10/05/18 平成22年度第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会運営委員会議事録 薬事・食品衛生審議会 平成22年度 第1回 血液事業部会運営委員会 議事録 1.日時及び場所   平成22年5月18日(火)10:00〜11:30   弘済会館 「菊」の間   東京都港区新橋1-18-1 2.出席委員(6名)五十音順   ○大平 勝美、岡田 義昭、◎佐川 公矯、花井 十伍、半田 誠、山口 照英   (注)◎委員長、○委員長代理   他 参考人 3.議題   1. 開会   2.委員長の選出及び委員長代理の指名   3.議事要旨の確認   4.感染症定期報告について   5.血液製剤に関する報告事項について   6.日本赤十字社からの報告事項について   7.その他   8. 閉会 4.備考   本調査会は、公開で開催された。 ○難波江血液対策課課長補佐 それでは、定刻を過ぎておりますので、大平委員、まだお見えに なられていませんが、ただいまから「平成22年度第1回血液事業部会運営委員会」を開催したい と思います。なお、本日は公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願いします。  まず初めに、委員に交代がございましたので、お知らせさせていただきます。  血液事業部会、親部会の方ですが、平成22年3月25日付で、早稲田大学理工学術院先進理工 学部の池田康夫先生が血液事業部会長を辞任され、東京大学医学部附属病院輸血部教授・輸血部 長の高橋孝喜先生が新たに血液事業部会長に就任され、また同時に、血液事業部会運営委員会の 委員を辞任されました。  また、慶應義塾大学医学部輸血・細胞療法部教授半田誠先生が新たに血液事業部会の委員に就 任されました。また、半田先生につきましては、薬事分科会血液事業部会運営委員会規程第3条 第1項に基づき、血液事業部会高橋部会長により、新たに運営委員会の委員に指名されましたの で、御紹介させていただきます。  また、本日は、採血事業者等、血液事業の担い手として、日本赤十字社血液事業本部の田所憲 治さん、俵国芳さん、日野学さん、百瀬俊也さんにお越しいただいておりますので、どうぞよろ しくお願いいたします。  次に、事務局にも異動がございましたので、御紹介させていただきます。大平委員がいらっし ゃいました。4月1日付で、岡安秀樹課長補佐の後任として猪俣以夫里が着任いたしました。ど うぞよろしくお願いします。 ○猪俣血液対策課課長補佐 猪俣と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○難波江血液対策課課長補佐 それでは議題1ですが、運営委員会規程第4条第1項により、委 員長の選出を行いたいと思います。委員長は、委員による互選となっておりますが、どなたか御 推薦はございませんでしょうか。 ○山口委員 よろしいでしょうか。御経験と御見識から、佐川先生に委員長に就任していただけ ればと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○難波江血液対策課課長補佐 ただいま佐川先生の御推薦がございましたが、ほかにございませ んでしょうか。 ○難波江血液対策課課長補佐 それでは、異議がございませんでしたので、佐川委員に委員長を お願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。では、佐川先生、委員長席にお移りく ださい。 ○佐川委員長 佐川公矯と申します。それでは、皆様の御指名によりまして運営委員会の委員長 を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は、安全で適正な輸血療法が実施できるように、委員の先生方と引き続き努力を重ねていき たいと考えておりますので、どうぞ御協力のほどよろしくお願い申し上げます。  まず、運営委員会規程第4条第3項に基づき、委員長代理の指名を委員長が行うこととされて いますので、引き続き大平勝美委員に委員長代理をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょ うか。 ○佐川委員長 ありがとうございます。  それでは、大平委員、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。 ○大平委員 よろしくお願いいたします。 ○佐川委員長 それでは、初めに事務局より資料の確認をお願いいたします。 ○難波江血液対策課課長補佐 それでは、事務局より資料の確認をさせていただきます。お手元 資料1枚目が「座席表」でございます。1枚おめくりだきまして「委員名簿」となっております。 続きまして、「議事次第」でございます。資料1「前回の委員会の議事要旨」でございます。資料 2「感染症定期報告に関する今後の対応について」でございます。それから、分厚いのが資料2 の文献一式となっております。それから、資料3−1「供血者からの遡及調査の進捗状況につい て」でございます。資料3−2が「血液製剤に関する報告事項について」でございます。資料3 −3が「献血件数及びHIV抗体・NAT陽性検査」でございます。資料4が「XMRVの疫学 に関する文献一覧」となっております。資料5が「日本赤十字社血液事業本部組織の変更につい て」でございます。資料6−1が「フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について」で ございます。以上でございます。不足等ございましたら、お知らせくださいませ。よろしいでし ょうか。 ○佐川委員長 それでは、議題2「議事要旨の確認」でありますが、資料1としてお配りいたし ました議事要旨について、御意見があれば事務局まで御連絡いただきたいと思います。  次に、議題3「感染症定期報告について」です。まず、事務局から資料の説明をお願いいたし ます。 ○難波江血液対策課課長補佐 それでは、資料2に基づきまして感染症定期報告をさせていただ きます。今回、新規の文献といたしましては18本ございます。お手元資料2の一覧表に基づいて 御説明させていただきます。  まず、1本目ですが、6ページ目右側に新出文献ナンバー1と書いているものでございます。 B型肝炎で、出典は日本肝臓学会大会第13回、昨年の肝臓学会大会のものでございます。概要で すが、輸血後検査におけるHBV陽性例の発生状況とその原因について全国調査を行った。2007 年1月から12月の輸血後検査におけるHBV-DNAまたはHBs抗原陽性例経験の有無を問い、有経 験施設には個別調査を行った結果、輸血後HBV陽性例の経験施設37のうち、18施設が37症例を 回答した。輸血前(保管)検体の検査結果と献血者保管検体の個別NAT検査の成績を基に、既感 染例、輸血感染例、再活性化例、その他、分類不能の5分類に該当する症例は、それぞれ19、4、 6、0、8例であり、輸血を要する治療を行った患者にHBV活性化が存在することが判明した。 輸血によるHBV伝播とHBV再活性化の鑑別には、輸血前のHBs・HBc抗体検査か輸血前検体保 管が必要であるという文献でございます。  続きまして、7ページ目の文献2ございますが、これは昨年8月にFDAが出したガイダンスで ございます。2009年8月、米国FDAは、HIV-1グループOの感染リスクの高いドナーの管理に 関する勧告と題した企業向けガイダンスを発表し、即時適用するように求めた。この内容は、96 年に出されたガイダンスのうち、特にアフリカの国のリストに更新があった。それに基づく変更 となっております。  続きまして、8ページの文献3でございます。アメリカ・トリパノソーマ症、シャーガス病に ついてでございます。昨年の日本感染症学会の東日本地方大会で報告されたものでございます。 近年、各地医療機関から依頼のあった心疾患患者41名について、シャーガス病原体Trypanosoma cruzi血清抗体検査を行った結果、15名が明らかに陽性を示し、シャーガス病が示唆された。更に、 抗体陽性者血液からT. cruzi-DNAを検出し、また血液培養の結果、2名からT. cruzi虫体を分離 した。慢性の病原体キャリアが日本に存在することが明らかとなったが、媒介昆虫の存在しない 国内において感染経路は二次感染であるため、事前の抗体検査で防ぐことができるというもので ございます。  ここまでで御意見等ございましたら、よろしくお願いします。 ○佐川委員長 今のところでいかがでしょうか。御意見、御質問ございませんか。岡田先生、ど うぞ。 ○岡田委員 3番のシャーガス病ですけれども、日本と中南米の諸国と、昔、ブラジルに移住し た方が多かったりして、日本国内においてブラジル出身の方が結構数多くいらっしゃいますので、 こういう日本には従来なかったシャーガス病に感染した方が国内に、数は少ないのですけれども、 いるということです。それで、こういう陽性例があるということは、輸血を介して感染する可能 性もなきにしもあらずですので、対策の方をしっかりやっていただきたいと考えています。 ○佐川委員長 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。 ○佐川委員長 それでは、引き続きお願いいたします。 ○難波江血液対策課課長補佐 続きまして、9ページ、文献4でございます。ウイルス性脳炎と いうことで、CDCのEIDに昨年10月報告されたものでございますが、2008年7月、オースト リア東部の山岳地帯において6例が感染したTBE(Tick-born encephalitis)アウトブレイクの調 査が行われた。初発患者の羊飼いは、高山牧場地に24日間滞在後、髄膜炎の臨床症状を呈し、TBE virus感染陽性と確定された。患者はダニに咬合された記憶はなく、発症8から11日前に非殺菌 のヤギ乳及び牛乳から製造された自家製チーズを食べていた。同じチーズを食べた6名中5名が TBEV感染と診断され、非感染であった1例はチーズを食べた直後、嘔吐していた。チーズはヤ ギ1頭及び牛3頭の乳から製造されたが、そのヤギはHI及び中和抗体検査でTBEV陽性であり、 牛3頭は抗体陰性であった。また、ホエイ及びヤギ乳を与えられ、同じ牧草地で飼育されていた 豚4頭がTBE抗体陽性を示した。このアウトブレイクは、中央ヨーロッパ高地におけるTBEの新 興とTBE経口感染の高い効率性を示したというものでございます。  続きまして、文献5、ウイルス感染でJournal of General of Virologyに去年報告されたものでご ざいます。1997年、インドケララ州で発生した脳炎アウトブレイクの調査において、蚊のプール からアルボウイルスが分離された。補体結合検査により日本脳炎とウエストナイルウイルスに交 差反応を示すアルボウイルスの特徴が示され、アルボ分離株に関する過免疫血清を使用したプラ ーク減少−中和抗体反応検査の結果、血清は日本脳炎ウイルスでは陽性を示さず、ウエストナイ ルウイルスで弱陽性であった。このアルボウイルスはバガサウイルスの特徴を示し、脳炎患者の 血清は15%がバガサウイルス中和抗体陽性を示した。インドからの初のバガサウイルスの分離の 報告であり、また人間集団がバガサウイルスに暴露されていることが示唆された。これは、96年 当時は日本脳炎の集団発生と思われていたようですが、その後、残っていたものを調べたらバガ サウイルスであったと。バガサウイルスは、これまでアフリカなどでは報告されていたのですけ れども、今回、インドで初めて報告されたという文献でございます。  続きまして、10ページ、文献6番、ウエストナイルでございます。これは、昨年、CDCのE IDで報告されたものですが、ウエストナイルウイルスの感染状況と、2003年から2008年に供給 された米国製血漿由来静注用免疫グロブリン製剤(IGIV)における中和抗体価の関係が調査され た。ウエストナイルウイルスは1999年に米国に持ち込まれたが、2003年にIGIVのウエストナイ ルウイルス中和抗体平均値が顕著に上昇し、米国人口の0.5%がウエストナイルウイルスに感染し たと推定された。また、米国の人口における既感性者の割合は毎年0.1%増加し、IGIVの中和抗 体価平均値とおおむね相関があった。2008年に出荷されたIGIVの中和抗体価は平均21であり、 NATでウエストナイルウイルス感染が確定したヒトから得られた血漿では、更に高い抗体価であ った。血漿中IgG濃度を補正し、IGIV調整濃度10%と比較すると血漿試料はIGIVより100倍高 値であった。この結果は、ウエストナイルウイルス既感染者は米国人口の1%であると推定した これまでの報告と一致したというものでございます。  もう一本、ウエストナイルが下にございますので、読ませていただきます。これは、FDAの ガイダンスとして昨年11月に出されたものでございます。2009年11月、FDAは企業向けガイ ダンス「輸血目的の全血及び血液成分の供血者からのウエストナイルウイルス感染リスクを減じ るためのNATの使用」を発表した。勧告の内容は、検査、ユニット管理及び供血者管理として、 輸血目的の全血及び血液成分の供血サンプルにつき、承認されたNAT(ミニプールナットもしく は個別ナット)を用いてウエストナイルウイルスの通年検査を行うこと。ウエストナイルウイル ス高活動地域では、個別NATを推奨する。ミニプールNATによる検査の結果、陰性であったミ ニプールを構成していた検査サンプルのユニットは出荷できる。ミニプールがNAT陽性を示した 場合は、個別NATを用いて各サンプルを検査し、陽性を示したユニットを特定するという内容と なっております。  ここまでで何かございましたら。お願いします。 ○佐川委員長 いかがでしょうか、今までの御報告に関して御質問、御意見、ございませんか。 山口先生、どうぞ。 ○山口委員 FDAのガイダンスは、既にドラフトで発表されていたものがファイナライズされ たということだと思うのです。幸いにして日本にはウエストナイルは入っていないですが、もし ブレイクした場合には、こういうところが対応の非常に参考になるだろう。特に、非常に高発生 した場合には個別NATをする必要性がでてきた場合の対応についても詳細に書かれていますの で、そういう点が参考になるだろうと思われます。 ○佐川委員長 日本においても浸潤、蔓延した場合には、これが参考になるだろうという御意見 でありました。よろしいでしょうか。 ○佐川委員長 では、難波江先生、引き続き。 ○難波江血液対策課課長補佐 続きまして、文献8、これはGoogle Newsからですが、2009年12 月18日、臓器提供者から少なくとも1人の臓器移植者に極めて珍しい感染が認められ、初のアメ ーバ(Balamuthia mandrillaris)のヒト−ヒト感染が報じられた。11月にUniversity of Mississippi Medical Center)で神経障害で亡くなった患者から臓器提供を受けた4例のうち、2例は重症、そ れ以外は無症状であり、CDCは1例にこのアメーバを確認した。この微小寄生虫は土壌で発見 され、ヒト、馬、犬、羊及び霊長類に脳炎を引き起こす。免疫抑制状態にある臓器移植患者では、 危険な寄生虫である。ヒト感染は極めて珍しく、90年の発見後、世界で150例のみが報告されて いるというものでございます。  続きまして、9番、チクングニヤです。昨年の日本感染症学会の東日本地方大会で報告された ものでございます。2009年5〜6月、東南アジアから帰国後、関節痛を主訴に来院した3例はチ クングニアウイルスIgM抗体おび中和抗体陽性であり、血清学的にチクングニヤ熱と診断された というものでございます。3例は、それぞれインドネシア・スマトラ、インドネシア・ジャワ及 びマレーシア・クアラルンプール郊外に渡航し、いずれも現地で発熱及び関節痛が出現した。解 熱したが帰国後も関節痛は持続し、受診に至ったというものでございます。  10番、デング熱です。ベトナム・ハノイ市では、デング熱症例が深刻な増加を示しており、2009 年初頭から8月下旬までに2,500症例が報告され、これは2008年の同時期と比べて10倍以上であ った。ホーチミン市では、デング熱症例数の急増はないものの、多くの患者が重症化しており、 死亡例も多くなっている。同市の第一小児病院では毎日20から25人がデング熱症例のため来院 しており、小児デング熱症例は感染後、1〜2日では手足口病やH1N1インフルエンザとの判別 が難しいため、デング熱への警戒を緩めることがあるが、小児は死に至ることがあるので注意を 喚起したというものでございます。  続きまして、11番、ボリビア出血熱です。これも去年9月にEIDで報告されたものです。ボ リビア出血熱は、1959年にボリビア東部でのアウトブレイク発生時に初めて報告され、2007年2 〜3月、ボリビアで少なくとも20例(死亡3例)の疑い例が報告された。2008年2月には、少な くとも200例(死亡12例)の疑い例が報告され、19症例の血清を間接免疫蛍光法及びPCR法を 用いて検査した。その結果、アレナウイルス5株が分離され、ウイルスRNA遺伝子の配列の結果、 マチュポウイルスが確認され、8つの主要な系統に分類された。その後も、マチュポウイルスは 孤発症例やボリビアでのボリビア出血熱アウトブレイクの原因となっているが、5例(死亡3例) の農業従事者である患者については、5例とも既往歴のある患者の血漿成分輸血を受けたが、3 例は死亡した。病状が重篤化する前に、マチュポウイルスによって免疫が惹起された血漿を投与 することが生存率を高くするかもしれないというものでございます。  ここまでで何かございましたら、お願いします。 ○佐川委員長 いかがでしょうか。ございませんでしょうか。 ○佐川委員長 では、引き続きお願いします。 ○難波江血液対策課課長補佐 続きまして、12番、昨年の「サイエンス」に出ましたレトロウイ ルスXMRVの文献でございます。  慢性疲労症候群患者の血液細胞に感染性レトロウイルスXMRVを検出した。CFSは、原因不明 の衰弱していく疾患で、世界中で1,700万人が罹患していると推定されている。CFS患者の抹消 血単核球を調べた結果、ヒトガンマレトロウイルスであるXMRVのDNAが、患者101例中68例、 67%に検出され、健康対照者では218例中8例、3.7%であった。細胞培養の結果、患者由来のXMRV は感染性があり、ウイルスの細胞を介した無細胞性感染のいずれも可能性が示された。CFS患者 由来の活性化PBMC、B細胞、T細胞に曝露した後、非感染初代培養リンパ球及び指標細胞培養 系には二次感染が認められた。これらの結果は、XMRVがCFSの病原性における要因となる可能 性を示唆したというものでございます。  XMRVにつきましては、この前にも、またこの後にも文献が幾つか出ておりますので、後ほど まとめて岡田先生からレビュー報告をいただきたいと思っております。  続きまして、13番、インフルエンザでございます。日本ウイルス学会の学術集会で昨年報告さ れたものでございます。日本で採血された血漿を原料として製造された静注用グロブリン製剤 (IVIG)にClassical Swine Influenza、古典的ブタインフルエンザA(H1N1)ウイルス、及びヒ ト型のインフルエンザA(H1N1)パンデミックウイルスに反応する抗体が含まれているかどうか 調べ、ドナーが免疫を獲得している可能性について検討した。その結果、IVIGにブタ及び新型イ ンフルエンザに対するHI及び中和抗体価活性がそれぞれ8倍、64倍と認められ、日本において、 ある程度の率でInfluenza A(H1N1)バンデミックウイルスに反応する抗体を保有するドナーが存 在すると推測されたというものでございます。  続きまして、文献番号14番、これも新型インフルエンザでございます。これは、昨年11月に FDAから出されたガイダンス案でございます。「パンデミック2009ウイルスに対応した供血者 の適合性、血液製剤の安全性及び血液供給の保全について評価するための勧告」を発表したとい うものでございます。まず、交代要員の教育というものが求められています。それから、供血者 の適格性、供血延期及び製品管理につきましては、供血者の適格性、原則、供血者の治療歴は採 血時に収集されるが、全血もしくは原料血漿用では、供血日に収集すること。供給延期、パンデ ミック(H1N1)2009インフルエンザ感染または疑いのある患者、もしくはインフルエンザ様症 状を呈する患者との接触のあった供血者について、利用可能なデータは供血延期を指示していな いというものでございます。供血者が供血日に健康であることを確保するため、パンデミック2009 インフルエンザ感染または疑いのある供血者は、解熱剤の利用なく解熱し、無症状となってから 少なくとも24時間の供血延期をすること。パンデミック(H1N1)2009ウイルスに対する生もし くは不活化インフルエンザワクチンを接種した後、もしくは、予防目的で抗インフルエンザ薬で あるオセルタミビルまたはザナミビルを使用した後の供血者について、利用可能なデータは供血 延期を支持していない。しかし、パンデミック(H1N1)2009インフルエンザ感染または疑いの ため抗インフルエンザ薬を服用した供血者は、上述と同様の状態から少なくとも24時間の供血延 期をすること。血液製剤の管理。供血後48時間以内にパンデミック(H1N1)2009の感染または 疑いがある、もしくはインフルエンザ様症状を呈したという供血後の情報を受けた際には、 Medical Directorは標準作業手順書に従い、既に供血された製品の安全性を評価すること。なお、 この勧告は、輸血用全血及び血液成分の献血に適用されるというものでございます。  インフルエンザは以上でございます。 ○佐川委員長 今のインフルエンザのことまでのところで何かございませんでしょうか。  これは、前回も日赤からの詳細なデータの御報告がありまして、それに基づいた日本の対応も 決まっていると思いますが、それと非常に似通ったガイダンスであると理解いたしましたが、よ ろしいでしょうか。 ○佐川委員長 はい。引き続きお願いします。 ○難波江血液対策課課長補佐 続きまして、15番でございます。PLoSONEに報告されましたBSE 関連の文献でございます。魚類におけるTSE発症について知見を得るため、ヨーロッパヘダイに BSE感染ウシもしくはスクレイピー感染ヒツジのホモジネートを経口投与した。魚に臨床症状は あらわれなかったが、投与2年後、魚の脳は神経変性の徴候と抗タイPrP抗体に陽性を示す沈着 物の蓄積が認められた。非感染動物由来の脳を投与された対照群は、このような徴候はなかった。 TSE感染脳よりもBSE感染脳投与された魚に多数のプロテアーゼK抵抗性沈着物が急速にあらわ れ、アミロイド様成分と一致した。公衆衛生上の潜在的なリスクの懸念が高まるというものでご ざいます。  続きまして、16番、AABB Weekly Reportに出されたもので、米国のAABBのTTD、輸血感染 症委員会がAABBのBoard of Directorへ提出した報告書でございます。これまでvCJDを発症し た3例からの輸血によって、vCJDプリオンが伝播した4例の報告がある。そのうち3例はvCJD 発症に至り、他の要因で亡くなった1例はひざ及びリンパ節からvCJDプリオンが検出されたが、 vCJDの徴候は示さなかった。その患者は、プリオン遺伝子の129番目コドンがヘテロ(MV)で あった。また、vCJDを発症したドナーから血漿分画製剤を投与された患者にvCJDプリオンが検 出されたが、この患者もvCJDの徴候はなかった。米国FDAは、2009年6月に米国内に供給され た血漿製剤給血者のvCJD伝播のリスクに関する新しいモデルをTSE Advisory Commiteeで発 表したが、最大推定リスクは12,000分の1のままであり、米国患者のリスクは極めて低いとして いる。しかし、MVもしくはVV遺伝子型である無症候患者からの病原性プリオンが検出されたこ とから、非MM遺伝子型患者にvCJD があらわれるか、非MM遺伝子型患者はvCJDプリオンの 感染キャリアーとなるかについて解決が待たれるということでございます。  続きまして、文献17番、同じくvCJDのFDAから出されました要点でございます。FDAのCBER は、米国承認血漿由来第VIII因子製剤によるvCJDリスクの可能性について概要を発表し、要点と して以下が示された。近年、米国承認第VIII因子製剤を投与された血友病A及びvon Willebrand病 患者にvCJDが発症するリスクに関して疑問が提起されている。リスク評価の見解、FDA、C DC及びNIHも含め、米国Public Health Serviceは、米国承認の血漿由来第VIII因子製品を投与 された血友病A及びvon Willebrand病患者へのvCJDのリスクははっきりとはわからないが、極 めて小さい可能性が最も考えられる。第IX因子製剤を含めた他の血漿由来製品によるvCJDリス クは同程度小さい、もしくはより小さい可能性が最も考えられる。新しい情報を得るには、 Hemophila Tretmen Centerの血友病もしくはvon Willebrandにおける専門家に尋ねることとなっ ております。  最後、18番目でございます。Vox Sanguinisに報告されました、同じくvCJDの文献でございま す。英国では、vCJD症例における血漿分画製剤の投与歴を明らかにするため、英国NCJDSU (National CJD Surveillance Unit)が患者の親戚や診療機関及び病院を通し集めた記録の調査が 行われた。NCJDSUでは、問い合わせのあった全vCJD症例につき、リスク要因となる情報収集 を行っている。その結果、168例の英国内vCJD症例のうち9例が延べ12回、血漿分画製剤の投 与を受けていた。(1例はvCJDリスクが起きる前の1970年であり、それ以外は89年から98年と なっていた。英国CJD Incident Panelのリスク評価基準によると、11については低リスク製品で あり、1つは低もしくは中程度のリスクであった。今日までの英国vCJD症例は、いずれに関し ても血漿分画製剤投与による感染ではないと考えられたが、今後、にvCJDを発症する可能性は 排除されないというものでございます。  ここまででお願いします。 ○佐川委員長 という御報告でしたが、いかがでしょうか。何か御意見、御質問、ございません でしょうか。 ○佐川委員長 それでは、事務局はただいまの報告及び委員の先生方の御意見を十分念頭に置い て、引き続き感染症報告の収集等をお願いします。  続きまして、議題4番、血液製剤に関する報告事項についてです。遡及調査の進捗状況や副作 用感染症報告の状況、あるいはこれまで報告された事例のその後の対応状況等について報告をい ただきます。まず、事務局から説明をお願いします。 ○難波江血液対策課課長補佐 それでは、資料3−1に基づいて、まず御説明させていただきま す。供血者からの遡及調査の進捗状況でございます。  4ページ目をごらんください。供血者から始まる遡及調査実施状況でございます。昨年4月1 日から今年2月28日までのデータでございます。前回お示しいたしましたのが、昨年4月1日か ら12月31日までのものでございました。2か月のデータが追加されております。総数といたし ましては、1,649件が個別NATが実施されております。その結果、(2)の(1)になりますが、個別 NATで陽性となったのが137検体となっています。前回、12月31日までのデータでは108でござ いましたので、2か月で29増えたというものでございます。そのうち使用されたのが129本で、 陽転事例は前回御報告しましたが、1例ございました。ただ、前回の報告では因果関係は低いの ではないかということが言われているものでございます。今回は、特にそれ以降、陽転事例はご ざいませんでした。以上でございます。 ○佐川委員長 ありがとうございました。ただいまの御報告に対して、何かございませんでしょ うか。 ○佐川委員長 ないようです。  続きまして、資料3−2について御報告をお願いいたします。 ○難波江血液対策課課長補佐 資料3−2は、医療機関からの報告に基づくデータでございます。 血液製剤に関する報告事項につきまして、今回は公表となるような劇症例とか死亡例はございま せんでした。  18ページをごらんください。報告事項のまとめとなっております。平成21年2月26日報告分 から5月6日までの報告でございますが、輸血用血液製剤で25件ございました。これは、前回や その前に報告されたもののフォローアップの分も含んでおります。B型肝炎報告事例が12例、C 型肝炎報告が6例、HIV報告がゼロ、その他が7となっております。2つ目ですが、B型肝炎報 告事例で、輸血前後の感染症検査でHBs抗原、またはHBV-DNAが陽転した事例は9例ございま した。血液製剤を提供した献血者の保管検体の個別NAT陽性事例は6例でございました。死亡例 はゼロでございました。3つ目ですが、C型肝炎の報告事例でございます。輸血前後に抗体検査 またはHCV-RNAが陽転した事例は4例ございました。うち、輸血後NATで陰性、または輸血前 後で陽性は1例でございました。使用した血液製剤を提供した献血者の保管検体の個別NAT陽性 例はゼロ、死亡例はゼロでございました。HIVは、いずれもゼロでございました。5番目、その 他といたしまして、B型、C型以外の肝障害報告事例は1件。細菌感染事例では、保管検体の無 菌試験陽性事例はゼロ件でございました。  5の(1)にございますB、C以外の肝障害報告事例ですが、厳密に申しますと、肝障害が起 きたものではなく、27ページの一番下でございまして、A型肝炎の報告でございます。今年、A 型肝炎が例年に比して多く報告が上がっている。4月半ばで120例ほどの報告が上がっている。 例年、1年で150前後ということでございましたが、今年はA型肝炎が多いということでござい ます。輸血でA型肝炎の感染が確認されたという非常に珍しい事例が今回上がっております。  受血された方は70代の方ですが、献血された方が献血後にA型肝炎を発症されまして、その方 が病院において献血されたということでしたので、医療機関を通じて日赤に報告をいただいた。 その報告を基に、日赤の方で遡及を行ったところ、70代の男性に投与されていて、検査したとこ ろ、その方の血液からHAV-RNAが検出されたものでございます。ただ、この方、輸血前の保管検 体も確保されていまして、調べてみると、既に投与前からIgG抗体が陽性であって、発症されて いないということで、感染は起きたけれども、発症は起きていないという事例でございます。そ の後、塩基配列を調べたところ、その患者、また献血者から得られたHAVの塩基配列は、2領域 を比較したところ、すべて一致したという珍しい報告でございます。以上でございます。 ○佐川委員長 今のA型肝炎ですけれども、先生、今年は非常に多いと言われましたけれども、 地域の偏りとか原因の同定とか、何か情報はございますでしょうか。 ○難波江血液対策課課長補佐 最新のデータではないのですが、第10から15週で91例を調べた ところ、都道府県別では、福岡で18件、広島で15件、東京で11例となっているようでございま す。 ○佐川委員長 原因は主には。 ○難波江血液対策課課長補佐 感染91例のうち、感染源としてカキが43で、貝類が3例と報告 されています。 ○佐川委員長 わかりました。ありがとうございました。ほか、何か御質問。岡田先生、どうぞ。 ○岡田委員 A型肝炎も少し補いたいと思います。A型肝炎は経口感染で感染しますけれども、 ほかの肝炎と違いまして発症する1〜2週間前からウイルスが血中に出るようになります。そう しますと、献血するときに、勿論感染者は症状がありませんけれども、献血してから1〜2週間 後に発症するということで、供血者にとっては献血したという記憶がまだ新しいうちに発症しま すので、今回の報告事例にありますように、患者さんが供血をしたという記憶がありますので、 こういうふうに血液センターなり医療機関なりに、自分が献血したということを比較的情報とし て与えやすいのです。ですので、A型肝炎と言わずに、供血後に何らかの感染症を発症した場合 に、血液センターなり、もしくは医療機関に自分は献血をしたということをお伝え願えると、今 回の例みたいに発症する前に投与された患者さんを特定できるのと、あと、凍結血漿は6か月の Quarantineをやっていますので、それは医療機関に供給される前にとめることができるというこ とで、このように非常にまれな疾患に関しては、供血した後に何らかの異変があった場合に血液 センターに連絡をくれるというのが一つの防ぐ道かなと思います。 ○佐川委員長 そうですね。この投与を受けた患者さん自体は、肝炎は発症しなかったけれども、 ウイルスは相同性があるものが、ドナーとレシピエントについて証明されたということで、感染 は成立したけれども、発症はしなかった。患者さん自身には、既感染の抗体があったという症例 でございました。ほかに御意見はありますでしょうか。山口先生、どうぞ。 ○山口委員 今回、委員長がおっしゃるように、幸いにして抗体があったことにより大事にいた らなかったようですけれども、昔に比べ、A型肝炎に対する抗体の保有率は若い人は非常に低く なってきているので、そういう観点から見ると、先ほど委員長がおっしゃられたように、そうい う発症があったときには速やかに連絡していただくことが非常に大事なことだなという気がいた します。 ○佐川委員長 百瀬さん、どうぞ。 ○百瀬日本赤十字社血液事業本部安全管理課長 献血者情報について補足させていただきます。 献血者の方が医療機関を通じて血液センターの方に連絡があったのですけれども、献血して、そ の後は何ともなく過ごしていたのですけれども、約2週間後に発熱があり、近医を受診したとこ ろ肝機能値が異常であったということで専門医を紹介され、専門医によってA型肝炎と診断され たということで、先ほど岡田委員がおっしゃったような形で、典型的な経過をたどっている状況 でございます。 ○佐川委員長 ありがとうございました。大平先生、どうぞ。 ○大平委員 今、岡田委員が言われたように、献血者の方が体調が悪くなったときに、それを情 報として提供していただくことは大変重要なことだろうと思いますが、こういった情報というの が、血液センターに情報例としてどのくらいあるのか、そういうものをどう活用されているのか、 わかりましたら教えていただきたいと思います。 ○佐川委員長 いかがでしょうか。 ○百瀬日本赤十字社血液事業本部安全管理課長 過去のA型肝炎等の情報でよろしいですか。 ○大平委員 全般に。献血者の方から何か体調が悪くて、献血したけれども、心配ですという情 報というのは、これまであるのかどうか。 ○百瀬日本赤十字社血液事業本部安全管理課長 献血者情報ということで、さまざまな情報が寄 せられております。勿論、B型肝炎やC型肝炎についてもそうでございますし、献血後に医療機 関でがんと診断されたとか、そういうものも含めて、献血時の問診の条件、問診基準を逸脱する ような情報も含めて、献血後情報として寄せられております。製剤の有効期間等を判断して、回 収できるものは回収し、また製剤を確保し、製品にしないようにしております。 ○佐川委員長 よろしいでしょうか。 ○大平委員 はい。 ○佐川委員長 ほかはございませんか。 ○佐川委員長 続きまして、資料3−3について事務局より報告をお願いします。 ○難波江血液対策課課長補佐 資料3−3 献血件数及びHIV抗体・NAT陽性件数でございます。 今回は、1月から3月までの速報値ということで、一番下に示させていただいています。  献血件数は約131万となっております。うち、HIVの陽性件数は14件、女性は2例となってお りまして、10万件当たりで見ますと1.064と、昨年の値より低い値となっております。ただ、3 か月だけの値ですので、今後の動向を注視しないといけないと思います。1枚おめくりいただき まして、右側が都道府県別の値となっております。14件のうち、福島1件、埼玉2件、東京2件、 静岡・愛知、それぞれ1件、大阪5件、島根1件、福岡1件という形でございます。大阪につき ましては、昨年が20年に比べたら26から13と半減したということがございますが、今回、3か 月で5件で、トレンドとしては、このペースで行くと去年を上回る数値になるかもしれないとい う状況でございます。それから、最後のページが昨年のデータの確定値でございまして、10万人 当たり、トータルで1.929。男性が2.693と、過去2年よりは少ない値となっている。一方で、女 性が0.348ということで、ここ数年の中では最も高い値。2003年以来の高い値となっているもの でございます。以上でございます。 ○佐川委員長 ただいまの御報告に対して、何か御意見、御質問いかがでしょうか。花井委員、 どうぞ。 ○花井委員 毎回発言させていただいていることですけれども、今回、速報値ということでござ いますけれども、1年のトータルでもいいのですが、都道府県別である程度偏りというのが見て とれるわけなので、こうしたデータを検査等々を管轄する方に提供して、こういう実情になって いるのだから、それぞれの自治体においては検査目的のドナーが日赤に行っているという可能性 も考えられるので、検査体制をより強化するようにということを要請していただけたらと思いま す。 ○佐川委員長 今の御意見、いかがでしょう。よろしいでしょうか。もう少しこの情報を広く活 用してほしいという御意見だと思いますが。 ○佐川委員長 では、厚労省、それから日赤も含めて、花井委員の御意見をよろしく御検討くだ さい。他はいかがでしょうか。ございませんでしょうか。 ○佐川委員長 それでは、事務局及び日赤においては、ただいま委員の先生方からのいろいろな 御意見をいただきましたけれども、それらの意見を念頭に置いて、血液製剤の安全性に関する情 報を引き続き収集していただきたいと思います。よろしくお願いします。  続きまして、議題の順番を入れかえまして、先に議題6番、その他を行いたいと思います。先 ほど難波江課長補佐が言われましたように、資料4のXMRVに関する文献報告について、岡田義 昭委員から説明をお願いします。 ○岡田委員 今回、定期感染症情報のナンバー12の文献でXMRVの報告がされましたけれども、 XMRVは、「サイエンス」の報告で慢性疲労性症候群の患者さんから高率に検出されたこと、しか も健常人からも3.7%検出されたということで、XMRVの疫学についての文献を集めました。それ で、もともとこのXMRVは、前立腺がんの462番目のアミノ酸がアルギニンからグルタミンに変 わっていく変異体を持つ方がいらして、そういう方にどうも家族性に前立腺がんが多いのではな いかという疫学的な報告がありますので、文献1にありますUrismanたちのグループは、前立腺 がんの患者さんからRNaseLの変異体を持つグループと、ヘテロに持つグループと、あとは変異 体がないグループということで、86例の前立腺がんの組織からRNAを抽出して、それでXMRV の陽性・陰性を調べました。そうしますと、86例中、トータルですと9例からXMRVの遺伝子が 見つかったのですけれども、変異体をホモに持っている症例が20例ありまして、その20例を見 ますと、そのうちの8例から40%の方がこのXMRVが検出されたということで、前立腺がんにお いて、このRNaseLの変異体をホモに持つ人から非常に高率にXMRVが検出されるということを 報告しました。  なお、このXMRVを日本語で言いますと、異種指向性マウス白血病ウイルスに関連したウイル スという名前がついていて、XMRVとついております。名前のとおり、マウスの白血病ウイルス に遺伝子の構造も遺伝子配列も非常によく似ています。それで、ヒトからこのようなマウスのロ イケミアウイルスが見つかったのは初めての報告です。  そういうことで、前立腺がんのRNaseLの変異体を持つ人に多いということで、文献2でドイ ツで追試が行われています。そうしますと、この場合は家族性ではない前立腺がんの症例を集め ますと1.2%ぐらい見つかるし、コントロールとしてがんではないが、恐らく前立腺肥大症の方だ と思いますけれども、その方からも1例見つかったということで、最初の報告に比べれば大分頻 度が低いということがわかります。  それで、文献3で、もっと大規模に589例の前立腺がんをドイツで検討しました。そうします と、1例も見つからなかった。589例の中で76例が高感受性だと言われているRNaseLの変異体 を持つ方なのですけれども、その方からも全然見つからなかったということで、米国においては 非常に高い率で検出されたにもかかわらず、ドイツにおいては検出されなかったということです。 それで、組織だけではなく、血清中のXMRVに対する抗体も調べていますけれども、それも検出 されなかったという報告です。  それで、文献4、これはまた米国からの報告なのですけれども、この233例を見ますと、XMRV の遺伝子は14例、6.2%に見つかるし、がんではない前立腺肥大症と思われる症例からも2例、2% ぐらい見つかるということで、ドイツの報告に比べて、米国では高い陽性率が報告されました。 この4番では、陽性例においてRNaseLの遺伝子配列を見ますと、特に変異体とは関係がない。 関係があるのは、どっちかというと組織の悪性度が高い症例において、このXMRVの遺伝子が見 つかるということで、一番最初の報告とはちょっと違う内容になっていますけれども、一応6.2% に見つかったということです。  それで、文献5で、これまでは前立腺がんとの関係でしたけれども、「サイエンス」のペーパー で慢性疲労性症候群の患者の末梢単核球からXMRV遺伝子群を調べました。慢性疲労性症候群は ウイルス感染が疑われていて、過去に幾つかのウイルス感染との関係があると指摘されていたの ですけれども、この研究者はXMRVの遺伝子を調べます。そうしますと101例中68例、67%の方 からこの遺伝子が検出された。一方、健常人からも218例中8例、3.7%でXMRVが検出されたと いうことで、世界中の血液の安全性に関わっている人たちから注目を集めました。  それで、文献6で、イギリスで同様に慢性疲労性症候群186例の検討を行ったところ、1例も 検出されなかった。  また、文献7で、イギリスの違うグループが全血と血清からそれぞれDNA、RNAを抽出して検 討したところ、1例も検出されなかった。  それで、オランダにおいても、これは1991年に診断された慢性疲労性症候群の方の凍結してあ った末梢単核球を調べてみても、1例も検出されなかったということで、米国においては非常に 高い報告例にもかかわらず、ヨーロッパのイギリス、オランダでは1例も検出されなかったとい うことで、前立腺の場合もそうなのですけれども、米国においては陽性例が存在しますけれども、 それ以外では非常に低い、もしくは検出されないという結果です。それが現在わかっているXMRV の疫学に関する報告です。  その解釈として、米国においてウイルスが広く分布しているし、ヨーロッパにおいては、そう いうウイルスの感染、広がりが非常に少ないのではないかという解釈も成り立ちますけれども、 詳細については今後の解析を待つことになると思います。  それで、このウイルスは、もともと遺伝子が先に見つかったウイルスですので、どういう疾患 と関係があるのかわかりません。病原性がないかもしれないウイルスです。しかし、文献5にウ イルス学的な解析が行われていまして、感染者の抹消単核球にはウイルスがいて、それは感染性 があるし、血漿中にもウイルスがいて、それは感染性があるということがわかっていますので、 もしこのウイルスが何らかの病原性を持つことが明らかになった場合、輸血を介して感染する可 能性というのは否定できないと思います。  それで、我が国においてどうすればいいかといいますと、本当にこのウイルスが輸血を介して 感染するのかどうか。もしくは、我が国において、どの程度このウイルスが存在しているのか。 そういう疫学的な調査を研究レベルでやる必要があります。今、世界中でこの研究は行われてい ると思いますけれども、病原性と関連がありそうな情報が得られたときに、速やかに検査ができ るような検査法の確立というのは準備しておく必要があるのではないかと考えております。以上 です。 ○佐川委員長 ありがとうございました。ただいま岡田委員より、XMRVに対する文献的な報告 と考察がなされましたけれども、いかがでしょうか。何か御意見。どうぞ。 ○山口委員 多分、岡田先生がおっしゃられたように、確定ではまだないだろうとは思います。 米国で検出されて、それ以外のところではほとんど検出されていない。要因としては、手法的な もの、プライマー、プローブの差とか、いろいろなものが考えられますので、今後、いろいろな 研究を出したりして検討を続けていかないといけないと思います。  もう一点、ちょっと気になるのは、特に慢性疲労性症候群などは、もしウイルス性であるとい うことが確定した場合にはそれはやむを得ないと思いますけれども、確定する前は、それはまだ そういう原因ではないという考え方をとっておかないと、ある意味で非常に差別を引き起こす原 因になる可能性もありますので、その辺は慎重に対処された方がいいのかなという気がいたしま す。 ○佐川委員長 ほか、いかがでしょうか。どうぞ。 ○花井委員 教えてほしいのですけれども、確かに今回出されたアメリカのデータというのはか なり衝撃的です。67%という数字もちょっとびっくりする話なのですが、病原性の話はどうやら まだわからないようですが、健常人の3.7%という数字もいささか高過ぎると言ったら何ですけれ ども、岡田先生のお話ではアメリカではという解釈もあり得るという話だったのですが、今後、 アメリカ国内での追試というものが行われたら、それが明らかになっていくという理解でよろし いのでしょうか。この検査の型自体が違うのではないかとか、そういうことも思ってしまうので すけれども。 ○岡田委員 PCRの感度は、各ペーパー、それなりによく評価しています。ですので、極端に悪 い、一方が検出率が高いところがすごく高感度で、出ないところは感度が低いということはあり ません。あと言えることは、例えば米国で流行している株とヨーロッパの株が違っていてPCRが 動かなかったりする可能性としては否定できませんけれども、いろいろなところを、今わかって いる塩基配列から、保存されているような部分を使ってプライマーをつくっていますので、そん なに検出されないという可能性はないと思います。  それで、このウイルスは前立腺がんのあるセルラインに持続感染しているものがあります。そ の持続感染している細胞株の上澄を使いますと、いろいろな検出系の評価にはそのウイルスが使 えますので、あとはインビトロの培養も可能ですので、C型とかB型とか、なかなか培養できな かったウイルスに比べて解析もしやすいので、急速にいろいろな事実が明らかになると思います。 ですから、シークエンスというか、型がどの程度かというのはもう少し時間が立たないとわから ないと思います。余り変わっていなくて、米国だけに非常に高い可能性もありますし、型が違っ ているために検出されにくかったということもあると思います。それは、もう少し解析を進めな いとわからないと思います。 ○佐川委員長 ほかはいかがでしょうか。  岡田先生、最初の報告は非常に衝撃的な論文だと思うのですけれども、今、米国のもう少し公 的な機関、CDCとかFDA、そういうところは、これをさらに大規模な研究を始めるという情 報は。 ○岡田委員 勿論そうだと思います。 ○佐川委員長 もうされているわけですね。日本ではいかがでしょう。 ○難波江血液対策課課長補佐 米国では、CDC、FDA、ブラッドバンクのチームをつくりま して、NIHのファウンディングを受けて研究を開始していると。それが昨年秋からやっている という情報が得られています。  日本では、疾患とこのウイルスの関係については、健康局の研究班の方で今、研究を行ってい まして、先ほど岡田先生がおっしゃられたスクリーニング検査法の開発と、あと血液を通じた感 染のリスクについては、医薬局の方で今年度から立ち上げるべく、準備をしているところでござ います。 ○佐川委員長 ということだそうでございます。よろしいでしょうか。 ○佐川委員長 それでは、今いろいろな御意見が各委員から出されたと思いますので、特にXMRV については、現時点で血液事業という観点から緊急的な対応ということは、今のところは必要は ないと思われますけれども、引き続き情報収集を行って、新たな知見等が得られれば、この場で 御報告をいただいて、そして対応を検討するという体制はしっかりとっておきたいと思います。 よろしいでしょうか。 ○佐川委員長 それでは、次に議題の5番です。日本赤十字社からの報告事項について。資料5 日本赤十字社血液事業本部組織の変更について、日赤より御報告をお願いいたします。 ○俵日本赤十字社血液事業本部総括副本部長 平成22年4月よりの日本赤十字社血液事業本部 の組織の変更について御報告させていただきます。  今後予定しております新規製剤の製造販売承認取得へ向けた体制の整備や、採血業に係る体制 の明確化を図るなど、事業運営体制を強化することなどを目的にして組織の変更を行いました。  2ページ目をごらんください。これが執行体制でございますけれども、血液事業本部の下に各課 がぶら下がっておりますが、二重線で囲まれております臨床開発課、採血管理課の2課を今回、 新設いたしました。1ページ目に戻っていただきたいと思います。  まず、臨床開発課でございますけれども、新規製剤の製造販売承認並びに不活化技術の導入な どについて、昨年、開発・申請担当とか不活化担当の参事・主査を配置しまして準備を進めてま いりましたけれども、今後、より具体的に進めていくということで、臨床試験を含めて申請・承 認に至る手続を円滑に進める必要から、従来の参事・主査という体制から移行しまして、新たに 臨床開発課を設置することで執行体制の強化を図ったわけでございます。  2点目の採血管理課につきましては、以前は製造管理課という製造業の課の中に係として採血 係がありましたが、3年前に参事・主査制度を設けまして業務を行ってきたわけでございますけ れども、今回、製造業と採血業、特に採血業に関しては、今の事業の中で一番大きな組織部を持 っておりまして、それが参事・主査という体制はおかしいだろうというのは当然の考えでござい ます。そういうわけで、新たにきちんと全国の採血業を見るということで採血管理課を設置しま して体制の明確化及び強化を図ったわけでございます。  3枚目を見ていただきまして、これが具体的な執行体制でございますけれども、このような組 織体系の中で、血液センター、血液管理センター、血漿分画センターの指揮・監督を行い、事業 が円滑に進むようにと考え、今回の体制の変更となりました。以上でございます。 ○佐川委員長 ありがとうございました。ただいまの御報告に対して御質問、御意見はいかがで しょうか。大平委員、どうぞ。 ○大平委員 これまでいろいろと血液事業については改善されたり、執行体制もわかりやすくと いうことで整備されたのだろうと思いますが、ここでの執行体制についてという2枚目の図式を 見させていただくと、結局、社長、副社長、理事、監事のもとに血液事業本部が動いているとい う認識でよろしいのでしょうか。 ○俵日本赤十字社血液事業本部総括副本部長 大きな意味では、そういう形の体制になっていま すが、実際の執行体制としては、血液事業本部長の下ですべて動く体制ですので、社として大き な問題が起きない限りは、執行体制は本部長の下で動く体制でございます。 ○大平委員 最終的な責任は社長が負うという形の、そこのところはこれまでずっと議論があっ て、指揮、それから全体の経営の問題についても、血液事業本部というものが、血液事業につい ては本社機能からかなり離れた形で行われるようにということで、そこで責任の問題も、最終的 には本社の方で責任を持つという形でおさまったと思うんですけれども、それがそのままの形で 継続されていって、結局本社のもとに血液事業本部が機能するという認識でいいということで、 余り変わっていないということですね。 ○俵日本赤十字社血液事業本部総括副本部長 まだここでは御報告しにくいのでございますけれ ども、今、広域化の問題で動いておりまして、それによってまた機能の部が大きく変わってくる と思います。これは、多分次回辺りになると思いますが、広域化についての報告をさせていただ きたいと思いますけれども、その段階では、組織体系、責任の分担に関しても、今まで以上に本 部体制が強く打ち出されると考えております。 ○大平委員 変わらないということでしたら、それで。今までは、日赤の体質として、やられて いるお仕事としましては、血液事業というのは割と、営利の問題も含めてのこともあって、そう いう問題と、それから全体に災害の救済とは性質が違う問題があって、血液事業というのは形と しては、製造業も含まれてやっておられるので、そこのところはもうちょっと明確な形で血液事 業の本質みたいなものをきちっと整理していこうという方向で、多分前は議論があったのだろう と思うのですが、それはまだこれからの過程の問題として考えているということでよろしいです か。 ○俵日本赤十字社血液事業本部総括副本部長 終わっているわけではなくて、その整理整頓は現 在進行形でございます。 ○佐川委員長 ほかは。田所先生、どうぞ。 ○田所日本赤十字社血液事業本部経営会議委員 基本的にそういう要請があって、血液事業を担 当する理事として西本本部長が今、おかれているわけです。薬事法上の責任等は、製造販売管理 責任者と血液事業本部長が責任を持つ格好でやっております。予算も特別会計ということで、血 液事業は一般会計とは別個に運用されております。そういう意味では、運営といいますか、事業 の監督の責任は血液事業本部にあるということです。  ただ、施設の所有者としては、社長名ですべて赤十字の施設はなっていますので、そういう問 題とかがあります。また、人事に関わることは、ほかの部とも関係しますので、そこは本社全体 の中で決められるということはございます。ただ、実質、先ほど言いましたように、薬事法上の 責任と実質の事業運営の監督については、事業本部が主体になってできる体制になっていると考 えていただければと思います。 ○佐川委員長 よろしいでしょうか。ほか、御意見。花井委員、どうぞ。 ○花井委員 今、大平委員の話を引き継ぐ形になるんですが、田所先生の御説明もよく理解して いるつもりなのですけれども、左側の紙の、本社から伝わって線が引かれていて支部につながっ ている。この線があるというのが今の御説明なのですけれども、この線があって、日赤全体とし ても責任をとる話であろうと大平委員はおっしゃっているわけですけれども、田所先生が言った ように、非常に雑な言い方をすれば、責任は本部に押し付けていて、いわゆる日赤本社として最 終責任を取る覚悟が社長にあるような体制になっているかというところが、多分問題で、本来的 に事業本部が責任を持つのであれば、その責任が増える範囲の中で、権限もそれに沿って増えて いれば、これはいいわけですが、その責任だけはどんどん移行しているけれども、最終的な権限 だけはここは線はあるぞということになると、先ほど大平委員が指摘したような懸念ということ になろうかと思います。  これは組織の話なので、外からがたがた言うことではないのかもしれませんが、赤十字社とし て全体として責任を取るという体制であるとすれば、やはり左側の図と右側の図というのが、考 えたらちょっとそごがあるわけで、そこについては今後、もう一つ明確になっていくのかなと。  関連してですが、先ほど研究部門が強化されたということでありますが、血漿分画部門が研究 開発ということでは、今回も主に輸血用血液ということですよね。血漿分画センターについては、 勿論指揮・監督は事業本部がするということになりつつも、左側の図では、分画センターはこっ ちの方につながっていて、どういう感じなのかというのもちょっとありますし。  血漿分画部門についても事業本部が、説明としては、事業執行体制としては統括するという理 解はしていますけれども、より強化するという意味において、それも完全に掌握して、そして分 画事業についても事業本部が全面的に経営も責任もとれる体制へ移行していただければと思いま す。 ○田所日本赤十字社血液事業本部経営会議委員 今日の時点では、すべて御説明できないところ もあるのですけれども、広域事業運営体制というものを平成24年度ぐらいをめどに予定しており ます。そういう中では、花井委員が指摘された支部との関係というのも整理して、経営について の考え方、監督についても整理していく予定にしておりますので、説明ができる時点になったら、 それについては説明させていただきたいと考えています。 ○佐川委員長 組織改編については、今、進行中であるという御説明でありましたけれども、花 井委員、大平委員の御意見も踏まえて、効率的な組織体制の確立に向けて、今後も努力をお願い 申し上げます。それでは、ありがとうございました。  それでは、最後に議題6番で、フィブリノゲン製剤に関わる報告事項について、事務局から説 明をお願いいたします。 ○光岡血液対策企画官 資料6−1に沿って御説明申し上げます。平成19年11月7日に実施し た調査について、現在、2週間に一度ずつ追加調査の結果について公表させていただいてござい ますが、最も直近のものとして5月14日、数日前でございますけれども、公表させていただいた ものをお手元に御配付させていただいてございます。  1ページ目をめくっていただきますと、現在、投与が判明された方1万3,198名のうち、お知ら せしたと回答させていただいていますのが57%の元患者さんの方、お知らせされていない方が 5,661名になってございます。  また、3ページ目の診療録等の保管状況につきましては、2,060施設について、6年以前の診療 録が保管されている施設として公表させていただいてございます。  それから、資料6−2は4月26日、先月のものでございますけれども、C型肝炎訴訟の和解に ついて、大阪地裁で和解が成立しましたことが御報告されてございます。以上でございます。 ○佐川委員長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方、御意見、御質問、ございま せんでしょうか。 ○佐川委員長 ございませんようです。  今までのところすべてを含めて、何か御意見、御質問等ございませんでしょうか。特にござい ませんようですね。 ○佐川委員長 それでは、本日の議題は以上でございます。  次回の日程につきましては、後日事務局から連絡いたします。本日は、委員の方々、関係者の 方々、御多忙のところ本当にありがとうございました。 照会先:医薬食品局血液対策課 03−3595−2395