7-2と資料7-3が中 心になりますが、それ以外の資料につきまして位置付けだけを先に申し上げます。  資料7-1は、タイムスタディの追加調査を平成22年に入ってから乳児院とファミリーホ ームでさせていただいているというご報告です。先般のタイムスタディでは、乳児院におい て0〜3か月という小さい子どもがたまたまいなかったということがありましたので、そこ を補うということで、乳児院で調査をさせていただいているということです。それから、昨 年11月の本専門委員会におきまして、ファミリーホームのタイムスタディも検討の材料と して非常に重要ではないかというご指摘をいただきましたので、ファミリーホーム2か所で タイムスタディを実施したということです。現在の進捗につきましては2ページに現在デー タクリーニング中ということでご報告させていただいております。  それから資料7-4は、やはり昨年の専門委員会で、例えば職員自身の食事休憩や私用とい ったところは除いた形での集計が必要ではないかというご指摘がありましたので、それをし たものです。  それから資料7-5は保護者対応ということで、保護者からのクレームへの対応を含め、そ の部分について各施設で特別に切り出して、業務量の集計をしたという内容です。  資料7-6、資料7-7は、これも専門委員会のご議論で母子生活支援施設につきまして本園 と分園を分けた集計という話と、経営主体が公設と私設ではだいぶ状況が違うというご指摘 がありました。資料7-7はタイムスタディのデータではなく、その前に行われました悉皆調 査のデータですが、それを分けて集計したものです。  それでは資料7-2と資料7-3に進ませていただきたいと思います。  お手元に参考資料1ということで「タイムスタディ関係資料」という分厚い資料を配って おります。誠に恐縮ですが、この中に入れておりましたケアコード表のページの順番が間違 っていたところがありましたので、本日、机上にケアコード表だけを別刷りで配らせていた だいておりますので、ケアコード表をご参照いただくときは、こちらのケアコード表をご覧 いただきたいと思います。その他、ケアの調査票などはこの参考資料1に全部再現しており ますので、それも適宜ご覧いただければと思います。  まず資料7-2です。「アセスメント調査票の項目とケア時間の相関」ということで今回ご 報告するものです。1ページをお開きいただきますと、どのような分析をしたかということ のご紹介です。今、申し上げました参考資料1に子どもに関するアセスメントシートが子ど もについてのアセスメント票ということでそのもののコピーが入っておりますが、ここに入 っている項目と、今回のタイムスタディで子どもに提供されているケア時間の間にどのよう な関連性があるのか、ないのかというところを分散分析という形でやってみた内容です。こ のときに児童にかかわらない業務ということでケアコード表上は9000番台という扱いに なっている会議や先ほどの職員の休憩の話もありましたが、そのような部分は抜いた形でデ ータの分析をしております。1枚おめくりいただきますと、児童養護施設から分析が始まり ます。児童養護施設から全体に続いておりまして、それぞれの施設種別全体、それから大舎 だけを取り出したもの、小舎だけを取り出したものといった形で、部分集合の部分を取り出 して同じような分析をかけることをやっております。  まず、2ページの「児童養護施設」の表をご覧いただきますと、ここに調査票の項目がず っとあります。決定係数のところが相関の関係で一つご覧いただくところですが、今回は一 応全体を通して見ますとあまり強い相関がある決定係数は出てきておりませんが、一応 0.10は一定の関連性があるということで、決定係数が0.10以上になっているもの、なおか つ有意確率ということで、そこがたまたまなのかどうかというところも一応検証をかけてお りまして、有意確率が5%以下のものを特に決定係数のところに黒い丸を付けている形です。 ですから、有意確率を10%で見ますと、また少し印が増えてくるのですが、お手元のもの は有意確率5%というところで印が付してあるということです。  そして2ページの図をご覧いただきますと、児童養護施設全体では、年齢に関しましては、 年齢が高くなるほどケア時間が少なくなるという意味ですが一定の相関は見られましたが、 それ以外の項目では丸が付かなかった。特に右側の3ページに再現しておりますのは、2ペ ージの表の中段で「情緒・行動上の問題」の配点のところで年齢階層別に幾つか分析した結 果が出ておりますが、お手元の40ページ以下がその関係の説明になっております。今回、 子どもの状態をアセスメントシートで取るときに、41ページからありますけれども、「自閉 的傾向」その他幾つかの項目を調べて、17ぐらいの項目でチェックしていただいておりま す。これを41ページでいくと、例えば16〜18歳の区分でいきますと、「確かに問題あり」 に全部フルスコアで付くと100点満点。17項目全部に付くと100点満点という形で点数表 化しまして、この一人一人の子どもについての点数とケアの時間の関係を見たのが、戻りま すが3ページのグラフです。横軸が点数、縦軸がケア時間ということです。このような形で 見ていった場合に、児童養護施設ではあまりここは相関が出ていないという内容です。  4ページの大舎の児童養護施設では、「年齢」は一定の相関が出ました。それから「家庭 復帰の見通し」も一定の相関が出ましたが、やはりこの「情緒・行動上の問題」では、得点 とケア時間の相関はあまり見られていません。そういう意味では、全体はまたご覧いただき たいのですが、今回、そのような点で「情緒・行動上の問題」の得点との関係で一定の相関 が出ましたのは17ページです。「情緒障害児短期治療施設」に関しましては、一定の相関 が出たという内容です。それ以外にも「母子生活支援施設」の部分では多少相関が出ている 項目も幾つかありますが、全体を見渡しまして、やはり今回は子どもに対するケア時間と子 どもの状態が現状ではあまりはっきりした相関が出てこない。見方を変えますと同じような 状態の子どもにつきまして、かなりケアの時間がさまざまになっている。ばらついていると いう表現が適当かどうかということはありますが、そういうところが見られたところです。 これはいろいろな要因が考えられますので、また専門委員会のご議論が今日もあると思いま すが、例えば参考資料1の31ページ、これは前回の委員会で出させていただきましたグル ープインタビューにおける主な意見を表にしたものですが、児童養護施設の中でケア時間が 長いと現場の方が考えている子どもは、やはり他の子どもとのトラブルや保護者への対応と いったところにかなり影響があるというお話もございます。またケアの時間が短いところで は、一番下の段にありますけれども、他の児童のケアに時間を取られた結果として短くなっ ているということもございます。やはり今の現場におきましては、相対的に子どもの関係で ケアの時間が規定されている部分もあるのではないかなど、さまざまな要因が考えられると 事務局としては思っております。  時間の関係で先に進みます。もう1点、資料7-3「ケアの負担感とケア内容」をご覧いた だきたいと思います。これは全く別の分析です。分析の内容は1ページに解説を書かせてい ただいておりますが、これは職員に着目した分析でございます。それぞれの施設種別、また は施設の中でのケアの形態ごとに集計しておりますが、今回は例えば児童養護施設で調査を させていただいた職員の方々がどういうケアを行ったかを全部足し上げまして、その足し上 げたものを1日8時間労働という形で、480分という形に基準化し、発生ケア時間というも のをまず表で出させていただいております。それぞれのケアコードごとに出しておりますけ れども、その発生ケア時間の中で、今回タイムスタディのときにケアの負担が「重い」「な い」というところも併せて取っております。ケアの負担が「重い」「少しある」という答え があった時間の分数を発生ケア時間との関係で割合を取って、身体的・精神的それぞれの割 合を取ってここに数表化したという内容でございます。ですから、ケアをしながらケア時間 の中でどれぐらいの分数、割合として負担を感じているかという相対的な物差しということ で書いております。  2ページをご覧いただきますと、まず「児童養護施設」の関係でございますが、以下、幾 つか施設ごとに見られる特徴を申し上げます。左側にある「ケアコード」というのはケアの コード表の大分類でございます。1000番台から9000番台までございますが、児童養護施 設全体の表で見たときに、7000番台の家族や施設外資源との関係に割と身体的負担や精神 的負担を感じているという数値が出ています。実際にどのような内容かというのは、3ペー ジは大分類ではなくて中分類で表を作っておりますが、3ページの中分類でいきますと、ケ アコード73の「外部資源との連絡」は児童相談所や福祉事務所などとの連絡という項目で すが、このようなところで負担の数字が上がっているという内容でございます。  2ページに戻りますが、大舎と小舎でどう違うかを、三つある表の下の二つでそれぞれ区 分して集計しております。ケア全体を通じました合計欄で負担感割合の数字を見ますと、や はり大舎よりも小舎の方が負担を感じている時間の割合が高いという内容になっています。 では、何が高くしているかといいますと、2ページ下の二つの表を比べていただきますと、 「愛着関連・コミュニケーション」に小舎は丸が付いておりますが、大舎の方は付いていな いということで、小舎は負担を感じている、「愛着関連・コミニュケーション」のところで かなりスコアが上がっているという内容です。さらに細分化したものは5ページに中分類で 示しておりますので、それはまたご覧いただければと思います。また、小舎ではケアコード 1000番台の「身の回りの世話」でも精神的負担の割合が多いというスコアが出ております。 これは児童養護施設です。  お進みいただきまして9ページの「乳児院」でございます。9ページの表をご覧いただき ますと、乳児院でも2段目が小規模グループケア施設、3段目が小規模グループケア以外の 施設ですが、小規模グループケア施設の方が合計欄のところで負担感割合が高いという傾向 が出ております。その内容はやはり「愛着関連・コミュニケーション」というところにスコ アが上がっている。それから「身の回りの世話」のところで身体的負担というスコアが上が っているという状況がございます。  次は、18ページの「情緒障害児短期治療施設」ですが、情緒障害児短期治療施設に関し ましては、施設全体とそれを大舎と小舎に分割した表で見たときに、大舎と小舎で合計欄の 負担割合の数字があまり違ってない形になっております。サンプル数の問題など斟酌は要る と思いますけれども、他のところとの比較では特徴が見られるかというところでございます。  それから「児童自立支援施設」は26ページの一番上の表ですけれども、そもそも合計欄 の負担割合の数字の絶対値が他の施設と比べて随分高いスコアが出ております。特に中身的 にはケアコード5000番台の中に「自立支援」があるのですが、そこにスコアが出てきてい る。児童自立支援施設の自立支援というのは、ある意味でケアのまさしく本丸ということで すけれども、そういうスコアが出ているところでございます。  「母子生活支援施設」は36ページになりますが、こちらの方も特徴的な点は表の8000 番台。ケアコード8に「母親の支援」と書いてありますが、ここにやはりスコアが上がって きている。これはまさしく母子生活支援施設ならではのケアの部分でございますけれども、 特徴としてそういうものが出てきているということです。これもまたいろいろご議論いただ ければと思いますが、外部との関係の業務で負担感が児童養護施設で高く出ているという話 は、実は以前平成14年の厚生労働科学研究で才村先生がいろいろ分析されたときにもその ようなご指摘があったと記憶しております。それから、児童養護施設や乳児院でも小規模ケ アの職員の負担が非常に高いのが一つの特徴としてあると申し上げました。先ほど国立きぬ 川学院の関係のご報告も差し上げましたが、事務局としてはこの内容を読みながら、小規模 ケアの場合はやはり組織的なサポートが非常に大事であるという見方を持っているところ です。お時間を取りましたが、以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。今は17時40分で、18時まであまり時間がないのですけれど も、差し支えなければ少し時間を延長して、18時10分ぐらいまでを目途にご意見を伺えれ ばと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは奥山委員、お願いいたします。 ○奥山委員  まず、「アセスメント調査票の項目とケア時間の相関」です。「情緒・行動上の問題」の配 点表を見せていただいているのですけれど、これをバッサリと連続変数にしているのは非常 に問題があると思います。特に、数量加算をあまり詳しく知っているわけではないのですけ れども、恐らく、付けている人数が多いと点数が少なくなって、人数が少ないものに関して は確か点数が高くなると思います。そうすると、これを見てみますと、例えば抑うつ傾向は 多分あまり判断がされていないので「確かに問題あり」が少ない。7〜15歳を見ると9にな っているのですけれど、自閉的傾向は「確かに問題あり」でも6になるのですよね。こうい うものを連続変数で足してしまうのは少し乱暴な感じがするということと、よくわからない のが0〜2歳で「反社会的行動」にかなり高い点数が付いているのはなぜなのかと思うぐら いですけれども、この連続変数にするところは気になります。もしできれば、それぞれとの 相関がどうなのか。それぞれの項目との相関がどうなのかが気になるところだと私自身は思 っています。  それから、もう一つのチェックリストで養育問題のある子どもためのチェックリストに関 しては、低年齢の方はサブスケールを設けてあったと思うので、サブスケールの結果も少し 教えていただければと思います。  もう一つ、そういうものに対して非常に高い点数の子どもがどれぐらいのケアなのか。つ まり単に相関しているかどうかという見方ではなくて、そういう非常に問題がある子どもた ち、非常に点数の高い子どもたちが一体どのようなケア時間になっているのかという見方を した方が差が出てくる可能性はあるのではないかという気がするのです。少し気づいたとこ ろです。 ○柏女委員長  ありがとうございました。もしすぐに意見が出ないようでしたら、今の点について、事務 局の方で何かあれば。 ○藤原家庭福祉課長  この相関の見方につきましてはご意見がいろいろあると思います。例えば、今お話があり ました「情緒・行動上の問題」のところですけれども、他の項目でも何を基準としてそれと の対比で見るのかということについて、考えられるいろいろな組み合わせを全部やったとい うところまではまだできておりませんので、そういう点でまださらにやる余地はあると考え ております。ただ、今日この場で、そういう段階でもこれをあえてご報告しておりますのは、 やはり今回やってみまして、先ほども申し上げましたが児童養護施設だけをどうこうという ことではありませんけれども、子どもの状態に対するケアの時間、ここは時間しか見ていま せんけれども、時間のかけ方が相当さまざまになっている。今、奥山委員がおっしゃいまし たように、その中身も当然見る必要はあると思いますが、そういう話が入口にあるとすれば、 先ほどケアの標準化というお話もありましたけれども、このケアのプロトコール・標準とい うものを至急つくっていく議論をしないと、現状の中にここが着地点だ、モデルだというも のが見出せるような状況にはないのではないかという意を持っております。そういうことも ありまして、ご報告させていただいているということです。分析につきましては、またいろ いろとご指導ください。 ○柏女委員長  ありがとうございます。残された時間はあまりございませんけれど、先ほど審議官からも お話がありましたけれども、今日、中間の段階でご報告いただいたことなども踏まえながら、 どのようなケアの標準化を進めていけばよいのか。そして、そのためにどれをクロスさせて いったらよいのか、詳細に分析したらよいのか。そうしたことについての建設的な提言を、 ぜひお願いできればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。  では、藤野委員の次に高田委員ということでお願いいたします。 ○藤野委員  児童養護施設や乳児院などで、大舎よりも小舎の方がストレス感が多いということが出ま したけれども、それは当然だと思います。大舎でやりますと、どうしても集団養護になりま すから、規則をたくさんつくったり、管理をするとかマニュアル的な対応にならざるを得な いというのが実態だろうと思います。小舎ですと、それが個別の対応になりますので、非常 に千差万別。子ども一人一人に対する職員の対応ということになりますから、自分で考えて 自分と子どもとの関係で支援をするという形になっていますので、やはりストレス感や負担 も変わってくるのだろうと思います。  むしろ、どういうモデルにするのかという点では、いつも言っているように戦後の例えば 保護収容的なことから、本当の養育という形に変えていく。そういう養育の形というものは、 やはり24時間のいろいろな生活の営みの中で子どもの育ちに寄り添うことだろうと思いま す。その辺で、我々としては養育の生活単位の小規模化がどうしても必要だと思っています。 ただ、データで見ますと例えば今のグループケアの制度から言いますと大舎の中に一部分小 舎を持ってくるという形でやりますと、まず初期のころは、かなり荒れるといいますか、子 どもたちは今まで抑えられていたものをたくさん出してくるわけです。そういう状況から、 さらにそれが定着してくれば職員との愛着関係などが育ってくるということにもなります。  この全国児童養護施設協議会で出している「養育単位の小規模化プロジェクト」で提案し ていますけれども、小規模化を進めるということでは、やはり政策的な誘導がどうしても必 要だと思います。ここで提言という形で出していますが、施設における養育単位の小規模化 を推進するためには、ソフト面・ハード面ともに国の施策誘導が不可欠です。養育単位の小 規模化、移行推進事業を提案するということで、要はその辺の養育の中身まで含めた推進事 業のようなものがどうしても要ると思います。そういう意味では、全国児童養護施設協議会 が出している資料の6ページのところでそういう提案をしておりますので、またご検討くだ さい。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では高田委員、お願いします。 ○高田委員  私どもは情緒障害児短期治療施設ですので、これを見て実は驚いたのです。今、藤野委員 がおっしゃったように小舎の方が大変だという思いがしたのですが、どうもそうでもないら しいという結果が出ていた。この小舎を支えるバックアップシステムが必ずあって、それが かなり機能していると考えた方がよいのではないかと思い、少ない施設ですので、ぜひそう いうところの個別事例から学ぶべきものは学んでいただきたいと思いました。それから、児 童養護施設でも同じように、同じ小舎でも差が出ているのではないか。もし差が出ているの であれば、負担感の小さいところはどういうバックアップシステムを持っているのかという ことを見ていただければよいと思いました。 ○柏女委員長  ありがとうございます。貴重なご提言ではないかと思います。  では西澤委員、お願いいたします。 ○西澤委員  一つは繰言と、一つは建設的な発言だと思います。繰言は、このタイムスタディでは結局 何も出ないと前々からずっと言い続けてきたのに、今さらエビデンスだと言われてもという。 この部分を、エビデンスとはいかなくてもカニデンスかイカデンスぐらいになるような、そ ういうものをやった方が良いと言い続けた気がします。  ここからはカニデンスかイカデンスの部分ですが、先ほど審議官が言われたことの中で、 例えば藤野委員が言われたような労働基準法を守ろうとしたら6対4、6対5ぐらいの配置 基準ということですが、そういう小規模の小舎を可能にするための配置数です。小規模の方 が大規模よりも効果が高いということが出れば、今の話はつながりますか。要するに、審議 官が求められたようなエビデンスは、今からそんなに簡単に出るものではないと思うのです。 1年や2年かけたリサーチが必要だろうと。ただ、小規模の方が子どものケアにとっては良 いというものは今までの研究で幾つかあるのです。それを結びつけることで、多少の説得材 料になるのかならないのか。もし、なるのであればそちらの方に努力をしたいと思いますが。 ○柏女委員長  今の点で、審議官から何かございますか。 ○香取審議官  まず労働基準法との関係で言うと、労働基準法上の条件をクリアする配置をどう考えるか。 そもそも労働基準法違反は法律違反ですから。そうなったときの配置は、それはそれで議論 はできます。議論はできるのですが、大舎小舎の問題もそうですが、今回はこのデータしか お示ししていませんが、実際の作業の過程では個別のケア項目と個別の状態像、つまりアセ スメント項目それぞれのヒットの仕方と、それに対するケアがどう分散しているかという、 かなり細かいデータも実は取っています。お示しすると膨大なものになるのでお示ししてい ないのですが、全体として見たときに、やはり子どもの状態、アセスメント上の評価の出方 と提供されているケアの間に、総体で相関関係が残念ながらほとんど見出せないのが今の現 実です。それはご議論にありましたけれども、情緒障害児短期治療施設にある程度有意差が 出ているというのは、多分情緒障害児短期治療施設に入ってくる子どもの状態像がある程度 スクリーニングされているので、恐らくある程度の現場レベルでのケアの標準化が、暗黙値 かもしれませんけれどもできているということなのかもしれないと言えるのです。入ってく る子どもが、例えば20年前30年前と今とでどう状態が変わっていて、それとの関係で今 のケアの形が良いかどうかという議論を、やはりある程度しておかないといけない。もちろ ん大舎小舎はそれはそれで、こういう統計的なものでない形でデータ的に、あるいは子ども の状態の改善のようなことで出すデータはできると思いますけれども、恐らくそのことから だけで大舎小舎の議論を、例えば具体的な職員配置の部分にまで持っていくということはや はり少し難しいのではないか。  ここから先はまだ中で議論していませんが、実は養護の問題はここでも少し議論になりま したが、そもそも施設体系をどう考えるのか、結局それは施設類型というか職員配置の問題 も関係しますが、子どもの状態像とケアの専門性との関係をどのように整理していくのかと いう議論をやらないと、単純に今の施設類型を前提に職員を上げると。諸外国から比べても 絶対水準が低いので、ある程度上げていくことで、それなりにケアの水準が上がっていくと いうことは多分いえるので、それはできると思いますけれども、どういうケアを目指すかと いう議論をしたときには、やはりこの議論を乗り越えていかないと前に進めないのではない かというのが、来年・再来年の段階でどう対応するかは別問題として、そこはそういう問題 になるのではないかと思っていて、私は少し危機感を持っているのです。 ○西澤委員  一つは、情緒障害児短期治療施設の問題は、外れ値がないから出ているのだと思います。 ですから、児童養護施設の方も外れ値を除けば多分相関は出ると思います。細かいデータは 見ていないのでわかりません。その議論はまた別のところで。  結局、我々は何をすればよいかです。先ほどエビデンスを出せと言われて、今話を聞いて いるとどういうエビデンスを出せばよいのかわからなくなってきた。例えば今の、これで相 関が出ないというのも、ものすごく得点が高い子どもがケア時間がとても短いというのは見 えます。大舎でも小舎でも。これは問題行動が多いから外に飛び出していってケアするどこ ろではない子どもなのだろうと考えると、定点観測でやったデータが一番信頼できると思い ます。そういうデータは少しあるのです。一つの施設が小規模化して子どもたちの問題行動 がどう変わったか。あるいはケアの中身がどう変わったかというのは、症例研究のような形 ですが一応あるのです。そういうものをかき集めろと言われれば、かき集めます。ですから、 何を求められているのかが、今は自分の中でもわからないのです。エビデンスとおっしゃっ ているのは数値ですよね。今のは何かもう少し、その壁を乗り越えなくてはいけないという ような。何の壁なのだろうと思ったり。私自身、混乱してしまいました。すみません。 ○柏女委員長  では今田委員、それから奥山委員、大塩委員の順番でお願いします。時間がかなり押して おりますので、手短にお願いできればと思います。 ○今田委員  タイムスタディは思ったほどの成果がなかったとおっしゃるのは、そのとおりだと私も思 っております。ただ、この小舎制・大舎制は、乳児院ではいわゆるユニットですけれども、 負担感が増すというのは非常に良い結果だったと思います。いかに真面目に接しているかの 表れですから、子ども自身もそれに対して要求が増す。そうすると、ますます負担感が増す。 良いサイクルが小舎から出てくる。これはエビデンスだろうと思います。ですから、エビデ ンスというものをコホート的に、つまり前方視的に見るとなるとかなり時間がかかってくる と思います。したがって、では今の職員配置が100%良いのかというエビデンスは逆に証明 しなければいけないと思います。今の職員配置で十分とは言えなくてもよいのだというエビ デンスも同時に出さないと。増やしたらどんな良いエビデンスが出るのだということよりも 簡単に出るのではないか。お手元にお配りしています我々の調査でも、20年前30年前とい う話がありましたけれども、そことの対比をしています。大きく変動します。入所する子ど もの変化も激しいです。虐待に至っては20年前の約2倍になっておりますし、障害を持っ た、支援が必要な親もたくさんいらっしゃるようになった。あるいは通院にかかる時間が膨 大なものがある。しかも入院に至っては1,500件を超えております。つまり単純に割ると入 所している45%が入院しているということです。これは一般の家庭に比べると、膨大な入 院率であるし通院率でもあるのです。これに大きな人手が取られている。これだけでも立派 なエビデンスだと私たちは考えておりますが、いかがでしょうか。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では、奥山委員。 ○奥山委員  基本的に私もタイムスタディで何が出るのかということは確かに前に話したけれども、や はりこれでやれるところはやらなければいけないと思っています。ですから、できるだけ突 き詰めていって本当にないとしたら、私は逆に、ケアが目いっぱいなので子どもによって差 をつけている余裕がないと見た方がよいのではないか。これ自体が一つの結果ではないかと 思います。実際に、本当にケアが必要な子どもと、ケアが必要でない子どもをきちんとアセ スメントをして、手を配分している余裕などないという結果なのではないか。そうであると したら、次に行わなければいけないのが、本当に良いケアをしようとしたら、どうやればよ いのか。そこは、これでは出ないということだと思います。それを今後やっていかなければ ならないと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では大塩委員、お願いします。 ○大塩委員  私も香取審議官からいろいろお話を伺って、エビデンスと言われたときに少し気落ちして おりましたけれども、母子生活支援施設のタイムスタディの結果の中で「ケアの負担感とケ ア内容」のところで、やはり母親の支援に対して負担感がかなり出ているということでした が、母親を支えているからこそ、家族での生活が保障できるのだということが浮き彫りにさ れたというのが1点。  もう一つは、昨年からお願いしておりまして、「母子生活支援施設の経営主体別の再集計 結果」という資料7-7を出していただいておりますが、これは悉皆調査の中での調査結果で すけれども、5ページ6ページと続きますが、公的な施設と民間の施設における入所の状況 です。これが非常に差が出てきております。これは地域間格差以前に、運営主体によって施 設間格差が出てきてしまっているということが如実に表れております。特に、5ページの一 番下の表では、公的な施設では55%しか入所がないという状況が起こっております。とい うことは、公的な施設は最低基準だけの職員しか配置していないので、DV被害者であると か、ケアが必要な母子世帯の受入れができない状態が起こっているということです。今日提 出させていただきました資料の最終ページの図表13「1施設当たりの職員数の平均」は前 回の専門委員会でも提出させていただいたものですけれども、公設民営の施設では職員数が 6年間で1人も増えていない。これだけ加算の職員が配置されているにもかかわらず、公設 の施設では職員が、プラス1にもなっていないという状況が起こっていて、これが、大変な 状況の母子家庭の方々を受入れることができない状態になっており、入所も減り運営も困難 になっているというように連鎖していると思われます。  松風委員からもありましたけれど、これで来年4月から条例委任されたときには、最低基 準よりも施設の運営自体が危ない状況での最低条件のまま条例委任されていくと、施設が地 域でお困りの母子家庭の方々を受入れできないということになってきますので、条例委任さ れるまでこの短い時間の中で何ができるのかということに危機感を持っております。以上で す。 ○柏女委員長  ありがとうございます。それでは相澤委員、どうぞ。 ○相澤委員  このデータから何が読み取れるかということですけれども、例えば、情緒障害児短期治療 施設の場合は、「情緒・行動上の問題」の得点とケア時間とが相関があるということですけ れども、先ほど高田委員はシステムの問題が背景にあると、香取審議官はアセスメントに問 題があるということを言っておられましたけれども、やはり配置基準を考えると、心理職が 10対1できちんと配置されているということです。この配置は非常に大きいだろうと思い ます。要するにバックアップもしてくれるし、アセスメントもケアワーカーではわからない ものをチームとして見立てることができ、チームアプローチできるという意味では「情緒・ 行動上の問題」に対応できている。他の施設はそれに対応できていない。これは一つのエビ デンスではないか。そういう意味で心理職を10対1ぐらいで、どこの施設も配置をしなけ ればいけないというデータが出たのではないかと解釈できるのではないかということです。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では、藤野委員。次に藤井委員、お願いします。 ○藤野委員  やはり、入っている子どもの質といいますか、その辺が問題だと思います。例えば戦後の、 戦災孤児の時代は家庭代替という形で、それこそ人生丸抱えでいったん入った子どもについ ては、冠婚葬祭まで含めて、それこそ父親代わり母親代わりでみるというような時代から、 今はほとんどが親がいる。親がいて60%が被虐待あるいは、それと発達障害等の第二次的 な不適を起こした子どもたちが来ているというような児童養護施設の状況の中で、例えばこ のデータの中で、以前にも言ったかもしれませんが、保護者の家庭復帰の見込みがある子ど もについては、あまり手がかかっていない。むしろ家庭復帰の見込みがあやふやな子どもに 関しては、かなりケア時間が長いというデータ、あるいは今日のデータの中でも、職員は対 外的なところに非常に負担感を持っている。それは、やはりケアの中身が変わってきている わけです。そういうところが、最低基準や人員配置などはむしろ戦後のそういう保護収容か ら変わっていない。そこが先ほど相澤委員からも例えば心理職が云々という話がありました。 そういうことで、今回の調査結果の中で、読めるところはたくさんあると思います。ですか ら、人員配置の問題にしろ、施設での養育内容にとって重要なケア単位の小規模化問題など いろいろなことで、こうすれば、必ず効果が上がるということを国民に示すことが可能だと 思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では藤井委員、お願いします。 ○藤井委員  提言というよりも、感想にしかならないという感じですが、タイムスタディの結果を見さ せていただいて。これは一昨日でしたか、事前に送っていただいたのですが、今日の説明を 聞くまで非常にわかりづらいというのが率直な感想です。読み込み方の問題もあるかもしれ ませんけれど、これを逆に第三者に説明するときに使うとすれば、もっと難しくなるという 印象を受けます。つまり、何が言いたいかというと、目的は先ほど審議官がおっしゃったよ うに説得力のあるデータなのです。ですから、例えば児童養護施設が今現在も大舎制が6、 7割なのです。しかし、小舎制に切り替わってきている施設と小規模化が進んでいるという 実態が片方にあります。「小舎はいいですよ」という根拠は、どこかで明確になっているか らだと思います。ただ、実態としては大舎制がまだ6、7割あるという現状の中で、全国の 児童養護施設が全部小規模化しているという標準化はできていないという状態もあります。 しかし、小舎が良いということも、このタイムスタディでやってるように、証明するのが難 しいのかもしれないと思います。この議論を始めるときに、私は、国が子育てに関する日本 のガイドラインをつくらないとわからないのではないですかと、お話しさせていただいたこ とがあります。その意味で、議論していく的がどうも私自身がわからないところがあります。 ですから、むしろもっと説得力を持つという意味では、本当に必要なことは何なのかという 意味で、「子ども・子育て新システム検討会議」の流れでも、「一人一人の子どもが」という キーワードのようなものもありますから、できるだけ一人の子どもとか、本当のニーズとい った部分から見ていった方がわかりやすいのではないかということを感じます。  それから、先ほど西澤委員からもありました定点観測というところから考えるならば、大 勢のデータを集めるよりは1人の職員のモニタリングをして、どれぐらいの量を働いている のか、どれぐらいの苦労があるのか、これを証明していくといいますか、まとめ上げていく 方がむしろ力になるのではないかという感想を持ちました。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では高田委員、だいぶ時間も過ぎておりますので、手短にお願 いします。 ○高田委員  奥山委員がおっしゃたように、人手が足りないので個々の子どもに目がいっていないとい う状態がこのデータの中に表れてという仮説を立てるとすれば、手厚いケア、いわゆる人で すよね、職員対子どもの比率で施設を分けて、もう1回同じデータを取ってみることで確か めてください。情緒障害児短期治療施設は心理職がいるからという大変ありがたい意見を相 澤委員からいただいたのですが、私は単に人手が多いということもあると思っています。で すから、情緒障害児短期治療施設並みの人手を確保している施設を児童養護施設の中でも集 めて同じようなデータを取ったときに、もし相関が浮かんでくるとすれば、やはりそれは人 手の問題となりますので、一度そういうこともやってごらんになることが大事だと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。松風委員、何かありますか。 ○松風委員  よく似た意見になるかもしれませんが、私も、問題がありながら手が掛けられていないの はなぜだろうというところに着目すべきではないかと思いました。奥山委員がご指摘のよう に、問題のある子どもはなぜ手がかからないのか、またはかけられていないのかという分析 を、ケースをピックアップして深めていく。それは事例検討が良いのか、それとも奥山委員 がおっしゃったような分析をピックアップしてもう一度組み替えていくのか。いろいろ方法 はあると思いますけれども、やはり個々に目を向けないと。要するに、ケアが必要な子ども に手がかかっていないという現実に目を向けないと問題が見えてこないのではなかろうか と思います。そういう場合には、ここの調査された施設ではそうではないかもしれませんけ れども、問題が先送りされることになるという、それをどのように我々は評価するのかとい うことを持たないと、現状はそれで子どもの生活は成り立っている、問題は解決していると いう前提でこの資料を見ると、間違うのではないかと思います。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。かなり時間が過ぎております。木ノ内委員、今日はご発言があ りませんので、どうぞ。 ○木ノ内委員  テーマが違うような気がします。実はずっと一般企業の中に身を置いてきた者としては、 どうしてもタイムスタディ調査というものが固定観念的に否定できない感じがするのです。 どうしても工場労働のタイム措置問題をやっている感じがしますので。この調査から見えて くるいわゆるエビデンスというと、一つは生産性をチェックする、それからもう一つはやは り人が足りないとか、そういうことをエビデンスとして出してくるには非常によいのですけ れども、実は労働のコンピテンシーをきちんと見ようと思うと、なかなかそういう調査には なりにくいところがあります。先ほども話がありましたように、小舎というのは手がかかる。 その手がかかる内容を見ると、「愛着関連・コミニュケーション」のためだということであ れば、これは実はコンピテンシーではないかと思うので、そういう部分を、本来的な業務を きちんと集中できるような環境をつくっていくためのものをうまくつくれないのかという ことで、大舎の方が実はマニュアルがあるからよいというような、短く、生産性が上がると いうことがいえるかもしれませんが、実は養育に馴染まないのではないかと思います。養育 に必要なコンピテンシーというものをきちんと評価してから、この調査の分析をしてほしい と思います。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。それでは香取審議官、お願いします。 ○香取審議官  もう時間も来ておりますので、簡単に申し上げますが、 まずこのデータをどう見るかと いうことは、実はそのこと自体が実はこの会議のテーマではないかと私は思います。タイム スタディは、現状でどのようなケアが行われているか、ここでは時間しか出していませんが、 提供されている行為ごとに、どういう業務を行われているかを示しているものですから、ケ ア行動は同時に業務行動でもありますので、まさに今、現実に行われているケアがどういう ものかということを実はお示ししたものということになります。ですから、今が良いという 前提でやっているわけでもないですし、まさに事実としてどうかということで、ここからど ういうことをどのように見て取るかということがまさに問題なのだと思います。その意味で 言うと、本日の議論のかなりの部分は今のタイムスタディの細かいデータの分析の中から答 えが出てくるものがかなり多いということで、それはまた整理をしてお示ししようと思って いますが、2点、私から今日申し上げたい。  一つは、先ほど藤野委員がおっしゃったことで、子どもが変わっていくという現実の中で、 ケアの形やケアの哲学が対応してきているのかどうかということが、まさにそれが問題にな っているのだろうと思います。専門の皆さまの前で恐縮ですが、正直なことを言えば、この タイムスタディから出てくるデータは、子どもの状態に見合った十分なケアが現場でできて いるとはやはり思えないという結論ではないかと思います。先ほど標準化という話をしまし たが、実はもう一つ大事なことは、個別ケアができるているかどうかということが我々の問 題意識で、実はこのデータからも、先ほど相関がある・ないということで、問題得点が上が るに従ってケアが増えていないという議論がありましたが、実はこのデータからもう一つ読 み取れることは、例えば「情緒・行動上の問題」得点がほとんど同じ集団の中で、0分に近 いケアから300分に近いケアまで分散しているということになると、これは、これ以外の 要素で、何らかの理由で分散していることがない限り、それは実は個別のアセスメントに基 づいたケアが実はできていないということを多分意味する。それから、人の配置ということ でいうと、ここにも少し出ていますけれど、人の配置が厚くなったからといってケアが厚く なっているかというと、時間的にも内容的にも実はあまり変化がないということです。それ と負担感のデータを別に取っているというのは、個々の行為は時間では計れない要素がある ので、それを実は負担感で取るわけですが、そういう相関で取っても子どもの状態度との優 位の相関が出てこないということで、先ほど乗り越えなければいけない壁があると言ったの は、そういう現実から我々は立脚して議論する必要があるのではないかと思います。  これは、実はどこまで取れているかということが問題なのですが、一番大事なことは、子 どものアセスメントスコアがどう変わっているのかということ。つまり、状態がどのように 改善しているのか、問題が解決しているのかということと、提供されているケアの内容なり 時間との関係をきちんと説明できる形がつくれるかどうかということなので、この議論はお っしゃるように結構根が深いので、もう少し時間がかかるのではないかと思います。いずれ にしても、その辺の議論をきちんとした上で、どの部分に焦点を当ててケアをつくっていく かという議論を引き続き、ぜひ。我々もできるだけいろいろな文献や情報やデータを調べて いきたいと思いますけれども、ご議論いただければと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。藤原家庭福祉課長、何かございますか。 ○藤原家庭福祉課長  細かい点だけを何点か。先ほど奥山委員から17項目それぞれの相関という話がありまし て、それは一応事務局でやった経緯はございますが、相関はそれぞれについてあまり出てい ないという話でございますが、詳細はまたご説明させていただきたいと思います。  それから、西澤委員からとんでもないケースが入っているのではないかというご指摘もあ りましたが、一応このアセスメントの相関の中では、突発事象が発生しているようなケース を除くとか、かなり平均から外れているようなものは外して分析はしているのですが、それ が十分かどうかというのは、またあるかもしれませんが、一応そこはやっているということ は申し上げたいと思います。、細かい点ですが。 ○柏女委員長  ありがとうございました。それでは、この議論はここで終わりにさせていただきたい思い ます。さまざまなご意見を頂戴いたしました。このデータからどう出発していくか、どうエ ビデンスを出していくかという議論はとても大事なことですけれども、それと同時に、高田 委員から、それ以外の委員からもありましたけれども、このデータを出さしめている他の要 因、バックアップシステムその他がここでは計られていない他の要因というものをどう見て いくのかということも視野に入れていくべきではないかといった議論もありました。あるい は何人かの委員や香取審議官からも出ておりましたけれども、そもそもどういう育ちをする ことが必要なのかという、いわばケアの哲学論の話も念頭に置いておかなければならない。 それは恐らく諸外国の動向がどうなっているかとか、そもそも例えば個別的なケアを目指す ところを世界全体が目指しているといったケアの哲学論についても視野に入れていかなけ ればいけないだろうとも思いました。  こうした議論を勉強会とこの専門委員会を交互に開くことで詰めていきたいと思います ので、今日も現場の先生方から幾つも提言をいただいておりますけれども、ぜひ提言をお寄 せいただければと思います。それから、この議論はそれほど悠長に続けているわけにはいか ないというご意見もございました。半年ぶりの専門委員会ということ、そして検討のスピー ドがかなり速いということもありまして、今後この議論の落としどころと言いましょうか、 結論をどこまでに出していくのかという、あるいは例えば法律改正にはどこに入れ、そして 最低基準の改正等にはどこまでのタイムがあるのか、そうしたスケジュールも併せて考えな がら議論をしていかなければならないと思いました。ぜひ、力を合わせて進めていければと 思っています。  最後に、委員長としてではなくて一委員として、少しだけお時間をいただければと思いま す。お手元に「『こうのとりのゆりかご』が問いかけるもの」というチラシが入っていると 思います。一昨日、熊本市から2009年度の「こうのとりのゆりかご」に預けられた子ども の状況が報告されました。3年弱で57人の子どもが「こうのとりのゆりかご」に預け入れ られていたことになります。この委員会でも山縣委員、奥山委員と私の3人が、この検証会 議に携わっておりまして、昨年11月に最終報告を出させていただきました。国に対しても 幾つか提言を行っておりますし、また社会的養護のあり方についても各種の提言を行ってお ります。この専門委員会として、また厚生労働省として、この「こうのとりのゆりかご」が 提起した問題にどのような対応をしていくのかといったことも視野に入れてご検討いただ ければと思っています。以上、一委員としてのお願いをさせていただきました。  それでは、今日の議論をこれで終了とさせていただきたいと思いますが、次回以降のこと について、事務局から何かございますでしょうか。 ○藤原家庭福祉課長  本日は大変ありがとうございました。貴重なご意見も踏まえながら、引き続き検討してま いりたいと思います。次回の委員会の日程につきましては、今現在は未定でございますが、 あらためてご相談・ご連絡を差し上げたいと思います。ありがとうございました。 ○柏女委員長  それでは、今日はこれで終了とさせていただきます。私の不手際で時間が30分近く延び てしまったことをお詫び申し上げて、この会を終了させていただきたいと思います。どうも ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 久保  連絡先 03−5253−1111(内線7888)