10/05/12 第72回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第72回労働政策審議会職業安定分科会                 日時 平成22年5月12日(水)         13:00〜         場所 厚生労働省職業安定局第1会議室(14階)                        ○大橋分科会長 それでは定刻になりましたので、ただいまより「第72回労働政策審議 会職業安定分科会」を開催いたします。本日は公益代表の岩村委員、白木委員、宮本委 員、労働者代表の斉藤委員、古市委員、使用者代表の上野委員、久保委員、橋本(治) 委員がご欠席です。また、清家委員は遅れて参加される予定となっております。  それでは、議事に入ります。本日の議題は、(1)職業安定政策の戦略的な実施につい て。(2)点検評価部会にて検証すべき2010年度の年度目標について。(3)その他、となっ ています。  まずは、議題1の「職業安定政策の戦略的な実施について」及び議題2「点検評価部会 にて検証すべき2010年度の年度目標」について、事務局から資料の説明をお願いいたし ます。 ○雇用政策課長 雇用政策課長の小川です。始めに今般、分科会において議題をいただ く背景と経緯についてご説明いたします。  まず、議題(1)の職業安定政策の戦略的な実施についてですが、お手元の資料の参考 1-1に、昨年の12月30日に閣議決定された「新成長戦略(基本方針)」の抜粋が付けて あります。次頁に雇用・人材戦略、2020年までの目標ということで、以下の項目につい て、雇用戦略対話等を踏まえ具体的目標を定めるとなっています。そのため、厚生労働 省としてはこの新成長戦略に盛り込むべき長期的な目標等を検討する必要があるという ことになっております。ここで、その目標設定に当たりまして、参考1-2にありますが、 雇用戦略対話のメンバーでもあり、厚生労働省の雇用政策研究会の座長である慶應大学 の樋口先生が、「雇用政策の戦略的な実施について」ということで、試案として3月24 日に雇用政策研究会に提出されています。これを受けまして厚生労働省といたしまして は、新成長戦略に盛り込む長期目標等を検討する際には樋口先生の試案を参考にしつ つ、厚生労働省(案)を作成し、労働政策審議会の各分科会でご審議いただくのが適当 ではないかと考えて、4月1日の労働政策審議会の本審で樋口先生の試案を説明させてい ただいたところです。また、本分科会におきましては、第1に、議題(1)の「職業安定政 策の戦略的な実施について」だとして、この新成長戦略に盛り込むべき長期目標につい てご審議いただくようお願い申し上げます。  続いて、議題(2)の「点検評価部会にて検証すべき2010年度の年度目標について」で すが、この議題(2)の背景と経緯については、先ほど申し上げましたように雇用戦略対 話の第2回が昨年12月に行われましたけれども、この中で雇用戦略につきましては数値 目標を設定し、具体策を明記するとともにPDCAサイクルに則り、その運用実態を検証、 実施する必要があるというご意見がありました。これを受けまして厚生労働省としまし ては、参考2-1にありますように労働政策の運用実績を検証、改善するPDCAの仕組みを 設け、それにつきましてPDCAサイクルを効果的に実施するため労働政策審議会の下に点 検評価部会を設置することとしまして、4月1日の労働政策審議会の本審におきましてご 審議、ご了解をいただいたところです。このPDCAサイクルにおきましては、労働政策審 議会の各分科会において分野ごとの年度目標案を示すとともに、ご審議をいただくとい うことにしております。したがいまして、先にご説明いたしました長期目標につきまし ても、PDCAサイクルによって検証がなされるとなっています。そのため、2つ目としま しては、このPDCAサイクル、点検評価部会において検証する2010年度の年度目標につい て、ご審議いただけますようお願い申し上げます。  まとめますと、本日本分科会におきましては、新成長戦略に盛り込むべき長期的な目 標について、点検評価部会において検証すべき2010年度の年度目標についてご審議いた だきたいということです。これが今回の議題の背景と経緯です。  引き続きまして、本日ご審議いただく長期目標及び年度目標についてご説明いたしま す。お手元の資料1-1が、参考1-2の樋口先生の試案を参考としまして、本分科会でご審 議いただく長期目標として用意させていただいたものです。また、資料No.1-1は数字、 1-2は長期目標も含めて新成長戦略における雇用・人材戦略に掲げられているような項 目に関する施策を記載しています。  それでは、中身について説明させていただきます。資料No.1-1ですが、「雇用戦略に 係る目標一覧」ということで、これは職業安定政策関係ですが、(1)は20〜64歳の就業率 について、現在は74.6%のものを2020年までに80%に引き上げると。それから15歳以上 の就業率につきましては、現在は56.9%のものを、これは基本的には高齢化が進む中で 放っておけば下がっていきますけれども、それを57%に、要するに現状の就業率を維持 するということになっています。20〜34歳の就業率につきましては、現在、73.6%を77 %に引き上げると。また、フリーター数の約半減、これは対ピーク時の比較ですが、 2003年のピーク時に217万人いたフリーター、現在は178万人ですが、2020年には124万 人に下げると。それから、高齢者の就業率の向上ということで、2009年では60〜64歳の 就業率が57%であったものを、2010年には63%に引き上げるということになっています。  具体的な施策を含めて書かせていただいたのが資料No.1-2です。雇用・人材戦略のう ちの職業安定政策部分を抜粋したものですが、基本的には就業構造の変化に伴いまし て、雇用者の割合が上昇していくという中で、やはり「雇用」の安定が重要になってい くと。また、本格的な人口減少社会が到来しつつある現在、「人材」こそが経済社会発 展の礎であるので、質の高い労働を提供する必要があるということです。そのため、労 使の意見も踏まえつつ、これらの取組を着実に実施することにより、国民すべてが意欲 と能力に応じ労働市場や様々な社会活動に参加できる社会(「出番」と「居場所」のあ る国・日本)を実現し、我が国の成長力を高めていくということです。  1つ目の柱は雇用による内需拡大と国民参加ということで、若者・女性・高齢者の就 業率の向上となっております。ここに書いてありますように、以下の就業率の目標につ きましては、新成長戦略におきまして、2020年までの平均で、名目3%、実質2%を上回 る成長、2020年度における我が国の経済規模(名目GDP)が650兆円程度、失業率につい ては中期的に3%台に低下すること、等の目標が各々達成されることが前提であり、経 済情勢の変化等に応じて変更することがあり得るということです。目標につきましては 先ほど申し上げたとおりで、この※に付けてありますように、現在の年齢別の就業率が 現在のまま推移した場合におきましては、少子高齢化等の要因により、15歳以上の就業 率は、2020年には53.4%になるというのを、57%としております。なお、雇用の多様性 に配慮しつつ、以下の対策を通じて、均等・均衡待遇の推進に取り組むとともに、正社 員の就職の支援、正社員転換の支援に取り組み、希望しても正社員になれない非正規労 働者の数を減少させるとしています。  次頁、若年者の就業率の向上ということで、先ほど申し上げましたように、就業率目 標は77%、若者フリーター半減というのが目標です。具体的な施策としましては、「フ リーター等正規雇用化プラン」の着実な推進でして、就職氷河期に正社員になれなかっ た年長フリーター等を重点に、担当者制による職業相談・職業紹介から職場定着までの 一貫した支援、年長フリーター等を正規雇用する事業主への助成の活用等により、正規 雇用化を推進していくということです。  2点目としては、新卒者支援の強化等です。ハローワークと学校の連携の下、就職支 援を行う高卒・大卒就職ジョブサポーターの配置などにより、求人情報の提供、就職面 接会、職業相談、職業紹介から職場定着までの一貫した就職支援を強化する。また、未 就職卒業者については、新卒者体験雇用事業を活用する等により、円滑な就職を促進し ていくということです。当然、このフリーター対策につきましては、教育、経済情勢な ど様々な要素がありますので、目標達成のためには、キャリア教育の推進等、文部科学 省等による施策の適切な実施が不可欠です。  2点目として、女性の就業率の向上(女性M字カーブの解消)ということで、25〜44歳 の就業率を、2020年に73%ということで、現状の66%を引き上げると。その中で安定分 科会関係の施策としましては、女性の再就職の促進ということで、マザーズハローワー ク事業の拡充ということで、担当者制によるきめ細かな職業相談・職業紹介等により、 子育て女性の再就職支援を行うと。行う事業拠点を増設するとともに、地域の子育て支 援ネットワークの強化を図っていくということです。また、派遣法の改正で、同一価値 労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進等です。  3点目として『高齢者の就業率の向上』ですが、60〜64歳の就業率を、いまの57%か ら63%に引き上げるということで、1つ目としまして、65歳までの雇用確保ということ で、高年齢者雇用確保措置の実施を図っていくと。また、公的年金支給開始年齢(報酬 比例部分)の65歳への引上げが開始される平成25年度に向けて、65歳まで希望者全員の 雇用が確保されるように施策の強化について検討を行うと。2点目といたしましては、 いくつになっても働ける高齢者雇用の促進ということで、意欲と能力があれば年齢に関 わりなく働ける環境整備を図るため、70歳まで働ける制度の普及に取り組んでいくと。 また、シルバー人材センター事業の推進等により、多様な就業機会を創出していくとい うことです。  大きな2つ目の柱として、成長力を支える「トランポリン型社会」の構築ということ で、一旦失業されても、また戻ってこられるような社会を作っていくということのため に、失業者の方に職業訓練とか職業紹介等積極的な雇用対策を講ずるとともに、併せて 必要な生活保障を行っていくということで、着実に労働市場への復帰を図ることができ る社会を構築していくということです。1つ目としては、求職者支援制度の創設という ことで、(1)は、現在基金事業として行われております緊急人材育成支援事業について、 無料の職業訓練と訓練期間中の生活費を支給するということにつきまして、一層の周知 徹底を図っていくとともに、介護・医療分野等、訓練の応募倍率が高い分野とか地域の ニーズに応じた訓練コースを積極的に設定していくと。  2点目は今後の話ですが、基金事業は平成22年度までとなっていますので、平成23年 度に恒久的な制度として創設する「求職者支援制度」について、全国的なセーフティネ ットとしてふさわしいものとなるよう、現行事業の実施状況や財源の在り方等を踏まえ つつ、検討を進めていくとしております。2つ目としましては、雇用保険の機能強化と 国庫負担割合の原則復帰ということで、雇用保険の適用範囲の拡大(雇用見込み6カ月 →31日以上)ということは、すでに国会は通りましたけれども、これの着実な施行とい うことによって、非正規労働者に対するセーフティネット機能を強化するとともに、雇 用保険の国庫負担割合の原則(25%)復帰を図っていくということです。  3つ目の柱は、地域雇用創造と「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい 仕事)」の実現です。1として「地域雇用創造」。重点分野雇用創造事業の推進という ことで、現在、都道府県で基金事業として行っております重点分野雇用創造事業の活用 により、介護、医療、農林、環境・エネルギー、観光、地域社会雇用等の分野における 新たな雇用機会創出、地域ニーズに応じた人材育成の推進を図っていくということで す。この際、本事業を活用した「働きながら資格を取る」介護雇用プログラムをブログ に推進していくというふうになっています。2、地域における創意工夫を活かした雇用 創造の推進です。これも基金事業として都道府県で行われておりますが、ふるさと雇用 再生特別基金事業とか、緊急雇用創出事業に基づく雇用創出を進めていく。また、地域 雇用開発促進法に基づくパッケージ事業の活用等により、地域の自主性及び創意工夫を 活かした雇用創造を推進するということです。2として「ディーセント・ワーク」の実 現です。同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進等・労働者派遣法の改正 ということで、登録型派遣、製造業務派遣の原則禁止のほか、派遣労働者と派遣先労働 者との均等待遇などを盛り込んだ労働者派遣法改正案の早期成立を図る。成立後には、 その着実な実施を図るということです。また、最初に申し上げましたが、当然、経済・ 社会情勢が変化するため、ここに掲げられた数値目標については、その変化に合わせ変 更することがあり得るということです。  以上が、各目標それぞれの説明になります。2020年までの長期目標につき厚生労働省 といたしましては、本年6月にとりまとめられる新成長戦略に盛り込まれるように努めて まいりたいと考えております。なお、今後の労使を交えた雇用戦略対話等における議論 によっては、目標等に変更があり得ることを申し添えます。以上です。 ○公共職業安定所運営企画室長 続きまして、公共職業安定所運営企画室から資料No.2に ついて説明させていただきます。こちらは、短期的な2010年度の年度目標ということで 数値目標を掲げております。労働局及びハローワークにおきましては、PDCAサイクルに 基づき目標管理を行っておりまして、上から3つ目まで、就職率、雇用保険受給者の早期 再就職割合、それから求人充足率については基本的な目標事項ということで、労働局か ら更にハローワークまで下ろして目標値を設定し、それに基づくPDCAサイクルによって 管理を行っているわけです。4点目の正規雇用に結び付いたフリーター等の数以降につき ましては、安定行政で行っている施策に応じて目標を立てておりまして、これについて は都道府県労働局までの目標として下ろしましてPDCAサイクルによって管理を行ってい るわけです。  これについて簡単にご説明させていただきます。まず、就職率(常用)で、これにつ きましては2010年度の年度目標は26%ということで設定したいと思っております。実は、 2009年度の目標値は24%で、実績は23.7%であり、四捨五入すると24%になるわけです が、わずかに0.3%達成していないわけです。しかし、ほぼ達成できており、2010年度 は、更にそれより2ポイントほど上回る26%という数値にしております。次の早期再就 職割合、これについては雇用保険の給付日数を3分の2以上残して就職できた数です。 21,4%で、これは2月末までの実績です。就職率、あるいは求人充足率とは違って1カ月 遅れで数値が表れるものですから、2009年度実績の数値は固まっていないわけですが、 昨年度の目標値は24%ということで、かなり達成は厳しい状況ですが、そういうことも 勘案し、現在の21.4%から数ポイント高い22%以上という目標を設定させていただいて おります。  一方、求人充足率は就職率と逆比の関係にありまして、就職率が高まると求人充足率 が減少する。求人が増大すると充足率は低まり、求人の伸びが抑えられたときには充足 率が高まっている関係にあります。2009年度につきましては、目標27%に対し32.5%と、 かなり高い充足率となったわけですが、2010年度につきましては、就職率を26%と高く 設定したので充足率が落ち込むということを考慮しまして、31%以上という目標値にさ せていただきました。  4点目以下は、各施策に基づいた対策の目標値です。1点目は若年者雇用対策に係るも ので、ハローワークの職業紹介により正規雇用に結びついたフリーター等の数で、23万 人以上という目標値を立てさせていただきました。それから新規高卒者内定率ですが、 3月末の状況がまだとりまとめられていないということで、1月末現在の状況ですので、 単純に右の目標数値と時点が異なります。最終的な年度で確定した目標値としての目標 を立てようということで、それを90%以上にしました。その下が若年者等試行雇用事 業、いわゆる若年者トライアル事業ですが、開始者数、3万8,000人以上、常用雇用移行 率80%以上という目標値を立てさせていただきました。  次からは高齢者雇用対策です。希望者全員が65歳まで働ける企業の割合ということで 50%以上という目標値を立てております。この目標値自体、具体的にその目標が達成さ れているかどうかを判断するのは、来年6月1日時点での調査の中での数値がこの目標に 達するかどうかです。同様に「70歳まで働ける企業」の割合については、20%以上とい う目標値を立てています。中高年齢者試行雇用事業ですが、開始者数2,550人、常用雇 用移行率77%以上という目標値にしております。次からはマッチングの関係ですが、正 社員求人数です。これは2009年度の実績が正社員求人数258万人でしたので、その数字 を上回るよう、数で書けば258万人以上という目標値です。  次頁です。これは新たに設定した項目ですが、緊急人材育成支援事業による職業訓練 です。いわゆる基金訓練と言われているもので、今後、求職者支援制度に結びついてい く重要な施策ですが、2010年度の年度目標としては受講者数として15万人、修了3カ月 後の就職率60%以上ということで、これは公共職業訓練の受講者の就職率がおよそ70% であることや、基金訓練の対象者の特性に鑑みまして、10%ほど低い60%以上という目 標値を立てさせていただきました。就職支援プログラム事業ですが、これにつきまして は開始件数10万5,000件以上、就職率70%以上を目指すものです。次のマザーズハロー ワーク事業ですが、重点支援対象者数としまして3万9,500人以上、就職率74%以上を目 指すものです。  それから、チーム支援等を行っております生活保護受給者等就労支援事業について は、就職率60%以上という目標値です。新たな施策として目標値を立てたものとして、 心の健康相談等があります。キャリアアップ・ハローワーク、同コーナーを中心に月 2回程度の実施をするという目標値。それから、サービス改善ということが、かなり国 民目線でのハローワーク展開ということでは重要だということから、ハローワーク利用 者の満足度を調査することにしました。80%以上の満足度を得ることを目標値としてい ます。同様の考え方で、新たに広報ということでホームページの活用です。これはまだ 指標がありませんのでまず、上半期の実績をとりまして、下半期が上半期を上回るよう な満足度になるようにということで目標値を設定しています。私からの説明は以上で す。 ○大橋分科会長 ただいまの説明について、ご質問やご意見等がありましたらお願いい たします。 ○市川委員 資料No.1-2の最後の派遣法の部分に不適切な表現がございますので、修正 をお願いしたいと思います。「登録型派遣、製造業務派遣の原則禁止のほか」、この部 分の削除を要求いたします。そもそも、ここは「均等待遇の推進等」という表題の部分 です。派遣法改正案にはいろいろな項目が盛り込まれているわけですが、この表題に即 した部分というのは後半の部分で、派遣労働者と派遣先労働者との均衡待遇を推進する こと、派遣法改正のこの部分がまさにこの表題に即した部分であると思うわけです。し たがいまして、余分なことは書かないほうがいいと思います。  なおかつ、登録派遣原則禁止、製造派遣原則禁止、これが「ディーセント・ワーク (働きがいのある人間らしい仕事)」に資するかどうか。これは全く反対だと思いま す。もちろん一部の非常にラッキーな方はいる。大企業の場合、正規社員として採用さ れ、給料もアップする。こういう非常に一部のラッキーな方はディーセント・ワークに 資するということは言えるかと思います。しかしながら中小企業の場合は、正規社員と して採用するのはおよそ無理です。そのことは需給部会の中でさんざん中小企業の問題 として訴えさせていただいたわけですが、そういう方々はどうなるか。失業せざるを得 ないわけです。失業の憂き目を見るような派遣スタッフの方々の人数をできるだけ減ら すために、製造派遣原則禁止の例外を専門職という当初の案から、常用雇用の方であれ ば例外とすると改めていただいたわけです。しかしながら、それでも約40万人、当初の 案では80万人の方が失業の憂き目に遭うであろう、こういう数字であったわけです。 「常用雇用は例外にする」と改めた結果、その数字は44万人と小さくなったわけです が、それにしても44万人の方がたぶん失業の憂き目を見るであろうと。失業された方 が、何でこれが働きがいのある人間らしい仕事に資するのですかと。こういう国民目線 から見たときに、ここの表現は全く逆行している、現実を無視した表現になっていると 思いますので、この部分は削除をお願いしたいと思います。 ○新谷委員 ただいま市川委員からご意見をいただきましたが、私どもとしては、これ は全く自然な表現だと思っております。需給部会の中では公労使が本当に真摯な論議を 尽くして尽くして、部会報告をとりまとめたものと認識しているわけです。今回のこの 表現をよく読んでいただきますと、派遣法改正法案の早期成立を図るという法案成立に 向けての使命になっております。その中身として、登録型派遣、製造業務派遣の原則禁 止、それと均衡待遇について説明してあり、部会報告の中身を抜粋したものとして、非 常に自然な記述ではないかと思っているわけです。  ディーセント・ワークについてのご指摘もいただいたわけですが、部会の中でも論議 させていただきましたように、特に派遣労働者の処遇の低さなり雇用の不安定さといっ たところがまさしくディーセントではない。それが今回の法改正の論議につながり、あ の部会報告にまとまって法案要綱として出て、いま法律が審議されている。こういうプ ロセスにあるわけですから、今回の法改正は、まさしく「『ディーセント・ワーク』の 実現」につながるということから言えば、全く自然な記述ではないかと考えておりま す。 ○市川委員 部会の中でディーセント・ワークの議論は出ておりません。「原則禁止」 の部分がディーセント・ワークに資すると今おっしゃいましたけれども、そういう合意 はされておりません。確かに、正社員になられる方にとってはディーセント・ワークで しょう。しかし失業者、失業する人が1人も出ないのですか。失業する方がおられる以 上、失業された方は「これがディーセント・ワークになるんですか」と、こういう違和 感を持たれると思います。  ここの部分は内容を説明したものだとおっしゃいましたが、内容の中で表題に即した 均衡待遇の推進に資するところは、まさに後半の部分、均衡待遇を盛り込んだ改正案を 是非早期に成立させましょうと。私はそこの部分には同意いたしますが、前段の部分、 これは誤解を招きます。失業者、失業された方にとって、これはディーセント・ワーク ではない。失業して、何でディーセント・ワークなのですか。ディーセント・ワークと いうのはそういうものですか。全然違いますよ。 ○新谷委員 市川委員の持論は需給部会でも伺っておりまして、それに対して反論する つもりはありません。今回の派遣法の改正によって失業者が増えるという論理は市川委 員が前々からおっしゃっているのですが、論理的、理論的に実証もしにくい話だと思い ます。この法改正があるからと言って、直ちに失業者が増えるという論理は、我々とし ては受け入れ難いというところです。  またディーセント・ワークの話は、ここにまさしく記載しておりますように、派遣労 働者の均等・均衡待遇の中で論議をさせていただいておりますので、これについては需 給部会の中でも論議をしたという認識でおります。 ○市川委員 均衡待遇を図りましょうというところに私は同意しているのです。確かに 改正法案の第30条の2で「均衡を考慮しつつ」という表現になっておりまして、均衡待 遇に向けた努力はするということで合意をしておりますので、その部分については同意 しております。しかし前半が、失業者が増えるはずはないとおっしゃいましたけれど も、では1人も失業者は出ないのですか。極端に言えば、1人でも失業されたら、その方 は「何でこれがディーセント・ワークなんだ。原則禁止のために俺は職を失ったんだ」 とお考えになるのが普通です。そういう意味で、ここのところをわざわざ明記すること に、私は反対です。 ○雇用政策課長 事務局として申し上げますと、そこのところの解釈としましては、「 『ディーセント・ワーク』の実現」の中の「同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡 待遇の推進等」という柱の中での記述です。  市川委員からご指摘がありました登録型派遣、製造業務派遣の原則禁止につきまして は、派遣法改正の主な中身ということで書かせていただいたわけです。逆にこれを抜い てしまいますと、あたかも派遣労働者と派遣先労働者との均衡待遇を盛り込むことだけ が派遣法改正の主な中身であるかのように捉えられかねないのではなかろうかというこ とで、そういった誤解を避けるためにも、はっきり例示として書く。ディーセント・ワ ークにつきましては、基本的にニュートラルだと考えております。同一価値労働同一賃 金に向けた均等・均衡待遇の推進ということを受けるものとしては、市川委員がおっし ゃるように、派遣労働者と派遣先労働者との均衡待遇を盛り込んだということがメイン でありますが、それだけでは派遣法改正についての説明が十分でないのではなかろうか ということで、登録型派遣、製造業務派遣の原則禁止ということを付け加えました。派 遣法改正の説明としてこれが入っているとご理解いただきたいと思います。 ○市川委員 私はいまのご説明は納得できません。「均衡待遇」の部分が派遣法の中の 表題に即した部分です。登録原則禁止、製造原則禁止、そこのところが果たしてディー セント・ワークに資するかどうかということについては、労働側の新谷委員はそうだと おっしゃいますけれども、私は、そうでない方も大勢おられると言っておりまして、こ れは意見の分かれるところです。意見の分かれるものをこういう表現にしますと、あた かも登録原則禁止、製造原則禁止、その部分がディーセント・ワークに資するのだ、政 府としてはそういう了解をしているのだ、という誤解を受けます。派遣法の改正には、 いろいろな部分がございます。しかしながら、該当する部分だけを書けばいいわけであ って、「均衡待遇など」と「など」がわざわざ付いておりますので、原則禁止のところ がディーセント・ワークに資すると思う方は、その「など」で読んでいただければ結構 なわけです。私のような意見の者は、これがディーセント・ワークに資するというもの ではないという信念を持っておりますので、誤解を与えるような表現は避けるべきであ ると思います。 ○吉岡委員 樋口先生の試案の4頁にもありますが、「安心して働くことのできる環境 の整備」の中で、特にディーセント・ワークの実現、そしてその中の1つの項目として 「均衡・均等」があります。改正派遣法の成立後着実な実施を図るということで、ここ はあくまでも労働者の派遣法改正案の中身的なところの特徴、製造業務派遣の原則禁止 のほか、派遣労働者として労働者の均衡を盛り込んだということです。ここはあくまで も労働者派遣改正法案の説明ですから、ここだけを取り出してお読みにならずに、全体 的な部分でお読みになるというのも1つあろうかと思います。お気持は十分わかります が、あえて、ここのところを削除という形ではなく、これがメインの部分も1つあると いうのも事実でしょうから、そのようなことで理解されてもよろしいのではないかと思 います。 ○市川委員 納得できません。樋口先生の試案では、「また、改正労働者派遣法の成立 後、その着実な実施を図る」という表現になっております。私は以前からこの表現、こ の試案については目にしておりますが、その中身とするところは、まさにここで言う後 段の「均衡待遇」を盛り込んでいるのだと。それによって均衡待遇の推進にこの改正法 案が資するのだと読んでおりました。ここで新たに、登録原則禁止、製造原則禁止がデ ィーセント・ワークに資するのだとあたかも読めるような表現は今回初めて出てきたも ので、これは樋口先生の試案に対して1歩も2歩も枠を超えていると思います。ですか ら、これは納得できません。 ○高橋委員 私なりに提案をさせていただいて、却下されたら、それは結構です。いま 問題になっておりますのは、労働者派遣法の書き方のところです。そこについて、登録 型派遣、製造業務派遣の原則禁止以外にも大幅な改正内容があり、これだけで果たして 十分なのかという議論もあろうかと思います。市川委員の意を酌んだ私なりの修正提案 といたしまして、2行目の最後は「労働者派遣法改正案」からスタートして、「労働者 派遣法改正案の早期成立を図り、成立後には派遣労働者と派遣先労働者との均衡待遇な どの着実な実施を図る」という文章にされてはいかがかと思いますが。もう1回申し上 げますと、「労働者派遣法改正案の早期成立を図り、成立後には派遣労働者と派遣先労 働者との均衡待遇等の着実な実施を図る」、ということではいかがかという提案です。 ○市川委員 私はいまの案に同意いたします。 ○新谷委員 せっかく高橋委員から良い提案をいただいたのですが、この本文の上に「 ・労働者派遣法の改正」と書いてあるのです。これが生きていると、派遣法の改正とい うのはそれだけなのかと誤解を招きかねません。また堂々巡りになるのですが、これは あくまでも労働者派遣法の改正についての説明であり、かつその中に盛り込まれている 均衡待遇の内容を記述したものだという理解です。私は、先ほどの事務局の説明は本当 に自然な説明だと思いまして、なぜそういう指摘をするのかなという気がいたします。 ○大橋分科会長 私の考え方なのですが、市川委員が指摘するような議論も十分あり得 ると思っておりました。特に派遣労働者については、いわゆる正規労働者か派遣労働者 かという区分のところ、それから派遣労働者か失業者かという区分のところがございま す。普通これを議論するときには正社員と派遣労働者という区分で議論されているので すが、市川委員のご指摘は、失業者か派遣労働者かと。事実上、派遣労働がセーフティ ネットのような役割をしてきたのです。そこのところをご指摘されたのだと思うので す。ただ、今回の派遣法の趣旨は、どちらかと言うと、正規労働者と派遣労働者の間の 区分を何とかしようという方向で改定されております。したがって、その辺のニュアン スがうまく出ればと。実際そういうところが問題になって派遣法の改正ということが出 てきました。実際に派遣切りとか、絶対にあってはならないようなことも起きていまし たので、社会の風潮としてはそちらのほうに軸足を移しているという理解でいいと思い ます。そういった社会の風潮を組み込んだ形でそこのところを入れられれば、非常によ いのではないかと思うのです。実際、派遣切りとか、いろいろなことが起きてきて、そ れに対する反省というのがある程度入ったほうがいいのではないかと思うのです。そう いう点で、ロジカルには市川委員のご指摘は正当だと思うのですが、全体の流れは、正 規社員と非正規社員の区分のところが焦点になっていると理解していただきたいと思い ます。 ○市川委員 せっかくの分科会長のご指摘ではございますが、私は、ここの部分は納得 できません。ここの部分は労働者派遣法の中身を説明しているわけではないのです。 「均等・均衡待遇の推進」という表題の下に、では一体どういう施策があるのかという 説明をしているところです。したがいまして、派遣法改正の中のどの部分がこの表題に 即した部分であるのかということを前面に出すべきです。少なくとも両論あって、ディ ーセント・ワークに資さないという部分について、わざわざ文言として明記する必要は 全くないと思います。納得できません。 ○清家委員 私も需給部会の関係者です。市川委員のおっしゃっていること、それから 新谷委員のおっしゃっていることは両方もっともだとは思うのですが、いま分科会長が 言われたことに付言して言いますと、確かにディーセント・ワークと登録型派遣、製造 業務派遣の禁止の問題というのは、直接的にリンクさせて議論はしなかったと思いま す。ただ、登録型派遣とか製造業務派遣の一部について、いま大橋分科会長が言われた ような派遣切り、あるいは非常に劣悪な状況の下で雇用が不安定になっているという問 題がありましたので、これは原則禁止することがよろしいのではないかという合意がで きたと理解しておりまして、そういった劣悪な形の登録型派遣あるいは製造業務派遣は ディーセント・ワークではないという解釈だと思います。  ただ逆に言いますと、これは原則禁止でありまして、登録型派遣についても、あるい は製造業務派遣についても、常用型であるとか、一定の要件を認めればそれは問題ない とも言っております。したがって、もし登録型派遣、製造業務派遣全般がディーセント ・ワークの観点から問題があるように受け取られると、市川委員が言われるように少し 問題があるかもしれません。もともと登録型派遣、製造業務派遣の中でそれを原則禁止 にしたわけですが、すべてがディーセント・ワークの点から問題があるというような誤 解を受けないような修文を、分科会長と事務局でしていただければよろしいのではない かと思うのですが、いかがでしょうか。どういう文章がいいのか、私は今すぐ思い浮か ばないのですが。  私も、ある種の働き方がすべてディーセントではないという印象を与えるのはあまり よろしくないとは思います。しかしながら、ある種の働き方の中でディーセント・ワー クという観点から問題が非常に深刻になったという問題意識を受けて、今回の改正が行 われたということも事実ですので、その辺のバランスがとれるような修文が可能であれ ばご検討いただければと思います。 ○大橋分科会長 では、この件についてはそうさせていただきたいと思います。その他 の論点はあるでしょうか。 ○高橋委員 同じく資料No.1-2の3頁目の3、『高齢者の就業率の向上』の(1)について意 見を申し述べます。まず、最初の行の「高年齢者雇用確保措置の着実な実施を図る」、 これは今の段階としてそのとおりでよろしいと思うのですが、問題は「また」以下で す。報酬比例部分の引上げが間もなく開始されますが、その対応の必要性については否 定するものではありません。むしろ何らかの対応をしていく必要があるだろうと考えて おります。他方で最後の2行、「65歳まで希望者全員の雇用が確保されるよう、施策の 強化について検討を行う」という表現ぶりについては、異を唱えざるを得ないのです。  本来この問題は、安定部会の下にある基本問題部会で検討をお願いすることになると いうことは存じ上げております。思い起こせば、継続雇用の基準の特例について大企業 部分を廃するときに、基本問題部会の自由な議論の中で労側の委員から、65歳までの希 望者全員の雇用確保といったご意見もいただいたようにも思いますが、その基本問題部 会の議論の中でも、労使からさまざまな意見が出されたということが記憶に新しいので す。そうした中で、施策の強化というような方向性を、明確に今の段階で打ち出すとい うことについては問題ではないか。やはり、この問題は今後、基本問題部会において検 討を深めていただく。最初から方向性を示す。今この段階で、この文章で合意をすると いうのは非常に難しい。なぜならば、経緯から言っても、今回の目標関係は雇用戦略対 話と密接にリンケージしているわけですが、その原案となった樋口先生のペーパーに も、ここまでの表現ぶりは一切なく、突然今日こうした形の文章が出てきておりまし て、事務的にも大変問題があると言わざるを得ない。手続的におかしいと、はっきり私 は申し上げたいと思っております。  例えば今年の春闘を見ても、鉄鋼や造船とか、非鉄各社では60歳以降の就労確保に向 けた労使検討の場の設置について労使が合意をして、民間各社でもそうした取組が今進 みつつありますし、進もうとしています。それは事実でありますし、それに向けて、政 府としても何らかの対応を図るということは理解いたします。けれども、もし希望者全 員の雇用が必ず確保されるということをどうしても書きたいのならば、希望者全員の雇 用が確保されるように、取り組む企業に対して支援策を強化していくという趣旨であり ましたら何も異論を唱えるつもりはございませんが、このままの文章では納得がいかな いと申し上げざるを得ないのです。ですので、是非修文をお願いしたいということで す。 ○新谷委員 私はこれを初めて拝見して、これも非常に自然な表現ではないかなと感じ たところです。と申しますのも、ご承知のとおり、日本の社会というのは、就業人口に 占める雇用者の数が8割を占める雇用社会です。日本国の社会の安定というのは雇用の 安定だと思うのです。そうしたときに、樋口ペーパーに書いてあるように、年齢に関わ りなく、意欲と能力のある方が働き続けられる環境を整備するということは、重要なテ ーマだと思っています。特に、日本は人口が減少していくと同時に労働力も減少してい くという社会構造にありますし、意欲と能力のある高齢者の就業の確保は非常に重要な テーマだと思っているところです。  これは資料No.2にもありますように、2010年度の目標の希望者が働き続けられる就業 率のところには数字が出ていましたが、いまのところ44.6%、2010年度でまだ50%とい う水準です。同時に、老齢厚生年金の支給開始年齢の65歳への引き上げが2013年から始 まります。新成長戦略に盛り込む中身は2020年に向かっての目標ということになります と、たしか2020年ですと、老齢厚生年金の支給開始年齢が男性は63歳、女性は61歳にな っています。そうすると、何らかの施策を打たないと、希望しても働けない、年金をも らうまでの空白期間が最大で3年も生じてしまうのです。ここの記述にありますように、 そういったことに備えて「施策の強化に向けて検討を行う」と書いてあるわけですか ら、これは政府として是非打ち込むべき施策ではないかと考えるところです。 ○高橋委員 いみじくも新谷委員が冒頭おっしゃられたように、意欲と能力という要素 を勘案していくことも非常に重要です。60歳を超えている方は個人差も相当出てくるわ けでありまして、希望すれば全員雇用なのだというところについて、本当にどうなのか ということについては、基本問題部会でしっかりご議論を賜る必要があろうと思ってお ります。ですから、何らかの対応を図るということについて反対しているわけではござ いません。施策の強化という方向性を明示することについて異議を唱えているというこ とですので、是非ご理解いただければと思っております。 ○石井委員 私は、この問題は非常に深刻な問題だといつも考えているのです。年金の 問題もありますし。実際に経営者のほうから考えると、60歳を過ぎた人に、もう退職し てもらおうかと言うのも忍びないことは確かなのです。しかし、企業というのは生き物 ですから、売上げと経費のバランスがとれないと成り立ちません。そうすると、これを あまり強化すると、若年層を雇い入れることができなくなる。ということは、会社の組 織が逆ピラミッドになる。我が社も完全にそうでありまして、果たしてこれで日本が国 際競争をしていくときに勝ち抜けるのかと。中小企業の活力がどんどん失われていくわ けで、正しい姿に持っていくのが経営者の能力ですので、これをあまり強く出すと、か えって日本全体の雇用構造を歪んだ形にするのではないかと常々思っています。ただ、 確かに年金の問題がありますので、それも考慮しながらということで、いま非常に厳し い舵取りをやっているところです。 ○新谷委員 いま使用者側委員のお二方から懸念点が出されたわけですが、そういった 懸念も含めて検討を行うという提案内容になっているわけですから、一緒に検討させて いただいたらどうかと思います。まさに、そういった意味では非常に自然な書きぶりで はないかと私は思っているところです。 ○清家委員 私も関心のある部分ですので一言だけ申し上げたいのです。まず、中長期 的に人口構造が高齢化していく中で、高齢者の雇用を確保するというか、高齢者の能力 を活用するような仕組みを作っていく。そのことが経済の活力を維持するためにも非常 に重要だ、ということについてはコンセンサスがあると思っています。  それから、これは新谷委員がおっしゃったこととも関連いたしますが、やや緊急の課 題として、2013年4月以降は1年間年金が全くもらえない人が61歳で出てくるということ も事実ですので、この辺は多少緊急性のある課題にもなってきているかと思っておりま す。  もう1つは、石井委員が言われたように、希望者全員が雇用を確保されるようにするた めには、賃金体系といったコスト面での見直しも当然必要になってくるということも間 違いないわけです。こういうものは、できるだけ長く少し早めに議論をする。2020年と 言ってもそんなに遠い将来ではありませんので、労使の合意を形成していくことがよろ しいかと思っております。付言いたしますと、現在の改正雇用法は労使が非常に真摯に 議論をされて、ぎりぎり、これならやれるというところで合意が形成された結果、実態 面でも高齢者の就業率が非常に高まるといった、政策的に非常に貴重な成功例になって おりまして、そういう面でも、労使が早めにいろいろな点を検討していただくのはとて も良いことかなと思っております。  これは1つの提案ですが、例えば、「施策の強化」という言葉が使用者側として気にな るようであれば、「施策のあり方について検討を行う」とか。しかし、いずれにしても 雇用が確保されるような方向で政策は進めなければいけないわけですから、雇用が確保 されるようにというところで方向性は示しつつ、それにさらに「強化」と追い討ちを掛 けるような表現よりは、「雇用が確保されるよう、施策のあり方について検討を行う」 といった表現ぶりにしてはいかがかなとは思いますが、どうでしょうか。 ○高橋委員 清家先生から大変的確なアドバイスをいただきましたので、そういう方向 で分科会長も修文していただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○澤田委員 就業率の向上の部分で、再就職の促進等ということで職業相談や、職業の 紹介等の事業拠点を増設するという書き方がしてあります。これは大いに喜ばしいこと ですが、近々の課題として、待機児童の問題が極めて深刻だと思っているのですが、こ の部分については今どのように考えておられるのかお伺いしたいと思います。  折角ですので、もう1つ伺います。4頁の地域における雇用の創造の推進という部分 で、ふるさとの雇用再生特別基金事業とか、緊急雇用の創出事業があるわけですが、労 働者の収入が低すぎるとかという問題も含めながら、使い勝手が悪いという問題を指摘 する声もあります。関連して、雇用の維持・創出に向けて、地方自治体と労使が知恵を 出し合いながら地域の雇用戦略会議を設置し、それを運営していくということを政府の ほうからも呼びかけているはずなのですが、実態としては、そのような体制づくりがま だしっかりとできていないというのが現実だと思います。政府として、きっちりとした フォローをお願いしたいと思います。 ○雇用政策課長 こちらは安定分科会ですので、保育サービスにつきましては当分科会 の範囲外ということでお答えを差し控えさせていただきます。均等分科会のほうでもや ると思います。 ○参事官(地域雇用対策室長) 地域雇用創造のことです。労働者の収入が低いという 問題については、それぞれの県が直接雇用するということで、賃金のところはしっかり と手当てしていただいています。  使い勝手が悪いという声ですが、これについては自治体に基金を募るものですから、 昨年、自治体の首長から、かなり要件を緩和してほしい等々のご要望がございました。 我々としては精一杯財政当局と折衝して緩和させていただいたつもりです。またそのよ うな声がありましたら届けていただければ、その都度その都度精一杯やらせていただき たいと考えております。 ○吉岡委員 修文のことではないのですが、考え方をお伺いしたいことが2つあります。 1つは、1-2の2頁、「フリーター等正規雇用プラン」についてです。先ほど澤田さんか らお話もあった女性の再就職促進のところもそうなのですが、実は2つとも担当者制に よる職業相談とか職業紹介からの一貫した支援というふうなことで書かれています。昨 今いろいろと行革なりが行われておりまして、正規のハローワークの社員が少なくなっ てきている中、臨時の方が非常に増えているという現象はあるかと思うのです。その中 で、具体的に臨時の方も巻き込んだ中で、ハローワーク全体として、このようなことに 具体的に取り組んでいくのだというようなお考え、それが正規だから、臨時だからとい うことではなくて、全体の構成比が変わってくるという中で、具体的にどういうことを されるのかというところのお考えを聞きたいのです。  もう1つは、資料No.2に正社員の求人数のところがありまして、「前年度実績以上」と いうことで、258万人以上だという説明が先ほどありましたが、ちょっと他力本願的な というのですか、2010年度は具体的にどういうアクションを起こしていくのかというお 考えがもしございましたら、数値的なところ、アクションなりプランなりも含めて、PD だけではなくて、その辺のところも是非お考えを伺えればということ、その2点です。 ○公共職業安定所運営企画室長 いま2点ほどいただきました。ご指摘のとおり、さま ざまな行政改革なり定員削減の中で、職員数につきましては、臨時増員等はあったもの の、1万2,000人ほどのハローワークの職員数です。ただ、非常勤ということで相談員の 方等を充実して、いま1万8,000人ほどおりまして、3万人体制でやっております。いま ご指摘のあった事業については極力担当者制ということで、いろいろなアドバイザー等 を設置する等により対応しております。ご指摘いただいたとおり、我々もその人の特性 等に応じながら、いちばん就職率の向上につながるような効果的な体制を取っていかざ るを得ないと思っていまして、その中で、担当者制が効果がある部分については、担当 者制の実施によって対応させていただきたいと思っています。それによってこの数値目 標を達成していきたいと。減り張りをつけたハローワーク運営が大事ではないかと思っ ております。  正社員の求人数については、前年度以上というのが若干迫力不足というようなご指摘 だったと思います。正社員の求人数を確保していくツールとしては、職員はもとより、 求人開拓推進員をかなりいろいろな形で増員しております。学卒の分野についても、ジ ョブサポーターも含めて求人の確保に努めております。ここは正社員の求人数ですが、 求人確保がハローワークの大きなテーマです。良質な正社員の求人を確保していくとい うことが大事ですので、その効果的な取組について、我々も、ただ指導するだけではな くて、具体的に効果的な取組を普及させた上で求人の確保に努めていきたい。基本的に 言えば、その地場に即した、中小企業の方を中心とした、求人を出してくれる企業の方 のニーズを的確に職員なり相談員が捉えて、さまざまな助成金等も含めた施策を適宜活 用しながら数を確保していくことが必要だと思っておりますので、そうした取組を進め ていきたいと思っております。 ○石村委員 高齢者と女性の就業率の向上ということですが、若年者の就業率の向上に ついて少しお聞きしておきたいと思います。資料No.1-2の2頁で、「若年者の就業率の向 上」というのは非常に大事な取組課題であると認識しております。それだけに、あらゆ る対策をとる必要があるのではないか、それだけに関係省庁との連携も必要だと思って おります。2頁中段の注釈のところに、「文部科学省等による施策の適切な実施が不可 欠である」という記載もあるわけです。具体的に、現在関係省庁とどのような調整が行 われているのか、あるいはこれから行おうとしているのか。もしありましたらお聞かせ いただきたいと思います。  もう1点が資料No.1-2の4頁、「地域雇用創造」です。雇用の受け皿という意味でいき ますと、新しい事業を拡大して、そこでしっかり受け皿を確保していくというのは非常 に大事です。介護、医療ということで新たな雇用機会の創出、これは非常に大事なこと だと認識しております。出身ということではありませんが、ものづくりを初めとする既 存事業の雇用の受け皿としても非常に大きなものがあるということで、是非バランスよ く雇用の受け皿といった視点での取組をお願いしておきたいと思います。以上2点です。 ○若年者雇用対策室長 フリーター対策といいますか、文部科学省なり経済産業省なり 内閣府なりとの施策の具体的な調整をしながら一緒になって事業を行っていこうという ことで、例えば新卒者に関して言えば、新卒者の支援チームを政務官レベルで設けたり するという形でやっております。具体的にフリーター対策のところで、このような成長 戦略なり何なりに文部科学省がどのような施策を盛り込まれるかという具体的なこと は、いま検討されているところだと思います。 ○参事官(地域雇用対策室長) 2点目の地域雇用創造の件です。介護だけではなく、 ものづくりもバランスよくというお話だったかと思いますが、実は、重点分野雇用創造 事業というのは、平成21年度の第二次補正成立以降にスタートしたばかりなのです。介 護雇用プログラムの一部に、地域人材育成ということで、地域の企業でのOJTだとかOff -JTをしながら雇用していくという大きなプログラムの中の1つの項目なのです。それか ら、重点分野の雇用創造事業といいますと、人材育成だけではなくて、もう1つ分野を 限ってやっております。農林、環境・エネルギー、観光も含めて、我々としては幅広く カバーさせていただきましたので、ご理解いただければと思います。 ○堀委員 2点質問と意見を申し上げたいと思います。1つは長期目標の率なのです。直 近74.6、56.9、10年先が80、57。数字的には少し低いのではないかという気がしないで もないわけです。もう1つは、1-2の資料にありますように、失業率は3%台に低下する ということですが、他力本願でこの数字が出てくるのか、3%にするために長期目標が 80、57という数字が出てくるのか。どちらなのか教えていただきたいと思います。  資料No.2の新規高卒の内定者の率が2011年3月末現在90%以上と。ここでスタートが躓 くと、年長フリーターという部分に入っていくと思いますので、もう少しここの数字と いうのは高い目標値をもってやっていただける、そういう力を出していただきたいと思 っているのですが、その点だけお伺いしたいのです。 ○雇用政策課長 最初のご質問ですが、参考1-3に「就業率の実績と目標値」というの がございます。09年の線がありますが、そのいちばん下の赤いものが全体の就業率で、 基本的にはこれを維持することを前提として考えております。これがもう少し高めだと いうご趣旨だと思うのですが、このまま放っておくというか、要するに2009年の年齢階 級ごとの就業率が、そのままであれば2020年には53.4%まで下がってしまうということ になるわけで、ある意味では、それを維持するだけでも、かなりのものだと考えており ます。  いままでのトレンドと09年以降の伸びがここでわかると思うのですが、特に高齢者や 若者につきましては今までのトレンド以上に急な伸びということで、我々としてはかな り頑張った数字ではないかと考えています。  3%台との関係ですが、基本的には3%台という目標と整合的になるように就業者数な どを考えました。 ○若年者雇用対策室長 高卒の内定率ですが、ご指摘がありましたように、高卒の段階 で躓くと後々フリーターになって大変なことになるというのは、おっしゃっているとお りだと思います。この3月卒業の方の内定率について、まだ確定した数字が出ているわ けではありませんが、これまでの流れを見ておりますと落ち幅も非常に大きく、81.1% が3月末段階でどれだけいくのかというのは、まだまだ未知数の部分がございます。  そういう中で2010年のPDCAサイクルという形での目標値としては、そういうことから 考えますと90%以上としておくことが適当な数字ではないかと思います。90%だからい いかどうかということではなくて、できるだけ多くの方が卒業後しっかりした職業に就 けるように支援していくというのは当然のことですので、そういうところは年度目標が どうこうということとは別にしっかりと頭に置いて、行政は運営していかなければいけ ないと思っております。 ○荒委員 細かいことですが、資料No.1-2の2頁の「女性の就業率の向上」のところで、 「子育て女性」という言葉が使われているのです。これの定義として、子育て中の女性 のほかにも、子育て中の男性、子育てをする予定のある女性とされているのですが、私 の感覚では、「子育て女性」という日本語はちょっとおかしいのではないかと。日本で こういうふうに使うのだと決まってしまったのだったら既に遅いのかもしれないのです が、あまり適切な日本語だとは思いません。 ○首席職業指導官 マザーズ・ハローワークのところにこういった表現が出てまいりま す。以前は「母子家庭の母」という表現を多用しておりましたが、この表現だと、父子 家庭の父とか、これから子育てをしようとしている女性とか、そういう幅広い対象層を 表すことができないということで、適切な用語がほかにあれば考えてまいりたいと思い ますが、現実的には「子育て女性等」という言葉を使っております。何かこれだといい というような発想があれば、ご提案いただければ、それを検討してまいりたいと思いま す。 ○荒委員 即答はできないのですが、考えてみたいと思います。 ○新谷委員 3頁の下のところに、「求職者支援制度の創設」という項目があります。 今回の資料では2020年までの10年間に取り組むべき内容が論述されているのでしょうけ れど、例えば(1)ですと、今やっている緊急人材育成支援事業について、最後の締めが 積極的にコースを設定するということで、今年限りの話なのかというのがあります。ま た(2)の書き方も、どう読めばいいのか。平成23年度に制度を作るとした後に、「ふさ わしいものとなるよう、現行事業」というのは成立以降の現行事業のことを言っている のか、今の緊急人材育成支援事業のことを言っているのか分からないのです。「財源の 在り方等を踏まえつつ、検討を進める」というのは、平成23年度以降、その制度の見直 しについての検討を進めるということなのか、制度の成立に向けて検討を進めるのか。 そこのところの時制といいますか、いつのことを指してこれを言っているのかよく分か らない。ほかのパラグラフにあるように、もう少し大きく構えた書き方で最後を締め る。新成長戦略としてふさわしい言葉にしたほうがいいのではないかと思います。  それと同じ趣旨で、その下に国庫負担、原則25%の復帰を図るとあるのですが、これ も2020年度に向けて取り組む問題なのか。これはもう平成23年度予算で原則復帰すると 言っているのですから、「原則25%に復帰する」というような書き方にすべきです。 「図る」だと非常に弱いのではないかという感じもいたしますので、その辺も合わせ て、ご見解があれば聞かせてほしいと思います。 ○雇用政策課長 (1)につきましては、基本的には今年度やっている事業についてなの で、テンスとしては「設定する」と現在形を使っています。(2)の「現行事業」という のは、まさに括弧してありますような現行事業の実施状況を踏まえつつ検討を進めると いうことで、現在雇用保険部会等で検討を進めているところです。 ○雇用保険課長 (2)の国庫負担の所は、先の国会で成立した法案で安定した財源を確 保した上でという形ではありますが、原則復帰するということです。表題にありますよ うに原則復帰を図るというのは、原則に復帰するという趣旨で書いているのはそのとお りです。 ○新谷委員 趣旨はそういうことなのでしょう。ただ、求職者支援制度の書き方がほか のところと比べてバランスがとれているかというチェックをしたほうがいいと思うの です。ほかのところの書き方は、最後の締めがもう少し大きな構え方で記述しており、 ここだけがいま検討しているところだけをピックアップして書いてあるので、2020年度 に向けてもう少し立ち位置を上げて書き方を変えたらどうかという気がいたしますが。 ○大橋分科会長 それは難しいことではないですが、この文章にこだわらなければいけ ない理由は何かありますか。 ○雇用政策課長 それはどちらでもいいので、「創設する」で終わってもいいかもしれ ません。その辺は書きぶりを考えさせていただきます。 ○大橋分科会長 本日はいろいろなご意見をいただきました。そのうち、「新成長戦略 に盛り込むべき長期的な目標」及び「点検・評価部会にて検証すべき2010年度の年度目 標」についてはご了承いただきました。それから、「職業安定政策の戦略的な実施」に つきましては、特に高齢者と派遣法のところにつきましてご意見がありましたので、事 務局には、これらのご指摘を踏まえて必要な検討をいただき、私がその内容を確認する ということでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 それではそのようにさせていただきます。事務局におかれましては、 本分科会で出されましたご意見につき、そのようにお取り計らいください。また、その 結果を労働政策審議会本審の事務局にお伝えいただくとともに、厚生労働省には、政府 で取りまとめていく新成長戦略の目標と整合性のあるものになるようご尽力願いたいと 思います。そのほかにご意見はございませんか。ご質問、ご意見がないようですので、 本日の分科会はこれで終わりたいと思います。分科会の今後の日程につきましては、追 って事務局よりご連絡させていただきます。  議事録の署名ですが、労働者代表は新谷委員、使用者代表は荒委員にそれぞれお願い したいと思います。本日はどうもありがとうございました。                   (照会窓口)                     厚生労働省職業安定局総務課総務係                     TEL:03-5253-1111(内線5711)