10/04/23 第48回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録 第48回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時 平成22年4月23日(金) 10:00〜        場所 中央労働委員会庁舎7階講堂 ○今野分科会長 それでは、第48回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いた します。本日は、浅井委員、大久保委員、水町委員、大江委員、瀧澤委員、中村委 員、大野委員、浦元委員がご欠席でございます。まず、この分科会に所属されます 委員の交替がありましたのでご報告させていただきます。交替後の名簿は、お手元 の参考1を見ていただきたいと思うのですが、山野委員に替わりまして株式会社フ ジの阿部委員がご就任されましたので、よろしくお願いいたします。もう1つあり ます、本分科会の下に設置している若年者労働者部会につきましても委員の交替が あります。部会に属する臨時委員等については、参考3ですが、労働政策審議会令 第7条第2項の規定により、分科会長である私が指名することになっております。参 考2にありますとおり、本分科会と同様に、山野委員に替わりまして阿部委員にお 願いすることにしましたので、よろしくお願いいたします。  それでは、議題に入りたいと思います。議事次第にありますように、本日の議題 は「雇用・能力開発機構に関する省内事業仕分けについて」、次が「職業能力開発 政策の戦略的な実施について」、最後が「求職者支援制度における訓練の在り方に ついて」の3件です。1番目の議題の「雇用・能力開発機構に関する省内事業仕分け について」、事務局から説明していただいて議論をお願いしたいと思います。 ○小野職業能力開発局長 省内事業仕分けについて、詳細は後ほど課長からお話を させていただきますが、ここに至る経緯を私のほうから直接ご説明させていただき たいと思います。先週12日、これは公開で放映等もされましたのでご覧いただいた 方もいらっしゃるかもしれませんが、急遽、省内の事業仕分けの対象に雇用・能力 開発機構、特に総合大学校、この審議会でもいろいろとご議論いただいた施設の1 つですが、指導員の養成、再訓練を行っている大学校が対象として選定されまして 、公開で仕分けが行われたということがありました。その中で、改革案として私ど ものほうで案を出させていただいて議論がされたわけですが、1つは、この機構の 廃止・スリム化という中で、現在、相模原に総合大学校がありますが、この総合大 学校を東京の小平市にあります附属校の東京校のほうに移転をすることによりまし て、敷地売却を行う、と。これが1つの提案です。もう1つが、その総合大の行う指 導員訓練の中身に関するものでありまして、現在、高卒者に対して4年間の養成訓 練を行っていますが、こういう方式に替えて工業系の大学卒業者とか民間企業の出 身者・経験者等を広く指導員に登用するという方式に変えていくことを検討する、 と。そういうこととともに、指導員の再訓練をさらに強化して、できるだけ技術革 新、最先端の技術に対応できるような指導員訓練ができるようにということで、全 体として現役指導員に対する再訓練に重点化するという、こういう改革案を提示し て議論がなされました。  この案につきましては、予算のカットとかいろいろな見直し、機構本体が廃止を されるという中でコストパフォーマンスの観点からの案ということで提示をしたも のです。この案につきましては、まず、当分科会の議論を経ていないものでありま して、また、この審議会のほうで、3月3日に、私どものほうでそれまでの議論を集 約をしてこの審議会の報告書の案という形で出させていただき、議論を経てそれを 3月23日に分科会報告を取りまとめていただいたわけですが、この分科会の報告書案 の内容とも齟齬しているということにつきまして、担当行政の責任者としてこの場 を借りてお詫びを申し上げたいと思います。  事実経過から申し上げますと、3月3日に、この報告書案を審議会にお示しした時 点はもとよりのこと、取りまとめをいただいた3月23日の段階においても、私どもと してこの4月12日に提案した改革案というものを当時持っていたわけでは当然ありま せんで、4月の上旬に、急遽、能力開発機構総合大が省内事業仕分けの対象になると いうことが決まりまして、その過程でこの改革案を作成することになったというも のでありまして、本来であれば事前にこの審議会で十分に議論をいただいた上で判 断をしていくべきものでありましたけれども、そういうことができなかった次第で ございます。この点については、改めてお詫びを申し上げたいと思います。後ほど、 仕分けの案、その際の仕分け人とのやり取り、今日は資料も付けていますが、担当 課長からご説明させていただきますが、冒頭、こうした結果となりましたことをお 詫びを申し上げますとともに、また後ほど皆さんのほうから率直なご意見をいただ ければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○井上総務課長 ただいま小野がご説明させていただいた内容につきまして、お手 元の資料に即して具体的にご説明させていただきます。議事次第をご覧いただいて、 配付資料の資料1-1から資料1-4までが今回の厚生労働省省内事業仕分けの関係資料 です。これら4つの資料に沿ってご説明いたします。まず、資料1-1をご覧いただき たいと思います。この「第1回厚生労働省省内事業仕分け」ということでありまして 、これが4月12日に行われたところです。1の「議事(対象法人)」とありますが、 雇用・能力開発機構が取り上げられたということです。2の「民間有識者(仕分け人 )」とありますが、これはこの12日当日の仕分けに際しまして、ここに掲げられて いる6名の方が仕分け人として参画されたということです。  この資料の裏側をご覧いただきたいと思います。「厚生労働省省内事業仕分け 民 間有識者」とありまして、かなり多数の方のお名前が掲載されています。これが厚 生労働省の省内事業仕分けにあたられる仕分け人の方の全体像でありまして、この 中から6人の方が雇用・能力開発機構の仕分けに参画されたということです。  続きまして、資料1-2、資料1-3についてご説明いたします。この2点の資料を私ど も厚生労働省の事務方から省内仕分けに提出したものです。まず、資料1-2の表紙を めくっていただいて、雇用・能力開発機構の法人の概要ということで、組織、人員、 予算といったことについての基礎的なデータを取りまとめたものです。2頁以降です が、この雇用・能力開発機構が設置運営している能力開発施設などについて、それ ぞれの施設ごとに設置目的や施設数、あるいはそこでの訓練内容や訓練規模、就職率 、予算、職員数などをそれぞれ整理しております。  2頁から3頁が職業能力開発総合大学校の関係です。4頁、5頁が職業能力開発大学校 ・短期大学校(ポリテクカレッジ)の関係です。6頁、7頁が職業能力開発促進センタ ー(ポリテクセンター)の関係です。8頁が雇用促進住宅について概要を取りまとめ たものでありまして、住宅数や入居状況、整備費、雇用促進住宅にかかわるその経 緯などがまとめられております。  そして、9頁以下の資料、参考資料となっていますが、これは8頁までの資料を補足 する資料としての参考資料ということです。10頁から14頁にかけまして、総合大学校 の指導員訓練などについての補足資料を取りまとめております。10頁では平成21年度 に行われた定員の再編、11頁では工業系の国立大学法人とのコスト比較、12頁では国 立工科系大学と比較した場合の指導員訓練のカリキュラム、13頁では長期課程指導員 の養成訓練を卒業した者の就職状況、1964年から2007年ということで整理しておりま す。  14頁ですが、これは総合大における職業訓練指導員の再訓練について、その規模あ るいはその種類について整理しております。毎年、指導員総数の約3分の1に対して再 訓練を実施するという中で、下のほうに4つの再訓練の種類を区分しております。そ して、15頁と16頁が公共職業訓練、雇用・能力開発機構と都道府県に分けまして、受 講者数や就職率などを取りまとめております。  続きまして、資料1-3「独立行政法人雇用・能力開発機構の改革案について」改革 案説明資料ですが、これも事業仕分けの当日、私どもから提出したものです。1頁目 ですが、独立行政法人雇用・能力開発機構の改革案について総括表と全体像です。大 きく4つの柱がありますが、1が事務・事業の見直し等による国からの財政支出の削減 、2が組織のスリム化、3が余剰資産の売却、4が事務・事業の改革ということです。 このうち、1と2につきましては、昨年11月の行政刷新会議による事業仕分けに際しま して、雇用・能力開発機構の見直しの方針として厚生労働省から発表している内容で す。  3と4につきまして、それぞれこの後の資料でもう少し具体的にご説明いたします。 3の余剰資産の売却ですが、4頁をご覧いただきたいと思います。「余剰資産の売却」 とあって、左のほうに「具体的な内容」ということで3点に分けております。その(1) ですが、職業能力開発総合大学校について、事業仕分けの際に売却を公表した敷地 約3.6万平方メートルに加え、総合大学をその附属校のある小平のほうへ移転し、相模原の全敷 地約24万平方メートルを売却予定というものです。  (2)ですが、これは全国のポリテクセンター、ポリテクカレッジにつきまして、敷 地の利用状況の精査等を行いまして、駐車場あるいは外周部分の敷地等を中心に、 活用度の低い土地について処分をしていくというものです。この敷地につきまして は、機構自身の所有地と借地と両方ありまして、所有地については売却をしていく、 借地については返還することによって年間の借料が節減されるというものです。  (3)ですが、これはそのほかの施設について売却を進めていくというものです。ア ビリティ・ガーデンにつきましては本年2月に売却が行われたところです。「私の しごと館」については本年3月に廃止されたところです。「国際能力開発支援セン ター」についても本年中に廃止する予定です。これら施設は廃止後速やかに一般競 争による売却手続に移行していくこととしております。  この資料の右上をご覧いただきたいと思います。「効果額など」ということであ りまして、その敷地の売却あるいは借地の返還によってどの程度の売却益などが見 込まれるかということです。総合大相模原の全敷地につきましては簿価が115億円、 ポリテクセンター・ポリテクカレッジの処分可能と考えられる所有地の約2割が簿 価で73億円、同じくポリテクセンター・ポリテクカレッジの処分可能と考えられる 借地を返還すると年間の借料で約5億円と見込んでおります。アビリティ・ガーデ ンは本年2月に36億円で売却されました。私のしごと館、国際能力開発支援センター についてはそれぞれ簿価で269億円と77億円ということです。  続きまして、5頁をご覧いただきたいと思います。総括表にあった4の事務・事業 の改革というとでありまして、その改革事項・改革内容として、総合大について現 役指導員に対する再訓練に重点化するというものです。これをいくつかに分けて整 理していますが、1つは、上のほうの枠ですが、「課題、改革の背景」ということ で、いちばん上のポツの所は、現在、4年間の「指導員養成訓練」と「再訓練」を実 施しているということを書いています。2つ目のポツの所では、「指導員養成訓練」 について指導員としての就職率あるいはコスト・パフォーマンスの改善が課題であ るということ。3つ目のポツでは、そうした課題を踏まえた対応として工業系大学卒 業者等を広く指導員に登用することを検討中であるということ。4つ目のポツでは、 人材の資質向上あるいは質の高い訓練の実施を可能とするために、現役指導員を対 象とした再訓練が重要性を増しているということを書いております。  これを受けまして、改革の方向性として3点挙げております。1つは、(1)の最先端 技術の習得など、レベルアップが必要ではないか。2つ目には、産業構造の変化、訓 練科の統廃合等に伴いまして、指導科目の追加・転換が必要ではないか。3つ目では 、キャリア・コンサルティングなど、指導能力の向上が必要ではないかということ です。  これを受けた形で、下のほうの枠の「実施方法案」です。現在の再訓練の内容に ついては、いちばん下の所に参考として取りまとめておりますのでご参照いただけ ればと思いますが、今後、この再訓練につきまして、1つ目のポツにありますように 、毎年度、現役指導員の全員を対象に、頻度を高めて3日程度の再訓練を年2回実施 する。2つ目のポツは、さらに数回に1度は、指導技法の向上のための再訓練により 、質をトータルに向上する。そして、3つ目のポツですが、半年から1年程度の再訓 練についてもコースを多様化するなどによって充実させるといったような改革が考 えられないかということを書いております。いまご説明申し上げました資料1-3まで が事業仕分けに提出した資料でございます。  続きまして、資料1-4をご覧いただきたいと思います。これが12日に行われた仕分 けの議事を概要として取りまとめたものです。冒頭、いま申し上げた提出した資料 を雇用・能力開発機構の丸山理事長から説明した後、質疑応答が行われております。 1頁の途中からですが、仕分け人の中山氏から、高卒4年の養成訓練を見直していく 場合にどうか、という視点からの質疑や意見が出されていまして、それが次の頁ま で続いております。そして、2頁の中ほどからですが、仕分け人の阿部氏から、もの づくりについてどのように考えていくか、ということでの意見が出されております。 2頁の最後のほうからですが、仕分け人の大久保氏から、職業訓練に係るコストなど について、さまざまな側面から質疑や意見が出されております。これが4頁まで続い ております。4頁の最後のほうからですが、仕分け人の高橋氏から、総合大の定員を 200名から120名に減らした根拠、その需要予測などについての質疑、意見が出され ております。6頁までがこの仕分けの際のやり取りですが、最後のほうで、当省の 山井政務官からコメントがされております。7頁ですが、ここでは当日の6人の仕分 け人の方から順に評価とご意見が述べられております。これが8頁まで続きまして、 最後に長妻大臣が仕分けの最後にあたってコメントをしております。長妻大臣のコ メントの冒頭にありますように、「今日のご意見を踏まえて最終的に判断したい」 ということで締め括られております。説明については以上でございます。 ○今野分科会長 それでは、ご質問、ご意見をお願いします。 ○高倉委員 指導員の養成訓練についてはどういう方向性なのですか。やめていく という方向なのか、その辺を補足していただけますか。 ○小野職業能力開発局長 いまご説明したように、この12日に出した案では再訓練 に特化していくという案なのです。ただ、今日、先ほど申し上げたように、それが コストパフォーマンスの観点からそういう案を出させていただきましたけれども、 まさに、その点を皆さんからもご意見をいただきたいと思いますし、報告書では養 成訓練を引き続き実施していくというふうに書かれております。一方で、コストパ フォーマンスの観点から引き続き検討していくということも書かれているのですが 、基本は、今までの皆さんの議論では、養成訓練、再訓練は必要ではないかという ご意見だったと思いますので、例えば4年制を仮に見直す必要があるとすれば、養 成訓練としてそれに代わるものはどういうものがあるのか。先ほど、仕分け人との やり取りの中で、ホンダ学園の方ですか、この方は「職業教育の重要性は非常によ くわかる。ただ、そういう民間の経験とかを持っておられる方だったら例えば2年 というのも考えられるのではないか」とおっしゃられて、そこのところについて皆 さん方のほうからまたご意見もいただきたいと思いますし、私どものほうとしては 、当然、総合大というのはこれからも指導員訓練の拠点としてしっかり位置づけて いくということは基本的なスタンスとして維持しておりますし考えておりますので 、その中で、指導員訓練の質をいろいろな環境の変化に合わせてどう担保していく のか。一方で、どうしてもコストという視点からだけで議論するというのではない のですが、効率化というものは図っていかなければいけない。そういう中で、効率 化の要請と、一方で指導員訓練のニーズというものがあると思いますので、そうい うニーズに合わせてどういう体系で訓練をしていくのがいいのか、今のままがいい のか、見直すとしたらどういうものになるのか、そこは率直なご意見をいただきた いと思っております。 ○新谷委員 先ほどの小野局長の経過のご報告や、いまのご答弁でもあったのです が、この分科会での論議では、3月23日に分科会報告をまとめていただいた中に、 総合大学校のあり方については、今日も参考資料に付いていますが、3頁に、総合 大学校については引き続き指導員の養成訓練や再訓練を的確に実施していくべきで ある、ということも記載して確認されているわけです。その分科会報告をまとめる に至ったここでのコンセンサスというのは、職業訓練の指導員の養成あるいは再訓 練というのは非常に重要なミッションであって、それは国の責任で行うべきである という前提の下にこの分科会報告が取りまとめられたのではないかと思っておりま す。これがまとめられたのは3月23日です。ところが、先ほどの経過報告にもありま したように、省内仕分けにこれがまず取り上げられるということの背景がよくわか らないわけですが、4月12日には違う形で省内改革案という形で出されて、いま高倉 委員がご質問させていただいたように、養成訓練が廃止されるような内容で出てい ってしまっている。しかも、仕分けの議事録の概要を見てみると、6頁ですが、山井 政務官のほうからは「養成訓練については平成26年度にはゼロになるにもかかわら ず」という発言もあるということからすると、非常に遺憾であると思っております。 私どもがこの審議会の中で論議してきたことと全く違うことがこの省内仕分けで出 ていってしまっているということに対しては非常に遺憾であるということを労働側 としてまず申し上げておきたいと思っております。 ○上原委員 まず、局長からいろいろ冒頭に話があったわけですが、それはいまの 新谷委員の意見と全く同じで手順の問題を含めて非常に遺憾に思います。  もう1つは、改革案で、4年間の指導員の養成訓練をやめて、現役の指導員に対す る再訓練に特化するというようなことが書かれているわけですが、教育というのは もともとコストとパフォーマンスが非常に難しい領域なのです。指摘されているよ うに、総合大もいろいろ改善すべきパフォーマンスは多々あると思うのですが、こ れを一回潰してしまうと、いずれ必要があってまた再構築しようとすると費用も時 間も大変かかるというところが大きな問題だと思うのです。あと、就職率が低いと いうようなことが指摘されているわけですが、ここ一連の予算削減で、例えばポリ テクセンターなどが採用すべき人員を落としているというような事実もあるので、 卒業後の入口が減っているわけですから、そこら辺も配慮すべきところなのかなと 。一方で、そこに入れなくても、それぞれの大企業や中小企業でものづくりの現場 にリーダーとして活躍されているのだろうと思うので、それはそれで意義があるの ではないかなと思うわけです。  それで、改革案で工業系の大学とか民間企業の出身者を指導員に採用するという ことなのですが、例えば教職課程を出た学生がいきなり先生になれるかというと、 習っている学生のほうでも「まだ新米だ」というようなことがあるのに代表される ように、大変時間がかかるのではないかと思うのです。いずれ、現指導員も高齢化 して、補充が必要になると思うのですが、そういうときに十分に対応できるのか審 議を尽くす必要があると思います。  それから、事業仕分けで「削減削減」ということで指導員もその削減の対象にな っているわけで、「民間に任せろ」とか「地方に任せろ」というのはよく出てくる 意見なのですが、そもそも、この職業訓練のうち、ものづくり、特にこの総合大で やっているような領域というのはそろばんを弾いてやるような分野ではないと思う のです。要するに、機械設備は大変高価だし、デジタル化の時代で進歩も大変速い わけです。そういう中で民間がやったときに、利益重視になって、やってくれるよ うな所が出てくるのかどうかという議論も押さえる必要があるので、今まで、そも そも独法で国がこういうことを担っていくべきだと考えていたもともとの趣旨をよ く押さえる必要があるのではないか。  それから、もう1つ、売却して益の試算がいくつか出ていましたが、もともと、 大学校の用地取得というのは雇用保険事業を財源として取得したものだというふう に認識しているわけで、売却益が国庫に入るということなのですが、これはもとも と事業主が支払った雇用保険料によるものなのです。したがって、一方で、二事業 がリーマンショック以降の一連の対応で財源が不足して、現在、雇用保険の失業保 険の給付の積立てから借り入れを行っているというような現状があるようですから 、その売却益について、お金に色は付いていないわけですが、せめて、雇用保険二 事業に戻すような仕組みというものを国でも是非考えてほしいと思うところです。 ○井上委員 長期課程に関しては、いまお二方の委員からもありまして、私も同感 でございます。また、3月23日に職員の雇用の問題についても随分と議論があった ことは皆さんもご記憶かと思いますが、資料1-3の3頁の新体制の理念の中ですが、 相変わらず「移管の際に改めて採用試験を行い」、しかも赤文字になっていますが 、「希望、意欲及び能力のある職員を採用し」となっています。この問題に関して は、3月23日の審議会でも、十分ではない中で何とか納得して私どもも引きました けれども、こういうものが4月12日の省内仕分けの中でパフォーマンス的に出てき たことに関しては非常に遺憾と言わざるを得ません。 ○今野分科会長 ほかにいかがですか。今日、状況が少し変わったので、事務局に いろいろ聞いてもいいのですが、聞く前に皆さんの意見をバーッと聞いたほうがい いかなと思っていますので、どんどん言っていただきたいと思うのです。 ○新谷委員 質問なのですが、先ほど上原委員が指摘された中で、例えば相模原の 敷地の24万平方メートルの売却とかアビリティ・ガーデンの36億円の売却額とか、国庫返納と 資料に書いてありますが、一般会計のほうに戻されるのか、それとも雇用保険二事 業のほうに戻されるのか、その辺を確認させてほしいのです。 ○井上総務課長 これは国庫と書いていますけれども、一般会計ということではな くて、雇用保険二事業に返っていくということです。 ○黒澤委員 4年制の養成についての意見なのですが、工学系の大学とのコスト比 較というようなものもあります。仕分けの議論の中では、指導員として就職しない から、だからその存在意義がないのだという形で議論されているのですが、そもそ も、なぜ国立大学に補助金を入れるのだという観点から考えると、イコールフッテ ィングで成果を比較すればよいのではないか。総合大学校で4年間の教育を受けて 工学学士を得る人たちの就職率は非常に高いですし、その部分では、先ほどの意見 にもありましたけれども、指導員として必ずしも就職しなかったとしても、行く行 くは民間の企業で指導の立場につくということを考えれば、それを根拠として全面 的に出すということをしてもよろしいのではないか。その点から言うと、ここでは 参考資料として学生1人当り年間コストが書かれているのですが、それ以外にも、 例えば、国立大学法人における就職率とか、国立大学法人の場合は大学院への進学 が非常に多いのでその辺りをどう考えるかなのですが、あと、就職した後の平均の 年収とか、そのあたりのデータを整備して武装してみてはいかがかなという気がい たしました。 ○新谷委員 仕分けの議論を見ていてもそうなのですが、ものづくりに対する国の スタンスといいますか、特にこの分野の職業訓練に対するスタンスというところを もっと強く主張するべきではないかなと思っています。この仕分け人の方々はいろ いろな分野の方から有識者の方がお集まりになっているわけですが、例えばものづ くり産業の産出する付加価値が一体どういうものなのかご存じなのかというところ で少し疑問に感じていまして、例えば日本の輸出総額に占めるものづくり産業の輸 出額というのは、実は、ほぼ9割なのです。日本のような資源を輸入して、あるいは 食糧を輸入するというときに外貨が当然要りますので、その外貨をどうやって稼ぐ かといったときに日本から輸出するものというのはこのものづくり産業の製品であ るわけです。例えば、2009年、昨年は輸出額が随分落ち込みましたが、それでも輸 出総額54兆円のうちの9割がものづくり産業の製品ですし、2008年では81兆円輸出し ているのですが、これも9割がものづくり産業の製品ということなのです。ものづく りというのは、一朝一夕にできるわけではなくて、その国の競争力に依存するわけ でありまして、ものづくりというのはその国の例えばサイエンス、科学技術の水準 とかテクノロジー、技術の水準、それプラス総合大学校が担っている技能、テクニ ックという、サイエンスとテクノロジーとテクニックの融合体で競争力というもの が決まるわけなのです。その技能の養成というところを国が当然担っているわけで して、その指導員の養成をこの総合大学校が担うという非常に重要なミッションが あるわけでありまして、単に、土地を売却して幾ら国庫に返すとか、そんな瑣末な 論議ではなくて、国の競争力がどうあるべきか、その中で国が果たす役割はどうあ るべきかということは当然考えて、厚生労働省として、あるいは能開局として、そ れを正々堂々と主張するべきではなかったかなと思っているわけです。  昨年末に国が新成長戦略というものを発表しまして、その成長のプラットホーム の中に、人材・雇用というところを6つの柱の1つとして組み込んだわけでありまし て、そういった流れからいっても、もっと大きな観点からこのものづくりの担う役 割、総合大学校の担う役割というものを主張してほしいと思っております。この分 科会でもすでに考え方を示しているわけでありますし、また、もともとのこのお金 の出所というのは事業主負担の雇用保険二事業の部分ですし、ユーザーの労働者側 も当然そうでありますけれども、この指導員の養成については慎重に、かつ長期的 な視野に立って是非検討していただきたいと思っております。 ○上原委員 いまの新谷さんの意見に全く同感なのですが、昨年、経産省でものづ くり中小企業製品開発等支援補助金という事業があったのです。それに対して、全 国中央会が窓口になって実施したのですが、関東ブロックだけでも5,151件の公募 があって、もちろん予算が限られていますから、審査をして、そのうち909件が採 択されたということなのです。だから、関東地区だけでも5倍の応募があったとい うことなのです。それは、逆に言うと、政策の誘導によっては、ものづくりのさま ざまな企業が虎視眈々とジッと我慢をして研究開発に力を入れたいというふうに考 えている証左なのです。ところが、去年の事業仕分け第1陣で次の予算が切られてし まったのです。だから、全くいまの意見と同じで、現場がわかっているのかなと。 この仕分け人の方たちの中にも、ものづくりが衰退しているからという意見やコメ ントの流れが出ているのですが、逆に言うと、成長戦略で語られている医療とか介 護とか観光とか、金融も入るのかもしれませんが、そういうものがどこまで成長を カバーできるのかという議論と、少し落ちているのならばものづくりを上げるため にどうするのだという真面目な議論がされてしかるべきで、そのためにはこういう 中核になる総合大というのはリファインしてもっと脚光を浴びてしかるべきなので す。それを、やれ、パフォーマンスが低いから土地を含めて売ってしまって指導員 を半減するというとんでもない議論なのかなと、自分はそういうふうに感じます。 ○高橋委員 今回の件は何よりも手続的に相当に大きな問題があったことは否めな いわけでありまして、本件に関しては能開機構の廃止を視野に置いて昨年来ずっと この分科会で議論を進めてきたわけでありまして、その間、総合大についても事務 局から詳細な資料をお出しいただいてこの分科会でまさに議論をして、その結果と して3月23日に報告書を取りまとめたと。その内容は、先ほど新谷委員に紹介して いただいたとおりの内容であって、養成訓練については引き続き的確に実施をして いくという大きな方向性で公労使の3者の皆さんが納得して報告書をまとめて、そ のまとめにあたっては厚生労働省の事務局の方が努力をされてまとめて、この4者 一体でまとめた報告書に基づいて法律案要綱もおおむね妥当の答申をした。すなわ ち、法律案要綱はこの報告書がベースになっているということが既定の事実ではな いかと思うのです。そうしてまとめて、日をまだ1カ月も経たないうちに、厚生労 働省自らがこの報告書とは違うことを一方的に発表されたというような形になって おりまして、これは本当に遺憾であると言わざるを得ません。こういうことになっ てしまいますと、分科会あるいは労働政策審議会でまとめても後で勝手に厚生労働 省で直せるのです、直してしまうのです、というような悪しき前例にもなってしま うことになるわけでありまして、そうなるとこの審議会そのものが本当に形骸化を して、雇用労働政策の決定プロセスにあたっての重要な部分がまさに欠落をしてし まう。厚生労働省が勝手に雇用労働政策を決めてしまうというようなことにもつな がりかねない非常に憂慮すべき事態ではなかったのかと思っておりまして、冒頭、 局長自ら陳謝の言葉をいただきましたけれども、改めて今回の件は誠に遺憾であり まして、むしろ起きてしまったことですので、これからはこうした事態を受けて今 後どういうふうにこの問題を収束させていくのかということについて、また委員の 皆様と意見交換をしていきながら考えていきたいというふうに私は個人的には思っ ております。 ○今野分科会長 多くのいろいろな意見、しかも厳しい意見をいただいたので、そ れを踏まえて事務局としては審議をどのように今後進めていくべきと考えている のか。この案も事務局としてどうするのかということを一度整理をしてもらって、 それを踏まえてもう一度ここで議論をするということがいいと思います。今日はず っと意見をいただきましたので、いま私が申しましたように、事務局としてどうい う議論の進め方をして、事務局としてどういう案を今後考えるのかということを整 理していただく。それを踏まえて、次回以降の分科会で議論をしていくということ にするのがいいかなと思うのです。ですから、今日は言いたいことは全部言ってい ただくということが重要だと思いますが、だいぶ時間も経過したのでそろそろ次の 議題にいきたいと思いますが、今日は私がいま言ったようなまとめにさせていただ いて、やはり言い残したことがある、という方がいらっしゃれば言っておいていた だいたほうがいいと思うのです。 ○三村委員 今、大学設置基準の中にキャリアガイダンスが義務付けられるなど、 大学を卒業してもキャリア形成が十分でないという状況があるわけです。こういう 中で、総合大学校は、職業訓練の専門職大学院に近い機能を持ってもいいと思うの です。私が所属しているのは専門職大学院としての教職大学院です。総合大学校に ついても専門職に特化した大学校として、修士課程レベルの内容を充実し、一つの 職業訓練学といったものを打ち立てていくのも一考かと思われます。カリキュラム の中にキャリア形成科目を盛り込み、特色を活かしながら、キャリア形成を伴った 人材育成を大学が担うことがその新しいトレンドとして進んでおります。そういう 方向性の中で、この総合大学校の職業訓練学というもののあり方を検討する必要は あるかと思います。 ○今野分科会長 それでは、今日は先ほど私が言ったような形でまとめさせていた だきますので、事務局の方、よろしくお願いいたします。しっかりやってください 。それでは、次の議題に入ります。「職業能力開発政策の戦略的な実施について」 ということで、事務局から説明をしていただいて議論をしたいと思います。よろし くお願いします。 ○井上総務課長 「職業能力開発政策の戦略的な実施について」ということで、資 料2をご覧いただきたいと思います。この資料2全体で一まとめにしてありますが、 この中に資料2-1から資料2-6までの資料が含まれておりますので、この後ご説明す る中でご参照いただきたいと思います。初めに、本分科会におきましてこの議題に ついてご議論いただきます背景と経緯についてご説明いたします。昨年の12月30日 に、10年先の2020年を見据えて新成長戦略を策定すべく、「新成長戦略(基本方針 )」が閣議決定されたところです。この基本方針につきましては、お手元の資料2- 5、33頁から始まる資料をご覧いただきたいと思います。この資料の中の37頁の上か ら4行目の辺りにおきまして、この基本方針の中で本年6月を目途に行程表と併せて 「新成長戦略」を取りまとめることとされているところです。  続きまして、34頁をご覧いただきたいと思います。34頁の上のほうに枠囲みをし ている所ですが、「雇用・人材戦略」につきましては、雇用戦略対話等を踏まえ、 2020までの具体的な目標を定めるということとされております。こうしたことを受 けまして、厚生労働省としましては、この新成長戦略に盛り込む施策と目標を、政 府全体のスケジュールに合わせて検討を進めていく必要があると考えているところ です。また、ご承知のとおり、「雇用戦略対話」につきましては、雇用戦略に関す る重要事項について、総理主導の下、労働界・産業界を始めとしまして各界のリー ダー、あるいは有識者の方々にご参加いただき、意見交換と合意形成を図ることを 目的として設けられているところですが、その昨年12月に行われた第2回の会合に おきまして、有識者の方から雇用戦略について、目標年次における数値目標を設 定し、それを実現するための具体策を明記し、PDCAサイクルに則り、整合性のと れた制度・政策を設計し、その運用実態の検証を実施する必要があるというご意 見がありました。  そして、資料2-6をご覧いただきたいと思いますが、39頁から始まる所です。い ま申し上げましたようなところから、厚生労働省といたしましては、資料2-6の39 頁にあるように、1つには労働政策の運用実績を検証、改善するPDCAの仕組みを設 け、それと同時に、資料の40頁をご参照いただきたいのですが、このPDCAサイク ルを効果的に実施するため、労働政策審議会の下に点検評価部会を設置するとい うことが必要ではないかと考え、4月1日の労働政策審議会においてご審議いただ きご了承をいただいているところです。それと同時に、このPDCAサイクルの基に なってくる分野ごとのその目標につきましては、その内容に専門性のある分科会 でご審議いただくこととされているところです。  こうしたことから、新成長戦略に盛り込む施策、2020年までの目標につきまし て、PDCAサイクルにおいて検証・改善していくということから、この目標につい て内容をご審議いただきたいと考えているところです。  資料2-4をご覧いただきたいと思います。これは、雇用戦略対話のメンバーで あり、厚生労働省でお願いしている雇用政策研究会の座長でもあられます慶應義 塾大学の樋口先生が、「雇用政策の戦略的な実施について(試案)」ということ で作成され、3月24日の雇用政策研究会に提出されているものです。厚生労働省 としては、新成長戦略に盛り込む施策と目標を検討する際に、この樋口先生の作 成された試案を参照しながら作成していくことが適当ではないかと考えて、4月1 日の労働政策審議会でこの樋口先生の試案を説明させていただいているところで す。本日は、この新成長戦略に盛り込む施策と、その長期目標、PDCAサイクルで 検証するこれらの施策の年度目標に関して、長期目標と年度目標について、ご審 議をいただきたいと考えております。  資料2-1、通し頁で1頁から始まる資料です。この中で、グレーで網掛けをして いる部分が特に当分科会でのご審議をお願いしたいところです。まず、資料2-1 の全体像ですが、全体雇用人材戦略の職業能力開発関係、広く見ての関係する部 分を抜粋しております。その中で、I「雇用による内需拡大と国民参加」という ことで、その中で若年フリーターの話が書いてあります。  2頁の2ですが、「ニートの縮減」ということが記載されていて、ここがご審議 いただきたいところの1点です。目標として、地域若者サポートステーション事業 の支援による、ニートの就職等進路決定者数を、2011年度から2020年度の10年間 の総計として、10万人と考えたいということです。そのための関連施策として、 (1)から(3)までのものを考えているところです。3の「その他」ということで、 (1)ジョブ・カード制度の日本版NVQへの発展、あるいは(2)「キャリア教育推進 に向けた人材育成等の支援」が掲げられています。  3頁では障害者(チャレンジド)の就業率の向上ということが記載されていま す。  4頁のIIで「成長力を支える『トランポリン型社会』の構築」です。1は、この あともまたご検討いただく「求職者支援制度の創設」です。2の「ジョブ・カード 制度の日本版NVQへの発展に向けた取組」には、目標としてジョブ・カード取得者 を2020年度に300万人にするというものを掲げております。そのための施策として 、5頁の初めまで続いておりますが、(1)から(3)を考えているところです。  5頁ですが、3の「公共職業訓練(離職者訓練)」ということです。これについ て、目標として公共職業訓練受講者の2020年度における就職率を、施設内訓練80 %、委託訓練65%に引き上げていきたいという考え方です。4の「労働者の職業 生涯にわたる自発的な能力開発支援」ということで、自己啓発を行っている労働 者の割合を、2020年には正社員で70%、非正社員で50%としていきたいというも のです。  資料2-2は、いま説明した目標としてご議論いただきたい内容について、数値を 中心に整理したものです。いま説明した中で、(4)の「緊急人材育成支援事業によ る基金訓練の受講者数及び就職率」は、先ほどの所には入っていなかったもので す。この事業については平成22年度までの事業となっている関係で、本文には入 っておりませんでしたが、重要な施策課題ですので、目標として設定したいと考 えており、ここに入れております。ご審議のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○今野分科会長 ちょっと確認させていただきたいのですが、ここの役割ですが 、資料2-1でこういう案が出されたわけです。ここの分科会としては、例えばい ろいろ議論して、まあ、これでいいかというようにするとか、あるいはそうでは なくていろいろ改善点があるのだったら、この審議会として議論してコメントを 整理して、審議会としてコメントを出して、それを新成長戦略のほうに反映する ようにしていただくと、こういう議論の仕方でいいですか。もしここで皆さんが 問題ないと言えば、「はい、了承」で終わりですし、「いや、ここはこうしたほ うがいい」と言うのだったら、コメントを整理する。そうすればいいということ ですね。 ○井上総務課長 いま座長がおっしゃっていただいている方向で、いま説明申し 上げた目標の内容について、適切かどうかということで、ご審議をいただければ と思っております。 ○今野分科会長 もう1つ、議論の範囲ですが、目標はもちろんそうですが、そ れに関連する施策も書いてあるので、施策については議論するなということでも ないですね。議論の範囲をちゃんと決めてあげないと、かわいそうですから。 ○井上総務課長 施策についてもご審議の対象ということで、お願いいたします。 ○今野分科会長 ということで、位置づけがはっきりしましたので、ご意見よろ しくお願いします。 ○新谷委員 いま分科会長が確認いただいたことと全く同じことを聞こうと思っ ていました。実は新成長戦略のうち、特に雇用のところを審議しているのが雇用 戦略対話、これは首相官邸に設置されている政・労・使の協議の場なのですが、 その下にワーキンググループが設置されています。実はこの数字の論議は、その ワーキンググループでも全く同じことを論議しているのです。私はそのワーキン ググループの委員の1人なので、それはよく承知をしているのですが、例えば数 字であるとか、政策であるとか、別の所で審議をしていて、またここの分科会 でも審議をするといったときに、これはどのように調整をとるのかというところ がいまの答弁だとはっきりしなくて、いったい誰が持ち込んでどのようにするの ですか。厚生労働省の役割もよくわからないのですが、これはうまくやらないと 、最終的に雇用戦略対応のワーキンググループが数字の取りまとめをすると思う のですが、その辺をクリアにしておかないと、ここでの論議がうまくつながらな いのではないかという懸念があります。 ○今野分科会長 どうですか。私はそういうことがあるから、「ここでコメン トとして整理すればいいのですね」という言葉を使ったのですが、井上さん、 それでいいですか。 ○井上総務課長 雇用戦略対話の議論が平行的に進んでいるという状況です。 最終的には政府の戦略ということで、整合性のあるものに調整していくことは 必要だと、考えております。本日ご審議いただいて、例えば修正に当たるよう な意見等ありましたら、私どもが関係の部局と調整してまいりたいと思います。 ○今野分科会長 ということは、私の整理でいいのですか。コメントを整理す ればいいと。 ○新谷委員 懸念しているのは、省庁間の縄張り争いではないのですが、例え ばこの資料の33頁以降に、昨年の12月30日に政府として出した新成長戦略の中 に雇用人材戦略が入っています。ここにジョブ・カードの取得300万人や、日 本版NVQの導入がいきなりポンと出てきているわけですね。これは数字を含め て、たぶんこの審議会でかつて論議をしたことがない内容だと思います。こう いったものが突然出てきて、これをベースに審議しろというのが、今度また逆 流してきているわけですよね。だから、こっちは内閣府中心にやられた内容だ と思うのですが、「政府として」と言ったときに、その政府というのは内閣府 なのか厚生労働省なのか、よくわからないところがあって、その辺の役所間の 調整をどうやっていくのかが、いちばん聞きたかったところなのです。 ○今野分科会長 いま聞きますが、その前にここの役割はコメントを整理する でいいですね。では、調整の問題。 ○井上総務課長 昨年末に新成長戦略の基本方針、先ほどご説明したものが策定 されたところから出発しているのは事実ですが、先ほど申し上げたように、最終 的には今回、政府全体の成長戦略として整合性のあるものとなるよう、当分科会 でご審議いただいた内容を私どものほうで整理して、政府全体の新成長戦略の担 当部局のほうにも伝えながら、調整を図ってまいりたいと考えております。 ○今野分科会長 言葉の問題ですが、審議するとここで決定しなければいけない 感じになるから、コメントの整理というのがいちばんいいかなと思うのです。そ れでいきたいと思います。ご意見を言っていただければと思います。いま新谷さ んが言われた件で、例えば300万人は無理だというのも、1つのコメントです。も しあれば、そこで合意できれば、それもコメントですし。 ○黒澤委員 数値目標を掲げるのは結構なことだと思うのですが、5頁に書いて あるように、「経済・社会情勢等が変化するため」ということがあります。数値 目標を掲げて、それが満たされたら万々歳で、そうでなければ困ったなではなく 、是非お願いしたいのは、ここにPDCAサイクルとありますが、そのチェックの部 分です。特に審議会の下に評価会を設けるということがありましたが、今後はこ れまで以上にそのチェックのときに、単に就職率という数値とか、満足比率がど のぐらいですといった安易な記述的な統計だけではなく、それがどうしてそうな ったのかという要因を明らかにできるような分析を付けた形でのチェックにして いただきたい。  これは我々研究者ですとか、シンクタンクの研究者の役割でもあると思うので すが、そういったことを私どもがやりたいと思っても、国民全体からランダムに 調査をすることになってしまいます。施策というのはどうしてもある一定のグル ープをターゲットにしたものが多いので、そのように国民全体という母集団から ランダムに抽出してしまうと、その施策の対象となる人たちになかなか調査が及 ばないことになってしまって、きちんとした分析ができないということになって しまいます。  それとともに、何か施策に伴いあるサービスを提供したといった場合、サービ スを受けなかった人を比較対照としてサンプルする必要があるわけですが、その 比較対照を全体から抽出すると、その施策の対象外であるような人たちが含まれ てしまって、これまた問題になっています。そういった意味でも、何かの施策評 価をする場合は、その施策の対象となるような方々に、例えばハローワークだっ たらハローワークで調査表を配るとか、そういったことは我々研究者が独自でや ろうとしても、非常に難しいのですね。そういったことを厚生労働省なり、政府 の側、施策を運営、そして立案する側で一緒になって、是非評価分析をするため のデータ整備をして頂きたいということ。そしてまた、できればそのデータを我 々第三者にも提供していただき、そして分析を委ねていただきたい。  私はよくご批判を受けることがあるのですが、その結果が悪かったとしても、 それはその施策が悪いということには必ずしもつながらない。しかも、そういっ た詳細な分析をすればするほど、白・黒として結果が出るわけではなく、例えば ジョブ・カードをとってみても、ジョブ・カードの担う役割は非常に多様なわけ です。だから、そのジョブ・カードの多様な役割の中で、こういったやり方をす ると、もっと効果が出るのではないかとか、詳細な分析をすると、そういったこ とが明らかになってくるわけで、そのPDCAサイクルの中でそういった分析を中に 入れながら、より良い施策にどんどんと成就させるというプロセスが、いままで 欠落していたのではないか。先ほどの仕分けなどでも、そういった分析をやって いれば、その結果をこういう側面もあるのだという形で存在意義を提示できたと 思うのですが、それがないために逆になし崩しにまってしまうということがあっ たと思うので、是非その部分をお願いしたいと思います。長くなってすみません。 ○今野分科会長 何かありますか。 ○井上総務課長 ただいまご意見をいただきましたように、まずPDCAサイクルに よる検証・実施が多角的な観点から十分行われるようにしたいと考えております し、またその検証・実施をしたあとに、それが施策の改善に結び付いていくよう な形で、私どもは必要な作業はしていきたいと考えております。 ○高橋委員 資料の7頁に、今回の一連の目標を整理していただいているわけです 。(1)(2)(3)(5)という数値目標については、先ほど新谷委員からもご指摘がありました が、雇用戦略対話というフレームワークで検討がなされている数値なので、本日は それについては私はコメントしませんが、(4)「緊急人材育成支援事業による基金訓 練の受講者数及び就職率」は、雇用戦略対話で議論されている数字ではなくて、今 回、厚生労働省として出されている目標ではないかというのが私の理解なのです。  その上で、(1)(2)(3)(5)については、いろいろなフレームワークで数字目標の設定の 背後となる考え方とか、そういうのが示されているのです。今回の(4)の受講者数15 万人、就職率60%と設定をした背景というか、考え方というか、そういうことにつ いて是非教えていただきたいと思います。  その上で、私のコメントも言ってしまいますと、これは本来、いわゆる第2のセー フティネットと位置づけをされている制度であって、そういう意味においては本来 であれば、例えば受講者数にしてみれば、少なければ少ないほどいいのですね。こ ういう第2のセーフティネットにかからないで、労働市場に戻って働いていただくこ とがとても重要であって、このプログラム、基金訓練に何万人受講しなければいけ ないのだという話でもないような気がするのです。そういう意味において、目標の 立て方として果たしてこれが、先ほど黒澤委員からもご指摘がありましたが、就職 率にしてもそうですが、現時点においての直近の就職率がまだイメージされていな いままに、60%とされていることも含めて、答弁いただければと思いますが。 ○今野分科会長 いかがですか。 ○戸ヶ崎主任職業能力開発指導官 受講者数については、ご存じのとおりこれは基 金事業として実施しております。いろいろな経緯がありますが、今年度末までの事 業ということで、当初は平成23年度末までの予定だったのですが、平成22年度で終 了ということになりました。平成23年度末までに、基本的に35万人の受講機会を確 保するということで、いろいろ経緯はあるのですが、雇用保険の受給資格者として 受講なさる方、あるいはそれ以外の方ということで、大体半分ずつぐらいを面倒見 ていこうということで、35万人という数字になったのですが、平成23年度分が抜け 落ちたということで、昨年度および今年度で23万人の訓練機会を確保しようという ことで、昨年度については8万人、今年度については15万人というように按分させて いただいている分です。  就職率の60%なのですが、公共職業訓練の委託訓練の就職率が大体65%程度とい うことも踏まえて、かつこのあとの議論でも出てくるかと思いますが、基金訓練は 7月29日からスタートしているのですが、7月、8月受講で11月末に修了した方の3カ 月後の就職率が、大体55%程度ということで、60%という目標にしております。簡 単ですが、以上です。 ○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。雇用戦略対話で、こういうのを議論し ている。新谷さんはそこにも入られているということですが、別にここは雇用戦略 対話の場とは関係ないところなので、同じ人がやっていてもですね。だから、一応 ここは能力開発について専門的に議論する場ですので、そういう立場からコメント をいただければと思います。 ○新谷委員 私が申し上げているのは全くそのとおりで、実はこちらが第一義的に 、我々職業能力開発分科会は、国としての能力開発のあり方を考える専門の分科会 だと思いますので、まずこちらのほうで先に数字の検証なり、あり方を考えて、そ れを雇用戦略対話のワーキンググループに持ち込むという手順が本来あるべき姿で はないかと考えます。そういった意味でいくと、実は今日いただいている資料の中 のジョブ・カードの300万人や日本版NVQなどは、向こうから持ち込まれた案件なの です。これを審議しろということになっているのですが、300万人というのは本当に 実現可能性があるのかどうか。この300万人というものが、どういった背景で出てき た数字なのか、あるいは実現可能性がいったいあるのか、ないのかといったところ をきちんと審議しないと、これがまずありきで動くというのは、ちょっといかがな ものかなと思います。これは経緯がよくわからなくて、私どものほうもいきなり300 万人という数字が出てきて、日本版NVQについても経過がよくわかりません。この辺 のあるべき姿を本当によく審議をしておかないといけないのではないかなというの が懸念としてあります。ですから、まずここで審議をするべきだと考えています。  もう1点、中身の問題で、5頁の公共職業訓練の2020年に向けての目標が、実は就 職率を目標にすると書いてあるのですね。ところが、就職率を目標にするといった ときに、訓練を受けている受講者の数が全然目標になっていなくて、大事なのは本 当は受講者と就職率とセットで審議されるべきであって、いま受講者22万人という数字が 出ているのですが、2020年にはいったい何万人にするのか。これは予算とも絡んで くる話なのですが、そこは全然目標になっていなくて、単に就職率だけというと、 10万人に減らされてしまっても目標になり得るわけで、本来であればここはやはり 受講者の数を目標にするべきだと考えています。それが欠落しているのではないか なと感じております。以上です。 ○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。最初に私から申し上げておきたいので すが、今日は重要な重い案件が3つぐらいあって、既に進行がかなり遅れているの です。重要な問題が多いので、今日は12時を過ぎてもしょうがないかなと思ってい ますので、12時になってどうしてもいられない方は、遠慮なく立っていただいて結 構ですので、最初に申し上げておきたいと思います。司会者がこんなことを言うと 何なのですが、必ず予定時間は過ぎると思っています。  それでは、ご意見をよろしくお願いします。もしよろしければ、今日いただいた コメントを整理して、そのコメントが審議会のコメントとしていいかどうか。一応 スケジュールとしては6月に新成長戦略を取りまとめるのですよね。その前に雇用戦 略対話もあるようですので、スケジュール上の問題があると思いますので、今日出 た意見のコメントを整理して、そういう整理でいいかを各委員に個別にご確認いた だいて、その結果を私に知らせていただいて、全体の整理として提出するという形 にできればなと思っているのですが、事務局としてはその手順でいいですか。 ○井上総務課長 そのようにお願いできればと思っております。 ○今野分科会長 ですから、パーッとコメントしていただいたほうがいいのです。 ○上原委員 35頁の新成長戦略のマクロの話だから、ここで言ってもしょうがない のかもしれないのですが、どちらかと言うと現政権は内需主導型なのですが、本当 にそれだけで成長するのかなという疑問があるのが1つです。  それから、トランポリン型社会はわかるのだけれども、北欧の積極的労働市場政 策といったときに、北欧は高福祉、高負担ですよね。その辺の財源の問題などは議 論しないで、高福祉のほうだけ言ってもちょっと無理があるのかなと。その2点で すね。 ○小野職業能力開発局長 今日お出しいただいた意見はまた集約をして、それぞれ の委員にもお諮りしたいと思うのです。先ほどの雇用戦略対話とこの審議会との関 係は、この分科会だけの話にとどまりませんので、どのように整理するか。労働政 策審議会、これは政策統括官部局が窓口になりますが、そこと戦略対話の事務局、 内閣府、その辺を一度整理して、それも含めてまた皆さんのご意見を伺いたいと思 いますので、そういう整理とさせていただきたいと思います。 ○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。 ○黒澤委員 先ほどNVQの話が出ましたが、私は個人的にはそういったNVQ的な、個 人の能力情報を外部の市場に開示させる、認識させるという評価制度の構築は大変 重要だと思うのです。こういったことを推進していくことにより、その結果どうな るかということについても、やはり考える必要がある。つまり、能力情報を開示す るということは、雇用の流動化につながるということですよね。その雇用の流動化 につながるということは、結局は個々人が自分の費用負担、自分の責任で能力開発 をしなければいけないといった必要性が増すわけですから、その意味でもやはり個 々人がどういった企業に雇われている、雇われていない、非正規、正規にかかわら ず、自分の能力開発を行いやすいような社会を整備していく必要性がますます高ま るという点については、もうちょっと強調してもいいのかなと思いました。以上で す。 ○今野分科会長 よろしいですか。私から1つだけ質問したいのですが、トランポリ ン型社会でしたか。これは何ですか。 ○井上総務課長 明確な定義があるわけではないと思うのですが、新成長戦略の基 本方針にも使われておりますが、雇用保険、あるいは生活保護等々、いろいろなセ ーフティネットがあるわけです。例えば失業などをしたときに、そのまま落ち込ん だまま這い上がれないということではなく、そういったセーフティネットを使って 、また元に戻っていけると、そういうことがイメージされているのだと思います。 ○上原委員 すべり台型社会というのがあるのです。一度下りると上がれない。そ れに対する言葉だと思います。 ○今野分科会長 スキージャンプ台社会というのもあってもいいですよね。私のコ メントは気にしないでいいですからね。コメントではないです。 ○三村委員 先ほどのジョブ・カードの件は、ニートの縮減と関連が深いと思いま す。内閣府も引きこもりに関して関心をお持ちのようですが、私も東京都の青少年 治安対策本部で、いわゆる引きこもり等に関する年齢層別未然防止対策調査検討委 員会に入って、キャリア形成の部分から引きこもりの検討をしました。引きこもり は、現象的に現れているものにプラスして、ひきこもりではないが考えていること や経験などがひきこもりの若者とほとんど変わらない親和群という若者が約5%いる ことが判明しました。これがニートにつながるとなると、いちばん重要なのはそう いう若者に寄り添っていく支援体制をどうするかということだと思いますね。  ジョブ・カードの場合、職業経験の少ない者、あるいはいま職業を探している若 者を対象とするわけですので親和群の若者に寄り添う支援体制とも言えるのです。 そうした親和群の若者たちは学校段階にも多くいるということです。一方、ジョブ ・カードの300万人の目標を達成するその施策の中に、学校教育とのつながりを全 く意識しないのは問題だと思います。少なくとも私は高校を卒業する生徒全員に、 ジョブ・カードについて十分に知らせ、知識として持つことが必要だと思う。高校 卒業当時は問題に直面していないが、その後、課題に直面したときに知識として持 っていると、支援につながろうという行動をとることができるのです。そういった 意味で、やはり学校教育とのつながりをもうちょっと意識することで、300万人と いうのは到底実現不可能な数字ではないと思います。 ○高橋委員 NVQについて、いろいろな良い意見が出ておりましたが、各企業で企 業ごとに能力評価をしている現状を考えれば、こういうことをやっていくことにど れだけの意義があるのか、私個人的にはよくわからないところがあります。ただし 、日本版というところにたぶんミソがあるのでしょうね。日本のいまの現状を踏ま えて、他国の制度も参考にしながら、何か検討していくということ自体まで否定さ れるものではないだろうと思うのです。ですから、もしそういう形で何らかの検討 をされるとするのであるならば、先ほど新谷委員から縦割の議論がされておりまし たが、この分科会を中心に検討を進めていくということが基本としてあるべきでは ないかと思います。以上です。 ○今野分科会長 日本版NVQというと、NVQがEUの中で吸収されて、なくなってしま うかもしれませんよ。わかっていただけましたか。 ○上原委員 ニート、特にフリーターもそうなのかもしれませんが、現在の若者は 価値観を含めて、層別に意識が、自分たちが考えている人たちと随分違うのだと思 うのです。だから、なぜ物を買わないかとか、なぜ3年で辞めるのだとか、なぜ駄目 なのかとか、いろいろな本があって、その手のものを読むと、新村社会だとか、携 帯電話を持った世代が、小学校と中学校と高校とで、全然価値観が違うとか、それ から時代背景ですね。我々などは日本の高度成長期に伸びてきたものだから、ずっ とそれの延長線上に社会があると思っていたわけですが、いまは失われた20年の流 れで、何か頑張っても駄目なのではないかみたいなのもあるのかもしれないし、そ この部分の若者分析論みたいなものがベースにしっかりないと、いろいろな施策を 打つときの有効度がどうなのかなという気がするのです。その辺は研究する機構も あるようですから、分析をしっかりされて、それに対するもっときめの細かい施策 を打つことが非常に重要なのではないかとちょっと思います。 ○今野分科会長 よろしいでしょうか。いろいろご意見をいただきましたので、先 ほど言いましたようにコメントとして整理をして、皆さんにもう一度見ていただい て、最終的に私が見て審議会としてのコメントとして提出をしたいと思いますので 、お願いいたします。  次は、「求職者支援制度における訓練の在り方について」、まず事務局から説明 をいただけますか。 ○高橋総務課企画官 お手元の資料に即して説明いたします。資料3から資料5を使 います。順番が飛んで恐縮ですが、資料5の4頁です。求職者支援制度ですが、これ は民主党のマニフェスト、連立政権樹立に当たっての合意事項、緊急経済対策、年 末の新成長戦略といった局面に取り上げられているものです。こちらに書かれてい るように、基本的なコンセプトとしては、雇用保険と生活保護の間の第2のセーフテ ィネットとして、求職者支援制度を新しく創設する。また、その内容としては、雇 用保険の給付の切れた方や雇用保険の対象外である方々等に職業訓練の機会を提供 し、またその中で必要な方に生活支援のための給付を支給するというのが基本的な 内容になっております。この第2のセーフティネットとしての職業訓練とこれを受講 する間の給付という考え方ですが、これはまさに現在実施している政策でもあります。  その現行施策の実施状況についてですが、時間の関係で、本日は提出している資 料のご紹介程度にとどめさせていただきます。資料3-1を御覧ください。まず、第1 のセーフティネットとしての雇用保険制度やその財源で実施しております公共職業 訓練の離職者訓練があります。内容については、そちらに縷々書いているとおりで す。このような中で、第1のセーフティネットで救済できなかった求職者の方が生活 保護に至ることのないよう、雇用までもっていくということで、第2のセーフティネ ットとして、昨年の7月から緊急人材育成支援事業による職業訓練を実施していると ころです。具体的には、雇用保険の受給資格のない方を主なターゲットとして、基 礎的な内容を含めて必要な職業訓練を実施するとともに、要件を満たす方には訓練 期間中に一定の給付や貸付をさせていただくというものです。  公共職業訓練と緊急人材育成支援事業の現状ですが、公共職業訓練については資 料3-2で、主に離職者訓練について、施設内訓練と委託訓練等に分けて説明しており ますので、後ほどご参照いただけたらと思います。また、緊急人材育成支援事業は 、資料4-1において基本的な概要、スキーム、訓練のコースの主な内容、受講の流れ 、複数の訓練コースの組み合わせ受講など、基本的な制度内容について説明してお ります。また、訓練のコースの開設状況や、実際にどのぐらいの方が訓練に参加し ていらっしゃるかというデータもお示ししております。  また、給付についても、内容や実際に給付を受けている方の人数等について資料 をお付けしております。実際にはこの給付については、基金訓練以外に、公共職業 訓練を受講する雇用保険受給資格のない方についても、収入や資産等の要件を満た す方については同じように支給しております。それも資料4-1にお示ししたとおり ですので、後ほどご参照いただけたらと思います。  また、資料4-2においては、緊急人材育成支援事業における訓練を受けている方に 、どのような方が、どのような事情で受けていらっしゃるのかという背景を、少し 詳しくアンケートで調査した結果をお付けしております。これは今年2月の前半に開 始した230コースを受けていらっしゃる約4,900名余りの方にアンケート票をお配り して、回答のあった約3,600人分を集計しております。属性、年齢、性別、家計にお けるステータス、離職の状況、雇用保険の支給、受給の状況、収入や資産の状況等、 細かく調査しております。ご回答をいただいた3,600人の中には一部、雇用保険の受 給資格のある方も入っておりましたが、本日の資料では、そういった方を除いて残 りの雇用保険受給資格のない方3,200人弱を取り出して、円グラフを用いて集計結果 を取りまとめております。これも後ほどご参照いただけたらと思います。  その上で、この分科会でお諮りしたい点を御説明します。再び資料5の1頁、2頁を 御覧ください。この求職者支援制度については、先般分科会長からもアナウンスをい ただきましたが、この求職者支援制度全体については、職業安定分科会雇用保険部会 で並行してご審議をしていただいております。その中で上がった論点ペーパーが、こ の1頁、2頁です。ここでは、「政策全体の位置づけ」、「訓練」、「給付」、「その 他」という大きな項目に分かれております。  当分科会におかれましては、このうち、特に「訓練」の部分を掘り下げてご審議を いただければと存じます。ここでは総論的に書いてありますが、これを私ども事務局 として、試案としてブレークダウンしたものが3頁です。いま現在実施しております 緊急人材育成支援事業、これが今年度末で終了という予定となっている中で、これを 恒久化していくということになりますが、その際には、改めて基本的な論点を詰めて 制度設計を行い、法律を作って国会に提出していくという流れが予定されております ので、やや基本的な確認すべき事項も含めて、網羅的に挙げております。1.が「訓練 の目的」です。先ほど来、議論になっておりました第2のセーフティネットという役 割に照らして、この求職者支援制度における訓練の趣旨・目的をまず整理できればと いうものです。  また、2つ目の「対象者の範囲」ですが、1つ目の○は、基本的には第1のセーフテ ィネットから漏れてくる、いわば雇用保険の受給資格のない方をイメージはしており ますが、それ以上にさらに踏み込んだ、何か対象者の範囲を考える必要があるのかど うかという点です。さらに○の2つ目では、第2のセーフティネットとしてこの施策が 機能するために、例えば単なる対象者の属性のみならず、ご本人に対しても、何かし らご確認をさせていただくべきことや求めるべきことがあるのかどうかといった点も 論点として挙げております。  3つ目の大きな論点は、「訓練の設定と実施機関の確保」です。「(1)訓練コースの 設定」については、例えば、対象者の範囲を雇用保険の受給資格のない方とする場合 、正社員の経験が少ない方など、職務経験上いろいろなバリエーションのある方、そ れに伴って職業能力開発の機会が少なかった方等、いろいろな方がこの対象になって くるかと思います。そういった対象者の方々の特性に照らして、どういった性格、水 準の訓練を設定すべきか、またその際の「(2)訓練の規模」がどのぐらいになるかとい う点についてです。さらに、「(3)訓練実施機関の属性とその確保」ですが、受け皿と しての機関の属性、そのような機関を十分な分野・規模で確保していく場合の支援の あり方も、論点として挙げております。  4.は、求職者に応じた訓練への入口と出口の問題です。この制度を機能させるため に、しっかりと入口で適切な方を適切に円滑に訓練に誘導していくという手立てが必 要かと思いますが、その辺りのスキームをどう考えていくかが(1)、さらに、(2)は訓練 が修了した方についての就職支援のあり方について、どう考えるかという点。さらに 、5.は上記で挙げられた観点に沿って制度設計した場合に、施策としての評価、その 評価軸をどのようにしていくかという点。さらに、その評価を上げるために、関係者 が自ら努力して、さらに効果を増していけるような仕組みにするためには、どのよう な方向性があるのかという点。さらには、6.ですが、そのための事業の運営体制をど う構築していくか。これは中央、地方の関係する機関をどのように活用して、どのよ うな役割分担でやっていくかという点があるかと存じます。「その他」、7.ですが、 現行の公共職業訓練との役割分担をどうするかという点もあろうかと思います。  これらの点について、今後できましたら7月末ごろまでに、基本的な考え方について 一通りのご審議をいただいて、中間的に取りまとめ、来年度の予算要求、さらに法律 案を作っていく際に反映させていただければと思っております。資料の説明は、以上 です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○今野分科会長 いま説明がありましたように、これから本格的に議論をするぞとい うことで、その前に論点を出していただいたということなので、今日は内容よりか、 こういう論点が足らないなどということを中心に出していただいて、その意見が出た ら、それで論点をもう一度整理していただく。それを踏まえて、先ほどから宿題を勉 強してこいという話がありましたので、資料3-2、資料4-1、資料4-2を今日は詳しく説 明していただいていないので、お帰りになって一生懸命読んで、それを頭に入れてい ただいて、それを前提に次回以降で本格的な議論ができればと思います。今日の段階 では、いま資料5に沿って説明がありましたので、このところでこういう論点をもう少 し入れたほうがいいなどということがあったら、意見を出していただければと思いま す。 ○上原委員 アンケートの6頁の(2)で年齢の話が出ていて、特に「不明」の左側の 「65歳〜」が1.0%と「61歳〜65歳」が3.2%で、両方足すと4.2%ぐらいいるわけです。 特にセーフティネットで1回目ですから年齢を制限していないのですが、その辺が1つ 視点になるのではないかというのが1つです。  もう1つは、同じアンケートの12頁の(付問3)で、「ハローワークをどの程度利用 していますか」とありまして、ここでの総括の仕方は「活用している」と回答した者 が約8割だと書いてあるのですが、逆に上のほうの「活用していない」というのと、 「月1回程度」を両方足すと、45%ぐらいになるわけですね。逆に言うと、まだまだPR が足りなくて、活用度が少ないのかなという部分も言えるのかなと思います。 ○高倉委員 同じアンケートのいちばん最後、(20)「訓練終了後の進路」ですが、 「不明」というのがどういう意味か、よくわからないのです。「まだ分からない」と か、結構多いですね。だから、その辺について、キャリアプランも含めて、どのよう な対策をやっていくのかという視点も重要でしょう。 ○荒委員 職業能力開発訓練というのは、就職してこその話だと思うのですが、求職 者支援という名前にありますように、求職者に対してフォーカスした支援制度ばかり で、求人側、使用者側のほうは何をすればいいでしょうか。職業能力訓練と求人、企 業側とのつながりが見えないと思いました。 ○井上委員 現場から拾ってきたのですが、実際に訓練受講者からの苦情ですとか、 そういうものも上がっていると聞いております。そういう意味では、講師の質である とか、指導方法であるとか、あるいは実施機関の受講環境であるとか、地域によって その差がかなり激しいということを聞いています。ですから、そういうものもデータ として出していただいて、本来セーフティネットとして地域格差があってはいけない と思いますので、そういう意味でのデータを是非とも出していただければと思います。 ○高橋委員 論点だけ2点、思いつくところです。1つは、いまのご意見もありました が、訓練で地域特性は重視すべきだと思いますが、他方でこういう制度をやる以上は ナショナルミニマムといいましょうか、少なくとも全国均一に行うものがあるのか、 ないのか。そういったナショナルミニマムと地域特性の観点はどう考えるのかという のが、1つの論点としてはあり得るのではないかと思います。  いまの基金訓練を考えると、いずれ公共職業訓練につなげていくということを考え ると、公共職業訓練との役割分担といいましょうか。とりわけ新成長分野、介護とか 医療などは委託訓練でやっている部分もあり、基金訓練でもやっている部分がありま すから、そこの役割分担も1つの論点になり得るのではないかと思います。以上です。 ○新谷委員 実はアンケートについてのお願いを事前にしていたのですが、今日は出 てきていないです。今日いただいたアンケートの分析にはクロス集計が入っていなく て、例えば主たる生計維持者なのか、そうではないのかというクロスであるとか、年 齢別のクロスであるとか、単発の分析だけではなくてクロスでやると、だいぶ対象者 の姿が浮かび上がってくると思いますので、次回の審議会までにそのデータをいただ ければ、もうちょっと深掘りができるのではないかということを、ここでお願いをし ておきたいと思います。  もう1つは、資料5の3頁に論点を入れていただいているのですが、訓練を継続するた めのインセンティブといいますか、要するに途中で脱落した人がどのぐらいいて、な ぜ脱落をしたのかというところを、どのように分析すればいいのかというのが1つ要る のか。それと出席要件の8割に足らなくなったときの手続をどうするのか。いまは受託 した訓練機関が8割に達していないということを判断して、それがハローワークに行っ て、それで支援金の給付が打ち切られるという形になっていると思うのですが、この 辺の扱いをどうするのかというのが1つ要るのではないかと思います。  それと訓練の実施機関への奨励金のあり方が論点に出ているのですが、今後これを 論議するときに、いまは緊急避難的に受託訓練先を見つけるということがまず第1にあ ったので、奨励金が非常に単純な形で作られていると思うのです。要するに、そこに は充足率であるとか、就職率であるなどといったインセンティブがいまは組み込まれ ていなくて、とりあえず定員だけ確保していけば、それに対してお金が出るという形 になっていますので、恒久化に当たっては、その辺のインセンティブのあり方も論点 として入れておいてはどうかなと思っております。  もう1つ、これはもうちょっと大きな問題で、いま基金訓練への応募状況と定員に対 する充足率を、事務局としてどのように見ておられるのかという分析が単に数字しか 出ていないのです。いまの応募状況なり充足率に対する評価というところを、事務局 として分析していただいたらどうかなと思います。以上です。 ○今野分科会長 ほかにありますか。この論点ペーパーはまた整理をしていただいて、 いくつか宿題がありましたので、そのデータを用意していただくのと、委員の皆様に は今日配付された資料をよく読んできていただいて、次回以降から本格的に議論をし たいと思いますので、よろしくお願いします。  最後に、その他があって、1件、報告案件があります。事務局から説明していただけ ますか。 ○福味基盤整備室長 資料6に基づいて説明いたします。先日、能力開発基本調査を 発表しましたので、3頁以降のグラフで、かいつまんで説明したいと思います。この 調査ですが、年度を対象とするものについては、平成20年度の1年間を対象としてお りますので、調査対象期間の後ろの半分がちょうどリーマンショック以降の不況期に 当たっているという状況で、全般的に教育訓練の状況が前年度と比べて落ち込んだと いうのがポイントです。  3頁の図1がOFF-JTで、黒い棒グラフが今回の調査で、正社員で見て10ポイント近く 落ち込んでいる、正社員以外でも落ち込んでおります。  5頁の計画的なOJTですが、やや落ち込んだと。正社員以外については微増となって おります。  6頁の労働者に対する自己啓発への支援を行っている事業所については、正社員、 非正社員とも10ポイント以上の落ち込みということで、かなりの落ち込みとなってお ります。  7頁の労働者1人当たりの平均額で見ても、かなりの落ち込み、半分程度になってし まったという状況です。  8頁、9頁は、企業の教育訓練の方針を見たものです。8頁の図9ですが、重視する教 育訓練の対象として、労働者全体を重視するのか、選抜した労働者を重視するのかと いうことで、大雑把に言って左の2つが労働者全体、右の2つが選抜した労働者を重視 するということです。上から2番目ですが、前回、選抜した労働者を重視するという 右の2つが増えて、こちらが大きな流れなのかなと思っていたのですが、今回につい ては左側の2つ、労働者全体を重視するというところが増えて、半数近くまで盛り返 してきているところです。  9頁はOJTとOFF-JT、どちらを重視するかというところで、正社員で見て大体7割程 度がOJT、3割程度がOFF-JTとなっております。このところの動きとして、OFF-JTがだ んだんと増えてきていることがおわかりいただけるかと思います。  10頁以降は個人調査で、自己啓発を行った労働者は、個人調査で見ても減っており ます。  11頁の自己啓発の問題点ですが、時間的な余裕がない、費用がかかりすぎる等々の 理由によって、問題があると考えている労働者が7割から8割に上っているところです。  12頁です。これは今回の調査で新しく盛り込んだもので、労働者が希望している職 業人生の実現に向けて、どのような能力開発が必要かというものを見たものです。図 16ですが、上から2番目が通常の業務をこなしていくことで必要な能力が身につく、い わばOJTを意識して書いたものです。上から4番目、会社が提供する教育訓練プログラ ムに沿って能力向上を図る、OFF-JTを意識して書いたものです。こういったものより も、いちばん上の自発的な能力向上のための取組みを行うことが必要、自己啓発が必 要だと考えている労働者、特に正社員がほかの項目を圧倒的に引き離して多くなって いるという状況がご覧いただけると思います。  時間の関係でかいつまんで説明しましたが、さらに詳しいものについては、次の頁 から調査結果の概要として載せております。こちらについても、不況の関係で教育訓 練の状況があまり好調でない。低調といいますか、やや高い数値とはならなかったと いう概況については、冒頭申し上げたところと同じです。簡単ではありますが、説明 を終らせていただきます。 ○今野分科会長 何かご質問はありますか。あとからお読みになって、何か疑問点が あったら、直接お聞きしていただいてもいいと思います。今日はこれで終わりたいと 思います。ほかに何かありますか。次回以降の日程については事務局で調整をしてい ただきますので、よろしくお願いいたします。議事録ですが、労働側委員は新谷委員 、使用者側委員は高橋委員にお願いしたいと思います。今日はこれで終わります。あ りがとうございました。 【照会先】職業能力開発局総務課総括係(5738)