10/05/10 第9回ナショナルミニマム研究会議事録 ナショナルミニマム研究会(第9回)議事録 1.日時 平成22年5月10日(月)17:30〜19:00 2.場所 厚生労働省 省議室(9階) 3.出席者 雨宮委員、岩田委員、貝塚委員、菊池委員、駒村委員、竹下委員、湯浅委員、長妻 厚生労働大臣、清水社会・援護局長、間杉政策統括官(社会保障担当)、三石社会・援 護局保護課長、伊奈川参事官(社会保障担当) 4.議事内容 ○伊奈川参事官 定刻になりましたので、ただいまからナショナルミニマム研究会の第9回会合 を始めさせていただきたいと思います。参加者の先生方におかれましては、いつもご多忙中のと ころをお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。  本日は大臣にご出席いただいておりますので、冒頭、長妻厚生労働大臣のほうからごあいさつ をいただきたいと思います。  お願いいたします。 ○長妻大臣 どうも皆さん、こんばんは。  本当に今日9回目でございますけれども、何度も活発なご議論をいただきまして、本当にあり がとうございます。これまで5回にわたって各委員の皆様方から、ナショナルミニマムのあり方 についてお考えをお伺いして、検討させていただいて、前回、これまでの意見を中心に、全体の ご議論をいただいたということであります。  今回はこれまでいただいたご意見を整理して、中間取りまとめのたたき台をお示しをさせてい ただいて、皆様方からご議論をさらに深めていただきたいというふうに考えております。  今、厚生労働省といたしましては、少子高齢社会の日本モデルというものについて、世界に誇 る、そういう日本の社会の姿というものを、ビジョンとして国民の皆さんと共有をしていきたい というふうに考えております。その中でもまさにこの研究会、ナショナルミニマム研究会の皆様 のご議論の成果物というのは、非常にその基盤をなすものであるというふうに考えておりますの で、ぜひまた今後ともご指導をいただきますようよろしくお願いします。  毎回で恐縮なんですけれども、私も途中で中座をさせていただきますが、皆様方のご議論は議 事録、あるいは事務局の報告等々で聞いておりますので、今後ともご指導賜りますようよろしく お願いをいたします。 ○伊奈川参事官 ありがとうございました。  カメラの方は恐縮でございます。ここまでとさせていただきますので、退室をお願いいたしま す。 (カメラ退室) ○伊奈川参事官 そういたしましたら、早速でございますけれども、議事に移りたいと思います。  本日は大臣からもお話がありましたように、これまで先生方からいただきましたご意見、そし てまた、前回の研究会の際にいただきました意見を踏まえまして、事務局のほうで中間報告の案 という形でたたき台を出させていただいております。  まず、私のほうからその内容を時間の関係もありますので、読み上げるという形ではなくて、 ポイントのみ説明をさせていただきまして、その後、質疑ということで進めさせていただきたい と思います。また、本日はその質疑が終わった後、雨宮委員のほうから要望のございました調査、 統計の関係について、私のほうからご説明をさせていただきたいと思います。  まず、お手元にございます「ナショナルミニマム研究会中間報告(案)」資料1に沿いまして、 説明をさせていただきたいと思います。  それぞれ左横に番号を振っておりますので、必要に応じてこれに沿いながら説明をさせていた だきます。  まず、0−1でございます。これまでの研究会の経緯を書かせていただいております。  0−2でございます。ここでナショナルミニマムが何かということについて、一応書いてござ います。憲法25条に基づき全国民に対して保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の水準と いうことであります。それをどうとらえるかということに関しまして、所得や資産等の経済的な 指標だけで語られることが多かったわけでありますけれども、これらと人間関係や社会活動への 参加等の社会的な指標等の関連で見ることが重要であるということ。それと、国民生活を多面的、 複合的にとらえる中で、ナショナルミニマムを確定していく必要があるということを書かせてい ただいております。詳細は次のところでご説明をいたします。  0−3でございますけれども、このナショナルミニマムに関しましては、現在、大臣からお話 もありましたように、少子高齢社会を迎えている我が国の社会という中で、単に生活保護だけで はなくて、あらゆる社会保障制度や雇用政策の設計の根幹となるものが、ナショナルミニマムだ ということが書いてございます。  そして、0−4のところでは、この社会保障を「コスト」ということではなくて、「未来への 投資」と、さらには「ポジティブ・ウェルフェア」を推進していくという点について書いてござ います。  0−5でございます。これは本文の中にも出てまいりますけれども、別途、作業を進めさせて いただいております貧困格差に起因する経済的損失の推計、そして低所得者の消費実態から見た 最低生活費の分析という点について、簡単に触れております。  それと、0−6でありますけれども、ここではナショナルミニマムの保障の主体ということで、 地方自治体や企業等、適切な役割分担をしつつも、最終的には国の責任で確保すべきであるとい ったような点について、触れてございます。  次の2ページでございます。まず、ナショナルミニマムの歴史的経緯ということで、先生方か らの発表の際には、かなり詳細にご議論いただいたんですけれども、ここでは簡単にフェビアン 協会のウェッブ夫妻が提起いたしましたナショナルミニマムの議論、そしてベヴァリッジ報告に あります考え方と、こういったものがナショナルミニマムにまず歴史的にはかかわってきている ということでございます。  そして、我が国のことにつきましては、(2)で触れております。ここでは憲法、あるいは社 会保障法ということで、これまたいろいろご議論がございましたけれども、簡単に憲法25条、そ れのとらえ方としまして、憲法学では抽象的権利説が通説とされている。ただ、実際にはこれに ついては、広範な立法裁量、あるいは行政裁量を前提にして、裁判所が最低限度の生活内容を具 体的に確定したことはなく、生活保護は実質的に最低生活費として位置づけられてきたという点 について書いてございます。  そして1−3におきましては、我が国の社会保障の歴史の中でも、特に昭和25年の社会保障制 度審議会の勧告、そしてそれを踏まえました昭和25年の現行の生活保護の制定の経緯について触 れてございます。  そして1−4では、その後、各種社会保障関係の法律が整備をされてきた。ただ、この時代、 ちょうど経済成長に当たるわけでございますけれども、ちょうどそれ以降、ナショナルミニマム に関する議論ということに関しては、1−5にございますように、これを全国的に実施すべき施 策の根拠として幅広く用いられるという動きがある一方、むしろ行革あるいは地方分権の観点か ら、ナショナルミニマムの水準を限定的にとらえ、非効率とされた「大きな政府」型のセーフテ ィネットを否定する文脈の中でも使われてきているといったような点について触れてございます。  次の大きな2でございます。(1)がナショナルミニマムの基本構造ということでございまし て、まさにナショナルミニマムをどうとらえるかということに関して触れてございます。  2−1では、この国民のさまざまな生活場面で発生するニーズということをまず出発点といた しまして、これを「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するために必要なものという観点か らとらえるということが書いてございます。そして次の段落では、では具体的にそれはどういう ニーズかということで、個人や家族が日常消費する食料、被服、光熱水費などなどの財、そして 社会サービス、さらにその基盤となる住居、耐久財、貯金等の資産、そしてさらにはその背景と なる生活慣習や社会関係などから構成されているというふうに書いてございます。  2−2でございます。これをさらに分析いたしますと、これらのニーズのうち、日常消費する 財、サービスの多くの部分や耐久財は、個人や家族の裁量に属する生活費として把握をされ、そ の最低限が最低生活費となるという点が一点でございます。しかし、最低限のニーズ充足には無 償で提供される財や、社会サービスも含まれるということが2点目でございます。そしてこれを 言いかえますと、ナショナルミニマムは一定の生活慣習や社会関係のもとで、必要となる最低生 活に加えて、無償の財や社会サービスを考慮した基準ということでございます。  (2)がミニマムとオプティマム、文章の中に書いてございますように、最低基準と最適水準 ということをどうとらえるかということについて書いてございまして、特に医療、介護等の社会 サービス、これはミニマムということだけではなくて、むしろオプティマムな保障というものが 求められることも少なくないというふうに書いてございます。ただ、この水準がどうかというこ とに関しては、3ページの一番下にございますように、さまざまな意見があり、専門的観点から の議論が必要ということでございます。  また、2−4でありますけれども、ナショナルミニマムの基準ということについては、量と質 ということで最低生活費に代表される量的側面だけではなくて、一定の社会的な生活慣習や人間 関係、社会活動への参加等を保障するという質的側面も反映されることが必要ということが書い てございます。  大きな3でございます。ナショナルミニマムの基準ということで、以下、生活保護について触 れてございます。(1)が生活保護の役割ということで、3−1で生活保護が果たしている役割、 目的ということで、特に生活保護というのは最後のセーフティネットであるという点でございま す。  3−2におきましては、生活保護の目的の中にございます自立助長といったような観点からい いますと、生活保護はトランポリンとしての役割も果たしてきたという点がございます。  (2)の生活保護の基準でございます。これまでの生活保護の基準の考え方について触れてお りますので、簡単に申し上げますと、3−3にございますように、現在、水準均衡方式というや り方でございます。それはここに書いてございますように、一般低所得世帯との消費実態の均衡 が適切に図られているか否かを、実際には検証してきているということでございます。  そして、3−4におきましては、この比較をするに当たりまして、どうしても低所得者の中に は将来に備えて家計を切り詰める。その分、消費支出が少なくなるといったような指摘が先生方 からも出ていたということに触れてございます。また、家計支出の額だけではなくて、家計構造、 消費内容、生活実態の比較分析も必要という意見もございました。  3−5でございます。この生活保護の水準の関係につきましては、最近、マーケットバスケッ ト方式の改良や、その手法の複合化ということに関心が高まっているという点でございますけれ ども、これらについては、マーケットバスケット方式を含めた新たな手法による多角的な検証が 必要ではないかといったような意見をいただいております。また、マーケットバスケットには、 恣意性が排除できない、算定に時間がかかるといったような留意点もご意見でいただいておりま す。  5ページでございます。生活保護の水準につきましては、直近、平成19年に検証が行われてお りますけれども、その際には消費支出はマイナスである一方、深刻な経済状況等は勘案して、改 定率が据え置かれたという経緯について触れてございます。  3−6でありますけれども、現在の生活保護水準をどうとらえるかということに関しまして、 福祉事務所の関係者が水準が高過ぎるというような評価をしている理由の一つとしては、生活保 護基準以上に収入を稼げる職場を見つけることが困難なために、就労阻害要因がなくても生活保 護からの脱却が難しいという実感を指摘する意見もございます。そういった点で、保護から脱却 し、就労したほうがより経済的にも豊かになるというような視点も必要ではないかということで あります。  点線の中は、今後、中間報告の中では触れておりませんけれども、最低生活費の作業チームの 結果をここに反映させていこうということであります。  (3)今後の展開でございます。3−7でありますけれども、最低生活費ということに関して は、生活保護の基準のみならず、最低保障年金が導入された場合には、その水準の設定や、ある いは最低賃金の設定にも活用するなど、社会保障制度の共通の基準であるといった点、さらには 社会保険料や医療費等の自己負担の上限の設定、あるいは課税最低限の設定などといったところ にも影響があるということについて触れております。  3−8では、このナショナルミニマムの基準について、質的な基準づくりについては今後の検 討課題という程度に触れてございます。  5ページの下、大きな4であります。ナショナルミニマムの保障のための施策ということで、 (1)が生活保護と関連施策の関係ということであります。ナショナルミニマムの保障に関しま しては、生活保護のみならず、そのほかの各種、社会保障施策、雇用施策によって、確保される ということで、これらの制度は保障するニーズやリスクに応じて、制度設計され、給付水準も設 定されているといった点を触れております。  6ページになります。そういたしますと、したがって以下でありますけれども、この生活保護 の果たす役割というのは、ほかの社会保障施策のあり方によって、役割が大きくなったり、小さ くなったりするということであります。  (2)貧困・格差問題の顕在化の関係でございます。  4−2でありますけれども、現在、我が国の社会保障制度は、これまで高度成長期の雇用モデ ル、あるいはその中での勤労者世帯モデルを前提としてきたという点でございます。しかし、近 年、非正規労働者の増加、単身世帯の増加といったようなことで、社会保障の網の目が粗くなる とともに、そこから落ちる人を行政が把握できなくなっている。そして、そういう中で貧困や格 差が社会問題化しているという点について触れております。  そういった点で、全般的な制度の再設計が必要となっているといったようなご意見をいただい ております。  4−3であります。子どもの貧困の関係でございますし、また貧困の連鎖といったような点に 関係いたしますけれども、子どもの貧困問題の適切な対応を怠ると、さらに将来の貧困の拡大や、 格差の固定化を招き、経済にとっても負の影響があるという点であります。そういった点で、予 防的な施策によって子どもの貧困を解消し、貧困の連鎖を遮断していくことが今求められている ということでございます。そして、この研究会でもご報告いたしましたように、初めて生活保護 基準未満の低所得世帯数等の推計が報告されておりますけれども、今後も定期的に調査・推計を 行い、動向を把握していく必要があるということでございます。  (3)生活保護の諸課題ということであります。最初に書いておりますのは、生活保護の「補 足性の原理」といった点でございますけれども、その生活保護の要件の運用に当たっては、年齢 等外形的基準で機械的に判断するのではなくて、申請者の実態を十分に把握した上で判断しなけ ればならないということが書いてございます。  4−5、先ほどもございましたトランポリン型ということで、そういった生活保護にするため にはどういうことが必要になるかということで、特に書いてございますのは、現在「その他世 帯」ということで、高齢者とかあるいは障害者世帯以外の世帯がふえているということで、福祉 事務所、ハローワークとの連携、そして就労支援を通じたサポート等によって、就労促進の強化 を図る必要があると。そして、自立助長の観点からは、経済面のみならず、日常生活や社会生活 の面での自立ということも重要だといった点が触れられております。さらに、貧困の連鎖という ことでの子どもの学習への支援ということも触れてございます。  7ページ、4−6であります。こういった今の生活保護を取り巻く状況の中で、ケースワーカ ーの負担が非常にふえている。そして、結果的に専門性や経験・知識が劣化しているといったよ うな指摘について触れております。そういった点で、今後福祉事務所のケースワーカーのほかに、 就労支援員や自立支援員等の専門職員を確保すること、あと就労支援、自立等に取り組む「新し い公共」と言われるような企業、NPO法人等との協働が重要である。そういうことによって、 「ポジティブ・ウェルフェア」を具現化していくといったような記述でございます。  4−7でございます。これもご報告をさせていただいた点でありますけれども、生活保護受給 者の自殺水準が高い。この要素には、精神疾患を有する方が含まれているといったこともあると いうことで、生活保護受給者の中のこういった方への精神的なケア、そのための相談支援体制と いった点が触れてございます。  4−8であります。これは生活保護の抱える問題ということでの不正受給、貧困ビジネスとい ったようなことにも取り組んでいく必要があるということでございます。  (4)ナショナルミニマムの保障のための諸施策ということで、4−9におきましては、生活 保護以外の社会保険、あるいは社会福祉サービスといったものもかかわってくる。そしてまた勤 労権の保障ということでの就労の関係のことについて触れてございます。さらに、こういった点 からいいますと、憲法25条だけではなくて、13条の個人の尊厳や、14条の平等原則といったよう なこと、さらには27条の勤労権といったようなことについてもここで触れております。  4−10であります。現在の状況の中での派遣切りといったような問題の中での第2のセーフテ ィネットの充実の必要性ということについて、触れてございまして、具体的には無料の職業訓練 等と訓練期間中の生活費を支給する事業の恒久化に取り組む必要性、あるいは住宅手当の拡充な どの課題について触れてございます。  8ページ、4−11であります。それ以外の対応といたしましての社会保険の適用拡大、子ども 手当、最低賃金、最低保障年金などによる年金の最低保障機能の強化といったようなことによっ て、重層的なナショナルミニマムの保障といった点が触れられてございますし、なお書きとしま しては、給付付き税額控除ということも触れてございます。  あと、4−12でありますけれども、社会保険に関しまして、社会保険料体系を応能負担型にし て、低所得者に対しては税財源で補助する方式も考えられるといったようなご意見がございまし た。特に年金についていいますと、高齢者の貧困削減に重要な役割を担っているということから、 中でも単身高齢者の所得保障の検討が必要という点を触れてございます。  4−13でありますけれども、これはかぎ括弧がついております「再分配のパラドックス」の関 係でございまして、貧しい人に限って給付を行うと、かえって格差が拡大するといったような説 明がございましたので、そういった点について触れてございます。  大きな5、ナショナルミニマムの保障責任、国と地方の関係ということで、(1)としまして、 国の最終的な保障責任ということで、憲法25条の最終的な保障責任は文字通り国が負っていると いうことであります。ただ、国が規定すべきナショナルミニマムの考え方については、国と地方 自治体との役割分担を前提とした議論がされるべき。また、社会サービス給付について、施設の 設置・運営基準等についても、こういった考え方も踏まえるべき。また、ナショナルミニマムに ついては、自治体の意見も十分踏まえる必要があるといった点が触れられてございます。  (2)地方自治体、民間等との連携、役割分担ということで、これらのナショナルミニマムの 保障というのは、地域住民の生活の向上といったような共通の目的に向けて、国とか自治体だけ ではなくて、いろいろな主体が適切に役割分担、協力していくことの必要性について触れてござ います。  9ページでございます。5−3であります。地域のことということに関していいますと、ナシ ョナルミニマムに上乗せされる形での地方の独自性(ローカル・オプティマム)が発揮されるべ きといったような点が触れられてございます。  6でございます。貧困、格差等の概念・指標、ナショナルミニマムの達成度の観測指標という ことで、(1)貧困格差等の概念・指標ということであります。貧困や格差の実態把握に当たり ましては、金銭所得や資産保有の状況など、金銭換算可能な指標を中心にとらえられがちである けれども、多面的な生活の実態をより正確に把握するといった点で、家族関係、人間関係、社会 活動への参加、社会サービスのアクセス等の共同生活環境の欠如、社会的排除と言われるような ことについても、目配りをする必要性でございます。  そしてまた、そういったことをどうとらえるかということに関して、6−2では絶対的貧困と か相対的貧困等、いろいろな指標がございますけれども、それぞれ統計データには特徴があると いうことで、なかなか一つのデータだけではとらえられない面があるということで、複数の指標 を複合的に参照していくことが重要ということで、EUの例えば「社会的保護と社会的包摂に関 する指標」といったようなことについて紹介をしております。  (2)ナショナルミニマムのPDCAということで、こういったナショナルミニマムについて は、「PDCAサイクル」を回していくことが必要といった点について、10ページにかけて触れ ております。また、こういった点については、生活保護の基準の検証というのが5年ごとに行わ れますので、それにあわせて検証していくことが現実的であろうというふうに触れてございます。  6−4でございます。貧困あるいは格差のとらえ方ということで、ここでは特に「相対的剥 奪」、「社会的排除」の指標ということの重要性について触れてございます。  大きな7であります。貧困格差是正と経済成長ということで、社会保障と経済成長の関係であ りますけれども、これについてはトレードオフ関係にはないという点が特に触れられてございま す。  また7−2でございますけれども、この貧困格差を是正をして、経済成長を実現していくとい うことに関して、「再分配のパラドックス」といったようなことからいたしますと、現金給付だ けではなくて、現役世代に対する社会サービスの給付を充実させることが必要とか、あるいは再 教育や再訓練によって失業者を成長産業へ移行させる、積極的労働市場政策の推進の重要性等に 触れてございます。  最後、11ページになります。(2)未来への投資としての社会保障ということで、社会保障を 「コスト」ではなく、「未来への投資」と位置づけていく。これらはまた地域における雇用創出 という点でも、極めて有効であるといったような記述でございます。この関係では経済損失作業 チームのことが反映をされるということで、触れてございます。  最後、「おわりに」ということで、ナショナルミニマムに関しては国民的議論が必要であると いう点、さらに今後検討をすべき課題も残っているということで、今後とも外部有識者等からの 意見も踏まえて、さらに議論を深めていかなければならないという形で、締めくくっております。  時間の関係で駆け足で、非常に雑駁でございますけれども、説明は以上でございます。  そういたしましたら、これから今の内容について、追加すべき意見あるいはご質問等ございま したら、ご自由に発言をいただければと思います。よろしくお願いいたします。  湯浅委員お願いします。 ○湯浅委員 とてもきれいに今まで出た意見を過不足なくまとめていただいてありがとうござい ました。  非常に目配りのきいた文章だと思うんですが、反面、この研究会、要するに自分も委員として かかわっているんですけれども、それの名前として大臣なりに提出するということを考えると、 やっぱり少しちょっと自分の言葉とは違うということがあって、幾つか、結構たくさん気になる 表記とかも出てくるわけですけれども、でもそれは事務方の方たちの問題というよりは、やっぱ りこちらの委員側の問題だというふうに思っていて、やっぱり最終的に取りまとめる文章という のは、やっぱりある程度、今までまとめていただいたものを土台に、委員のほうでつくるべきで はないかと、主体的な関与の問題からいっても、というふうに思うんですが、ほかの皆さんはい かがでしょうか。 ○伊奈川参事官 竹下先生。 ○竹下委員 私のつたないないしは取りとめのない意見も整理していただいて非常にありがたい と思っているんですが、十分読み込めていないことを前提でしゃべることをお許し願いたいんで すけれども、非常にこれを見ていて、新しいものが見えてこないなというような結論なんですね。  まず1番目には、非常にいまだ抽象的であって、私なんかが裁判をずっと担当してきた経験か らいえば、結局は行政裁量とか立法裁量に委ねてしか、最低生活なりミニマムの内容が確定され ないような内容にしかなっていないというふうに、どうしても見えてしまう点が気になります。  2点目には、そこから来るわけですけれども、ではナショナルミニマムということを考えたと きに、どういう要素、あるいはどういう具体的な場面ごと、あるいは内容ごとに考慮すべき、あ るいは充足すべき項目があるのかということがやっぱり示されていないし、結局はその結果とし て抽象的になってしまっているのかなというのは感じました。  それから裁判なんかで、例えば朝日訴訟の最高裁判決もそうなんですけれども、奥野裁判官の 少数意見を除けば、結局、不確定なたくさんの考慮要素があるんだというんで、裁量権を広げて しまうわけですけれども、そうではなくて、具体的にどういう項目を考慮すべきかというのを、 その時点で、例えばミニマムを確定する時点で適時というか、提案できる内容をできるだけこう いうものを考慮して、あるいはこういうものを斟酌して確定すべきだというものをやっぱり示さ ないことには、結局は確定できないということになってしまうのではないかというような感じが します。  それからもう一つは、生活保護との関係でいいますと、確かに、僕は初めて聞く言葉だったん ですけれども、トランポリンということが出てくる割には、現実に生活保護を受けていて、立ち 直りのための役割、機能というものが、やっぱりイメージされていない、出てこない。  例えば、これはあり方専門委員会のときに、岩田先生なんかも指摘しておられたことなんです けれども、例えば「破産においてすら」という言い方をあえてしますけれども、破産においてす ら、自由財産として99万円の現金保有が認められているんですね。それ以外に保険などなどの保 有が認められているわけです。ところが生活保護においては、ご存じのとおり、この前、橘木先 生も指摘しておられたように、5万、10万円の保有財産があるだけで生活保護を受けさせないわ けです。あるいは逆に保護費を含めて、50万、100万貯めただけで福祉事務所に目のかたきにさ れている現実があるわけですよ。そういう中で、立ち直りを期待するというのはどういうことな のかなと。破産者の立ち直りをまさに考えて、当面の生活費も含めたまさにトランポリンを意識 しているからこそ、自由財産という形での資産保有が認められているのに、そういう点について 全く触れられていないなということが非常に気になります。  それから、例えば生活保護にどうしても僕は目を向いてしまうんですけれども、例えばですけ れども、就労という場面に常に生活保護の適用ではトラブルが起こっているわけですけれども、 年齢要件なんていうのは、厚生労働省は一切言っていないわけですよね。ところが現場ではほん の最近までは65歳が基準になっていて、最近60歳なんていうことを現場の実施機関は平気で口に しているわけですよね。そうすると、50代、40代の就労可能な人たちの実態というものを把握、 調査する以前に窓口規制というものをかけてしまっている。この状態で本当に立ち直りを期待す る生活保護の、最後のセーフティネットであるにせよ、あるいは立ち直りのための機能というも のを果たせるのかということが、やはり見えてこない。  それから最後にしますけれども、扶養の範囲についても見直すべきだという指摘があったかと 思うんですけれども、この点についてもやっぱり今のままでは何も変わっていかない。このまま では結局、生活保護を受けたいけれども、親族に迷惑をかけたくないという意識から、申請しな い人が非常に多いことの実態や現実をやっぱり無視してしまっている。  それらをずっと考えていきますと、こういうまとめ方、そのものがだめだというよりも、より 具体的にせっかくこの研究会の設置目的からいえば、具体化されて本当に国民にとって最低生活 なり、ナショナルミニマム、まさに国民の生活というものは最低こういうものが国や自治体によ って保障されているんだし、その実現のために法的な基盤も整備されているんだなということが 意識できるものになっていなければだめだろうということを思いました。その点からも僕なんか の思いとしては、自分に起案能力は大してないんですけれども、自分の言葉で少し何か言ってみ たいなということを考えていましたので、少し次回までにそういうもののペーパーを準備してみ たいとも思っています。  以上です。 ○伊奈川参事官 大臣。 ○長妻大臣 私がちょっと意見を言うのはどうかあれですけれども、ちょっと一言。  いろいろご議論いただいてありがとうございます。これ事務局のまとめの問題かどうかあれで すけれども、これはあくまで中間報告ということで、さらにいろいろご議論いただくということ の中間的なものであると思いますけれども、例えば4ページ目のこの一番下の3−5というとこ ろに、ここにはマーケットバスケット方式も含めた新たな手法による多角的な検証が必要ではな いかということで、これは今後とも継続になるわけでありますけれども、この先にあるイメージ といいますか、具体的に最低限度の生活を積み上げていくと、こういう姿になるのではないかと いうようなものも、今後の流れとしてもう少しここに書き込むことができるのかできないのかと いうこともあろうかというふうに思いますし、あるいは8ページ目の下に5−1、国の最終的保 障責任というのがありますが、これも今まさに議論しております地方分権というか、今地域主権 という言葉でやっておりますが、あるいは特区の話、あるいは規制緩和の話について、これは 個々の個々人の最低限度の生活というよりは、これもナショナルミニマムだと思いますけれども、 例えば保育所であればこういう基準があるとか、あるいは地方分権するにも特別養護老人ホーム は最低限こういう形であるべきであるとか、地方に任せるときでも、最低限譲れない基準、ある いはこの規制緩和をするにしても、最低限度こういう状況にはなってはならないという、そうい う考え方というのがどこにあるのかという、ここにも記述がありますけれども、これをさらに今 後の議論になると思うんですけれども、どこまで具体的に書き込むことができるかできないかと いう基準ということであります。  最後に3点目としては、9ページ目に6−1にもありますけれども、ここは金銭所得、「これ まではややもすると、」と書いてありますが、「金銭所得や資産保有の状況など金銭換算可能な 指標中心に捉えられがちであった」というふうに書いてありまして、「より正確に把握するため には、家族関係や人間関係、社会活動への参加、社会サービスへのアクセス等の共同生活環境」 などなどにもという記述があって、ある意味では生活保護といいますか、最低限度の基準につい て、金銭ではなくて、こういう具体的な基準というのがどうあるべきかということが、さらに具 体的にどこまで書き込めるのか書き込めないのかということや、とすると、これまでのケースワ ーカー始め、生活保護、支援される方、あるいは全体の社会保障政策でも、その支援策を人間関 係まで広げていくと、例えばすると、具体的にどういう支援が必要なのかどうかというところが 具体的にこれから出てくるのではないかと。  ここにもEUの14項目指標が紹介されておりますけれども、このナショナルミニマム研究会の そもそもの一つの問題意識というのは、金銭換算以外の新たな最低限度の基準を、ある程度正確 にあらわすような指標というのがつくれるのかつくれないのかというのも、一つの大きな論点で ありましたので、これはあくまで中間報告ということでありますけれども、これがこの先、つな がるような形でお願いできればありがたいというふうに考えております。  ちょっと私、中座させていただきます。大変恐縮でございますが、またよろしくお願いいたし ます。 (長妻大臣退室) ○間杉統括官 恐れ入ります。大臣が中座で。  私のほうから、実はもう少し内容的なことのほかに、今この段階でこの中間取りまとめのたた き台を出させていただいているということの意味合いをご説明をさせていただければよかったの かもしれませんが、今大臣も申しましたように、非常に私ども、率直に申し上げて短期間の間に 極めて鋭利な、あるいは鋭いご意見をずっといただいてまいりまして、非常に新しい側面という のが見えかかっているんだろうと思うんです。  その中で、少し抽象的ではないかというふうなご指摘もありましたけれども、この点について は、実はきょうまだ提出させていただいていないわけでございますけれども、岩田先生のほうで 最低生活費の研究というのをなされておりまして、それは次回にでもその中間的なご報告を踏ま えた形で、この中間取りまとめをつくりたいというふうに思っておりますし、もう一点、貧困格 差というものが経済的にどういうふうな悪影響を与えるかということにつきましても、神野先生、 阿部先生のチームでご検討いただいておりますので、それの中間的な報告も承って、中間報告全 体の締めと言うとおかしいですけれども、そういう形にしたいと、こういうふうに考えてござい ます。  今、大臣お話しされましたように、地方分権をどう考えるかとか、少し私どもも考えなくては いけない点もございますし、それから中間報告をいただいてもやはりもう少し議論を深化させて いくということはぜひとも必要だと思いますので、ぜひとも議論は継続していただくということ を前提に、お考えいただければ幸いだと思っております。  それからちょっと全体的なお話でございますが、自分の言葉でというふうなお話も、今、両委 員からもございまして、私どもも至極当然だろうと思いますので、次回までの間にぜひどこかの タイミングまでにそれぞれご意見をいただければ、私どものほうでもこれをまた直させていただ きたいなというふうに思っております。 ○伊奈川参事官 岩田先生、お願いいたします。 ○岩田委員 私どものほうで今ちょっとやっている作業を、すぐこちらに報告できるまでにはま だちょっと時間がかかると思いますので、さっき湯浅委員がおっしゃったような、中間報告の意 味とか、あるいはどう書くかということを、根本的に考えるというのは大変難しいわけですけれ ども、きょうお出しいただいたのは、ともあれ、委員会のメンバーがそれぞれが考えたナショナ ルミニマムについての報告を、できるだけ取り込んで整理されたということだろうと思うんです ね。  それで、今後の議論に続けるという意味でいうと、やはり幾つか、もうちょっと整理が必要か なとはちょっと思いますが、それは今ちょっと大臣も言われたことかもしれませんけれども、一 つは所得保障とか租税制度と関連するような、最低生活費ということがよくも悪くも金銭評価と いっても、例えば幾らが最低生活かというのはお金で決まるわけではなくて、質的な生活でいわ ば決められていくことなので、そう簡単なことではないわけですけれども、それが一つです。  それからもう一つは、恐らく非金銭的なといいますか、多様な指標で生活指標のようなものだ と思うんですけれども、これはナショナルというだけではなくて、かつてシビルミニマムという 言葉があったわけですけれども、地域ごとに指標設定した時代もあるわけですから、これはいろ いろなタイプで恐らくできるだろうと思うんですね。  もう一つは、それらに対する制度対応なんですが、ちょっと今回のまとめで私が気になるのは、 現行制度が生活保護がナショナルミニマムを一身に背負ってしまっているものですから、全体か らいうと、生活保護論みたいな、ちょっと制度論みたいな様相が非常に強いんですね。ちょっと 私が思うには、差し当たり制度は一回よける、横に置いて、最低生活費あるいはナショナルミニ マム指標というものを一方で考えながら、それと現行制度、これは生活保護だけではなくて、例 えば駒村委員からありましたような、第2のセーフティネットの今日における重要性みたいなも のがかなり指摘されているわけですけれども、どういう制度にしていくか、あるいは租税制度と どういうふうに整合あるものにしていくかという議論は、別途まとめたほうがいいようなちょっ と気がするんですね。  例えば、具体的に言うと、4ページにこのナショナルミニマムの基準というのは、ここでは最 低生活費のことを主に意味しているわけで、それをたまたま日本は生活保護がかなり引き受けて しまったので、保護基準がいきなり出てくるわけですけれども、例えば3−1はまだしも、3− 2はここになくても後ろでも書いてあって、かなり生活保護について、あるいは福祉事務所につ いて、非常にたくさん書いてあるんですね。私のちょっと印象では、書き過ぎというか、生活保 護見直し委員会ではないので、もうちょっと生活保護は差し当たり横に置いた上で、最低生活費 や諸費用をむしろ確定しながら、現行生活保護制度の問題についても、別途議論するというよう な、何かそういう識別をしないと、なかなかちょっとナショナルミニマム論にはならなくて、生 活保護論にいつも行ってしまうような、ちょっと感じがするんですね。  それで、生活保護制度はもちろん、所得保障だけの機能を持たないので、ここで言う自立支援 とかいろいろ出てくるんですけれども、私は最低生活費保障といいますか、ナショナルミニマム な保障という基盤にあるのは、そのことではなくて、やっぱり最低生活費の保障だと思っている ものですから、それがちょっとやや錯綜して入っているために、非常にわかりにくいちょっと印 象があるんですね。  ですから、中身はともあれ、もうちょっと仕分けしながら、できるだけ多分発言内容を入れよ うとされたんだろうと思うんですけれども、非常に尊重していただいたと思うんですけれども、 何というか、ちょっと主論と少し脇の議論と少し識別された上で、このためにこういう作業がこ の後必要だというような、ちょっとそういうふうにまとめるしかないのではないかなというふう には思っています。 ○伊奈川参事官 岩田先生、よろしいでしょうか。  菊池先生お願いします。 ○菊池委員 私も重層的なナショナルミニマムのとらえ方ということを申し上げましたが、全体 的なトーンとして、やはり岩田先生がおっしゃられたように、生活保護を念頭に置いた記述が随 分多くなっているなという印象を受けて、そういう意味ではナショナルミニマム=生活保護とい った、従来のとらえ方といいますか、そっちのほうに収れんしていかないように、もう少し間口 を広くとらえていったほうがいいのではないかなという印象を受けたんですが、基本的にはこれ はまだ中間報告であるということと、これまでの政府関係のこの関係の報告書等と比べても、私 は随分新しい見方であるとか視点の卵というか、これから大きく展開していけるようなものが少 なからず含まれていると思いますので、私はこの報告案をベースに、何か差し当たりの委員から 出てきた議論をまとめていただくということは、非常に意味のあることだと思っています。  そうした中で、この報告案の4章につきましては、実はいろいろ指摘したいことはたくさんあ るんですけれども、細かいことを言っていると時間がなくなりますし、またそれは別途、文章の 形で細かい要望等も含めた部分は指摘させていただくことにして、2点だけ、ちょっとコメント をここではさせていただきますが、1つは2−3、ミニマムとオプティマムの関係という議論、 これは私が多分最初に申し上げたところだと思うんですが、恐らく、オプティマムという最適水 準の保障というのは、やはり医療との関係で言われているのであって、この資料を拝見すると、 ミニマムかオプティマムかという議論を全面展開されようとしているようにも見受けられるんで すが、これはかなり間口が広がってしまうというか、これは議論があり得ると思いますけれども、 例えば介護とか福祉におけるオプティマムとは何かというのは、これは非常に際限がなく広がり 得る。私は基本的には医療についてはオプティマムだと思っていますが、基本的にはやはりナシ ョナルミニマムの保障であると思っています。例えば、介護サービスの保障において、家事援助 におけるオプティマム水準の保障とは何かというのを考えて、際限なく広がり得る可能性ある議 論でありまして、議論を最初から収束する必要はないんですけれども、ミニマム対オプティマム という全面展開を、医療、福祉、介護、全部含めて、保育、住宅まで含めてされる、確認の意味 を含めてでいいんですけれども、ちょっとやや懸念されるところはあります。きちんとした制度 論になっていくのかなというところであります。  もう一点は、先ほど大臣、ご指摘になられましたけれども、国と地方の関係のところで、8ペ ージから9ページにかけてなんですけれども、ちょっと何を言わんとしているのかよくわからな いというか、基本的にはここでの議論としてはナショナルミニマムの考え方については、これは 岩田先生だったかと思いますが、国と地方自治体の役割分担の前提として議論していくものとい う議論があったと思うんですが、ただその後に、ただし、ナショナルミニマムを規定するに当た っては、自治体の意見を十分に踏まえることが必要だという。これはちょっと矛盾していないか ということですね。その後にさらに、地方の独自性というのはミニマムの上乗せのところで議論 していただくものなんだという趣旨、この辺の整理がちょっとされていないような気がいたしま す。  基本的には私もナショナルミニマムの考え方というのは、国と地方の役割分担という議論の前 提でまず決まってくるもので、その過程において自治体との意見を踏まえるということがあるか もしれませんけれども、その上乗せ部分がこのローカル・オプティマムという議論なのかなと思 いますので、ここのスタンスは少しはっきりさせる。ここはある程度、大方の共通了解があった ようにも思うんですけれども、湯浅委員が9ページの、例えば以降のところは湯浅さんの発表の 中だったかなというふうに思うんですけれども。  ちょっとそこが気になったというところです。 ○伊奈川参事官 事務局のほうでは、今日の視点でいいますと、今までいただいた意見をなるべ く反映をさせようと思ったこともありまして、確かに少し、バッティングまではいかないかもし れませんけれども、整理したほうがいい点があるかと思いますので、それは先生方からまた文書 でご意見をいただいて、そしてまた我々のほうでも少し考えてみたいと思いますので、きょうの ところはいろいろなご意見をいただいて、そして整理を再度させていただくということにしたい と思いますけれども、よろしいでしょうか。 ○湯浅委員 もちろんそれはやっていただきつつだと思うんですけれども、私は率直に言って、 私たちの名前で出す文章を、何かみんな言いっ放しで、事務局の方にまとめていただいて、まと めていただいたものでこれは違うあれは違うと言うのは、何か事務局の方に非常に申しわけない 気がしていて、もう少しめり張りつけることも含めて、委員同士で話をしたり、議論したりして、 今、菊池さんがおっしゃったような点とか、文章を直したものを少し共有したりして、最終的に どうにもこうにもまとまりませんということになれば、また事務局の方にまとめていただくしか ないんだと思うんですけれども、少しやっぱりそういうことをやるべきではないかという気がし ます。  やっぱりどうしても、事務局サイドとしては均等にいろいろな意見に配慮してまとめざるを得 なくなるので、何かみんなの意見から中間的なことを言わざるを得ないと思うんですよね。それ は事務局の責任というよりは、私たちの側の問題ではないかという気がするんですが。 ○伊奈川参事官 貝塚先生。 ○貝塚委員 私は、お話を伺っているとやっぱりお役所のほうでまとめるとこうなるというのは、 そうなってしまうんですよね。過去の経験からすれば。要するにやっぱりいろいろな方の意見を それなりにある程度集約するんですが、集約するときに多分やっぱり一つの角度に傾斜するとい うことは非常に書きにくいというのか、それはそうなってしまうのはある意味やむを得ないかも しれません。  ただ、私はやっぱりいろいろな意見があったんですが、今までのナショナルミニマム、あるい は生活保護とか、あるいは社会保障の体系の中で、十分対応できなかった部分が今まさにあるわ けで、それの一つとしてこういう問題が出てきているので、そのときに別にコンセンサスがちゃ んと得られるというか、あるいは制度的にうまくいくかどうかという話は残っているんですが、 やっぱり新しいやり方として、こういうやり方がありますということを例示的に出して、それは もちろん問題はあるけれども、方向性としてはそういうものを二、三個、いわゆる具体例として、 ただそれは具体例だけれども、問題は残っているんだけれども、方向性としてはこういうものが ありますよということを、もうちょっと具体的に書いたほうがいいのではないか。  その一例を挙げると、最低保障年金というのは、恐らく今までの社会保障の年金の中では出て こない概念ですよね。そうするとそれはどうするかというと、先ほどもちろん岩田先生も言われ たとおり、どういうふうにファイナンス、資金を調達するか。そうすると税金でやるのか保険料 的なものでやるのか。従来の保険料的なやり方では多分なかなか、ある額の最低保障年金を拠出 したものと対応させるというのも、それは難しいんだと思うんですね。そうすると、最低保障年 金というのは、ある部分は相当程度税金が入ってくるのかという話ですね。だから、そうなって くると最低保障年金というのは、生活保護の制度はある意味で完全に、ある意味では税金で調達 しているわけですが、それと今までの年金の考え方が一緒になっているところがあって、そうな ると非常に混合型でこれは一体どうするのかなという話。  だから制度論として私が申し上げたいのは、最低保障年金はそれは新しいアイデアとして結構 なんですが、それは大体こういうものでどういうふうに財源を調達―それはできるかできない かは別の問題ですから、どういうふうに調達していくかという、保険料的な要素をどの程度入れ るかというわけですね。それとも税金で相当程度やってしまうのか、そこはもういろいろな考え 方があるんですが、やっぱり一つのひな型ないし、あるべき姿として、それは後の制度論として は非常に難しいところなんですが、しかし、そういう新しい今までのやり方の中ではうまくいっ ていない部分があることは間違いないので、それから抜け出すための一つのやり方として、最低 保障年金というのは新しいアイデアだと思うんですね。それはどういうふうに調達するかという のは難しい問題です。それはだけれども、やっぱり一例としてそういうものを挙げると。  それからそれ以外にもいろいろ、必ずしもうまくいくかどうかわからないですが、そういうも のはほかにも中にはあるわけです。役所としてはそういうのは非常に書きにくいというのはわか りますから、必要あればですが、そういう部分は委員の誰かが書いてしまって、厚生労働省の人 はこんなことは無理ですよという話になるのかもしれませんが、無理ですよと、必ずしも厚生労 働省だけではなくて、財務省とかそういうものがいろいろ予算の中でやっぱりそれを全部最終的 には決着をつけなくてはいけないわけですから、具体的な形にはしなくてはいけないのですが、 その前のあるところまでは何かそういうのを出したらどうかと、それはだから必ずしも最後に行 政サイドが、厚生労働省だけではなくて、財務省とか、あるいは総務省もあるのか、そこでいろ いろクレームがつくということはそうなんだけれども、クレームがついたとしても、しかしこれ は一つの我々のアイデアで、そのアイデアをなるべくうまく消化して、何とかそれに近いものが できればいいというのは、これは私の個人的な希望なんですね。  だからその種のものは2つか3つぐらいあれば、報告書としては、先ほど言われたように、や っぱり現実、非常にうまくまとまっているんですが、ある意味では現実的に過ぎるというのか、 だけれども、しかしやっぱり新しいある種のブレークスルーをしないと、この問題は多分なかな かうまくいかないのではないかというのが私の直感的なあれですけれども。だけれども、そのた めには今までの制度をある部分変えなくてはいけないのですが、それはやっぱりタックルすべき であって、アイデアとしてそういうものを出して、ある程度現実性を持ち得るように、厚生労働 省の方のお知恵も拝借したほうがいいのではないのかなという、これは私の意見です。 ○駒村委員 これは私も、これは中間取りまとめですから、現時点ではこの意見を挙げていると いうところで仕方がないのかなと思います。ただ、よく見ると非常におもしろいことも書かれて いるのにもかかわらず、それが伝わらないような構成になっているわけですから、今までの議論 であるように、少し最終報告書にするに当たっては、構成に工夫をしなければいけないだろうと 思います。  岩田先生や貝塚先生もおっしゃっていたように、やはりこの報告書に何を期待するのかという ことなんですけれども、やっぱり厚労省の議論をずっと見ていても、年金だけ、雇用政策だけ、 住宅政策だけ、生保政策だけ、社会保険政策だけ、あるいは別の省庁で見ても、課税最低限部分 だけと、この自分の担当分野でないところについては、各省局が書きづらいというところがある ような感じがするんですね。そこを引き受けられるような内容、つまり制度横断的にさまざまな 所得保障、社会保障制度が組み合わさって、このナショナルミニマムというものを形成して、本 当の最後のセーフティネット、生活保護に対する負荷をいかにかけない制度に逆に持っていくの かというような、制度横断的な視点を持った報告書になればおもしろいのかなと思います。  その上で、先ほども竹下先生からも議論があったミーンズテストや資産制限のあり方について は、例えばこの間の生活保護の達してない世帯に対して、資産制限を1月分から2月分へ、2月 分から3カ月分相当に緩めた場合に、どのくらいまで実際に対象世帯が変化するんだろうかとか、 あるいは政策目標としては、例えば生活保護世帯の指定の高校進学率を上げるということによっ て、具体的に貧困の連鎖を食いとめることができるんだとか、そういう関連する政策目標を掲げ ることができればいいかなと思います。  そのほかに、例えば5ページの3−7なんかも非常にこれはおもしろいことを言っているよう な私は理解をしたんですね。最低生活費はということからですけれども、ある科学的な方法によ って検証された最低生活費というのは、これはすべての所得保障なり、最低生活保障、所得保障 制度のある意味基準になると。この基準を見ることによって、例えば最賃はその最低生活費何ポ イント分なのか、あるいは生活保護は最低生活費の何ポイント分に相当するのか、課税最低限は 基準化された最低生活費の何ポイントで設定されているのかどうか、することによって、一個一 個の制度をその制度その制度の都合で動かすのではなくて、すべての所得保障制度に共通の尺度 をつくっていき、すべての制度が連動、整合性があるような制度が設計可能であるというような メッセージが入っていると思うんですね。  だから、もうちょっとうまく整理すると、新しい部分が出てくると。だから、これは委員の責 任かもしれませんけれども、整理の方法というんでしょうか、切り口というのを出すことによっ て、あとはこの各パーツをいかにメッセージ性を強くするように置くかという議論が次のステッ プかなと思います。  以上です。 ○伊奈川参事官 ありがとうございます。  岩田先生、お願いします。 ○岩田委員 今のところもそうなんですけれども、私もちょっといろいろ考えたら、最初に、ナ ショナルミニマム研究会というのを、ここでやって何を言うのかというときの哲学というか理念 というか、ナショナルミニマムって何だということなんですけれども、ここでは一つは25条論と してなされ、もう一つは歴史論争があったわけですけれども、25条というのは25条であるとして、 それをもうちょっと展開して今のような例えば制度の指針にしていくんだとか、あるいはその基 準というのは社会で合意されたものなんだとか、もうちょっとなぜミニマムということを今やる かということの意味づけを、最初のはじめにというところに、もう少しまとめておくべきではな いかと思うんですね。そうではないと、いろいろなものが出てきているんだけれども、もちろん 25条がまずあったし、これまでもずっとあったわけですよ。だけれども、なぜ今これをやるかと いうのは、例えばそういうばらばらなさまざまな制度のもっと統一的な指針があるべきだとか、 あるいはそれに対して現代社会というものをバックにして、社会の構成員がそれに合意していく といいますか、それ以下の生活はさせないと考えるんだというような、何か明確なメッセージみ たいなものが最初にないと、何となくいろいろなことは言われているんだけれども、強い意味と いうのが伝わらないような気がしました。 ○伊奈川参事官 ほかいかがでございましょうか。  竹下先生。 ○竹下委員 今の岩田先生とか、それから駒村先生の話を聞いていて、なるほどというふうに少 し頭が整理できたわけですけれども、僕なんかどうしても生活保護にばかり目が向いてしまうこ とは狭いなというのはよくわかったので、非常に参考になったんですけれども、それを踏まえて も少し気になるのは、やはりこの研究会で僕は何かが転換する、あるいは現行の日本の社会保障 制度が欠けているものが、これによって何か充足されるというものが見えてくるというふうに期 待していたし―僕の力不足はちょっとあえて棚上げしますけれども―かつ、このミニマム研 究会によって報告されたものが、今後のそういう社会保障制度全般を統一的に考えるときに、貧 困というものは日本においてどういうふうにイメージされているかということが見えてくるとい うものになることが大事なのかなと思うんですね。  僕はどうしても生活保護に目が向いているということで、そこはごめんなさいですけれども、 小山進次郎さんが言った言葉だと思うけれども、僕は非常にわかりやすい指標として、例えば最 低生活の中身として、健康を維持できること。対面を維持できること。これはまさに自尊心の問 題ですよね。多少の余暇が楽しめる余裕。これは多分社会参加とか、生きがいというところを示 していると思うんですよね。  そういう意味で考えると、まさに健康と自尊心と生きがいということが維持できる内容を持っ て、貧困の脱却というのか、人間らしさの保障というのか、そういうふうに非常にわかりやすい 一つの指標だと僕は思って使ってきたんですけれども、そういう意味で、このミニマム研究会に よって報告される中身が、そういう日本において大きく貧困というもの、あるいはミニマムとし て日本が保障しようとしている憲法25条の中身が見えてくるものにぜひなることを、岩田先生に よる哲学も含めて、少しこの中間報告の中に盛り込めていけたらなというのが願望です。 ○伊奈川参事官 ほかはいかがでございましょうか。  駒村先生。 ○駒村委員 私もそのとおりで、やっぱり哲学、それからさらにはこの研究会で描いている目指 すべき社会というのは一体どういうものなのかというのを、少しやはり触れたほうがいいと思う んですね。新成長戦略でもGDPという数字だけの議論ではなくて、幸福の尺度みたいな、ある 意味、社会の質というか、社会を良質にしましょうという議論が出ていますので、やはり最初に 哲学及びその目指すべき社会というのをやはりうたって、その後、制度論―私先ほど横断的な 切り口というのがほしいと申し上げましたけれども、そういう構成にしていくと、新しさという かメッセージ性は出てくるのではないかなと思いました。 ○伊奈川参事官 ありがとうございます。 ○湯浅委員 ちょっと繰り返しになってしまいますが、先ほど貝塚さんのおっしゃられたことは、 まったくそのとおりだと思っていまして、やっぱり次の概算要求にセットする予定のものは具体 的に、それができないなと判断されているものは若干抽象的に書かれていると思うわけです。そ れはやっぱり厚労省としては、もうそれは当然そういうふうな書き方になるわけだけれども、や っぱりこのペーパーは確認ですけれども、厚労省のペーパーではなくて研究会の民間の人が集ま ったペーパーなので、やっぱりそこはそれにいろいろな若干非現実的な、あるいはちょっと中長 期的なものも含めて、書き込まれていいべきだと思うので、いろいろな文章の構成の入れかえと かそういうのも含めて、あるいは哲学を語ることも含めて、もう少し自由に書けるといいなと思 います。 ○伊奈川参事官 貝塚先生。 ○貝塚委員 ですから、今湯浅さんが言われたのは、普通お役所としてはそう考える。ただ問題 はだけれども、具体的にこういうふうに変えましょうという話があったときに、それを支えてい る考え方というのは重要であって、やっぱり考え方が、基本的な原則とか、あるいは考え方、こ ういうもので、場合によっては理想的にはこういうものであるけれども、まずはその中で取っか かりとして比較的最初の取っかかりとして、こういうものから着地していくという話が2か3つ ぐらいあって、それの後ろ側にいろいろ今まで検討したことの結果、こういう方向が望ましいん だけれども、とりあえずはこの提案とこの提案というのはいかがなものでしょうかという形で、 最後に要するに結びのところにやや具体的にこういう形にしたらどうですかというふうに、これ は最終報告書に近いと思うですけれども。だけれども、そういうふうにして、その背後にあるも のは、必ずしもいわゆる概算要求の普通のあれではなくて、もう少し考え方としてこういうもの が重要で、今までとはこういうふうに変えなくてはいけない。だけれども、最初の方向としては こういう制度を新しくつくれば、あるいは新しい要求をすれば、それはそれとしてそれなりの意 味がありますよというふうになっているのが一番いいのではないか。  多分、世の中でもやっぱりそういうふうに書いてあったほうが、従来の概算要求というのは過 去のいろいろ縛りがあるもので、なかなかそう簡単ではないんでしょうけれども、そこはブレー クスルーをして、考え方としてはブレークスルーするんですが、具体的な提案としてはこういう ものですよというふうになっていけばいいなというのは、これは私の希望というか、感触なんで すけれども。 ○伊奈川参事官 今、まとめ方についていろいろとご意見をいただきましたので、どうするかに ついてきょうのところの事務局としてのご提案としましては、例えば今もお話がありましたよう な、哲学的なところ、あるいはいろいろな新しいアイデア、もっとこういうふうに踏み込んだほ うがいいとかということについて、まずは先生方から文書でご意見をいただいて、それの内容次 第でございますけれども、余り事務局がそれをさらに無理をしてまとめるというよりは、それを 一たんちょっと整理をさせていただいたほうがいいのかなというふうに考えますので、ちょっと また改めましていつまでにということは事務的にご連絡したいと思いますけれども、さほど時間 をかけるというよりは、なるべく短期間の間にご意見をいただいて、そしてまたその意見の具合 によって、それをどういうふうに収斂させていくかについてご相談をさせていただくような形に したいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。  ちょっと時間の関係がございますので、とりあえずこの中間報告については以上とさせていた だきまして、残りの時間で雨宮委員からご指摘をいただいておりましたいろいろな調査の関係に ついて、残りの時間でご説明をさせていただきたいと思います。  資料2でございます。これは雨宮委員のほうから3月の頭のころの会のときに宿題としていた だいていたものでございます。いろいろとこういうデータはないのかといったような点、何点か ございまして、私ども関係局に依頼をしまして、私どもでわかる範囲でちょっとまとめてみたも のでございます。  まず、失業・ホームレスということでございまして、路上で病死されたり、あるいは凍死、餓 死される方といった方がどのぐらいいるのかといったような調査ということでございます。これ についてはここにもございます人口動態調査、この中で住所地不詳という形で把握ができるので はないかと考えております。そういう住所地がわからない方、注書きもしていますけれども、必 ずしもホームレス状態ではないかもしれませんけれども、とりあえずそういう定義で数字を拾っ てみますと、ここにございますような平成20年で病死の方が1,224、凍死の方が33、餓死の方が 1人いったような調査がございます。  次の住み込み就労の人数がどのぐらいかということでございまして、ここにもありますように、 こういう形は一たん失業すると路上に行かざるを得ないということで、どのぐらいいるのかとい うことを把握すべきということだろうと思います。この点に関しましては、毎月勤労統計調査の 特別調査という形で、通常の毎勤調査がたしか5人以上だったと思いますけれども、それより小 規模の1人から4人という事業所を対象にして調査をしておりますけれども、その中で把握がで きるわけでございます。それによりますと、黒ポツに書いてございますけれども、住み込み就労、 17万1,619人、このうち、家族以外の労働者ということになりますと、2万6,548人ということで ございます。ただ、この数字についても少し注意が必要でございまして、ここにありますのはア ンダーラインを付していますけれども、事業所の構内、または事業主の住宅内に住んでいて、常 態として給食を受けているということで、例えばアとかイに書いてあるような食費とか部屋代を 払っている方なんかは除いているということでございます。  2ページでございます。国民健康保険の無保険となっている大人の調査、また無保険の子ども は3万人以上、資格証が発行されていない大人を含めた調査はどうかということなんですけれど も、これは保険局の国民健康保険課のほうで把握している数字を載せてございます。滞納世帯数 がここにありますように、445万世帯ぐらいございまして、全世帯の20.8%、そのうち、短期被 保険者証が発行されている世帯が120万ぐらいということで、全世帯の5.6%、さらに資格証明書 というような形で償還払いになっている世帯が31万ぐらいということで、全体の1.4%というこ とでございます。  大きな2でございます。女性の関係のデータをちゃんと分けて出すべきではないかといったよ うなご依頼でございまして、まず最初がフリーターの定義に既婚女性も含めて統計をとることと いうことで、現在の定義ではここにもありますように、男性の場合は卒業者、そしてあと女性の 場合は卒業者でかつ未婚といったような定義になっております。そういったことからいいますと、 既婚女性がどのぐらいかということを出すことは可能でございまして、それでいきますと、労働 力調査の結果では既婚女性分が99万人といったようなことでございます。  次の3ページでございます。派遣の関係でございます。いろいろな形態、業種等々の男女別の 統計ということでございまして、ここでは平成20年の派遣労働者実態調査の関係のデータを並べ ております。  まず最初が、派遣の種類別の派遣労働者数の割合ということで、登録型と常用雇用型というふ うに分けてみますと、登録型は女性の割合が高いと。逆に男性ですと常用雇用型といったような 数字が出てまいります。また、派遣業態別の派遣労働者数の割合ということからいいますと、26 業務、それ以外の業務ということで並べてございますけれども、少し男女によって違いが見られ るかなということでございます。女性ですと事務用機器操作とか、ファイリング、あるいは一般 事務が比較的多いのに対して、男性の場合ですと物の製造といったところが多くなっているとい うことでございます。  4ページ、産業別の派遣労働者数ということでございまして、男性ですと製造業とかに対して、 女性の場合ですと卸売・小売業といったようなところが多くなっているのが読み取れるかと思い ます。また、技術・技能を修得した方法別の派遣労働者数の割合ということでございまして、一 番多いのは派遣中で就業中の技能蓄積というようなところかと思います。  次のパートタイム労働者、アルバイトの関係でございます。まず就業形態別の労働者数割合と いうことで、4ページの一番下ですけれども、正社員以外の労働者というところで、女性でござ いますとパートタイムというところが多くなっているのがわかるかと思います。  次の5ページになります。正社員と比較した賃金等、処遇面での意識別パートタイム労働者割 合ということで、特にここでは正社員と比較した賃金等処遇の面ということで、どういうふうに 評価されているか、納得できるかといったような点について見ておりまして、これも少し男女に よって違いが出ているかと思います。  次の契約期間を定める理由別の有期契約労働者数割合ということで、契約社員、嘱託社員、あ るいはパートタイマーといったような形で、この具体的な理由というのは分類をしているところ でございます。  次の6ページになりますけれども、毎月勤労統計調査の関係でございまして、この現金給与総 額、あるいは総労働時間数というのを男女別に載せているところでございます。  あと、下のほうの表は、学歴、性、年齢階級別の賃金、それの対前年増減率とか、あるいは年 齢階級間の賃金格差というもので見ておりまして、大卒あるいは院卒とか、高卒とかいう形で分 けております。詳細はごらんいただければと思います。  次の7ページでございます。これはひとり親家庭ということで、母子家庭、父子家庭、それの 年収とか、あとその理由別にいろいろとクロスさせたものがないかということでございまして、 ここにありますように、クロスさせたものが出せますけれども、ちょっとデータ数が少ないとい った点については留意が必要なんだろうと思います。データ的に見ますと、よく言われておりま すように、母子家庭の場合のほうがどういった理由かを問わず収入が低いといったようなところ が出てくるかと思います。  次の8ページでございますけれども、ひとり親家庭になった理由別の就業率ということで、こ れも母子世帯、父子世帯別に分けたものでございます。  一番最後、9ページは先ほど言いました国民健康保険関係の都道府県別の数字でございますの で、説明は省略したいと思います。  説明は以上でございますけれども、雨宮先生、何かございますでしょうか。 ○雨宮委員 いろいろ調べていただいてありがとうございました。本当にたくさん。  何点かあって、最初の失業・ホームレスのところの病死、凍死、餓死の下に、本統計における 住所地不詳という言葉があるんですけれども、住所地不詳の人自体の人数の統計とかというのは あるんでしょうかと思いました。もしこれがあれば、これって全くイコールではないにしても、 広義のホームレス状態にある人の数と結構近いかもしれないのかなと思ったので。  その次の住み込み就労なんですけれども、さっきお話にあったように、やっぱり仕事を失うと 住居を失う人の実態を知りたいので、これだと食費及び部屋代の双方を支払っている人はもう排 除されているので、例えば派遣会社借り上げアパートとかに住んで、もちろん食費というか自分 で食事をつくって食べていたりする人は排除されてしまって、派遣切りとかで失った人は入らな いので、もう少し広い範囲での、住み込みというか、寮ですらなかったりするので、請負とか派 遣会社が用意しているアパートとかは。そういうのも含めた調査がないのかなと思いました。  あと次に、女性なんですけれども、次のページですね。やっぱり既婚女性の扱いを今後どうし ていくかというのは、特に若い20代、30代の人だと、もう結婚しているけれども、両方アルバイ トだったり派遣だったりという人がふえていて、男性が養うというモデル自体がもう崩れている ので、今後フリーターに既婚女性をどう扱っていくかという問題は残ると思います。  あと、派遣労働者の男女別統計、3ページなんですけれども、ここに派遣切りとか雇いどめの 男女別の統計はあるんでしょうかという質問です。  あと、パート女性のうち、シングルマザーとか家計を担う女性の割合がわかる統計はあるんで しょうか。  あと、ひとり親家庭の男女別貧困率というものが、母子家庭、父子家庭別で出していただける とありがたいです。  あと、ひとり親家庭の進学希望、進学状況がわかる統計というのもあるとありがたいです。  あと、年金とかいろいろ障害者の方の問題とか、外国人、セクシャルマイノリティの方につい ても、この前質問させていただいたので、それなんかもわかりましたら回答をいただけるとあり がたいです。  そのぐらいです。ありがとうございます。 ○伊奈川参事官 きょうは担当の部局に来てもらっておりますので、今のご質問について、応え られる範囲で順番に答えてもらえればと思いますけれども。  まず、ホームレスの関係、住所地不詳について何か。  すみません。そうしましたら、いただいたものについてもまた次回までのちょっと宿題にさせ ていただくような形で、時間も来ておりますので、申しわけありません。 ○雨宮委員 ありがとうございます。 ○伊奈川参事官 ということで、ちょっと時間がまいりましたので、きょうはここまでとさせて いただきたいと思います。  次回の日程は今後の進み具合にもよりますけれども、一応6月18日金曜日、17時半から19時を 予定させていただいております。場所もきょうと同じこの省議室ということで考えておりますの で、よろしくお願いいたします。  どうもきょうは大変貴重な意見をいただきましてありがとうございました。 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7692) ダ)03−3595−2159