10/05/18 平成22年5月18日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会議事録 ○日時:平成22年5月18日(火)16:00〜18:45 ○場所:厚生労働省 共用第7会議室 ○出席者: 委員 阿南委員、五十君委員、鈴木委員、中村委員、西尾委員、林谷委員、山下委員、山本委員 (部会長) 参考人:国立水俣病総合研究センター 岡本所長     国立医薬品食品衛生研究所 小西部長     国立感染症研究所 寺嶋室長 事務局 俵木基準審査課長、工藤課長補佐、浦上専門官 1.開 会 2.議 題 (1)乳に含まれるアフラトキシンM1の取扱いについて (2)魚介類に含まれるメチル水銀の取扱いについて (3)その他 3.閉 会 ○事務局 ただいまから、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会を開催させて いただきます。  本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。  本日は、石田委員、甲斐委員、高鳥委員、西渕委員、堀江委員、宮村委員より、御欠席なさる 旨の御連絡をいただいておりますが、乳肉水産食品部会の委員14名中8名の御出席をいただいて おり、部会委員総数の過半数に達しておりますので、本日の部会が成立しておりますことを御報 告いたします。  次に、本日の議題に関連いたしまして、部会長の了承を得まして、参考人として、3名の先生 方にお越しいただいておりますので、御紹介させていただきたいと思います。  まず、国立水俣病総合研究センターの岡本所長でございます。 ○岡本参考人 岡本です。よろしくお願いします。 ○事務局 本日は、先日公表されました「太地町における水銀と住民の健康影響に関する調査」 の結果について御説明をお願いさせていただいているところでございます。  続きまして、国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部の小西部長でございます。 ○小西参考人 小西でございます。よろしくお願いします。 ○事務局 小西部長におかれましては、本日も開催されましたが、本審議会の食品規格部会にお きまして、総アフラトキシンの議論に携わっていただいております。また、本部会においても、 アフラトキシンM1の議題がございますので、こちらに関連して、御実施いただきました調査研究 の概要等について御説明をお願いさせていただいております。  それから、国立感染症研究所細菌第一部第一室長の寺嶋室長でございます。 ○寺嶋参考人 寺嶋でございます。よろしくお願いします。 ○事務局 それでは、進行につきまして、山本部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願 いします。 ○山本部会長 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。  始めに、事務局から、配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。  配付資料につきましては、議事次第の次にございますけれども、【乳に含まれるアフラトキシン M1の取り扱いについて】といたしまして、資料1−1、資料1−2がございます。  それから、【魚介類に含まれるメチル水銀の取扱いについて】ということで、資料2−1から2 −6までございます。  また、参考資料でございますが、こちらはピンク色の紙ファイルに綴じてございますけれども、 参考資料1〜9までを配付させていただいています。こちらは、先生方への配付のみとさせてい ただいております。  それから、机上配付資料といたしまして、「食品衛生分科会規程」、それから、「食品衛生分科会 における確認事項」、2つの資料を配付させていただいているところでございます。  資料の不足等がありましたら、事務局までお知らせください。 ○山本部会長 資料は揃っておりますでしょうか。  どうもありがとうございました。  それでは、審議に入る前に、3月3日に開催されました食品衛生分科会で、「食品衛生分科会に おける確認事項の一部改正」が了承されましたので、御報告させていただきたいと思います。改 正の詳細につきましては、事務局より御報告いただきたいと思いますので、よろしくお願いしま す。 ○事務局 それでは、事務局より御報告させていただきます。  お手元の資料2つ、報告資料といたしまして、「食品衛生分科会における確認事項(平成22年3 月3日一部改正)」と、「食品衛生分科会規程」の2つをごらんいただきたいと思います。  まず、「食品衛生分科会規程」を1枚めくっていただきまして、3ページ目に掲げてございます 第8条。こちらを読み上げます。  「部会における決定事項のうち、比較的軽易なものとして分科会があらかじめ定める事項に該 当するものについては、分科会長の同意を得て、当該部会の議決をもって分科会の議決とする」 という規程が従前より定められております。  今後、規格基準の改正等でますます薬事・食品衛生審議会の諮問の案件の増加が見込まれます ことから、3月3日に開催されました食品衛生分科会におきまして、慎重を期して審議に諮るも のとそうでないものとのめりはりをつけまして、審議会運営の効率化を図ろうということで、確 認事項として定めております比較的軽易なものとしてあらかじめ定める事項の明確化が図られた ということでございます。  それでは、確認事項の当部会に関係の部分につきましては、3ページ目に乳肉水産食品部会の 表が掲げてございます。表の整理の基本的な考え方を御説明いたしますと、まず、新たな規制物 質または項目に係る規格基準を策定する場合と、既に規格基準が策定されている規制物質とか項 目について、その規格基準の一部を改正する場合と、大きく2つに大別いたしました。  前者、新たに規格基準を策定する場合につきましては、比較的軽易なものとは言えないという ことで、部会で御審議いただいて、その後、分科会でも審議に諮るという取扱い、これまでもそ うでしたし、今後もそうしていくというところでございます。  一方、既に策定されている規格基準の一部改正につきましては、中には、その内容等から見ま して慎重に審議をする必要がある事案もございますけれども、そうした特段の事由がない一部改 正につきましては、比較的軽易なものということとして、部会で御審議いただきまして、それを もって分科会に報告の扱いとするということでございます。  また、さらに、分科会報告の取扱いとなる比較的な軽易なもののうち、食品安全委員会におけ る評価が既に一度行われておりまして、その評価結果に変更がない場合ですとか、あるいは、食 品安全委員会の評価を要さない、規格基準の一部改正といったものにつきましては、さらに一層 軽易なものとして、事務局におきまして作成させていただきます文書配布による報告という取扱 いとなります。  当乳肉水産食品部会におきましては、動物性食品に係る規格基準の策定、またはその一部改正 を御審議いただいておりますほか、これまで、乳及び乳製品に用いられる器具・容器包装に係る 規格基準につきましても、器具・容器包装部会との合同部会という形で御審議いただいてきてお りまして、こちら3ページ目の表には、動物性食品に係る第11条第1項の規程に基づく規格基 準と併せて、乳及び乳製品に使用される器具・容器包装に係る第18条第1項の規程に基づく器 具・容器包装の規格基準についても、同様に整理をしてまとめております。  なお、こちらの表に必ずしも当てはめ切れない審議案件も出てきた場合におきましては、確認 事項の1ページ目に戻っていただきまして、表に示された例のいずれにも該当しない場合につい ては、その都度、担当部会長の意見を参考に、分科会長が決定するということとなっております ので、よろしくお願いいたします。  以上、事務局より御説明でした。 ○山本部会長 ありがとうございました。  ただいまの御説明について、御質問・御意見等はございますか。  審議の簡潔化を図ったということで、そういうことでよろしいわけですね。  それでは、ほかに特にないようでしたら、審議に入りたいと思います。  本日は、議題の1としまして、「乳に含まれるアフラトキシンM1の取扱いについて」です。  まず、事務局から説明をお願いします。 ○事務局 資料1−1に基づきまして、御説明をさせていただきたいと思います。  「乳に含まれるアフラトキシンM1の取扱いについて」でございます。  1番に、アフラトキシンM1の概要を記載させていただいておりますけれども、アフラトキシン 類につきましては、アスペルギルス属の真菌が産生するかび毒でございまして。食品での含有が 問題となるのはB1、B2、G1、G2、M1、M2の6種類でございます。これらの化合物につきまして は、発がん性を示すことが知られておりますけれども、最も強い発がん性を示す化合物アフラト キシンB1(AFB1)につきましては、主に落花生、とうもろこし、ナッツ類等の食品、それから、 とうもろこしを含む飼料中から検出されるということでございます。また、飼料中のAFB1を動物 が食べた場合に、動物体内で代謝されまして、アフラトキシンM1(AFM1)となることが知られ ておりまして、乳へ排泄されるということで、畜産物につきまして、牛乳及びその加工品におけ るAFM1の汚染が問題とされており、本日御議論をお願いさせていただきたいというものでござい ます。  なお、食品中の総アフラトキシンについては、B1、B2、G1及びG2の合算、これにはMは含ま れておりませんけれども、こちらについては、本日、先に行われました食品規格部会で審議が行 われたところでございます。  2番目にまいりまして、これまでの経緯でございます。  平成13年7月に、コーデックスにおいて、国際基準として乳中のAFM1の最大含有量が0.5ppb が設定されているということでございます。  それから、14年5月でございますけれども、本審議会の食品規格・毒性合同部会におきまし て、コーデックスの基準設定の動きを踏まえて、我が国の牛乳中の汚染実態を調査をいただいた ところ、コーデックス規格を大きく下回っていたという結果がございましたので、こちらについ て報告をさせていただいたところでございます。  その後、20年7月でございますけれども、こちらも食品規格部会でございますけれども、食 品中の汚染物質に係る規格基準設定の基本的考え方について整理がされまして、AFM1についても 規格基準設定の検討対象とされております。この考え方について御説明をさせていただきたいと 思います。4ページ、別添をごらんください。  平成20年7月食品規格部会決定とされているものでございまして、食品規格部会において、 汚染物質についての取扱いあるいは規格基準の検討の議論を始めるに当たりまして、基本的な考 えについて整理をされたというものでございます。その内容につきましては、第1「趣旨」でご ざいます。  食品中の汚染物質低減対策については、国産品、輸入品を問わず、国内に流通する食品中の汚 染物質の汚染実態及び暴露状況等に鑑み、必要に応じ食品衛生法第11条に基づき、規格基準が設 定されているところでございます。  一方、規格基準の設定が直ちに必要でない物質であっても、食品の安全性確保対策を推進する には、食品からの汚染物質の暴露を可能な限り低減することが有効と考えられているところでご ざいます。  つきましては、食品中の汚染物質について、我が国における規格基準の設定に係る基本的な考 え方を定めるとともに、規格基準が定められていない汚染物質の低減対策について整理をするこ とにより、より一層の食品の安全性の確保を図るという趣旨のものでございます。  第2「基本方針」でございます。  我が国の食品中の汚染物質の規格基準の設定にあたっては、コーデックス規格が定められてい る食品については、我が国でも規格基準の設定を検討することとし、原則としてコーデックス規 格を採用しますが、その際、国内に流通する食品中の汚染物質の汚染実態及び国民の食品摂取量 等を踏まえ検討を行います。コーデックス規格を採用することが困難である場合等については、 以下の取扱いをするということで、2つの例示が記載されているところでございます。  1つ目につきましては、我が国の食料生産の実態等からコーデックス規格を採用することが困 難な場合につきましては、関係者に対して汚染物質の低減対策に係る技術開発の推進等について 要請を行うとともに、必要に応じて、関係者と連携しまして、ALARAの原則に基づく適切な 基準値又はガイドライン値の設定を行うこととするとされております。ALARAの原則とは、 この下に脚注がございますけれども、As low as reasonably achievableの略でございまして、「合理 的に達成可能な範囲でできる限り低くする」という考え方でございまして、コーデックス委員会 でも、この考え方に従って、汚染物質の最大基準値設定がされているということでございます。  5ページ目にまいりまして、2つ目の例示がございますけれども、国内に流通する食品中の汚 染物質の汚染実態、それから、国民の食品摂取量等を踏まえると直ちに規格基準の設定が必要で ないと判断される場合は、将来にわたって、国民の食品摂取の状況の変化等にも鑑みて適宜見直 しの検討を行い、直ちには基準は設定しないということでございます。  なお書きにございますけれども、コーデックス基準が設定されていない場合でも、汚染物質の 暴露等がある場合には、都度、規格基準の設定を検討するということにされております。  第3でございますけれども、規格基準の設定について、当時、今後、検討を行う汚染物質の例 というのが記載されておりますけれども、(1)カドミウム、(2)トータルアフラトキシン(総 アフラトキシン)については、既に食品規格部会の方で議論されておりますけれども、(3)とし てアフラトキシンM1についても、その例示として記載がされているところでございます。  第4の「自主的な取組みの推進」でございますが、厚生労働省は、我が国で食品中の汚染物質 に係る各規格基準が策定されるまでの間、食品等事業者が、コーデックス委員会の食品中の汚染 物質及び毒素の一般規格に定められている最大基準値を準拠するよう努めること等により、食品 中の汚染物質の低減対策に努めるよう、推進することとされております。  なお、この考え方を作成するに当たりまして、この後ろに(参考)を付けておりますけれども、 コーデックスの文章を参考にしておりまして、その抜粋を記載させていただいているところでご ざいます。  それでは、また1ページに戻っていただきまして。2.の表の一番下でございますけれども、 平成21年1月に、先ほどの考え方を踏まえまして、アフラトキシンM1についても調査研究を進め てきたところでございますが、それについて、また、これも食品規格部会において、進捗状況に ついて報告をしているということでございます。  このように、本件につきましては、これまで食品規格部会において議論をいただいてきたとこ ろでございますけれども、動物性食品の規格基準設定ということでございますと、本部会、乳肉 水産食品部会の所掌とされていることに基づきまして、本日議論をお願いしたいということでご ざいます。  3番「JECFAにおける評価」でございますけれども、1997年の評価でございますが、こちらア フラトキシン類(B1、B2、G1、G2、M1)について評価された結果、ヒトの肝臓の発がん物質で あり、「摂取は合理的に達成可能な値まで低減されるべき」だというふうに評価をされております。 AFM1についてはAFB1と比較して約10分の1の発がん性ということで評価されております。  また、2001年のJECFAにおきまして、AFM1の国際基準値を設定するに当たって、0.05ppb又は 0.5ppbを採用した際に予想される肝臓がんのリスクの差を評価した結果、リスクの差は非常に小 さいというふうに評価をされております。  これを受けまして、先ほど御説明いたしましたように、コーデックス規格として、乳中0.5ppb が採用されています。  2ページ目にまいりまして、各国のアフラトキシンM1の規制状況は、記載のとおりでございま す。米国において、牛乳に0.5ppb、EUにおいては、生乳等について1オーダー低い0.050ppbが 設定されています。  5番にまいりまして、「我が国における飼料中のアフラトキシンB1低減対策」でございますけ れども、こちらにつきましては、農林水産省の方で行われておりまして、AFM1の生乳への移行デ ータ、それから、乳牛用配合飼料中のモニタリング結果をもとに配合飼料のAFB1の基準値を 0.01ppbとしているところです。  また、基準の遵守状況についても確認されておりまして、独立行政法人農林水産消費安全技術 センターにおいてモニタリング検査を実施しておりますけれども、これまでのところ、基準値を 超える事例は認められていないということでございます。  6番目にまいりまして、「我が国における調査研究」でございますが、先ほど申し上げましたよ うに、国際的な動き等を踏まえて、ここに記載の調査研究が進められてきているところでござい ます。これらにつきましては、後ほど、小西先生より御紹介いただきますので、割愛させていた だきます。  3ページでございます。7番「対応方針(案)」でございますが、現時点まで得られている知見 に基づき、食品健康影響評価を食品安全委員会に依頼し、評価結果を受けた後に薬事・食品衛生 審議会において検討を行うとするというふうに記載させていただいておりますけれども、本日の 御議論におきまして、この方針について御了承が得られれば、食品安全委員会への評価依頼をし たいと考えております。  資料1−1の説明は、以上でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。  ここまでで質問等はございますか。  汚染物質に係る規格基準設定の基本的考え方については、食品規格部会で取りまとめられたも のですけれども、乳肉水産食品部会においても、このような考え方で進めていくということでよ ろしいでしょうか。  では、特に御意見ないようでしたら、了承されたということで、進めていきたいと思います。  それでは、引き続き、アフラトキシンM1の国際的な動向及び調査研究の概要等について、小西 部長から御説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○小西参考人 今御紹介をいただきました国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部の小西と申し ます。これから20分弱、アフラトキシンM1につきまして、今まで数年にわたりまして調査研 究を行ってきましたので、その結果を御報告させていただきたいと思います。  まず、アフラトキシンMは、アフラトキシンB1又はB2を含むとうもろこしを主体とする飼料を 摂取した牛が、牛が肝臓で代謝をしまして、そして、M1又はM2ができるわけです。「アフラトキ シン」という言い方で御説明するときには、アフラトキシンB1、B2、G1、G2、M1、M2が全部含 まれます。とうもろこしなど食品に含まれるアフラトキシン(総アフラトキシン)は、B1、B2、 G1、G2、の4つに限るわけです。なぜかといいますと、アスペルギルス属が産生する毒はこの4 種類しかないからです。その4種類のうち、B1、B2からはM1、M2ができるものですから、アフ ラトキシンMはミルクに混入します。これは直接食品となりますので、アフラトキシンの仲間に 入れましょうという考え方になっています。  2001年にJECFAでアフラトキシンM1だけの評価が行われました。その評価の結果をサマライズ したものがこのスライドとなります。B1とM1の毒性を比較をしてみました。急性毒性につきまし ては、北京ダックなどのダック類が一番感受性が高いものですから、これをよく使いますけれど も、B1におきましては、経口で投与して、0.34mg/kgbw/日で毒性がでました。M1におきましては、 B1と同様、又は4倍で急性毒性は起こってきます。ですから、B1よりも4倍ほど感受性は弱いと いう結論になっています。  次に、慢性毒性ですが、これは両者とも機序が同じですので、原発性の肝臓がんを起こします。 B1の場合は、総アフラトキシン全体として、IARCの分類でクラス1に指定されております。M1 の場合は、B1ほど肝臓がんになる確率は高くありませんで、いろいろな動物実験の結果、大体B1 の2〜10%と言われております。  補足ですけれども、B1は、ヒトでの疫学調査はやられておりますが、M1においては、ヒトでの 疫学調査はなくて、今のところ動物実験の結果において肝臓がんを起こすことが明らかであると いうことになっております。  B1は非常に強い遺伝毒性がございますが、この遺伝毒性に関しまして、M1も同様の方法で比較 をしてみました。そうしますと、DNA修復試験や、DNAの損傷試験などの結果からは、B1の 大体3分の1ぐらいの活性であるということがわかっております。  では、M1が体内に入って、どのように代謝されるかということを簡単に御説明いたします。こ れは途中まではB1と似ております。まず肝臓に入りますと、肝臓の薬物代謝酵素によってエポキ シドという形になりまして。このエポキシドになりますとエクソとエンドという異性体ができる わけですが、このエクソのエポキシドは非常に結合度が高いものですから、DNAに結合したり、 または細胞に結合したりいたします。B1の場合は、このエポキシドができてから細胞毒性を発揮 すると言われております。  一方、エンドでエポキシドに代謝されたものは、グルタチオンSトランスフェラーゼという酵 素によって抱合体ができ、そして、無毒化されるようになります。B1の場合は、細胞毒性はエポ キシドになってから起こるのですが、M1の場合は、細胞毒性はそのまま直接起こることがわかっ ております。  次に、発がんリスクです。遺伝毒性、慢性毒性に関しましては、B1の10分の1ぐらいとリスク 評価をされております。これはスライドが小さくて、大変申しわけございませんが、B1とM1の動 物実験とB1の場合でしたらヒトに対しての疫学調査などからJECFAがこのような評価式をつく りました。それによりますと、10万人の人たちの中で、アフラトキシンB1でもM1でもいいんです けれども、体重1kg当たり1ng(ナノグラム)をずっと死ぬまで食べつづけた場合、どのくらい発 がんする人がいるか。10万人中何人が発がんするかという数字でございます。そうしますと、健 常人の場合は、10万人に0.001人がM1で発がんします。これに対して、B型肝炎のキャリアの方は、 そのリスクは約30倍に上がりまして、10万人に対して0.03人がアフラトキシンM1によって発がん します。この計算式から暴露量とB型肝炎のキャリアの割合がわかりましたら、10万人のうち何人 が発がんを起こすかということが計算できるわけです。  その式をもとに、これはJECFAが乳中のM1の濃度を0.5(コーデックスは0.5)μg/kgに基準値を 設定した場合及びヨーロッパなどが行っております0.05μg/kgに基準値を置いた場合、どのくらい 発がんリスクが変わるかということを計算してみました。この丸が付いているところが計算式で すが、これはB型肝炎キャリアのパーセンテージとリンクしておりますので、そのパーセンテー ジがここに記されております。1%のエリアと5%、25%という3つの地域に分けて計算してお りますが、いずれも約15人ずつ人数は増えていることがわかります。このことから、10万人に1% のエリアで3人から29人ぐらい増えるのですけれども、10倍ぐらい増えるのは、さほど大きなイ ンパクトではないという結論になっています。  そして、JECFAは「予防と制御」にも言及しておりまして。それによりますと、動物用飼料で は、AFB1のおよそ0.3〜6.2%はAFM1に変換される。乳中のAFM1は、動物用飼料中のAFB1の用量 依存的である。飼料中のAFB1の値が高くなればAFM1も高くなる。これらのことからAFM1を制御 する最も有効な手段は、飼料中のAFB1の制御をすることであるとJECFAでは言っています。  これは、諸外国及びコーデックスの基準をあらわしたものでございますが、コーデックス基準 は0.5μg/kg。これは2001年に決められた基準となっております。  では、諸外国ではどうかと申しますと、いろいろな基準値が設けられておりますが、0.05μg/kg は、先ほどから出ておりますように、ヨーロッパ諸国がこの基準値をとっております。34か国ご ざいます。それから、0.5μg/kg。コーデックスと同じ基準を持っている国が22か国。ほかに5μ g/kgとか、10μg/kgとか、いろいろとその国の事情に応じて、このような基準になっております。  これはJECFAの発表に日本のデータを足したものです。JECFAの発表によりますと、生乳と殺 菌乳などの今まで行われました実態調査の結果を、このような表にまとめております。ギリシャ、 インド、韓国などが報告されておりまして。ギリシャですと、生乳で0.005μg/kg、インドでは牛 乳で0.2μg/kg、韓国では0.014μg/kgが平均汚染濃度となっております。我が国では2回実態調査 をやっておりまして。1つは殺菌乳といいますか、市場に出回っている牛乳を検査した場合、サ ンプル数は209検体でございます。これが平成13年の記録でございますが、0.009μg/kgが汚染濃度 でございました。それから、平成16年の事業の結果です。この時は生乳を使いまして、サンプル 数は300検体でございます。100検体ずつ時期を変えて行っています。冬2回と夏1回やりました。 その結果、平均して0.009μg/kgでございました。偶然、市場に出回っている牛乳と同じ濃度にな っています。  平成16年のときの結果を、さらに詳しく御説明いたしますと、このときには、3回サンプリン グをしております。1月と2月と6月でございます。このときに、なぜこのようなサンプリング をしたかといいますと、この年、2003年は、農水省の調べによりますと、飼料に使うコーンのAFB1 の汚染濃度が非常に高かったのでございます。勿論、0.01ppmの濃度を超えるものはございませ んでしたが、この点々が飼料中のAFB1の濃度でございますが、10月、11月、12月は非常に高い濃 度を示しています。大体飼料は、農家に行って、2〜3か月はつづけて食べさせているというこ とですので、1月、2月、それから、落ち着きました後の6月、この3点でサンプリングをして みました。そのときの平均値がこれです。1月においては0.0035μg/kg、2月は0.0021μg/kg、そ して、6月は0.0016μg/kg。非常にわずかな違いですが、AFB1の濃度に依存している我が国の乳 のアフラトキシンMの濃度は、飼料中のAFB1の濃度に非常にきれいに依存していることが、これ からもおわかりになると思います。  さて次に、分析法をまとめて行いまして、チーズとバター、加工品の汚染実態調査を行いまし た。それと同時に、移行率も計算し、実験的調査を行いました。その結果、この上にありますの は、回収率のほか、併行精度などが書いてありまして、チーズもバターも我々が使いましたIA C法でクリーンアップし、HPLCで測定する方法は妥当であるということが確かめられております。 その方法で汚染実態調査を行いましたところ、チーズでは60検体、バターとホエーはちょっと逆 になっています。バターで30検体、ホエーで30検体行いましたところ、チーズでは8検体で検出 限界以上が出ております。検出限界、このときには0.010μg/kg、それから、定量限界が0.05μg/kg なので、このレンジからいきますと、定量限界以上のものは2検体ぐらいしかなかったのですけ れども、0.02〜0.06μg/kgぐらいの濃度が出ております。  そして、生乳からチーズをつくるときに、どのくらいAFM1が移行するかという数字が、この 42.6%でございます。ここのところのバターは約5%です。乳脂肪率とほぼリンクしております。 そして、ホエーは48.6%です。ここは逆になっておりますので、直していただければ幸いです。  では、我が国の生乳はどういう使い方をされているかというのは、ここに簡単にお示ししたも のです。まず、国内の全乳生産が809万トンあります。それから、輸入乳製品は396万トンござい ます。国内の生乳におきましては、牛乳として売られているもの。それから、バターと脱脂粉乳 をつくるもの、それから、生クリームとチーズをつくるものが、大体このくらいの比率で行われ ておりまして。輸入乳製品に関しては、チーズ、バターです。輸入量の約7割弱がチーズという ことになります。  そして、この生乳の需要構造と暴露量を推定するときに、何万トンかといいますと、先ほどお 示ししました減衰率と暴露量を計算いたしました。どのくらい量を食べているかということから、 この数字を計算いたしました。そうしますと、まず、どのくらい汚れているかという実態調査と、 それから、どのくらい乳製品を食べているかという摂取量調査、この両方を併せて、そして、モ ンテカルロ手法で確率を出すのですけれども、この摂取量の分布をお示ししたものです。これを ざっと見られますと、ここが1〜6歳、こっちが7〜14歳、15〜19歳、それから、20歳以上と分 けますと、この広がりといいますか、これが1〜6歳、7〜14歳で、非常に広がっています。量 をたくさん食べる人が多いということになります。ところが一方、15〜19歳、それから、20歳を 超えますと、牛乳を飲む人、乳製品を食べる人は、あまり量を多くとらないような集団になって きていることが、ここのグラフからはおわかりになると思います。  次に、モンテカルロシミュレーションを用いまして、それぞれの年齢層における暴露量を数値 化してみました。そうしますと、赤で示します線の1〜6歳が一番暴露量が多い。体重の割には 飲む量が多いということが如実に出てまいります。7〜14歳が次で、20歳以上になりますと、ほ とんど寝ているという状態になって、AFM1の摂取量は非常に少ないということになります。  今グラフでお示ししましたのがAFM1の摂取量でございますので、そこからJECFAがつくりまし た発がんリスクを計算した結果がこの表でございます。このupper boundと書いてありますのは、 実態調査をするときに、検出限界以下のもの、定量限界以下のものをどのように処理するかとい う一つの方法を示しております。このupper boundというのは「最悪のシナリオ」というふうに考 えていただければいいと思います。そうしますと、1〜6歳、今ニューッと上がっていましたこ のグループ、99.9パーセンタイルにおきましては、10億人に7人がAFM1によって発がんすると。 我が国は1億2,700万人しかおりませんので、それで単純に割りましても、0.7人、1人に満たない。 次に、20歳以上。これはAFM1の摂取量はほとんど寝ておりましたけれども、ここにおいても、一 番多飲している99.9パーセンタイルの人たちは、10億人に約3人という数字が出てきます。  ここから結論を導くといたしますと、我が国の汚染実態結果から、乳製品のAFM1汚染は極めて 低レベルである。  それから、我が国のAFM1摂取量は、1〜6歳が最も多いけれども、そのレベルは極めて低いも のであります。  また、我が国の牛乳中のAFM1汚染は、飼料中のAFB1濃度に比例していることが示唆されてい ます。  ということで、以上です。 ○山本部会長 どうもありがとうございました。  ただいまの御説明に対しまして、御質問等はございますか。 ○五十君委員 資料の2ページの上の「JECFAの評価(2001)」という表がちょっとわかりにくか ったので、すみませんが、もう一度確認したいんですが。北京ダックの急性毒性の値ですが、AFB1 の方は0.34mg/kgで、下は、これは40から50ぐらいですか。 ○小西参考人 同じ濃度、または、4倍未満というか、4倍高いという意味ではなくて、4分の 1ということです。 ○五十君委員 その前の数字はどういうことですか。 ○基準審査課長 先生、その40-50gというのは、北京ダックの重さというか、試験に供した北京 ダックの体重ですね。 ○小西参考人 そうです。これとこれは同じ人が実験しているわけではないので、こちらの方は (一日令)というふうな書き方をしておりまして、こっち(下)はgで示してあるので、同じ日 令かどうかはよくわからないんですね。 ○五十君委員 計算上は、AFB1の4分の1の量で出ていたと。薄いもので出るということですか。 ○小西参考人 4倍量ないと、AFB1と同じような毒性にはならないということです。  それから、急性毒性ですと、AFB1の4分の1の量ぐらい。 ○五十君委員 という意味なんですね。 ○小西参考人 はい。 ○阿南委員 各国のAFM1の汚染濃度データのところで、インドの数値がちょっと高くなっていま すが、これは、とうもろこしが原因だというふうなことはわかっているのですか。 ○小西参考人 そこまでは論文には書いてありませんが、きっと飼料だと思います。 ○中村委員 ちょっとずれてしまうかもしれませんが、とうもろこしは、日本の場合はほとんど 輸入ですね。アメリカとかが多い。実際にとうもろこしの中にアフラトキシンがあるのは、とう もろこしの中でつくられるのか、土壌からの、アフラトキシンの由来はどこになるか。日本では コントロールできないような話だと思うんですが。 ○小西参考人 先生がおっしゃるように、土壌汚染で、アフラトキシンを産生する菌がそのとう もろこし畑にいっぱいおりまして、それを昆虫が運んだり、砂ぼこりなどで、常に汚染されてお ります。刈り取った後に、貯蔵している間にアフラトキシンができてしまうということが一般的 に考えられております。普通、かびですと、1〜2週間経たないと毒素は作らないものというよ うなことは言われているんですが、アフラトキシンだけは、2日目ぐらいから作ってしまうんで すね。菌が増えると同時に、すぐアフラトキシンを作り出すので、そういう面では貯蔵しにくい というか、貯蔵でコントロールしにくいものだと言われております。 ○中村委員 昔、Turkey(七面鳥)のX Diseaseとかすごいのもあったが、今の動物用の飼料だと、 かびが生えるような環境は、ものすごく改善されていると思うのですが、でも、微量にはあると いうことですか。 ○小西参考人 はい、そうですね。 ○山本部会長 今のに関連してちょっとよろしいですか。そういう輸入時に、とうもろこしなん かのアフラトキシンは検査されているわけですね。ですから、ある一定以上あるものについては、 積み戻しとか、そういうことが行われるということでよろしいんですか。 ○小西参考人 はい。勿論、日本で、とうもろこしは食用の場合は10ppbですから、AFB1がそれ 以上の濃度を持つとうもろこしは輸入されてこないということが前提でございます。 ○山本部会長 飼料についてはどうですか。 ○事務局 すみません、事務局からちょっと補足させていただきますが、先ほど資料1−1の2 ページ目の5番のところで御説明させていただいたところですが、飼料につきまして、農林水産 省の方でモニタリング検査をしておりまして。今まで基準値を超えた事例がないのと、21年度の 検査実績であれば、0.007ppmが最大であったということがございますので、御報告させていただ きます。 ○山本部会長 飼料も10ppbという考え方でよろしいんですね。 ○事務局 はい、そういうことでございます。 ○西尾委員 3番目のスライドで、慢性毒性のところで、北京ダックに用いた濃度はどれぐらい ですか。 ○小西参考人 慢性毒性の場合は、これは北京ダックではなくて、いろいろな動物種をやってお りまして、一番感受性が強いのがフィッシャーラットです。ここではng単位で発がん性が起こっ ています。AFB1の場合は、量と期間に対して、慢性毒性ですから、数ngでも毎日何か月か続けて いると発がんします。今ちょっと正確な数字はうろ覚えですが。 ○西尾委員 「予防と制御」のスライドですが、一番上のところで、AFB1のおよそ0.3-6.2%がAFM1 に変換されるということですが、そこには無毒化されるのか、AFB1のまま残っているのか、どう なんですか。 ○小西参考人 AFB1というのは、AFM1以外にAFQ1とか、AFP1とか、アフラトキシコールとか、 いろいろな形に変換されまして、無毒化されるんです。ですから、AFM1になる確率は最大に6.2% であると。あとは、他の水溶性の代謝物になるというふうに考えていただければいいと思います。 特にアフラトキシコールが一番多いです。 ○西尾委員 そのときに、ほかのものの発がん性はかなり低いわけですか。 ○小西参考人 これはないとは言えないのですけれども。 ○五十君委員 1つ前のスライドが小さくてよくわからなかったのですけれども、予測値という のは、ヒトにおけるがんの予測リスクですか。 ○小西参考人 これはヒトにおいてです。10万人に何人かということですね。がんの発症例が。 1日体重当たり1ng食べている場合だったら、1年間に10万人中何人ががんにかかるかと、ヒト での発症リスクです。 ○西尾委員 これの推定のベースとなっているのは。 ○小西参考人 これですね。ここ(3ページの上のスライド)の式です。Pというのは、1%、 5%、25%です。B型肝炎のキャリアのパーセンテージでありまして、この摂取量の数字を当て はめました。ここに濃度を入れるわけです。そうすると、発がん率が出てきます。 ○西尾委員 先ほどの話ですと、コーデックス基準の0.5ですね。それが例えば同じ肝炎の率でい くと、大体10倍ぐらい違うという理解でよろしいわけですね。 ○小西参考人 はい。その10倍をどう考えるかなんですけれども、日本はそれほどインパクトが ないと。 ○西尾委員 これは何人当たりですか。 ○小西参考人 10万人当たりです。一番最悪だったら、25%のB型肝炎キャリアがいる地域では、 20人が0.05μg/kgの基準値を置いた場合にがんになるんだけれども、0.5になると、それが200人に 増えます。 ○西尾委員 それは無視できる値という理解で良いのですか。 ○小西参考人 はい。10万人に200人というだったら、大したことないということです。 ○西尾委員 そのあたりは、よくわからないのですけど。 ○中村委員 そうすると、B型肝炎で肝がんになる確率と、その10倍になるという確率と同じと 考えていいのですか。 ○小西参考人 B型肝炎になっておりますと、健常人だと10万人に0.001人ががんになりますが、 B型肝炎患者は0.03ですから、30倍リスクが違います。 ○西尾委員 アフラトキシンの影響は少ないと。ウイルスの影響の方が強いということなんです ね。 ○小西参考人 そうです。 ○西尾委員 片方は30倍で、片方は10倍だから、ウイルスの影響の方が多い。 ○小西参考人 そうです。 ○西尾委員 そう解釈すれば良いのですね。 ○小西参考人 はい。 ○山本部会長 よろしいでしょうか。  小西先生の御説明に関しての御質問は、ほかにございますか。  どうもありがとうございました。  この件について、このまま食品安全委員会の方に食品健康影響評価を依頼するかどうかという ことですけれども、それに関しましては、特に御意見はございますか。 ○五十君委員 資料1−1の2ページで、4.に「各国のアフラトキシンM1の規制状況」という 一覧がありまして。EUでは、乳を原材料とするような食品が0.050という値があります。その下 を見ますと、調製粉乳、乳幼児向け特殊医療目的の栄養食品が、基準を変えているようなので、 このあたりについて何かコメントを付ける、あるいはデータを確認した作業をしていただけると 良いと思います。先ほどのデータは1歳以上だったと思いますので、それ以下を少し検討をいた だけるといいかと思います。 ○山本部会長 事務局はいかがですか。 ○事務局 そのあたりにつきましては、実態調査をするとかそういうことを検討させていただき ます。勿論、EUの選定の根拠などもここに載せさせていただきたいと思いますけれども、必要 性につきまして、小西先生とも、また、御相談させていただきたいというふうに考えております。 ○山本部会長 諮問のやり方といいますか、どういう形で諮問をしていくというふうに考えてお るのですかね。といいますのは、基準設定に当たって、食品健康影響評価がどの濃度で出るか出 ないかとかそんな話ではなくて、AFM1についての。 ○基準審査課長 それを含めたリスク評価をお願いしていくことになると思います。 ○山本部会長 では、この場合にはTDIとかそういうものが出てくるわけではないのですね。 ○基準審査課長 恐らくそれは難しいかなと思いますけれども、そういう意味では暴露が、日本 の汚染実態がどうか。また、その暴露から、日本人でのリスク評価をしていただくことになるの だろうと思います。総アフラのときもそうなんですけれども、どういう規制を置いたときに、ど のぐらいそのリスクが減るのかと。そういう観点から御評価をいただいておりますので、同じよ うな御評価になるのかなとは思っています。 ○山本部会長 そうしますと、現時点で何も基準がないというような状況と比べて、ある程度こ の基準値で持っていった場合の健康影響はどうなるのかというような評価をしていただくと、そ ういう考えでよろしいのですかね。 ○基準審査課長 恐らく、例えばコーデックスの基準値であるとかということを想定した上で御 評価をいただけるのではないかと思います。 ○山本部会長 ただ、諮問をするときに、ある程度こちらからそういうものを示さなくてよろし いのですかね。総アフラのときはどういう諮問の形で諮問をされたんですか。 ○基準審査課長 数字までは入れておりません。こういう基準値をつくりたいが、どうかという 形での諮問ではなくて、リスク評価全体を諮問させていただいている形になっております。 ○山本部会長 そうすると、AFM1についての健康影響評価ということで、日本人に対してはどう かということを見ていただくと、そういう諮問を行うということですが、よろしいですか。  それでは、本件については、総アフラのときと同じように、食品安全委員会へ食品健康影響評 価を依頼して、その結果を受けて、具体的なリスク管理の内容について御審議いただくというこ とにしたいと思います。  特に御意見がございませんでしたら、そのようにしたいと思いますが、よろしいですね。  では、どうもありがとうございました。  小西先生、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、議題の(2)として、「魚介類に含まれるメチル水銀の取扱いについて」。 本件について、まず、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 「魚介類の摂食と水銀に関する対応」ということで、資料の2−1につきまして御説 明をさせていただきたいと思います。  まず始めに、本日の資料に、基本的に「水銀」と記載をしておりますが、魚介類に含まれる水 銀の議論におきましては、健康への影響があるとされるのはメチル水銀ということでございます。 単に「水銀」と記載されている部分が多いですけれども、この部分は御承知おきいただければと 思います。  それでは、概要につきまして御説明をさせていただきます。  まず1番として「魚介類の摂食と水銀」ということでございまして。最初の○といたしまして、 魚介類は、良質なたんぱく質や健康に良いと考えられるEPA、DHA等を多く含んでいる。健 康的な食生活にとって不可欠で優れた栄養特性を有しているというものでございます。  一方、2つ目の○といたしまして、その反面、自然界に存在する水銀が食物連鎖の過程で体内 に蓄積するということでございます。日本人の水銀摂取の80%以上が魚介類由来というようにな っている状況でございます。この一部の魚介類が高いということでございますけれども、これは 特定の地域に関係なく、水銀濃度が他の魚介類と比較して高いものが見受けられるということで ございます。  また、3つ目といたしまして、水銀に関する近年の研究報告では、低濃度の水銀摂取が胎児に 影響を与える可能性を懸念するという報告がなされておりまして、妊娠中の魚介類の摂食には一 定の注意が必要だということでございます。  こういった状況を受けまして、2番目の「対応の経緯」の記載でございますけれども、まず、 平成15年6月に、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会の意見を聴 きまして、「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項」を出し、Q&Aも公表したという ことでございます。  その後、JECFAにおいてメチル水銀のリスク評価が行われた等の状況を踏まえまして、平成16 年7月に、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼しました。食品安全委員会の食品リスク評 価結果を受けまして、平成17年11月に本部会の意見を聴きまして、「妊婦への魚介類の摂食と水銀 に関する注意事項」、それから、Q&A、それから、妊婦さんに注意すべき事項を取りまとめたパ ンフレットを作成したということでございます。  3ページの別添1をご覧ください。その概要について簡単に御説明をさせていただきたいと思 います。  別添1が、平成17年11月2日に、本部会でお取りまとめをいただいた注意事項でございます。 内容につきましては、先ほど御説明しました、魚介類の有益性について記載をさせていただいて、 その後、これも御説明しましたが、魚介類の水銀が、食物連鎖を通じて高くなることもあるとい うことを記載させていただいた上で、注意事項の対象者であります妊婦の方々への注意事項を記 載をさせていただきました。こちらの方に、健康影響としては、胎児に影響を与える可能性が報 告をされている状況を踏まえたものですが、この影響は、例えば音を聴いた場合の反応が1/1,000 秒以下のレベルで遅れるようになるものだということを記載をさせていただいております。ただ、 妊娠している方、それから、妊娠している可能性のある方については、魚食のメリットを活かし つつ摂食を注意していただきたいということでございます。  その内容につきましては、4ページ目にございますけれども、「妊婦が注意すべき魚介類の種類 とその摂食量(筋肉)の目安」を記載させていただいているところでございまして、魚介類に含 まれる水銀濃度検査結果を受けて、特に高いもの、例えばバンドウイルカについては、1回約80 g、魚1切れの量が大体80gということですけれども、これを食べる場合は、2か月に1回まで とか、そういった形で注意事項の発出をさせていただいているということでございます。  また、併せて、その食べ方で、2種類、3種類食べる場合はどうしたらいいかとか、そういう ことも記載させていただいております。また、その対象でない方、子供や一般の方々については、 健康影響については、悪影響が懸念されるような状況ではないけれども、有益である魚介類をバ ランス良く摂取してくださいということ。それから、正確な理解のお願いということで、発出を させていただいております。  併せて、Q&Aにつきましても公表させていただいておりまして、これは5ページ以降に記載 させていただいています。  それから、25ページでございますが、パンフレットにつきましても、併せて、妊婦さんがより 理解しやすいようにということでパンフレットを作成して、周知を図っているということでござ います。併せて、母子健康手帳の方に、この注意事項について記載をするというようなことも推 奨させていただいています。  そうしましたら、資料の2ページ目にお戻りいただきまして、本日、御確認、御検討いただき たい事項について御説明をさせていただきたいと思います。  3番「太地町における水銀と住民の健康影響に関する調査」でございますけれども、こちらにつ きましては、この後、岡本所長の方から調査結果の概要を御説明いただくこととさせていただい ておりますが、5月9日に公表された、その調査結果の概要によると、(1)と(2)であったというこ とでございます。  この結果によりますと、(1)太地町住民の毛髪水銀濃度は、国内の14地域の結果と比べると顕著 に高かった。それがクジラやイルカの摂取と関連することが示唆されている。  (2)として、今回の調査結果においては、メチル水銀中毒の可能性を疑わせる例は認められなか ったということでございます。  この調査について御報告をいただいた後に、これを受けた対応を考えておりますのが、この4 番に書かせていただいているところでございます。  1つ目の○でございますけれども、クジラ・イルカの多食者に対する注意喚起を目的としたQ &Aの見直しを行うということを考えているところでございます。  それから、2つ目の○につきましては、妊婦さんの注意事項への関係でございますけれども、 平成17年11月に注意事項を公表させていただいた後に、地方自治体の方で実施された魚介類の水 銀含有量の調査結果等を受けまして、注意事項の対象魚種見直しを行うこととさせていただきた いと考えております。  資料2−1につきましては、以上でございます。 ○山本部会長 どうもありがとうございました。  ただいまの御説明に関しまして、御質問はございますか。  それでは、実際に5月9日に公表されました「太地町における水銀と住民の健康影響に関する 調査」ということで、その内容につきまして、岡本所長から御説明をいただきたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○岡本参考人 国立水俣病総合研究センター所長の岡本です。  お手元に配付されています資料2−2について御説明申し上げたいと思います。  まず、表紙というか、裏表の最初の紙が、5月9日に公表を記者会見の形で発表させていただ いたときの概略というものであります。  それから、21年度の調査報告書そのものは、その2枚目以降に付けさせていただいております が、下の方にページが入っておりますけれども、1〜4ページまでがその概要、5〜24ページま でが調査報告書の本体、それから、25ページ以降が参考資料というような形になっておりますの で、まず、ざっと1〜2ページ、1枚裏表の紙で御説明を申し上げたいと思います。  和歌山県の太地町は、捕鯨、それから、クジラ食文化が根づいている町でありますけれども、 太地町より要請を受けまして、国立水俣病総合研究センターの方で、毛髪の水銀測定によるメチ ル水銀の摂取状況、いわゆる暴露状況の把握、それから、健康影響の調査ということで検診を行 っております。  太地町の住民、昨年の7月31日現在で3,526名のうち、夏季と冬季と2回に分けて調査を行って おりますけれども、夏季で1,017名、それから、冬季で372名ですけれども、重複した方がいらっ しゃいましたので、最終的に太地町の住民の3,526名のうち1,137名の方から毛髪の提供をいただき ました。毛髪の提供をいただく際に、アンケート形式で、魚介類の摂取状況に関して、1か月間 でどの程度のものを摂取しましたかという情報を併せて聴いております。その毛髪水銀の濃度の 比較的高い住民ですが、実際には7.2ppmという、全国の男性の上位5%に当たる値以上の方には、 神経内科の検診をお勧めをしました。それより下の方も希望者には検診を行っております。最終 的に182名の方(男性105名、女性77名)が検診に同意をいただきまして、当センターの神経内科 専門医によりまして、通常行われる神経内科の診察を行っております。それから、65名でありま すけれども、二点識別覚検査、中枢性の感覚障害のときの障害を受けると言われる検査と、それ から、水俣病に代表されるメチル水銀中毒のときに比較的よく見られる上肢の運動障害(振戦) を別途機械を使って分析をしております。こういう毛髪による水銀調査、それから、健康影響調 査の二本立てで行っておるわけであります。  まず、毛髪の濃度でありますけれども、夏季調査の結果についてでありますが、幾何平均とい うものを使っておりますけれども、男性で11.0ppm、女性で6.63ppmです。国立水俣病総合研究セ ンターで調査した国内の14地域の平均値が、男性で2.47ppm、女性で1.64ppmでありますので、比 較いたしますと、かなり高い平均値であるわけであります。  一方、最大値でありますけれども、男性で太地町では139ppm、国内の14地域では40.6ppm、そ れから、女性、太地町の最大値が79.9ppm、女性国内14地域の最大値が25.8ppmというような形で ありまして。最大値につきましても、国内の14地域と比べると、非常に高い値を示しております。  2ページ目でありますけれども、その高い平均値を示している中で、WHOの方で、症状が現 れる可能性のある毛髪の水銀濃度ということで50〜125ppmが示されておりますけれども、その低 い方の値の50ppmを上回る住民が、夏の調査では、対象者の3.1%(32名)の方で確認をいたして おります。  それから、冬季調査を行っておりますが、これは、イルカ・クジラの漁が秋から冬にかけてと いうことで、摂取量も増えると言われておりますので、それを確認をする意味で、冬季の方では、 人数は少ないですけれども、調査をしたわけであります。結果的に、毛髪の水銀濃度の平均値は、 男性11.2ppm、女性6.46ppmで、夏季調査と比べてほとんど違いはありませんでした。しかし、毛 髪水銀の濃度の増加傾向は見られております。冬季・夏季の調査のどちらかで50ppm以上の毛髪 水銀濃度を示した住民は、最終的に43名(3.8%)ということでありました。  毛髪水銀濃度とクジラ類を食べることの関連性から言いますと、統計学的に有意に、クジラ類 を食することが毛髪水銀濃度と関連があることが確認がされております。  健康影響調査でありますけれども、182名の方を検診しておりますけれども、その診察をした対 象者の中には、メチル水銀中毒の可能性を疑われる人は認めませんでした。  細かく見ますと、上肢の不随意運動が太地町の検診受診者には多く見られておりますけれども、 これは上肢運動機能評価システムで解析をいたしますと、病的なものである可能性は低いという ふうに考えられました。  神経所見のうち、アキレス腱反射の低下・消失が毛髪水銀濃度との相関、つまり、毛髪水銀濃 度が高くなるほどその所見が増えるということが認められましたけれども、後でちょっと説明し ますが、水俣病が起こってない地域のデータで、今回入手できたものと比べてみますと、その地 区の所見より低いということなので、このアキレス腱反射の低下・消失も、メチル水銀による影 響である可能性は低いというふうに考えられました。  以上を最終的に評価いたしましたところ、今回の調査では、メチル水銀によると思われる健康 影響は認められなかったというのが結論ではございますけれども、毛髪水銀濃度が非常に高い住 民を認めるということでありますし、町民の3分の1弱の方が検査をしているということであり ますので、引き続きの調査の継続が必要であると思っております。  22年度以降につきましては、今回(21年度)やりました調査に加えまして、小児(胎児)影響 の調査とか、循環器系への影響も調査をしていく必要があるのではないかということで、当セン ター外の専門家も含めた研究班を設置して、調査研究が進められないかということを今後検討し ていくことにいたしております。  それから、太地町の住民の方からも協力を得まして、今、当センターで脳磁計が感覚障害の客 観的評価法として用いることができないかというようなことの研究を進めておりますので、将来 の研究の資料として活用するということで、住民の方にも御協力を得たところでありますが、そ の結果は今後の研究の進捗によるということであります。  簡単でありますが、以上が概要でありますけれども、少し詳細に御説明申し上げたいと思いま す。それでは、報告書の7ページをごらんいただければと思います。太地町の年齢階級、参加率 を見たものでございます。参加率が高いのが、男女とも60歳代、70歳代の方で、大体40%前後の 参加率というか、毛髪の測定に御協力をいただいた率が一番高い年齢層でございます。  それから、8ページです。毛髪水銀濃度の分布でありますけれども、太地町を黒、それから、 国内の14地域を白で示しておりますように、太地町の方は明らかに右の方にシフトをしていると いうことが見ていただけるかと思います。50ppm以上を全部まとめてグラフの右端に記載してご ざいますけれども、実際にこれを並べますと、139ppmということになりますから、これの横にさ らに二つ分のグラフが並ぶというような、非常に右に裾野が広い分布をとっているということが おわかりいただけるかと思います。  それから、耐容摂取量や最大無作用量がいろいろと示されておりますけれども、それと今回の 調査を比較したものが10ページの表4でございます。先ほどお話ししました50ppmが右端に記載 をしてございますけれども、11ppmということで内閣府の食品安全委員会で示されているものが、 胎児影響の最大無作用量でありますが、それを超えている方が太地町の15〜49歳までの出産可能 年齢に当たる方たちで15.6%。一方、国内14地域のデータでは0.1%ということでございました。  年齢階級別に見た毛髪水銀濃度の分布が10ページの下に図3でお示しをしておりますけれども、 年齢とともに増加をする傾向が見て取れるということであります。  魚介類摂取傾向と毛髪水銀濃度の関係でありますけれども、魚介類全般で摂取頻度が上がるに 伴って毛髪水銀濃度が上がるという関係を示しているのが図4で、頻度が上がるにつれて毛髪水 銀濃度が上がるという傾向が認められております。  それから、クジラ・イルカの摂取頻度との関係でありますが、12ページの表5でありますけれ ども、食べた方、これはアンケートで「最近1か月間の摂取の状況」だけ聞いておりますが、最 近1か月間クジラを食べた方と食べていない方と比べますと、「食べた」という方が有意に「食べ なかった」という方に比べて毛髪水銀濃度の平均値が高くなっているということがあります。  太地町の方で消費の多い魚介類ということで、ちょっと聞き方は異なりますけれども、国立水 俣病総合研究センターで持っているデータと比較をしますと、クジラ・イルカ類を食べるという 方が、13ページの表6でありますけれども、太地町では順位として12番目に上がっており、36.8% ですが、国内の14地域では23番目の最後のところにありますけれども、0.7%ということで、ここ で太地町の方ではクジラ・イルカをよく食べるというところが、ほかの14地域と比べると違いが 認められているところでございます。  冬季調査のデータですけれども、14ページです。平均値そのものは大きな差は夏季調査と比べ てございませんでしたけれども、全体で見ると、夏のデータと冬のデータの両方のデータがある 方で比べますと、男性で23%、女性で25%の毛髪水銀濃度の上昇を認めている。夏よりも冬の方 が高くなっているということがわかっております。  最終的に、冬季調査の新規の提供者のうち、男性1名の方が50ppmを上回ったということであ ります。それから、夏季調査で、50ppm未満の方では、男性9名、女性1名が、冬季調査で50ppm を上回ったということになりまして、最終的には、43名の方が50ppmを上回ったということであ ります。  なお、冬季調査で、夏季調査で50ppmを超えていた方のうち2名の方が50ppmを下回っていた ということでありました。  以上が、毛髪水銀濃度の件であります。  それでは、神経内科の方の検診のデータについて少し御説明を申し上げたいと思います。基本 的に、7.2ppmという数字を使わせていただいておりますけれども、この7.2ppmが我々の調査で、 全国の男性の上位5%が7.2ppm以上の範囲にあったので、便宜的にその数字を使ってその方に検 診を行ったということであります。  まず、分析の方法として、水俣病非発生地区の漁村、鹿児島県大島郡K町の神経内科の検診の データが、平成15年度の環境省の委託業務評価結果報告書の中にありましたので、その町と太地 町との比較を、統計学的解析によって行ったというのが、まず1つ目の解析になります。  2つ目につきまして、太地町の検診受診者で認められました神経所見、腱反射の所見、感覚の 所見(二点識別覚検査)と毛髪水銀濃度が関係あるかどうかということの統計学的解析を行った というのが2つ目であります。  3つ目といたしまして、慢性水俣病患者で比較的高頻度に見られる振戦につきまして、上肢運 動機能評価システムを使って解析をしたものであります。上肢運動機能評価システムはどんなも のかというのは、29ページ以降に少し説明が付けられておりますけれども、パソコンのディスプ レイ上を動く円をペンでなぞる運動につきまして、遅れがあるとか、ずれがあるとか、そういう ものを詳細に解析をするシステムでありますけれども、それを使いまして、水俣病の発生地区の 住民との比較、または、脊髄小脳変性症であるとか、パーキンソン病などの振戦を呈する代表的 な疾患との比較をしてみました。この3つの方法論で太地町の検診のデータを解析をしたという ことであります。  それでは、17ページです。太地町の検診受診者と今回我々が入手できました鹿児島県K町の住 民と比較をした表です。色が付いているところが、水俣病によく見られる神経所見です。それが 神経所見の一番左の欄です。それから、「検定」という欄に色が付いているところは、有意な差が 見られた項目でありまして。「高」と書いてあるのが太地町検診受診者における異常頻度がK町よ り高かった。「低」が太地町の方がK町より低かったということであります。この中で「高」は、 男性の方で上肢不随運動とMann試験陽性という欄であります。女性の方では、上肢不随運動と上 肢固縮とMann試験陽性というものであります。Mann試験の説明は、17ページの表11の上に書い てありますが、注11)ということで、両足を一直線上で前後に開いて起立させ、倒れるかどうか という試験であります。ここが陽性が見られたということでありますけれども、これを今度は、 その次のページでありますが、18ページ、水銀の濃度と関係があるかどうかの検定をしたもので ありますけれども、毛髪水銀濃度と神経所見はすべて関係がなかった。要するに、毛髪水銀濃度 との関係は認められなかったということでありまして。どちらかといえば、これも同じように色 が付いておりますけれども、年齢との関係が主に認められたということであります。  腱反射の方でありますけれども、腱反射の方が毛髪水銀濃度と相関を認めたということで、19 ページの表14でありますが、アキレス腱反射の低下・消失に色が付いておりますが、(+)で有意 な差があったということでありますけれども、その上の方のK町とのアキレス腱反射の低下・消 失を見ていただきますと、太地町の方がK町に比べて有意にアキレス腱低下・消失の割合が低い ということがありますので、これはメチル水銀の影響ではないのではないかというふうに一応考 えております。  感覚障害ということで、メチル水銀の中毒に最初に見られる、また、典型的に見られる症状で ありますけれども、これにつきましては、太地町とK町を比べてほとんど差がございませんでし た。水俣病に典型的に見られる四肢末梢優位の感覚障害は太地町で1名の方にみられております けれども、この方も詳細にみますと、メチル水銀によるとは考えられないというのが結論でござ います。  振動覚、二点識別覚と毛髪水銀濃度の相関を見たものが21ページの表16ですけれども、ここで も振動覚、二点識別覚につきましては、毛髪水銀濃度との関係は認められておりません。  上肢不随意運動ということで、表11の方で太地町の方で高率に認められておりますけれども、 それにつきまして詳細に分析しましたのが、22ページ以降ですけれども、太地町と水俣病の発生 地区でありました鹿児島県出水市潟地区と比べたものでございます。ここでも、潟地区と比べて、 上肢の運動機能異常は低いということで、異常を認めるのが非常に低い割合になっています。  宮崎県宮崎市青島地区、水俣病等とは関係ないと思われる地区との比較におきましても、大き な差は認められておりません。また、同様に、毛髪水銀濃度との相関を見たものが23ページ表18 です。多くの項目は、相関は認めておりませんけれども、筆圧のところの一部分に毛髪水銀濃度 との相関を認めるというものがあります。筆圧につきましての病的意義というものについては明 確になってないところもあります。ここは今後の検討ということでありますけれども、そのパタ ーンとして、24ページでありますけれども、ここに水俣病の発生地区、脊髄小脳変性症、パーキ ンソン病、それから、青島地区との比較でありますが、異常の頻度が30%以上の項目を灰色で示 しておりますけれども、太地町では、筆圧の変動係数というところが1つ色が付いておりますけ れども、他の潟地区のデータ、それから、脊髄小脳変性症、パーキンソン病のデータとは違うパ ターンを示しております。どちらかといえば、青島地区と同様のパターンを示しているというこ とで、以上のような3つの項目を検討した結果、今回につきましては、太地町の住民、調査でき た範囲では、メチル水銀の影響と思われるものは認めなかったということであります。継続的な 調査研究を行っていくことにいたしておりますので、22年度も引き続き調査を行ってまいりたい と思いますので、よろしくお願いいたします。  以上です。 ○山本部会長 詳細な御説明をどうもありがとうございました。  ただいまの御説明に関しまして、御質問がございましたら、お願いいたします。 ○林谷委員 教えていただきたいのですけれども。8ページで、今回お調べした太地町と、国内 の他の地域でも、男性の方が女性よりも水銀の量が高いわけですね。12ページを見ても、太地町 の調査では、男女でも、クジラを食べていたのは女性の方が少ないんですが、「魚を食べていた」 と答えた人でも、男性の方が毛髪の水銀量が高いのですけれども、この違いは、男女の生理的な 何か代謝というか、そういうことによるものなのか。それとも、その摂取量の違いによるものな んですか。 ○岡本参考人 これは、全国平均で見ても、男女差があるんですけれども、その原因と申します か、それは明確にはわかっておりません。摂取量の違いではないかということもいろいろ言われ ていますけれども、明確にその原因については明らかになっていないというのが現状だと思いま す。 ○林谷委員 あともう1点、今回の調査で、太地町の水銀濃度は、同じ家庭の中で、ある人は高 いとか、低いとかという、家族集積性のようなデータは出ているものなのでしょうか。 ○岡本参考人 今回につきましては、この一般的な全体での解析しか行っておりませんので、詳 細な個々の家族とかそういうものにつきましての分析はできておりません。 ○林谷委員 わかりました。 ○山本部会長 ほかに、どうぞ。 ○山下委員 幾つか教えていただきたいのですけれども。太地町の毛髪水銀が50ppmを超えるぐ らい高い方がいらっしゃるわけですけれども、この原因はほとんどクジラを食べたことによると 考えればいいのですか。 ○岡本参考人 この摂食量の把握は、過去1か月間に限ってアンケート調査で行っていますので、 限界があるだろうと思っています。ですから、クジラ・イルカを食べることの関係性は認められ ましたけれども、それですべて説明できるかということについては、ここでは何とも言えないと 思います。もう少し詳細な分析、解析、調査をする必要があるのではないかと考えております。 ○山下委員 この摂食した食べ物で、水銀量が多いのは、多分クジラの筋肉と内臟もあると思う んですけれども、そういう食べた食品との関連性もこれからだということですか。 ○岡本参考人 これはどこまで詳細な調査ができるかということについても、それも含めて今後 の研究班を設ける中で、きちんと検討をしていきたいと思います。太地町の住民の方の協力がど こまで得られるかということにかなり頼らないといけない部分でありますので、そこも含めて今 後検討をしていきたいと思っています。 ○山下委員 国際的に見ても、非常に重要な研究であると思います。  もう一つ教えていただきたいのは、健康診断の結果ですけれども、太地町の住民の方は、神経 関係の水俣病の症状がみられないということでしたけれども、ほかの全国の魚食の多いところで も、そういう結果なのでしょうか。 ○岡本参考人 今回、比較対照させていただいている鹿児島県K町がありますけれども、地域で 神経内科的な検診をした、一般住民を対象にしたデータがほとんどないというのが実態でありま すので、今回も、たまたま環境省でやっていた報告書を使わせていただいていますので、他の地 域がどうなっているかということについてのデータは我々は持ち合わせておりません。 ○山下委員 それから、もう一つは、神経関係の検査をやられているかと思いますけれども、例 えばメチル水銀の暴露で、心臓病のリスクが上がるとか、免疫疾患のリスクが上がるということ も言われていますし、それから、水銀とは逆に、魚食の便益といいますか、魚を食べると、脳の 疾患が減るとか、心臓病とかがんのリスクが下がると言われていますけれども、そういう別の視 点の調査も、これまで行われてないのでしょうか。 ○岡本参考人 太地町につきましては、今回、この調査が初めてということでありますので、今 後の調査という方向性にも記載させていただいたとおり、小児、それから、循環系への影響につ いても、これからどういう調査ができるか、そのあたりも含めて検討をしてまいりたいと考えて おります。 ○山下委員 今言われたそのことを考えると、太地町の方は重要な例だと思うんです。つまり、 メチル水銀の暴露が相当高くても、そういう異常が起こらないのは、つまり、魚食由来のいろい ろな成分が作用して解毒しているというような考え方でよろしいのでしょうか。 ○岡本参考人 これにつきましては、いろいろ仮説というか、推論はあるのではないかと思いま す。まず、WHOが示しています50〜125ppmという数字につきましては、それを超えると直ちに すべての人に影響があらわれるということではなくて、WHOのこのペーパーの中にも、この辺 りで最も感受性の高い集団で、症状があらわれる可能性があるというような書きぶりにもなって いますので、そのあたりも含めて考えますと、今回、調査をした方の数が182名ということであり ますし、50ppmを超えた方のすべても診察ができているわけではありませんので、今後とも、そ の調査をしていくことが重要だろうと思っていますし、先ほど言われましたように、この50〜 125ppmというのも、新潟の水俣病、それから、イラクの大きな汚染小麦の事件の、いわゆる人為 的な汚染というか、そういうものに基づいて導き出されている数字でありますので、これが自然 界の通常の食物連鎖で蓄積をしたものにそのまま当てはめることが可能かどうかということにつ いても、我々とすると調査研究の対象ではないかなというふうに思っています。ですから、現時 点では、いろいろな仮説、そういうものもあろうかと思いますけれども、それを研究センターと しては明らかにしていくという努力が一番重要ではないかと思っています。 ○山下委員 今言われた仮説については、私たち水産研究所も研究しています。どういう成分が 水銀のリスクを下げるかという点で、今までの研究で言われているのは、EPA、DHAが、つ まりメチル水銀が作用する細胞死を抑制する作用があると。メチル水銀の毒性を緩和するそうい う成分も魚には入っている。ここにもセレンのことを書かれていましたけれども、セレンがメチ ル水銀の排出に効いているだろうということを研究しています。魚由来の成分が、DHAが水銀 のリスクを軽減しているのではないかということはいろいろなところで研究されていると思うの ですけれども、もし、これから調査をやられるのでしたら、そういう魚食由来のベネフィット要 素と言われているものの分析なども調査の項目に入れてやられれば、非常に重要な知見が得られ るのではないかと思います。 ○岡本参考人 先ほどちょっと説明をいたしませんでしたけれども、今、山下委員から言われま したように、今回については、一部の方からは血液をいただいておりまして。その血中のセレン 濃度を測っております。これはとりあえずの数字を出しているというところでありますので、こ ういうものも含めまして、今後の調査の計画に、先ほどいただいたコメントも活かしてまいりた いと思います。 ○阿南委員 ありがとうございます。  ざっとでいいのですけれども、大体イルカをどういうふうに、どこの部分をどうやって食べて いるのですか。 ○岡本参考人 そのへんは、ちょっと私も今後きちっとやっていかなければいけないと思ってい ますが、赤身の部分であれば、刺身で食べるとか、それから、何かすき焼きでも食べるそうです し、いろいろな食べ方はあるようです。それから、あとは、内臟の方はゆでて食べるとか、そう いう食べ方はいろいろあるようであります。今回については、非常に大まかにしか聞いていませ んので、今後、どういう形で実際に摂取されているかということについても調査ができればとい うふうに思っています。 ○中村委員 こういうのが非常に大事な研究で、こういうのがいろいろなところでいっぱいでき ればいいのですけれども、その背景としては、太地町より要請を受けたという話で。でも、協力 が得られるかというような話で、住民感情としてはちょっと複雑な面があるのではないかなと思 って、そのへん、もし御存知であれば。 ○岡本参考人 まさに太地町の方から要請があったということでありますので、今の中では全面 的に協力をしていただけるということになっておりますけれども、先ほど言いましたのは、個々 の方にものすごく負担がかかる調査もありますので、そのへんの意味で協力を得られるかどうか ということです。町からは全面的な協力を得られるということにはなっています。 ○中村委員 わかりました。 ○西尾委員 年齢的に見ますと、40歳以上が高くなっていますので、これは年とともに魚介類を 食べる量も多くなってくると思いますが、この異常に高いというのが、クジラとかイルカとの関 連性があるかをしっかり調べていただければいいのではないかと思います。 ○岡本参考人 今回については、魚食の状況については、非常に限られた情報しか得られていま せんので、その面も含めて調査をどういう形でやるかということについても検討をしていきたい と思っています。 ○山本部会長 いろいろと御質問もあると思いますけれども、このへんで御質問の方は打ち切ら せていただいて、これに対する対応といいますか、そういったものについて事務局の方からお願 いしたいのですが。 ○事務局 事務局といたしましては、資料2−3の16ページにございますけれども、ただいまの 調査結果を受けまして、Q&Aに問を追加することを考えてございます。  まず1つ目といたしまして、問20ですが、この調査が報告されたことにつきましては、その内 容はどうですかと。それから、「クジラ、イルカを比較的的多食する習慣がありますが、健康への 影響はないのでしょうか」という問を追加するということとさせていただきたいと思っておりま す。その答えとしましては、今、岡本所長から御説明をいただきましたその事実関係を書いてい るところでございます。  毛髪水銀濃度は高かったこと、それがクジラ、イルカの摂取と関連することが示唆されたけれ ども、メチル水銀中毒の可能性を疑わせるものは認められなかったこと。  2つ目として、今後の調査結果に厚生労働省としても注目していくということでございます。  2つ目の答といたしましては、17ページをごらんいただければと思いますけれども、「一部のク ジラ、イルカなど水銀の含有量の高い魚介類を比較的多食する習慣のある地域があるようですが、 妊婦以外は魚介類の摂取に注意しなくていいのでしょうか」という問を考えてございます。  この問といたしましては、1番として、厚生労働省が実施している食品中の汚染物質の一日摂 取量調査結果によれば、平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるようなレベル ではないということでございます。特に水銀含有量の高い魚介類については、偏って摂取しない などのバランスの良い食生活を心がけることが大切だというふうな答えとさせていただきたいと 思っています。  なお書きですけれども、先ほども御紹介いただきましたけれども、国立水俣病総合研究センタ ーの報告によりますと、全国14地域での調査によって、そのアンケート調査で、「よく食べる」魚 介類は以下のとおりということでございますので、これを紹介させていただいて、平均的な食生 活の方は、こういった魚介類を食べられているということで、多食かどうかの判断の参考として ごらんをいただければと考えているところでございます。  2つ目といたしましては、魚食のメリットについて書かせていただいているところでございま す。  以上のような形で、一部のクジラとかイルカ等の多食者の方への周知を図りたいというふうに 考えるところでございます。  以上でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。  では、ただいまの対応(案)につきまして、委員の方々から、御意見がございましたらお願い いたします。 ○阿南委員 私は、このQ&Aに載せるのはいいと思うのです。ただ、正確に載せなくてはいけ ないと思っています。問題があると思われるのはクジラとイルカですね。それらを注意して食べ ましょうということはいいと思いますが、ただ、クジラとイルカは、水棲動物ではあっても、魚 介類ではなく、哺乳類です。なので、魚介類は、DHAやEPAやタウリンなどを含んでいると いう情報と併せて提供するのはちょっと違うのではないかと思います。クジラやイルカの栄養素 についても同様であるということであれば良いとは思いますが、そこはちゃんと区別して、はっ きりと国民に情報提供をすべきなのではないかと思います。 ○山本部会長 いかがですかね。 ○山下委員 私もいろいろ調査をやっていますし、それから、1月にWHOで魚食のリスクとベ ネフィットに関する専門家会合が開かれて、私も出席したのですが、そこでは、魚介類は、魚と 無脊椎動物を魚介類と定義して、それで議論をしました。それはなぜかというと、リスクとして、 メチル水銀とダイオキシン、P CBが魚介類にはある。ベネフィットはEPA、DHAが特に重 要で、それ以外にもいろいろありますけれども。それを両者天秤にかけると、ベネフィットがリ スクを上回るので、魚介類はいくら食べても、微弱なリスクしかありませんよというのが、その 会議で行われたリスク評価の結果だったわけです。  これまでPTWIを決定することのもとになったデータは、クジラを食べる集団での胎児影響 の結果に基づいて行われています。それから、セイシェル諸島では、そういう有害な影響が見ら れなかったということですから、クジラ類を食べる集団と、魚を食べる集団では、水銀のリスク が、同じ暴露量でも違うだろうというのが、今の研究者の一般的な考えだと。ですから、研究の 面から言っても、それを分けて考えるのは妥当だと思います。  それから、特にハクジラ類を食べることについては、リスク評価に基づく対応、リスク管理を やるのが妥当ではないか。それ以外のものは、また、別に考えるべきではないかというのが、今 の研究者の考え方です。それは、ヒトに対するデータが不十分な点があるので、これからも研究 の積み重ねが必要だと思います。 ○基準審査課長 先生の御指摘もごもっともでございますので、事務局の方で、このQ&Aを修 文して、また、御相談をさせていただければと思います。 ○山本部会長 では、その方向で、クジラ、イルカについては、別扱いということを考えた方が よろしいかと思います。  次に、それに関連して、魚種の見直しということがありますので、そこについて御説明をいた だければと思います。事務局からお願いします。 ○事務局 こちらにつきましては、2つ目の話でございますが、こちらは妊婦への注意事項の見 直しということで御説明をさせていただくものでございます。  まず、資料2−4をごらんいただければと思います。平成17年に公表しました注意事項におき まして、水銀含有の高い魚介類について、そのリスク管理の目安をお示しさせていただいている ところですけれども、このもとになったデータが、こちらの資料2−4のデータでございます。 17年11月に注意事項を公表させていただいた以降に、地方自治体において実施された魚介類の水 銀検査結果を追加したため、今回見直しをいただきたいという趣旨でございます。資料につきま しては、資料2−4の参照データ、中ほどの(3)地方自治体のところでございますが、17年の時点 では、13〜16年度であったのが、この4年間分のデータを追加をしたということでございまして、 前回400種、9,700検体ほどでございましたのが、今回は、2の(1)にございますけれども、453 種類、16,437検体の数が得られているということでございます。個別のデータにつきましては、 2ページ以降にございます。  それでは、資料2−5の御説明をさせていただきたいと思います。  こちらが今回公表されている注意事項における対象魚介類の追加でございます。  1番「注意事項の対象魚介類の選定方法」でございますけれども、これは、平成17年に公表し た注意事項において、魚介類とその目安を決めるに当たっての方法を記載させていただいている ものでございまして。その手順としては、大きく分けて、ここに記載の3つの手順がある。(1)(2)(3) があるということでございます。簡単に御説明をさせていただきたいと思います。  図にございますけれども、左側の図が、1日摂取量調査における魚介類と魚介類以外の水銀の 摂取量でございまして、その左側にある矢印が耐容量。これは食品安全委員会で評価をいただい た耐容週間摂取量でございまして、平成17年の注意事項を検討するときに、水銀濃度の高い魚介 類に割り当てるかという議論をしたところでございます。その結果は、右側の「仮定」というと ころがございますけれども、ここに書いてございますが、その半分程度、魚介類の摂取の半分程 度が水銀含有量の低い魚介類からであるという仮定をいたしまして、右側の図の水銀濃度の高い 魚介類に割り当てる水銀摂取量、その矢印の部分に、水銀濃度の高い魚介類を割り当てることが いいだろうということで御判断をいただいたということでございます。  次に、(2)「検討対象魚介類の抽出」でございますけれども、こちらにつきましては、今御説明 した資料のデータの中から、総水銀が高いもの、それから、メチル水銀が高い魚介類を抽出する という作業を行っているところでございます。  これらをもとに(3)の対象魚介類の選定をしているところでございますけれども、後ほど、今回 のものについて御説明をいたしますけれども、それぞれの魚介類について、単位重量当たりの平 均メチル水銀濃度をもとに(1)で割り当てました週間水銀摂取量に相当する摂取量を求めまして、 1回に摂食する魚介類の量は80g程度であるということを踏まえて、1週間に3回、240g以上摂 食することができない魚介類を注意事項の対象ということにさせていただいているところでござ います。  2ページ目にまいりまして、今回の対象魚介類の見直しの説明でございますが、基本的には、 (1)に記載をしているものと同じ方法で新しく得られたデータを当てはめて算出をしていき、対象 魚介類を選定するという作業を行ったところでございます。(1)にございますけれども、最新の得 られているデータをもとに、水銀濃度の高い魚介類に割り当てる水銀摂取量、週間当たり、人当 たりの摂取量、妊婦さんの平均体重55.5kgで計算いたしますと、右側の「仮定」の上の矢印です けれども、78.94μgを水銀濃度の高い魚介類に割り当てることができるということでございます。 検討対象魚介類の抽出ということで、3ページ目にまいりまして、水銀含有量の高い魚介類とし て、総水銀で0.4ppm、メチル水銀として0.3ppmを超える魚介類を抽出したということでございま す。こちらを3ページの表に記載してございます。これをもとに(3)の「対象魚介類の選定」をす るわけですが、さっきの78.94μgをメチル水銀の平均値で割ることによって食べられる量が算出 できるということでございます。その結果は4ページにございます。各魚介類で、1週間に食べ られるg数が出てまいりまして。キダイであれば230.1gと、そういった形で出てまいります。  資料2−6と併せてごらんをいただければと思いますが、資料2−6の2ページ目、裏側にな りますが、例えばキダイでございますと、230gまで食べられるということで、注意事項としては、 240g食べられれば、3回食べられるので、対象にはならないということでございますが、230g なので、週に2回までというところに入ってまいります。キンメダイ以降につきましても、同じ ような割り当てをしていきまして、80〜160であれば週1回、160〜240gまでは週2回というふう にしていきますと、今回、この中、(参考)のその他のマグロ類より上の部分で、今までこの中に 入っていなかったもので入るものが1つあるということでございます。これにつきましては、上 から3つ目のクロムツでございます。こちらが232.9gということでございまして、160〜240gの 中に入る。前回は、244gだったのですけれども、今回は週2回までとして注意事項に追加をする ということを御提案させていただいております。それから、ユメカサゴ、エッチュウバイガイ、 こちらにつきましては、ユメカサゴについてはクロムツの下でございますけれども、255.5gとい うことで、先ほど申し上げた割り当ての仕方をすると、週3回食べられることになりますので外 れるということになります。それから、エッチュウバイガイについては、今回162.8gということ ですので、今の現行注意事項は1回までというふうになってはいるのですが、2回まで食べれる ということになります。  ただ、一方で、3ページ目に記載がございますが、3ページ目の(3)の2パラにございますけれ ども、今回、それぞれ緩和されることになりますけれども、本来、この注意事項は、摂取量の目 安を示すという観点であることから、今回の注意事項の改定においては、こちらについては変更 を行わないということで、クロムツについてのみ魚種の追加をさせていただきたいということで ございます。  それから、注意事項に併せて出させていただいている資料2−3のQ&Aについても、若干修 正をしていますので、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。  こちらについては、資料2−1の別添2の5ページと併せてごらんいただければと思います。 若干、構成を変えてございます。前回の平成17年のものは、15年にもともと注意事項があったわ けですけれども、それから、どのような変更をしたとか、なぜしたのかという観点、それから、 マグロをなぜ入れたのかとか、そういう質問がございましたので、そういった質問につきまして は、今回削除をいたしまして、純粋に注意事項の概要、対象者、それから、水銀の健康影響等と いうことで整理をさせていただいたところでございます。  説明につきましては、以上でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。  それでは、今の件につきまして、御質問はございますか。 ○山下委員 先ほどの議論で、リスクとベネフィットの評価がコーデックスを中心に行われると 思いますので、それを待ってから修正すればいいのではないでしょうか。つまり、欧米では、こ の注意事項のために、逆に、魚を食べない人が増えて、魚を食べないと、赤ちゃんの心臓死と、 子どものIQポイントが平均5ポイント下がるという、そういう疫学調査の結果が出されていま す。食べないことのリスクが本当に問題だということが欧米の研究であります。クジラは別格に して、魚に関しては、そういった水銀以外のいろいろな要因を含めたリスク評価とか、研究結果 を待ってからでもいいように思います。  それから、もう一点は、メチル水銀の測定方法ですけれども、こちらに含まれているデータは、 最近のものを使われているのかもしれないのですが、古いものに関しては、メチル水銀の定量値 が低く出ているのが結構あります。それは昔の厚生省の時代の公定法に従ってやると、回収率が 悪くて、メチル水銀を低く見積もっているデータがたくさんあります。水俣病研究センターでは、 いろいろマニュアルをつくられてやられたので、そういった研究からすると、魚肉のメチル水銀 は、総水銀の90%以上がメチル水銀だと言われています。古いのは6〜7割ぐらいです。メチル 水銀のデータの取扱いは、分析方法を調査して選んで使わないと、メチル水銀のデータとして妥 当性が得られてないデータでは、正式な文書としてはまずいのではないかなと思います。 ○山本部会長 山下委員にお聞きしたいのですが。そうすると、この資料2−4の一覧表になっ ていた部分ですね。これはデータとしては低く出ているものが含まれているということになるわ けですね。 ○山下委員 例えば私どもがかかわった水産庁の調査は、昔のやり方でやっているので、メチル 水銀含有量が低く出ています。最近、農水省は調査し直しています。それから、調査の方法によ っては、このデータ集からメチル水銀のデータを除く。総水銀としては、多分いいと思いますけ れども。 ○山本部会長 非常に貴重な御意見で、今すぐに注意喚起する事項として上げるには、もう少し 検討が必要になる可能性も出てくるような御意見だったのですけれども、事務局としては。 ○基準審査課長 同じような御指摘は17年のときもいただいたのだろうと思いますけれども、メ チル水銀の分析については、たしかお聞きしているところでは、国立衛研の食品部で、今御指摘 のような問題もあるということで、バリデーションも含めて分析法の整備を進める予定というふ うにお聞きしております。それができてもう少しきちんと分析ができるようになって、新しいデ ータに基づいて魚種の選定といいますか、注意喚起のあり方についても御議論が必要になると思 うんですけれども、まだ若干の年数がかかりそうなこともございます。今得られている範囲で対 応をとるしかないのかなと思っておりますので、今回、クロムツですけれども、これまでのルー ルでいくと、注意喚起対象魚種にもなるので、勿論、限界のあるデータであることは、事務局と しては理解の上、これまでの魚種についての注意喚起もやってきておりますので、勿論、その分 析法のバリデーションの結果を受けて、将来的に見直しをすることが必要だと思いますけれども、 現時点での対応はおこなうべきではないかと思って御提案をさせていただいているのですけれど も。 ○山本部会長 いかがでしょうかね。  当然、データの変化によって見直さなければいけないのですけれども、クロムツについては、 一応注意喚起の対象となるということですので、最低限危険のないような方向の対応をまずはと る方向でいかないと、厚生労働省の立場としては難しいのかなと。勿論、メリットの部分は考え ていかなければいけませんので、この注意事項の中にも、魚介類の有益性をまず第1番に挙げて あって、そういうことを考えての上だということですが。山下委員の意見の妥当なところもあり ますので、今後も検討を続けるとしても、今回の注意事項として、クロムツを加えた形の注意事 項を出すことに関して、ほかに御意見がなければ、このようにしたいと思いますけれども、いか がでしょうか。  よろしいでしょうか。  Q&Aにつきましては、先ほどの御指摘の部分がございますので、事務局で修文していただい て、それを委員の方にまた投げていただく形で、最終的な確認をとって、発出するということに したいと思います。それで、よろしいでしょうか。 ○五十君委員 先ほど、せっかく御指摘が出ましたので、今回加えるクロムツについて分析法を 新しい方法かどうかを確認しておいていただいて、それで、新しく加えるものだけでも確認して おけば、それほど問題がないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○基準審査課長 自治体の調査の結果の取りまとめですので、私たちの理解では、多分公定法で やられていて、そういう意味ではメチル水銀量としては低く分析されている可能性があるという ことなのかなと思います。 ○山本部会長 低く出るやり方でやって超えているわけですので、より安全度を見積もるとクロ ムツは入れなければいけないという話になりますね。 ○基準審査課長 先ほどの山下先生の魚食を控えるといいますか、そういう問題点については重 要な御指摘で、私どもとしても、17年のときから、Q&Aも注意書きも、一番下に、本注意事項 については、いわゆる風評被害が生じることがないよう、風評被害といいますか、魚を食べない 方がいいという短絡的な理解がされないように、正確な御理解をよろしくお願いしますというこ とで、1ページ1ページに注を付けてきているんですが、Q&Aの中にも、先ほどのJECFAの御 議論の状況とか、簡単に盛り込むような情報提供をできればよろしいのかなと思いますので、よ ろしければ、山下先生にも御協力いただいて、そんな議論があることについても触れたらどうか なと思いますけれども。 ○山本部会長 いかがでしょうか。 ○山下委員 水銀の疫学の研究者の見解は、妊婦や子どもは必ず1週間に1回は魚を食べるべき だと、そういうアドバイスをやるべきだというふうな、そういうイメージですね。 ○山本部会長 魚介類とクジラ、イルカ類の切り分けといいますか、そこのところをはっきりさ せた形にしておいた方がいいとは考えますので、そのへんも含めて、Q&Aに加えるかどうか、 事務局で御検討いただいた文章を回していただくということでよろしいですかね。ちょっと今日 議論できる話ではありませんので、後ほどやりたいと思います。  ほかにございませんか。 ○阿南委員 このチラシも出すのですか。 ○基準審査課長 新しくしたものを。 ○阿南委員 つくり変えるのですね。 ○基準審査課長 はい。 ○山本部会長 よろしいでしょうか。  今、今後の対応についても、少し御返事をいただいているのですけれども。  では、事務局から、最後まとめていただいて、今後の対応の御説明をお願いいたします。 ○事務局 厚生労働省のホームページに掲載されてございますので、そういったものを改良して、 改正したものを掲載して、周知を図っていきたいと考えておりますけれども、本日いただきまし た御意見を踏まえて、いろいろなデータを修正した上で、先生方に御確認をいただくということ とさせていただきたいと思います。 ○山本部会長 では、そういうことで、事務局からの御提案を待つことにしたいと思います。  それでは、時間が大変延びてしまって申しわけございませんでした。ほかにございますか。事 務局から、また、委員の先生方からございますか。 ○事務局 事務局からは、特にはございません。 ○山本部会長 それでは、ないようでしたら、以上をもちまして、本日の部会を終了させていた だきます。どうもありがとうございました。 照会先:医薬食品局食品安全部基準審査課乳肉水産基準係 (03−5253−1111 内線2489)