10/04/26 第5回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会議事録 職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会(第5回)                     日時 平成22年4月26日(月)                        14:00〜                     場所 経済産業省別館1111号室                      (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                               化学物質対策課 奥野                         〒100−8916                          東京都千代田区霞が関1−2−2                          TEL 03-5253-1111(内線5517)                          FAX 03-3502-1598 ○奥野安全専門官 本日は大変お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。定 刻より若干早いですが、委員の先生方にお集まりいただきましたので、ただいまより「第5回職場にお ける化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」を開催いたします。  本日は西野委員、山本委員からご欠席の連絡をいただいています。また、事務局の化学物質評価室 長の島田と環境改善室副主任中央労働衛生専門官の徳田が本日から出席させていただきますので、よ ろしくお願いいたします。  初めに資料の確認をさせていただきます。最初が議事次第、その裏が配付資料一覧となっておりま す。1頁は資料5-1「前回の議事概要」、5頁は資料5-2「論点の整理」です。資料番号のあとに再配付 と付いておりますが、これは前回までに提出させていただいた資料を再配付させていただいたもので す。6頁は資料5-3「有害物の規制の現状」、7頁は資料5-4「作業環境測定結果の評価について」、8 頁の資料5-5-1から10頁の資料5-5-3までが「個人サンプラーによる測定について」です。11頁の資 料5-6-1と12頁の資料5-6-2が「作業環境測定の結果の周知について」です。13頁から14頁は資料 5-7-1と5-7-2ですが、「局所排気装置の稼働要件」に関する資料です。15頁から16頁は資料5-8-1 と5-8-2ですが、局所排気装置以外の発散抑制方法」に関する資料です。資料としては以上です。落丁 等がありましたら、お気づきになり次第、事務局にお知らせくださいますようお願いいたします。そ れでは座長、よろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 議事に入る前に、「前回の議事概要」ということで、事務局から説明をお願いいたし ます。 ○奥村調査官 それでは資料5-1「第4回職場における化学物質管理のあり方に関する検討会の議事概 要」をご覧ください。4の議事概要ですが、まず(1)「ハザードコミュニケーションについて」。この 章では、前回の議論の総括を最初の数行に記載しています。譲渡提供者から譲渡提供先の事業者へ、 あるいは事業者から労働者へ、ラベルやMSDSにより情報伝達を促進するため、包括的な危険有害性周 知基準を作成する必要がある。一方、表示、MSDS対象物質の追加については、事業者の負担やスケジ ュールの問題、あるいはリスト化することへの問題等を踏まえ、引続き慎重に検討する。  個別の議論としましては、(1)すべての危険有害な化学物質についての情報提供を確立する。化学物 質の危険有害性の情報提供の仕組みが整備され、製造業者、輸入業者がGHS分類し、表示するようにな れば、副次的に一般の消費者まで危険有害性が幅広く伝えられることが期待される。そのため、労働 安全衛生法の部分だけでも情報提供の仕組みを作ることの意義は大きい。リスクアセスメントを実施 するには、化学物質の情報が必要であるが、危険有害な化学物質のすべてが表示、MSDS対象物質とな っているわけではないので、適切にリスクアセスメントを実施できない。  情報提供に罰則をつけるのは適当ではない。例えば、情報提供をしている事業場、していない事業 場の社名を公表するなどしてはどうか。MSDS通知対象物質以外であっても、譲渡提供先からMSDSを要 求された事業者は、MSDSを提供すべきという趣旨の規定を設けてはどうか。まず、中長期的な方向性 として、すべての危険有害な化学物質を表示、MSDS、事業場内表示対象とするということを明示する 必要がある。  (2)事業場内表示の導入は意義のあることだが、簡便な方法を認めるべき。事業場内表示の方法とし て、GHS情報に限らず、名前、絵表示、文字での絵表示の説明、区分等代替方法も表示してはどうか。 ラベルだけでもかなり長くなる。MSDS同様に、記載しきれない項目については事業場内に備え付ける としてはどうか。また、教育にも利用できるのではないか。  資料4-3-1について、以下の2点を考慮するべき。容器にラベルを貼付することが困難である場合、 GHSの勧告書に記載されている「GHSの代替手段」でもって対応する趣旨の文が記載されているが、本 文中に「GHSの代替手段」という言葉を明記してはどうか。事業場内表示については、事業者、労働者 に周知するに当たり、この内容だけでは、理解できず、細かい問い合わせ等で混乱することが懸念さ れる。ついては、本導入を円滑に行うために、事業者側も参画した形でのガイドラインの作成等を行 ってはどうか。  事業場内表示については、過剰な規制とならないよう、事業場の実情にあったフレキシビリティを 十分に検討するべき。他方、フレキシビリティについては、規制するべきところはきっちり規制した 上で論じるべき。現行規制で表示義務の対象となっている100物質については、製品にラベルが貼られ ているので、事業場内表示でも義務等をかけて導入がしやすいのではないか。雇入れ時、作業変更時 等に労働者教育が規定されているが、労働者は内容をよく覚えていないのが実情。そのような中で、 事業場内表示で労働者に情報提供を行うのは有効。  (3)MSDS物質の追加については、慎重に検討すべき。物質を指定する方法では、指定されたものだけ 守ればよいとなる傾向がある。物質をリスト化するよりも、むしろステージを固め、危険有害な物質 すべてについて情報提供をしていくという枠組みを固めるべき。現行のMSDS対象640物質は、科学的 根拠がしっかりしていて、また、ACGIH等が許容濃度を設定しており、リスク評価を適切に実施できる 物質である。科学的根拠の弱い物質まで追加するのは賛成しかねるが、許容濃度が新たに提案され、 あるいは国のリスク評価の対象とされた物質等しっかりとした理由がある物質については、コアとし てリストに追加することが必要かもしれない。  (4)GHS分類・情報提供の仕組みの普及・周知徹底への取組が必要。専門家、労働者教育を推進すべし。 その際には、絵表示の内容のみ教育するような初級を設ける等、複数のレベルの教育を実施すること も必要。事業者がGHS分類・情報提供を行うためのツールの研究と普及等、事業者への技術的な支援を することが必要。GHS分類の公表データや、自社データをどのように活用するのか等を示した指針やガ イドライン等が必要。アメリカの安全衛生庁のOSHAなど、各国の取組について情報収集し、事業場内 表示のフレキシビリティ等研究を進めることが必要。  (5)その他留意事項。混合物の表示・MSDSの規制に対応するために中小事業場は非常に苦労している。 混合物の分類、表示は純物質に比較して複雑であり、難易度が高いため、例えば、純物質から行い、 その後、混合物を行うなど、猶予期間を設けてはどうか。混合物の考え方について整理する必要があ る。中小事業場が規制をどう守っていくかについて、例えば、立入検査の際に教育、表示、MSDSを含 めた労働者への情報提供全体の仕組みをチェックするというやり方があれば、効果があがるのではな いか。  (2)「簡便な化学物質のリスクアセスメント手法(コントロール・バンディング)の導入について」。 コントロール・バンディングに関しては、リスクアセスメントを実施することが困難である中小規模 の事業者等に導入を進めていくことの意義が確認された。  (1)そもそもリスクアセスメントの意義が理解されていない。連合の組合役員にアンケート調査を実 施したが、リスクアセスメントを実施してどのような効果があるのかわからないという回答が多い。 組合役員でさえリスクアセスメントの意義が浸透していない。平成18年度に安衛法の改正でリスクア セスメントの考え方を導入してから、リスクアセスメントの知名度は上昇した。法改正の意義は大き い。  (2)リスクアセスメント普及のための取組、支援が必要。教育は重要であるが、どの層をターゲット にするのか明確にし、どういう内容の教育を行うのか具体化する必要がある。また、民間のみならず、 国の支援など必要ではないか。中災防や団体が行っているリスクアセスメント研修を拡充してほしい。 中災防が発行しているリスクアセスメントの研修テキストは内容が豊富で良いが、頁数を少なくし、 内容をコンパクトに、わかりやすくしたものを用意してはどうか。  (3)コントロール・バンディングの導入について。導入する場合、できるだけ中小事業場にとって、 また、新たな仕組みを導入し、負担面で屋上屋を重ねるだけという印象を回避する必要がある。その 意味で、横文字のコントロール・バンディングでは、なじみが薄く、わかりづらく、上記印象をぬぐ うことができない。イギリスやドイツのものを単にそのまま使うのではなく、内容を十分に咀嚼した 上で、日本の労働事情により合ったものを準備した上で、そのインセンティブをきちんと説明する必 要がある。  定量的なリスクアセスメントの実施が望ましいが、コントロール・バンディングを導入することで、 今までリスクアセスメントを実施してこなかった事業場でも実施することができ、対象の範囲が広が るという意義がある。英国のコントロール・バンディングは単純すぎるが、ドイツのコントロール・ バンディングは評価値との比較など定量的評価ができるなどメリットがある。リスクアセスメントを 実施している事業者には、例えば、ばく露防止対策について裁量を与える等の何らかのインセンティ ブを与える必要がある。英安全衛生庁(HSE)のコントロール・バンディングはわかりやすいが、現実 の測定データと比較すると非常に安全サイドの結果となることが多い。そのため、専門家へ相談でき る環境がないと現実には使いづらい。ところが日本にはそのような環境が整備されていない。  (3)「より柔軟な規制への見直し」。資料4-9について、安衛則第13条第1項第2号の専属産業医の 選仕要件が規定されているが、作業列挙、物質列挙での選任となっている。リスクで判断し対象の範 囲を決めてはどうか。安衛則第45条の特定業務従事者の健診の対象についてもリスク判断し、対象者 を絞り込めるのではないか。資料4-12について、産業医等についても作業環境測定結果が伝わるよう な仕組みが必要。検討の対象となる作業環境測定の範囲は化学物質に限定するが、ここでの議論は粉 じん対策を所管している労働衛生課にも伝達する。以上です。 ○名古屋座長 どうもありがとうございました。ただいまの説明につきましてご質問等ありますでし ょうか。よろしいでしょうか。もしまたお気づきの点がありましたら後日ということで結構だと思い ます。  では、本日の議題に入りたいと思います。前回までは「危険有害性情報の伝達・活用の促進」と、 もう1つは「自主的化学物質管理の促進」について、ご議論いただきました。この2点につきましては、 今後、報告書(案)の中で検討する際に確認していただくということで了解をいただきました。今回 は「より柔軟な規制への見直し」について検討していきたいと思います。事務局、説明をよろしくお 願いいたします。 ○半田化学物質対策課長 私からご説明申し上げます。資料5-2をご覧ください。これまでお示しした 論点の整理を再度お付けしています。大きくア、イ、ウ、エと4つ、主たる論点はア、イ、ウだったわ けですが、前回までにアの「危険有害性情報の伝達・活用の促進」、イの「自主的化学物質管理の促 進」としまして、コントロール・バンディング等を導入していこうという辺りまでは概ね合意が形成 されたかと思います。本日より、ウの「より柔軟な規制への見直し」ということでご検討をお願いし たいと思っております。  ここでは、(1)インセンティブの付与等による自主的管理の促進といった論点。  (2)測定のあり方に対して従来の場の測定方式に加えまして、個人サンプラーによる測定をどのよう に考えていくかご検討いただきたいと思います。  (3)作業環境測定、その結果の取扱いについてどのようにあるべきかというご議論をいただきたいと 思います。  (4)一部の屋外作業、例えば溶接作業あるいは建屋の塗装作業などでもそういうことがあろうかと思 いますが、屋外での測定、あるいはばく露防止をどのように考えていくべきかというようなことです。  (5)有害物質におけるばく露防止措置としましては、密閉装置、あるいは局所排気装置が主たる取組 となっていますが、局所排気装置につきまして、現在は稼働要件などの規制がされております。こう いったものをどう考えていくか。  (6)そもそも、密閉装置、局所排気装置といったもの以外の発散抑制措置をどのように考えて取り組 むべきかということです。それに関連いたしまして、専門人材の育成、外部機関の活用といったこと も論点になってくるだろうということで整理しています。  続きまして、6頁の資料5-3です。現在の有害物質の規制がどのようになっているか。有害物質の規 制と申し上げましても、有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、鉛中毒予防規則の3つに 限った形になりますが、概要をお示ししたのが資料5-3です。前回もお示ししましたが、少し書き直し ていますので、この形では初出ということになります。内容といたしまして、(1)「管理体制」。この 管理体制の中には、衛生管理者を置かなければならない、作業主任者の問題、作業主任者の養成のあ り方などについての規定があります。  (2)は今回の大きな論点になるわけですが、「作業環境測定」です。現行の規制では屋内作業場のみ ということになっています。この測定結果に基づきまして、設備改善などの措置を実施することにな っています。作業環境測定結果の取扱いとしましては、結果の記録です。物質によりまして、5年ない し30年と幅がありますが、一定の期間、保存していただくようになっています。  (3)はもう1つ大きな観点の「設備」ですが、先ほど申し上げましたように、基本的には密閉設備、あ るいは局所排気装置の設置が謳われています。特にこの局所排気装置が非常に大きなところを占めて います。この局所排気装置に関しましては、次の「換気装置の性能」で書いていますが、有機溶剤で あれば、制御風速、特定化学物質や鉛などでは抑制濃度を定め、この稼働要件を定めています。  局所排気装置の設置を通じまして、環境をより良くしていくことが基本原則なのですが、いまの規 定でも若干の代替手段が認められています。例えば有機溶剤を扱う場合のエアカーテン、あるいは有 機溶剤の上に水を浮かべるなどいたしまして、有機溶剤の発散を抑制する。こういった代替手段を規 定しています。このほかにも、特定化学物質と障害予防規則では、いくつかの作業を取り上げまして、 この作業に関してはこういうやり方でもいいですよというものを、いわばポジティブリスト的に書い ていますが、原則はこの局所排気装置の設置、一定の性能要件を持ったものを設置して、一定の稼働 要件のもとで動かしなさいという規定になっています。  続きまして(4)「保護具」です。これに関しましては、呼吸用保護具、保護衣を備え付け、必要に応 じてこれを使っていただくということを書いています。呼吸用保護具と申しますのは、一般的には固 形物質でしたら防じんマスク、揮発性のガス様のものでしたら防毒マスクといったものがあります。  以上の対策がいわば作業環境管理、あるいは作業管理に関するものですが、有害物質による健康障 害を防止するため、もう1つの柱が「健康診断」、健康管理です。これはそれぞれ特殊健康診断が定め られています。その結果に基づいて、必要な措置、就業場所の変更、保健指導、あるいはその健診結 果につきましては、行政機関への報告、労働者への周知、結果の記録などが定められています。  続きまして7頁の資料5-4です。資料5-4、5-5-1、5-5-2、5-5-3の4つを使いまして、特に測定の 部分についてご説明をさせていただきます。資料5-4ですが、ざっくり申しますと、2つ目の欄ですが、 作業環境の測定を実施していただきます。その結果に基づきまして、この作業場の管理区分を決定し ていただきます。  第1、第2、第3とありますが、第1であれば作業場のほとんどの場所で、有害物の気中濃度が管理 濃度を超えない状態ということですので、健康障害を起こす危険性は極めて少ないと判断されます。 そういった所は、現在の状況を継続するように努力していただきます。第2管理区分、第3管理区分に なると、これは悪いということになるわけですが、第2管理区分ですと、気中濃度の物質の平均が管理 濃度を超えない状態。第3管理区分ですと、気中の有害物質の濃度の平均が管理濃度を超える状態。平 たく言うと、第2のほうがやや悪い、第3のほうがうんと悪いということになるわけですが、第2管理 区分でありましたらば、必要な改善措置を行っていただく。第3管理区分ですと、かなり気中濃度が高 いですので、改善はもちろんしていただくのですが、改善をするまでの間に、有効な呼吸用保護具、 先ほど申し上げました防毒マスク、防じんマスクを着用させるような措置を講じていただく。いずれ にしましても、最終的には設備を改善して環境の改善に努めていただくという仕組みになっています。  続きまして8頁の資料5-5-1をご覧ください。作業環境測定と申し上げましたが、この絵で申し上げ ますと、左側の欄です。A測定、B測定と分かれています。A測定は単位作業場所の平均的な状態を調 べるために、この作業場の中の点をいくつか取りまして測定をします。B測定というのは、局所的、あ るいはごく瞬間的に高濃度になる場合がありますが、もっとも高濃度になる場合、あるいはなる時間 にその場所で測定を行う。作業者が呼吸しうるもっとも濃度が高くなると考えられる点を測定すると いうことです。いずれも10分以上のサンプリングをやっていただきます。  その特徴ですが、その下に書いてありますように、ある点の模式的な気中の濃度の変化を示してい るわけです。高くなったり低くなったり凸凹があるわけですが、B測定というのは、いちばん山の高い ところを捉えて測っていただくと。A測定というのは、それ以外のところを平均的に測っていただくと いうことで、幅がある棒が並んでいますが、そういう格好で測定をしていただくことになります。こ ういった測定の結果を使いまして、「評価の概要」に書いてありますように、幾何平均値などを取り まして、作業場所の評価をしていただくという仕組みです。A測定、B測定は、私どもがいまお願いし ております作業環境測定の標準的なやり方です。  これに対しまして、個人サンプラーによる測定です。右側の欄です。この絵ではわかりづらいかも しれませんが、作業者の方の胸ポケットの上に丸いものが見えていますが、こういう所でサンプリン グをいたします。これでサンプリングするためには、ポンプ、ポンプを回すモーター、電池などが必 要になりまして、左側の絵に弁当箱の大きいようなものがありますが、こういった物を付けてやって いただくということになります。通常、数時間から8時間、作業時間中これを稼働させまして、サンプ リングを行います。この特徴といたしまして、ばく露を受けやすい作業者が把握でき、作業管理の改 善にも有効であろうと。下の絵に凸凹のところがありますが、この全体を基本的に測っているという ことになります。  いくつかの物質について最近はリアルタイムモニターのようなものもできていますが、基本的には 大体この測定期間の積分値、稼働時間中に吸着したものを測りますので、平均的な濃度が測れるとい うことになります。評価方法の概要といたしましては、NIOSHの評価方法が参考になるかと思いますが、 最大のばく露を受けると思われる労働者のばく露濃度を測定しまして、アクションレベル、通常は許 容濃度の2分の1となっていますが、これを超える方がいらっしゃる場合には、対象者を拡大してばく 露濃度を測定する。そしてさらにばく露の限界値を上回っている者がいれば、作業環境の改善を行う というような仕組みです。  そういった中で、個人サンプラーによる測定の導入をどのように考えていくかということで、9頁の 資料5-5-2です。私どもが現在実施している場の測定方式といいますのは決して簡単ではありませんが、 いわゆる個人サンプラー方式に比べると、比較的簡単に測定ができるということです。そういったこ とで、我が国の作業環境測定は、世界比較でもかなり良いというように理解していますが、この測定 方法の効用もあったのではないかと考えております。しかし、やはりこういった方式での限界点も見 えてきています。それは、点線にかかっていますけれども、有害物の発散又は労働者のばく露が1日に 数回しかなく、それ以外は無視できるような低濃度であったとしましても、A測定、B測定を行います と、過度に有害な作業場として評価されて、設備の改善などに過剰なものが求められることもあると いうことです。  1つの例としまして、酢酸ビニルポリマーの合成樹脂接着剤製造の製品開発室における製品開発作業 を挙げていますが、A測定ですと28.2ppmですけれども、個人サンプラーで実際にその作業員の方が吸 う可能性のある呼吸域の気中濃度を継続して測りますと、2.91ppmということで、許容濃度の3分の1 程度だったのですが、A測定ではこれをはるかに超える数値が出てきてしまう。このようなことも起こ り得るということです。  もう少し補足しますと、もともと作業環境測定が想定されましたときには、製造現場での定常的な 作業、常に同じ物を扱っていないにしても、例えばメッキ作業などでこれからメッキしようというも のを薬液に付ける、取り出す、乾かす、こういった工程を1日8時間繰り返しているような作業が定常 的に行われているようなものが想定されていたわけです。労使のご努力にもよりまして、最近いろい ろな施設が密閉化あるいはライン化、自動化が進んでいまして、あまり人がばく露されるような作業 がなくなってきています。  ごくたまに、何かの原材料の投入や、生産ラインがストップしたときのメンテナンスで、一瞬、機 械を開けるようなことがあるわけですが、そういうときだけしかばく露しないのです。先ほど申し上 げましたが、A測定、B測定の利用になっていますので、基本的にはきれいなのだけれども、ごくたま に変わった作業をやるようなところがありますと、たちまち評価上は第2、第3管理区分に下がってし まうということが起こり得るわけです。  もう1つの問題点は、先ほどのA測定、B測定の原理からしておわかりいただけるかと思いますが、 点を定めてやりますので、屋外作業場では測定ができません。もちろん測定してもいいのですが、屋 外では空気の流れがありますので、何を測っているのかよくわからないということになってしまうわ けです。  そういう点から考えますと、個人サンプラーであれば基本的には作業者の方の呼吸域の空気を採っ ておりますので、より作業者のばく露される空気の濃度を把握することができるであろうと期待でき るわけです。  こういうことで、個人サンプラーの測定を導入してはどうだろうかと考えるわけですが、それに対 しましてはいくつかの課題があります。実際の評価基準をどのように定めていくのか。あるいはそれ 以前に、測定基準をどう定めていくのか。単純に申し上げれば、測定し、その結果を許容濃度と比較 すればよいということなのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、屋外ですと、空気中の 変動が非常に大きいので、こういったものをどう評価していくのか。今日は非常に高かったけれども 明日は全然問題ないと、こういうことが起こるわけです。その辺りをどのようにしていくのかという ことで、技術的な検討や、評価基準の策定に当たっての専門家によるご検討が必要かと存じます。そ れから、こういったことを行うためには、個人サンプラー測定を行えるような測定士の養成をどのよ うにやっていくのか、こういった課題もあろうかと思います。こういった中で、先ほどのような課題 をどのようにしたらよいかということです。  10頁の資料5-5-3、「個人サンプラーによる具体的な測定の方法」ということで、左側にNIOSHのサ ンプリングマニュアル、右側にはヨーロッパ、EUのEN規格についての考え方をそれぞれお示ししてい ます。詳しくは必要があればまたご説明させていただきたいと思います。以上、資料5-5-3までの説明 を終わらせていただきます。 ○名古屋座長 どうもありがとうございました。ここでは個人サンプラーによる測定のところで、5- 5-2のところは個人サンプラーの測定の導入をどうするかという考え方だと思います。場の測定ではイ レギュラーしてしまうものを、個人ばく露をすくうことによってできるのではないか、というような ことのお話だと思いますが、これに対していかがでしょうか。  ちょっと質問してよろしいですか。個人サンプラーを使ったときに2つの評価方法があって、個人サ ンプラーを使った方法で、(8時間あたりの)個人ばく露濃度として評価する方法と、(短時間の)ば く露濃度とする評価法がありますね。ということは何かと個人サンプラーを使って、個人ばく露濃度 を測定するときに8時間の測定ですよね。ところが個人サンプラーを使ってばく露濃度を測定するとい うことになると、これは屋外ガイドラインの測定ですから、10分以上の継続した測定ですから、同じ 個人サンプラーを使っても、測定の時間によって評価方法は違うのだけれども、ここではその2つに対 して考えてよろしいのですか。 ○半田化学物質対策課長 その2つの方法があるのは承知していますが、それも含めてどういう方法が いちばんよろしいのかと。さらに申し上げますと、いま先生にご指摘いただいた、いわゆる屋外測定 のガイドラインでお示ししているやり方もあれば、前段はどちらかというとNIOSHのやり方かと思いま すが、そういったやり方もありますし、それから現実の作業を見ていますと、8時間のうち3時間くら いそういう作業があるけれど、あと5時間は全然違う作業というようなこともあるので、まさにそうい うときの測定基準と評価基準をどう定めるのか。 ○名古屋座長 だから、この事例に書いてあるように、確かにこのとおりやって、屋外ガイドライン でなく個人サンプラーを使って8時間測定すると2.91という形になりますよね。 ○半田化学物質対策課長 はい。 ○名古屋座長 だから安全というのではなくて、例えばこれは屋外ガイドラインでやると、間違いな く管理しなさいと引っかかるわけですね。だから評価によって引っかかったり引っかからなかったり ということがあって、たぶんこのような、例えば個人ばく露で8時間やると、過小評価する可能性がい くらでもあるわけですよね。短い時間でやって、残り時間はやらないと評価していますから、その時 間は評価方法を、要するにゼロとして扱うわけですか。 ○半田化学物質対策課長 はい。 ○名古屋座長 そうすると、逆に言うと本当は危ないところで作業をしているのだけれども、逆にこ の評価方法を使うことによって、作業者はすごいばく露をしている可能性がありますよ、ということ になるので、だから個人サンプラーの使い方というのは、そこをちゃんとしないと難しいのかなと。  だから個人サンプラーというのは、要するにその2つの考え方を1つ入れて、どう導入するかという ことを考えればいいということですね、基本的には。よろしいですか。 ○半田化学物質対策課長 はい。 ○名古屋座長 わかりました。では、どうでしょうか。何かありますか。 ○半田化学物質対策課長 よろしいですか。そういうことですので、今回ここでご議論いただきたい と思っているのは、どういう個人サンプラーを使って、どういう測定基準、どういう評価基準である べきかというところまでの結論をいただくのは、ちょっと無理かと存じますので、そういう検討を進 めていくことの是非、あるいは進めていくに当たっての留意点などを、お示しいただければありがた く存じます。 ○名古屋座長 わかりました、ありがとうございます。何かご意見等はありますか。どちらの方法も、 それぞれ一長一短があって、それぞれ利点と欠点を持っている方法ですから、両方併記して、2つ合わ せて測定されるほうがいいのだと思いますが、いまのところ個人サンプラーによる測定というのは導 入されておりませんので、この際こういうことを考えて導入したらどうかということではないかと思 います。どうでしょう。 ○塩崎委員 いま座長のご指摘どおりだと思います。やはり場の測定のデータと、個人のサンプラー 測定データをどう使うかということは、かなりきちんとしておかないといけないと思いますし、いま まで場の測定でずっとやってきたものですから、移行についてはかなり慎重にやらないと、混乱が起 こるのではないかと考えます。データの解釈等も含めて、そのように思いますので、実際に進めてい く時には、その辺を十分に留意すべきではないかと思います。 ○豊田委員 以前も個人サンプラーの導入の考え方について確認したと思うのですが、従来のA測定、 B測定の不具合のところを、個人サンプラーで補うというのは理解できます。そういった観点にたって、 従前のA測定とB測定は保持した上で個人サンプラーを追加したときの運用としては、事業者側が自分 たちの労働実態及び環境に基づいて、自主的に選択できるようにすべきと思います。個人サンプラー の測定が強制されてしまうと事業者が内容を理解できないまま、また新たな測定を強いられるという ことにもなりかねないので、そういうことがないように、運用面でやはりその点に留意する必要があ ると思います。  だから、最終的に自分たちの労働実態に基づいて、できるだけ事業者側が柔軟に選択できる仕組み のほうがいいと思います。 ○名古屋座長 ありがとうございます。他によろしいでしょうか。 ○橋本委員 個人ばく露測定を導入していくこと自体については、私は賛成なわけですが、私は海外 の弊社の関連事業場の者ともよく話をするのですが、ご存じのように欧米では個人ばく露測定中心で やっています。それで、彼らの意見を聞いたりしたことも何度もありますが、場の測定を決して否定 するわけではないのです。だから先ほどもお話があったように、定常的な作業で、1日そこで同じよう な作業をするような環境、そういう所ではもちろん適しているわけです。だから、それは決して否定 はしていない。  ただ、例でもありましたように、移動する作業ですとか、作業内容が変化する場合とか、あるいは 発生源に近づいたり離れたり、そういう変化があるような場合。そういうときなどは結局、個人ばく 露測定というのは呼吸域に近い所で体内に入ってくる濃度のシミュレーションをしている、そういう 状態なわけですから、それをやらないで、どうやって本当のばく露がわかるのかという疑問を出され たことが、よくあるのです。それはもっともだと思うのです。  ですから、やはり日本でも今回こういうテーマが上がりましたので、是非導入する方向にして、例 えばこの先10年、20年後も場の測定しかしていないというようなことですと、やはり海外のそういう 技術的なレベルの点から見ても、一体本当に評価できているのだろうかという疑問が、いつまでも残 ってしまうと思うのです。  ですから、場の測定と選択できるとか、そういう柔軟性というのは大事だと思うのですが、是非導 入していく方向で検討することが大事だろうと、基本的に思っています。 ○名古屋座長 ありがとうございます。座長としてではなくて、個人的にお話させていただければ、 本来65条の測定、作業環境A測定、B測定というのは、要するに作業者ではなくて、施設がちゃんと しているかどうか、第1管理区分が維持できるかどうか確認するための測定で、維持していればそこ で働いている作業者の健康影響はないだろうという前提です。だから、そうするとその中には個人ば く露によって、要するに健康影響しているかどうか把握しているわけではないわけです。だから65条 の測定をして、施設整備がきちんとしている、その次に個人ばく露濃度を測って、この状態だったら 作業者は個人ばく露を測っても大丈夫なんだよという持っていき方が1つあるのかなと思います。ただ、 そのためには何があるかというと、いま言ったように新しい測定方法を加えるということは、事業主 にとってものすごく負荷がかかることですから、そこに初めてリスク評価という話が出てくるのだと 思うのです。  なぜリスク評価をするかというと、リスク評価をすることによって、要するに規制緩和ができるわ けです。いまの規制緩和というのは、たぶん後で出てくるのだと思いますが、いまはリスク評価をし て安全だよと言っても、何のメリットもないわけですよね。要するに測定して良くなったよ、でも測 定しなくていいか、測定の回数を減らしていいかといっても、何もないわけで、要するに良くなって も、それは続けなければいけない。だから初めてそうなったときに、リスク評価をしてOKだよと言っ たときに、規制緩和をしてくれて、測定はいいから、1年に1回でもいいよという形だとか、あるいは 制御風速を外したりとか、要するにいまかかっている、そういう規制を外してくれるのだったら、た ぶんばく露濃度測定をする意味が出てくるのですが、いまのところ負荷だけかけてくれて、そしてそ の後に何のメリットもないという法体系になっていると、やはり進んでいかないのかなということで はないか。やはり測定する意味というのは、健康をそれで維持するということはものすごく大切なの ですが、それは負荷だけかかっていて、せっかくそれだけ投資してやっても、それに対する見返りが ないというのが、いまの法体系だと思うので、そこのところを合わせていただけると、たぶん今の形 の場の測定、ばく露濃度測定という形のものが進んでいくのではないかと、いつも個人的には思って います。  個人サンプラーを導入することには、たぶんある意味で作業者の実態を把握するという意味では、 大切な測定ではないかなと、個人的には思います。ただ1つあるのは、技術的に、確かにNIOSHだとか、 OSHAの規格が出ているのですが、ただしこれを運用するための評価方法というのは、ここに「導入上 の留意点」と書いてある、この2番目のところがいちばん難しいのではないかという気がします。  だから、たぶんこれを測定することになると、65条と同じような形でばく露濃度測定するためには、 どういう測定方法で、どういう基準で、どういう評価方法にしましょうか、という形のところを作っ ていかないと、なかなか難しいのではないかな。橋本委員は認定インダストリアルハイジニストとい うアメリカの資格を持っていますから、たぶん、そういう資格の方がアメリカの場合はやられている から、ばく露濃度測定しても十分対応できますが、日本は残念ながらそういう資格がなくて、場の測 定の資格しかないですから、測定者のレベルが高いところはできるのだと思いますが、やはりそこの ところを上手くきちんと法体系で、個人サンプラーを導入するために、そういうきちんとした法体系 を持つと同時に、やはり測定方法の評価方法も決めてあげないといけないのではないかなと、ちょっ と個人的には思っています。他に何かありますか。 ○城内委員 いま委員の皆さんが言葉を変えて、いろいろご意見を述べられた事とそんなに違わない のですが、A測定、B測定で作業環境測定をやってくるに当たっては、いろいろな理由づけをしてきた わけです。それはそれでよかったと思うのですが、個人サンプラーを使う場合には、特に発癌性物質 みたいなものの評価をどうするかというのを、ちゃんと指針を出すというか、値を出さないと、たぶ ん評価ができなくなる、評価のしようがなくなると思います。基準値に対する考え方というものを、 日本ではどうするのか。それは現在まで使われてきた管理濃度の考え方でいいのか、そうではなくて 許容限界みたいなものを使うのかというところをちゃんと決めないと、サンプリング方法だけを変え ても、評価がなかなか難しくなるかなと思います。以上です。 ○名古屋座長 ありがとうございます。他にどなたかありますか。 ○橋本委員 健康管理との関係でいきますと、個人ばく露測定をして、それでばく露が高ければ特殊 健康診断、健康管理の対策を講じる。例えばこういうのはアメリカのOSHAのほうでも、アクションレ ベルというばく露限界値の2分の1を超えたら、健康診断を考えろと、そのように決まっているわけで すが、作業環境測定のほうは実際の身体へのばく露と直接関係がないということもあると思うのです が、健康管理との関連性がないわけです。  そういう意味では、個人ばく露測定を導入していくと、それのリスクに応じて特殊健診の対象者が 選べるというような、そういうばく露と健康影響という、まさにそこの繋がりのところが評価できる ということになりますので、そういう面でも、良い面での発展の可能性があると思っています。 ○名古屋座長 ありがとうございました。そう思います。 ○豊田委員 先ほど名古屋先生がおっしゃったように、これはやはりベースにリスク評価があると思 うのです。それによって、結果いかんでは規制緩和にできますよと、それが事業者にとっての1つのイ ンセンティブだと思うのです。そういったところも、やはりこれ個人ばく露測定を説明する際には強 調していただいて、やったほうがいいのではないかと思います。 ○名古屋座長 ありがとうございます。皆さん、大きな会社のところは測定をどんどんされているの ですが、なかなか測定することに対して、ずっと継続的に、せっかくこれだけ投資して、たぶんそれ はコストにかかってくるのだと思うのですが、比較的そのようにされても、改善されても、なかなか お駄賃がもらえないというところが、たぶんいまの法体系ではないかと思っている部分があって、せ っかくリスクを評価するのですから、それが測定だとかそういうことに反映できれば嬉しいと思って います。他によろしいでしょうか。  そうしましたら、また続いて議論していきたいと思うので、ここのところは若干納めさせていただ いて、次に資料5-6-1ということで、作業環境測定結果の取扱いという、これは作業者にとって測定す ることもよくわかりますが、その測定結果がどう反映されるのかという、その結果の取扱いだと思い ます。これも事務局のほうからよろしくお願いします。 ○奥村調査官 それでは資料に則してご説明します。なお、これから申し上げる資料に則した項目は、 これまでに労働衛生の専門家ですとか事業場から、ご要望、ご意見を承ったものを事務局で整理して、 まとめたというものです。これ以外はこの委員会で取り上げないということではなく、それ以外であ っても本日のテーマが終了した後、あるいは後日、いろいろな意見をいただければと思っています。  まず資料5-6-1ですが、「作業環境測定の結果の取扱いについて」、左手に現行の作業環境測定から 結果の取扱いの流れが示されています。記載するときには記録を評価、結果を記録していくというと ころまでしかない。課題としては、全ての労働者が自らの作業環境の状況を知りたいと思っても、容 易に知り得る仕組みにはなっていない。小規模事業場においては衛生委員会が置かれていないので、 そもそも知る機会が与えられていないという問題があります。このため、自らの作業環境測定の状況 を知らないまま作業をして、有害物を取り扱う作業をして、健康障害を受けるおそれがあるという状 況にあります。見直しの方向性としては、作業環境測定の結果を労働者に周知する仕組みが必要では ないかと。そういうことを導入すると、事業者による作業環境の改善もより活性化するはずですし、 労働者の保護具着用もきちんと守られるように、規定の遵守の効果が期待できると考えています。  資料の12頁ですが、その周知の内容です。「周知のあり方」と書いてありますが、まず、例として 事業場の見やすい場所への掲示、その他、労働者が容易に取り出せる場所へのファイルの備え付けな どで、情報提供することが可能ではないかと。堀江先生にご意見をいただきましたように、産業医に 対する情報提供を促す何らかの仕組みが必要ではないかとも考えています。  掲示の内容ですが、物質名を挙げて何ppmと書かれても理解できませんので、それが評価された結果 を第1管理区分で「良好な作業場である」、あるいは第3管理区分で「ただちに作業設備の改善が必要 な状況である」というのがわかるような、そういう評価結果を表示することが必要ではないかと考え ています。  測定がA測定、B測定ではなく、個人サンプラーによる測定で行われた場合には、その対象者に「あ なたの結果はこうでした」という結果を通知する仕組みが必要ではないかと考えています。この点に 関してはILO156号勧告、1977年の古い勧告におきまして、労働者には結果を知らせる機会が与えられ るべきであると規定されています。アメリカのOSHAにも、規則には労働者へ通知するという規定が書 いてあります。以上です。 ○名古屋座長 どうもありがとうございました。いまの説明について、何かご質問等はありますか。 周知徹底する方法は素晴らしいことかなと思いまして、日本にはこの法がなかったので、たぶん屋外 ガイドラインを作ったときには、その測定結果は作業者に必ず伝えなさいというのが出ているだけで、 あとはたぶんなかったと思いますが、こういうせっかく測定した結果を、そこで働いている人に知ら せるということは、いいことかなと思います。 ○豊田委員 この趣旨はいいと思うのですが、ただ、慎重にやらないと誤解を受ける点もあるのでは ないかという気がします。特に今、時代の流れとしてはリスク評価とか、そういう方向になっている という観点にたちますと、この結果リスク評価結果というのを作業者に伝達とか周知する場合には、 ある意味で「リスクコミュニケーション」という観点でもって、誤った情報を与えないように丁寧に、 かつ慎重にやらなければいけないと思います。そういうリスクコミュニケーションという観点を、特 にこの種の通知というときには取り入れて、慎重に行っていただきたい。 ○塩崎委員 2点ほど申し上げたいと思います。まず第1点目として結果の伝達周知については、現在 でもここに書いてありますように、衛生委員会のある組織については、私は既にやられているのでは ないかと思います。それで、50人以下の衛生委員会がない事業場などに対象を絞って、周知のあり方 を考えたほうがいいのではないかと、すなわちケースによって分けて考えたほうがいいのではないか という気がしているのですが、その点がどうかというのが1つです。  2点目は、これは前回いろいろご議論の中で出てきて、また資料中にも記載されていますが、産業医 への周知についてです。関連する条文等を調べてみたのですが、規則の14条の第1項には「作業環境 の維持・管理に関すること」が定められていますし、それに関する通達が出ていたと思います。私が 調べた範囲では、昭和63年9月16日の基発第602号には、「有害物質、濃度、湿度等に関する労働衛 生関係設備の適切な維持管理、作業環境測定、その結果の評価及びその評価に基づく事後措置に関す ること等」ということが、産業医の職務として示されています。新たに何か追加する必要があるので しょうか。そこが少し疑問に感じている点です。 ○堀江委員 ただいまの塩崎委員からのお話ですが、作業環境測定と健康診断というものを2つ対比し て考えますと、かなり仕組みが違っていまして、健康診断の結果であれば、その中で有所見だったも のについて、きちんと事業者は「医師の意見を聴かなければならない」と規定されています。「医 師」と書いてありますが、産業医がいるところでは当然産業医に意見を、事業者が聞くということに なっています。  作業環境測定の結果については、現在、そのような規定はないのですが、私は、管理区分が2あるい は3というものであれば、事業者が産業医の意見を聴くという規定があってもよいのではないかと思い ます。  ご指摘のように、たしか昭和47年9月18日の通達のことだと思うのですが、かなり古いといいます か、安衛法が出来たときには確かに包括的にそういう通知もなされているのですが、その後、作業環 境測定に関しては、健康診断と対比して、制度の発展がやや遅れたために、健康診断とは少し違いが 出てきているのかなと思います。  その通達が出たときには、まだ測定基準の告示もない時代でした。その後、測定基準及び評価基準 の告示も出ておりますので、これらに基づいた作業環境測定の結果を利用して、より詳細な情報が医 師に伝われば、作業環境の改善が一層図られることになるのかなと思っています。  それとは関係のないことで、もう1つよろしいですか。その前の豊田委員からのご意見は、私もその とおりだと思っています。作業環境測定の結果の周知というのは、極めて重要なことでやっていくべ きだと思うのですが、同時に考えておかなければならないのは、もしこれが悪い測定結果だったとき に、どのように周知・説明するのかというところを考えておくことが、とても大切と考えます。すな わち、リスクコミュニケーションの適切なあり方を考えることです。  健康診断であっても、結果が悪かった場合には、医師としてそれをどうしたらいいか、それは治療 が必要なのか、あるいは生活習慣の改善が必要なのかということを、併せて言うわけです。作業環境 測定の場合も、専門職が、リスク低減措置のあり方について、ある程度の選択肢を与えていくといい ますか、例えばこの値であればこういった方法があるということまで、ある程度、本来は説明すべき ではないかと思っています。もちろんそれを実施するかどうかは事業者の責任ですが、やはり何をす ればいいのかというところまでリスクアセスメントの範囲に入っていて、何をするか、リスク低減措 置として何が考えられるかということまでは、やはり専門家が提示していくところまでやらないと、 周知というものが逆に混乱を招くことになりはしないかと思いました。 ○名古屋座長 たぶん安全衛生委員会の中では報告があったとしても、そこのところまで詳しく議論 していけるようなシステムには、なっているところとなっていないところがあるのだと思いますが、 いま先生が言われたような形で、結果が悪かったとしても、要するにこういう結果でリスク評価して いったらこうだよと。だから現状が悪くても、こうすると良くなるよというような議論を活発化して いって、そこで皆さんの共通認識としていって、環境改善、あるいは作業者の健康影響ということを 考えていける場になればいいということですよね。いまのところ、そのようになっているところもあ るでしょう。 ○堀江委員 もっと包括的にとらえれば、労働安全衛生法の第2条第4号で規定されている「作業環境 測定」の定義は、デザイン、サンプリング、分析となっていて、改善あるいはリスク低減措置の提案 ということまで入ってないので、そこのところが専門家の仕事として、どうも日本で定着していない 理由の1つかなと思います。 ○名古屋座長 ときどき思うのですが、たぶん65条の測定というのは管理区分1を確認するための測 定であるのに、ときどき事業場へ行くと、半年の測定の中で管理区分2、2と続いているところがある。 2が続いたらすぐに直して、1になったときに確認するのが65条なのですが、その65条の測定を定期 的にやっていることが作業環境測定と思っている、間違って考えている事業主さんが結構いらっしゃ る。そうではなくて、やはりあくまでも65条の測定というのは、第1管理区分になったときに初めて、 定期的な繰り返し測定をして、第1管理区分になったことを確認する測定なのですが、その辺のところ がちょっと上手く伝わりきれていないのかなという。測定しているということだけが65条と思われて いる部分がなきにしもあらずかなと、ときどき思うことがあります。  いずれにしても、せっかくお金をかけて測定した評価なのですから、それを共通認識として持って、 それを健康影響だとか管理という形に使ってもらう方法として、表示というのはどうなのでしょうか。 いい方法ではあるのでしょうか。 ○福岡委員 11頁の課題の真ん中に、衛生委員会の設置義務のない小規模事業場と、これは50人未満 の事業場を指していると思うのですが、50人未満で10人以上のところは、労働者の意見を聴く機会の 設定という義務づけがあったと思うのです。労働者の意見を聞く機会の設定というルールがあって、 それは衛生責任者とか会社に資格の人がいるのが関係なしに届出もいらないわけですが、そういう場 の設定という義務づけがありまして、そこでいろいろ意見交換をしなさい、するような場を作りなさ いという要請があるのが1つですね。  その辺をちょっと確認された上で、この部分をどのように理解するか。このままだと50人未満は、 いまのままだと駄目だ、全然情報が行かないということで、私はいまの法体系は必ずしもそうでもな いように思いますので、その点を確認したいと思います。  それからもう1つは、前回もあったのですが化学物質のリスクアセスメントに関しては、前回申し上 げたように規模とか業種の括りがないわけですので、50人未満であろうとやることが義務づけになっ ているわけですね。それとの絡みを、これはどのように考えているのかと言われたら、ちょっと何か 抜けがあるような感じがします。  それで、あとの1点です。つまり小規模事業場でも、実は法的にはそういうのを抱えているところが あるので、それをどうやったらもっと実効のあるものにするかという、そんな考え方が1つあるのでは ないかと、そんな感じがします。  それから、もう1つは12頁で「作業環境測定の結果の周知」という話ですが、どうも衛生管理の辺 りでは、ただ健康診断の結果などは、個人の名前が出るとプライバシーが絡むというようなことで、 なかなかオープンの場で議論できないというのがあるのだろうと思うのですが、例えば個人サンプラ ーを使って測定した場合は、その人個人の情報ではないし、その職場のリスクの程度を示す大事な情 報ですから、それは当然公開するべきだろうし、それは安全衛生委員会の議題に取り上げて、自分の 事業場のこの作業はこんな状況だというのを知らせることは、大事なリスクコミュニケーションのう ちに入ってきて、先ほどのリスクアセスメントを行う場合にも大事な情報になるはずなので、その周 知の方法は掲示だとかファイルを備え付けとありますが、やはりこれは安全衛生委員会の場できちん と報告をして、審議の対象にするのが当然ではないかという感じがするのですが。 ○奥村調査官 これは、まず小規模事業場においては、作業環境測定の結果を労働者に知らせる仕組 みが十分に出来ていないと認識していまして、包括的に労働者の意見を聞くという条文がどこかに定 められているのかどうか、いまはちょっと確認できないのですが、そういう条文があったとしても。 ○福岡委員 たしか安全衛生法の16、17くらいに安全衛生委員会がありますね。 ○奥村調査官 はい。 ○福岡委員 そのちょっと後、あるいはその関連規則だったかな。 ○奥村調査官 はい、わかりました。安全衛生規則の第23条の2に、「委員会を設けている事業者以 外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるよ うにしなければならない」という規定があります。  ○福岡委員 その聞くという字も、その漢字が耳で聞くのではなしに、心で聴く漢字なのですよ。そ の辺のところも単に口でしゃべっているだけではなく、ちゃんと心を込めて話し合いをしなければと いうような意味を言おうとしているのだなと感じたのです。 ○名古屋座長 この条文でもう既に十分で、作業環境濃度の結果を聞く、改めて知らせる必要はない というご意見ですか。 ○福岡委員 いやいや、そういうのがありますからね。この11頁の真ん中に機会を与えられていると 書いていますが、ちょっと話が合わないのではないかというのが。 ○名古屋座長 では、この機会が十分与えられていないというような意味ですか。 ○福岡委員 いやいや、むしろ今の条文が書かれているものを、どうやったらもっと有効性を持たせ ると、これに対する機会が与えられていないではなくて、法をもっと有効に活用するような方策を考 えるべきではないかということです。 ○名古屋座長 ちょっと文章を。 ○奥村調査官 そこは表現を整理したいと思います。もう1つ、資料5-6-2の表示の内容ですが、私ど も個人サンプラーによる測定は、あくまで作業環境測定と位置づけております。ですから、A測定、B 測定の結果が表示の対象になるのと同じで、個人サンプラーによる測定を行った結果も情報通知の対 象になると考えています。なおかつ個人サンプラーによる測定を行った場合には、該当者にあなたの 作業の結果はこうですよというのを知らせするべきというのが上乗せで書かれるというようなイメー ジで、こういうまとめ方をしております。 ○福岡委員 私の意見は、その周知の方法の中に、安全衛生委員会の中での議題に取り上げるという 一文があってもいいのではないかということです。安全衛生委員会の議題に上げるようにもっていく と、先ほどの50人以下の事業所についても、50人以上の安全衛生委員会の議題に準じて議題に上げる という線が出てくるのではないかと。 ○奥村調査官 はい、周知の細かいやり方については、改めてまた考えたいと思います。ご意見は参 考にさせていただきます。 ○名古屋座長 よろしいですか。 ○橋本委員 個人ばく露測定の結果を個人に、対象者に周知するということなのですが、これは大変 いいと思うのですが、実は弊社の国内事業所でも、個人ばく露測定はたくさんやっていまして、必ず その被測定者に周知するようにしています。その実感なのですが、反応が非常にいいですね。働く人 が自分自身のばく露がどうであったかというのは、やはり関心を持っているみたいで、これをいちば ん最初に始めたときは、むしろ妙な疑問というか、妙な警戒心を引き起こすのではないかとか、余計 なことも考えたのですが、そういうことはなくて、もちろん最初に測定の趣旨とかは伝えるのですが、 非常に関心を持っています。  例えば教育のときに、あなた方の測定結果は、これこれこうなんですなんて言うと、非常に関心を 持っています。例えば保護具をしている作業だったとすると、「だから、保護具をしなければいけな いのですよ」とかというのが、非常に説得力があってよくわかってくれます。そういう意味でとても よかったと思っています。  あと、その結果を伝えるときは慎重にというご意見が先ほどありましたが、私もこういうのをやる ときは、もちろん悪目の結果が出たときは非常に慎重になっていまして、例えば極端に高い値が出た りすると、それはその前に再測定とか、なぜかを確認するとかをもちろん考えますし、ある程度高い 値などのときには、では対策をどうするかということを聞かれますので、当然、その準備をして話を します。対策を行ったら、そのあと再測定をして低くなったというのを確認することもできるわけで す。だから、この方法を広げていくときにそういう周知とか対策のやり方というのも、その要点も併 せて広げていく、それが大事なことかというふうに思います。  あと、個人情報的なお話があったのですが、これはご参考までにですが、弊社の場合、メディカル の情報のような個人情報とは、ちょっと別として扱っています。だから人前で人の名前とばく露測定 結果が仮に出ても、まあ、それはいいということにはしているのですが、ただ、掲示したり公に出る ところですと、名前が直接入っていると何かと議論を呼んだりすることもありますので、そういうと きには名前を伏せる。ただし、例えば上司に伝えるときなどは名前入りで伝えるぐらいにするとか、 その程度でやっております。 ○名古屋座長 1点聞かせてほしいのは、ばく露の評価をするときというのは、これはたぶん個人サン プルでやっているのですが、橋本委員のところでやっているのは個人に対するばく露評価ですよね。 ○橋本委員 いえ、違います。 ○名古屋座長 全部でやっている。 ○橋本委員 ええ、同じ作業をするグループ。だから10人なら10人、その10人はおそらくほぼ同じ ばく露だろうという、10人なら10人のグループとして、その中でいくつかサンプリングして測定して、 弊社の場合は平均値を採って、それを使って評価するのですが、あるやり方で評価してそれを伝えて、 改善が必要ならばあるレベル以上のリスクだったら改善をすると、そういうことでグループでやって います。 ○名古屋座長 どちかというと欧州規格のような感じのやり方ですか。欧州ではある程度の濃度範囲 の所を1つのグループとして考えてやっていますが、NIOSHとは違う。どちらのほう、それはもう独特 なのですか。 ○橋本委員 いや、NIOSHのほう、ここにありますが、このやり方は、とにかく職場で1人でもアクシ ョンレベルなり、ばく露限界値を超えたら、もうそれは対策をしろと。1人でも超えたら駄目というこ とですから、アメリカのこの考え方は1人、グループではないですね。ただ、欧州のほうはいまのお話 では1つグループというのがありましたし、あと、一般的には、その教科書みたいなものに書かれてい るものも、私いくつか読んだのですが、やはり同じばく露程度の者をグループにして、例えばそのグ ループのばく露の平均値とか分布とかを把握する。これはアメリカのOSHAの法律に則った対応ではな いのですね。OSHAの対応は、とにかく最高でも超えたら駄目だから、それとはちょっと違うのです。 だけど、そういうグループにして、そこのばく露をきちんと評価して、それでリスクアセスメントで すね。それでリスクに応じて対応するというのが、一応基本的なやり方かなというふうには思ってい ます。 ○名古屋座長 いや、NIOSHはかなり厳しい評価だから、企業さんがやるには大変かなと思っていたの で、どうされたかと思ったのです。ありがとうございました。ほかにお気づきの点がありますか。  表示をどうするかということなのですが、ただちに改善するということだと思うのですが、たぶん 改善する前後で表示が例えば3が2に変わったよというのは効果があるのだと思うのです。その辺のと ころ、表示ということで、例えばいま騒音など、現場に行くと、必ずここは第3管理区分の騒音現場で すよと表示されている所が多いと思うのですが、そういう形の表示で認知されるということはどうで しょうか。ファイルでということなのかな。このいちばん最初にありましたように、作業場の見やす い場所に掲示するということについては、どうお考えかを、お聞かせいただければありがたいなと思 います。表示の内容はたぶん菅理区分1、管理区分2、管理区分3だと思うのですが。よろしいですか。 では、また進めて次回以降ご意見がありましたら、進めるという形にしていきたいと思います。どう もありがとうございました。  次に局所排気装置の稼動の規制等についての検討ということです。これもまた事務局で資料5-7のと ころから説明をよろしくお願いいたします。 ○奥村調査官 それでは13頁の資料5-7-1からご説明いたします。「局所排気装置等の稼働要件」で すが、1番目、有機溶剤中毒予防規則におきましては、局所排気装置はフードに応じて異なる「制御風 速」以上の制御風速で稼働させなければならないという規定がかかっております。囲い式フードの場 合には、制御風速0.4m/sとなっています。  特定化学物質障害予防規則ですが、こちらは特定化学物質の蒸気等が発生する作業場における局所 排気装置は、そのフードの外側での化学物質の濃度が、化学物質に応じて異なる「抑制濃度」を常態 として超えないように稼働させなければならないという規定になっています。例えばベンゼンの場合 には、ベンゼンの濃度が1ppm以下となるようにという規制がかかっています。フードとその有害物の 状況をモデル的に示したのが下の図でして、局所側方吸引式、横から吸う型のタイプですが、このよ うに有害物の蒸気の発散が抑制されている。作業者が帽子をかぶった顔の絵がありますが、作業者と 有害物の間で抑制濃度を測ると。そこが抑制濃度以下であれば、労働者はそれ以上ばく露することは ないという推定のもとにこういった規定が書かれています。  続きまして14頁です。「局所排気装置等の要件の見直し」です。まず左手から労働者を有害物から 守るための主な規制です。整理いたしますと、まず、(1)局所排気装置の設置義務、要件の規定による 作業環境管理ということで、例としましては、フードは発散源毎に設けられていること。ダクト、つ まり配管ですが、できるだけ短く、ベント(曲り)の数ができるだけ少ないようにすること。これは 流体としての損失がないようにという趣旨です。さらに排気口は屋外に設けることという規則があり まして、また、大臣が定める性能を有すること、つまり抑制濃度や制御風速を守る性能があることと いう規定があります。  (2)に作業環境測定とその結果に基づく作業環境の管理・改善という設備の改善が義務づけられてい ます。  次に(3)保護具の着用でして、環境改善ができないようなところでの保護具の着用が定められていま す。(4)に健康診断とその結果に基づく就業場所の変更ですとか、保健指導という規定があります。  現状とその課題ですが、(1)有機溶剤用の局所排気装置につきましては、有機則第18条の2の条文で、 署長の特例許可を受けた場合には、制御風速を下回っていても、第1管理区分を維持していれば特例許 可を受けて、制御風速以下での稼働ができるという条文があります。特例許可を受けている事業場は、 年間に70事業場でして、これが10年続けば何百社という事業場が、こういった特例許可で稼働してい るという実態がございます。  (2)に第1管理区分が継続している場合に、局所排気装置による要件の規制は必要なのかという議論が あります。これは専門家等にも指摘されているものです。  (3)排気口の屋外設置は規則で決まっているのですが、ビル内の狭隘な作業場では、ダクトを外まで 出すというのはなかなか困難であり、また、排気を清浄化してまた屋内に排気、つまり、還流したい と思ってもそれは認められていないので、空調コストが無駄になっているのではないかという指摘が あります。  見直しの方向性ですが、局所排気装置の要件のような仕様要件を法令に定めるのではなく、作業環 境測定とその結果に基づく管理に重点を置くよう誘導すべきではないか。このため以下の方向で規制 を見直してはどうかということです。  まず1つですが、局排の要件については、より柔軟な運用を認めていく。作業環境測定の結果に重点 を置くという意味で、測定結果の労働者への周知、これは再掲ですが、この2つの方向で見直しを進め たらどうかという整理です。以上です。 ○名古屋座長 ありがとうございました。いまのところではたぶん資料だと5-7-2、「局所排気装置等 の要件の見直し」ということではないかなと思っています。ここが出てきたのは、いまは制御風速と 抑制濃度という概念があって、一応規制がかかっているわけですが、もともと局所排気装置の中の性 能要件の中に制御風速と抑制濃度。つまり、抑制濃度の場合、発がん性があるということで作ったの だと思うのです。もともとこれは粉じん則、要するに測定基準ができなかったときに、作業環境を維 持するために何をしたらいいかということで、制御風速で有害物を取り除くという考え方と、それか ら少し発がん性が高い、毒性が高いということで抑制濃度という考え方が入ってきたのだと思います。  諸先輩の先生方にお聞きしたときには、本来的には測定基準が出来たときには、これは取り払わな ければいけない法令なのだよと、要するに二重規制になる可能性があるよと。要するに測定をしてい てOKが出ていたのにかかわらず、2つ規制しているというのは違うというような話をよく聞いたこと があって、そうすると、いまのところの中でその話を受け継いでくると、例えばリスク評価をしたと きに、要するにリスクして大丈夫だよということにかかわらず、やはり局所排気装置がいま0.5なら 0.5で運用している。でも、しかしながら、もともと有機則というのは0.2で運用してもよかったのだ けれども、ガイドライン基準を0.5で見積っているから、0.5という制御風速になっているわけですよ ね。  ということは、かなり過剰に見積もられている。そうすると、現場に行くと0.5ではなくて0.3でも、 0.4でもうまくいっている作業場はいくらでもあるのですが、残念ながらそれは法規制の中ではできな いよ、作業環境管理区分1になって、でも、やはり0.5でいかなくてはいけない。ましてや、今度は CO2の削減が入ってくる。そうすると、それで制御風速を下げてよければ、CO2の削減にもつながって くるという形にもなるのだけれども、いまのところ制御風速と抑制濃度があるので、どうしても測定 と2つ、二重規制がかかってしまって、両方とも守らなければいけないということと、先ほどお話のリ スク評価につながってこないということで、たぶんこの議論が出てきたのだと思いますが、これに関 して皆さん質問等がありますでしょうか。 ○市川委員 抑制濃度という考え方が出てきて、ダブルの規制ではないかということも分からないで はないのですが、ただ、いままで罰則をもって決めてきたものを制御風速の稼働要件を緩和するのか なくすのか、ご提案の趣旨がよくわからないのです。そういうことは労働組合としては賛成できない というふうに申し上げざるを得ないと思います。労働者の健康を守るという意味からは、やはりダブ ルでもトリプルでもいいのではないかという考えがございまして、従来のものを外すというならば、 それ相当にそこで働いている労働者が、十分に納得できるような、理解ができるようなものがないか ぎり、やはり簡単に外すということには賛同はできません。  次のペーパーですが、例えば他の新たな発生抑制装置の開発が妨げられているのではないかという ような提起もありますが、そういう言い方はいかがかなと思います。別に両方やってもよいではない かと、そして、どんどん開発をしていけばよいではないかというような気もいたしますので、少しこ れは反対というふうに述べざるを得ないと思います。 ○名古屋座長 ありがとうございました。ほかにありますでしょうか。 ○豊田委員 市川委員のいうところは、この資料5-7-2でいいますと、四角で括ったところの見直しの 方向性(案)のところの議論だと思います。先ほどたしか名古屋座長がおっしゃったと思うのですが、 作業環境測定とその結果に基づく管理に重点を置くと、まさにこれがリスク評価結果になると思うの です。だからリスク評価結果に基づいて安全であれば、それに従って、それなりに適切な設備対応と か、策を講じれば、皆さん納得するのではないかなと思います。それ以上過剰な対応をやる必要はな いと思います。 ○塩崎委員 私も同じ意見ですね。局所排気装置等の要件の見直しについても、リスク評価の普及を 進めていこうとする施策、その1つの例として中小規模事業者に対してコントロール・バンディングを 導入しようとしている施策と、やはり一致した方向の施策をとるべきだと思います。そういう意味で は、ここに記載されていますようにリスク評価結果に応じて適切で柔軟な運用をしていくというのが、 目指すべき方向ではないかと思います。 ○宮川委員 いまのところの部分ですが、作業環境測定というよりは、むしろ個人ばく露測定をきち んとやって、定量的なきちんとしたリスク評価、即ちばく露許容濃度と考えられるところを十分下回 っていることが担保されるのであれば、形式的な数値等によるその他の二重規制等はなくても、事実 上、安全は担保されるのではないかと考えます。非常に重要な点は、コントロール・バンディングは、 実情はより厳しい結果になるということで、実際の心配はないのかもしれませんが、考え方としては、 このばく露濃度を超えていなければおそらく健康被害は起きないであろうというように、許容レベル との比較によってきちんと評価するということで、その上で、そこに個人ばく露を使用するという方 向にいかないといけないと思います。「場の管理」というよりは、「個人個人の労働者のばく露状況 を見て、大丈夫だという判断ができる」という前提があって二重規制はいらないということだと思い ますので、形式的にほかのリスク評価方法を入れるからそれで十分、例えばコントロール・バンディ ングでやって問題がないと出れば十分で、だから制御風速のような数値はいらないというようにはな らないと思います。  逆に言いますと、この柔軟化には賛成ですが、よりきちんとした評価でもって、評価をする主体、 つまり専門家も、あるいはそれをさせる事業主も、より大きな責任を負った上でやることになるのか なというように考えたいと思います。 ○名古屋座長 ありがとうございます。先ほど私が言ったように、作業環境管理をしていて、そして、 そこでは施設整備の確認ですから、それに対してばく露濃度測定をしてOKだとしたら、柔軟に対応し たほうがいいのではないか。リスクは評価できるのではないかなというようには思いましたというこ とに、つながってくるかなと思います。 ○宮川委員 もし、こういうような大きな制度を変えるときには、いままで場の管理でやっていたの を個人ばく露測定に変えるとか、あるいは制御風速等個別規則でやっていたのをリスク評価に基づい て柔軟にやるとかいうときには、事実上それによって適正な管理が保たれているということを、どこ かで国として見ていく仕組みが必要なのかなと思います。いまの状況ですと、作業環境測定を方々で やられていますが、それを集中的に国がデータを集めて、うまく適切に動いているのかどうかを見る 仕組みが、ないような気がいたしますので、そういうところを何らかの方法で担保することも考える ことが必要ではないかと思います。 ○名古屋座長 いま国が管理しているのは、たぶん有機則の中の特例許可と同じような扱いになれば、 ある程度できるかなということです。これは個人的な質問ですが、鉛だとか特化則に、有機則と同じ 形のものを移すことはできないのですか。粉じん則から始まってほかの4則に全部。そうすると同じよ うなことができる。いまは有機則だけがこういう形でできていますよね。それに対して今度は粉じん 則から始まって、鉛則、特化則に対してもそれが適用できれば、法律的にはわかりませんが適用でき れば、いまの話はすうっとうまく進んでいくのかなと。たぶん難しいのだとは思うのですが。  そういう意味で、折角、管理区分1になって、市川委員、労働組合のところなどは二重規制がかかっ た場合、撤廃するのは怖いよという意見がありましたが、あとは第1管理区分で折角そこまでしていた ら、規制を少し議論から外してもいいのではないかなということだと思うのです。  もう1点、(3)のところですね、これ資料5-7-2で、これはたぶん新しい考え方だと思うのですが、私 は個人的には賛成しているのです。排気の屋外の測定のところというのはありますが、ただ、いまCO2 の削減と言われている中で、例えば沖縄のような所だと、夏場にクーラーで部屋の冷気を下げていま すが、それをきれいにした空気をそのまま外に捨てて、また暖かい空気を入れると、エネルギーコス トもかかる。それだったら、もしかしたらそれを出すときに還流させて、ある程度の濃度に下げたら 戻してもいいようにする。  あるいは冬、北海道などの作業場に行くと暖房をかけていますよ、暖かい空気ですよ。それをきれ いにして、そのまま外に排出するのではなく、折角きれいにしたのだから、ある程度の濃度以下だっ たら戻していいとすると、ものすごくエネルギーコスト的によくなる。氷点下いくつの冷たい空気を 入れて、また20度に暖めるのに比べれば、リスクしてOKだったらそれも認めてもらえれば、要するに CO2の削減から始まって、測定するリスク評価という形のものにつながってくるのではないかというこ とが、たぶん(3)につながってくるのだと思うのです。この辺のところは、皆さんどのようなお考えを されていますでしょうか。ちょっとイメージがわかないかもしれませんが。  いまのところ還流に関しましては認められていないのですが、ホルムアルデヒドのときには全体換 気しかできなくて、補助的な手段として、一応還流をしてもいい。ただそのときは、必ず測定しなさ いよとなっています。だから、これももし、そういう形になったとしても、当然測定ということが、 たぶんついてくるのだと思いますし、それがなかったら、たぶんできないのだと思うのです。 ○城内委員 いまの還流の関係があると思うのですが、私は制御風速とか抑制濃度というのは、ばく 露濃度を抑えるために、たぶん当時考えられたもっともいい方法だったろうと思うのですが、皆さん ご指摘のようにいろいろな法律ができて、化学物質の管理の体制も整ってきて、いろいろ方法も出て きて、世界的にシステムも変わってきてという中では、やはり最終的にチェックするものを決めて、 それを満たしていればいいということにすべきだと思います。そういう意味では、抑制濃度とか制御 風速みたいな手段に規制をかけるのは、間違っているだろうと思っています。  還流をしても悪くはないというか、エネルギー効率からはしてもいいと思いますが、最終的に還流 したものが、例えば発がん性物質が入っていたりして、還流されていいのかという事も考えると、や はり個々の技術に規制をかけるのではなくて、最終的な評価に規制をかけるべきだと思います。その ようにしないと、先ほど来皆さんがおっしゃっているように、リスクアセスメントとの関係もあり、 やはり効率も悪いし合理的ではないなという感じがしています。 ○福岡委員 いま議論されている最初の目標は、作業者の健康の確保ということですね。健康障害の 防止ということですね。そうすると、いろいろやったとしても最終的には定期的な健康診断の結果で、 障害が出ていないという確認がとれるようにつながらないと、何をやっても意味がないのではないか。  見直しの方向の件ですが、抑制濃度云々、制御風速の話になりますが、見直しの方向の中に、個人 サンプラーの先ほどの議論になったものが、どう入ってくるかということと。そういったことと健康 診断の結果との絡みで、どういうふうに評価するのか、そういったあたりを、ご専門の方のご意見、 議論があってもいいのではないかと、そのような感じがするのです。 ○名古屋座長 個人的に思っているのは、例えば作業環境管理として管理区分が2年なら2年続いたと いうことになったとして、それと同時にそのときに、きちんとしたばく露濃度を測っていくと、当然 施設整備OK、個人サンプラーによるばく露限界、大丈夫だよと。当然健診が入ってくる。そうしたら リスク評価としてたぶん大丈夫だよ。そのときにはたぶんいま制御風速で0.5であったものを0.3に落 として、直ちにそれを測ってみたときに、0.3でも同じ状況が維持できたと、そうしたらそれはOKで はないでしょうかという形の流れになるのではないかなと個人的には考えています。それは改善をす ると同時に測っておかないと、その改善の構図が分かりませんから、当然0.3に下ろしても、直近でま た測っていって確認しておくというシステムは作らないといけないと思うのですが、折角リスク評価 したものをうまく生かす方法は何かあってもいいのかなと思います。 ○西委員 私も実態をよく確認をしていないので分からないところがあるのですが、資料5-7-2の真ん 中の(3)の還流云々の話で感じたことをお話しします。最近の産業構造の変化で、電子・電気関係では クリーンルームが結構多くなっています。あれは基本的には殆ど室内空気を還流しているわけです。 何かアクシデントが起きたり非定常作業の場合の管理がどうなっているのか気になりました。定常的 に循環しているのだから平均しての作業環境測定をすればもちろん引っかかるのかもしれないのだけ れども、電気・電子関係の業界は化学物質の管理については、化学産業に比べると若干感性が鈍い業 界かなと思います。そういう意味で実態を一度調査されるといいかなという気がいたしました。議論 とはちょっとずれるかもしれませんが、ちょっと気になりましたので。 ○名古屋座長 ただ、やっぱり還流をするときに1つ条件があるのは、入れるときのガスなり、発がん 性は別にしましても、65条の測定の中でやられるものに対して、リアルタイムセンサーが開発されれ ばOKではないかな。リアルタイムセンサーが開発されれば還流したときの濃度がわかるから、そうす るといつも監視していますから、ある一定の濃度になったときブザーが鳴って、還流はやめましょう という形のやり方はできるのではないか。  そういう意味でホルムアルデヒドの測定ができたときに、同等のもののそういうセンサーを使って いいよという条項はできましたから、それができると、たぶんこれからガスモニターという形のもの の開発がどんどん進んでくると、還流というところにも使っていけるかなと思っている部分があって、 今それがないために、折角センサーが。アメリカなどはセンサーでやっていて日本はセンサーが動か ないのは、そういう法的な裏付けがなかったのですが、ホルムアルデヒドのときにそういう形ができ ましたので、作業環境にリアルタイムモニターが使えるようになってくると、いろいろなことができ るかなと思います。常時監視ができる形になりますから、そういうことになってくると還流という形 のものも少し光が当たってくるのかなと現状では思っています。あと他にお気づきの点がありますか。 では、先に進めるということで資料5-8です。これも事務局よろしくお願いいたします。 ○奥村調査官 15頁の資料からご説明いたします。「局所排気装置以外の発散抑制方法について」で す。現行の規制では、局所排気装置以外の発散抑制についていくつか規定があります。有機溶剤中毒 予防規則の第12条に、エアカーテンですとか、有機溶剤に水を浮かべる方法などで発散抑制できる場 合には、密閉か局所排気装置はしなくてもよい。特定化学物質障害予防規則第38条の12では、例えば ですが、エチレンオキシドによる滅菌作業について、一定の機能を有するエアレーションというエチ レンオキシドを排出してしまうような機能がある滅菌器を使用するときには、局所排気装置はいらな いというような規定が書いてあります。  2番目の課題ですが、例示したような法令に書いてある例外規定を除きましては、有害物の発散抑制 措置として、局所排気装置以外の工学的対策が認められていない。このため、発散抑制対策の技術的 革新が妨げられているとも考えられる。実際にどのような発散抑制措置が考えられるかといいますと、 光触媒による有害物の分解ですとか、あるいは化学物質をゲル化して使った場合には、そもそも発散 しなくなるのでいいのではないかというような指摘があると聞いています。  次に検討の方向性ですが、局所排気装置以外の発散抑制措置についても認めていく必要があるので はないかというふうに整理しています。  16頁、「局所排気装置以外の発散抑制方法の柔軟化・性能要件化」ということで、次のようなステ ップで採用していくことが可能ではないかと考えています。まず最初に、その発散抑制方法によって 気中の濃度を一定以下にできることが確認される。つまり、光触媒であれば十分分解しているですと か、そういったことが確認できること。ハード上の確認です。  2番目がソフト的な考え方でして、気中の化学物質の濃度等が継続的に一定以下となるための措置が とられている。例えば、定期的な監査・パトロールによる維持管理が行われている。管理体制が整備 されている。専門家が参画している。リアルタイムモニタリングが行われている。その他。これらは 例示としてすべて同時なのか、それも整理しないで書き並べたものです。  こういった2つのハード上、ソフト上の措置がとられている場合であれば、密閉化あるいは局所排気 装置以外の方法の採用が可能ではないかというふうに整理をしております。以上です。 ○名古屋座長 ありがとうございました。ただいまの説明に対しまして、ご質問等ありますでしょう か。これも先ほどと同じで、リスク評価をきちんと評価してOKだったら別段ここに決めなくても、そ れでOKだよという話にはなるのだと思うのですが、現行法ではそうはいきませんので、この中で何か お気づきの点がありますでしょうか。 ○宮川委員 ちょっと気になったのは、16頁の(1)の四角の中で、「当該発散抑制方法により、気中濃 度を一定以下にできることが確認される」とありますが、いままで制御風速という形で書いてありま すと、これは気中濃度ではなくて、その場の風速そのものですよね。では、気中濃度が一定以下にな ればそれで済むのかということを考えると、本来は先ほども言いましたように、労働者個人個人のば く露が上限度を超えているかどうかというところがいちばん問題になるので、型どおりの気中濃度を 一定以下にということではなくて、個人ばく露をもとに個人個人を対象としたリスクを考えても問題 がないところを狙っていただかないと、考え方としては困るのかなという気がいたします。 ○名古屋座長 ほかにお気づきの点がございますか。 ○塩崎委員 規則で規定される設備以外は、設備性能のリスク評価をして、その評価の結果、問題が なければそのままでいいし、もし問題があれば、その改善対策を適切に実施していくということで、 本来、やはり認めるべきだと思います。この検討の方向性は、私は非常にいいと思います。 ○豊田委員 この資料5-8-1の目的が何を狙うかによってまた違ってくると思うのです。例えば現状の 局排だけだと限界があって、新しい光触媒とかそういうのを狙うことが目的なのか。何に狙いを置く のかというところもよく考たほうがいいのではないかと思います。そういった意味では、やはりベー スはあくまでもリスク評価結果に基づいて、いまやっている設備対応が不適切で、ついてはこういう 技術開発をやって、こういった対策法がより適切だよというのであれば、そういうことを選択するの も1つのリスク評価・管理の方向かなと思います。  ただ、それを選択し、対策法が仮にわかったとしても、今度また新たに設備投資をやらなければい けない。そこまでのドライビングフォースを事業者にどういうインセンティブを与えて、もたすのか というところも配慮が必要ではないかなと思います。それには相当のインセンティブがないと、事業 者もやれないと思うのですね。例えば、トータル的に地球温暖化にその方法だと極めて有効だとか、 何かそういうものが働かないとなかなかやれないと思います。  一例を挙げますと、ホルムアルデヒドの規制対応のときに、局排設置がかなり議論になったと思い ます。局排もピンからキリまでありますが、例えば小さいのを付けても25万ぐらいいたします。あの 当時、ちょうどオイルが高騰しまして不況の最中であり、零細企業などの倒産が相次いでおり、その 中で、例えばああいう局排設置の指示が出たときに、25万の設備投資すらできない中小企業が沢山あ り、大きな問題になりました。よって、新規の発散抑制方法の導入等の考えに当たっては、そういっ た事例等も十分に考慮し、念頭において慎重に取り組む必要があるのではないかという気がいたしま す。 ○福岡委員 15頁の局所排気装置以外の発散抑制方法ということで、例えばというわけで、光触媒な どによる有害物の分解という話がありましたが、ほかにどのような方法が考えられ、検討されている のか、そういう事例はほかにもっとたくさんあるのですか。いかがですか。 ○半田化学物質対策課長 資料の作り方がまずかったかなと思いますが、先ほどの豊田委員のご指摘 にも関連するのですが、もちろん新技術の導入を促進してという気持がないわけではないのですが、 ここでいちばん考えていますのは、先ほど来、いろいろな先生方からご指摘がございますが、いま仕 様基準となっておりまして、作業環境がどういう状況であれ、リスク評価の結果が悪ければもちろん ですが、良くてもこの局所排気装置をこういうふうに設置して、こういうふうに防止する。極端に言 うと一本道しかないわけなのですね。  これに対して、もう少しいろいろなやり方があってもいいのではないだろうか。具体的な技術とし ては、この光触媒ですとか、ほかには私はよく承知していませんが、何かある所では空気触媒という のもあるというお話を聞いたことがありますが、そういった奇をてらうような新技術のことを言って いるのではありませんで、そういうような性能要件化みたいなことを進めていく必要があるのではな いだろうかなと、どちらかというとそういう概念で、ここの項目を整理させていただいています。 ○福岡委員 光触媒などによる分解という話になると、ただ壁にそういうものを塗っておいて、部屋 の中の有害物を通風していく。そのような使い方なのですか。 ○半田化学物質評価課長 光触媒にはそういうことももちろんあると思いますが、別にそういう特殊 な新技術のことを念頭に置いているというよりは、結果を出せばよいような仕組みにしていくべきで はないだろうかというのが眼目ですね。ですから、1つの考え方としましては、ここの仕組み、こうい う性能要件が認められていくということになりますと、局排のようなものを設置してあっても、それ が局排の性能要件、稼働要件を満たしていなくてもよろしいと。これも1つの他の代替的な方法という ことになるわけです。  ここまで申し上げましたので、混乱してはいけませんので、少し補足させていただきますと、資料 5-7-1、5-7-2で申し上げていましたが、局所排気装置の性能要件の云々といいますのは、全国一律の といいますか、局所排気装置のそもそもの性能要件・稼働要件の見直しということを私どもは想定し ていたのです。資料5-8、5-2では、さまざまな手法を見つける、認める、結果を出せばよいという体 系に移行しようというワンステップだと考えていますので、こちらの考え方では全国一律、どの事業 場もということではなくて、いくつかの要件をきちんとクリアできる事業場に対して、少し幅のある やり方も認めるような仕組みにしていってはどうだろうかという考え方です。  そういうわけで資料5-8-2では、(1)のところで実際にパフォーマンスが出ていないといけませんよと いうことを担保しつつ、(2)でいろいろな体制ですとか、あるいはリアルタイムモニターですとか、そ ういった何らかの担保をするような仕組みを要件として定め、そういうことができる事業場に対して は認めていく、そういう仕組みにしてはどうかなということを考えていたところです。よろしくご検 討をお願いいたします。 ○名古屋座長 たぶん課題のところの中で発生抑制対策というのを、いま例えば事業場の中で、その 事業場の近くに例えば除じん装置なり、活性炭を使った排除装置を付たときに、例えばその設置をし たときにビス止めしてしまうと、当然法律の中ではそれはダクトを使って外に出さなくてはいけない よ。でも、折角そこできれいにしているのだったら、本当に100%きれいになるのだったら、そこで排 気してもいいではないかということになってくると、そういう形の要件もありますね。たぶんその辺 のところの運用がいまのところ、私が思うに、発生技術を抑制しているのではなくて、そういうもの があるのだけれども、法体系で使えないシステムになっているのだと思うので、そこも付け加えてほ しいなと思います。それができていれば、皆さんが言われるようにリスク評価して、本当によかった らやってもいいではないか。別段ダクトをわざわざ出さなくてもそこで運用できればコストを削減で きるのではないかなということにつながってくるのかなと思っています。  局所排気装置以外の発散抑制として、光触媒がここに書いてあるのですが。光触媒の欠点は分解速 度が遅いということですから、局所排気装置に光触媒はなかなか使えないのですね。それは風量が多 すぎますので使えないということ。だから、もし使うとしたら、ダクトの中に光触媒を入れ、そこの 空気を循環させて、その空気をいつもゆっくり分解していくという形の分解方法では、光触媒は有効 に使えると思うのです。  ただ、1つの問題は何かというと、この分解は簡単なのですが、そこのところにある物質が分解され たときに、二次生成物には何ができるかということを把握しておかないと、逆に悪い物質を出してし まう可能性がある。これはいい例かどうかはわかりませんが、例えばフロンなどを分解すること自体 は問題はないのですが、フッ素が出てくるわけですね。フッ素の有害は高いですね。二次生成物のこ とを考えないといけないから、分解というのはやたら簡単に使えるものではない。  例えばホルムアルデヒドなどは、どう分解しても酢酸しか出てきませんから、どんなに出ても80ppm ぐらいですから大丈夫です。だから、ああいう所で循環はいいのですが、ほかの事業場というのは、 例えばトリブロエチレンだったら、ものすごく濃度が高くかなり有害物質が出てきまして、塩素系が 出てきますので、二次生成物のほうが悪いものが出てくる可能性がありますから、そういう意味では 光触媒が悪いというわけではないですが、使い方の運用というのは、必ずそこではリスク評価がどう しても要るのだよということなので、リスク評価ということにつなげてくると、規制緩和という形の 下にすべてうまく合致してくるのかなというふうに思います。  だから現行法の中の規制の例で、ここもたぶん有機則もそうだと思うのですが、ある程度評価して OKだから、たぶん規制緩和してくれているのだと。それを個別個別にするのではなくて、すべてに対 してやってくれれば、運用面としてはここについても筋が通ってくるということではないかなと思っ ています。そのための筋道をきちんとつけなくてはいけないかなと思います。  先ほど城内委員が言われたように、規制をかけているわけではなくて、1つのあり方としては、過去 に局所制御風速だとか、抑制濃度の1つのいい方法だったのですが、いまはそういう時代ではなくて、 やはりきちんとした評価方法ができたら、それのいい点を運用していくほうが個人的にはうまくいく のかなと思っています。ほかに何か意見等がありますでしょうか。 ○福岡委員 そのところの関連ですが、個人サンプラーの話なのですが、作業者の作業方法を見てい ると、同じ作業をしていても個人によって、要領がいい悪いがあって、早い話が有機溶剤を使っても こまめに蓋をして作業をする人と、あまり蓋をせずに作業をしている人がいて、同じ作業をしていて もばく露の程度が違ってくる。それはたぶん個人サンプラーに作業方法の個人差みたいなものが出て きたりするのです。作業管理的にも非常に意味がある、そういう側面があるのではないかという感じ がします。そういう意味で個人サンプラーというのは、話をもっていくようだったら、その事業の作 業管理的な面があって、コストダウンまでいくのはちょっと無理かもしれませんが、健康管理以外の メリットもあるということも含めたPRが考えられるのではないか。実際見ていても要領のいい人はこ まめにやって、たぶんあまりばく露していない。ある人が作業をすると部屋中に臭いがするとか、そ ういうのが現実に、特に中小にいくほどそういうのがあるような気がしますので、そういった作業の 現場を見た上でのPRの仕方、使い方なども1つ入れてもらっていいのではないかと思います。 ○名古屋座長 個人ばく露情報というのは、作業管理にいちばん運用しやすいですよね。ただ、作業 環境管理にしたときには、統計的な手法を使って、ある程度しないといけないよという部分があるか なと思うのですが、それをどちらに使うかということ。我々はたぶん作業管理をするときにはビデオ を撮って、そして、その人のリアルタイムモニターをとりながら見てくるといちばん教育しやすいし、 その作業者の作業が悪いのか、換気が悪いのかというのが分かりますから、そういう使い方はよくで きるのではないかなと思います。ほかに、ここのところどうでしょうか。まだ時間がだいぶ残ってい ますので。 ○廣川委員 いま福岡委員が言われたような個人の作業によってかなり違うというお話が、たぶんい ろいろなところであると思うのですが、そういうのが現実だとすれば、市川委員が言われたような、 二重、三重の安全基準というのはやはり要るのではないかなと。理屈だけでリスク評価さえきちんと できていればいいのだというのが、なかなか通用しないところもあるのではないかなというふうにい ま感じました。 ○橋本委員 いまの関連なのですが、実際に個人ばく露測定をするときは、被測定者にその日の作業 の概要を記録しておいてもらうのですね。そして、あとで、ある人のばく露が高ければまずその記録 を見ると。そしてあなたは人とどこが違うのか、あるいはインタビューをしてどこが違うのだろうか ということを、測定者が考えて解明しようとしていくわけです。  そういうふうにやって、高いなら高い原因をできるだけ突き止めるようにする。あるいは再測定を するとか。そこの部分的なところだけをまた測定するとかということが柔軟にできますので、そうい うふうにいろいろなことをやって、それでもある分布の範囲で個人ばく露はある限界以下だというこ とを確認していくわけですね。だから最初にバッと測定してそれで終わりというものではないのです ね。常に柔軟に実情を把握しながらやっていって、その結果で十分に個人ばく露濃度が低ければ、抑 制濃度を取り払うということは十分あるというふうに思っています。そういう柔軟なやり方がポイン トだということです。 ○名古屋座長 たぶんそのためには、それを運用できる人たちを養成しておかなくてはいけないとい うのがいちばんだと思います。教育とかそういう形だと思います。 ○福岡委員 11頁の小規模事業場云々のところに関連する話なのですが、作業現場ではご存じのよう に、正社員と契約社員とか派遣社員が混在しています。一応、法的にはそうした人全部を含めた人数 に応じて、安全衛生委員会を編成しなければいけないとなっているわけなのですが、現実には正社員 の労働者を代表する人たちが委員の主体を占めて、派遣社員だとか契約社員の立場の人の声が委員会 に届きにくい。それは委員の選び方から始まって、どうもそのような現実があるような感じがするわ けです。  ところが実際に災害で怪我をする人の中で見ると、派遣社員とか契約社員の人が多い。しかも、こ れは会社によるのでしょうが、組合があっても組合員の方が一緒の工場で働いている契約社員とか派 遣社員の安全衛生に、どれぐらい関心をもっているかというと、どうも十分な面がないことはないと。 それは賃金闘争を見てもわかることですが、そういったことは安全衛生管理にも関連してあるような 感じがしますので、そういったところの周知の話にしても、掲示、教育にしても、そういったことが 背景にあるということ。これは今日の議論に直接関係はしませんが、そういうところも踏まえておか ないと、なかなか行き渡らない。そのような現実が特に中小にいくほど。大企業でも結構そういうの があるのではないかという印象があるのですが、そのようなことも1つのテーマです。 ○名古屋座長 ありがとうございました。先ほどの資料5-8-2の中で、折角こういう形で局所排気装置 等の発生を認めていく。当然それを柔軟化に運用することによって作業環境が悪化してはまずいとい うことで、たぶんこういうシステムを作っていただけたのだと思うのです。その中で担保する要件に 必要事項としてここにパトロールとか管理体制、専門家と書いてありますが、このほかに、もう少し 加えておく、提案するべきものがあるかどうかだけ確認していただければありがたいかなと思います。 当然リスク評価ということが1つ入ってきますが、あと何かお気づきの点がありますか。このぐらいが 1つ考えられることということが、次回以降でも結構なのですが、何かありましたら。 ○城内委員 局所排気装置の問題だけではないのですが、危険有害性を伝えましょうという話にもつ ながるのですが、実はいままでの話というのは、事業主がどうするか、それは労働安全衛生法なので そうなっているのですが、作業者が一緒に考えましょうという話があまり入ってきていなくて、危険 有害性をちゃんと伝えれば、その中で局排はここにあるけれども、これはこういう働きでとか、では 改善するにはどうすればいいですかというのは、たぶん現場の人がいちばんよく知っている話のはず なのです。そういう視点をもっと入れたほうがいいかなと、この会議の中で、ずっと思っていたので す。それはどこかに積極的に入れてほしいなと思っています。  1980年代だったと思うのですが、クオリティコントロールをどこの会社でもやって、個人の労働者 が全部、1カ月に1つは提案しなさいみたいな運動がありましたよね。あれはちょっと行き過ぎてやめ になったような感じはありましたが、あれで相当な職場の改善が進んだという事例があったわけです ね。そういうことを労働安全衛生という意味からも、「3ない運動」的に進めれば、かなり効果がある のではないかなと私は思います。それが法律で決めていることを守りましょう。あとは教育システム をどうしましょうというシステム論はもちろん大事なのですが、現場の人の知識をもっともっと出せ るような環境づくりというか、それがあればかなりのことが進むのではないかなと思います。 ○名古屋座長 先ほどの作業環境測定の結果のところもそうですし、制御風速その辺もある程度、作 業者が参画できるシステムづくりという話ですね。ほかにないですか。 ○宮川委員 いまの点に追加ですが、その場合やはり労働者個人個人が、もし個人サンプリングを導 入するのであれば、自分はどのぐらいのばく露であったのか、あの人は隣で作業をしていてどのぐら いのばく露であったのか、なぜ自分のほうが高いのかとかいうことがわかることが重要と思います。 例えば、局排と発生源の間に入って作業をしている作業者を私は見たことがありますので、そういう のをきちんとフィードバックをするべきです。  それは衛生委員会等でまとめたデータを出すというだけではなくて、個人個人にこまめなケアをす る、個人のリスクを回避するということと同時に作業管理にもそういうのを使っていただくことが重 要ではないかなと思われます。 ○福岡委員 (2)で何かほかにないかというお話でしたが、ここのところに、健康診断の結果も評価を するのに大事な情報としてある。当然「その他」に入っているのかもしれませんが、入れるとはっき り書いてもいいのではないかという感じがします。 ○名古屋座長 これは以前から、よく言われているのが、産業医の先生との連携ということではなく て、これ作業者に対して健診ということなのですか。この健診結果を入れるということは。 ○福岡委員 16頁の(2)の結果がいいということを示すデータの1つとして、健康診断で異常がないと いいますか。 ○名古屋座長 それは入れるということで、ほかにお気づきの点は。 ○堀江委員 いまの健康診断というのは、作業と関係のある異常所見に限ってよいのではないかなと 思います。いま健康診断の一部にはバイオロジカルモニタリングが入っていますので、実際には生体 試料からばく露物質そのものを測定する仕組みも一部ありますし、それによる健康影響を測る仕組み もありますが、そういった検査項目の結果は作業との関連が深いと思います。そうではない一般的な 健康状態を把握するための検査項目に関する異常所見までは入れなくていいと思います。 ○名古屋座長 だからといって、精密的にモニタリングを入れるのはなかなか難しいですよね。 ○堀江委員 確かにそうですが、それはそれでまた別の議論かなと思います。 ○名古屋座長 ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。まだ時間が残っているのですが、 本日議題にいただきました、ここで「その他」ということは。 ○半田化学物質評価課長 今日のご議論を確認させていただきたいのですが、非常にスムーズなご議 論をいただきまして、また私どもの見落としていたといいますか、あまり気づいていない視点からの ご指摘も多々いただきましてありがとうございました。  今日のお話は、個人サンプラーは措いておきまして、局所排気装置の要件の見直しと、発散抑制方 法の柔軟化、性能要件化、これがいちばん大きなテーマだったと思いますが、これに関しまして総じ て承っておりますと、リスク評価をきちんとやって、それに基づいた措置を講じていくという大きな 方向性はいいのだろうと。ただ、そのときにさまざまな措置を緩和というか見直すに当たって、やは りパフォーマンスがきちんと確保できるような何らかの措置を併せ設けながら柔軟化をやっていく。 あるいは局排の性能要件を見直すにしても、そういうことが必要だと、こういうお話だったかと思い ます。  実は今日は大体この辺りまでのご議論だろうなと思っていましたので、性能要件化に当たっても、 どういう要件があるかということは、とりあえずこれぐらいの例示しか用意していませんでしたが、 これに加えまして先ほどのご指摘もいただきましたので、次回は性能要件化辺りについては、どうい う要件が必要なのかをもう少し整理して用意してまいりたいと存じます。  そのときにまた併せてご議論いただければよろしいかと思っておりますが、実質的な議論は次回が 最後になるかもしれませんので、今ご意見をいただければと思うところが1点ございます。それは資料 5-8-2の(2)です。ここのところで私どもが想定していましたのは、先ほども申し上げましたように、安 全衛生管理がきちんとできて、パフォーマンスが出せるような事業場に対する規制の緩和といいます か、そういうことを想定していたわけです。ですから、いろいろな要件というものが当該事業場、そ の事業場がこういったパフォーマンスなりをきちんと維持できる能力、体制、いろいろな要件を持っ ている事業場に対して認めるということで考えているわけですが、そうなりますと、必ずこういう議 論をしたときに出てきますのが、では、中小企業はどうなるのだろうかというお話です。  それで私どもが考えていますのが、ここに少し書いていますが、中小事業場にあっても、そういう やる気があるのであれば、外部の資源を活用しながらそういうことをやって、同じような恩恵を享受 できるような仕組みにしていってはどうかなと、実は考えているところです。ですから、この専門家 の参画、あるいは外部人材の活用、この辺りも次回またご議論をいただきたいと思っておりますが、 特にこの点に関しましても、先ほどいろいろなご指摘をいただいておりますが、外部資源の活用の辺 りについて、もし何か今日いただけるようなご示唆がありましたら、それを踏まえまして次回の検討 資料の準備に使わせていただきたいと思いますが、もしも何かあればお教えいただければと思います。 ○豊田委員 こういったその他の発生抑制方法の導入に関しては、国としても何らかの技術開発支援 というものをお願いしたい。それともう1つはこういった発生抑制方法の成功事例をどんどん増やして、 これだけの事例がありますよということを是非とも行政当局にお願いしたいと思います。これ当初に 言いましたが、最終的なところは、結局、リスク評価結果に基づいて、その作業環境の特性に応じて 事業者に柔軟な選択ができるような土壌といいますか、そういうインフラ基盤のようなものの醸成も お願いしたいと思います。 ○福岡委員 最後の外部資源の話ですが、いまの国の資格制度からいくと、どういう資格の人が、し ておられる方かと思いますね。そうすると労働衛生コンサルタントが1つあると思うのです。特に工学 を専攻にした方、それから当然産業医の方にもそういう詳しい方がおられるだろうし、作業環境測定 士にもそういうことに詳しい方がおられるでしょうが、そのほかにどのような資格があるのかを列挙 されると、もう少し考えやすいのかなという気もするのです。ほかに国家資格でこの専門家に該当す るのは例えばこんな資格があるのではないかという例示ですね。 ○半田化学物質評価課長 ここは是非、先生方のご議論を今回、あるいは次回にいただきたいところ ですが、私が個人的な立場を言っていいのかどうかわかりませんが、私がいま考えていますところは、 いまの福岡委員のご指摘にあったような、こういう資格、こういう資格としては直ちには思っていな いのですね。  資格というものは、ある最低要件を担保するものではもちろんありますが、では、この資格を持っ ている人がここで求められているような性能要件化を認める場合の1つの要件となるようなものに直ち に、イコールで結びつくかどうか。専門家の皆さんもやはりパフォーマンスにかなりのばらつきがあ ると感じておりますので、この資格を持っていれば自動的にここに入るというものではなくて、むし ろこういう専門家の参画ということに値するような専門家をどう育てるかとか、あるいはどういうふ うにその枠の中に入れていくか。そういうことが検討を要する点になるのかなというふうに考えてい るところです。あまりお答えになっていませんが。  ○福岡委員 おっしゃるとおりで、資格を持っていても詳しく知っているか、それぞれそれは違いま すので、それはおっしゃるとおりだと思うのです。例えばこういう資格を持っている人の中にそうい う人がおられるだろうと、そういう感じで挙げるとどういうのがあるかなと。  ○半田化学物質評価課長 そういう観点で申しますと、私のイメージでは非常に能力の高いコンサル タントは、もちろん入ってこられると思いますし、日本の資格ではありませんが、インダストリアル ハイジニストもお持ちで、それなりの実績を持っておられる方、こういった方は、こういう専門家に 該当するのかなと考えておりますが、まさにそういったところも、先生方のご示唆をいただければあ りがたいと存じます。 ○豊田委員 この前メンタルケアの話が労働政策審議会で上がりましたが、事業者のメンタルケア推 進支援のセンターとして各都道府県に1つあるやに聞いたのですが、リスク評価・管理を事業者が推進 していく場合も同様でして、そういったことの相談に乗ってあげられるセンター機能というのですか、 そういうのが例えば各都道府県の労働基準監督署に1カ所づつ設置され、そこに行けば中小企業の人た ちがある程度相談できるようにすることが重要と思います。まずリスク評価測定をやりたいのだけれ ども、どういうふうにやればいいのだとか、それから出たリスク評価結果についてまた相談でき、さ らに設備対応もある程度、こんな事例がありますよとかいうことも紹介してあげることが出来るとか、 そういう機能を有したセンターのようなところがないと、なかなかこれリスク評価・管理を事業者が 推進していくことはうまく回らないと思うのです。 ○名古屋座長 産保センターでは駄目なのですか。 ○奥村調査官 産業保健推進センターに労働衛生工学の専門家がいますので、こういった機関がそう いう役割を担うことはできます。ただ、これも残念な話なのですが、例の事業仕分けの中で、かなり 予算の縮減が求められる事業になっていまして。 ○豊田委員 出来れば事業の意義をもう少し強調して頂ければありがたい。 ○名古屋座長 あとよろしいですか。1点お願いしてよろしいですか。資料5-7-2のところで、有機則 の特例許可を受けているところは70件と書いてあります。私自身は少ないと思ったのですが、70件は 結構多かったので、どのような規模の事業場が出しているのか。大雑把でいいのですが、これに中小 が入っていたらうれしいなと思うのですが、どのぐらいのところが特例許可を出しているのか、調べ られる範囲でいいのですが、お願いできましたらありがたいなと思います。  たぶんこの規制緩和をするときに、有機則の特例許可がなかなか進まないというのが前からあって、 進まないのはなぜかというと、特例許可を出したときに基準局が入ってくる。そのときにその申請を したものだけを見るのだったらいいのですが、たぶんそうではなくて、すべてのものを見るよと、そ れが嫌だから制度が進まないのだというのはよく聞いていて、だから、あえてこんなもので許可をも らうよりは今までどおりでいいねというのが本音で、申請はいいのはわかる。そういうのがあったの で、ああ、よく70件も出ているなと関心したのです。どのようなところが出ているのか少しだけ教え ていただければありがたいのです。 ○半田化学物質評価課長 わかりました。 ○名古屋座長 そこはよろしいですか。このあと、まだ議論をしなければいけないところがあると思 いますが、今日はいつものように2時間ということで終わってしまいますが、よろしいですか。 ○奥野安全専門官 はい。 ○名古屋座長 本日検討いただきました「より柔軟な規制への見直し」についてということで、本日 のご議論を踏まえまして、次回以降、引き続き検討をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願 いいたします。全体を通じて何かご意見がありますか、次回以降でよろしいですか。どうもありがと うございました。多岐にわたりまして議論をしていただきまして本当にありがとうございました。今 後の予定につきまして事務局からご説明をよろしくお願いいたします。 ○奥野安全専門官 今後の予定ですが、第6回の検討会を5月18日(火)14時〜17時に経産省別館 825号室において、また第7回の検討会を場所は未定ですが6月1日(火)14時〜17時にそれぞれ開催 したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 それでは以上、「第5回職場における化学物質管理の今後のあり方検討会」をこれで閉 会したいと思います。どうもありがとうございました。